説明

プラズマ処理装置

【課題】プラズマによる劣化を回避しつつ点火機構を簡略化する。
【解決手段】一方の端部が閉塞板11bで閉塞され、かつ他方の端部が開放端に形成された筒状の筐体11と、閉塞板11bの内面に筐体11の筒長方向に沿って延出するように立設されると共に入力した高周波信号S1を放射する棒状の放射器14とを備え、閉塞板11b側から開放端側に向かう気流を筐体11内に発生させるように筐体11内にガス供給部4によって放電用ガスGが供給され、かつ放射器14が高周波信号S1を放射している状態において、放射器14の先端近傍から気流に乗って筐体11の外方へ伸びるプラズマPを発生させるプラズマ処理装置1であって、放射器14との間で放電Dを発生させてプラズマPを点火する点火導体5aを有する点火機構5を備え、放電電極としての点火導体5aの先端は、放射器14の先端よりも気流の上流側に配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の端部が閉塞板で閉塞された筒状の筐体、および閉塞板の内面に筐体の筒長方向に沿って延出するように立設された放射導体を備えて、放射導体の先端近傍にプラズマを発生させるプラズマ処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のプラズマ処理装置として、本願出願人は、下記特許文献1に開示されたプラズマ処理装置を既に提案している。このプラズマ処理装置は、プラズマ処理室、ガス供給部、高周波電源、着火機構(点火機構)、移動機構および制御部を備えている。この場合、着火機構は、導体棒、電圧生成装置および移動機構を備えている。導体棒は、その一端側が移動機構に取り付けられて、プラズマを着火させる着火処理時には、その他端側が絶縁管の筒先(着火処理位置)に位置させられると共に、着火処理の完了後には、処理対象体に対するプラズマの照射の妨げとなることのない待避位置に待避させられる。また、この待避により、導体棒の先端部分がプラズマとの接触によって劣化する事態についても防止されている。電圧生成装置は、制御部の制御に従い、一例として、10kV程度の直流電圧を生成して導体棒に印加する。移動機構は、制御部の制御に従い、上記したように、導体棒を着火処理位置および待避位置のいずれかに移動させる。
【0003】
このプラズマ処理装置では、高周波電源において生成された高周波信号をプラズマ処理室に同軸ケーブルを介して供給すると共に着火機構を制御することにより、プラズマ処理室内(絶縁管等の内部)にプラズマを発生させて載置台上の処理対象体の表面をプラズマ処理するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−56002号公報(第4−7頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、発明者は、上記した従来のプラズマ処理装置について鋭意研究した結果、このプラズマ処理装置には以下の改善すべき点が存在していることを見出した。すなわち、このプラズマ処理装置では、着火機構(点火機構)は、導体棒、電圧生成装置および移動機構を備え、移動機構によって導体棒を着火処理位置と待避位置との間で移動させるように構成されている。したがって、このプラズマ処理装置には、移動機構を備えているために着火機構が複雑化するという改善すべき点が存在している。また、これにより、プラズマ処理装置を小型化するのが困難であるという改善すべき点も存在している。
【0006】
本発明は、かかる点を改善すべくなされたものであり、プラズマによる劣化を回避しつつ点火機構を簡略化し得るプラズマ処理装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく請求項1記載のプラズマ処理装置は、一方の端部が閉塞板で閉塞され、かつ他方の端部が開放端に形成された筒状の筐体と、前記閉塞板の内面に前記筐体の筒長方向に沿って延出するように立設されると共に入力した高周波信号を放射する棒状の放射導体とを備え、前記閉塞板側から前記開放端側に向かう気流を前記筐体内に発生させるように当該筐体内にガス供給部によって前記プラズマ放電用ガスが供給され、かつ前記放射導体が前記高周波信号を放射している状態において、当該放射導体の先端近傍から前記気流に乗って前記筐体の外方へ伸びるプラズマを発生させるプラズマ処理装置であって、前記放射導体との間で放電を発生させて前記プラズマを点火する放電電極を有する点火機構を備え、前記放電電極は、前記放射導体の前記先端よりも前記気流の上流側に配設されている。
【0008】
また、請求項2記載のプラズマ処理装置は、請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記点火機構は、前記筐体内に前記放射導体と略平行な状態で配設された棒状の点火導体を備え、当該点火導体における前記開口端側の先端が前記放電電極として機能する。
【0009】
また、請求項3記載のプラズマ処理装置は、請求項2記載のプラズマ処理装置において、前記プラズマが発生している状態における前記放射導体および前記点火導体の全体としての共振周波数が前記高周波信号の周波数と一致するように、当該放射導体の長さが規定されている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のプラズマ処理装置によれば、放射導体との間で放電を発生させてプラズマを点火する放電電極が放射導体の先端よりもプラズマ放電用ガスの気流における上流側に配設されて、プラズマとの接触が回避されているため、プラズマと接触することに起因して放電電極が劣化する事態の発生、および放電電極がプラズマの照射の妨げとなる事態の発生を確実に防止しつつ、筐体内に放電電極を固定的に配置する構成を採用することができ、これによって従来のプラズマ処理装置において必要とされていた放電電極(導体棒)の移動機構を省いて点火機構を簡略化することができる。また、このプラズマ処理装置によれば、点火機構を簡略化できるため、処理装置全体を小型化することもできる。
【0011】
請求項2記載のプラズマ処理装置によれば、先端が放電電極として機能する点火導体を放射導体と略平行な状態で筐体内に配設したことにより、閉塞板側から筐体の開放端に向かうプラズマ放電用ガスの気流が、放射導体および点火導体によって乱される事態を大幅に低減することができる。
【0012】
請求項3記載のプラズマ処理装置によれば、プラズマが発生している状態における放射導体および点火導体の全体としての共振周波数が高周波信号の周波数と一致するように放射導体の長さを規定したことにより、高周波信号が供給された状態において、放射導体を確実に共振モノポールとして作動させて、筐体の開口端側に位置する先端側で電圧を最大にすることができ、これにより、効率よくプラズマを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プラズマ処理装置1の構成図(筐体11については中心軸Xを含む平面に沿った断面図)である。
【図2】図1におけるW1−W1線断面図(同軸コネクタ12を除く断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、プラズマ処理装置の実施の形態について説明する。
【0015】
図1に示すプラズマ処理装置1は、プラズマ発生部2、高周波電源3、ガス供給部4、点火機構5およびテーブル6を備えている。また、このプラズマ処理装置1は、高周波電源3において生成された高周波信号S1をプラズマ発生部2に同軸ケーブル3aを介して供給することによってプラズマ発生部2内にプラズマPを発生させると共に、発生させたプラズマPをテーブル6に載置された処理対象体7に放射してその表面をプラズマ処理可能に構成されている。一例として、このプラズマ処理装置1は、樹脂などの有機材料で形成された部材(例えば、シート状や板状の部材)を処理対象体7として、その表面の殺菌処理、洗浄処理、および親水性の向上処理などを実行する。
【0016】
プラズマ発生部2は、一例として、図1に示すように、筐体11、同軸コネクタ12、給電導体13、および放射導体としての放射器(アンテナ)14を備えている。筐体11は、一例として、両端が開口する導電性の筒体11a、導電性の閉塞板11bおよび絶縁管11cを備え、筒体11aにおける一方の端部(同図中の上端部)がこの一方の端部に密着して配設された閉塞板11bによって閉塞されることにより、全体として、同図中の下端(筒体11aにおける他方の端部)側が開放端に形成されたトーチ型筐体に構成されている。また、筐体11には、グランド電位が付与されている。
【0017】
本例では、一例として、筒体11aは、図2に示すように、中心軸Xと直交する平面に沿った外周面の断面形状が四角形(つまり、外形が四角筒体)であるが、この平面に沿った内周面の断面形状が円形であるため、実質的には円筒体として機能する。また、筒体11aは、図1に示すように、その長さ(筒長。同図中の上下方向の長さ)が、閉塞板11bに立設された放射器14の長さL1よりも長く規定されて、放射器14の先端(同図中の下端)が筒体11aの開放端から突出しない構成となっている。また、筒体11aには、図1に示すように、一方の端部寄りの位置に、筐体11内に高周波信号S1を導入するための第1貫通孔21が形成されている。
【0018】
閉塞板11bには、プラズマ放電用ガスG(以下、「放電用ガスG」ともいう)を筒体11a内に供給する後述の配管4aを取り付けるための第2貫通孔22と、点火機構5を構成する後述の点火導体5aを取り付けるための第3貫通孔23とが形成されている。
【0019】
この場合、第2貫通孔22の位置は、図1,2に示すように、筒体11aの中心軸Xから外れた位置(具体的には、中心軸Xに配設された放射器14と干渉しない位置)に規定されている。また、第3貫通孔23の位置は、第3貫通孔23に貫通させられた点火導体5aが放射器14の近傍に位置するように、中心軸Xに近接する位置に規定されている。本例では一例として、第3貫通孔23の位置は、図2に示すように、中心軸Xと第2貫通孔22との間に規定されているが、これに限定されず、放射器14、第2貫通孔22および給電導体13と干渉しない任意の位置に規定することができる。
【0020】
絶縁管11cは、図1,2に示すように、断面形状が円形の筒体11aにおける内周面の形状に合わせて円筒体に形成されて、外周面が筒体11aの内周面に密着した状態で筒体11a内に配設されている。また、絶縁管11cは、図1に示すように、筒体11aの他方の端部から第2貫通孔22(の下方の縁部)に至るまでの筒長(同図中の上下方向に沿った長さ)に形成されている。絶縁管11cは、高周波信号S1の出力電力を高めたときに、放射器14から筐体11(の内周面)への不要な放電の発生を防止する。
【0021】
同軸コネクタ12は、図1に示すように、高周波電源3に接続された同軸ケーブル3aの先端に装着されている。また、同軸コネクタ12は、第1貫通孔21を閉塞するようにして筒体11aの外周面に取り付けられている。この場合、同軸コネクタ12の芯線12aは、第1貫通孔21内において、筒体11aと非接触な状態で位置している。
【0022】
給電導体13は、高導電性の線材を用いて、一例として、図1,2に示すように、棒状(ほぼ真っ直ぐな棒状)に形成されて、一端側が同軸コネクタ12の芯線12aに接続されると共に、他端側が放射器14の給電位置Aに接続されている。この場合、給電位置Aは、放射器14における閉塞板11bに固定された基端部から所定距離L2だけ離間した位置に規定されている。ここで、所定距離L2は、高周波信号S1の波長をλとしたときに、λ/10≧L2>0の範囲に規定するのが好ましい。これにより、放射器14と、これに接続される閉塞板11bおよび給電導体13とで逆F形のアンテナが構成されて、後述するように、プラズマ発生(点火)前後でのVSWRの変化を低減し得る構成となる。なお、所定距離L2がλ/10を超える構成では、後述するようにプラズマ発生前のVSWRが悪化し始める(つまり、プラズマの点火性が低下し始める)。このため、L2はλ/10以下とするのが好ましい。
【0023】
放射器14は、図1に示すように、導電性材料を用いて1本の棒状(柱状。本例では一例として円柱状)に形成されている。また、放射器14は、その一方の端部(同図中の上端)が閉塞板11bの内面に取り付けられる(導通状態を確保した状態で取り付けられる)ことにより、閉塞板11bの内面(筒体11aとの当接面)に筐体11の筒長方向に沿って延出する状態で(つまり、閉塞板11bに対して直角な状態で)立設されている。本例では、一例として、放射器14は、軸線が筒体11aの中心軸X上に位置した状態で立設されている。また、放射器14は、同軸コネクタ12および給電導体13を介して高周波電源3から入力された高周波信号S1を放射する。
【0024】
ところで、放射器14は、筐体11内に単独で配設されているときには、その長さL1は((1/4+n/2)×λ)に規定される。ここで、nは、0以上の整数であり、例えば、n=0としたときには、放射器14の長さL1は(λ/4。高周波信号S1の周波数が一例として2.45GHzであるため、122.45mm/4=30.6mm)に規定される。一方、このプラズマ処理装置1では、放射器14の近傍に点火導体5aを配設する構成を採用している。このため、放射器14の長さを規定する際に、点火導体5aの影響を考慮するのがより好ましい。具体的には、プラズマPが発生している状態における放射器14および点火導体5aの全体としての共振周波数が、高周波信号S1の周波数と一致するように、放射器14の長さを規定するのが好ましい。
【0025】
高周波電源3は、準マイクロ波帯(1GHz〜3GHz)またはマイクロ波帯(3GHz〜30GHz)の高周波信号(一例として、2.45GHz程度の準マイクロ波)S1を所定の電力で生成すると共に、同軸ケーブル3aを介してプラズマ発生部2に出力する高周波信号生成部として機能する。なお、本例では、高周波電源3が、準マイクロ波を高周波信号S1として出力する構成を採用しているが、マイクロ波を高周波信号S1として出力する構成を採用することもできる。また、高周波電源3からプラズマ発生部2に対する高周波信号S1の供給効率を高めるため、高周波電源3とプラズマ発生部2との間に整合器を配設することもできる。
【0026】
ガス供給部4は、配管4aを介してプラズマ発生部2に連結されている。具体的には、配管4aは、一方の端部(プラズマ発生部2側の端部)が筐体11の閉塞板11bに形成された第2貫通孔22に挿入されて固定され、他方の端部(ガス供給部4側の端部)がガス供給部4に連結されている。この構成により、ガス供給部4は、図1に示すように、プラズマ発生部2の筐体11内に配管4aを介して放電用ガスGを供給する。また、このようにして閉塞板11b側から筐体11内に放電用ガスGが供給されるため、筐体11内には、閉塞板11b側から開放端としての筐体11の他方の端部(図1中の下端部)に向かう放電用ガスGの気流が発生する。また、放電用ガスGとしては、通常は、電離電圧が低くプラズマが発生し易いガス(例えば、アルゴンガスやヘリウムガスなど)が使用されるが、大気圧下で反応性の高いガス(例えば、窒素ガスや酸素ガス、また空気)が使用される場合もある。なお、ガス供給部4は、本発明におけるプラズマ処理装置にとって必須の構成ではなく、プラズマ処理装置に配管4aを介して放電用ガスGが供給される構成であればよい。
【0027】
点火機構5は、点火導体5a、絶縁管5bおよび高圧電源5cを備えている。点火導体5aは、図1に示すように、絶縁管5b内に装着された状態で、筐体11の閉塞板11bに形成された第3貫通孔23に挿入されて固定されている。この固定された状態では、点火導体5aは、絶縁管5bによって閉塞板11bと電気的に絶縁された状態が維持されると共に、閉塞板11bにおける放射器14に近接する位置から放射器14と略平行(完全な平行であっても良い。)に突出した状態となっている。また、点火導体5aは、本例では、放電電極として機能する先端(同図中の下端)が絶縁管5bの端部から露出した状態となっている。さらに、点火導体5aは、この先端が放射器14の先端よりも放電用ガスGの気流の上流側(放射器14の先端よりも閉塞板11b側)に位置するように、閉塞板11bからの突出長が規定されて配設されている。
【0028】
高圧電源5cは、直流電圧Vを生成すると共に、生成した直流電圧Vを配線5dを介して点火導体5aに供給する。この構成により、点火機構5は、直流電圧Vが供給されている状態の点火導体5aの先端と、放射器14との間で放電Dを発生させて、プラズマPを点火させる。
【0029】
次に、プラズマ処理装置1の動作について説明する。なお、テーブル6上には処理対象体7が載置されているものとする。
【0030】
プラズマ処理装置1では、処理対象体7に対するプラズマ処理の実行に際して、まず、ガス供給部4から配管4aを介して筐体11内に放電用ガスGが供給される。これにより、筐体11内には、閉塞板11b側から筒体11aの開放端(筐体11の他方の端部)に向かう放電用ガスGの気流が発生する。この場合、放射器14および点火導体5aは放電用ガスGの気流の方向に沿って延出する状態で筐体11内にそれぞれ立設されている(点火導体5aが筒体11aの中心軸X上に配設された放射器14と略平行な状態で配設されている)ため、放射器14および点火導体5aによって放電用ガスGの気流が乱される事態が大幅に低減されている。
【0031】
次いで、この状態において、高周波電源3が高周波信号S1のプラズマ発生部2への出力を開始する。高周波電源3から出力された高周波信号S1は、同軸ケーブル3a、同軸コネクタ12および給電導体13を介して、放射器14にその給電位置Aから供給される。これにより、上記の長さL1に規定されている放射器14が、高周波信号S1によって共振する。共振状態の放射器14は共振モノポールとして作動して、筐体11の開口端側に位置する先端(図1中の下端)側で電圧が最大となる。
【0032】
続いて、点火機構5では、高圧電源5cが点火導体5aに直流電圧Vを一定時間(短時間)だけ出力する。これにより、点火導体5aの先端と放射器14(の外周面)との間に放電Dが発生する。この放電Dによって放射器14の近傍に大量に電子が発生するが、放射器14の先端では電圧が最大となっているため、この大量に発生した電子により、なだれ式に電離を連鎖させることができ、プラズマ点火が行われる。この場合、筐体11内は、プラズマPの発生が可能な放電用ガスGが存在しているため、プラズマPは、一旦点火された後は、放電Dの停止後も、グロー放電状態となることから、放射器14への高周波信号S1の供給のみで放射器14の先端に継続して発生する。
【0033】
また、上記したように筐体11内には、閉塞板11b側から筒体11aの開口端に向かう放電用ガスGの気流が発生しているため、このようにして放射器14の先端に発生したプラズマPは、図1に示すように、この気流に乗ってこの先端近傍から筐体11の外方へ伸びる状態で連続発生して、処理対象体7に放射される。これにより、プラズマ処理装置1による処理対象体7の表面処理が実行される。
【0034】
この処理の際に、プラズマPは、上記したように、放電用ガスGの気流に乗って放射器14の先端近傍から筐体11の外方へ伸びる状態で発生し、また放電電極としての点火導体5aの先端は放射器14の先端よりも放電用ガスGの気流の上流側に位置しているため、点火導体5aの先端とプラズマPとの接触が回避されている。
【0035】
このように、このプラズマ処理装置1によれば、放射器14との間で放電Dを発生させてプラズマPを点火する放電電極としての点火導体5aの先端が放射器14の先端よりも放電用ガスGの気流における上流側に配設されて、プラズマPとの接触が回避されているため、プラズマPと接触することに起因して点火導体5a(放電電極として機能する先端)が劣化する事態の発生、および点火導体5aがプラズマPの照射の妨げとなる事態の発生を確実に防止しつつ、筐体11内に点火導体5aを固定的に配置する構成を採用することができ、これによって従来のプラズマ処理装置において必要とされていた点火導体5a(導体棒)の移動機構を省いて点火機構を簡略化することができる。また、このプラズマ処理装置1によれば、点火機構5を簡略化できるため、処理装置全体を小型化することもできる。
【0036】
また、このプラズマ処理装置1によれば、先端が放電電極として機能する点火導体5aを放射器14と略平行な状態で筐体11内に配設したことにより、閉塞板11b側から筐体11の開放端に向かう放電用ガスGの気流が、放射器14および点火導体5aによって乱される事態を大幅に低減することができる。
【0037】
また、このプラズマ処理装置1によれば、プラズマPが発生している状態における放射器14および点火導体5aの全体としての共振周波数が高周波信号S1の周波数と一致するように放射器14の長さを規定したことにより、高周波信号S1が供給された状態において、放射器14を確実に共振モノポールとして作動させて、筐体11の開口端側に位置する先端側で電圧を最大にすることができ、これにより、効率よくプラズマPを発生させることができる。
【0038】
なお、放射器14の形状については、棒状(柱状)に形成した例を挙げて説明したが、柱状に限定されず、直方体や樋状体(ハーフパイプ状体)などの板状に構成することもできるし、筒状に構成することもできる。
【符号の説明】
【0039】
1 プラズマ処理装置
2 プラズマ発生部
3 高周波電源
4 ガス供給部
5 点火機構
5a 点火導体
7 処理対象体
11 筐体
11b 閉塞板
14 放射器
P プラズマ
S1 高周波信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部が閉塞板で閉塞され、かつ他方の端部が開放端に形成された筒状の筐体と、前記閉塞板の内面に前記筐体の筒長方向に沿って延出するように立設されると共に入力した高周波信号を放射する棒状の放射導体とを備え、前記閉塞板側から前記開放端側に向かう気流を前記筐体内に発生させるように当該筐体内にガス供給部によって前記プラズマ放電用ガスが供給され、かつ前記放射導体が前記高周波信号を放射している状態において、当該放射導体の先端近傍から前記気流に乗って前記筐体の外方へ伸びるプラズマを発生させるプラズマ処理装置であって、
前記放射導体との間で放電を発生させて前記プラズマを点火する放電電極を有する点火機構を備え、前記放電電極は、前記放射導体の前記先端よりも前記気流の上流側に配設されているプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記点火機構は、前記筐体内に前記放射導体と略平行な状態で配設された棒状の点火導体を備え、当該点火導体における前記開口端側の先端が前記放電電極として機能する請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記プラズマが発生している状態における前記放射導体および前記点火導体の全体としての共振周波数が前記高周波信号の周波数と一致するように、当該放射導体の長さが規定されている請求項2記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−55002(P2013−55002A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194032(P2011−194032)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000214836)長野日本無線株式会社 (140)
【Fターム(参考)】