プラズマ処理方法
【課題】処理むらを大幅に低減させることができる、特に処理むらが生じ易いフッ素樹脂の表面改質処理においても処理むらを低減させることができるプラズマ処理方法を提供する。
【解決手段】被処理物が配置された処理空間内を、所定のガスで処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にして、処理空間内で、被処理物の表面をプラズマ処理するプラズマ処理方法。前記圧力雰囲気にする方法は、処理空間の空気を所定のガスに置換した後に、処理空間内の圧力が処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力になるまで、所定のガスを処理空間に注入して行うプラズマ処理方法。所定のガスに置換する方法は、処理空間を真空引きした後に、所定のガスを処理空間に注入して行うプラズマ処理方法。
【解決手段】被処理物が配置された処理空間内を、所定のガスで処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にして、処理空間内で、被処理物の表面をプラズマ処理するプラズマ処理方法。前記圧力雰囲気にする方法は、処理空間の空気を所定のガスに置換した後に、処理空間内の圧力が処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力になるまで、所定のガスを処理空間に注入して行うプラズマ処理方法。所定のガスに置換する方法は、処理空間を真空引きした後に、所定のガスを処理空間に注入して行うプラズマ処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂等の親水性に乏しく、難接着性の基材の表面の親水性や接着性の向上を目的とする表面改質処理に関するものであって、フッ素樹脂等をプラズマで表面処理することによって、表面改質を行うプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材表面を処理して、表面に親水性、接着性等を与えるための表面改質法(表面処理方法)として、乾式でクリーンな処理方法であるグロープラズマ処理が知られている。
【0003】
そして、グロープラズマによる表面処理としては、従来、低圧グロープラズマ処理が一般的であったが、低圧グロープラズマ処理の場合は、通常1.3kPa以下の低圧において行うために、実施には大型の真空装置が必要となり、設備費や処理コストが大きくなるという欠点や処理中に熱が発生し易く低融点物質からなる被処理物には適用し難いという欠点があった。
【0004】
上記のような低圧グロープラズマ処理の欠点を解決する処理方法として、大気圧下でプラズマ処理を行う大気圧グロープラズマ法による処理方法が開発され、例えば、大気圧グロープラズマ法によりフッ素樹脂等の部材表面の接着性を向上させるための処理方法が提案されている。(特許文献1)
【特許文献1】特開平4−145139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の大気圧プラズマ処理においては、表面改質効果が充分ではなく、被処理物に処理むらが多く発生していた。特に、広い面積を処理した時のフッ素樹脂の表面の親水化処理などフッ素樹脂の表面改質処理においては、接着性改善効果が不十分であり、処理むらの発生が顕著であった。
【0006】
このため、処理むらを大幅に低減させることができる、特に処理むらが生じ易いフッ素樹脂の表面改質処理においても処理むらを低減させることができる大気圧プラズマ処理方法が望まれていた。
なお、ここでいう処理むらとは1個の被処理物の表面内における親水性や接着性等に関する品質のばらつき(面内ばらつき)や複数個の被処理物を処理したときの被処理物間の品質のばらつきをいう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来の大気圧プラズマ処理において処理むらが生じる原因について鋭意検討の結果、処理空間内に空気が存在すると、プラズマ処理の効率が悪く接着性改善効果が不十分となり、さらに、処理むらが発生することを突き止め、処理空間内への空気の侵入を断つことによって、プラズマ処理の効率を高めて接着性改善効果を高め、さらに、処理むらを大幅に低減できることを見出し本発明に至った。
【0008】
請求項1に記載の発明は、
被処理物が配置された処理空間内を、所定のガスで処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にして、前記処理空間内で、前記被処理物の表面をプラズマ処理することを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0009】
本請求項のプラズマ処理においては、被処理物が配置された処理空間内を所定のガスで周囲の処理空間外(以下、単に「周囲」という)より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にして処理空間内に空気が侵入することを防止しているため、プラズマ処理の効率を高めて接着性改善効果を高め、さらに、処理むらを大幅に低減させたプラズマ処理を行うことが可能となる。
また、本請求項の発明では、このように、プラズマ処理の効率を高めて接着性改善効果を高め、さらに、処理むらを大幅に低減することを、所定のガスで周囲より高く、プラズマを発生させるような圧力雰囲気を設定するという簡便な方法で実施することができる。
【0010】
本発明者が、上記した所定のガスで周囲より高く、プラズマを発生させる圧力雰囲気につき、さらに検討したところ、本発明は、従来の低圧プラズマ処理においても適用できることが分かった。即ち、処理空間内に空気が侵入することを防止することにより、プラズマ処理の効率を高めて接着性改善効果を高め、さらに、処理むらを大幅に低減できることを見出した。
【0011】
本請求項における所定のガスとは、空気を除くガスであってプラズマの生成に適したガスであればよく、特に限定されないが、例えばHe、Ne、Ar、N2等の不活性ガスやこれら不活性ガスを主成分とし、被処理物と反応して被処理物の表面に親水性の官能基や水酸基を付与する、CO2やハロゲンその他のガスを少量混合したガスである。
【0012】
処理空間内を周囲より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にする方法としては、処理空間を密閉し、He等の前記所定のガスを処理空間内の圧力が周囲より高く、かつプラズマを発生させる圧力となるまで処理空間に注入してもよいが、処理空間を所定のガスで周囲より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気に保ちながら、所定のガスを処理空間の一端から他端に向かって流しながらプラズマ処理を行うと、より安定したプラズマ処理を行うことができる。
【0013】
プラズマを生成させる手段には、グロー放電の他にコロナ放電やアーク放電などの放電があり、本発明においてプラズマを生成させる手段は特に限定されるものではないが、処理むらをより抑制できる点からはグロー放電が好適である。ここに、一定圧以上の圧力雰囲気下でグロー放電を行うためには、少なくとも一方の電極の表面を固体誘電体で被覆する必要があるが、固体誘電体としてはセラミック、ガラス、プラスチック等が適用でき、その材質は特に限定されるものではないが、誘電率の高いセラミックやガラスが好適である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記のプラズマ処理方法であって、
前記所定のガスで前記処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にする方法は、前記処理空間の空気を前記所定のガスに置換した後に、前記処理空間内の圧力が前記処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力になるまで、前記所定のガスを前記処理空間に注入して行うことを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0015】
本請求項の発明によれば、処理空間に所定のガスを注入して周囲より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気とするのに先だって、一旦処理空間内の空気を所定のガスで置換するため、処理空間内の空気を完全に除去することができ、処理むらの極めて少ないプラズマ処理を実現するために好適な圧力雰囲気を形成することができる。
具体的には、例えばプラズマ処理に先だって所定のガスを処理空間の一端から注入して、処理空間内の空気を完全に除去し、処理空間内を所定のガスのみの状態にすることにより実現することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記のプラズマ処理方法であって、
前記所定のガスに置換する方法は、前記処理空間を真空引きした後に、前記所定のガスを前記処理空間に注入して行うことを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0017】
請求項3の発明によれば、処理空間に雰囲気ガスを流すことによってガス置換を行う方法に比べて、処理空間内に残存する大気を、短時間に排除することができるため、簡便にかつ迅速に処理むらの少ないプラズマ処理を実現するために好適な圧力雰囲気を形成することができる。また、密閉空間内のガスの置換に際して雰囲気ガスを消費することがないので経済的にも優れている。
【0018】
なお、ここでいう真空引きには、処理空間内に残存する大気を少しでも引くことも含まれるが、2.6×10−2MPa以下まで真空引きすることが好ましい。
【0019】
請求項4に記載の発明は、前記のプラズマ処理方法であって、
前記処理空間は円筒を用いて形成されており、前記プラズマ処理は、前記円筒を接地電極または印加電極として行うことを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0020】
本請求項の発明においては、プラズマを生成させるための放電用電極の接地電極または印加電極のうち少なくとも一方の電極を円筒状電極とし、円筒状電極と対極をなす他方の電極を前記円筒状電極の内側に配置し両電極の間で放電させることにより、円筒状電極の内部にプラズマを生成させる。
【0021】
本請求項の発明では、円筒状電極の内側にプラズマを生成させるため、プラズマが、被処理物の側面や背面(電極と対向していない面)にまで回りこみ、円柱状など平面でない形状の被処理物についても均一にプラズマ処理を行うことができる。
【0022】
また、例えば、画像形成装置用のエンドレスベルトやローラ等の多層ベルトやローラ等の表層を処理するに際して、筒状または管状の被処理物を前記円筒状電極の内面に沿って配置し、円筒状電極と対極をなす他方の電極を被処理物の内側に配置することにより、容易にプラズマ処理を行うことができる。
【0023】
本請求項の発明においては、前記他方の電極の形状は、特に限定されるものではないが、他方の電極も円筒状電極とし、両方の円筒状電極の軸心が重なるように配置する(以下二重円筒方式ともいう)と、両方の円筒状電極で挟まれた空間の全域に亘り均一にグロープラズマが生成するので好ましい。さらに、二重円筒方式においては、例えば、外側の円筒状電極の直径が固定されている場合であっても、内側の円筒状電極の直径を調整することによって両電極の間隔の大きさを自由に設定することができ、両円筒状電極の間隔を小さくすることによって、低い印加電圧で放電させ、プラズマを生成させることができる。また、被処理物の直径毎に外側の円筒状電極を設ける必要もない。
【0024】
請求項5に記載の発明は、前記のプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ処理は、前記処理空間内の圧力が、処理空間外の圧力より0.1kPa以上高い圧力下で行うことを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0025】
本請求項の発明においては、処理空間内の雰囲気ガスの圧力を、処理空間外より0.1kPa以上高くすることが好ましい。処理空間内の雰囲気ガスの圧力を、前記圧力にすると、プラズマ処理空間への空気の侵入を確実に防ぐことができ、さらに、プラズマを安定して生成させることができるため、一層接着性改善効果が高く、より処理むらの少ないプラズマ処理を行うことができる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、前記のプラズマ処理方法であって、
前記被処理物が、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂より選択された樹脂であることを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0027】
本請求項の発明においては、従来被処理物を処理むらの発生防止が困難であったフッ素樹脂の表面改質処理において本発明の効果を顕著に発揮することができる。
本請求項の発明において被処理物であるフッ素樹脂は特に限定されないが、例えば前記画像形成装置の画像の転写や定着用の多層エンドレスベルトやローラの表層として好適なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が挙げられる。
また、本請求項の発明におけるフッ素樹脂には、純粋なフッ素樹脂の他、フッ素樹脂に例えば可塑剤やフィラー等の他の物質が添加されたフッ素含有樹脂組成物を含む。
【0028】
また、本請求項の発明は、電子材料に用いられるポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂においても、その効果を顕著に発揮することができる。即ち、樹脂表面に加速されたプラズマ(イオン)がぶつかることで、印刷時のインキの密着性が向上して、印刷性がよくなる。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、被処理物に対してプラズマ処理の効率を高めて接着性改善効果を高め、さらに、処理むらを大幅に低減させたプラズマ処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、画像形成装置用の転写ベルトを例にとり、本発明を最良の実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0031】
(実施の形態1)
(イ)表層の形成
第1に、本実施の形態においてプラズマ処理を施す対象物である画像形成装置用転写ベルトの表層の形成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る転写ベルトの表層3の形成方法を概念的に示す図である。図1において、4は第1の円筒状電極である。第1の円筒状電極4は、内径は169.2mmであり、長さが500mmであって、所定の厚さのステンレス鋼製の電極である。第1の円筒状電極4の内周面に三井デュポンフロロケミカル社製のPFAディスパージョン(PFAグレード950HP)を所定量塗布した後、400℃で焼成し第1の円筒状電極4の内面上に、長さ470mm、厚さ8μmの表層3を形成した。
【0032】
(ロ)表層のプラズマ処理
第2に、前記表層のプラズマ処理について説明する。
本発明においては、所定のガスで周囲の圧力より高い圧力とした圧力雰囲気下でプラズマ処理を行う。プラズマ処理を行う雰囲気を周囲の圧力より高くすることにより、処理中にプラズマ処理を行う処理空間であるプラズマ処理室に空気が侵入するのを防止することができ、処理むらを低減することができる。以下に、本発明におけるプラズマ処理について、具体的に3つの形態を採り上げて説明する。
【0033】
(ロ−1)第1の実施の形態
a.二重の円筒状電極を備える装置を用いたプラズマ処理
本実施の形態においては、直径の大きさが異なる大小2つの円筒状の電極を、軸心が一致するように配置し、空気を所定のガス(Heガス)と置換した後にも所定のガス(Heガス)を注入し続けることで、周囲の圧力(大気圧)よりも圧力が高くなった状態で、両円筒状電極間に高周波電力を印加して、両円筒状電極の間の空間(以下プラズマ発生領域ともいう)にグロープラズマを発生させ、同空間に配置した表層3のプラズマ処理を行う。本実施の形態によれば、大きな直径を有する筒状の被処理物のプラズマ処理を行うに際して、両電極の距離を小さくすることが可能で、低い印加電圧でグロープラズマを発生させることができる。
【0034】
以下に具体的に本実施の形態を説明する。図2と図3は、第1の実施の形態に係る表層3のプラズマ処理を行う様子を概念的に示す図である。図2は、正面から見た図である。図3は、A−A’で示す箇所を矢視したときの形状を概念的に示す図である。
図2において13は、円筒状の容器および蓋からなる第2の耐圧容器12によって囲まれたプラズマ処理室である。
【0035】
プラズマ処理室13の内部には、第1の円筒状電極4と同じ長さであって、外径が第1の円筒状電極4の内径に比べて小さい外径152mmの第2の円筒状電極11が設置されている。次に、内周面に表層3を形成した第1の円筒状電極4を、第2の円筒状電極11を取り囲むように設置する。第1の円筒状電極4を設置すると同時に、第1の円筒状電極4の軸心と第2の円筒状電極11の軸心とが一致するように第1の円筒状電極4が位置決めされ、直径の大きさが異なる2つの円筒状電極は、二重の円筒をなし、2つの円筒状電極の間に表層3が配置される。
【0036】
第2の円筒状電極11は、外部に設置した、高周波電力電源20の一方の電極に接続され、第1の円筒状電極4は接地される。なお、図3に示すように、第1の円筒状電極4は、ステンレス製の円筒41からなり、第2の円筒状電極11は、アルミニウム製の円筒111およびその外周面を厚さ4mmのパイレックスガラス(旭テクノグラス社製)で被覆した固体誘電体112で構成されている。
【0037】
第2の耐圧容器12の蓋には、所定のガスをプラズマ処理室13に供給するための給気管14とプラズマ処理室13のガスを排除して真空にするための真空排気管18が取り付けられ、給気管14と真空排気管18には、それぞれ弁15、弁19が取り付けられている。また、第2の耐圧容器12の壁には、プラズマ処理室13内のガスを外へ放出するための排気管16が取り付けられ、排気管16には、弁17が取り付けられている。給気管14は、所定のガス(Heガス)用の高圧ボンベ(図示せず)に接続され、真空排気管18は、第2の真空ポンプ21に接続されている。
【0038】
前記弁15、弁17を閉とし、弁19を開にして第2の真空ポンプ21を作動させ、プラズマ処理室13内の空気を、第一計器製作所製のHNT−221A型圧力ゲージ(圧力レンジ:大気圧を中心にして、−0.1MPa〜0.1MPa)(図示せず)が、−0.1MPaを指すまで排除する。次いで、弁19を閉とし、弁15を開にして給気管14からプラズマ処理室13に所定のガス(Heガス)を10l/分の流量で、プラズマ処理室13の圧力が周囲の圧力(大気圧)より高い圧力になるまで供給し、プラズマ処理室13の圧力が周囲の圧力(大気圧)より高くなった後は、弁15より所定のガス(Heガス)を供給しながら、弁17をわずかに開にし、プラズマ処理室13内のガスを外に排出できるようにする。即ち、プラズマ処理室の圧力が周囲の圧力(大気圧)より高い圧力を維持するように、弁17の開き具合を調整する。プラズマ処理室13の圧力を実測したところ、周囲の圧力(大気圧)に比べて0.3kPa高い圧力であった。
【0039】
次いで、前記両円筒状電極4と11の間に出力700W、電圧30kV、周波数20kHzの高周波電力を60秒間連続して印加し、両円筒状電極4と11の間の空間にグロープラズマを発生させ、表層3のプラズマ処理を行った。なお、前記のように、プラズマ処理室13内の圧力を周囲の圧力(大気圧)に比べて高く設定したことにより、プラズマ処理室13内への外気の侵入が防止されたため、高周波電力を印加している間、プラズマ発生領域全体に亘って安定したグロープラズマが発生していることが確認された。
【0040】
b.表層の特性評価
本第1の実施の形態におけるプラズマ処理を施した表層3の接着性を評価する手段として試料3個を用意し、表面に水滴を載せたときの接触角を、協和界面化学社製CA−X150型接触角計を用いて測定した。
1個の試料につき周方向4点×軸方向3点の合計12点の接触角を測定し、その平均値を、接着性を示す尺度とし、最大値と最小値の差を、面内ばらつきの大きさを示す尺度とした。
結果を表1に示す。
【0041】
次に、上記第1の実施の形態と比較する比較形態について説明する。
(ロ−2)比較形態
a.プラズマ処理室内の圧力を周囲の圧力と等しく設定したプラズマ処理
前記第1の実施の形態において排気管16に取り付けた弁17を全開とし、プラズマ処理室内の圧力が周囲の圧力(大気圧)と等しくなるようにしたこと以外は、前記第1の実施の形態と同様に、表層3のプラズマ処理を行った。
【0042】
b.特性評価
その後、前記第1の実施の形態同様、得られた表層の特性評価を行った。
結果を表1に示す。
【0043】
(ロ−3)表層の試験結果
表1は、前記第1の実施の形態および比較形態に係る表層の試験結果を示す表である。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、第1の実施の形態の場合は、比較形態に比べて、接触角の平均値が小さく、接着改善効果が高められたことが分かった。また、1個の試料における接触角の面内ばらつきが小さく良好な試験結果が得られた。さらに、3個の試料の接触角の平均値の差が小さい点でも良好な結果が得られた。このように、良好な試験結果が得られたのは、第1の実施の形態においては、プラズマ処理を行っている間、プラズマ処理室内の圧力を周囲の圧力(大気圧)に比べて高く設定することにより、プラズマ処理室内に空気が侵入するのを防止できたために、グロープラズマを安定して発生させることができ、プラズマ処理の効率が高められたためと考えられる。
【0046】
次に、他の望ましい実施の形態について、第2の実施の形態、および第3の実施の形態として説明する。
(ハ)第2の実施の形態
a.回転式の内部側電極を用いたプラズマ処理
本実施の形態は、グロープラズマを発生させるための一方の電極(外側の電極)に円筒状電極を用い、他方の電極(内側の電極)に2個以上の内部側電極を用い、内部側電極を前記円筒状電極の軸心に配置した回転軸を中心として回転させながら、前記第1の実施の形態と同じガスで同じ圧力とした圧力雰囲気下で両電極間に高周波電力を印加し、両電極の間の空間にグロープラズマを発生させ、同空間に配置した表層3のプラズマ処理を行う。本実施の形態によれば、前記内部側電極を、円筒状電極の軸心の回りを回転させるため、小面積の内部側電極でも筒状の被処理物の処理面の全体を処理することができる。以下に具体的に本実施の形態を説明する。
【0047】
前記第1の実施の形態において、前記第2の円筒状電極11に替えて回転式の内部側電極を備える装置を用い、表層3のプラズマ処理面がグロープラズマに晒される時間が前記第1の実施に形態と同じになるように処理時間を調整する。また、印加する高周波電力の出力を内部側電極の大きさに合わせて調整する。このこと以外は、前記第1の実施の形態と同様に、プラズマ処理を行う。
【0048】
図4は、第2の実施の形態におけるプラズマ処理の様子を概念的に示した図であり、図5は図4のA−A’で示す箇所を矢視したときの形状を概念的に示す図である。図4、図5において、22は内部側電極であり、内部側電極22は、図4に示すように第1の円筒状電極4と同じ長さを有し、金属製の回転軸24に接合された金属製の内部側電極支持軸23に保持され、内部側電極22と回転軸24は導通状態にある。
上から見ると、図5に示すように、内部側電極22は、第1の円筒状電極4と相対する面の曲率半径が80mmの円弧をなした4個のセグメント状の電極で構成されている。回転軸24は、第1の円筒状電極4の軸心に配置され、内部側電極支持軸23の方向Aと方向Bのなす角度は90°である。内部側電極支持軸23は、長さが伸縮自在であり、内部側電極22と回転軸24との間の距離が方向Aと方向Bともに等しい長さに調整され、4個のセグメント状の内部側電極22は、第1の円筒状電極4の軸心から等距離の位置に配置されている。なお、第1の円筒状電極4と内部側電極22との距離dは、5mmに設定されている。なお、第1の円筒状電極4と内部側電極22の間の空間pがプラズマ発生領域である。図6は、内部側電極22の拡大図である。内部側電極22は、厚さ3mmのアルミニウム製の円弧状電極221およびその表面を厚さ3mmのガラスで被覆した固体誘電体222で構成されている。なお、内部側電極22の回転軸24は変速機付のモーター25に接続され、さらに高周波電力電源20の一方の電極に接続されている。
【0049】
内部側電極22を、回転軸24の周囲を10rpmの速さで回転させながら第1の円筒状電極4と内部側電極22の間に出力500W、電圧35kV、周波数30kHzの高周波電力を30秒間印加し、両電極間の空間にグロープラズマを発生させて表層3のプラズマ処理を行う。
【0050】
(ニ)第3の実施の形態
a.間欠式プラズマ処理
本実施の形態においては、前記第1の実施の形態と同じガスで同じ圧力とした圧力雰囲気下で両電極間に間欠的に高周波電力を印加することにより、絶えず新鮮な所定のガス雰囲気下でグロープラズマを発生させてプラズマ処理を行う。具体的には、高周波電力を印加する間隔を、所定のガスが被処理物を通過する時間に同期させてプラズマを発生させる。
【0051】
所定のガスが被処理物を通過する時間に同期させることにより、即ち、所定のガスが被処理物を通過する時間、印加オフにしながら間欠的に印加することにより、処理空間内を常に新鮮な所定のガス雰囲気状態で印加して、プラズマを発生させることになるため、プラズマ処理を行っている間、所定のガスの活性度をほぼ一定に保つことが可能となり、処理むら(面内ばらつき)を低減させることができる。
以下具体的に本実施の形態を説明する。
【0052】
第1の実施の形態において、両円筒状電極に間欠的に高周波電力を印加し、印加している間のみプラズマを発生させる。具体的には、高周波電力の印加を2秒間の印加と、2秒間の印加オフを1サイクルとして、30サイクル(合計印加時間:60秒)の印加を行う。このこと以外は、第1の実施の形態と同様に、表層3のプラズマ処理を行う。
【0053】
第2実施の形態、第3実施の形態においても、第1の実施の形態同様、プラズマ処理を行っている間、プラズマ処理室内の圧力を周囲の圧力に比べて高く設定することにより、プラズマ処理室内に空気が侵入するのを防止できるために、グロープラズマを安定して発生させることができ、プラズマ処理の効率が高められるため、第1の実施の形態とほぼ同様の良好な試験結果が得られるものと考えられる。
【0054】
(ホ)転写ベルトの作製
次に、前記第1の実施の形態において作製した表層を適用して画像形成装置用の転写ベルトを作製し、性能評価を行った。
a.転写ベルトの構成
先ず、第1の実施の形態に係る画像形成装置用の転写ベルトの構成について説明する。
転写ベルトは、主に機械的強度を担うベース層、ベルトに弾性を付与するための中間層、転写機能を担う表層の3層で構成される。
図7は、本実施の形態に係る画像形成装置用の転写ベルトの構成を概念的に示す図であって、転写ベルトの断面の一部を拡大した図である。図7において、1はポリイミド樹脂を基材とするベース層であり、2は水性ウレタンを基材とするエラストマーからなる中間層であり、3は離トナー性に優れたフッ素樹脂からなる表層であり、隣り合う層と層は接着されている。本発明に係る転写ベルトにおいては、表層3と中間層2とが接着層を介さずに、直に接着されている。
なお、各層の厚さは、ベース層が60μm、中間層が200μm、表層が8μmである。
【0055】
b.転写ベルトの作製手順
次に、本実施の形態に係る転写ベルトの作製手順について説明する。
本実施の形態においては、前記ベース層1と中間層2を積層させた積層体を形成し、内周面にプラズマ処理を施した表層3に嵌合させて両者を押圧することにより中間層2と表層3を接着させて転写ベルトとする。
【0056】
以下に、転写ベルトを構成する各層の形成について説明する。
c.ベース層と中間層を積層させた積層体の形成
ドラム状金型を回転させながら、その外側に所定量のポリイミドワニスを塗布し、その後金型を加熱してイミド化反応を行い、ドラム状金型の周囲に、厚みが60μmのポリイミド樹脂からなる筒状のベース層1を形成した。
次に、ベース層1を一旦ドラム状金型からは外し、別のドラム状金型の外周面に嵌合させた。
別途、水性ウレタンに増粘剤を加え約10Pa・sの粘度とし、さらに脱泡を行ったウレタン溶液を用意し、前記ベース層1の表面上に所定量塗布した。塗布後、常温にて水分を乾燥させ、さらに160℃でアニールを行い、ベース層1の表面上に厚み200μmのポリウレタンからなる中間層2を形成し、筒状の積層体とした。
図8は、ドラム状金型5の外周面にベース層1、中間層2からなる積層体を形成した様子を概念的に示す図である。
【0057】
次いで、積層体と表層の接着について説明する。
d.積層体と表層の接着
ここでは、前記積層体を表層3に嵌合させて両者を押圧することにより積層体の中間層2と表層3を接着する具体的な方法について説明する。
図9は、前記積層体と表層3を押圧することにより中間層2と表層3を接着する接着工程を概念的に示す図である。
図9において、6は一種の流体容器であって、シリコンゴム製の膜からなる、両端部が閉じられた中空円筒状の容器(以下、「ウォーターバック」という)である。前記筒状の積層体をドラム状金型5からとり外し、ウォーターバック6の外周に嵌め込む。
【0058】
積層体を嵌め込んだウォーターバック6を、内周面に表層3が形成された第1の円筒状電極4の内側に挿入し、ウォーターバック6および第1の円筒状電極4を第1の耐圧容器8によって囲まれた真空室7の内部に設置する。次いで、ポンプ9を作動させてウォーターバック6の内部に流体を圧入してウォーターバックの圧力を0.5MPaにまで上昇させると同時に第1の真空ポンプ10を作動させて真空室7を真空にする。
【0059】
内圧で膨らんだウォーターバック6の胴部と第1の円筒状電極4の内面により、ウォーターバック6の外周にある積層体と、第1の円筒状電極4の内周にある表層3とは、相互に押圧されている。ウォーターバック6は、シリコンゴム製の膜であるため、全体が均一に樹脂層を第1の円筒状電極4の内側面に押圧することとなる。また、この際真空室7の内部が真空になっているため、一層効果的に押圧されることとなる。その結果、中間層2と表層3とが強固に接着される。ただし、前記のように、本実施の形態においては、押圧に先だって表層3の内周面にプラズマ処理を施す。
このようにして、ベース層1、中間層2、表面層3の3層からなる転写ベルトを得た。
【0060】
(ヘ)転写ベルトの評価および評価結果
次に、前記第1の実施の形態に係る表層を適用した転写ベルトの評価結果を説明する。
a.転写ベルトの評価方法
転写ベルトを評価するために、表層と中間層とのピーリング試験を行った。これは、最終製品である転写ベルトの物性として、プラズマ処理の良否が、表層と中間層との接着力に現れるからである。接着力が弱いと、連続使用時の屈曲により、転写ベルト表層の剥離が生じる。その最低剥離力としては、0.2kg/1.5cmということが、実機での試験により必要と分かっている。
具体的な試験方法としては、1.5cm幅で表層にスリットを入れておき、その端部から表層を剥がし、その接着力を測定した。
また、耐久性試験としては、屈曲耐久試験機を用いて、剥離等異常の有無を測定した。なお、試料数は、各々の試験につき、3個である。
【0061】
b.転写ベルトの評価結果
ピーリング試験の結果、前記第1の実施の形態に係る転写ベルトでは、全て測定限界以上(1kg/1.5cm以上)となり、前記最低剥離力0.2kg/1.5cmを大きく上回り、剥がすことのできないレベルで接着していることが分かった。
また、耐久性試験においても、剥離等の異常は認められなかった。
【0062】
上記のように、前記第1の実施の形態に係る転写ベルトは、表層と中間層の接着性に優れ、かつ耐久性も優れた転写ベルトであることが分かった。
【0063】
上記のように、本発明に係るプラズマ処理によれば、極めて良好な結果が得られることが分かった。そこで、本発明の効果をさらに詳しく調べるため以下の実験を行った。
【0064】
(ト)実験例1:プラズマ処理室(プラズマ処理空間)への空気混入の影響について
プラズマ処理室への空気混入の影響を調べるため以下の実験を行った。
a.プラズマ処理
前記、第1の実施の形態において、プラズマ処理室へHeと空気の混合ガスを供給した。プラズマ処理室へ供給するガスのHeの流量を10l/分で一定とし、混入させる空気の流量を0l/分、0.02l/分、0.1l/分、1l/分の4水準とした。その他は、前記第1の実施の形態と同じ条件で表層のプラズマ処理を行った。
【0065】
b.特性評価
得られたサンプルの周方向4点×軸方向3点の合計12点の接触角を測定し、平均値を接触角の大きさを示す尺度とした。
結果を、表2ならびに図10に示す。
【0066】
【表2】
なお、0cc/分については、第1の実施の形態におけるデータ(3点)を用いた。
【0067】
c.評価結果
図10に、空気混入量と接触角(平均値)との関係を示す。
図10で明らかなように、空気の混入が0の場合に比べて、わずかな量の空気の混入で接触角が大幅に増大し、さらに、空気の混入量が多くなるにつれて接触角が大きくなっている。
【0068】
上記の結果からも明らかなように、プラズマ処理中にプラズマ処理空間にわずかな量でも空気が混入すると、被処理物である表層の接触角が大幅に増大するが、本発明では、プラズマ処理空間の圧力を周囲の圧力よりも高く設定するという簡単な方法によって、空気が侵入することを防ぐことができ、接着性改善効果を高める上で極めて顕著な効果を発揮するものであることが分かる。
【0069】
(チ)実験例2:プラズマ処理室の真空引きの効果について
a.プラズマ処理
プラズマ処理空間の中の空気を所定のガスで置換するのに際して、プラズマ処理空間に所定のガスを供給するのに先だって、予めプラズマ処理室の空気を排除した場合としない場合とでプラズマ処理による表面改質効果の差を調べるため、前記第1の実施の形態において、プラズマ処理室の真空引きを行わずに、前記混合ガスを流量10l/分で60分間プラズマ処理室に供給した後、前記第1の実施の形態同様に、プラズマ処理を行った。
【0070】
b.特性評価
得られた表層の周方向4点×軸方向3点の合計12点の接触角を測定し、接触角(平均値)および接触角R(最大値と最小値の差)を求め、第1の実施の形態の試験結果と比較した。結果を、表3、および図11、図12に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
c.評価結果
図11に、接触角の平均値(図11においては接触角と表記)を、図12に、接触角Rを示す。図11に示したように、真空引きを実施しなかった実験例2においては、真空引きを実施した第1の実施の形態に比べて接触角が大きく、さらに、図12に示したように、接触角の面内ばらつき(接触角R)も大きくなっている。
このように、第1の実施形態において真空引きを行うことによってより良い結果が得られたのは、真空引きを行うことによって、短時間にプラズマ処理室の空気が殆ど完全に除去され、空気が殆ど存在しない条件下でプラズマ処理を行うことができたためと考えられる。これに対して実験例2においては、プラズマ処理室に所定のガスを流入させただけではプラズマ処理室の空気を十分に排除することができず、プラズマ処理室に空気が残存したために、第1の実施の形態に比べると接触角が大きく、面内ばらつきも大きい結果になったものと考えられる。
【0073】
本発明は、所定のガスで周囲の圧力より高い圧力とした圧力雰囲気下でプラズマ処理を行うプラズマ処理において、プラズマ処理室の空気を所定のガスで置換するのに先だって、真空引きを行うことにより、短時間でプラズマ処理室内の空気を除去することができるところから、プラズマ処理室の空気を除去し、接着性改善効果を高め、さらに処理むらを低減する上で極めて顕著な効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】転写用ベルトの表層の形成工程を概念的に示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理を正面から見た概念図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理を上側から見た概念図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理を正面から見た概念図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理を上側から見た概念図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理に用いる内部側電極を上側から見た概念図である。
【図7】転写用ベルトの一部拡大断面図である。
【図8】転写用ベルトの積層体の形成工程を概念的に示す図である。
【図9】転写用ベルトの表層と積層体の接着工程を概念的に示す図である。
【図10】空気の混入量と接触角の関係を示すグラフである。
【図11】真空引きの有無と接触角の関係を示すグラフである。
【図12】真空引きの有無と接触角の面内ばらつきの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 ベース層
2 中間層
3 表層
4 第1の円筒状電極
5 ドラム状金型
6 ウォーターバック
7 真空室
11 第2の円筒状電極
12 第2の耐圧容器
13 プラズマ処理室
14 給気管
16 排気管
18 真空排気管
20 高周波電力電源
21 第2の真空ポンプ
22 内部側電極
23 内部側電極支持軸
24 回転軸
25 モーター
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素樹脂等の親水性に乏しく、難接着性の基材の表面の親水性や接着性の向上を目的とする表面改質処理に関するものであって、フッ素樹脂等をプラズマで表面処理することによって、表面改質を行うプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材表面を処理して、表面に親水性、接着性等を与えるための表面改質法(表面処理方法)として、乾式でクリーンな処理方法であるグロープラズマ処理が知られている。
【0003】
そして、グロープラズマによる表面処理としては、従来、低圧グロープラズマ処理が一般的であったが、低圧グロープラズマ処理の場合は、通常1.3kPa以下の低圧において行うために、実施には大型の真空装置が必要となり、設備費や処理コストが大きくなるという欠点や処理中に熱が発生し易く低融点物質からなる被処理物には適用し難いという欠点があった。
【0004】
上記のような低圧グロープラズマ処理の欠点を解決する処理方法として、大気圧下でプラズマ処理を行う大気圧グロープラズマ法による処理方法が開発され、例えば、大気圧グロープラズマ法によりフッ素樹脂等の部材表面の接着性を向上させるための処理方法が提案されている。(特許文献1)
【特許文献1】特開平4−145139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の大気圧プラズマ処理においては、表面改質効果が充分ではなく、被処理物に処理むらが多く発生していた。特に、広い面積を処理した時のフッ素樹脂の表面の親水化処理などフッ素樹脂の表面改質処理においては、接着性改善効果が不十分であり、処理むらの発生が顕著であった。
【0006】
このため、処理むらを大幅に低減させることができる、特に処理むらが生じ易いフッ素樹脂の表面改質処理においても処理むらを低減させることができる大気圧プラズマ処理方法が望まれていた。
なお、ここでいう処理むらとは1個の被処理物の表面内における親水性や接着性等に関する品質のばらつき(面内ばらつき)や複数個の被処理物を処理したときの被処理物間の品質のばらつきをいう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、従来の大気圧プラズマ処理において処理むらが生じる原因について鋭意検討の結果、処理空間内に空気が存在すると、プラズマ処理の効率が悪く接着性改善効果が不十分となり、さらに、処理むらが発生することを突き止め、処理空間内への空気の侵入を断つことによって、プラズマ処理の効率を高めて接着性改善効果を高め、さらに、処理むらを大幅に低減できることを見出し本発明に至った。
【0008】
請求項1に記載の発明は、
被処理物が配置された処理空間内を、所定のガスで処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にして、前記処理空間内で、前記被処理物の表面をプラズマ処理することを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0009】
本請求項のプラズマ処理においては、被処理物が配置された処理空間内を所定のガスで周囲の処理空間外(以下、単に「周囲」という)より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にして処理空間内に空気が侵入することを防止しているため、プラズマ処理の効率を高めて接着性改善効果を高め、さらに、処理むらを大幅に低減させたプラズマ処理を行うことが可能となる。
また、本請求項の発明では、このように、プラズマ処理の効率を高めて接着性改善効果を高め、さらに、処理むらを大幅に低減することを、所定のガスで周囲より高く、プラズマを発生させるような圧力雰囲気を設定するという簡便な方法で実施することができる。
【0010】
本発明者が、上記した所定のガスで周囲より高く、プラズマを発生させる圧力雰囲気につき、さらに検討したところ、本発明は、従来の低圧プラズマ処理においても適用できることが分かった。即ち、処理空間内に空気が侵入することを防止することにより、プラズマ処理の効率を高めて接着性改善効果を高め、さらに、処理むらを大幅に低減できることを見出した。
【0011】
本請求項における所定のガスとは、空気を除くガスであってプラズマの生成に適したガスであればよく、特に限定されないが、例えばHe、Ne、Ar、N2等の不活性ガスやこれら不活性ガスを主成分とし、被処理物と反応して被処理物の表面に親水性の官能基や水酸基を付与する、CO2やハロゲンその他のガスを少量混合したガスである。
【0012】
処理空間内を周囲より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にする方法としては、処理空間を密閉し、He等の前記所定のガスを処理空間内の圧力が周囲より高く、かつプラズマを発生させる圧力となるまで処理空間に注入してもよいが、処理空間を所定のガスで周囲より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気に保ちながら、所定のガスを処理空間の一端から他端に向かって流しながらプラズマ処理を行うと、より安定したプラズマ処理を行うことができる。
【0013】
プラズマを生成させる手段には、グロー放電の他にコロナ放電やアーク放電などの放電があり、本発明においてプラズマを生成させる手段は特に限定されるものではないが、処理むらをより抑制できる点からはグロー放電が好適である。ここに、一定圧以上の圧力雰囲気下でグロー放電を行うためには、少なくとも一方の電極の表面を固体誘電体で被覆する必要があるが、固体誘電体としてはセラミック、ガラス、プラスチック等が適用でき、その材質は特に限定されるものではないが、誘電率の高いセラミックやガラスが好適である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、前記のプラズマ処理方法であって、
前記所定のガスで前記処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にする方法は、前記処理空間の空気を前記所定のガスに置換した後に、前記処理空間内の圧力が前記処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力になるまで、前記所定のガスを前記処理空間に注入して行うことを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0015】
本請求項の発明によれば、処理空間に所定のガスを注入して周囲より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気とするのに先だって、一旦処理空間内の空気を所定のガスで置換するため、処理空間内の空気を完全に除去することができ、処理むらの極めて少ないプラズマ処理を実現するために好適な圧力雰囲気を形成することができる。
具体的には、例えばプラズマ処理に先だって所定のガスを処理空間の一端から注入して、処理空間内の空気を完全に除去し、処理空間内を所定のガスのみの状態にすることにより実現することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、前記のプラズマ処理方法であって、
前記所定のガスに置換する方法は、前記処理空間を真空引きした後に、前記所定のガスを前記処理空間に注入して行うことを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0017】
請求項3の発明によれば、処理空間に雰囲気ガスを流すことによってガス置換を行う方法に比べて、処理空間内に残存する大気を、短時間に排除することができるため、簡便にかつ迅速に処理むらの少ないプラズマ処理を実現するために好適な圧力雰囲気を形成することができる。また、密閉空間内のガスの置換に際して雰囲気ガスを消費することがないので経済的にも優れている。
【0018】
なお、ここでいう真空引きには、処理空間内に残存する大気を少しでも引くことも含まれるが、2.6×10−2MPa以下まで真空引きすることが好ましい。
【0019】
請求項4に記載の発明は、前記のプラズマ処理方法であって、
前記処理空間は円筒を用いて形成されており、前記プラズマ処理は、前記円筒を接地電極または印加電極として行うことを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0020】
本請求項の発明においては、プラズマを生成させるための放電用電極の接地電極または印加電極のうち少なくとも一方の電極を円筒状電極とし、円筒状電極と対極をなす他方の電極を前記円筒状電極の内側に配置し両電極の間で放電させることにより、円筒状電極の内部にプラズマを生成させる。
【0021】
本請求項の発明では、円筒状電極の内側にプラズマを生成させるため、プラズマが、被処理物の側面や背面(電極と対向していない面)にまで回りこみ、円柱状など平面でない形状の被処理物についても均一にプラズマ処理を行うことができる。
【0022】
また、例えば、画像形成装置用のエンドレスベルトやローラ等の多層ベルトやローラ等の表層を処理するに際して、筒状または管状の被処理物を前記円筒状電極の内面に沿って配置し、円筒状電極と対極をなす他方の電極を被処理物の内側に配置することにより、容易にプラズマ処理を行うことができる。
【0023】
本請求項の発明においては、前記他方の電極の形状は、特に限定されるものではないが、他方の電極も円筒状電極とし、両方の円筒状電極の軸心が重なるように配置する(以下二重円筒方式ともいう)と、両方の円筒状電極で挟まれた空間の全域に亘り均一にグロープラズマが生成するので好ましい。さらに、二重円筒方式においては、例えば、外側の円筒状電極の直径が固定されている場合であっても、内側の円筒状電極の直径を調整することによって両電極の間隔の大きさを自由に設定することができ、両円筒状電極の間隔を小さくすることによって、低い印加電圧で放電させ、プラズマを生成させることができる。また、被処理物の直径毎に外側の円筒状電極を設ける必要もない。
【0024】
請求項5に記載の発明は、前記のプラズマ処理方法であって、
前記プラズマ処理は、前記処理空間内の圧力が、処理空間外の圧力より0.1kPa以上高い圧力下で行うことを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0025】
本請求項の発明においては、処理空間内の雰囲気ガスの圧力を、処理空間外より0.1kPa以上高くすることが好ましい。処理空間内の雰囲気ガスの圧力を、前記圧力にすると、プラズマ処理空間への空気の侵入を確実に防ぐことができ、さらに、プラズマを安定して生成させることができるため、一層接着性改善効果が高く、より処理むらの少ないプラズマ処理を行うことができる。
【0026】
請求項6に記載の発明は、前記のプラズマ処理方法であって、
前記被処理物が、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂より選択された樹脂であることを特徴とするプラズマ処理方法である。
【0027】
本請求項の発明においては、従来被処理物を処理むらの発生防止が困難であったフッ素樹脂の表面改質処理において本発明の効果を顕著に発揮することができる。
本請求項の発明において被処理物であるフッ素樹脂は特に限定されないが、例えば前記画像形成装置の画像の転写や定着用の多層エンドレスベルトやローラの表層として好適なポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)が挙げられる。
また、本請求項の発明におけるフッ素樹脂には、純粋なフッ素樹脂の他、フッ素樹脂に例えば可塑剤やフィラー等の他の物質が添加されたフッ素含有樹脂組成物を含む。
【0028】
また、本請求項の発明は、電子材料に用いられるポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂においても、その効果を顕著に発揮することができる。即ち、樹脂表面に加速されたプラズマ(イオン)がぶつかることで、印刷時のインキの密着性が向上して、印刷性がよくなる。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、被処理物に対してプラズマ処理の効率を高めて接着性改善効果を高め、さらに、処理むらを大幅に低減させたプラズマ処理を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、画像形成装置用の転写ベルトを例にとり、本発明を最良の実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0031】
(実施の形態1)
(イ)表層の形成
第1に、本実施の形態においてプラズマ処理を施す対象物である画像形成装置用転写ベルトの表層の形成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る転写ベルトの表層3の形成方法を概念的に示す図である。図1において、4は第1の円筒状電極である。第1の円筒状電極4は、内径は169.2mmであり、長さが500mmであって、所定の厚さのステンレス鋼製の電極である。第1の円筒状電極4の内周面に三井デュポンフロロケミカル社製のPFAディスパージョン(PFAグレード950HP)を所定量塗布した後、400℃で焼成し第1の円筒状電極4の内面上に、長さ470mm、厚さ8μmの表層3を形成した。
【0032】
(ロ)表層のプラズマ処理
第2に、前記表層のプラズマ処理について説明する。
本発明においては、所定のガスで周囲の圧力より高い圧力とした圧力雰囲気下でプラズマ処理を行う。プラズマ処理を行う雰囲気を周囲の圧力より高くすることにより、処理中にプラズマ処理を行う処理空間であるプラズマ処理室に空気が侵入するのを防止することができ、処理むらを低減することができる。以下に、本発明におけるプラズマ処理について、具体的に3つの形態を採り上げて説明する。
【0033】
(ロ−1)第1の実施の形態
a.二重の円筒状電極を備える装置を用いたプラズマ処理
本実施の形態においては、直径の大きさが異なる大小2つの円筒状の電極を、軸心が一致するように配置し、空気を所定のガス(Heガス)と置換した後にも所定のガス(Heガス)を注入し続けることで、周囲の圧力(大気圧)よりも圧力が高くなった状態で、両円筒状電極間に高周波電力を印加して、両円筒状電極の間の空間(以下プラズマ発生領域ともいう)にグロープラズマを発生させ、同空間に配置した表層3のプラズマ処理を行う。本実施の形態によれば、大きな直径を有する筒状の被処理物のプラズマ処理を行うに際して、両電極の距離を小さくすることが可能で、低い印加電圧でグロープラズマを発生させることができる。
【0034】
以下に具体的に本実施の形態を説明する。図2と図3は、第1の実施の形態に係る表層3のプラズマ処理を行う様子を概念的に示す図である。図2は、正面から見た図である。図3は、A−A’で示す箇所を矢視したときの形状を概念的に示す図である。
図2において13は、円筒状の容器および蓋からなる第2の耐圧容器12によって囲まれたプラズマ処理室である。
【0035】
プラズマ処理室13の内部には、第1の円筒状電極4と同じ長さであって、外径が第1の円筒状電極4の内径に比べて小さい外径152mmの第2の円筒状電極11が設置されている。次に、内周面に表層3を形成した第1の円筒状電極4を、第2の円筒状電極11を取り囲むように設置する。第1の円筒状電極4を設置すると同時に、第1の円筒状電極4の軸心と第2の円筒状電極11の軸心とが一致するように第1の円筒状電極4が位置決めされ、直径の大きさが異なる2つの円筒状電極は、二重の円筒をなし、2つの円筒状電極の間に表層3が配置される。
【0036】
第2の円筒状電極11は、外部に設置した、高周波電力電源20の一方の電極に接続され、第1の円筒状電極4は接地される。なお、図3に示すように、第1の円筒状電極4は、ステンレス製の円筒41からなり、第2の円筒状電極11は、アルミニウム製の円筒111およびその外周面を厚さ4mmのパイレックスガラス(旭テクノグラス社製)で被覆した固体誘電体112で構成されている。
【0037】
第2の耐圧容器12の蓋には、所定のガスをプラズマ処理室13に供給するための給気管14とプラズマ処理室13のガスを排除して真空にするための真空排気管18が取り付けられ、給気管14と真空排気管18には、それぞれ弁15、弁19が取り付けられている。また、第2の耐圧容器12の壁には、プラズマ処理室13内のガスを外へ放出するための排気管16が取り付けられ、排気管16には、弁17が取り付けられている。給気管14は、所定のガス(Heガス)用の高圧ボンベ(図示せず)に接続され、真空排気管18は、第2の真空ポンプ21に接続されている。
【0038】
前記弁15、弁17を閉とし、弁19を開にして第2の真空ポンプ21を作動させ、プラズマ処理室13内の空気を、第一計器製作所製のHNT−221A型圧力ゲージ(圧力レンジ:大気圧を中心にして、−0.1MPa〜0.1MPa)(図示せず)が、−0.1MPaを指すまで排除する。次いで、弁19を閉とし、弁15を開にして給気管14からプラズマ処理室13に所定のガス(Heガス)を10l/分の流量で、プラズマ処理室13の圧力が周囲の圧力(大気圧)より高い圧力になるまで供給し、プラズマ処理室13の圧力が周囲の圧力(大気圧)より高くなった後は、弁15より所定のガス(Heガス)を供給しながら、弁17をわずかに開にし、プラズマ処理室13内のガスを外に排出できるようにする。即ち、プラズマ処理室の圧力が周囲の圧力(大気圧)より高い圧力を維持するように、弁17の開き具合を調整する。プラズマ処理室13の圧力を実測したところ、周囲の圧力(大気圧)に比べて0.3kPa高い圧力であった。
【0039】
次いで、前記両円筒状電極4と11の間に出力700W、電圧30kV、周波数20kHzの高周波電力を60秒間連続して印加し、両円筒状電極4と11の間の空間にグロープラズマを発生させ、表層3のプラズマ処理を行った。なお、前記のように、プラズマ処理室13内の圧力を周囲の圧力(大気圧)に比べて高く設定したことにより、プラズマ処理室13内への外気の侵入が防止されたため、高周波電力を印加している間、プラズマ発生領域全体に亘って安定したグロープラズマが発生していることが確認された。
【0040】
b.表層の特性評価
本第1の実施の形態におけるプラズマ処理を施した表層3の接着性を評価する手段として試料3個を用意し、表面に水滴を載せたときの接触角を、協和界面化学社製CA−X150型接触角計を用いて測定した。
1個の試料につき周方向4点×軸方向3点の合計12点の接触角を測定し、その平均値を、接着性を示す尺度とし、最大値と最小値の差を、面内ばらつきの大きさを示す尺度とした。
結果を表1に示す。
【0041】
次に、上記第1の実施の形態と比較する比較形態について説明する。
(ロ−2)比較形態
a.プラズマ処理室内の圧力を周囲の圧力と等しく設定したプラズマ処理
前記第1の実施の形態において排気管16に取り付けた弁17を全開とし、プラズマ処理室内の圧力が周囲の圧力(大気圧)と等しくなるようにしたこと以外は、前記第1の実施の形態と同様に、表層3のプラズマ処理を行った。
【0042】
b.特性評価
その後、前記第1の実施の形態同様、得られた表層の特性評価を行った。
結果を表1に示す。
【0043】
(ロ−3)表層の試験結果
表1は、前記第1の実施の形態および比較形態に係る表層の試験結果を示す表である。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示すように、第1の実施の形態の場合は、比較形態に比べて、接触角の平均値が小さく、接着改善効果が高められたことが分かった。また、1個の試料における接触角の面内ばらつきが小さく良好な試験結果が得られた。さらに、3個の試料の接触角の平均値の差が小さい点でも良好な結果が得られた。このように、良好な試験結果が得られたのは、第1の実施の形態においては、プラズマ処理を行っている間、プラズマ処理室内の圧力を周囲の圧力(大気圧)に比べて高く設定することにより、プラズマ処理室内に空気が侵入するのを防止できたために、グロープラズマを安定して発生させることができ、プラズマ処理の効率が高められたためと考えられる。
【0046】
次に、他の望ましい実施の形態について、第2の実施の形態、および第3の実施の形態として説明する。
(ハ)第2の実施の形態
a.回転式の内部側電極を用いたプラズマ処理
本実施の形態は、グロープラズマを発生させるための一方の電極(外側の電極)に円筒状電極を用い、他方の電極(内側の電極)に2個以上の内部側電極を用い、内部側電極を前記円筒状電極の軸心に配置した回転軸を中心として回転させながら、前記第1の実施の形態と同じガスで同じ圧力とした圧力雰囲気下で両電極間に高周波電力を印加し、両電極の間の空間にグロープラズマを発生させ、同空間に配置した表層3のプラズマ処理を行う。本実施の形態によれば、前記内部側電極を、円筒状電極の軸心の回りを回転させるため、小面積の内部側電極でも筒状の被処理物の処理面の全体を処理することができる。以下に具体的に本実施の形態を説明する。
【0047】
前記第1の実施の形態において、前記第2の円筒状電極11に替えて回転式の内部側電極を備える装置を用い、表層3のプラズマ処理面がグロープラズマに晒される時間が前記第1の実施に形態と同じになるように処理時間を調整する。また、印加する高周波電力の出力を内部側電極の大きさに合わせて調整する。このこと以外は、前記第1の実施の形態と同様に、プラズマ処理を行う。
【0048】
図4は、第2の実施の形態におけるプラズマ処理の様子を概念的に示した図であり、図5は図4のA−A’で示す箇所を矢視したときの形状を概念的に示す図である。図4、図5において、22は内部側電極であり、内部側電極22は、図4に示すように第1の円筒状電極4と同じ長さを有し、金属製の回転軸24に接合された金属製の内部側電極支持軸23に保持され、内部側電極22と回転軸24は導通状態にある。
上から見ると、図5に示すように、内部側電極22は、第1の円筒状電極4と相対する面の曲率半径が80mmの円弧をなした4個のセグメント状の電極で構成されている。回転軸24は、第1の円筒状電極4の軸心に配置され、内部側電極支持軸23の方向Aと方向Bのなす角度は90°である。内部側電極支持軸23は、長さが伸縮自在であり、内部側電極22と回転軸24との間の距離が方向Aと方向Bともに等しい長さに調整され、4個のセグメント状の内部側電極22は、第1の円筒状電極4の軸心から等距離の位置に配置されている。なお、第1の円筒状電極4と内部側電極22との距離dは、5mmに設定されている。なお、第1の円筒状電極4と内部側電極22の間の空間pがプラズマ発生領域である。図6は、内部側電極22の拡大図である。内部側電極22は、厚さ3mmのアルミニウム製の円弧状電極221およびその表面を厚さ3mmのガラスで被覆した固体誘電体222で構成されている。なお、内部側電極22の回転軸24は変速機付のモーター25に接続され、さらに高周波電力電源20の一方の電極に接続されている。
【0049】
内部側電極22を、回転軸24の周囲を10rpmの速さで回転させながら第1の円筒状電極4と内部側電極22の間に出力500W、電圧35kV、周波数30kHzの高周波電力を30秒間印加し、両電極間の空間にグロープラズマを発生させて表層3のプラズマ処理を行う。
【0050】
(ニ)第3の実施の形態
a.間欠式プラズマ処理
本実施の形態においては、前記第1の実施の形態と同じガスで同じ圧力とした圧力雰囲気下で両電極間に間欠的に高周波電力を印加することにより、絶えず新鮮な所定のガス雰囲気下でグロープラズマを発生させてプラズマ処理を行う。具体的には、高周波電力を印加する間隔を、所定のガスが被処理物を通過する時間に同期させてプラズマを発生させる。
【0051】
所定のガスが被処理物を通過する時間に同期させることにより、即ち、所定のガスが被処理物を通過する時間、印加オフにしながら間欠的に印加することにより、処理空間内を常に新鮮な所定のガス雰囲気状態で印加して、プラズマを発生させることになるため、プラズマ処理を行っている間、所定のガスの活性度をほぼ一定に保つことが可能となり、処理むら(面内ばらつき)を低減させることができる。
以下具体的に本実施の形態を説明する。
【0052】
第1の実施の形態において、両円筒状電極に間欠的に高周波電力を印加し、印加している間のみプラズマを発生させる。具体的には、高周波電力の印加を2秒間の印加と、2秒間の印加オフを1サイクルとして、30サイクル(合計印加時間:60秒)の印加を行う。このこと以外は、第1の実施の形態と同様に、表層3のプラズマ処理を行う。
【0053】
第2実施の形態、第3実施の形態においても、第1の実施の形態同様、プラズマ処理を行っている間、プラズマ処理室内の圧力を周囲の圧力に比べて高く設定することにより、プラズマ処理室内に空気が侵入するのを防止できるために、グロープラズマを安定して発生させることができ、プラズマ処理の効率が高められるため、第1の実施の形態とほぼ同様の良好な試験結果が得られるものと考えられる。
【0054】
(ホ)転写ベルトの作製
次に、前記第1の実施の形態において作製した表層を適用して画像形成装置用の転写ベルトを作製し、性能評価を行った。
a.転写ベルトの構成
先ず、第1の実施の形態に係る画像形成装置用の転写ベルトの構成について説明する。
転写ベルトは、主に機械的強度を担うベース層、ベルトに弾性を付与するための中間層、転写機能を担う表層の3層で構成される。
図7は、本実施の形態に係る画像形成装置用の転写ベルトの構成を概念的に示す図であって、転写ベルトの断面の一部を拡大した図である。図7において、1はポリイミド樹脂を基材とするベース層であり、2は水性ウレタンを基材とするエラストマーからなる中間層であり、3は離トナー性に優れたフッ素樹脂からなる表層であり、隣り合う層と層は接着されている。本発明に係る転写ベルトにおいては、表層3と中間層2とが接着層を介さずに、直に接着されている。
なお、各層の厚さは、ベース層が60μm、中間層が200μm、表層が8μmである。
【0055】
b.転写ベルトの作製手順
次に、本実施の形態に係る転写ベルトの作製手順について説明する。
本実施の形態においては、前記ベース層1と中間層2を積層させた積層体を形成し、内周面にプラズマ処理を施した表層3に嵌合させて両者を押圧することにより中間層2と表層3を接着させて転写ベルトとする。
【0056】
以下に、転写ベルトを構成する各層の形成について説明する。
c.ベース層と中間層を積層させた積層体の形成
ドラム状金型を回転させながら、その外側に所定量のポリイミドワニスを塗布し、その後金型を加熱してイミド化反応を行い、ドラム状金型の周囲に、厚みが60μmのポリイミド樹脂からなる筒状のベース層1を形成した。
次に、ベース層1を一旦ドラム状金型からは外し、別のドラム状金型の外周面に嵌合させた。
別途、水性ウレタンに増粘剤を加え約10Pa・sの粘度とし、さらに脱泡を行ったウレタン溶液を用意し、前記ベース層1の表面上に所定量塗布した。塗布後、常温にて水分を乾燥させ、さらに160℃でアニールを行い、ベース層1の表面上に厚み200μmのポリウレタンからなる中間層2を形成し、筒状の積層体とした。
図8は、ドラム状金型5の外周面にベース層1、中間層2からなる積層体を形成した様子を概念的に示す図である。
【0057】
次いで、積層体と表層の接着について説明する。
d.積層体と表層の接着
ここでは、前記積層体を表層3に嵌合させて両者を押圧することにより積層体の中間層2と表層3を接着する具体的な方法について説明する。
図9は、前記積層体と表層3を押圧することにより中間層2と表層3を接着する接着工程を概念的に示す図である。
図9において、6は一種の流体容器であって、シリコンゴム製の膜からなる、両端部が閉じられた中空円筒状の容器(以下、「ウォーターバック」という)である。前記筒状の積層体をドラム状金型5からとり外し、ウォーターバック6の外周に嵌め込む。
【0058】
積層体を嵌め込んだウォーターバック6を、内周面に表層3が形成された第1の円筒状電極4の内側に挿入し、ウォーターバック6および第1の円筒状電極4を第1の耐圧容器8によって囲まれた真空室7の内部に設置する。次いで、ポンプ9を作動させてウォーターバック6の内部に流体を圧入してウォーターバックの圧力を0.5MPaにまで上昇させると同時に第1の真空ポンプ10を作動させて真空室7を真空にする。
【0059】
内圧で膨らんだウォーターバック6の胴部と第1の円筒状電極4の内面により、ウォーターバック6の外周にある積層体と、第1の円筒状電極4の内周にある表層3とは、相互に押圧されている。ウォーターバック6は、シリコンゴム製の膜であるため、全体が均一に樹脂層を第1の円筒状電極4の内側面に押圧することとなる。また、この際真空室7の内部が真空になっているため、一層効果的に押圧されることとなる。その結果、中間層2と表層3とが強固に接着される。ただし、前記のように、本実施の形態においては、押圧に先だって表層3の内周面にプラズマ処理を施す。
このようにして、ベース層1、中間層2、表面層3の3層からなる転写ベルトを得た。
【0060】
(ヘ)転写ベルトの評価および評価結果
次に、前記第1の実施の形態に係る表層を適用した転写ベルトの評価結果を説明する。
a.転写ベルトの評価方法
転写ベルトを評価するために、表層と中間層とのピーリング試験を行った。これは、最終製品である転写ベルトの物性として、プラズマ処理の良否が、表層と中間層との接着力に現れるからである。接着力が弱いと、連続使用時の屈曲により、転写ベルト表層の剥離が生じる。その最低剥離力としては、0.2kg/1.5cmということが、実機での試験により必要と分かっている。
具体的な試験方法としては、1.5cm幅で表層にスリットを入れておき、その端部から表層を剥がし、その接着力を測定した。
また、耐久性試験としては、屈曲耐久試験機を用いて、剥離等異常の有無を測定した。なお、試料数は、各々の試験につき、3個である。
【0061】
b.転写ベルトの評価結果
ピーリング試験の結果、前記第1の実施の形態に係る転写ベルトでは、全て測定限界以上(1kg/1.5cm以上)となり、前記最低剥離力0.2kg/1.5cmを大きく上回り、剥がすことのできないレベルで接着していることが分かった。
また、耐久性試験においても、剥離等の異常は認められなかった。
【0062】
上記のように、前記第1の実施の形態に係る転写ベルトは、表層と中間層の接着性に優れ、かつ耐久性も優れた転写ベルトであることが分かった。
【0063】
上記のように、本発明に係るプラズマ処理によれば、極めて良好な結果が得られることが分かった。そこで、本発明の効果をさらに詳しく調べるため以下の実験を行った。
【0064】
(ト)実験例1:プラズマ処理室(プラズマ処理空間)への空気混入の影響について
プラズマ処理室への空気混入の影響を調べるため以下の実験を行った。
a.プラズマ処理
前記、第1の実施の形態において、プラズマ処理室へHeと空気の混合ガスを供給した。プラズマ処理室へ供給するガスのHeの流量を10l/分で一定とし、混入させる空気の流量を0l/分、0.02l/分、0.1l/分、1l/分の4水準とした。その他は、前記第1の実施の形態と同じ条件で表層のプラズマ処理を行った。
【0065】
b.特性評価
得られたサンプルの周方向4点×軸方向3点の合計12点の接触角を測定し、平均値を接触角の大きさを示す尺度とした。
結果を、表2ならびに図10に示す。
【0066】
【表2】
なお、0cc/分については、第1の実施の形態におけるデータ(3点)を用いた。
【0067】
c.評価結果
図10に、空気混入量と接触角(平均値)との関係を示す。
図10で明らかなように、空気の混入が0の場合に比べて、わずかな量の空気の混入で接触角が大幅に増大し、さらに、空気の混入量が多くなるにつれて接触角が大きくなっている。
【0068】
上記の結果からも明らかなように、プラズマ処理中にプラズマ処理空間にわずかな量でも空気が混入すると、被処理物である表層の接触角が大幅に増大するが、本発明では、プラズマ処理空間の圧力を周囲の圧力よりも高く設定するという簡単な方法によって、空気が侵入することを防ぐことができ、接着性改善効果を高める上で極めて顕著な効果を発揮するものであることが分かる。
【0069】
(チ)実験例2:プラズマ処理室の真空引きの効果について
a.プラズマ処理
プラズマ処理空間の中の空気を所定のガスで置換するのに際して、プラズマ処理空間に所定のガスを供給するのに先だって、予めプラズマ処理室の空気を排除した場合としない場合とでプラズマ処理による表面改質効果の差を調べるため、前記第1の実施の形態において、プラズマ処理室の真空引きを行わずに、前記混合ガスを流量10l/分で60分間プラズマ処理室に供給した後、前記第1の実施の形態同様に、プラズマ処理を行った。
【0070】
b.特性評価
得られた表層の周方向4点×軸方向3点の合計12点の接触角を測定し、接触角(平均値)および接触角R(最大値と最小値の差)を求め、第1の実施の形態の試験結果と比較した。結果を、表3、および図11、図12に示す。
【0071】
【表3】
【0072】
c.評価結果
図11に、接触角の平均値(図11においては接触角と表記)を、図12に、接触角Rを示す。図11に示したように、真空引きを実施しなかった実験例2においては、真空引きを実施した第1の実施の形態に比べて接触角が大きく、さらに、図12に示したように、接触角の面内ばらつき(接触角R)も大きくなっている。
このように、第1の実施形態において真空引きを行うことによってより良い結果が得られたのは、真空引きを行うことによって、短時間にプラズマ処理室の空気が殆ど完全に除去され、空気が殆ど存在しない条件下でプラズマ処理を行うことができたためと考えられる。これに対して実験例2においては、プラズマ処理室に所定のガスを流入させただけではプラズマ処理室の空気を十分に排除することができず、プラズマ処理室に空気が残存したために、第1の実施の形態に比べると接触角が大きく、面内ばらつきも大きい結果になったものと考えられる。
【0073】
本発明は、所定のガスで周囲の圧力より高い圧力とした圧力雰囲気下でプラズマ処理を行うプラズマ処理において、プラズマ処理室の空気を所定のガスで置換するのに先だって、真空引きを行うことにより、短時間でプラズマ処理室内の空気を除去することができるところから、プラズマ処理室の空気を除去し、接着性改善効果を高め、さらに処理むらを低減する上で極めて顕著な効果を発揮するものである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】転写用ベルトの表層の形成工程を概念的に示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理を正面から見た概念図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るプラズマ処理を上側から見た概念図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理を正面から見た概念図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理を上側から見た概念図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るプラズマ処理に用いる内部側電極を上側から見た概念図である。
【図7】転写用ベルトの一部拡大断面図である。
【図8】転写用ベルトの積層体の形成工程を概念的に示す図である。
【図9】転写用ベルトの表層と積層体の接着工程を概念的に示す図である。
【図10】空気の混入量と接触角の関係を示すグラフである。
【図11】真空引きの有無と接触角の関係を示すグラフである。
【図12】真空引きの有無と接触角の面内ばらつきの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0075】
1 ベース層
2 中間層
3 表層
4 第1の円筒状電極
5 ドラム状金型
6 ウォーターバック
7 真空室
11 第2の円筒状電極
12 第2の耐圧容器
13 プラズマ処理室
14 給気管
16 排気管
18 真空排気管
20 高周波電力電源
21 第2の真空ポンプ
22 内部側電極
23 内部側電極支持軸
24 回転軸
25 モーター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物が配置された処理空間内を、所定のガスで処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にして、前記処理空間内で、前記被処理物の表面をプラズマ処理することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
前記所定のガスで前記処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にする方法は、前記処理空間の空気を前記所定のガスに置換した後に、前記処理空間内の圧力が前記処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力になるまで、前記所定のガスを前記処理空間に注入して行うことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記所定のガスに置換する方法は、前記処理空間を真空引きした後に、前記所定のガスを前記処理空間に注入して行うことを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記処理空間は円筒を用いて形成されており、前記プラズマ処理は、前記円筒を接地電極または印加電極として行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記プラズマ処理は、前記処理空間内の圧力が、処理空間外の圧力より0.1kPa以上高い圧力下で行うことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記被処理物が、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂より選択された樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプラズマ処理方法。
【請求項1】
被処理物が配置された処理空間内を、所定のガスで処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にして、前記処理空間内で、前記被処理物の表面をプラズマ処理することを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
前記所定のガスで前記処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力雰囲気にする方法は、前記処理空間の空気を前記所定のガスに置換した後に、前記処理空間内の圧力が前記処理空間外より高く、かつプラズマを発生させる圧力になるまで、前記所定のガスを前記処理空間に注入して行うことを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記所定のガスに置換する方法は、前記処理空間を真空引きした後に、前記所定のガスを前記処理空間に注入して行うことを特徴とする請求項2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記処理空間は円筒を用いて形成されており、前記プラズマ処理は、前記円筒を接地電極または印加電極として行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記プラズマ処理は、前記処理空間内の圧力が、処理空間外の圧力より0.1kPa以上高い圧力下で行うことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記被処理物が、フッ素樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂より選択された樹脂であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のプラズマ処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−200991(P2008−200991A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39449(P2007−39449)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【出願人】(502303164)株式会社イー・スクエア (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【出願人】(502303164)株式会社イー・スクエア (10)
【Fターム(参考)】
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