説明

プラズマ処理装置及び光学モニタ装置

【課題】平板スロットアンテナの電磁波放射特性の均一性に影響を与えずに波長領域の広いモニタ光を用いて処理容器内の被処理基板の表面に対する光学的なモニタリングを高精度に行う。
【解決手段】このマイクロ波プラズマエッチング装置における光学モニタ装置100は、サセプタ12上に載置される半導体ウエハWのエッジよりも半径方向内側にあって、かつ同軸管66よりも半径方向外側の位置で、冷却ジャケット板72の上に配置されるモニタヘッド102と、このモニタヘッド102から鉛直下方にカバープレート72、誘電体板56、スロット板54および誘電体窓52を縦断して設けられるモニタリング用の光導波路104と、光ファイバ106を介してモニタヘッド102と光学的に結合されるモニタ本体108とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波放電によって生成されるプラズマを用いて被処理基板に所望の処理を施すプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスやFPD(Flat Panel Display)の製造プロセスにおけるエッチング、堆積、酸化、スパッタリング等の処理では、処理ガスに比較的低温で良好な反応を行わせるためにプラズマがよく利用されている。従来より、この種のプラズマ処理には、MHz領域の高周波放電を用いて生成されるプラズマか、もしくはGHz領域のマイクロ波放電を用いて生成されるプラズマが広く用いられている。
【0003】
マイクロ波放電を用いて生成されるプラズマは、低圧下にて電子温度の低い高密度のプラズマを生成できるという利点があり、特にスロットアンテナと平板状のマイクロ波導入窓構造を採ることによって、大口径プラズマを効率的に生成できる。また、磁場を必要としないためプラズマ処理装置の簡略化をはかれるという長所を有している。
【0004】
スロットアンテナの中でも、特にラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)は、同心円状に配列した多数のハの字状スロットを備えたスロット板からマイクロ波を均質かつ広範囲に放射することによって、プラズマ密度の均一性ないし制御性に優れた大口径のプラズマを生成することができる。
【0005】
ところで、マイクロ波プラズマ処理装置においても、処理容器内にて行われているプロセスをin-situのモニタリングを通じてリアルタイムに制御することがある。上記のようなスロットアンテナを備えるマイクロ波プラズマ処理装置に光学モニタ装置を搭載する場合は、モニタリング用の光導波路がスロットアンテナの電磁波放射特性の均一性ひいてはプラズマ密度の均一性に影響を与えないような装置構成とする必要がある。
【0006】
この点に関して、特許文献1に開示されるマイクロ波プラズマ処理装置に搭載される光学モニタ装置は、マイクロ波発生器から発生されるマイクロ波を処理容器に向けて伝送するマイクロ波伝送線路の最終区間がスロットアンテナの中心で鉛直方向に真上から終端する同軸線路であることを利用する。同軸線路の内部導体は、中空管にて構成される。該中空管の中に光を通すことによって、処理容器内で行われるプロセスをin-situで光学的にモニタするようになっている。
【0007】
この光学モニタ装置は、同軸線路の中空管(内部導体)と連続するように、スロットアンテナの中心を貫通する光導波路用の孔を設ける。一般に、平板スロットアンテナの中心はラジアル導波路の中心であり、この場所に光導波路用の貫通孔を形成しても、スロットアンテナの電磁波放射特性の均一性に影響を与えることがなく、したがってプラズマ密度の均一性または制御性に支障を来すことはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−251660
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に開示される従来の光学モニタ装置は、マイクロ波伝送線路(同軸線路)の中にモニリタリング用の光導波路を設けることに難点がある。すなわち、電磁波の伝搬モードや特性インピーダンスの面から同軸線路の内部導体としての中空管の口径には限度があり、たとえば膜厚のモニタリングにおいて、レーザ光をモニタ光に用いる場合はともかく、ランプ光のような波長領域の広い非コヒーレントな光をモニタ光に用いる場合は、口径つまり光量の十分大きな光導波路を得ることができない。
【0010】
また、上記従来の光学モニタ装置は、マイクロ波伝送線路(同軸線路)の中空管(内部導体)を処理ガスの供給路に利用することができないという制約もある。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するものであり、平板スロットアンテナの電磁波放射特性の均一性に影響を与えずに波長領域の広いモニタ光(特に非コヒーレントなモニタ光)を用いて処理容器内の被処理基板の表面に対する光学的なモニタリングを高精度に行えるようにした光学モニタ装置およびプラズマ処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のプラズマ処理装置は、天板の少なくとも一部が誘電体の窓からなる真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内で被処理基板を保持する基板保持部と、前記基板に所望のプラズマ処理を施すために、前記処理容器内に所望の処理ガスを供給する処理ガス供給部と、前記処理容器内にマイクロ波を放射するための1つまたは複数のスロットを有し、前記誘電体窓の上に設けられる導体のスロット板と、マイクロ波放電による前記処理ガスのプラズマを生成するために、前記スロット板および前記誘電体窓を介して前記処理容器内にマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、前記スロット板に形成されたメッシュ状の透孔と前記誘電体窓とを介して前記処理容器内の前記基板の表面を光学的に監視または計測する光学モニタ部とを有する。
【0013】
本発明の光学モニタ装置は、天板の少なくとも一部が誘電体の窓からなる真空排気可能な処理容器内に被処理基板を収容し、前記処理容器内に処理ガスを供給するとともに、前記誘電体窓の上に設けられた1つまたは複数のスロットを有する導体のスロット板と前記誘電体窓とを介してマイクロ波を前記処理容器内に供給して、マイクロ波放電による前記処理ガスのプラズマを生成し、前記プラズマの下で前記基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、前記基板の表面を光学的に監視または測定するための光学モニタ装置であって、モニタ光を発生する光源と、前記モニタ光に対する前記基板からの反射光を電気信号に変換するための受光部と、前記受光部からの電気信号を所定の信号処理にかけてモニタ情報またはモニタ結果を出力するモニタ回路と、前記モニタ光と前記基板の表面からの反射光とを通すために前記スロット板に形成されたメッシュ状の透孔と、前記モニタ光を前記スロット板のメッシュ状透孔および前記誘電体窓を介して前記基板保持部上の前記基板の表面に照射し、前記基板の表面からの反射光を前記誘電体窓および前記スロット板のメッシュ状透孔を介して取り込むモニタヘッドと、前記光源から前記モニタヘッドまで前記モニタ光を伝送するためのモニタ光伝送部と、前記モニタヘッドから前記受光部まで前記反射光を伝送するための反射光伝送部とを有する。
【0014】
上記構成のマイクロ波プラズマ処理装置においては、マイクロ波供給部より供給されるマイクロ波がスロット板のスロットより誘電体窓を介して処理容器内に放射され、そのマイクロ波電界によって処理ガスが電離して、プラズマが生成される。誘電体窓付近で生成されたプラズマは処理容器内で下方に拡散し、このプラズマの下で基板保持部上の基板表面に微細加工または薄膜堆積等の所望の処理が行われる。
【0015】
上記光学モニタ部または光学モニタ装置は、導体スロット板および誘電体窓を通過するモニタリング用の光導波路を介して、そのようなプラズマ処理を受ける被処理基板の表面をin-situで光学的に監視または計測する。ここで、スロット板においては、メッシュ状の透孔がモニタリング用の光導波路を与える一方で、マイクロ波供給部より供給されたマイクロ波がメッシュ状透孔の部位をスロット以外の他の部位と同様に漏れなくスムースに伝搬する。これにより、スロットアンテナの電磁波放射特性の均一性(ひいてはプラズマ密度の均一性)に影響を与えずに、波長領域の広いモニタ光(特に非コヒーレントなモニタ光)を伝搬させるのに適したモニタリング用の光導波路を構築し、被処理基板の表面に対する所望の光学的なモニタリングを高い精度で安定確実に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光学モニタ装置またはプラズマ処理装置によれば、上記のような構成および作用により、平板スロットアンテナの電磁波放射特性の均一性に影響を与えずに波長領域の広いモニタ光(特に非コヒーレントなモニタ光)を用いて処理容器内の被処理基板の表面に対する光学的なモニタリングを高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態におけるマイクロ波プラズマ処理装置の構成を示す図である。
【図2】図1のプラズマ処理装置に搭載される一実施形態における光学モニタ装置のモニタヘッドおよび光導波路の構成を示す縦断面図である。
【図3A】実施形態の光学モニタ装置において光導波路を構成するためにスロット板に形成されるメッシュ状透孔の構成を示す平面図である。
【図3B】上記スロット板のメッシュ状透孔が分布する領域における遮光部の縦断面構造を示す断面図である。
【図4】上記スロット板にメッシュ状透孔を作成する方法の手順を示す図である。
【図5】合成石英および溶融石英の光透過率の波長依存性を示す図である。
【図6】上記光学モニタ装置のモニタ本体内の構成を示すブロック図である。
【図7】図1のプラズマ処理装置を用いてLDD構造の側壁を形成するために行われるエッチバック工程の手順を示す断面図である。
【図8A】LDD構造の側壁形成における不良なエッチバック結果の一例(リセス)を示す図である。
【図8B】LDD構造の側壁形成における不良なエッチバック結果の一例(フッティング)を示す図である。
【図9】SiO2膜における反射率の波長依存特性を示す図である。
【図10】図1のプラズマ処理装置の一変形例を示す図である。
【図11】実施形態の光学モニタ装置におけるモニタヘッドおよび光導波路の一変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0019】
図1に、本発明の一実施形態におけるマイクロ波プラズマ処理装置の構成を示す。このマイクロ波プラズマ処理装置は、平板スロットアンテナを用いる平板状表面波励起型のマイクロ波プラズマエッチング装置として構成されており、たとえばアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属製の円筒型真空チャンバ(処理容器)10を有している。チャンバ10は保安接地されている。
【0020】
先ず、このマイクロ波プラズマエッチング装置においてプラズマ生成に関係しない各部の構成を説明する。
【0021】
チャンバ10内の下部中央には、被処理基板としてたとえば半導体ウエハWを載置する円板状のサセプタ12が、高周波電極を兼ねる基板保持台として水平に配置されている。このサセプタ12は、たとえばアルミニウムからなり、チャンバ10の底から垂直上方に延びる絶縁性の筒状支持部14に支持されている。
【0022】
筒状支持部14の外周には、チャンバ10の底から垂直上方に延びる導電性の筒状支持部16とチャンバ10の内壁との間に環状の排気路18が形成されている。この排気路18の上部または入口には、環状のバッフル板20が取り付けられるとともに、底部に1つまたは複数の排気ポート22が設けられている。各排気ポート22には排気管24を介して排気装置26が接続されている。排気装置26は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内のプラズマ処理空間を所望の真空度まで減圧することができる。チャンバ10の側壁の外には、半導体ウエハWの搬入出口27を開閉するゲートバルブ28が取り付けられている。
【0023】
サセプタ12には、RFバイアス用の高周波電源30がマッチングユニット32および給電棒34を介して電気的に接続されている。この高周波電源30は、半導体ウエハWに引き込むイオンのエネルギーを制御するのに適した一定の周波数たとえば13.56MHzの高周波を所定のパワーで出力する。マッチングユニット32は、高周波電源30側のインピーダンスと負荷(主に電極、プラズマ、チャンバ)側のインピーダンスとの間で整合をとるための整合器を収容しており、この整合器の中には、自己バイアス生成用のブロッキングコンデンサが含まれている。
【0024】
サセプタ12の上面には、半導体ウエハWを静電吸着力を用いて保持するための静電チャック36が設けられ、静電チャック36の半径方向外側に半導体ウエハWの周囲を環状に囲むフォーカスリング38が設けられる。静電チャック36は導電膜からなる電極36aを一対の絶縁膜36b,36cの間に挟み込んだものであり、電極36aには高圧の直流電源40がスイッチ42および被覆線43を介して電気的に接続されている。半導体ウエハWは、直流電源40から印加される直流電圧による静電気力にて静電チャック36上に吸着保持される。
【0025】
サセプタ12の内部には、たとえば円周方向に延びる環状の冷媒室44が設けられている。この冷媒室44には、チラーユニット(図示せず)から配管46,48を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水cwが循環供給される。冷媒の温度によって静電チャック36上の半導体ウエハWの処理温度を制御できる。さらに、伝熱ガス供給部(図示せず)からの伝熱ガスたとえばHeガスが、ガス供給管50を介して静電チャック36の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。また、半導体ウエハWのローディング/アンローディングのためにサセプタ12を垂直方向に貫通して上下移動可能なリフトピンおよびその昇降機構(図示せず)等も設けられている。
【0026】
次に、このマイクロ波プラズマエッチング装置においてプラズマ生成に関係する各部の構成を説明する。
【0027】
チャンバ10のサセプタ12と対向する天井面には、マイクロ波導入用の円形の誘電体窓52が天板として気密に取り付けられる。この誘電体窓52は、後に詳しく述べるように、モニタリング用の光導波路104が通過する部分52aを短波長の光(特に紫外線)に対して透過率の高い合成石英にて構成され、他の部分52bをコストの低い溶融石英にて構成されている。
【0028】
誘電体窓52の上には、平板型のスロットアンテナ、たとえば円板形のラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)55が設けられている。このラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)55は、スロット板54、誘電体板(遅延板)56および誘電体板上面の金属部(カバープレート72の下面)によって構成されている。
【0029】
スロット板54は、図3Aに示すように、マイクロ波を放射するためのスロットとして同心円状に分布する多数のハの字スロットペア(54a,54b)を有している。さらに、後に詳しく述べるが、スロット板54において、モニタリング用の光導波路104が通過する部分54cにはメッシュ状の透(すかし)孔MHが形成されている。
【0030】
このラジアルラインスロットアンテナ55は、スロット板54の上に設けられた誘電体板56を介してマイクロ波伝送線路58に電磁的に結合されている。誘電体板56は、モニタリング用の光導波路104が通過する部分56aを短波長の光(特に紫外線)に対して透過率の高い合成石英にて構成されている。誘電体板56の他の部分56bは、マイクロ波の波長を圧縮(短縮)するのに適した高誘電率の誘電体たとえば石英、酸化アルミニウム、窒化アルミニウムにて構成されている。ここでは、誘電体窓52と同様にコストの低い溶融石英にて構成されている。
【0031】
マイクロ波伝送線路58は、マイクロ波発生器60から所定のパワーにて出力されるたとえば2.45GHzのマイクロ波をラジアルラインスロットアンテナ55まで伝送する線路であり、導波管62と導波管−同軸管変換器64と同軸管66とを有している。導波管62は、たとえば方形導波管であり、TEモードを伝送モードとしてマイクロ波発生器60からのマイクロ波をチャンバ10に向けて導波管−同軸管変換器64まで伝送する。
【0032】
導波管−同軸管変換器64は、方形導波管62の終端部と同軸管66の始端部とを結合し、方形導波管62の伝送モードを同軸管66の伝送モードに変換する。同軸管66は、導波管−同軸管変換器64からチャンバ10の上面中心部まで鉛直下方に延びて、その同軸線路の終端または下端が誘電体板56を介してスロット板54の中心部に結合されている。同軸管66は、円筒体からなり、マイクロ波は内部導体68と外部導体70の間の空間をTEMモードで伝播する。
【0033】
マイクロ波発生器60から出力されたマイクロ波は、上記のようなマイクロ波伝送線路58の導波管62、導波管−同軸管変換器64および同軸管66を伝播して、ラジアルラインスロットアンテナ55の誘電体板56に給電される。そして、誘電体板56内にて波長を短縮しながら半径方向に広げられたマイクロ波はラジアルラインスロットアンテナ55の各スロットペア55a,55bから2つの直交する偏波成分を含む円偏波の平面波となってチャンバ10内に向けて放射される。チャンバ10内に放射されたマイクロ波は、付近のガスが電離させ、高密度かつ電子温度の低いプラズマを生成する。なお、マイクロ波電界(表面波の電界)は、誘電体窓52の表面とプラズマに沿ってラジアル方向に伝播する。
【0034】
誘電体板56の上には、アンテナ後面板を兼ねるカバープレート72がチャンバ10の上面を覆うように設けられている。このカバープレート72は、たとえばアルミニウムからなり、誘電体窓52および誘電体板56にて発生する誘電損失の熱やプロセスに応じ発生する熱を吸収(放熱)し任意の温度に調整する機能を有している。この冷却機能のために、カバープレート72の内部に形成されている流路74には、チラーユニット(図示せず)から配管76,78を介して所定温度の冷媒たとえば冷却水cwが循環供給される。このカバープレート72においては、モニタリング用の光導波路104が通過する箇所に、板面を垂直に貫通する孔72aが形成されている。
【0035】
処理ガス供給部80は、チャンバ10の外に配置された処理ガス供給源82と、誘電体窓52より幾らか低い位置でチャンバ10の側壁の中に環状に形成されたマニホールドまたはバッファ室84と、円周方向に等間隔に設けられバッファ室82からプラズマ生成空間に臨む多数の側壁ガス吐出孔86と、処理ガス供給源82からバッファ室84まで延びるガス供給管88とを有している。ガス供給管86の途中にはMFC(マス・フロー・コントローラ)90および開閉弁92が設けられている。
【0036】
処理ガス供給部80において、処理ガス供給源82から所定の流量にて送出された処理ガスは、ガス供給管88を通ってチャンバ10側壁内のバッファ室84に導入され、バッファ室84内にて周回方向の圧力を均一化してから側壁ガス吐出口86からチャンバ10の中心に向かって略水平に吐出され、プラズマ生成空間へ拡散するようになっている。
【0037】
制御部94は、マイクロコンピュータを含んでおり、このプラズマエッチング装置内の各部、たとえば排気装置26、高周波電源30、静電チャック36用のスイッチ42、マイクロ波発生器60、処理ガス供給部80、伝熱ガス供給部(図示せず)、後述する光学モニタ装置100等の個々の動作および装置全体の動作を制御する。
【0038】
このマイクロ波プラズマエッチング装置において、エッチングを行なうには、先ずゲートバルブ28を開状態にして加工対象の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入して、静電チャック36の上に載置する。そして、ゲートバルブ28を閉状態にした後、処理ガス供給部80から処理ガスつまりエッチングガス(一般に混合ガス)を所定の流量にてチャンバ10内に導入する。また、伝熱ガス供給部から静電チャック36と半導体ウエハWとの接触界面に伝熱ガス(Heガス)を供給するとともに、スイッチ42をオンにして静電チャック36の静電吸着力により伝熱ガスを上記接触界面に閉じ込める。そして、マイクロ波発生器60をオンにし、マイクロ波発生器60から所定パワーにて出力されるマイクロ波をマイクロ波伝送線路58を介して伝搬させてラジアルラインスロットアンテナ55に給電し、ラジアルラインスロットアンテナ55からチャンバ10内にマイクロ波を放射させる。さらに、高周波電源30をオンにして所定のパワーにてRFバイアス用の高周波を出力させ、この高周波をマッチングユニット32および給電棒34を介してサセプタ12に印加する。
【0039】
処理ガス供給部80の側壁ガス吐出口86からチャンバ10内に導入されたエッチングガスは誘電体窓52の下へ拡散し、マイクロ波の電界によってガス粒子が電離し、表面励起のプラズマが生成される。プラズマが生成されると、マイクロ波は、誘電体窓52の下面(プラズマと対向する面)とプラズマに沿ってラジアル方向に伝播する表面波となる。こうして、誘電体窓52の下で生成されたプラズマは下方に拡散し、半導体ウエハWの主面の被加工膜に対してプラズマ中のラジカルを用いた等方性エッチングおよびイオン照射を用いた垂直エッチングが行われる。
【0040】
このマイクロ波プラズマエッチング装置は、チャンバ10内にて行われるエッチングプロセスの状況、たとえば時間の経過とともに減少する被加工膜の膜厚をin-situまたはリアルタイムで光学的にモニタリングするための光学モニタ装置100を備えている。
【0041】
この光学モニタ装置100は、サセプタ12上に載置される半導体ウエハWのエッジよりも半径方向内側にあって、かつ同軸管66よりも半径方向外側の位置に設けられる。光学モニタ装置100は、カバープレート72の上に配置されるモニタヘッド102と、モニタリング用の光導波路104と、光ファイバ106を介してモニタヘッド102と光学的に結合されるモニタ本体108とを有している。モニタリング用の光導波路104は、モニタヘッド102から鉛直下方にカバープレート72、誘電体板56、スロット板54および誘電体窓52を縦断して設けられる。
【0042】
図2に、モニタヘッド102および光導波路104の構成を示す。モニタヘッド102は、導体たとえばアルミニウムからなる密閉可能なキャップ状のハウジング110を有し、このハウジング110の中にモニタ用の光学部品として、たとえば光反射体112および光学レンズ114を配置している。
【0043】
光反射体112は、たとえばアルミニウムからなり、図示のようにハウジング110内にて終端する光ファイバ106の端面と対向して斜め下向きに約45°の傾斜面を有している。光ファイバ106から水平に出射されるモニタ光LBは、正面の光反射体112にて垂直下方に反射し、光導波路104を通って直下の半導体ウエハWに入射するようになっている。一方で、モニタ光LBが照射された半導体ウエハWから垂直上方に出る反射光HBは、光導波路104を通って光反射板112に当たり、光反射体112から水平方向に反射して光ファイバ106に入射するようになっている。
【0044】
光学レンズ114は、光ファイバ106から出射されるモニタ光LBを光反射体112に向けて一定の拡がり角にて放射し、光反射体112からの反射光HBを集光して光ファイバ106に取り込むようになっている。光学レンズ114は、図示のように光ファイバ106に先端に一体に取り付けられていてもよく、あるいは光ファイバ106から分離して所定位置に配置されてもよい。
【0045】
光ファイバ106は、たとえば2芯のFO(Fan-out)ケーブルからなり、モニタ光LBを伝送する内側の往路ケーブル106aと反射光HBを伝送する外側の復路ケーブル106bとを一体に束ねている。モニタ光LBは内側の往路ケーブル106aの端面から出射し、反射光HBは外側の復路ケーブル106bの端面に入射されるようになっている。光ファイバ106は、ハウジング110に気密に取り付けられた導体たとえばアルミニウムからなるスリーブ116の中に収められることによってモニタヘッド102と接続されている。
【0046】
モニタヘッド102の内部は、上記のように導体からなるハウジング110および光ファイバスリーブ116によって外部から電磁的に遮蔽されている。これよって、誘電体板56あるいはラジアルラインスロットアンテナ55から光導波路104を通ってマイクロ波がモニタヘッド102内に入って来たとしても、モニタヘッド102の外に漏れるようなことはない。
【0047】
さらに、モニタヘッド102の室内空間は、大気空間から遮断され、ハウジング110の上面に設けられたパージガス供給口118から導入されるパージガスたとえば窒素(N2)ガスによって常時パージングされるようになっている。ここで、パージガス供給口118は、ガス供給管120を介してパージガス供給源122に接続されている。
【0048】
この実施形態では、モニタヘッド102内のパージングを十全に行うために、モニタヘッド102の底部には導体たとえばアルミニウムからなる肉厚のベース板124が気密に設けられている。このベース板124には、光導波路104の通る位置にカバープレート72の貫通孔72aと連続する貫通孔118aが形成されるとともに、カバープレート72の排気流路72bと連続する排気流路124bが形成されている。排気流路124bの出口は、排気管126を介してたとえば排気ファンからなる排気部128に接続されている。カバープレート72内では、光導波路104構成する貫通孔72aと排気流路72bとが下端に設けられた連通路72cを介して繋がっている。
【0049】
パージガス供給口118からハウジング110内に供給されたパージガス(N2ガス)は、ハウジング110内に充満してから、ベース板124の貫通孔124a→カバープレート72の貫通孔72a→連通路72c→排気流路72b→ベース板124の排気流路124bの密閉空間を流れて、外の排気部128へ排出されるようになっている。
【0050】
この実施形態における光モニタ装置100は、半導体ウエハWの被加工膜の膜厚をモニタリングするためのモニタ光LBとして、単一波長のコヒーレントなレーザ光ではなく、たとえば185nm〜785nmのワイドレンジな多波長を含む非コヒーレントなランプ光を使用する。ここで、モニタ光LBに含まれる短波長(特に200nm以下)は、酸素に吸収されやすいため、大気中に晒されたならば著しく減衰する。
【0051】
この実施形態では、上記のように、モニタヘッド102内の空間、さらにはモニタリング用の光導波路104の空間がパージガス(N2ガス)によって常時パージングされているので、光ファイバ106から出た後のモニタ光LB、さらには光ファイバ106に取り込まれる前の反射光HBは、大気に触れることはなく、減衰し難くなっている。このことによって、光モニタ装置100はモニタ精度を向上させている。
【0052】
また、光モニタ装置100のモニタ精度とラジアルラインスロットアンテナ55の電磁波放射特性の均一性とを両立させるうえで、スロット板54においてモニタリング用の光導波路104が通過する箇所または領域54cにメッシュ状の透孔MHを形成している構成も非常に重要である。
【0053】
図3Aに示すように、スロット板54の光導波路通過領域54c(メッシュ)内には、一定形状および一定サイズの透孔MHが一定の密度にて分布している。モニタ精度を上げるうえで、メッシュ54cの開口率は大きいほどよく、70%以上が好ましい。ここで、メッシュ54cの開口率を大きくするには、透孔MHの開口形状を円形よりも多角形とするのが好ましく、正六角形つまりハニカム構造が最も好ましい。
【0054】
ハニカム構造によれば、たとえば、透孔MHの一辺の長さをj(mm)、対辺の長さをk(mm)とすると、j=1.0mm、k=1.73mmでは開口率が76.3%であり、j=0.8mm、k=1.39mmでは開口率が71.8%である。しかし、j=0.5mm、k=0.89mmにすると、開口率は60.3%に下がる。
【0055】
このように、スロット板54の光導波路通過領域(メッシュ)54cにおいては、透孔MHの寸法が大きいほど、大きな開口率が得られる。しかし、マイクロ波のメッシュからの漏れを少なくするには、透孔MHの開口寸法には上限がある。一般に、透孔MHの開口寸法が誘電体窓内の波長の1/10以下であると、マイクロ波の漏れが著しく少なくなる。たとえば、誘電体窓52の材質に石英板を用いる場合は、石英内のマイクロ波(2.45GHz)の波長は61mmであるから、透孔MHの開口寸法は6mm以下が望ましい。
【0056】
なお、マイクロ波を放射するためのスロットペア54a,54bの開口寸法は、たとえば長辺が36mm、短辺が6mmである。
【0057】
この実施形態では、光導波路通過領域(メッシュ)54cがマイクロ波伝送線路58の同軸管66から分離独立している。このため、光導波路通過領域(メッシュ)54cの口径は、ラジアルラインスロットアンテナ55の電磁波放射特性の均一性に影響を与えない範囲内において任意のサイズに選ぶことが可能であり、通常は10mm〜20mm程度に選ばれてよい。
【0058】
この実施形態においては、メッシュ状透孔MHに付随する更なる特徴として、光導波路通過領域54c内にて相隣接する透孔MHを隔てる格子部分または遮光部TDの上面を図3Bに示すように丸まった凸面に形成している。このように、遮光部TDの上面が凸面に丸まっていると、真上からそこに入射したモニタ光LBは垂直上方にではなく斜めに反射されるため、遮光部TDからモニタヘッド102へ戻ってSN比低下の原因となる迷光を少なくすることができる。このことも、光モニタ装置100のモニタ精度を上げるのに大いに寄与する。
【0059】
図4に、この実施形態においてスロット板54に上記のようなメッシュ状透孔MHを作成するための好適な方法を示す。なお、スロット板54の材質は、良好な電気伝導度を確保するために表面に金メッキを施した導体たとえば銅や鉄−ニッケル合金が好ましい。特に鉄−ニッケル合金は、線膨張率が低いためスロット板の変位を抑制することができる。
【0060】
先ず、図4の(a),(b)に示すように、スロット板54上に設定された光導波路通過領域54cに、たとえばパンチング加工によってメッシュ状の透孔MHを形成する。この段階では、まだ光導波路通過領域54cの格子部分が平坦面になっている。次に、スロット板54の光導波路通過領域54cをエッチング液に浸けると、図4の(c)に示すように、各透孔MHの縁部の角から丸く削られ、さらには格子部分の上面全体が丸く削られて凸面になる。エッチング液には、たとえば酸化剤、無機塩および塩素イオンを含む薬液を使用してよい。なお、光導波路通過領域54cの裏面(下面)においても、格子部分または遮光部の表面を凸面に丸めてよいが、そうでなくても(平坦面であっても)特段の不都合はない。
【0061】
この実施形態における光モニタ装置100は、上記のように、モニタリング用の光導波路104を通過させるために、導体のスロット板54にメッシュ状の透孔MHを形成しているので、マイクロ波はメッシュ状透孔MHの部位をスロットペア54a,54bを除く他のスロット板部位と同様にラジアル方向に(外へ漏れることなく)スムースに伝搬する。これにより、ラジアルラインスロットアンテナ55の電磁波放射特性の均一性(ひいてはプラズマ密度の均一性)に影響を与えずに、非コヒーレントなワイドレンジ(多波長)のモニタ光を伝搬させるのに適したモニタリング用の光導波路104を構築することができる。スロット板54上における光導波路通過領域(メッシュ)54cの位置設定の自由度は大きく、基本的には、同軸管66の径方向外側であってスロットペア54a,54bと干渉しない任意の位置に導波路通過領域(メッシュ)54cを設けることができる。
【0062】
さらに、この光モニタ装置100は、上記のように、誘電体窓52および誘電体板56においてモニタリング用の光導波路104が通過する部分52a,56aを短波長の光(特に紫外線)に対して透過率の高い合成石英で構成しているので、たとえば185nm〜785nmのワイドレンジな多波長を含む非コヒーレントなモニタ光LBおよび反射光HBを用いる膜厚モニタリングの精度を一層向上させている。
【0063】
図5に、合成石英と溶融石英の光透過率の波長依存性を示す。図示のように、溶融石英の光透過率は、270nm以上の波長領域では90%以上であるが、波長が270nmより短いと低下し、特に200nmより短くなると著しく(50%以下に)低下する。これに対して、合成石英の光透過率は、モニタ光LBおよび反射光HBの全波長領域(185nm〜785nm)に亘って85%〜92%の範囲内に収まっており、均質性が高くて安定している。
【0064】
合成石英の難点は価格が高いことである。しかし、この実施形態では、モニタリング用の光導波路104が通過する部分52a,56aに限って局所的に合成石英を使用する。特に、大きな厚み(体積)を有する誘電体窓52は、光導波路104の領域52aを除いた残りの大部分52bを安価な溶融石英にて構成するので、コスト高になることはない。誘電体板56においても同様である。
【0065】
なお、誘電体窓52においては、溶融石英部分52bと合成石英部分52aとの境界はたとえば溶着により真空封止されてよい。誘電体板56においては、真空封止する必要性はないので、モニタリング用の光導波路104を通すために溶融石英の板体56bに形成した円形の孔に、光導波路104の口径を有する合成石英の小円板56aを嵌め込むだけでもよい。
【0066】
図6に、モニタ本体108内の構成例を示す。この実施形態における光モニタ装置100は、半導体ウエハW表面の被加工膜の膜厚をin-situでモニタリングするために、モニタ本体108内に光源130、受光部132およびモニタ回路134を備えている。
【0067】
光源130は、たとえばハロゲンランプまたはキセノンランプを有し、少なくとも185nm〜785nm領域の多波長のモニタ光LBを発生する。光源130は、図示しない光学レンズを介して光ファイバ106の往路ケーブル106aに光学的に結合されており、制御部94からの制御信号RSaにしたがってオン(点灯)/オフ(消灯)する。
【0068】
受光部132は、たとえばフォトダイオード等の光電変換素子を有し、光ファイバ106の復路ケーブル106bを介して送られてきた半導体ウエハW表面からの反射光HBを185nm〜785nm領域内の多数のスペクトラムに分解して、各スペクトラム毎に反射光強度つまり反射率を表わす電気信号(反射率信号SHB)を生成する。
【0069】
モニタ回路134は、リファレンス設定部136、比較判定部138およびモニタ出力部140を有している。リファレンス設定部136は、制御部94から与えられる各種設定値RSbに含まれるモニタリング用の基準値またはリファレンスデータRHBを比較判定部138に与える。膜厚モニタリングの場合、リファレンスデータRHBは、受光部132から得られるスペクトラム反射率信号SHBの有する所定の属性について設定値または基準値を与える。
【0070】
比較判定部138は、受光部132から受け取るスペクトラム反射率信号SHBをリファレンスデータRHBと比較(照合)し、両者SHB,RHBの間にて所定の属性の値または特性が一致または近似したときに、半導体ウエハW表面の被加工膜の膜厚が設定値に達した(あるいは先読みし所定時間後に設定値に達する)ことを示すモニタ情報またはモニタ結果を出力する。すると、モニタ出力部140からその旨のモニタ信号MSが出力され、このモニタ信号MSに応答して制御部94(図1)がエッチングプロセスの停止または切換を行うようになっている。
【0071】
この実施形態における光モニタ装置100の膜厚モニタリング機能を好適に適用できるエッチングプロセスの一例として、たとえばMOSトランジスタの製造工程の中においてLDD(Lightly Doped Drain)構造や極浅接合構造のため側壁を形成するためのエッチバック工程がある。
【0072】
図7に、この実施形態におけるエッチバック工程の手順を示す。なお、エッチバックに先立って、図7の(a)に示すように、半導体ウエハWの表面にはCVD(Chemical Vapor Deposition)法によるSiO2膜142が形成されている。ここで、ゲート電極146の下層の薄膜144は、ゲート絶縁膜であり、たとえば、5nm程度の膜厚を有する熱酸化膜(SiO2膜)である。ゲート電極146の両側の基板表面には不純物のイオンが注入されている。
【0073】
この実施形態における側壁形成のためのエッチバック工程は、図7の(b)に示すようにゲート電極146の上およびその両側の側壁部分を除いたSiO2膜142の残膜の膜厚が設定値THsになるまで全面エッチングする第1のエッチング工程と、図7の(c)に示すようにゲート電極146の両側に側壁142wを残してSiO2膜142の残膜を完全に除去するまで全面エッチングする第2のエッチング工程とからなる。
【0074】
第1のエッチング工程では、たとえば次のようなレシピにより異方性の強いエッチングを行う。
エッチングガス: Ar/O2/CH22=1000/2/5sccm
チャンバ内の圧力: 20mTorr
マイクロ波パワー: 2000W
バイアス用高周波電力: 120W
【0075】
第2のエッチング工程では、たとえば次のようなレシピにより異方性の弱いエッチングを行う。
エッチングガス: Ar/CH22=360/20sccm
チャンバ内の圧力: 100mTorr
マイクロ波パワー: 2000W
バイアス用高周波電力: 75W
【0076】
上記のようなエッチバック工程において、図8Aに示すようなリセス、あるいは図8Bに示すようなフッティングを起こさずに、図7の(c)に示すような理想的な側壁構造を作成するためには、上記膜厚設定値THsは基板が露出するぎりぎり手前の小さな寸法に選ばれるのが好ましく、たとえば1nmに選ばれる。
【0077】
この実施形態のマイクロ波プラズマエッチング装置は、上記のような2段階エッチバックのプロセスを行う場合に、第1のエッチング工程においてSiO2膜142の膜厚が設定値THsに達するタイミングを光モニタ装置100の膜厚モニタリング機能によって検出または推定し、このタイミングで第1のエッチング工程を停止し、次いで第2のエッチング工程を開始するようにしている。
【0078】
この場合、光モニタ装置100は、第1のエッチング工程が行われている最中に、光源130をオンにして、モニタ光LBをモニタヘッド102、光導波路104を介してサセプタ12上の半導体ウエハWの表面に照射する。そして、光導波路104およびモニタヘッド102を介して取り込まれる半導体ウエハW表面からの反射光HBを受光部132を用い光電変換し、さらにモニタ回路134の信号処理にかけることにより、半導体ウエハW表面のSiO2膜142の膜厚がエッチングプロセスの時間経過とともに減少していく様子をリアルタイムでモニタすることができる。
【0079】
図9に、光モニタ装置100において、半導体ウエハW表面のSiO2膜に185nm〜785nm領域のモニタ光LBを照射し、それによって得られる反射光HBのスペクトラム反射率の波長依存特性がSiO2膜の膜厚に応じて変化する特性を示す。
【0080】
図示のように、SiO2膜の場合は、概して膜厚が薄くなるほど全波長領域で反射率が低くなり、特に200nm以下の短波長領域では膜厚依存特性の差が顕著になる。したがって、たとえば200nm付近の限られた波長領域の反射率特性に基づいて、あるいは広範囲な全波長領域(185nm〜785nm)の反射率特性のプロファイル(波形)に基づいて、SiO2膜142の膜厚が設定値THs(1nm)になるタイミングを検出または推定することができる。
【0081】
この実施形態における反射率の波長依存特性(図9)は、ゲート電極146の側壁を除いてSiO2膜142が完全に除去されている状態つまり基板(下地)が露出している状態(図7の(c))と等価な状態)で得られるときの反射率を正規化の基準値(1.00)にしている。このように、エッチング対象の薄膜が完全に除去されているときの下地にて得られる反射率を基準値にすることで、1nm程度の非常に薄い膜厚でも高精度にモニタリングすることができる。
【0082】
なお、上記2段階のエッチバック工程において、第2のエッチング工程を停止させるタイミング(終点検出)は、たとえばタイマ機能を利用してもよく、あるいはプラズマ光を分光して検出する公知の手法(発光モニタ)を用いることができる。その場合、光学モニタ装置100の光導波路104を発光モニタ用の窓に利用することも可能である。このように、この実施形態における光学モニタ装置100は、様々な形態の膜厚モニタリングあるいは他の光学的モニタリングに利用可能である。
【0083】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限るものではなく、その技術的思想の範囲内で他の実施形態または種種の変形が可能である。
【0084】
たとえば、図10に示すように、マイクロ波伝送線路58を構成する同軸管66の内部導体68を中空管に構成し、この中空管68を処理ガス供給部80の中心ガス供給路に用いることも可能である。この場合、中空管68と連続するように、ラジアルラインスロットアンテナ55の中心を貫通するガス吐出口150を設ける。ラジアルラインスロットアンテナ55の中心はラジアル導波路の中心であり、この場所にガス吐出用の貫通孔150を形成しても、ラジアルラインスロットアンテナ55の電磁波放射特性の均一性に影響を与えることがなく、しかも光学モニタ装置100との抵触または相反関係は一切ない。
【0085】
この構成例の処理ガス供給部80においては、処理ガス供給源82から送出される処理ガスの一部は、上記のようにガス供給管88を通ってチャンバ10側壁のガス吐出孔86からチャンバ10内に導入される。また、処理ガス供給源82から送出される処理ガスの他の一部は、ガス供給管152および同軸管66の内部導体68を通って天井中心部のガス吐出孔150からチャンバ10内に導入される。なお、ガス供給管152の途中にはMFC(マス・フロー・コントローラ)154および開閉弁156が設けられている。
【0086】
光学モニタ装置100を構成する各部においても種種の変形が可能である。たとえば、図11に示すように、ラジアルラインスロットアンテナ55周りに設けるモニタリング用の光導波路104を往路用(モニタ光LB専用)の光導波路104Lと復路(反射光HB専用)の光導波路104Rとに分割する構成も可能である。この場合、誘電体窓52、スロット板54、誘電体板56およびカバープレート72において、往路用(モニタ光LB専用)の光導波路104Lが通過する位置または部位と復路(反射光HB専用)の光導波路104Rが通過する位置または部位とに、合成石英52a、メッシュ状透孔MH、合成石英56a、貫通孔72aがそれぞれ個別に設けられる。
【0087】
また、モニタヘッド102においては、往路用(モニタ光LB専用)の光導波路104Lに対して光学系(112L,114L)およびハウジング110Lが個別に宛がわれ、復路(反射光HB専用)の光導波路104Rに対して光学系(112R,114R)およびハウジング110Rが個別に宛がわれる。
【0088】
光ファイバ106は、往路ケーブル106aが往路側のハウジング110Lに導体スリーブ116Lを介して取り付けられ、復路ケーブル106bが復路側のハウジング110Rに導体スリーブ116Rを介して結合される。また、ハウジング110L,110Rには、共通のパージガス供給源122から別々のガス供給管120L,120Rおよびガス導入口118L,118Rを介してパージガスが供給される。
【0089】
なお、往路用(モニタ光LB専用)の光導波路104Lと復路(反射光HB専用)の光導波路104Rとは、鉛直線に対して幾らか斜めに傾いたV字状に形成されていてもよく、ハウジング110L,110Rが互いに分離していてもよい。
【0090】
また、モニタヘッド102とモニタ本体108との間では、光ファイバ106を省いて、ミラー等の他の光伝送系を用いることも可能である。
【0091】
上記実施形態のマイクロ波プラズマ処理装置におけるマイクロ波放電機構の構成、特にマイクロ波伝送線路58およびラジアルラインスロットアンテナ55は一例であり、他の方式または形態のマイクロ波伝送線路およびスロットアンテナも使用可能である。
【0092】
上記実施形態では、誘電体窓52において、モニタリング用の光導波路104を通過させる部分52aに短波長(特に200nm以下)に対して光透過率の高い合成石英を用いた。しかし、モニタ光LBがそのような短波長を含まない場合は、その光導波路通過部分52aに溶融石英あるいは他の透明誘電体を用いてもよい。また、誘電体窓52において、光導波路通過部分52aを除いた部分には、アルミナ等の非透明な誘電体を用いてもよい。
【0093】
上記実施形態におけるマイクロ波プラズマエッチング装置は、無磁場でマイクロ波プラズマを生成するので、チャンバ10の周りに永久磁石や電子コイル等の磁界形成機構を設ける必要がなく、そのぶん簡易な装置構成となっている。もっとも、本発明は、電子サイクロトロン共鳴(ECR:Electron Cyclotron Resonance)を利用するプラズマ処理装置にも適用可能である。
【0094】
本発明は、上記実施形態におけるマイクロ波プラズマエッチング装置に限定されるものではなく、プラズマCVD、プラズマALD、プラズマ酸化、プラズマ窒化、プラズマドーピング、スパッタリング等の他のマイクロ波プラズマ処理装置にも適用可能である。また、本発明における被処理基板は半導体ウエハに限るものではなく、フラットパネルディスプレイ用の各種基板や、フォトマスク、CD基板、プリント基板等も可能である。
【符号の説明】
【0095】
10 チャンバ
12 サセプタ(下部電極)
26 排気装置
30 (RFバイアス用)高周波電源
52 誘電体窓(天板)
52a 合成石英(光導波路通過部分)
54 スロット板
54a,54b スロットペア
54c 光導波路通過領域(メッシュ)
MH メッシュ状透孔
55 ラジアルラインスロットアンテナ(RLSA)
56 誘電体板
58 マイクロ波伝送線路
60 マイクロ波発生器
66 同軸管
72 カバープレート
72a 貫通孔(光導波路通過部分)
80 処理ガス供給部
94 制御部
100 光学モニタ装置
102 モニタヘッド
108 モニタ本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部に誘電体窓を備えた真空排気可能な処理容器と、
前記処理容器内で被処理基板を保持する基板保持部と、
前記基板に所望のプラズマ処理を施すために、前記処理容器内に所望の処理ガスを供給する処理ガス供給部と、
前記処理容器内にマイクロ波を放射するための1つまたは複数のスロットを有し、前記誘電体窓の上に設けられる導体のスロット板と、
マイクロ波放電による前記処理ガスのプラズマを生成するために、前記スロット板および前記誘電体窓を介して前記処理容器内にマイクロ波を供給するマイクロ波供給部と、
前記スロット板に形成されたメッシュ状の透孔と前記誘電体窓とを介して前記処理容器内の前記基板の表面を光学的に監視または計測する光学モニタ部と
を有するプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記スロット板の前記メッシュ状透孔が分布する領域は、前記スロットと干渉しない位置に設けられる、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記光学モニタ部は、
モニタ光を発生する光源と、
前記モニタ光に対する前記基板からの反射光を電気信号に変換するための受光部と、
前記受光部からの電気信号を所定の信号処理にかけてモニタ情報またはモニタ結果を出力するモニタ回路と、
前記モニタ光を前記スロット板のメッシュ状透孔および前記誘電体窓を介して前記基板保持部上の前記基板の表面に照射し、前記基板の表面からの反射光を前記誘電体窓および前記メッシュ状透孔を介して取り込むモニタヘッドと、
前記光源から前記モニタヘッドまで前記モニタ光を伝送するためのモニタ光伝送部と、
前記モニタヘッドから前記受光部まで前記反射光を伝送するための反射光伝送部と
を有する、請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記光学モニタ装置は、前記基板表面の被加工膜の膜厚を監視または計測する、請求項3に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記モニタ光は、200nm以下の波長を含む、請求項3または4に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
前記モニタ光は、185nm〜785nm帯域の波長を含む、請求項5に記載のプラズマ処理装置。
【請求項7】
前記モニタヘッドは、
前記スロット板の上方に配置された密閉可能な導体からなるハウジングと、
前記ハウジング内で前記モニタ光または前記反射光が通る位置に配置されている所定の光学部品と、
前記ハウジング内にパージングガスを供給するパージングガス供給部と、
前記ハウジング内を排気する排気部と
を有する、請求項3〜6のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項8】
前記モニタヘッドと前記誘電窓の間には、前記マイクロ波供給部からのマイクロ波を径方向に伝搬させながらその波長を短くするための誘電体板と前記誘電体板の上方にカバープレートが設けられ、
前記カバープレートにおいて、前記スロット板の前記メッシュ状透孔が分布する領域と重なる位置に、前記モニタヘッドの前記ハウジングと連通する貫通孔が形成されている、
請求項7に記載のプラズマ処理装置。
【請求項9】
前記パージングガス供給部より前記ハウジング内に供給されたパージングガスは、前記カバープレートの貫通孔を通って前記排気部へ送られる、請求項8に記載のプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記スロット板の前記メッシュ状透孔が分布する領域の遮光部の上面が丸められている、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項11】
前記メッシュ状透孔の遮光部の上面はウエットエッチングによって丸められている、請求項10に記載のプラズマ処理装置。
【請求項12】
前記スロット板の前記メッシュ状透孔が分布する領域の開口率は70%以上である、請求項1〜11のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項13】
前記メッシュ状透孔は多角形の開口形状を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項14】
前記メッシュ状透孔はハニカム構造を有する、請求項13に記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】
前記スロット板は、ラジアルラインスロットアンテナを構成する、請求項1〜14のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項16】
前記誘電体窓において、前記スロット板の前記メッシュ状透孔が分布する領域と重なる部分は少なくとも合成石英からなる、請求項1〜15のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項17】
前記誘電体窓において、前記スロット板の前記メッシュ状透孔が分布する領域と重ならない部分は溶融石英からなる、請求項17に記載のプラズマ処理装置。
【請求項18】
前記誘電体板において、前記スロット板の前記メッシュ状透孔が分布する領域と重なる部分は少なくとも合成石英からなる、請求項8〜17のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項19】
少なくとも一部に誘電体窓を備えた真空排気可能な処理容器内に被処理基板を収容し、前記処理容器内に処理ガスを供給するとともに、前記誘電体窓の上に設けられた1つまたは複数のスロットを有する導体のスロット板と前記誘電体窓とを介してマイクロ波を前記処理容器内に供給して、マイクロ波放電による前記処理ガスのプラズマを生成し、前記プラズマの下で前記基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、前記基板の表面を光学的に監視または測定するための光学モニタ装置であって、
モニタ光を発生する光源と、
前記モニタ光に対する前記基板からの反射光を電気信号に変換するための受光部と、
前記受光部からの電気信号を所定の信号処理にかけてモニタ情報またはモニタ結果を出力するモニタ回路と、
前記モニタ光と前記基板の表面からの反射光とを通すために前記スロット板に形成されたメッシュ状の透孔と、
前記モニタ光を前記スロット板のメッシュ状透孔および前記誘電体窓を介して前記基板保持部上の前記基板の表面に照射し、前記基板の表面からの反射光を前記誘電体窓および前記スロット板のメッシュ状透孔を介して取り込むモニタヘッドと、
前記光源から前記モニタヘッドまで前記モニタ光を伝送するためのモニタ光伝送部と、
前記モニタヘッドから前記受光部まで前記反射光を伝送するための反射光伝送部と
を有する光学モニタ装置。
【請求項20】
前記スロット板には、前記モニタ光を通すための第1のメッシュ状透孔と、前記基板の表面からの反射光を通すための第2のメッシュ状透孔とが形成され、
前記モニタヘッドは、前記モニタ光を前記スロット板の前記第1のメッシュ状透孔および前記誘電体窓を介して前記基板保持部上の前記基板の表面に照射し、前記基板の表面からの反射光を前記誘電体窓および前記スロット板の前記第2のメッシュ状透孔を介して取り込む、
請求項19に記載の光学モニタ装置。
【請求項21】
前記モニタヘッドは、
密閉可能な導体からなるハウジングと、
前記ハウジング内で前記モニタ光または前記反射光が通過する位置に配置されている光学部品と、
前記ハウジング内にパージングガスを供給するパージングガス供給部と、
前記ハウジング内を排気する排気部と
を有する、請求項19または請求項20に記載の光学モニタ装置。
【請求項22】
少なくとも一部に誘電体窓を備えた真空排気可能な処理容器内に被処理基板を収容し、前記処理容器内に処理ガスを供給するとともに、前記処理容器内にエネルギーを供給して、前記エネルギーを用いて前記処理ガスのプラズマを生成し、前記プラズマの下で光学モニタ装置から得られた信号に基づき前記基板に所望のプラズマ処理を施すプラズマ処理装置であって、
前記光学モニタ装置は、
モニタ光を発生する光源と、
前記モニタ光に対する前記基板からの反射光を電気信号に変換するための受光部と、
前記受光部からの電気信号を所定の信号処理にかけてモニタ情報またはモニタ結果を出力するモニタ回路と、
前記モニタ光を前記基板保持部上の前記基板の表面に照射し、前記基板の表面からの反射光を取り込むモニタヘッドと、
前記光源から前記モニタヘッドまで前記モニタ光を伝送するためのモニタ光伝送部と、
前記モニタヘッドから前記受光部まで前記反射光を伝送するための反射光伝送部と
を有し、
前記モニタヘッドは、
前記処理容器に配置された密閉可能なハウジングと、
前記ハウジング内にパージングガスを供給するパージングガス供給部と、
前記ハウジング内を排気する排気部と
を有する
プラズマ処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図3A】
image rotate


【公開番号】特開2012−49299(P2012−49299A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189435(P2010−189435)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】