プラズマ加工形状シミュレーション装置及びプログラム
【課題】ボッシュプロセスにより形成される加工形状を予測することができる、プラズマ加工形状シミュレーション装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含むプロセスにおける条件及びシミュレーションに関する条件を設定する条件設定ステップ(STEP11)と、エッチングプロセスにおける条件に基づいたプラズマエッチングによる表面移動量を計算するエッチングプロセス表面移動量計算ステップ(STEP12)と、デポジションプロセスにおける条件に基づいたプラズマデポジションによる表面移動量を計算するデポジションプロセス表面移動量計算ステップ(STEP13)と、を備える。エッチングプロセス表面移動量計算ステップ(STEP12)とデポジションプロセス表面移動量計算ステップ(STEP13)とを条件設定ステップ(STEP11)にて設定されたサイクル数繰り返すことにより形成される形状を求める。
【解決手段】加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含むプロセスにおける条件及びシミュレーションに関する条件を設定する条件設定ステップ(STEP11)と、エッチングプロセスにおける条件に基づいたプラズマエッチングによる表面移動量を計算するエッチングプロセス表面移動量計算ステップ(STEP12)と、デポジションプロセスにおける条件に基づいたプラズマデポジションによる表面移動量を計算するデポジションプロセス表面移動量計算ステップ(STEP13)と、を備える。エッチングプロセス表面移動量計算ステップ(STEP12)とデポジションプロセス表面移動量計算ステップ(STEP13)とを条件設定ステップ(STEP11)にて設定されたサイクル数繰り返すことにより形成される形状を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマにより加工される形状を予測するプラズマ加工形状シミュレーション装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体微細加工技術の一つにプラズマエッチングプロセスがある。その中でも垂直に深掘エッチングするためにボッシュプロセスがある(例えば、特許文献1参照)。このプロセスでは、加工面に保護膜を形成するデポジションプロセスと、孔底面の保護膜を除去して基板をエッチングするエッチングプロセスとを一サイクルとし、サイクルを複数回行う。
【0003】
このようなエッチング装置では、プラズマ発生源として例えば高周波電源を用い、真空ポンプにより排気されるチャンバー内に加工処理対象物を設置し、ガス導入口から反応性ガスを含んだガスをチャンバー内に流入させ、プラズマ発生源によりガスを分解してプラズマ化する。その際、加工処理対象物に直流、交流、高周波などのバイアスパワーを印加して、加工処理対象物に入射するイオンの量やエネルギーを調整している。ボッシュプロセスでは、デポジションプロセスとエッチングプロセスとで、異なる混合ガスが反復して用いられている。例えば、デポジションプロセスではC4F8プラズマが生成されて孔の底面及び側面に保護膜が形成され、エッチングプロセスではSF6プラズマが生成されている。エッチングプロセスは複数の段階に分けられ、先ずデポジションプロセスで形成された保護膜のうち孔の底面部分を除去し、次いでその除去されたSi基板をエッチングする。このデポジションプロセスとエッチングプロセスとを一つのサイクルとして繰り返すことによりSi基板に横方向への広がりを抑え、垂直な側面を維持しながら深さ方向に深く延びる孔を形成していくものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−129260号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A.MISAKA,K.HARAFUJI,M.KUBOTA AND N.NOMURA , “Novel Surface Reaction Model in Dry-Etching Process Simulator”, JPN.J.APPL.PHYS 31 PAGE.4363-4669(1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実際に、上記ボッシュプロセスでは、半導体微細加工を行うに際してプロセス条件の最適化を図ったり、異常加工しない条件を設定したりするため経験に頼って試行錯誤がなされるため、手間及び労力がかかる。
【0007】
そこで、本発明においては、ボッシュプロセスにより形成される加工形状を予測することができる、プラズマ加工形状シミュレーション装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明におけるプラズマ加工形状シミュレーション装置は、加工処理対象物に関する条件と、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含むプロセスに関する条件と、シミュレーションに関する条件とを設定する条件設定手段と、加工処理対象物の加工表面に照射されるフラックスのエネルギー分布、該照射角度分布に関するデータを格納したフラックス情報データベースと、エッチング及びデポジションの各プロセスにおける化学反応データを格納した化学反応データベースと、加工表面における電荷分布により生じる電界分布を計算し加工表面に入射する荷電粒子の軌道を求める軌道計算手段と、軌道計算手段で求まる荷電粒子の軌道に基づいて加工表面に入射する各種イオンを求め、フラックス情報データベース及び化学反応データベースに格納されているデータを用いて、加工表面の各領域における反応計算を行い、エッチングレート及びデポジションレートを求めるレート計算手段と、レート計算手段で求まるエッチングレートとデポジションレートとの差分から表面移動量を算出する表面移動量計算手段と、条件設定手段により設定される加工処理対象物に関する条件及びシミュレーションに関する条件に基づいて、条件設定手段により設定されるエッチングプロセスにおけるプロセスに関する条件に従って表面移動量計算手段による表面移動量の算出と、条件設定手段により設定されるデポジションプロセスにおけるプロセスに関する条件に従って表面移動量計算手段による表面移動量の算出と、を繰り返す計算制御手段と、を備える。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のプラズマ加工形状シミュレーションプログラムは、加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含むプロセスにおける条件及びシミュレーションに関する条件を設定する条件設定ステップと、エッチングプロセスにおける条件に基づいたプラズマエッチングによる表面移動量を計算するエッチングプロセス表面移動量計算ステップと、デポジションプロセスにおける条件に基づいたプラズマデポジションによる表面移動量を計算するデポジションプロセス表面移動量計算ステップと、を備え、エッチングプロセス表面移動量計算ステップとデポジションプロセス表面移動量計算ステップとを条件設定ステップにて設定されたサイクル数繰り返すことにより形成される形状を求める。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ボッシュプロセスによる加工形状の予測が可能となり、これにより、デポジションプロセスによる保護膜を除去するエッチングプロセスの条件についての設定が容易になり、またボッシュプロセスの最適条件の探索を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置の構成図である。
【図2】プラズマエッチングによる基板表面の加工の様子を模式的に示す図である。
【図3】加工表面形状の一般的な計算のフローの概略を示す図である。
【図4】加工表面を2次元的に表す手法を説明する図である。
【図5】図3のフローにより求まる形状変化を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーションプログラムにより実現されるプラズマ加工形状シミュレーション方法のフローの概略図である。
【図7】図6に示すプラズマ加工形状シミュレーション方法の詳細なフローの一部を示す図である。
【図8】図7に示すフローの残部を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置を用いて最適条件の探索を示すフロー図である。
【図10】本発明の実施形態の変形例を示し、図1の条件設定手段において設定されるプロセスのタイムチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置により予測される孔の断面図で、(A)はエッチングプロセスを一段階で設定した場合の形状予想の結果を示し、(B)はエッチングプロセスを二段階で設定した場合の形状予測の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
〔本発明の実施形態においてシミュレートされるプラズマプロセス処理〕
本発明の実施形態で実現されるシミュレーションは、Siなどの半導体の基板それ自体又は基板上に絶縁膜、金属膜などの各種の膜が積層されたもの(以下、単に、「加工処理対象物」と呼ぶ。)にマスクを配置した上でエッチングプロセスとデポジションプロセスとを1サイクルとし複数回のサイクルを繰り返すことにより形成される孔の形状とその寸法を予測するものである。これにより、孔の断面形状、孔の深さ方向の形状、それらの寸法が予測される。このプロセスそのものはボッシュプロセスと呼ばれている。エッチングプロセスにより孔が掘り進められる際に孔の側面がエッチングされて孔の径が広がらないように、デポジションプロセスにより保護膜が形成される。
【0014】
エッチングプロセスは、デポジションプロセスにより孔の底面に形成された保護膜を除去するプロセス(以下単に、「第1エッチングプロセス」と呼ぶ。)と孔の底面の保護膜を除去した後に孔を深くするプロセス(以下、「第2エッチングプロセス」と呼ぶ。)とに、大きく区分けされる。第1エッチングプロセスでは、例えばSF6プラズマが用いられ、底部の保護膜を除去するため加工処理対象物を載置するステージに印加するバイアスパワーが大きい。これに対し、第2エッチングプロセスでは、例えば同じSF6プラズマが用いられても、ステージに印加するバイアスパワーを小さくする。これは、第2エッチングプロセスでは、孔を深く掘り進めるので、デポジションプロセスで形成した孔側壁部の保護膜が除去され難くするためと考えられている。
【0015】
条件設定手段11では、エッチングの各プロセスに対して、前述の例にあっては第1エッチングプロセス、第2エッチングプロセス毎に、プロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーのうち一以上をパラメータとして設定される。バイアスパワーとは、例えば加工処理対象物を載置するステージに印加される直流、低周波、高周波などのパワーを指している。エッチングの各プロセスに対して上述のパラメータを変えて設定される。サイクル毎にエッチングの各プロセスが異ならないで一つのエッチングプロセスでも、又はサイクル毎にエッチングの各プロセスが3つ以上の異なる条件であってもよい。また、デポジションプロセスにおけるプロセス条件についても、エッチングプロセスと同様に、プロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーのうち一以上をパラメータとして設定されて構わない。よって、サイクル毎に一又は二以上のプロセス条件によるエッチングプロセスと一又は二以上のプロセス条件によるデポジションプロセスとからなり、サイクル毎にエッチングプロセスとデポジションプロセスとの各プロセス内でのプロセス条件数が一致しても異なっていてもよい。
【0016】
本発明の実施形態では、このような深掘加工による孔の形状をシミュレートすることで、現実のプラズマ加工装置においてプロセス条件の設定についての指針を与えることができる。
【0017】
〔プラズマ加工形状シミュレーション装置〕
図1は本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置10の構成図である。本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置10は、条件設定手段11とフラックス情報データベース12と化学反応データベース13と軌道計算手段14とレート計算手段15と表面移動量計算手段16と計算制御手段17とを備える。プラズマ加工形状シミュレーション装置10は、コンピュータ上でプラズマ加工形状シミュレーションプログラムを実行することによってプラズマ加工形状シミュレーション装置10の各要素を実現してもよい。図1には示されていないが、シミュレーションの開始指令、シミュレーションの結果の表示に必要な指令、条件設定手段11に対する入力指令などを行うと共にシミュレーションの結果を表示するためのディスプレイを備えた入出力部などを備える。
【0018】
以下、図1に示す装置の各構成について詳細に説明する。
条件設定手段11は各種条件を設定するためのものである。各種条件としては、加工処理対象物の条件、プロセスに関する条件及びシミュレーションに関する条件が挙げられる。
加工処理対象物に関する条件の項目としては、深掘される加工処理対象物、マスクなどの形状及び寸法などが挙げられ、加工処理対象物に関する条件として境界条件を含めて設定される。
プロセスに関する条件には、エッチング条件、デポジション条件、サイクル数などが含まれる。エッチング条件、デポジション条件の項目は、何れも、プロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーなどが挙げられる。エッチング条件、デポジション条件は、一サイクル内で固定される必要はなく、一サイクル中で異なったエッチング条件、デポジション条件が設定されてもよい。一サイクル中でのエッチング条件の数、デポジション条件の数は、サイクルの順番に応じて任意に設定されてもよいし、サイクルの順番に拠らず任意に設定されてもよい。
シミュレーションに関する条件の詳細については後述するが、メッシュ、時間刻み幅、ストリング分割数などがある。
【0019】
フラックス情報データベース12は、加工表面に照射するフラックスに関するデータを格納したものである。フラックスには荷電粒子とラジカルとがあるので個別にデータを格納している。
荷電粒子のフラックスに関するデータ項目としては、イオン種、エネルギー分布及び角度分布、強度などがある。条件設定手段11で設定されるプロセスに関する条件に応じて、例えば、Cl2+、SF5+などの各種イオンや電子の荷電粒子フラックスのエネルギー分布、角度分布、強度などに関するデータが格納されている。軌道計算手段14により求められるイオンフラックスの角度分布の結果が格納されてもよい。
ラジカルフラックスに関するデータ項目としては、ラジカル種、エネルギー分布及び角度分布、強度などがある。条件設定手段11で設定されるプロセスに関する条件に応じて、例えば、CF3*、F*、O*などの各種ラジカルフラックスのエネルギー分布、角度分布、強度などに関するデータが格納されている。
【0020】
化学反応データベース13は、エッチング及びデポジションの各プロセスにおける化学反応データを格納したものである。化学反応データは、軌道計算手段14による軌道計算において必要となるデータと、表面移動量計算手段16による反応計算において必要となるデータとが格納される。化学反応データベース13に格納されるデータは、材料物性のデータと表面反応に関するデータとが含まれている。例えば、軌道計算手段14ではポアソンの方程式やニュートンの運動方程式を用いて解析がなされるため、各材料の誘電率や導電率、イオン種や電子の質量などデータが格納されている。表面移動量計算手段16ではラジカル吸着反応計算、イオン反応計算及び熱励起型化学反応計算がなされるため、各計算において必要となる反応毎の各種係数が格納される。表面移動量計算手段16において必要となるために格納されるデータ項目としては、反応式、ラジカル及びイオンの吸着率、離脱率、活性化エネルギー、反応生成物が表面から再放出される際の角度分布やエネルギー分布などがある。
【0021】
ここで、化学反応データベース13へ格納される反応式について説明する。
例えば、エッチングプロセスにおける化学反応としては、次に例示するものがある。
イオン・エッチング過程の一反応として、
SFx++SiF4→F(2)*
を挙げることできる。つまり、イオンSFx+により加工表面上の蒸発物SiF4がエッチング反応して反応生成物F(2)*を離脱させる反応を挙げることができる。離脱率の値がエネルギー、角度の関数として又はこれらに拠らない定数として設定されている。なお、F(2)*における(2)とはここでは例示しないF*と区別するための記号である。
例えば、中性粒子の吸着過程の一反応として、
F(2)*+Si→Si(2)
を挙げることができる。つまり、中性粒子ラジカルF(2)*が加工表面上のSiと反応して、蒸発物Si(2)を生成する反応を挙げることができる。吸着率の値がエネルギー、角度の関数として又はこれらに拠らない定数として設定されている。なお、Si(2)における(2)とはここでは例示しないSiと区別するための記号である。
例えば、熱励起エッチング過程の一反応として、
SiF4(s)→SiF4(g)
を挙げることができる。つまり、加工表面上のSiF4(s)が熱励起によりSiF4(g)として離脱する反応を挙げることができる。反応係数、活性化エネルギーの各値がエネルギー、角度の関数として又はこれらに拠らない定数として設定されている。
【0022】
一方、デポジションプロセスにおける反応において、中性粒子の吸着過程の一反応として、
CxFy*+Si→Si_c
を挙げることができる。つまり、CxFy*がSi上に付着してSi_cを形成する反応を挙げることができる。吸着率の値がエネルギー、角度の関数として又はこれらに拠らない定数として設定されている。
【0023】
以上のような反応式に関する情報が、ラジカル及びイオンの吸着率、離脱率、活性化エネルギー、反応生成物が表面から再放出される際の角度分布やエネルギー分布と共に、化学反応データベース13に格納されている。
【0024】
ここで、材料物性のデータには、基板表面での反応生成物名とエッチング、デポジションの何れかとの組み合わせ以外に、原子数密度、分子数密度など粒子数密度、吸着サイトの面密度、比誘電率、消滅因子、導電性材料の導電率、電気的性質(例えば、導電体か絶縁体かの区別)、波長毎の光吸収係数、波長毎の欠陥発生係数などが材料毎に格納される。ここで、「材料」とは、反応生成物、基板材料を形成するものを意味する。一方、表面反応のデータには、中性粒子吸着モデル、イオン反応モデル、熱励起型化学反応モデルにおける各データが含まれる。中性粒子吸着反応モデルに関するデータ項目として、吸着反応による反応生成物名、入射ラジカル及び反応生成物毎の吸着率、ラジカル吸着の角度依存性、ラジカルの反射率などがある。イオン反応モデルに関するデータ項目として、イオンアシスト反応が生じる基板材料又は反応生成物名とイオン名との組み合わせ、離脱率、イオンアシスト反応の反応率などがある。熱励起型化学反応モデルに関するデータ項目として、熱励起型化学反応の反応係数、活性化エネルギー等などがある。
【0025】
軌道計算手段14は、レート計算手段15において必要となる荷電粒子の軌跡を算出するものであって、加工表面に入射する電子又はイオンの密度及びエネルギー分布並びに加工表面における電荷分布に基づいてプラズマから加工表面に入射する荷電粒子の軌道を求めるものである。軌道計算手段14は、条件設定手段11で設定し又は軌道計算手段14での計算で更新された、加工処理対象物に関する境界条件と、フラックス情報データベース12に入力され又は更新されている、ラジカルやイオンの種類や密度と、化学反応データベース13に入力されている誘電率、導電率といった材料の物性値、イオン種、原子の質量などに基づいて、電位分布を計算し、基板に流入する電子及びイオンの各軌跡を計算する。具体的には、加工表面における電荷の蓄積分布から、ポアソンの方程式を解くことにより、電荷蓄積分布により生じる電界を計算する。その後、その電界分布から、基板表面に流入する荷電粒子の軌跡を計算する。
【0026】
イオン軌道が計算されることで、エネルギー及び角度の関数として、イオンフラックス分布が求められる。これらの値は、フラックス情報データベース12に格納され、レート計算手段15による計算において用いられてもよい。
【0027】
レート計算手段15は、フラックス情報データベース12や化学反応データベース13に格納されている各データに基づいて加工表面の各領域における反応計算を行ったり又は軌道計算手段14で求まった荷電粒子の軌道を経て加工表面に入射する各種イオンの種類、量に基づいて加工表面の各領域における反応計算を行ったりすることにより、エッチングレート及びデポジションレートを求める。具体的には、プラズマから流入するラジカル、イオンの各フラックス密度、加工処理対象物表面への吸着確率、化学反応率、反射率などから、加工表面における各点において、エッチングレート及びデポジションレートを求める。
【0028】
表面移動量計算手段16は、レート計算手段15により求まるエッチングレートとデポジションレートとの差分から表面の移動量を計算し、例えばウエハの断面形状の経時変化を計算する。計算の詳細については後述する。
【0029】
レート計算手段15と表面移動量計算手段16とにより、軌道計算手段14による算出結果に基づいて化学反応データベース13に格納されているデータを参照しながら、ラジカル吸着反応、イオンアシスト反応、熱励起型化学反応による表面移動量が算出される。
【0030】
計算制御手段17は、条件設定手段11により設定されるシミュレーションに関する条件に基づいて、条件設定手段11により設定されるエッチングプロセスにおけるプロセスに関する条件に従って表面移動量計算手段16による表面移動量の算出処理と、条件設定手段11により設定されるデポジションプロセスにおけるプロセスに関する条件に従って表面移動量計算手段16による表面移動量の算出処理と、を繰り返すものである。繰り返しの回数は条件設定手段11のプロセスに関する条件として設定されるサイクル数で定まる。
【0031】
図1に示すプラズマ加工形状シミュレーション装置10では、予め、条件設定手段11において加工処理対象物に関する条件、プロセスの条件及びシミュレーションに関する条件の設定がなされ、フラックス情報データベース12及び化学反応データベース13に格納されている各データを参照しながら、計算制御手段17が、軌道計算手段14及びレート計算手段15を用いながら表面移動量計算手段16によって、エッチングによるエッチング量とデポジションによる堆積量を求めることで、ボッシュプロセスについてシミュレーションを行う。
【0032】
さらに、条件設定手段11に対しサイクル毎にエッチングのプロセス条件の順に例えばエッチング時間及びバイアスパワーをパラメータとして設定することで、計算制御手段17が、条件設定手段11に設定された条件に従って表面移動量計算手段16を制御する。これにより、サイクル毎にエッチングのプロセス条件の順に表面移動量を算出する。パラメータはプロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーのうち一又は複数であれば、プロセス時間としてのエッチング時間、バイアスパワーの組である必要はない。
【0033】
〔プラズマ加工形状予測方法〕
以下、本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置10によるプラズマ加工形状の予測方法について、具体的に説明する。
【0034】
〔前提〕
先ず、プラズマ加工形状をどのようにして予測するかを説明する前提として、加工表面の状態をどのように記述し、その表面状態の変化をどのように記述するかについて、概念的に説明する。
【0035】
図2は、プラズマエッチングによる基板表面の加工の様子を模式的に示す図である。基板表面がイオンでエッチングされている場合、加工表面では、化学反応及びスパッタリングが生じている。そこで、先ず、基板表面の輪郭を離散的な黒点(●)で示し、その間を直線で結ぶ。この直線をストリングと呼ぶことにする。ラジカルやイオンが表面に入射すると、表面では化学反応やスパッタリングが生じ、基板表面上にはラジカルが吸着したり、離脱したりする。それらをデポジションレート、エッチングレートとして表し、これらの差分によりエッチング速度又は成膜速度を求め、ストリングを移動させていく。以下の説明においては二次元の場合について説明するが、三次元の場合でも同様に適用可能である。また、プラズマによるデポジションの場合は図2に示す模式図において、ストリングによる移動の向きが逆向きになるに過ぎない。
【0036】
図3は加工表面形状の一般的な計算のフローの概略を示す図である。図4に示すように、実線で示すレジスト表面をストリングポイント(一般には「加工表面での各点」)で区切り、隣接するストリングポイント同士を点線で示すようにストリング(一般には「要素」)により近似する。このストリング上で表面反応を記述することを考える。基板材料の表面占有率をθ0とし、材料mの表面占有率をθm、吸着サイトの面密度をσsとすると、束縛条件として次式が成り立つ。
【数1】
【数2】
また、一般的に、材料mの単位時間当たりの生成数をGm、材料mの単位時間当たりの消滅数をHmとすると、次の基本方程式が成り立つ。
【数3】
【数4】
よって、束縛条件により基本方程式を解くことで、各吸着ラジカルの表面被覆率を算出する(STEP1−1)。なお、材料mはラジカルと呼ぶ場合もある。
【0037】
次に、エッチングレート及びデポジションレートを算出する(STEP1−2)。ここで、エッチングレートは、熱励起型化学反応によるエッチングレートと物理的スパッタリングによるエッチングレートとイオンアシスト反応によるエッチングレートとの和として算出される。デポジションレートは、堆積物が降り注ぐ効果によるデポジションレートと堆積物の生成によるデポジションレートとイオンアシスト反応によるデポジションレートとの和として算出される。プラズマによるエッチングとデポジションレートはそれぞれ次式のように求められる(非特許文献1)。
【0038】
すなわち、エッチングレートERを式(5)のように分解する。ERtotalは、吸着ラジカルに被覆されている表面における熱励起型化学反応エッチングレートであり、ERphysicalは、高エネルギーイオンによる清浄な被エッチング材料表面に対する物理的スパッタリングによるエッチングレートであり、ERionassistedは、高エネルギーイオンによる吸着ラジカルに被覆されている表面に対する物理的及び化学的スパッタリング(「イオンアシスト反応」とも呼ぶ。)によるエッチングレートである。
【数5】
【0039】
各エッチングレートERthermal、ERphysical及びERionassistedは、次のように決めることができる。点Pにおける熱励起型化学反応エッチングレートERthermalは、式(6)で表現される。
【数6】
【0040】
点Pにおける物理的スパッタリングによるエッチングレートERphyicalは、式(7)で表現される。
【数7】
式(7)から分かるように、ERphyicalは反応性イオンと非反応性イオンの両方のイオンiについての和である。
【0041】
点Pにおけるイオンアシスト反応によるエッチングレートERionassistedは、式(8)で表現される。
【数8】
【0042】
デポジションレートDRは式(9)のように分解することができる。式(9)の右辺の第1項は、堆積物が降り注ぐ効果によるデポジションレートである。式(9)の第2項は入射ラジカルと表面反応層のラジカルとが反応して堆積物が生成される効果によるデポジションレートである。式(9)の第3項はイオンアシスト反応によって表面反応層から堆積物が離脱する効果によるデポジションレートである。
【数9】
【0043】
点Pにおいて堆積物が降り注ぐ効果によるデポジションレートは、式(10)で示される。
【数10】
ここで、ρdはデポジション層の密度であり、σm0(ε)はラジカルmと清浄な被エッチング材料膜との間の吸着率であり、σmk(ε)はラジカルmと被エッチング材料膜上に形成されたラジカルkの吸着層膜との間の吸着率である。εはラジカルmのエネルギーである。
式(10)から分かるように、被エッチング材料膜上に形成されたラジカルkがラジカルmに置き換わる全てのkにわたって加算され、さらに全ての堆積物にわたってmが加算される。
【0044】
点Pにおいてエネルギーεを有する入射ラジカルと表面反応層のラジカルとが反応して堆積物が生成される効果によるデポジションレートは、式(11)で示される。
【数11】
【0045】
点Pにおいてエネルギーεを持ったイオンが入射し表面反応層から堆積物が離脱する反応は、一般にイオンアシスト反応と呼ばれ、このイオンアシスト反応の効果に基づくデポジションレートは、式(12)で示される。
【数12】
【0046】
次に、各ストリングPの移動速度を求める(STEP1−3)。即ち、エッチングレートとデポジションレートの差から、エッチングレートがデポジションレートより大であればエッチングが進み、逆にデポジションレートがエッチングレートより大であればデポジションが進むことになる。そして、任意時間における表面を記述するストリングポイントをつなぎ合わせることにより、表面移動速度が求まり、その任意時間における基板表面の形状を求めることが可能となり、形状についての結果を出力表示できる状態となる(STEP1−4)。図5は、このようにして求まる形状変化について示している。
【0047】
〔プラズマ加工形状シミュレーション方法の概略〕
図1に示すプラズマ加工形状シミュレーション装置10によるプラズマ加工形状シミュレーション方法の概略を説明する。図6は本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーションプログラムにより実現されるプラズマ加工形状予測方法のフローの概略図である。プラズマ加工形状シミュレーション方法は、図6に示すように、加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含めて各プロセスにおける条件及びシミュレーションに関する条件を設定する条件設定ステップSTEP11と、エッチングプロセスにおける条件に基づいたプラズマエッチングによる表面移動量を計算するエッチングプロセス表面移動量計算ステップSTEP12と、デポジションプロセスにおける条件に基づいたプラズマデポジションによる表面移動量を計算するデポジションプロセス表面移動量計算ステップSTEP13と、を備えている。エッチングプロセス表面移動量計算ステップSTEP12とデポジションプロセス表面移動量計算ステップSTEP13とを所定のサイクル数まで(STEP14でYesとなるまで)繰り返すことにより、形成される形状を予測する。
【0048】
〔荷電粒子の軌道計算、加工表面形状の計算〕
図1に示す表面移動量計算手段16が、軌道計算手段14及びレート計算手段15を用いて表面加工形状をどのように予測するかについて説明しながら、本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション方法について詳細に説明する。図7は、図6に示すプラズマ加工形状シミュレーション方法の詳細なフローの一部を示す図、図8は図7に示すフローの残部を示す図である。
【0049】
STEP11では、入力操作により、加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数及び各プロセスにおける条件並びにシミュレーションに関する条件を設定すると共に、照射フラックスの設定、エッチング及びデポジションのプロセスにおける化学反応についてフラックス情報データベース12及び化学反応データベース13を参照しながら設定する。
【0050】
具体的には、STEP11−1として、加工処理対象物に関する条件として、加工処理対象物、マスクなどの形状及び寸法などを加工処理対象物の材質と共に境界条件を含めて設定する。
【0051】
STEP11−2では、プロセスに関する条件として、ボッシュプロセスにおけるエッチングプロセス条件及びデポジションプロセス条件並びにサイクル数などを設定する。具体的には、例えば1サイクルにおけるエッチングプロセスとデポジションプロセスとの時間的な比又は各時間、エッチングプロセスにおける孔底部の保護膜を除去するためのプロセスと保護膜を除去した後の孔底面を掘り進めるためのプロセスとの時間的な比又は各時間、サイクル数や孔を掘り進めるためのプロセスの1サイクルの繰り返し回数を設定する。その際、バイアスパワーの印加の有無と大きさなども併せて設定する。
【0052】
STEP11−3では、フラックス情報データベース12を参照しながら、STEP11−2で設定したプロセスに関する条件に従ってラジカルの各データ項目を設定する。反応生成物が表面から再放出される際の角度分布やエネルギー分布などについても設定する。
【0053】
STEP11−4では、エッチング及びデポジションの各プロセスにおける化学反応を設定する。具体的には、STEP11−1、STEP11−2で設定した加工処理対象物の種類、ガス種などに対応して材料物性のデータと表面反応に関するデータを、化学反応データベース13を参照しながら、反応式、ラジカル及びイオンの吸着率、離脱率、活性化エネルギーなどを取得する。
【0054】
STEP11−5では、シミュレーションに関する条件として、メッシュ、時間刻み幅、ストリング分割数などを設定する。例えば、加工処理対象物となる例えば基板の領域を複数の要素(メッシュ)に分割し、基板の領域に相当する要素に材料の種類を設定する。マスクとなる部分の領域を設定することで加工表面の領域を定める。
【0055】
このように、STEP11では、シミュレーション対象とする表面の要素(二次元の場合にはストリング)の設定を行い、サイクルのループに移行する。
【0056】
サイクルのループは、エッチングプロセスとデポジションプロセスの各シミュレーションを順に行う。
【0057】
エッチングプロセスのシミュレーション(STEP12)においては、定常状態になるまで、電界分布の算出と荷電粒子の軌道計算を繰り返し行うことで軌道計算ステップを行う(STEP12−1)。先ず、軌道計算とイオンフラックス分布の設定を行う。
【0058】
軌道計算は、軌道計算手段14において、条件設定手段11で設定し又は軌道計算手段14での計算で更新された、加工処理対象物に関する境界条件と、フラックス情報データベース12に入力され又は更新されている、ラジカルやイオンの種類や密度と、化学反応データベース13に入力されている誘電率、導電率といった材料の物性値、イオン種、原子の質量などに基づいて、電位分布を計算してなされる。加工表面における電荷蓄積量を境界条件としてポアソンの方程式を解くことにより、電界分布を求め、イオン及び電子の各軌道をニュートンの運動方程式により計算する。電界分布が求められているためこの電位差による荷電粒子の加速度を考慮して、イオン及び電子の各速度及び進行方向を正確に求めることができる。
【0059】
具体的には、STEP12−1Aとして、入射するイオン及び電子が加工表面に到達したとして加工表面の電荷分布を求め、加工表面における各点での電荷蓄積量を境界条件としてポアソンの方程式を解いて電界分布を算出する。さらに、電界分布によりイオン及び電子を含む各荷電粒子の軌道をニュートンの運動方程式により求める。
【0060】
STEP12−1Bでは、この程求めた電界分布が前回求めた電界分布とほぼ同じであるか否かを判断し、同じ範囲であると判断できなければ、各イオンの軌道、電子の軌道に従って各イオン、電子が流入すると扱って、新たに電荷分布を算出し(STEP12−1C)、STEP12−1Aに戻る。STEP12−1Aにより求めた電界分布が前回求めた電界分布とほぼ同じであり、即ち電界分布が収束していると判断した場合には、加工表面における電界分布が定常となるので、各イオンの軌道及び速度に基づいて、加工表面の各点に入射するイオンに対して角度及びエネルギーの関数として設定することができる。統計量としてばらつきが小さくなるだけの十分な量の軌道計算を行うことが好ましい。また、既に、フラックス情報データベース12に格納されている関数を利用することができる場合には、軌道計算手段14は、その関数を利用してもよい。
【0061】
次に、STEP12−2として、レート計算手段15は、STEP12−1で求まった荷電粒子の軌道と、入力条件に応じてフラックス情報データベース12を参照するなどしてラジカル種毎にエネルギーと角度をパラメータとして入力された入射分布とから、次のような反応の計算を行う。先ず、加工表面に外から入射する荷電粒子、ラジカルなどが加工表面に吸着したり、吸着した荷電粒子やラジカルが加工表面から離脱したりする反応について、粒子などの表面反応にかかわる全種類の粒子について、入射エネルギーや入射角などを設定する。そして、加工表面の各点での各反応係数に基づいて、軌道算出ステップで求めた軌道に沿って加工表面の各点に入射するイオンとラジカルの入射フラックス分布とから、各エッチングレート及びデポジションレートを算出する。
【0062】
次に、STEP12−3として、各加工表面においてエッチングレートとデポジションレートとの差分から表面の移動量を算出する。
【0063】
上記STEP12−2とSTEP12−3とで求まる表面移動量の算出について詳細に説明する。
STEP12−2では、STEP11−3で設定したフラックス条件とSTEP11−4で設定した各反応係数に基づいて、各加工表面において表面材料とラジカル、イオンとの反応を計算し、各材料の被覆率が定常状態となるまで繰り返す。これにより、エッチングレート及びデポジションレートがそれぞれ求まる。エッチングレートは、前述の式(5)のように、熱励起型化学反応、物理的スパッタリング、イオンアシスト反応のそれぞれによるエッチングレートの和として求める。デポジションレートは、前述の式(9)のように、堆積物が降り注ぐ効果、堆積物の生成、イオンアシスト反応のそれぞれによるデポジションレートの和として求める。これらの反応毎の各係数を加味して各レートを求めることで、加工表面の移動推移を算出する。そして、STEP12−3において、エッチングレートとデポジションレートの差分から加工表面の移動量を算出する。
【0064】
次に、STEP12−4では、STEP12−3の表面移動量の算出処理で求まった加工表面の各点での移動速度から、加工条件で設定されている加工量又は加工時間を満たすか否かを判定し、満たさない場合には、STEP12−1に戻って新たに加工表面各点を設定し直して軌道算出ステップに戻る。すなわち、STEP12−3で求めたエッチング量がエッチング量に達していない場合には、新たに、表面各点を設定し直し、STEP12−1に戻るという処理を繰り返す。一方、STEP12−3で求めたエッチング量が設定したエッチング量に達している場合には、このエッチングプロセスのループから抜け、デポジションプロセスに移行する。なお、エッチング量ではなく、エッチング時間によって、ループの処理の繰り返しを判断してもよい。
【0065】
デポジションプロセスのシミュレーション(STEP13)においても、エッチングプロセスのシミュレーション(STEP12)と同様の計算を行う。即ち、デポジションプロセスにおいて、定常状態になるまで、電界分布の算出と荷電粒子の軌道計算を繰り返し行う(STEP13−1)。軌道計算手段14が、STEP13−1A、STEP13−1Bで「Yes」となるまでSTEP13−1C、STEP13−1Aを繰り返し行う。次に、STEP13−2として、レート計算手段15が、STEP13−1で求まった荷電粒子の軌道と、入力条件に応じてフラックス情報データベース12を参照するなどしてラジカル種毎にエネルギーと角度をパラメータとして入力された入射分布とから、エッチングプロセスと同様な計算手法により反応の計算を行い、加工表面の各点での各反応係数に基づいて、軌道算出ステップ(STEP13−1)で求めた軌道に沿って加工表面の各点に入射するイオンとラジカルの入射フラックス分布とから、エッチングレート及びデポジションレートを算出する。
【0066】
次に、STEP13−3として、STEP13−2で求まったエッチングレートとデポジションレートとの差分から表面移動量を算出する。そして、STEP13−4としてデポジションプロセスが終了するまでSTEP13−1に戻る。
【0067】
そして、ボッシュプロセスの条件設定(STEP11−2)で設定したサイクル数をエッチングプロセスとデポジションプロセスとの各計算を行うまで、STEP12に戻る。
【0068】
このようにして、本発明の実施形態では、加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含むプロセスにおける条件及びシミュレーションに関する条件を設定する条件設定ステップと、エッチングプロセスにおける条件に基づいたプラズマエッチングによる表面移動量を計算するエッチングプロセス表面移動量計算ステップと、デポジションプロセスにおける条件に基づいたプラズマデポジションによる表面移動量を計算するデポジションプロセス表面移動量計算ステップと、を備える。エッチングプロセス表面移動量計算ステップとデポジションプロセス表面移動量計算ステップとを条件設定ステップにて設定されたサイクル数を繰り返すことにより形成される形状を求める。よって、ボッシュプロセスにより形成される加工形状を容易に予測することができる。
【0069】
このようにボッシュプロセスによる加工形状の予測が可能となるので、これにより、デポジションプロセスにより形成される保護膜を除去するためのエッチングプロセスの条件設定やボッシュプロセスの最適条件の探索を行うことが容易になる。
【0070】
図8は、本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置10を用いて最適条件の探索を示すフロー図である。
【0071】
STEP21では、デポジションプロセスで形成した保護膜のうち孔の底部に堆積した膜をエッチングプロセスにより除去するために必要な時間をシミュレーションする。先ず、デポジションプロセスでの保護膜の堆積時間を固定した値として設定しエッチングプロセスの時間の値として複数設定し、その複数設定したエッチングプロセスの時間毎に図7及び図8に示すフローに従ってボッシュプロセスをシミュレーションする(STEP21A)。そしてそれらの結果から孔底部の保護膜を除去するのに必要な時間を見積もる(STEP21B)。これにより、一定時間にデポジションプロセスにより堆積した保護膜であって孔底部の領域の保護膜を除去するのに必要な時間を予測することができる。
【0072】
次に、STEP22においてボッシュプロセスによる最適条件の探索ステップを行う。ボッシュプロセスのうちエッチングプロセスを、孔底部の保護膜を除去するエッチングプロセス(第1エッチングプロセス)と、その後に行われる孔を掘り進めるエッチングプロセス(第2エッチングプロセス)とに分ける。
【0073】
第1エッチングプロセスにおける孔底部の保護膜を除去する時間としてSTEP21で求めた時間を設定する(STEP22A)。
次に、第2エッチングプロセスにおけるエッチング時間、RFバイアスパワーをパラメータとして、図7及び図8に示すフローに従ってボッシュプロセスをシミュレーションする(STEP22B)。パラメータの値として複数のものを設定してボッシュプロセスをシミュレーションすることで、最適条件を探索することが可能となる。
例えば、予測した加工形状、即ち、スキャロップの状況や孔の幅などと加工孔の深さなどから、最適な形状か否かを判断することができる(STEP22C)。
【0074】
よって、実際のプラズマ加工装置に対してどのようなプロセス条件を設定すればよいかがシミュレーションにより予測することができる。
【0075】
図10は、本発明の実施形態の変形例を示し、図1の条件設定手段11において設定されるプロセスのタイムチャートである。図の横軸は時間であり、縦軸は印加されるバイアスパワーである。(A)は、一サイクルに、一つのデポジションプロセスと一つのエッチングプロセスとが、プロセス時間T1、T2にそれぞれ設定され、各サイクルにおいて設定された条件を変えないバージョンである。
(B)は、一サイクルに、一つのデポジションプロセスと二つのエッチングプロセスとが、プロセス時間T11、T21、T22にそれぞれ設定され、各サイクルにおいて設定された条件を変えないバージョンである。
(C)は、一サイクルに、一つのデポジションプロセスと二つのエッチングプロセスとが設定されるものの、(B)とは異なり、サイクルの順に、デポジションプロセス内の一つのプロセス時間Tc11が、サイクル毎に変化してもよいバージョンである。
また図示しないが、サイクルに応じてデポジションプロセス内でのプロセス数、エッチングプロセス内でのプロセス数がサイクル番号で変化してもよい。
このように、条件設定手段11において、プロセスに関する条件の設定については任意にプロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーのうち一以上がパラメータとして設定される。
【0076】
以下、実際のシミュレーションの結果について説明する。
図11は、本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置により予測される孔の断面図で、(A)はエッチングプロセスを一段階で設定した場合の形状予想の結果を示し、(B)はエッチングプロセスを二段階で設定した場合の形状予測の結果を示す図である。(A)は、図10(A)に示すタイムチャートで、(B)は図10(B)に示すタイムチャートで、シミュレーションした結果である。(A)、(B)のそれぞれにおいてサイクル毎の処理時間が等しいので、同じ深さだけ削られていることが分かる。また、各サイクル毎でのエッチングに関するプロセス条件、デポジションに関するプロセス条件も(A)、(B)のそれぞれにおいて等しいので、サイクル毎の掘られる形状が等しいことが分かる。
【0077】
このように、ボッシュプロセスにおける各種パラメータを設定してシミュレートすることが可能となったので、ボッシュプロセスにより形成される孔の形状や寸法を予測することができ、装置条件の最適化のみならず、新たなデバイスの創設に寄与することができる。
【符号の説明】
【0078】
10:プラズマ加工形状シミュレーション装置
11:条件設定手段
12:フラックス情報データベース
13:化学反応データベース
14:軌道計算手段
15:レート計算手段
16:表面移動量計算手段
17:計算制御手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマにより加工される形状を予測するプラズマ加工形状シミュレーション装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体微細加工技術の一つにプラズマエッチングプロセスがある。その中でも垂直に深掘エッチングするためにボッシュプロセスがある(例えば、特許文献1参照)。このプロセスでは、加工面に保護膜を形成するデポジションプロセスと、孔底面の保護膜を除去して基板をエッチングするエッチングプロセスとを一サイクルとし、サイクルを複数回行う。
【0003】
このようなエッチング装置では、プラズマ発生源として例えば高周波電源を用い、真空ポンプにより排気されるチャンバー内に加工処理対象物を設置し、ガス導入口から反応性ガスを含んだガスをチャンバー内に流入させ、プラズマ発生源によりガスを分解してプラズマ化する。その際、加工処理対象物に直流、交流、高周波などのバイアスパワーを印加して、加工処理対象物に入射するイオンの量やエネルギーを調整している。ボッシュプロセスでは、デポジションプロセスとエッチングプロセスとで、異なる混合ガスが反復して用いられている。例えば、デポジションプロセスではC4F8プラズマが生成されて孔の底面及び側面に保護膜が形成され、エッチングプロセスではSF6プラズマが生成されている。エッチングプロセスは複数の段階に分けられ、先ずデポジションプロセスで形成された保護膜のうち孔の底面部分を除去し、次いでその除去されたSi基板をエッチングする。このデポジションプロセスとエッチングプロセスとを一つのサイクルとして繰り返すことによりSi基板に横方向への広がりを抑え、垂直な側面を維持しながら深さ方向に深く延びる孔を形成していくものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−129260号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】A.MISAKA,K.HARAFUJI,M.KUBOTA AND N.NOMURA , “Novel Surface Reaction Model in Dry-Etching Process Simulator”, JPN.J.APPL.PHYS 31 PAGE.4363-4669(1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実際に、上記ボッシュプロセスでは、半導体微細加工を行うに際してプロセス条件の最適化を図ったり、異常加工しない条件を設定したりするため経験に頼って試行錯誤がなされるため、手間及び労力がかかる。
【0007】
そこで、本発明においては、ボッシュプロセスにより形成される加工形状を予測することができる、プラズマ加工形状シミュレーション装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明におけるプラズマ加工形状シミュレーション装置は、加工処理対象物に関する条件と、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含むプロセスに関する条件と、シミュレーションに関する条件とを設定する条件設定手段と、加工処理対象物の加工表面に照射されるフラックスのエネルギー分布、該照射角度分布に関するデータを格納したフラックス情報データベースと、エッチング及びデポジションの各プロセスにおける化学反応データを格納した化学反応データベースと、加工表面における電荷分布により生じる電界分布を計算し加工表面に入射する荷電粒子の軌道を求める軌道計算手段と、軌道計算手段で求まる荷電粒子の軌道に基づいて加工表面に入射する各種イオンを求め、フラックス情報データベース及び化学反応データベースに格納されているデータを用いて、加工表面の各領域における反応計算を行い、エッチングレート及びデポジションレートを求めるレート計算手段と、レート計算手段で求まるエッチングレートとデポジションレートとの差分から表面移動量を算出する表面移動量計算手段と、条件設定手段により設定される加工処理対象物に関する条件及びシミュレーションに関する条件に基づいて、条件設定手段により設定されるエッチングプロセスにおけるプロセスに関する条件に従って表面移動量計算手段による表面移動量の算出と、条件設定手段により設定されるデポジションプロセスにおけるプロセスに関する条件に従って表面移動量計算手段による表面移動量の算出と、を繰り返す計算制御手段と、を備える。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のプラズマ加工形状シミュレーションプログラムは、加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含むプロセスにおける条件及びシミュレーションに関する条件を設定する条件設定ステップと、エッチングプロセスにおける条件に基づいたプラズマエッチングによる表面移動量を計算するエッチングプロセス表面移動量計算ステップと、デポジションプロセスにおける条件に基づいたプラズマデポジションによる表面移動量を計算するデポジションプロセス表面移動量計算ステップと、を備え、エッチングプロセス表面移動量計算ステップとデポジションプロセス表面移動量計算ステップとを条件設定ステップにて設定されたサイクル数繰り返すことにより形成される形状を求める。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ボッシュプロセスによる加工形状の予測が可能となり、これにより、デポジションプロセスによる保護膜を除去するエッチングプロセスの条件についての設定が容易になり、またボッシュプロセスの最適条件の探索を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置の構成図である。
【図2】プラズマエッチングによる基板表面の加工の様子を模式的に示す図である。
【図3】加工表面形状の一般的な計算のフローの概略を示す図である。
【図4】加工表面を2次元的に表す手法を説明する図である。
【図5】図3のフローにより求まる形状変化を模式的に示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーションプログラムにより実現されるプラズマ加工形状シミュレーション方法のフローの概略図である。
【図7】図6に示すプラズマ加工形状シミュレーション方法の詳細なフローの一部を示す図である。
【図8】図7に示すフローの残部を示す図である。
【図9】本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置を用いて最適条件の探索を示すフロー図である。
【図10】本発明の実施形態の変形例を示し、図1の条件設定手段において設定されるプロセスのタイムチャートである。
【図11】本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置により予測される孔の断面図で、(A)はエッチングプロセスを一段階で設定した場合の形状予想の結果を示し、(B)はエッチングプロセスを二段階で設定した場合の形状予測の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0013】
〔本発明の実施形態においてシミュレートされるプラズマプロセス処理〕
本発明の実施形態で実現されるシミュレーションは、Siなどの半導体の基板それ自体又は基板上に絶縁膜、金属膜などの各種の膜が積層されたもの(以下、単に、「加工処理対象物」と呼ぶ。)にマスクを配置した上でエッチングプロセスとデポジションプロセスとを1サイクルとし複数回のサイクルを繰り返すことにより形成される孔の形状とその寸法を予測するものである。これにより、孔の断面形状、孔の深さ方向の形状、それらの寸法が予測される。このプロセスそのものはボッシュプロセスと呼ばれている。エッチングプロセスにより孔が掘り進められる際に孔の側面がエッチングされて孔の径が広がらないように、デポジションプロセスにより保護膜が形成される。
【0014】
エッチングプロセスは、デポジションプロセスにより孔の底面に形成された保護膜を除去するプロセス(以下単に、「第1エッチングプロセス」と呼ぶ。)と孔の底面の保護膜を除去した後に孔を深くするプロセス(以下、「第2エッチングプロセス」と呼ぶ。)とに、大きく区分けされる。第1エッチングプロセスでは、例えばSF6プラズマが用いられ、底部の保護膜を除去するため加工処理対象物を載置するステージに印加するバイアスパワーが大きい。これに対し、第2エッチングプロセスでは、例えば同じSF6プラズマが用いられても、ステージに印加するバイアスパワーを小さくする。これは、第2エッチングプロセスでは、孔を深く掘り進めるので、デポジションプロセスで形成した孔側壁部の保護膜が除去され難くするためと考えられている。
【0015】
条件設定手段11では、エッチングの各プロセスに対して、前述の例にあっては第1エッチングプロセス、第2エッチングプロセス毎に、プロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーのうち一以上をパラメータとして設定される。バイアスパワーとは、例えば加工処理対象物を載置するステージに印加される直流、低周波、高周波などのパワーを指している。エッチングの各プロセスに対して上述のパラメータを変えて設定される。サイクル毎にエッチングの各プロセスが異ならないで一つのエッチングプロセスでも、又はサイクル毎にエッチングの各プロセスが3つ以上の異なる条件であってもよい。また、デポジションプロセスにおけるプロセス条件についても、エッチングプロセスと同様に、プロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーのうち一以上をパラメータとして設定されて構わない。よって、サイクル毎に一又は二以上のプロセス条件によるエッチングプロセスと一又は二以上のプロセス条件によるデポジションプロセスとからなり、サイクル毎にエッチングプロセスとデポジションプロセスとの各プロセス内でのプロセス条件数が一致しても異なっていてもよい。
【0016】
本発明の実施形態では、このような深掘加工による孔の形状をシミュレートすることで、現実のプラズマ加工装置においてプロセス条件の設定についての指針を与えることができる。
【0017】
〔プラズマ加工形状シミュレーション装置〕
図1は本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置10の構成図である。本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置10は、条件設定手段11とフラックス情報データベース12と化学反応データベース13と軌道計算手段14とレート計算手段15と表面移動量計算手段16と計算制御手段17とを備える。プラズマ加工形状シミュレーション装置10は、コンピュータ上でプラズマ加工形状シミュレーションプログラムを実行することによってプラズマ加工形状シミュレーション装置10の各要素を実現してもよい。図1には示されていないが、シミュレーションの開始指令、シミュレーションの結果の表示に必要な指令、条件設定手段11に対する入力指令などを行うと共にシミュレーションの結果を表示するためのディスプレイを備えた入出力部などを備える。
【0018】
以下、図1に示す装置の各構成について詳細に説明する。
条件設定手段11は各種条件を設定するためのものである。各種条件としては、加工処理対象物の条件、プロセスに関する条件及びシミュレーションに関する条件が挙げられる。
加工処理対象物に関する条件の項目としては、深掘される加工処理対象物、マスクなどの形状及び寸法などが挙げられ、加工処理対象物に関する条件として境界条件を含めて設定される。
プロセスに関する条件には、エッチング条件、デポジション条件、サイクル数などが含まれる。エッチング条件、デポジション条件の項目は、何れも、プロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーなどが挙げられる。エッチング条件、デポジション条件は、一サイクル内で固定される必要はなく、一サイクル中で異なったエッチング条件、デポジション条件が設定されてもよい。一サイクル中でのエッチング条件の数、デポジション条件の数は、サイクルの順番に応じて任意に設定されてもよいし、サイクルの順番に拠らず任意に設定されてもよい。
シミュレーションに関する条件の詳細については後述するが、メッシュ、時間刻み幅、ストリング分割数などがある。
【0019】
フラックス情報データベース12は、加工表面に照射するフラックスに関するデータを格納したものである。フラックスには荷電粒子とラジカルとがあるので個別にデータを格納している。
荷電粒子のフラックスに関するデータ項目としては、イオン種、エネルギー分布及び角度分布、強度などがある。条件設定手段11で設定されるプロセスに関する条件に応じて、例えば、Cl2+、SF5+などの各種イオンや電子の荷電粒子フラックスのエネルギー分布、角度分布、強度などに関するデータが格納されている。軌道計算手段14により求められるイオンフラックスの角度分布の結果が格納されてもよい。
ラジカルフラックスに関するデータ項目としては、ラジカル種、エネルギー分布及び角度分布、強度などがある。条件設定手段11で設定されるプロセスに関する条件に応じて、例えば、CF3*、F*、O*などの各種ラジカルフラックスのエネルギー分布、角度分布、強度などに関するデータが格納されている。
【0020】
化学反応データベース13は、エッチング及びデポジションの各プロセスにおける化学反応データを格納したものである。化学反応データは、軌道計算手段14による軌道計算において必要となるデータと、表面移動量計算手段16による反応計算において必要となるデータとが格納される。化学反応データベース13に格納されるデータは、材料物性のデータと表面反応に関するデータとが含まれている。例えば、軌道計算手段14ではポアソンの方程式やニュートンの運動方程式を用いて解析がなされるため、各材料の誘電率や導電率、イオン種や電子の質量などデータが格納されている。表面移動量計算手段16ではラジカル吸着反応計算、イオン反応計算及び熱励起型化学反応計算がなされるため、各計算において必要となる反応毎の各種係数が格納される。表面移動量計算手段16において必要となるために格納されるデータ項目としては、反応式、ラジカル及びイオンの吸着率、離脱率、活性化エネルギー、反応生成物が表面から再放出される際の角度分布やエネルギー分布などがある。
【0021】
ここで、化学反応データベース13へ格納される反応式について説明する。
例えば、エッチングプロセスにおける化学反応としては、次に例示するものがある。
イオン・エッチング過程の一反応として、
SFx++SiF4→F(2)*
を挙げることできる。つまり、イオンSFx+により加工表面上の蒸発物SiF4がエッチング反応して反応生成物F(2)*を離脱させる反応を挙げることができる。離脱率の値がエネルギー、角度の関数として又はこれらに拠らない定数として設定されている。なお、F(2)*における(2)とはここでは例示しないF*と区別するための記号である。
例えば、中性粒子の吸着過程の一反応として、
F(2)*+Si→Si(2)
を挙げることができる。つまり、中性粒子ラジカルF(2)*が加工表面上のSiと反応して、蒸発物Si(2)を生成する反応を挙げることができる。吸着率の値がエネルギー、角度の関数として又はこれらに拠らない定数として設定されている。なお、Si(2)における(2)とはここでは例示しないSiと区別するための記号である。
例えば、熱励起エッチング過程の一反応として、
SiF4(s)→SiF4(g)
を挙げることができる。つまり、加工表面上のSiF4(s)が熱励起によりSiF4(g)として離脱する反応を挙げることができる。反応係数、活性化エネルギーの各値がエネルギー、角度の関数として又はこれらに拠らない定数として設定されている。
【0022】
一方、デポジションプロセスにおける反応において、中性粒子の吸着過程の一反応として、
CxFy*+Si→Si_c
を挙げることができる。つまり、CxFy*がSi上に付着してSi_cを形成する反応を挙げることができる。吸着率の値がエネルギー、角度の関数として又はこれらに拠らない定数として設定されている。
【0023】
以上のような反応式に関する情報が、ラジカル及びイオンの吸着率、離脱率、活性化エネルギー、反応生成物が表面から再放出される際の角度分布やエネルギー分布と共に、化学反応データベース13に格納されている。
【0024】
ここで、材料物性のデータには、基板表面での反応生成物名とエッチング、デポジションの何れかとの組み合わせ以外に、原子数密度、分子数密度など粒子数密度、吸着サイトの面密度、比誘電率、消滅因子、導電性材料の導電率、電気的性質(例えば、導電体か絶縁体かの区別)、波長毎の光吸収係数、波長毎の欠陥発生係数などが材料毎に格納される。ここで、「材料」とは、反応生成物、基板材料を形成するものを意味する。一方、表面反応のデータには、中性粒子吸着モデル、イオン反応モデル、熱励起型化学反応モデルにおける各データが含まれる。中性粒子吸着反応モデルに関するデータ項目として、吸着反応による反応生成物名、入射ラジカル及び反応生成物毎の吸着率、ラジカル吸着の角度依存性、ラジカルの反射率などがある。イオン反応モデルに関するデータ項目として、イオンアシスト反応が生じる基板材料又は反応生成物名とイオン名との組み合わせ、離脱率、イオンアシスト反応の反応率などがある。熱励起型化学反応モデルに関するデータ項目として、熱励起型化学反応の反応係数、活性化エネルギー等などがある。
【0025】
軌道計算手段14は、レート計算手段15において必要となる荷電粒子の軌跡を算出するものであって、加工表面に入射する電子又はイオンの密度及びエネルギー分布並びに加工表面における電荷分布に基づいてプラズマから加工表面に入射する荷電粒子の軌道を求めるものである。軌道計算手段14は、条件設定手段11で設定し又は軌道計算手段14での計算で更新された、加工処理対象物に関する境界条件と、フラックス情報データベース12に入力され又は更新されている、ラジカルやイオンの種類や密度と、化学反応データベース13に入力されている誘電率、導電率といった材料の物性値、イオン種、原子の質量などに基づいて、電位分布を計算し、基板に流入する電子及びイオンの各軌跡を計算する。具体的には、加工表面における電荷の蓄積分布から、ポアソンの方程式を解くことにより、電荷蓄積分布により生じる電界を計算する。その後、その電界分布から、基板表面に流入する荷電粒子の軌跡を計算する。
【0026】
イオン軌道が計算されることで、エネルギー及び角度の関数として、イオンフラックス分布が求められる。これらの値は、フラックス情報データベース12に格納され、レート計算手段15による計算において用いられてもよい。
【0027】
レート計算手段15は、フラックス情報データベース12や化学反応データベース13に格納されている各データに基づいて加工表面の各領域における反応計算を行ったり又は軌道計算手段14で求まった荷電粒子の軌道を経て加工表面に入射する各種イオンの種類、量に基づいて加工表面の各領域における反応計算を行ったりすることにより、エッチングレート及びデポジションレートを求める。具体的には、プラズマから流入するラジカル、イオンの各フラックス密度、加工処理対象物表面への吸着確率、化学反応率、反射率などから、加工表面における各点において、エッチングレート及びデポジションレートを求める。
【0028】
表面移動量計算手段16は、レート計算手段15により求まるエッチングレートとデポジションレートとの差分から表面の移動量を計算し、例えばウエハの断面形状の経時変化を計算する。計算の詳細については後述する。
【0029】
レート計算手段15と表面移動量計算手段16とにより、軌道計算手段14による算出結果に基づいて化学反応データベース13に格納されているデータを参照しながら、ラジカル吸着反応、イオンアシスト反応、熱励起型化学反応による表面移動量が算出される。
【0030】
計算制御手段17は、条件設定手段11により設定されるシミュレーションに関する条件に基づいて、条件設定手段11により設定されるエッチングプロセスにおけるプロセスに関する条件に従って表面移動量計算手段16による表面移動量の算出処理と、条件設定手段11により設定されるデポジションプロセスにおけるプロセスに関する条件に従って表面移動量計算手段16による表面移動量の算出処理と、を繰り返すものである。繰り返しの回数は条件設定手段11のプロセスに関する条件として設定されるサイクル数で定まる。
【0031】
図1に示すプラズマ加工形状シミュレーション装置10では、予め、条件設定手段11において加工処理対象物に関する条件、プロセスの条件及びシミュレーションに関する条件の設定がなされ、フラックス情報データベース12及び化学反応データベース13に格納されている各データを参照しながら、計算制御手段17が、軌道計算手段14及びレート計算手段15を用いながら表面移動量計算手段16によって、エッチングによるエッチング量とデポジションによる堆積量を求めることで、ボッシュプロセスについてシミュレーションを行う。
【0032】
さらに、条件設定手段11に対しサイクル毎にエッチングのプロセス条件の順に例えばエッチング時間及びバイアスパワーをパラメータとして設定することで、計算制御手段17が、条件設定手段11に設定された条件に従って表面移動量計算手段16を制御する。これにより、サイクル毎にエッチングのプロセス条件の順に表面移動量を算出する。パラメータはプロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーのうち一又は複数であれば、プロセス時間としてのエッチング時間、バイアスパワーの組である必要はない。
【0033】
〔プラズマ加工形状予測方法〕
以下、本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置10によるプラズマ加工形状の予測方法について、具体的に説明する。
【0034】
〔前提〕
先ず、プラズマ加工形状をどのようにして予測するかを説明する前提として、加工表面の状態をどのように記述し、その表面状態の変化をどのように記述するかについて、概念的に説明する。
【0035】
図2は、プラズマエッチングによる基板表面の加工の様子を模式的に示す図である。基板表面がイオンでエッチングされている場合、加工表面では、化学反応及びスパッタリングが生じている。そこで、先ず、基板表面の輪郭を離散的な黒点(●)で示し、その間を直線で結ぶ。この直線をストリングと呼ぶことにする。ラジカルやイオンが表面に入射すると、表面では化学反応やスパッタリングが生じ、基板表面上にはラジカルが吸着したり、離脱したりする。それらをデポジションレート、エッチングレートとして表し、これらの差分によりエッチング速度又は成膜速度を求め、ストリングを移動させていく。以下の説明においては二次元の場合について説明するが、三次元の場合でも同様に適用可能である。また、プラズマによるデポジションの場合は図2に示す模式図において、ストリングによる移動の向きが逆向きになるに過ぎない。
【0036】
図3は加工表面形状の一般的な計算のフローの概略を示す図である。図4に示すように、実線で示すレジスト表面をストリングポイント(一般には「加工表面での各点」)で区切り、隣接するストリングポイント同士を点線で示すようにストリング(一般には「要素」)により近似する。このストリング上で表面反応を記述することを考える。基板材料の表面占有率をθ0とし、材料mの表面占有率をθm、吸着サイトの面密度をσsとすると、束縛条件として次式が成り立つ。
【数1】
【数2】
また、一般的に、材料mの単位時間当たりの生成数をGm、材料mの単位時間当たりの消滅数をHmとすると、次の基本方程式が成り立つ。
【数3】
【数4】
よって、束縛条件により基本方程式を解くことで、各吸着ラジカルの表面被覆率を算出する(STEP1−1)。なお、材料mはラジカルと呼ぶ場合もある。
【0037】
次に、エッチングレート及びデポジションレートを算出する(STEP1−2)。ここで、エッチングレートは、熱励起型化学反応によるエッチングレートと物理的スパッタリングによるエッチングレートとイオンアシスト反応によるエッチングレートとの和として算出される。デポジションレートは、堆積物が降り注ぐ効果によるデポジションレートと堆積物の生成によるデポジションレートとイオンアシスト反応によるデポジションレートとの和として算出される。プラズマによるエッチングとデポジションレートはそれぞれ次式のように求められる(非特許文献1)。
【0038】
すなわち、エッチングレートERを式(5)のように分解する。ERtotalは、吸着ラジカルに被覆されている表面における熱励起型化学反応エッチングレートであり、ERphysicalは、高エネルギーイオンによる清浄な被エッチング材料表面に対する物理的スパッタリングによるエッチングレートであり、ERionassistedは、高エネルギーイオンによる吸着ラジカルに被覆されている表面に対する物理的及び化学的スパッタリング(「イオンアシスト反応」とも呼ぶ。)によるエッチングレートである。
【数5】
【0039】
各エッチングレートERthermal、ERphysical及びERionassistedは、次のように決めることができる。点Pにおける熱励起型化学反応エッチングレートERthermalは、式(6)で表現される。
【数6】
【0040】
点Pにおける物理的スパッタリングによるエッチングレートERphyicalは、式(7)で表現される。
【数7】
式(7)から分かるように、ERphyicalは反応性イオンと非反応性イオンの両方のイオンiについての和である。
【0041】
点Pにおけるイオンアシスト反応によるエッチングレートERionassistedは、式(8)で表現される。
【数8】
【0042】
デポジションレートDRは式(9)のように分解することができる。式(9)の右辺の第1項は、堆積物が降り注ぐ効果によるデポジションレートである。式(9)の第2項は入射ラジカルと表面反応層のラジカルとが反応して堆積物が生成される効果によるデポジションレートである。式(9)の第3項はイオンアシスト反応によって表面反応層から堆積物が離脱する効果によるデポジションレートである。
【数9】
【0043】
点Pにおいて堆積物が降り注ぐ効果によるデポジションレートは、式(10)で示される。
【数10】
ここで、ρdはデポジション層の密度であり、σm0(ε)はラジカルmと清浄な被エッチング材料膜との間の吸着率であり、σmk(ε)はラジカルmと被エッチング材料膜上に形成されたラジカルkの吸着層膜との間の吸着率である。εはラジカルmのエネルギーである。
式(10)から分かるように、被エッチング材料膜上に形成されたラジカルkがラジカルmに置き換わる全てのkにわたって加算され、さらに全ての堆積物にわたってmが加算される。
【0044】
点Pにおいてエネルギーεを有する入射ラジカルと表面反応層のラジカルとが反応して堆積物が生成される効果によるデポジションレートは、式(11)で示される。
【数11】
【0045】
点Pにおいてエネルギーεを持ったイオンが入射し表面反応層から堆積物が離脱する反応は、一般にイオンアシスト反応と呼ばれ、このイオンアシスト反応の効果に基づくデポジションレートは、式(12)で示される。
【数12】
【0046】
次に、各ストリングPの移動速度を求める(STEP1−3)。即ち、エッチングレートとデポジションレートの差から、エッチングレートがデポジションレートより大であればエッチングが進み、逆にデポジションレートがエッチングレートより大であればデポジションが進むことになる。そして、任意時間における表面を記述するストリングポイントをつなぎ合わせることにより、表面移動速度が求まり、その任意時間における基板表面の形状を求めることが可能となり、形状についての結果を出力表示できる状態となる(STEP1−4)。図5は、このようにして求まる形状変化について示している。
【0047】
〔プラズマ加工形状シミュレーション方法の概略〕
図1に示すプラズマ加工形状シミュレーション装置10によるプラズマ加工形状シミュレーション方法の概略を説明する。図6は本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーションプログラムにより実現されるプラズマ加工形状予測方法のフローの概略図である。プラズマ加工形状シミュレーション方法は、図6に示すように、加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含めて各プロセスにおける条件及びシミュレーションに関する条件を設定する条件設定ステップSTEP11と、エッチングプロセスにおける条件に基づいたプラズマエッチングによる表面移動量を計算するエッチングプロセス表面移動量計算ステップSTEP12と、デポジションプロセスにおける条件に基づいたプラズマデポジションによる表面移動量を計算するデポジションプロセス表面移動量計算ステップSTEP13と、を備えている。エッチングプロセス表面移動量計算ステップSTEP12とデポジションプロセス表面移動量計算ステップSTEP13とを所定のサイクル数まで(STEP14でYesとなるまで)繰り返すことにより、形成される形状を予測する。
【0048】
〔荷電粒子の軌道計算、加工表面形状の計算〕
図1に示す表面移動量計算手段16が、軌道計算手段14及びレート計算手段15を用いて表面加工形状をどのように予測するかについて説明しながら、本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション方法について詳細に説明する。図7は、図6に示すプラズマ加工形状シミュレーション方法の詳細なフローの一部を示す図、図8は図7に示すフローの残部を示す図である。
【0049】
STEP11では、入力操作により、加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数及び各プロセスにおける条件並びにシミュレーションに関する条件を設定すると共に、照射フラックスの設定、エッチング及びデポジションのプロセスにおける化学反応についてフラックス情報データベース12及び化学反応データベース13を参照しながら設定する。
【0050】
具体的には、STEP11−1として、加工処理対象物に関する条件として、加工処理対象物、マスクなどの形状及び寸法などを加工処理対象物の材質と共に境界条件を含めて設定する。
【0051】
STEP11−2では、プロセスに関する条件として、ボッシュプロセスにおけるエッチングプロセス条件及びデポジションプロセス条件並びにサイクル数などを設定する。具体的には、例えば1サイクルにおけるエッチングプロセスとデポジションプロセスとの時間的な比又は各時間、エッチングプロセスにおける孔底部の保護膜を除去するためのプロセスと保護膜を除去した後の孔底面を掘り進めるためのプロセスとの時間的な比又は各時間、サイクル数や孔を掘り進めるためのプロセスの1サイクルの繰り返し回数を設定する。その際、バイアスパワーの印加の有無と大きさなども併せて設定する。
【0052】
STEP11−3では、フラックス情報データベース12を参照しながら、STEP11−2で設定したプロセスに関する条件に従ってラジカルの各データ項目を設定する。反応生成物が表面から再放出される際の角度分布やエネルギー分布などについても設定する。
【0053】
STEP11−4では、エッチング及びデポジションの各プロセスにおける化学反応を設定する。具体的には、STEP11−1、STEP11−2で設定した加工処理対象物の種類、ガス種などに対応して材料物性のデータと表面反応に関するデータを、化学反応データベース13を参照しながら、反応式、ラジカル及びイオンの吸着率、離脱率、活性化エネルギーなどを取得する。
【0054】
STEP11−5では、シミュレーションに関する条件として、メッシュ、時間刻み幅、ストリング分割数などを設定する。例えば、加工処理対象物となる例えば基板の領域を複数の要素(メッシュ)に分割し、基板の領域に相当する要素に材料の種類を設定する。マスクとなる部分の領域を設定することで加工表面の領域を定める。
【0055】
このように、STEP11では、シミュレーション対象とする表面の要素(二次元の場合にはストリング)の設定を行い、サイクルのループに移行する。
【0056】
サイクルのループは、エッチングプロセスとデポジションプロセスの各シミュレーションを順に行う。
【0057】
エッチングプロセスのシミュレーション(STEP12)においては、定常状態になるまで、電界分布の算出と荷電粒子の軌道計算を繰り返し行うことで軌道計算ステップを行う(STEP12−1)。先ず、軌道計算とイオンフラックス分布の設定を行う。
【0058】
軌道計算は、軌道計算手段14において、条件設定手段11で設定し又は軌道計算手段14での計算で更新された、加工処理対象物に関する境界条件と、フラックス情報データベース12に入力され又は更新されている、ラジカルやイオンの種類や密度と、化学反応データベース13に入力されている誘電率、導電率といった材料の物性値、イオン種、原子の質量などに基づいて、電位分布を計算してなされる。加工表面における電荷蓄積量を境界条件としてポアソンの方程式を解くことにより、電界分布を求め、イオン及び電子の各軌道をニュートンの運動方程式により計算する。電界分布が求められているためこの電位差による荷電粒子の加速度を考慮して、イオン及び電子の各速度及び進行方向を正確に求めることができる。
【0059】
具体的には、STEP12−1Aとして、入射するイオン及び電子が加工表面に到達したとして加工表面の電荷分布を求め、加工表面における各点での電荷蓄積量を境界条件としてポアソンの方程式を解いて電界分布を算出する。さらに、電界分布によりイオン及び電子を含む各荷電粒子の軌道をニュートンの運動方程式により求める。
【0060】
STEP12−1Bでは、この程求めた電界分布が前回求めた電界分布とほぼ同じであるか否かを判断し、同じ範囲であると判断できなければ、各イオンの軌道、電子の軌道に従って各イオン、電子が流入すると扱って、新たに電荷分布を算出し(STEP12−1C)、STEP12−1Aに戻る。STEP12−1Aにより求めた電界分布が前回求めた電界分布とほぼ同じであり、即ち電界分布が収束していると判断した場合には、加工表面における電界分布が定常となるので、各イオンの軌道及び速度に基づいて、加工表面の各点に入射するイオンに対して角度及びエネルギーの関数として設定することができる。統計量としてばらつきが小さくなるだけの十分な量の軌道計算を行うことが好ましい。また、既に、フラックス情報データベース12に格納されている関数を利用することができる場合には、軌道計算手段14は、その関数を利用してもよい。
【0061】
次に、STEP12−2として、レート計算手段15は、STEP12−1で求まった荷電粒子の軌道と、入力条件に応じてフラックス情報データベース12を参照するなどしてラジカル種毎にエネルギーと角度をパラメータとして入力された入射分布とから、次のような反応の計算を行う。先ず、加工表面に外から入射する荷電粒子、ラジカルなどが加工表面に吸着したり、吸着した荷電粒子やラジカルが加工表面から離脱したりする反応について、粒子などの表面反応にかかわる全種類の粒子について、入射エネルギーや入射角などを設定する。そして、加工表面の各点での各反応係数に基づいて、軌道算出ステップで求めた軌道に沿って加工表面の各点に入射するイオンとラジカルの入射フラックス分布とから、各エッチングレート及びデポジションレートを算出する。
【0062】
次に、STEP12−3として、各加工表面においてエッチングレートとデポジションレートとの差分から表面の移動量を算出する。
【0063】
上記STEP12−2とSTEP12−3とで求まる表面移動量の算出について詳細に説明する。
STEP12−2では、STEP11−3で設定したフラックス条件とSTEP11−4で設定した各反応係数に基づいて、各加工表面において表面材料とラジカル、イオンとの反応を計算し、各材料の被覆率が定常状態となるまで繰り返す。これにより、エッチングレート及びデポジションレートがそれぞれ求まる。エッチングレートは、前述の式(5)のように、熱励起型化学反応、物理的スパッタリング、イオンアシスト反応のそれぞれによるエッチングレートの和として求める。デポジションレートは、前述の式(9)のように、堆積物が降り注ぐ効果、堆積物の生成、イオンアシスト反応のそれぞれによるデポジションレートの和として求める。これらの反応毎の各係数を加味して各レートを求めることで、加工表面の移動推移を算出する。そして、STEP12−3において、エッチングレートとデポジションレートの差分から加工表面の移動量を算出する。
【0064】
次に、STEP12−4では、STEP12−3の表面移動量の算出処理で求まった加工表面の各点での移動速度から、加工条件で設定されている加工量又は加工時間を満たすか否かを判定し、満たさない場合には、STEP12−1に戻って新たに加工表面各点を設定し直して軌道算出ステップに戻る。すなわち、STEP12−3で求めたエッチング量がエッチング量に達していない場合には、新たに、表面各点を設定し直し、STEP12−1に戻るという処理を繰り返す。一方、STEP12−3で求めたエッチング量が設定したエッチング量に達している場合には、このエッチングプロセスのループから抜け、デポジションプロセスに移行する。なお、エッチング量ではなく、エッチング時間によって、ループの処理の繰り返しを判断してもよい。
【0065】
デポジションプロセスのシミュレーション(STEP13)においても、エッチングプロセスのシミュレーション(STEP12)と同様の計算を行う。即ち、デポジションプロセスにおいて、定常状態になるまで、電界分布の算出と荷電粒子の軌道計算を繰り返し行う(STEP13−1)。軌道計算手段14が、STEP13−1A、STEP13−1Bで「Yes」となるまでSTEP13−1C、STEP13−1Aを繰り返し行う。次に、STEP13−2として、レート計算手段15が、STEP13−1で求まった荷電粒子の軌道と、入力条件に応じてフラックス情報データベース12を参照するなどしてラジカル種毎にエネルギーと角度をパラメータとして入力された入射分布とから、エッチングプロセスと同様な計算手法により反応の計算を行い、加工表面の各点での各反応係数に基づいて、軌道算出ステップ(STEP13−1)で求めた軌道に沿って加工表面の各点に入射するイオンとラジカルの入射フラックス分布とから、エッチングレート及びデポジションレートを算出する。
【0066】
次に、STEP13−3として、STEP13−2で求まったエッチングレートとデポジションレートとの差分から表面移動量を算出する。そして、STEP13−4としてデポジションプロセスが終了するまでSTEP13−1に戻る。
【0067】
そして、ボッシュプロセスの条件設定(STEP11−2)で設定したサイクル数をエッチングプロセスとデポジションプロセスとの各計算を行うまで、STEP12に戻る。
【0068】
このようにして、本発明の実施形態では、加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含むプロセスにおける条件及びシミュレーションに関する条件を設定する条件設定ステップと、エッチングプロセスにおける条件に基づいたプラズマエッチングによる表面移動量を計算するエッチングプロセス表面移動量計算ステップと、デポジションプロセスにおける条件に基づいたプラズマデポジションによる表面移動量を計算するデポジションプロセス表面移動量計算ステップと、を備える。エッチングプロセス表面移動量計算ステップとデポジションプロセス表面移動量計算ステップとを条件設定ステップにて設定されたサイクル数を繰り返すことにより形成される形状を求める。よって、ボッシュプロセスにより形成される加工形状を容易に予測することができる。
【0069】
このようにボッシュプロセスによる加工形状の予測が可能となるので、これにより、デポジションプロセスにより形成される保護膜を除去するためのエッチングプロセスの条件設定やボッシュプロセスの最適条件の探索を行うことが容易になる。
【0070】
図8は、本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置10を用いて最適条件の探索を示すフロー図である。
【0071】
STEP21では、デポジションプロセスで形成した保護膜のうち孔の底部に堆積した膜をエッチングプロセスにより除去するために必要な時間をシミュレーションする。先ず、デポジションプロセスでの保護膜の堆積時間を固定した値として設定しエッチングプロセスの時間の値として複数設定し、その複数設定したエッチングプロセスの時間毎に図7及び図8に示すフローに従ってボッシュプロセスをシミュレーションする(STEP21A)。そしてそれらの結果から孔底部の保護膜を除去するのに必要な時間を見積もる(STEP21B)。これにより、一定時間にデポジションプロセスにより堆積した保護膜であって孔底部の領域の保護膜を除去するのに必要な時間を予測することができる。
【0072】
次に、STEP22においてボッシュプロセスによる最適条件の探索ステップを行う。ボッシュプロセスのうちエッチングプロセスを、孔底部の保護膜を除去するエッチングプロセス(第1エッチングプロセス)と、その後に行われる孔を掘り進めるエッチングプロセス(第2エッチングプロセス)とに分ける。
【0073】
第1エッチングプロセスにおける孔底部の保護膜を除去する時間としてSTEP21で求めた時間を設定する(STEP22A)。
次に、第2エッチングプロセスにおけるエッチング時間、RFバイアスパワーをパラメータとして、図7及び図8に示すフローに従ってボッシュプロセスをシミュレーションする(STEP22B)。パラメータの値として複数のものを設定してボッシュプロセスをシミュレーションすることで、最適条件を探索することが可能となる。
例えば、予測した加工形状、即ち、スキャロップの状況や孔の幅などと加工孔の深さなどから、最適な形状か否かを判断することができる(STEP22C)。
【0074】
よって、実際のプラズマ加工装置に対してどのようなプロセス条件を設定すればよいかがシミュレーションにより予測することができる。
【0075】
図10は、本発明の実施形態の変形例を示し、図1の条件設定手段11において設定されるプロセスのタイムチャートである。図の横軸は時間であり、縦軸は印加されるバイアスパワーである。(A)は、一サイクルに、一つのデポジションプロセスと一つのエッチングプロセスとが、プロセス時間T1、T2にそれぞれ設定され、各サイクルにおいて設定された条件を変えないバージョンである。
(B)は、一サイクルに、一つのデポジションプロセスと二つのエッチングプロセスとが、プロセス時間T11、T21、T22にそれぞれ設定され、各サイクルにおいて設定された条件を変えないバージョンである。
(C)は、一サイクルに、一つのデポジションプロセスと二つのエッチングプロセスとが設定されるものの、(B)とは異なり、サイクルの順に、デポジションプロセス内の一つのプロセス時間Tc11が、サイクル毎に変化してもよいバージョンである。
また図示しないが、サイクルに応じてデポジションプロセス内でのプロセス数、エッチングプロセス内でのプロセス数がサイクル番号で変化してもよい。
このように、条件設定手段11において、プロセスに関する条件の設定については任意にプロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーのうち一以上がパラメータとして設定される。
【0076】
以下、実際のシミュレーションの結果について説明する。
図11は、本発明の実施形態に係るプラズマ加工形状シミュレーション装置により予測される孔の断面図で、(A)はエッチングプロセスを一段階で設定した場合の形状予想の結果を示し、(B)はエッチングプロセスを二段階で設定した場合の形状予測の結果を示す図である。(A)は、図10(A)に示すタイムチャートで、(B)は図10(B)に示すタイムチャートで、シミュレーションした結果である。(A)、(B)のそれぞれにおいてサイクル毎の処理時間が等しいので、同じ深さだけ削られていることが分かる。また、各サイクル毎でのエッチングに関するプロセス条件、デポジションに関するプロセス条件も(A)、(B)のそれぞれにおいて等しいので、サイクル毎の掘られる形状が等しいことが分かる。
【0077】
このように、ボッシュプロセスにおける各種パラメータを設定してシミュレートすることが可能となったので、ボッシュプロセスにより形成される孔の形状や寸法を予測することができ、装置条件の最適化のみならず、新たなデバイスの創設に寄与することができる。
【符号の説明】
【0078】
10:プラズマ加工形状シミュレーション装置
11:条件設定手段
12:フラックス情報データベース
13:化学反応データベース
14:軌道計算手段
15:レート計算手段
16:表面移動量計算手段
17:計算制御手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含むプロセスに関する条件及びシミュレーションに関する条件を設定する条件設定手段と、
加工処理対象物の加工表面に照射されるフラックスのエネルギー分布、照射角度分布に関するデータを格納したフラックス情報データベースと、
エッチング及びデポジションの各プロセスにおける化学反応データを格納した化学反応データベースと、
加工表面における電荷分布により生じる電界分布を計算し加工表面に入射する荷電粒子の軌道を求める軌道計算手段と、
上記軌道計算手段で求まる荷電粒子の軌道に基づいて加工表面に入射する各種イオンを求め、上記フラックス情報データベース及び化学反応データベースに格納されているデータを用いて、加工表面の各領域における反応計算を行い、エッチングレート及びデポジションレートを求めるレート計算手段と、
上記レート計算手段で求まるエッチングレートとデポジションレートとの差分から表面移動量を算出する表面移動量計算手段と、
上記条件設定手段により設定される加工処理対象物に関する条件及びシミュレーションに関する条件に基づいて、上記条件設定手段により設定されるエッチングプロセスにおけるプロセスに関する条件に従って上記表面移動量計算手段による表面移動量の算出と、上記条件設定手段により設定されるデポジションプロセスにおけるプロセスに関する条件に従って上記表面移動量計算手段による表面移動量の算出と、を繰り返す計算制御手段と、
を備える、プラズマ加工形状シミュレーション装置。
【請求項2】
前記条件設定手段は、エッチングプロセス、デポジションプロセスの何れか一方又は双方を構成する複数のプロセスに対してプロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーのうち一以上をパラメータとして設定可能とし、
前記計算制御手段が、前記条件設定手段において設定されたパラメータ及びプロセスに関する条件に従って前記表面移動量計算手段を制御することにより、サイクル毎に、上記複数のプロセスの条件の順に表面移動量を算出する、請求項1に記載のプラズマ加工形状シミュレーション装置。
【請求項3】
加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含むプロセスにおける条件及びシミュレーションに関する条件を設定する条件設定ステップと、
エッチングプロセスにおける条件に基づいたプラズマエッチングによる表面移動量を計算するエッチングプロセス表面移動量計算ステップと、
デポジションプロセスにおける条件に基づいたプラズマデポジションによる表面移動量を計算するデポジションプロセス表面移動量計算ステップと、
を備え、
上記エッチングプロセス表面移動量計算ステップと上記デポジションプロセス表面移動量計算ステップとを上記条件設定ステップにて設定されたサイクル数繰り返すことにより形成される形状を求める、プラズマ加工形状シミュレーションプログラム。
【請求項4】
前記条件設定ステップにおいて、エッチングプロセス、デポジションプロセスの何れか一方又は双方を構成する複数のプロセスに対してプロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーのうち一以上をパラメータとして設定し、
前記エッチングプロセス表面移動量計算ステップ、前記デポジションプロセス表面移動量計算ステップの何れか一方又は双方において、前記条件設定ステップにおいて設定されたパラメータ毎に表面移動量を算出する、請求項3に記載のプラズマ加工形状シミュレーションプログラム。
【請求項1】
加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含むプロセスに関する条件及びシミュレーションに関する条件を設定する条件設定手段と、
加工処理対象物の加工表面に照射されるフラックスのエネルギー分布、照射角度分布に関するデータを格納したフラックス情報データベースと、
エッチング及びデポジションの各プロセスにおける化学反応データを格納した化学反応データベースと、
加工表面における電荷分布により生じる電界分布を計算し加工表面に入射する荷電粒子の軌道を求める軌道計算手段と、
上記軌道計算手段で求まる荷電粒子の軌道に基づいて加工表面に入射する各種イオンを求め、上記フラックス情報データベース及び化学反応データベースに格納されているデータを用いて、加工表面の各領域における反応計算を行い、エッチングレート及びデポジションレートを求めるレート計算手段と、
上記レート計算手段で求まるエッチングレートとデポジションレートとの差分から表面移動量を算出する表面移動量計算手段と、
上記条件設定手段により設定される加工処理対象物に関する条件及びシミュレーションに関する条件に基づいて、上記条件設定手段により設定されるエッチングプロセスにおけるプロセスに関する条件に従って上記表面移動量計算手段による表面移動量の算出と、上記条件設定手段により設定されるデポジションプロセスにおけるプロセスに関する条件に従って上記表面移動量計算手段による表面移動量の算出と、を繰り返す計算制御手段と、
を備える、プラズマ加工形状シミュレーション装置。
【請求項2】
前記条件設定手段は、エッチングプロセス、デポジションプロセスの何れか一方又は双方を構成する複数のプロセスに対してプロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーのうち一以上をパラメータとして設定可能とし、
前記計算制御手段が、前記条件設定手段において設定されたパラメータ及びプロセスに関する条件に従って前記表面移動量計算手段を制御することにより、サイクル毎に、上記複数のプロセスの条件の順に表面移動量を算出する、請求項1に記載のプラズマ加工形状シミュレーション装置。
【請求項3】
加工処理対象物に関する条件、エッチングプロセスとデポジションプロセスとを一サイクルとした際のサイクル数を含むプロセスにおける条件及びシミュレーションに関する条件を設定する条件設定ステップと、
エッチングプロセスにおける条件に基づいたプラズマエッチングによる表面移動量を計算するエッチングプロセス表面移動量計算ステップと、
デポジションプロセスにおける条件に基づいたプラズマデポジションによる表面移動量を計算するデポジションプロセス表面移動量計算ステップと、
を備え、
上記エッチングプロセス表面移動量計算ステップと上記デポジションプロセス表面移動量計算ステップとを上記条件設定ステップにて設定されたサイクル数繰り返すことにより形成される形状を求める、プラズマ加工形状シミュレーションプログラム。
【請求項4】
前記条件設定ステップにおいて、エッチングプロセス、デポジションプロセスの何れか一方又は双方を構成する複数のプロセスに対してプロセス時間、ガス種、ガス圧、ガス流量、加工処理対象物の温度及びバイアスパワーのうち一以上をパラメータとして設定し、
前記エッチングプロセス表面移動量計算ステップ、前記デポジションプロセス表面移動量計算ステップの何れか一方又は双方において、前記条件設定ステップにおいて設定されたパラメータ毎に表面移動量を算出する、請求項3に記載のプラズマ加工形状シミュレーションプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−186394(P2012−186394A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49680(P2011−49680)
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(ロボット・新機械イノベーションプログラム)「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(592131906)みずほ情報総研株式会社 (187)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月7日(2011.3.7)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(ロボット・新機械イノベーションプログラム)「異分野融合型次世代デバイス製造技術開発プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(592131906)みずほ情報総研株式会社 (187)
【Fターム(参考)】
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