説明

プリフォーム圧縮成形方法およびプリフォーム圧縮成形装置

【課題】大型な機械を導入したり、生産性を落としたりすることなく、しわ、とりわけカッターマークに起因するしわが防止されたプリフォームを生成すること。
【解決手段】本発明のプリフォーム圧縮成形方法は、メス型1内に、溶融樹脂塊6を投入する投入工程と、メス型1内にオス型2を挿入し、メス型1に投入された溶融樹脂塊6を圧縮することによってプリフォーム60を生成する圧縮工程とを備えている。圧縮工程の間、メス型1またはオス型2の少なくとも一方を回転させながらメス型1内にオス型2を挿入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器などをブロー成形するために用いられるプリフォームを生成するためのプリフォーム圧縮成形方法およびプリフォーム圧縮成形装置に係り、とりわけ、しわ、とりわけカッターマークに起因するしわが防止されたプリフォームを生成するためのプリフォーム圧縮成形方法およびプリフォーム圧縮成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、従来のプリフォーム圧縮成形装置50は、溶融樹脂塊6が投入されるメス型1と、メス型1に対向して配置され、メス型1内に挿入されることによって、メス型1内に投入された溶融樹脂塊6を圧縮しプリフォームを生成するオス型2と、メス型1の上方であってオス型2の側方に配置され、水平方向にスライド自在なスライド型3とを備えている。なお、上述したメス型1、オス型2およびスライド型3によって、金型10が構成されている。
【0003】
このような従来のプリフォーム圧縮成形装置50によってプリフォーム60を成形すると、プリフォーム60にしわ62が発生することがある(図7参照)。そして、このようにプリフォームにしわ62が発生すると、プリフォーム60からブロー成形して得られる容器にもしわが発生し、容器の外観が悪くなったり、しわが発生した部分で容器の強度が低下したりする問題がある。
【0004】
このため、プリフォームのしわを防止する方法として、空気を排出しながらオス型によってメス型内の溶融樹脂塊を圧縮する方法(例えば、特許文献1参照)や、メス型の内面を梨地にする方法(例えば、特許文献2参照)や、メス型内に供給された溶融樹脂塊のカッター(図示せず)による切断面をガラス転位点以上または溶融温度以上に加熱する方法(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
【特許文献1】特開2000−25729
【特許文献2】特開2000−62008
【特許文献3】特開2006−264138
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されたような空気を排出しながらオス型によってメス型内の溶融樹脂塊を圧縮する方法では、エアベント等では効果が少なく、真空ポンプ等による強制排気しなければ十分な効果が得られないが、このように真空ポンプ等で空気を強制的に排気するためには、プリフォーム圧縮成形装置を大型化する必要となる。また、プリフォームの成形時に空気を排気する時間が必要なため、成形サイクルタイムが長くなり、生産性が劣ってしまう。さらに、このようにプリフォームの成形時に排気したとしても、溶融樹脂を押出装置から押し出してカッターで切断したときに形成されるカッターマークに起因するしわを防止することはできない。
【0006】
また、特許文献2に示されたようなメス型の内面を梨地にする方法においては、同じメス型を用いて繰り返して用いると、溶融樹脂塊との摩擦により梨地の凹凸が小さくなり、効果が薄れてくる。また梨地の凹凸に溶融樹脂塊のカスが入ると、離型性が悪くなる。
【0007】
また、特許文献3に示されたようなメス型内に供給された溶融樹脂塊のカッターによる切断面をガラス転位点以上または溶融温度以上に加熱する方法においては、溶融樹脂塊を加熱する工程が、メス型内に溶融樹脂塊が供給されてから成形が開始されるまでの間に行われる。このため、加熱する工程の分だけ成形時間が長くなってしまう。また、特許文献3では、溶融樹脂塊を加熱する手段として、加熱された気体を吹き付けているが、この加熱された気体によって、溶融樹脂塊だけでなくメス型も同時に加熱されるため、プリフォームの冷却時間が長くなりサイクルタイムが長くなってしまい、生産性が悪くなってしまう。
【0008】
また別の問題として、押出装置から溶融樹脂を押し出したときのドローダウンを防止するため、加熱温度を低くしなければならないが、加熱温度が低いとカッターマークが残りやすく、かつ圧縮成形時に溶融樹脂塊が金型に十分賦形しない。
【0009】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、大型な機械を導入したり、生産性を落としたりすることなく、しわ、とりわけカッターマークに起因するしわが防止されたプリフォームを生成することができるプリフォーム圧縮成形方法およびプリフォーム圧縮成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、メス型内に、溶融樹脂塊を投入する投入工程と、
メス型内にオス型を挿入し、メス型に投入された溶融樹脂塊を圧縮することによってプリフォームを生成する圧縮工程とを備え、
前記圧縮工程の間、メス型またはオス型の少なくとも一方を回転させながらメス型内にオス型を挿入することを特徴とするプリフォーム圧縮成形方法である。
【0011】
このような構成により、大型な機械を導入したり、生産性を落としたりすることなく、しわ、とりわけカッターマークに起因するしわが防止されたプリフォームを生成することができる。
【0012】
本発明は、前記圧縮工程の間、メス型およびオス型を回転させながらメス型内にオス型を挿入することを特徴とするプリフォーム圧縮成形方法である。
【0013】
このような構成により、プリフォームの内面側および外面側の両面のしわを効率よく防止することができる。
【0014】
本発明は、溶融樹脂塊が投入されるメス型と、
メス型に対向して配置され、メス型内に挿入されることによって、メス型内に投入された溶融樹脂塊を圧縮しプリフォームを生成するオス型とを備え、
メス型またはオス型の少なくとも一方が、回転機構により回転可能であることを特徴とするプリフォーム圧縮成形装置である。
【0015】
このような構成により、大型な機械を導入したり、生産性を落としたりすることなく、しわ、とりわけカッターマークに起因するしわが防止されたプリフォームを生成することができる。
【0016】
本発明は、メス型およびオス型が、回転機構により回転可能であることを特徴とするプリフォーム圧縮成形装置である。
【0017】
このような構成により、プリフォームの内面側および外面側の両面のしわを効率よく防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、大型な機械を導入したり、生産性を落としたりすることなく、しわ、とりわけカッターマークに起因するしわが防止されたプリフォームを生成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施の形態
以下、本発明に係るプリフォーム圧縮成形装置およびプリフォーム圧縮成形方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。ここで、図1乃至図5は本発明の実施の形態を示す図である。なお、図1は金型10が開いた状態にあるプリフォーム圧縮成形装置50の断面図であり、図2はプリフォーム60を圧縮成形する途中のプリフォーム圧縮成形装置50の断面図である。
【0020】
図1および図2に示すように、プリフォーム圧縮成形装置50は、溶融樹脂塊6が投入されるメス型1と、メス型1に対向して配置され、メス型1内に挿入されることによって、メス型1内に投入された溶融樹脂塊6を圧縮しプリフォーム60(図5参照)を生成するオス型2とを備えている。なお、溶融樹脂塊6は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリ乳酸(PLA)等の熱可塑性樹脂からなっている。
【0021】
また、図1および図2に示すように、メス型1の上方であってオス型2の側方には、水平方向にスライド自在なスライド型3が設けられている。また、オス型2の上端には、オス型2を上下方向に駆動する押し込みロッド5が設けられている。なお、上述したメス型1、オス型2およびスライド型3によって、金型10が構成されている。
【0022】
また、図1および図2に示すように、オス型2の外周面には、雌ネジ(第一ネジ)2aが形成されている。また、オス型2の周縁外方には、内周面に雌ネジ2aに係合する雄ネジ(第二ネジ)15aを有するガイドスリーブ15が設けられている。
【0023】
そして、オス型2をメス型1に向かって駆動する押し込みロッド5と、オス型2の外周面に設けられた雌ネジ2aと、ガイドスリーブ15の雄ネジ15aとによって、オス型2を回転させる回転機構40が構成されている。すなわち、押し込みロッド5によってオス型2をメス型1に向かって駆動することによって、オス型2の雌ネジ2aをガイドスリーブ15の雄ネジ15aに沿って移動させ、オス型2を回転させることができる。
【0024】
なお、図1および図2に示すように、オス型2の外周面の二箇所に雌ネジ2aが形成され、ガイドスリーブ15にはこの雌ネジ2aに対応するよう、雄ネジ15aが二箇所で設けられている。
【0025】
また、図1に示すように、オス型2、スライド型3、ガイドスリーブ15および押し込みロッド5は、メス型1に対して上方に分離可能となっている。
【0026】
また、図3および図4に示すように、プリフォーム圧縮成形装置50の上流側には、溶融樹脂6’(この溶融樹脂6’は、後述のように、カッター22によって切断されると溶融樹脂塊6となる)を供給する押出装置21が設けられている。なお、本願において「上流」とは、溶融樹脂6’からプリフォーム60を成形する過程において、上流にあることを意味する。
【0027】
また、図3および図4に示すように、プリフォーム圧縮成形装置50の上流側に位置する押出装置21の下方には、押出装置21から押し出された溶融樹脂6’を把持する把持部26と、把持部26によって把持された溶融樹脂6’を切断するカッター22とが設けられている。この把持部26とカッター22は、図4に示すように、回転支持体29によってR方向に回転自在に支持されている。ところで、図4のS地点は、押出装置21によって溶融樹脂6’が押し出され、供給される地点を示す。
【0028】
また、図4において、プリフォーム圧縮成形装置50の金型10は、回転体10bによってR方向に回転可能となっている。
【0029】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用について述べる。
【0030】
まず、図4のS地点において、押出装置21から溶融樹脂6’が押し出される(図3および図4参照)。
【0031】
次に、押出装置21の下方で(S地点で)、把持部26によって溶融樹脂6’が把持されるとともに、カッター22によって切断され、溶融樹脂塊6が得られる(図3および図4参照)。
【0032】
次に、把持部26によって把持された溶融樹脂塊6が、回転支持体29によってR方向に回転する(図4参照)。その後、把持部26は、把持した溶融樹脂塊6が金型10のメス型1の上方に位置したときに、溶融樹脂塊6を開放する。このことによって、溶融樹脂塊6がメス型1内に投入される(投入工程)。
【0033】
次に、2つのスライド型3を水平方向に移動させて閉じる。そして、このスライド型3をメス型1に密着させ、型締めをする(図2参照)。
【0034】
次に、押し込みロッド5によって、メス型1内にオス型2が挿入される(図1参照)。このことによって、メス型1に投入された溶融樹脂塊6が圧縮され、プリフォーム60が生成される(圧縮工程)。このとき、オス型2は回転しながらメス型1内に挿入される。
【0035】
具体的には、押し込みロッド5によってオス型2をメス型1に向かって駆動することによって、オス型2の雌ネジ2aがガイドスリーブ15の雄ネジ15aに沿って移動し、オス型2が回転しながらメス型1内に挿入される。
【0036】
このように、オス型2が回転しながらメス型1内に挿入され、溶融樹脂塊6がオス型2によって回転力を加えられながら圧縮されるので、溶融樹脂塊6の表面にカッター21で切断されたときのカッターマークが形成されていても、このカッターマークは引き伸ばされる。
【0037】
このため、成形されたプリフォーム60には、外観や品質に悪影響を及ぼすしわ62は全く生じず、生じたとしても、実用上ほとんど問題と成り得ないしわ跡61が生じる程度である(図5および図7参照)。
【0038】
また、オス型2が回転しながら溶融樹脂塊6を圧縮しプリフォーム60を成形するので、プリフォーム60のうちオス型2と接する部分、すなわちプリフォーム60の内面側のしわを、とりわけ効率よく防止することができる。
【0039】
また、図1および図2に示すように、雌ネジ2aがオス型2の外周面の二箇所に設けられ、当該雌ネジ2aがガイドスリーブ15に設けられた二箇所の雄ネジ15aに沿って移動する。このように、オス型2は二箇所の雄ネジ15aによって案内されるため、オス型2が回転する際に溶融樹脂塊6から反発力が加わったとしても、オス型2は安定した状態で回転しながら溶融樹脂塊6を圧縮することができる。
【0040】
ところで、オス型2は、オス型2が溶融樹脂塊6に接してから成形が完了するまでの間に、1/12回転(30°)〜3/4回転(270°)することが好ましい。
【0041】
次に、オス型2がメス型1内に挿入された状態のまま、回転体によって金型10がR方向に回転する(図4参照)。この間、メス型1およびオス型2によって生成されたプリフォーム60が冷却される。
【0042】
次に、金型10が回転体によって所定の位置まで移動すると、メス型1内からオス型2が引き出される。その後、プリフォーム60がメス型1内から取り出される。
【0043】
ところで、上記では回転機構40として、オス型2をメス型1に向かって駆動する押し込みロッド5と、オス型2の外周面に設けられた雌ネジ2aと、ガイドスリーブ15の雄ネジ15aからなるものを用いて説明したが、これに限ることなく、例えば、オス型2に歯車を設け、当該歯車を電動モータによって回転させるようなものなどを用いてもよい。
【0044】
また、上記ではオス型2を回転させる態様を用いて説明したが、これに限ることなく、メス型1を回転台の上に配置するなどして、メス型1を回転させてもよい。このようにメス型1を回転させることによって、とりわけ、プリフォーム60のうちメス型1と接する部分、すなわちプリフォーム60の外面側のしわを効率よく防止することができる。
【0045】
さらに、オス型2とメス型1をそれぞれ逆方向に回転させてもよい。このように、オス型2とメス型1をそれぞれ逆方向に回転させることによって、プリフォーム60の内面側および外面側の両面のしわを効率よく防止することができる。
【0046】
また、上記では、オス型2の外周面に雌ネジ2aが形成され、ガイドスリーブ15が内周面に当該雌ネジ2aに係合する雄ネジ15aを有している態様を用いて説明したが、これに限ることなく、オス型2の外周面に雄ネジが形成され、ガイドスリーブ15が内周面に当該雄ネジに係合する雌ネジを有するような態様を用いてもよい。
【0047】
なお、オス型2やメス型1は、圧縮成形する間、常にオス型2やメス型1が回転する必要はなく、圧縮成形する間の一定期間だけ回転すればよい。
【0048】
また、本実施の形態では、押し込みロッド5によってオス型2がメス型1に向かって駆動されているが、これに限ることなく、メス型1がオス型2に向かって駆動されても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態において、金型が開いた状態にあるプリフォーム圧縮成形装置を示す断面図。
【図2】本発明の実施の形態において、プリフォームを圧縮成形する途中のプリフォーム圧縮成形装置を示す断面図。
【図3】本発明によるプリフォーム圧縮成形装置の実施の形態における押出装置、カッターおよび把持部を示す側方図。
【図4】本発明の実施の形態によるプリフォーム圧縮成形装置に、溶融樹脂塊を供給する態様を示す平面図。
【図5】本発明の実施の形態によるプリフォーム圧縮成形装置によって生成されたプリフォームを示す斜視図。
【図6】従来のプリフォーム圧縮成形装置を示す断面図。
【図7】従来のプリフォーム圧縮成形装置によって生成されたプリフォームを示す斜視図。
【符号の説明】
【0050】
1 メス型
2 オス型
2a 雌ネジ(第一ネジ)
3 スライド型
5 押し込みロッド
6 溶融樹脂塊
6’ 溶融樹脂
10 金型
15 ガイドスリーブ
15a 雄ネジ(第二ネジ)
21 押出装置
22 カッター
26 把持部
29 回転支持体
40 回転機構
50 プリフォーム圧縮成形装置
60 プリフォーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メス型内に、溶融樹脂塊を投入する投入工程と、
メス型内にオス型を挿入し、メス型に投入された溶融樹脂塊を圧縮することによってプリフォームを生成する圧縮工程とを備え、
前記圧縮工程の間、メス型またはオス型の少なくとも一方を回転させながらメス型内にオス型を挿入することを特徴とするプリフォーム圧縮成形方法。
【請求項2】
前記圧縮工程の間、メス型およびオス型を回転させながらメス型内にオス型を挿入することを特徴とする請求項1記載のプリフォーム圧縮成形方法。
【請求項3】
溶融樹脂塊が投入されるメス型と、
メス型に対向して配置され、メス型内に挿入されることによって、メス型内に投入された溶融樹脂塊を圧縮しプリフォームを生成するオス型とを備え、
メス型またはオス型の少なくとも一方は、回転機構により回転可能であることを特徴とするプリフォーム圧縮成形装置。
【請求項4】
メス型およびオス型は、回転機構により回転可能であることを特徴とする請求項3記載のプリフォーム圧縮成形装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−173934(P2008−173934A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11815(P2007−11815)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】