説明

プランジャ

【課題】相対的に動作する部材間に用いられるプランジャにおいて、部材相互を十分に円滑に動作させることができるようにする。
【解決手段】外周面に雄ネジ11が設けられた円筒状の本体10と、該本体10の内部に収容された圧縮バネ20と、前記本体10の内部先端側に進退自在で抜脱不能に組付けられ、前記圧縮バネ20によって前進方向に付勢された進退体30と、該進退体30の先端側に設けられた凹部31と、該凹部31の底に配設された複数の小球40と、該小球40によって転動自在に支持されると共に、一部が前記進退体30の先端から突出するように前記凹部31に抜脱不能に組付けられたボール50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プランジャに関するものである。
【背景技術】
【0002】
機械要素としてのプランジャは、公知であり、一般的なプランジャは、外周面に雄ネジが設けられた筒状の本体と、本体に内蔵された圧縮バネと、本体に進退自在に組付けられると共に圧縮バネによって前進方向に付勢されたピンとで構成されている。そして,このようなプランジャは、プランジャの取付け対象となる部材に雌ネジを設け、この雌ネジに本体の雄ネジを螺合させることで、取付け対象の部材に簡便に取付けることができるものである。
【0003】
また、プランジャは、様々な分野にて用いることができるものであり、相対的に動作する部材間に用いる場合には、一方の部材にプランジャを取付けて、他方の部材の動きを規制したり、他方の部材を押圧したり、一方の部材に対する他方の部材の動きや形状の変化をピンの進退によっ吸収したりすることができるものである。ここで、プランジャの代表的な用い方として、一方の部材にプランジャを取付け、他方の部材に穴や溝を設けて、一方の部材に取付けられたプランジャのピンを他方の部材に設けられた穴や溝に係合させることで、平面上や回転軸回り等に相対的に動作する部材間の位置決めや回転角度の割出しを行うことを例示することができる。
【0004】
なお、以下では、プランジャを相対的に動作する部材間に用いる場合において、プランジャが取付けられる側の部材を「取付側部材」と称し、プランジャのピンが当接する側の部材を「当接側部材」と称することとする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
相対的に動作する部材間にプランジャを用いる場合には、当接側部材によってプランジャのピンが押圧されて後退した状態でピンの先端が当接側部材に摺接する。ここで、ピンと当接側部材との接触抵抗が大きいと、取付側部材に対する当接側部材の円滑な動作を阻害してしまう。
【0006】
ところで、プランジャの中には、前述したピンに代えて本体にボールを転動自在に組込んだものがある。所謂「ボールプランジャ」である。ボールプランジャによれば、当接側部材に当接したボールが転動するため、取付側部材に対する当接側部材の円滑な動作を阻害し難くすることができる。
【0007】
しかしながら、従前のボールプランジャは、本体に内蔵された圧縮バネによって直接、前進方向に付勢されたものであるため、ボールの転動性が十分に良好であるとは言えず、はやり、取付側部材に対する当接側部材の円滑な動作を阻害してしまうことがあった。特に、高荷重用のボールプランジャでは、圧縮バネによる強い押圧力がボールに加わっているため、ボールが転動し難く、取付側部材に対する当接側部材の円滑な動作を阻害してしまうといった問題が顕著に生じていた。
【0008】
本発明は、上記実情を鑑みてなされたものであり、相対的に動作する部材間に用いられるプランジャにおいて、部材相互を十分に円滑に動作させることができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の採った主要な手段は、
「外周面に雄ネジが設けられた円筒状の本体と、
該本体の内部に収容された圧縮バネと、
前記本体の内部先端側に進退自在で抜脱不能に組付けられ、前記圧縮バネによって前進方向に付勢された進退体と、
該進退体の先端側に設けられた凹部と、
該凹部の底に配設された複数の小球と、
該小球によって転動自在に支持されると共に、一部が前記進退体の先端から突出するように前記凹部に抜脱不能に組付けられたボールと
を備えることを特徴とするプランジャ」
である。
【0010】
上記構成のプランジャでは、進退体が従前の一般的なプランジャのピンとして機能するのであるが、この進退体の先端には、進退体の凹部に組付けられたボールが設けられており、このボールが、当接側部材に当接する。そして、ボールは、進退体の凹部の底に配設された複数の小球によって転動自在に支持されており、良好に転動する。
【0011】
よって、上記構成のプランジャでは、当接側部材に当接する進退体のボールが良好に転動するため、相対的に動作する部材間に用いても、部材相互を十分に円滑に動作させることができる。
【0012】
上述した手段において、
「前記進退体は、先端部分に外面が先端ほど小径となるテーパー状のボール係止部を有し、該ボール係止部によって前記ボールを抜脱不能とするものであり、
前記本体は、先端部分に前記ボール係止部の外面に当接する進退体係止部を有し、該進退体係止部によって前記進退体を抜脱不能とするものである
ことを特徴とするプランジャ」
とするのが好適である。
【0013】
本体から進退体を抜脱不能とするためには、進退体に鍔部等の大径部分を設け、この大径部分を係止する係止部を本体に設けることを単純に想定することができる。しかしながら、このような態様では、進退体に大径部分を設ける分だけ、プランジャ全体において径方向の大型化が余儀なくされる。
【0014】
これに対して、上記構成のプランジャでは、進退体の先端部分にボールを抜脱不能とするボール係止部を設け、このボール係止部の外面を先端ほど小径、所謂「先細」となるテーパー状としている。そして、先細のテーパー状となったボール係止部の外面に当接する進退体係止部によって本体からの進退体の抜けを防止している。
【0015】
よって、上記構成のプランジャでは、進退体に鍔部等の大径部分を設けることなく本体からの進退体の抜けを防止することができ、プランジャ全体において径方向の小型化を図ることができる。
【0016】
なお、進退体や本体を金属によって形成する場合には、進退体にボールを挿入した後や本体に進退体を挿入した後に、ボール係止部や進退体係止部を金属素材の押圧変形、所謂「カシメ」によって形成することで、進退体に対するボールの組付けや本体に対する進退体の組付けを簡便に行うことができる。
【0017】
また、進退体からのボールの抜けを防止するためのボール係止部や本体からの進退体の抜けを防止するための進退体係止部を、進退体にボールを挿入した後や本体に進退体を挿入した後に素材の変形加工によって形成するに限らず、ボールを組付ける進退体の凹部の内面や進退体を組付ける円筒状の本体の内面を入口側が小径となるように予め成形しておいてもよい。
【0018】
ボール係止部や進退体係止部を予め形成しておく場合には、進退体の後端や本体の後端を開口させておき、進退体の後端側からボールを挿入したり、本体の後端側から進退体を挿入するようにしてもよい。このような態様では、進退体にボールを挿入した後や本体に進退体を挿入した後で、進退体の後端の開口や本体の後端の開口を別途の部材によって塞げばよい。
【0019】
また、進退体や本体を樹脂によって形成する場合には、予め形成されたボール係止部や進退体係止部の側から、進退体の凹部にボールを圧入したり、本体の内部に進退体を圧入する等、ボール係止部や進退体係止部を弾性変形させることによって、進退体にボールを抜脱不能に組付けることができるようにしたり、本体に進退体を抜脱不能に組付けることができるようにしてもよい。
【0020】
上述した手段において、
「前記進退体は、後端部分に径方向に突出する鍔部を有するものであり、
前記本体は、先端部分に前記鍔部に当接する進退体係止部を有し、該進退体係止部によって前記進退体を抜脱不能とするものである
ことを特徴とするプランジャ」
とするのが好適である。
【0021】
本体にボールを直接組付けたボールプランジャでは、本体からのボールの突出量をボールの半径未満としなければならず、進退する部材の進退ストローク(ボールプランジャでは、ボールの進退ストローク)、すなわち、プランジャとしての進退ストローク、を大きく設定することができない。
【0022】
これに対して、上記構成のプランジャでは、ボールが進退体を介して本体に組付けられている。また、進退体の後端部分に鍔部を設けて、この鍔部を本体の進退体係止部によって係止することで、本体からの進退体の抜けを防止している。このため、進退体の全長を長くすることで、プランジャのストロークを長くすることが可能である。
【0023】
よって、上記構成のプランジャでは、プランジャとしての進退ストロークを、ボールの半径以上に自由に設定することができる。
【発明の効果】
【0024】
上述した通り、本発明によれば、相対的に動作する部材間にプランジャを用いても、部材相互を十分に円滑に動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るプランジャの一例を示す中央縦断面図である。
【図2】本発明に係るプランジャの別の例を示す中央縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係るプランジャの実施形態を、以下、図面に従って詳細に説明する。
【0027】
<実施形態1>
図1に、プランジャ100の一例を示す。
【0028】
プランジャ100の本体10は、金属や樹脂等の適宜の素材によって、後端側に底を有する有底の筒状に形成されている。そして、本体10の外周面には、全長に渡って雄ネジ11が設けられており、この雄ネジ11をプランジャ100の取付け対象の部材に設けられた雌ネジに螺合させることで、取付け対象の部材にプランジャ100を簡便に取付けることができるようにしてある。また、本体10の後端側には、六角レンチ用の六角穴等の工具掛け13が設けられている。
【0029】
本体10の内部は、収容部12となっており、収容部12には、圧縮スプリング20が収容されている。また、収容部20の先端側には、進退体30が本体10の軸方向に進退自在に収容されており、この進退体30は、圧縮スプリング20によって前進方向に付勢されている。
【0030】
進退体30は、先端側に開口する凹部31を有するカップ状に形成されており、凹部31の底には、複数の小球40が配設されている。また、凹部31には、小球40よりも先端側にボール50が収容されており、凹部31の入口部分の内面が小径となったボール係止部32によって、凹部31からのボール50の抜けが防止されている。ここで、進退体30を金属によって形成する場合には、凹部31にボール50を挿入した後に凹部31の入口部分をカシメ加工することで、ボール係止部32を簡便に形成することができる。
【0031】
また、ボール係止部32は、外面が先端ほど小径となるテーパー状に形成されており、このボール係止部32の外面に当接する本体10の進退体係止部14によって、本体10からの進退体30の抜けが防止されている。ここで、本体10を金属によって形成する場合には、収容部12に進退体30を挿入した後に収容部12の入口部分をカシメ加工することで、進退体係止部14を簡便に形成することができる。
【0032】
このように、本例のプランジャ100では、外面がテーパー状となったボール係止部32を利用して本体10からの進退体30の抜けを防止する構造であることから、進退体330に、本体10からの抜止めのための大径部を設ける必要がない。よって、プランジャ100全体において、径方向の小型化を図ることができる。また、プランジャ100の軸方向において、ボール係止部32と進退体係止部14とが重複する構造となるため、プランジャ100全体において、軸方向の短縮化を図ることもできる。
【0033】
ところで、進退体30の凹部31の底に配設された複数の小球40は、ボール50を円滑に転動させるように支持するものであるが、凹部31の底の全周に渡って多数の小球40を配設すれば、高荷重に耐え得るプランジャ100とすることができる。また、ボール50を転動自在に支持するためには、ボール50を3点で支持すればよいことから、小球40を3個としてもよく、このようにすることで、プランジャ100全体の構造を簡略化することができる。
【0034】
また、本例のプランジャ100では、進退体30の凹部31の底に、本体10の収容部12に連通する貫通孔33が設けられている。この貫通孔33は、所謂「エア抜き孔」であり、進退体30の凹部31の底に貫通孔33を設けることで、本体10の収容部12を、本体10と進退体30との間隙だけでなく、進退体30とボール50との間隙を通じても外界と連通させることができる。よって、本体10に対して進退体30が後退する際において、収容部12内の空気を外界に良好に排出させることができる。また、進退体30の凹部31に貫通孔33を設けることで、凹部31の内面にボール50が密接するような態様であっても、凹部31にボール50を円滑に挿入することができる。
【0035】
なお、凹部31の貫通孔33の大きさは、適宜設定することができるが、凹部31の底に配置する小球40よりも小径とするのが望ましい。貫通孔33を小球40よりも小径とすることで、凹部31内に小球40を組入れる際に貫通孔33から小球40が落下する虞がなく、進退体30に小球40及びボール50を組付ける際の作業を簡便化することができるからである。
【0036】
<実施形態2>
図2に、プランジャ100の別の例を示す。
【0037】
このプランジャ100は、以下に説明する本体10に対する進退体30の抜けを防止する構造の他は、実施形態1で例示したプランジャ100と同様である。
【0038】
このプランジャ100では、進退体30の後端部分に、径方向に突出する鍔部34が設けられており、この鍔部34を本体10の先端部分に設けられた進退体係止部14によって係止することで、本体10からの進退体30の抜けが防止されている。
【0039】
このような構造のプランジャ100では、進退体30の先端側を本体10から大きく突出させて、進退体30の進退ストロークを大きく設定することができる。よって、ボール50の半径以上の進退ストロークとなったプランジャ100を自由に設定することができる。
【0040】
また、本体10から突出する進退体30の外周面を、研磨加工が施された高精度な径寸法の外周面とすることで、相互に移動する部材間の高精度な位置決めを実現することもできる。ボール50が当接する側の部材に高精度な径寸法の穴を設けて、この穴に進退体30を嵌合せることで、高精度な位置決めを行うことができるからである。
【符号の説明】
【0041】
10 本体
11 雄ネジ
12 収容部
13 工具掛け
14 進退体係止部
20 圧縮バネ
30 進退体
31 凹部
32 ボール係止部
33 貫通孔
40 小球
50 ボール
100 プランジャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に雄ネジが設けられた円筒状の本体と、
該本体の内部に収容された圧縮バネと、
前記本体の内部先端側に進退自在で抜脱不能に組付けられ、前記圧縮バネによって前進方向に付勢された進退体と、
該進退体の先端側に設けられた凹部と、
該凹部の底に配設された複数の小球と、
該小球によって転動自在に支持されると共に、一部が前記進退体の先端から突出するように前記凹部に抜脱不能に組付けられたボールと
を備えることを特徴とするプランジャ。
【請求項2】
前記進退体は、先端部分に外面が先端ほど小径となるテーパー状のボール係止部を有し、該ボール係止部によって前記ボールを抜脱不能とするものであり、
前記本体は、先端部分に前記ボール係止部の外面に当接する進退体係止部を有し、該進退体係止部によって前記進退体を抜脱不能とするものである
ことを特徴とする請求項1に記載のプランジャ。
【請求項3】
前記進退体は、後端部分に径方向に突出する鍔部を有するものであり、
前記本体は、先端部分に前記鍔部に当接する進退体係止部を有し、該進退体係止部によって前記進退体を抜脱不能とするものである
ことを特徴とする請求項1に記載のプランジャ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−255821(P2010−255821A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109754(P2009−109754)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(596039936)株式会社タカイコーポレーション (1)
【Fターム(参考)】