説明

プリンに基づくCDK阻害剤とチロシンキナーゼ阻害剤の組合せ、及び増殖性障害の治療におけるその使用

本発明は、(i)ErbB阻害剤と、(ii)(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリドム(pyridm)−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩とを含む組合せに関する。発明のさらなる態様は、本発明による組合せを含む医薬品及び医薬組成物、並びにこれらを使用する治療方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌及び他の増殖性障害の治療に適した医薬の組合せに関する。
【背景技術】
【0002】
プロテインキナーゼは、本質的な細胞過程の重要な調節因子であり、これらは、異なる活性部位を含むことによって化合物の結合を可能にするので、キナーゼは、抗癌剤発見にとって魅力的な分野である[Dancey, J. and E.A. Sausville, Issues and progress with protein kinase inhibitors for cancer treatment. Nature Reviews Drug Discovery, 2003. 2: p. 296-313]。しかし、最初の標的プロテインキナーゼ阻害剤が、認可された癌化学療法剤となったのは、BCR−ABLを標的にするイマチニブの臨床開発に成功してからであった[Kantarjian, H., et al., Hematologic and Cytogenetic Responses to Imatinib Mesylate in Chronic Myelogenous Leukemia. N EnglJ Med, 2002. 346(9): p. 645-652]。現在、プロテインキナーゼは、抗癌剤発見にとって非常に活発な分野であり、多くのプロテインキナーゼファミリーが、薬剤開発プログラムの中心となっている。そのような発見プログラムは、腫瘍発生の間に調節が解除される、シグナル伝達経路を標的にすることが多い。
【0003】
ErbBファミリーのメンバーは、多くの他の成長因子受容体と同様に、リガンドが刺激されると二量体化し、その細胞質チロシンキナーゼドメインを通じて自己リン酸化する。活性化されると、ErbBキナーゼは、ERK及びPKBを含めたいくつかの細胞プロテインキナーゼを介してそのシグナルを伝達することによって、最終的にサイクリンD1レベルの上方制御をもたらし、サイクリン依存性キナーゼ(CDK、cyclin dependent kinase)を活性化し、細胞増殖を開始させる[Harari, D. and Y. Yarden, Molecular mechanisms underlying ErbB2/HER2 action in breast cancer. Oncogene., 2000. 19(53): p. 6102-14]。乳癌患者の最大30%における、HER2(ErbB2)の過剰発現を含めた、いくつかの異なるヒト癌において、ErbB受容体チロシンキナーゼシグナル伝達の過剰刺激が立証されているが[Slamon, D.J., et al., Human breast cancer: correlation of relapse and survival with amplification of the HER-2/neu oncogene. Science., 1987. 235(4785): p. 177-82]、EGFR(ErbB1)は、卵巣癌(35〜60%)、頭頸部腫瘍(70〜100%)及び非小細胞肺癌(NSCLC、non-small cell lung cancer;50〜90%)において過剰発現する[Tortora, G. and F. Ciardiello, Anti-epidermal growth factor receptor drugs in cancer therapy. Expert Opinion on Investigational Drugs, 2002. 11(6): p. 755-768、Salomon, D.S., et al., Epidermal growth factor-related peptides and their receptors in human malignancies. Crit Rev Oncol Hematol., 1995. 19(3): p. 183-232]。ErbBファミリーを標的にする薬剤を開発するために、2つの主な手法が探求されている。トラスツズマブ及びセツキシマブなどのヒト化モノクローナル抗体は、それぞれ、HER2及びEGF受容体に結合し、それによって受容体の二量体化/活性化を遮断し、これらのタンパク質の細胞表面からの除去を促進する[Harari, D. and Y. Yarden, Molecular mechanisms underlying ErbB2/HER2 action in breast cancer. Oncogene., 2000. 19(53): p. 6102-14]。対照的に、エルロチニブ及びゲフィチニブは、EGFRのATP結合活性部位に直接結合する小分子であり、チロシンキナーゼ活性を遮断する[Silvestri, G.A. and M.P. Rivera, Targeted Therapy for the Treatment of Advanced Non-small Cell Lung Cancer: A Review of the Epidermal Growth Factor Receptor Antagonists 10.1378/chest.128.6.3975. Chest, 2005. 128(6): p. 3975-3984]。これらの作用剤のそれぞれについて、その後の分裂促進シグナル伝達の喪失により、細胞増殖が停止する。
【0004】
CDKは、薬剤発見の展望から、相当量の興味を集めている第2のキナーゼファミリーであり、3つの最も進歩した化合物、セリシクリブ(CYC202、R−ロスコビチン)、アルボシジブ(フラボピリドール)及びSNS−032(以前はBMS−387032)は、すべて現在、フェーズII臨床開発にある[Shapiro, G.I., Cyclin-dependent kinase pathways as targets for cancer treatment. J Clin Oncol., 2006. 24(11): p. 1770-83、Senderowicz, A.M., Small-molecule cyclin-dependent kinase modulators. Oncogene, 2003. 22: p. 6609-6620]。細胞周期チェックポイントの調節に関与するタンパク質をリン酸化するというその重要な役割を通じて、CDKは、細胞分裂周期の規則的進行を制御する[Shapiro, G.I., Cyclin-dependent kinase pathways as targets for cancer treatment. J Clin Oncol., 2006. 24(11): p. 1770-83]。癌細胞では、同族パートナーであるサイクリンの過剰発現又はp16などの内因性阻害剤の喪失によるCDKの活性化により、特定の細胞周期チェックポイントで、通常停止され、修復又は誘発されることによってアポトーシスを起こす細胞が不適切に増殖する。[Shapiro, G.I. and J.W. Harper, Anticancer drug targets: cell cycle and checkpoint control. Journal of Clinical Investigation, 1999. 104(12): p. 1645-1653]。細胞周期を制御することに加えて、CDK7及びCDK9などのいくつかのCDKは、RNAポリメラーゼIIのカルボキシ末端ドメインをリン酸化することによって転写を調節する。セリシクリブ、アルボシジブ及びSNS−032はすべてCDK7及び/又は9を阻害し、それによって転写を阻害し、それぞれ約3時間及び30分の短い半減期を有する、Mcl−1及びサイクリンD1[MacCallum, D.E., et al., Seliciclib (CYC202, R-Roscovitine) Induces Cell Death in Multiple Myeloma Cells by Inhibition of RNA Polymerase II-Dependent Transcription and Down-regulation of Mcl-1. Cancer Res, 2005. 65(12): p. 5399-5407、Whittaker, S.R., et al., The Cyclin-dependent kinase inhibitor CYC202 (R-roscovitine) inhibits retinoblastoma protein phosphorylation, causes loss of Cyclin D1, and activates the mitogen-activated protein kinase pathway. Cancer Research, 2004. 64(1): p. 262-272]などのタンパク質を下方制御する[Schubert, K.M. and V. Duronio, Distinct roles for extracellular-signal-regulated protein kinase (ERK) mitogen-activated protein kinases and phosphatidylinositol 3-kinase in the regulation of Mcl-1 synthesis. Biochemical journal, 2001. 356: p. 473-480、Carlson, B., et al., Down-regulation of cyclin D1 by transcriptional repression in MCF-7 human breast carcinoma cells induced by flavopiridol. Cancer Res., 1999. 59(18): p. 4634-41]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Dancey, J. and E.A. Sausville, Issues and progress with protein kinase inhibitors for cancer treatment. Nature Reviews Drug Discovery, 2003. 2: p. 296-313
【非特許文献2】Kantarjian, H., et al., Hematologic and Cytogenetic Responses to Imatinib Mesylate in Chronic Myelogenous Leukemia. N Engl J Med, 2002. 346(9): p. 645-652
【非特許文献3】Harari, D. and Y. Yarden, Molecular mechanisms underlying ErbB2/HER2 action in breast cancer. Oncogene., 2000. 19(53): p. 6102-14
【非特許文献4】Slamon, D.J., et al., Human breast cancer: correlation of relapse and survival with amplification of the HER-2/neu oncogene. Science., 1987. 235(4785): p. 177-82
【非特許文献5】Tortora, G. and F. Ciardiello, Anti-epidermal growth factor receptor drugs in cancer therapy. Expert Opinion on Investigational Drugs, 2002. 11(6): p. 755-768
【非特許文献6】Salomon, D.S., et al., Epidermal growth factor-related peptides and their receptors in human malignancies. Crit Rev Oncol Hematol., 1995. 19(3): p. 183-232
【非特許文献7】Silvestri, G.A. and M.P. Rivera, Targeted Therapy for the Treatment of Advanced Non-small Cell Lung Cancer: A Review of the Epidermal Growth Factor Receptor Antagonists 10.1378/chest.128.6.3975. Chest, 2005. 128(6): p. 3975-3984
【非特許文献8】Shapiro, G.I., Cyclin-dependent kinase pathways as targets for cancer treatment. J Clin Oncol., 2006. 24(11): p. 1770-83
【非特許文献9】Senderowicz, A.M., Small-molecule cyclin-dependent kinase modulators. Oncogene, 2003. 22: p. 6609-6620
【非特許文献10】Shapiro, G.I. and J.W. Harper, Anticancer drug targets: cell cycle and checkpoint control. Journal of Clinical Investigation, 1999. 104(12): p. 1645-1653
【非特許文献11】MacCallum, D.E., et al., Seliciclib (CYC202, R-Roscovitine) Induces Cell Death in Multiple Myeloma Cells by Inhibition of RNA Polymerase II-Dependent Transcription and Down-regulation of Mcl-1. Cancer Res, 2005. 65(12): p. 5399-5407
【非特許文献12】Whittaker, S.R., et al., The Cyclin-dependent kinase inhibitor CYC202 (R-roscovitine) inhibits retinoblastoma protein phosphorylation, causes loss of Cyclin D1, and activates the mitogen-activated protein kinase pathway. Cancer Research, 2004. 64(1): p. 262-272
【非特許文献13】Schubert, K.M. and V. Duronio, Distinct roles for extracellular-signal-regulated protein kinase (ERK) mitogen-activated protein kinases and phosphatidylinositol 3-kinase in the regulation of Mcl-1 synthesis. Biochemical journal, 2001. 356: p. 473-480
【非特許文献14】Carlson, B., et al., Down-regulation of cyclin D1 by transcriptional repression in MCF-7 human breast carcinoma cells induced by flavopiridol. Cancer Res., 1999. 59(18): p. 4634-41
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、様々な増殖性障害、より詳細には癌の治療において治療用途を有する新規な組合せを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様は、(i)ErbB阻害剤と、(ii)(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチルペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩とを含む組合せに関する。
【0008】
第2の態様は、本発明による組合せ及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0009】
第3の態様は、治療において同時、順次、又は別々に使用するための組合せ製剤としての、(i)ErbB阻害剤;と、(ii)(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩とを含む医薬品に関する。
【0010】
第4の態様は、増殖性障害の治療方法であって、(i)ErbB阻害剤と、(ii)(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤又は薬学的に許容されるその塩とを対象に、同時、順次、又は別々に投与するステップを含む方法に関する。
【0011】
第5の態様は、非小細胞肺癌(NSCLC)の治療方法であって、(i)ErbB阻害剤と、(ii)(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩とを対象に、同時、順次、又は別々に投与するステップを含む方法に関する。
【0012】
第6の態様は、
(i)ErbB阻害剤と、
(ii)(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩と
を含むキットのパーツ(parts)に関する。
【0013】
本発明のさらなる態様は、(i)ErbB阻害剤と、(ii)式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩、
【0014】
【化1】


(I)
【0015】
(式中、
及びRは、それぞれ独立に、H又はアルキルであり、
及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル又はアリールであり、
はアルキル又はシクロアルキルであり、そのそれぞれは、1又は複数のOH基で置換されていてもよく、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、NO、OH、OMe、CN、NH、COOH、CONH、又はSONHである)と
を含む組合せに関する。
【0016】
本発明のさらなる態様は、前記組合せを含む医薬品、医薬組成物及びキットのパーツ、並びにこれらを使用する治療方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に示す好適な実施形態は、本発明の上述した態様すべてに適用できる。
【0018】
上述したように、本発明は、上記に示したような、ErbB阻害剤及びCDK阻害剤を含む組合せに関する。
【0019】
好適な一実施形態では、ErbB阻害剤は、ErbB1(EGFR)阻害剤である。
【0020】
EGFR阻害剤は、AG1478、セツキシマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、マツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブ、ペルツズマブ、カネルチニブ、バンデタニブ、EKB−569、HKI−272、BIBW−2992、AEE−788、XL647、BMS−599626、PKI−116及びARRY−334543から選択されることが好ましい。
【0021】
EGFR阻害剤は、AG1478、セツキシマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ及びラパチニブから選択されることがより好ましい。
【0022】
別の好適な実施形態では、ErbB阻害剤はErbB2(Her2)阻害剤である。ErbB2阻害剤はトラスツズマブであることがより好ましい。
【0023】
好適な一実施形態では、ErbB阻害剤は、Her2及びEGFR(例えば、ラパチニブ、カネルチニブ、EKB−569、HKI−272、BIBW−2992、AEE−788、XL647、BMS−599626、PKI−116及びARRY−334543)の両方を標的にする。
【0024】
好適な一実施形態では、ErbB阻害剤は、AG1478、トラスツズマブ、セツキシマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、マツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブ、ペルツズマブ、カネルチニブ、バンデタニブ、EKB−569、HKI−272、BIBW−2992、AEE−788、XL647、BMS−599626、PKI−116、ARRY−334543から選択される。
【0025】
ErbB阻害剤は、AG1478、トラスツズマブ、セツキシマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ及びラパチニブから選択されることがより好ましい。
【0026】
特に好適な一実施形態では、EGFR阻害剤はAG1478である。
【0027】
AG1478[4−(3−クロロアニリノ)−6,7−ジメトキシキナゾリン]は、EGFRチロシンキナーゼ活性の可逆性の、非常に強力な(IC50=3nM)選択された阻害剤であり、EGFシグナル伝達遮断薬として一般に使用される(www.alomone.com)。AG1478は以下の化学構造である。
【0028】
【化2】

【0029】
別の特に好適な実施形態では、ErbB阻害剤はトラスツズマブである。
【0030】
上述したように、トラスツズマブ(Herceptin(登録商標))は、組換えDNA由来ヒト化モノクローナル抗体であり、これは、細胞ベースのアッセイ(Kd=5nM)において、ヒト上皮成長因子受容体2タンパク質、HER2(human epidermal growth factor receptor 2)の細胞外ドメインに、高い親和性で選択的に結合する(Coussens, L. et al., Science, 1985; 230: 1132-9;Slamon, D. J. et al., Science, 1989; 244:707-12)。抗体はIgGκであり、これは、HER2に結合するマウス抗体(4D5)の相補性決定領域を伴ったヒトフレームワーク領域を含む。
【0031】
単剤療法については、トラスツズマブは、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する転移性乳癌を有し、その転移性疾患のための1又は複数の化学療法レジメンを受けている患者を治療するために指示される。トラスツズマブは、腫瘍がHER2タンパク質を過剰発現する転移性乳癌を有し、その転移性疾患のための化学療法を受けていない患者を治療するために、パクリタキセルと組み合わせて使用することにも認可されている。
【0032】
本願者による研究では、HER2受容体を過剰発現する乳癌細胞株における、組合せでのセリシクリブとトラスツズマブの効果を調査した。さらに、セリシクリブとチロホスチンAG1478との間の相互作用を検査することによって、CDK阻害剤とEGFRチロシンキナーゼの小分子阻害剤との間に相乗作用が起こるかどうかを判定した[Osherov, N. and A. Levitzki, Epidermal-growth-factor-dependent activation of the src-family kinases. Eur J Biochem., 1994. 225(3): p. 1047-53]。結果は、セリシクリブは、HER2を過剰発現する乳癌細胞株SkBr3において、トラスツズマブと相乗作用することを実証した。セリシクリブは、それぞれ、野生型及び突然変異体EGFRを発現する、NSCLC細胞株H358及びH1650において、AG1478とも相乗作用した。各場合において、相乗作用は、HER2/EGFRシグナル伝達経路の阻害を伴った。これらのインビトロでの知見をさらに展開することによって、セリシクリブとエルロチニブの組合せが、H358異種移植モデルにおいて相乗的であることを実証した。本明細書に示したデータは、セリシクリブとErbB受容体ファミリーの阻害剤との組合せは、癌細胞増殖に対して相乗効果を生じ得ることを示す。
【0033】
別の特に好適な実施形態では、EGFR阻害剤はセツキシマブである。
【0034】
セツキシマブは、ヒト上皮成長因子受容体(EGFR、epidermal growth factor receptor)の細胞外ドメインに特異的に結合する、組換えヒト/マウスキメラモノクローナル抗体である。セツキシマブは、ヒトIgG1重鎖及びκ軽鎖定常領域を含む、マウス抗−EGFR抗体のFv領域からなり、およその分子量は152kDaである。セツキシマブは、哺乳動物の(マウスの骨髄腫)細胞培養において産生される。
【0035】
セツキシマブは、頭頸部癌及び結腸直腸癌を治療するために、単一薬剤として、及び他のレジメンと組み合わせて使用するために認可されている。
【0036】
別の特に好適な実施形態では、EGFR阻害剤はエルロチニブである。
【0037】
エルロチニブ[Tarceva(登録商標);N−(3−エチニルフェニル−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンアミン]は、HER1/EGFR阻害剤であり、以下の化学構造を有する。
【0038】
【化3】

【0039】
エルロチニブ単剤療法は、局所的に進行した、又は転移性の非小細胞肺癌を有する患者を少なくとも1つの以前の化学療法レジメンに失敗した後に治療するために使用するために認可されている。
【0040】
別の特に好適な実施形態では、EGFR阻害剤はゲフィチニブである。
【0041】
ゲフィチニブ[Iressa(登録商標);N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−[(3,4−モルホリン)プロポキシ]−4−キナゾリンアミン]は、以下の化学構造を有する:
【0042】
【化4】

【0043】
ゲフィチニブは、局所的に進行した、又は転移性の非小細胞肺癌を有する患者を白金ベース及びドセタキセル化学療法の両方に失敗した後に治療を継続するために、単剤療法として使用するために認可されている。
【0044】
本発明の好適な一実施形態では、ErbB阻害剤はラパチニブ(Tykerb(登録商標))である。ラパチニブは、N−[3−クロロ−4−[(3−フルオロフェニル)メトキシ]フェニル]−6−[5−[(2メチルスルホニルエチルアミノ)メチル]−2−フリル]キナゾリン−4−アミンとして知られている化合物であり、以下に示す構造を有する。
【0045】
【化5】

【0046】
ラパチニブ(国際一般名称)又はラパチニブジトシレート(米国一般名)は、GW572016としても知られており、乳癌及び肺癌などの固形腫瘍を治療するための抗癌剤である。これは、化学療法薬Xelodaと併せて、進行した転移性乳癌を有する患者において使用するために認可されている。より具体的には、ラパチニブは、Herceptin及びタキサン及びアントラサイクリンを用いて以前に治療を受けていた女性に対して指示される1日1回の経口薬である。ラパチニブは、EGFR及びHER2/neu(ErbB−2)二重チロシンキナーゼ阻害剤であり、これは、細胞内のリン酸化ドメインに結合することによって、受容体がリガンドに結合した際に自己リン酸化するのを防止する。
【0047】
特に好ましい実施形態では、ErbB阻害剤は、AG1478、トラスツズマブ及びエルロチニブから選択される。
【0048】
本発明の組合せは、様々なプリンに基づくCDK阻害剤、例えば、ロスコビチン及び一般式(I)の関連化合物を含む。
【0049】
現在特許請求されている組合せのCDK阻害剤は、CDK2に対して最も強力であることが好ましい。
【0050】
現在特許請求されている組合せのCDK阻害剤は、CDK2及びCDK9に対して最も強力であり、CDK1及びCDK4に対する活性が少なくとも20分の1であることがより好ましい。
【0051】
現在特許請求されている組合せのCDK阻害剤は、CDK2及びCDK9に対して最も強力であり、CDK1及びCDK4に対する活性が少なくとも50分の1であることがさらにより好ましい。
【0052】
現在特許請求されている組合せのCDK阻害剤は、CDK2及びCDK9に対して最も強力であり、CDK4に対する活性が少なくとも100分の1であることがさらになおより好ましい。
【0053】
非常に好適な一実施形態では、CDK阻害剤は、CDK2、CDK7及びCDK9を最も強力に阻害し、CDK1及びCDK4に対する活性が少なくとも20分の1である。
【0054】
本発明の好適な一実施形態では、CDK阻害剤は、ロスコビチン又は薬学的に許容されるその塩である。
【0055】
ロスコビチン、即ち2−[(1−エチル−2−ヒドロキシエチル)アミノ]−6−ベンジルアミン−9−イソプロピルプリンは、2−(1−D,L−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミン−9−イソプロピルプリンとしても記載される。本明細書で使用される場合、用語「ロスコビチン」は、分割されたR及びS鏡像異性体、その混合物並びにそのラセミ体を包含する。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語「セリシクリブ」は、ロスコビチンのR鏡像異性体、即ち、2−(1−R−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリンを指し、その構造を以下に示す。
【0057】
【化6】

【0058】
本発明のすべての実施形態について、ロスコビチンは、R鏡像異性体、即ち、2−(1−R−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリンの形態であることが好ましく、以下「セリシクリブ」又は「CYC202」又は「R−ロスコビチン」と呼ぶ。
【0059】
ロスコビチンのインビトロでの活性は以下の通りである。
【0060】
【表1】

【0061】
別の非常に好適な実施形態では、CDK阻害剤は、
(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール[1];
(3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール[2];
(2R3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール[3];及び
(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オール[4]
から選択される。
【0062】
別の好適な実施形態では、CDK阻害剤は、3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オールである。本明細書で使用される場合、3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オールは、分割されたR及びS鏡像異性体、その混合物、並びにそのラセミ体を包含する。
【0063】
非常に好適な一実施形態では、CDK阻害剤は、(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール[1]であり、その構造を以下に示す。
【0064】
【化7】


[1]
【0065】
別の非常に好適な実施形態では、CDK阻害剤は、(3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール[2]であり、その構造を以下に示す。
【0066】
【化8】


[2]
【0067】
さらに別の好適な実施形態では、CDK阻害剤は、3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オールである。本明細書で使用される場合、3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オールは、分割された、及び分割されていないジアステレオ異性体、並びにその混合物を包含する。
【0068】
非常に好適な実施形態では、CDK阻害剤は、(2R3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール[3]であり、その構造を以下に示す。
【0069】
【化9】


[3]
【0070】
さらに別の好適な実施形態では、CDK阻害剤は、(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オール[4]であり、その構造を以下に示す。
【0071】
【化10】


[4]
【0072】
別の態様は、本発明による組合せ、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0073】
別の態様は、増殖性障害を治療するのに使用するための、本発明の組合せを含む医薬品に関する。
【0074】
治療法を最適にするために、多くの抗癌剤が組み合わせて投与される。薬剤の組合せの効果は、本質的に予測不可能であり、1つの薬剤が、他の薬剤の効果を部分的又は完全に阻害する傾向が存在することが多い。
【0075】
本発明は、ErbB阻害剤(例えば、EGFR阻害剤)、又は薬学的に許容されるその塩と、CDK阻害剤を含む組合せを同時、別々、又は順次に投与しても、2つの薬剤の間で、いずれの著しい又は劇的な、有害な相互作用に至らないという驚くべき知見に基づく。いずれのそのようなアンタゴニスト的相互作用も予想外に存在しないことは、臨床用途にとって極めて重要である。
【0076】
本発明の組合せは、ErbB阻害剤(例えば、EGFR阻害剤)と、上記に定義したCDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩とを含む相乗的な組合せである、即ち、組合せは相乗効果を有することが好ましい。
【0077】
好適な実施形態では、ErbB阻害剤と、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩との組合せにより、いずれかの薬剤を単独で投与した場合と比較して効果が増強される。この知見の驚くべき性質は、従来技術に基づいて予期される性質と対照的である。相乗的相互作用により、患者に投与される各成分の用量を下げることを可能にすることができ、それによって化学療法の毒性が低下する一方で、同じ治療効果が生じ、且つ/又は維持されることが有利である。したがって、特に好適な実施形態では、各成分は、治療量以下の量で投与することができる。
【0078】
別の好適な実施形態では、ErbB阻害剤とCDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩は、単剤療法において個々の成分を使用した場合に関連し、又は既知の組合せでこれらを使用した場合に関連する、有害な副作用を軽減又は排除するような様式で相互作用する。
【0079】
上述したように、本発明の一態様は、治療において同時、順次、又は別々に使用するための組合せ製剤としての、ErbB阻害剤と、(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩とを含む医薬品に関する。
【0080】
ErbB阻害剤と、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩とを含む組合せは、同時、順次又は別々に(投与法の一部として)投与することができる。
【0081】
本明細書で使用される場合、「同時に」は、2つの薬剤が同時的に投与されることを意味するように使用される。したがって、「順次に」投与することは、一方の薬剤を他方の薬剤の、5分、10分、又は数時間程度以内の後に投与することを可能にすることができ、但し、最初に投与される薬剤の循環半減期は、これらが、治療有効量でともに同時に存在するようになっている。成分の投与間の時間遅延量は、成分の正確な性質、これらの間の相互作用、及びそのそれぞれの半減期に応じて変化する。
【0082】
「順次に」と対照的に、「別々に」は、一方の薬剤の投与と他方の薬剤の投与の間隔が著しい、即ち、第2の薬剤が投与されるとき、最初に投与された薬剤は、血流中に治療有効量でもはや存在しない場合があることを意味するために、本明細書で使用される。
【0083】
好適な一実施形態では、第2の薬剤は、第1の薬剤を投与してから、少なくとも2時間後、より好ましくは少なくとも4時間後、さらにより好ましくは少なくとも8時間後、さらになおより好ましくは少なくとも12又は24又は48又は72時間後に投与される。特に好適な一実施形態では、第2の薬剤は、第1の薬剤を投与してから少なくとも24時間後に投与される。
【0084】
一態様では、本発明は、増殖性障害の治療方法であって、ErbB阻害剤と、(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩とを対象に、同時、順次、又は別々に投与するステップを含む方法に関する。
【0085】
対象は哺乳動物であることが好ましく、ヒトであることがより好ましい。
【0086】
好適な一実施形態では、ErbB阻害剤と、CDK阻害剤、又は薬学的に許容される塩は、同時に投与される。
【0087】
別の好適な実施形態では、ErbB阻害剤と、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩は、順次又は別々に投与される。
【0088】
好ましくは、ErbB阻害剤は、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩を投与する、少なくとも2時間前、より好ましくは少なくとも4時間前、さらにより好ましくは少なくとも8時間前、さらになおより好ましくは、少なくとも12又は24又は48又は72時間前に投与される。特に好適な一実施形態では、ErbB阻害剤は、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩を投与する、少なくとも24時間前に投与される。別の好適な実施形態では、ErbB阻害剤と、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩は、個々の成分に対して治療有効量でそれぞれ投与される。
【0089】
代替の好適な実施形態では、ErbB阻害剤と、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩は、個々の成分に対して治療有効量以下でそれぞれ投与される。
【0090】
用語「治療有効量以下」は、ErbB阻害剤又はCDK阻害剤、若しくは薬学的に許容されるその塩を単独で用いる治療に関して、治療効果をもたらすのに一般に必要とされる量よりも低い量を意味する。
【0091】
非常に好適な実施形態では、ErbB阻害剤は、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩を投与する前に、順次又は別々に投与される。
【0092】
別の非常に好適な実施形態では、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩は、ErbB阻害剤を投与する前に、順次又は別々に投与される。
【0093】
増殖性障害
用語「増殖性障害」は、広い意味で、本明細書で使用されることによって、細胞周期の制御を必要とする任意の障害、例えば、再狭窄及び心筋症などの心血管障害、糸球体腎炎、ループス腎炎、糸球体間質の増殖性障害及び関節リウマチなどの自己免疫障害、多発性嚢胞腎、多嚢胞性肝疾患、髄質嚢胞性疾患などの嚢胞性疾患、乾癬などの皮膚障害、マラリアなどの抗炎症、抗真菌、駆虫性の障害、気腫及び脱毛症を含む。これらの障害では、本発明の化合物は、必要とされる場合、所望の細胞内でアポトーシスを誘発し、又は静止を維持することができる。
【0094】
上記態様及び実施形態のすべてに関して、増殖性障害は癌であることが好ましい。
【0095】
非常に好適な一実施形態では、増殖性障害は卵巣癌である。
【0096】
さらに別の非常に好適な実施形態では、増殖性障害は頭部又は頸部癌である。
【0097】
さらに別の非常に好適な実施形態では、増殖性障害は乳癌である。
【0098】
さらに別の非常に好適な実施形態では、増殖性障害は肺癌であり、より好ましくはNSCLCである。
【0099】
好適な一実施形態では、本発明は、非小細胞肺癌の治療方法であって、ErbB阻害剤と、(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩とを対象に、同時、順次、又は別々に投与するステップを含む方法に関する。
【0100】
肺癌(気管支原性癌)は、2つの広い分類、即ち、小細胞肺癌(SCLC)と非小細胞肺癌(NSCLC)に区分することができる。これらの2つの種類の癌の間の区別は、顕微鏡下で見たときの腫瘍細胞の外観に基づく。
【0101】
SCLCは、診断される肺癌の20%の割合を占め、大部分が核で満たされている小細胞を特徴とする(それがこの名称の由来である)。これは、時折「燕麦細胞」癌とも呼ばれる。SCLCは、最も攻撃的な種類の癌であり、体の他の部分に急速に転移する。SCLCは、癌が体中に蔓延した後にのみ診断されることが多い。一般に、SCLCは、ほとんど常に、喫煙の結果として生じる。
【0102】
NSCLCは、関連する肺癌の群にさらに区分することができ、これには、類表皮癌又は扁平上皮癌、腺癌及び大細胞癌が含まれる。
【0103】
扁平上皮肺癌は、すべての肺癌症例の約30%の割合を占め、肺及び気管支のライニングにおいて、予備細胞(損傷した上皮細胞と交替する役割を有する)から発症する。結果として、この癌は、胸部の中心部に最初に発症することが多い。扁平上皮肺癌は、徐々に増殖することが多く、限局性腫瘍から浸潤癌に進行するのに数年かかる場合がある。症例の10−20%では、癌により、肺内に空洞が形成される。転移すると、癌は骨、肝臓、副腎、小腸及び脳に蔓延することが多い。
【0104】
腺癌は、肺癌の最も一般的な形態であり、すべての肺癌症例の30〜40%を構成する。腺癌は、肺の外側部分で発症し、粘液産生細胞から発生する。この癌の過程は広く変化するが、徐々に進行することが多く、患者は、ほとんど又はまったく症状を示さない。しかし場合によっては、これは、極端に攻撃的であり、急速に致命的となる場合がある。転移する症例の50%では、これは脳にだけ蔓延する。腺癌が蔓延する他の位置には、肝臓、副腎及び骨が含まれる。
【0105】
大細胞癌の発生頻度は、腺癌又は扁平上皮癌より低く、肺癌症例の10〜20%の割合を占める。この癌は、性質上未分化である、大きなサイズの細胞からなり、気管支に生じることが多い。大細胞癌は、肺の周囲に発症し、プルラ(plura)に蔓延する場合がある。
【0106】
現在、肺癌は、手術、放射線療法又は化学療法によって治療することができる。化学療法は、単独又は他の治療オプションと組み合わせて投与することができる。一般的なNSCLC用薬剤及びレジメンには、Camptosar(登録商標)(イリノテカン;CPT−11)、カンプトテシン、Paraplatin(登録商標)(カルボプラチン)、Platinol(登録商標)(シスプラチン)、エピルビシン、Gemzar(登録商標)(ゲムシタビン)、Navelbine(登録商標)(ビノレルビン)、オキサリプラチン、Taxol(登録商標)(パクリタキセル)及びTaxotere(登録商標)(ドセタキソール)が含まれる(NSCLC Treatment - Chemotherapy, Lung Cancer Online)。
【0107】
しかし、化学療法は治癒的ではない。この治療の他の不利点には、毒性、正常組織のバイスタンダー損傷及び薬剤耐性が含まれる(W. Wang et al, Cancer Sci., 2005, 96(10), 706)。さらに、研究により、ビノレルビンなどのいくつかの既知の治療には、わずかな生存利益しかないことが示されている(M. A. Socinski et al, Clin. Adv. Hematol. Oncol., 2003, 1(1), 33)。トロキサシタビンなどの新規な活性剤(active)でさえ、10mg/mの用量を3週間毎に30分にわたって静脈内に投与しても、NSCLCにおいてわずかな活性を有するだけであることが示されている(S. F. Dent et al, Lung, 2005, 183(4), 265)。
【0108】
ゲムシタビン/シスプラチンの組合せは、NSCLCを治療するために欧州で広く使用されるようになってきた。しかし、シスプラチンは、嘔吐とともに著しい非血液毒性(聴器毒性及び腎毒性)が患者に生じるという点で、ある特定の不利点を有することが認められている(P. Zatloukal et al, Lung Cancer, 2002, 38, S33)。
【0109】
肺癌と診断された患者の転帰は悪く、すべての治療した症例についての10年生存率はわずか約8%であるので、有効な治療を開発する必要性が続いている。
【0110】
非常に好適な一実施形態では、EGFR阻害剤はエルロチニブであり、CDK阻害剤はセリシクリブである。増殖性障害は肺癌であることが好ましく、非小細胞肺癌であることがより好ましい。
【0111】
別の非常に好適な一実施形態では、EGFR阻害剤はエルロチニブであり、CDK阻害剤は、
(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;
(3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;
(2R3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び
(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オール
から選択される。
【0112】
特に好適な一実施形態では、EGFR阻害剤はAG1478であり、CDK阻害剤はセリシクリブである。増殖性障害は肺癌であることが好ましく、非小細胞肺癌であることがより好ましい。
【0113】
さらに別の特に好適な実施形態では、EGFR阻害剤はAG1478であり、CDK阻害剤は、(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オールである。増殖性障害は肺癌又は乳癌であることが好ましい。
【0114】
別の特に好適な実施形態では、EGFR阻害剤はAG1478であり、CDK阻害剤は、(3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オールである。増殖性障害は肺癌又は乳癌であることが好ましい。
【0115】
さらに別の特に好適な実施形態では、EGFR阻害剤はAG1478であり、CDK阻害剤は、(2R3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オールである。増殖性障害は肺癌又は乳癌であることが好ましい。
【0116】
特に好適な実施形態では、ErbB阻害剤はトラスツズマブであり、CDK阻害剤はセリシクリブである。増殖性障害は乳癌であることが好ましい。
【0117】
特に好適な実施形態では、EGFR阻害剤はラパチニブであり、CDK阻害剤はセリシクリブである。増殖性障害は乳癌であることが好ましい。
【0118】
特に好適な実施形態では、EGFR阻害剤はラパチニブであり、CDK阻害剤は、(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オールである。増殖性障害は乳癌であることが好ましい。
【0119】
特に好適な一実施形態では、EGFR阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、AG1478及びラパチニブから選択され、CDK阻害剤はセリシクリブである。増殖性障害は乳癌又は肺癌であることが好ましい。
【0120】
特に好適な一実施形態では、EGFR阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、AG1478及びラパチニブから選択され、CDK阻害剤は、(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オールである。増殖性障害は乳癌又は肺癌であることが好ましい。
【0121】
特に好適な一実施形態では、EGFR阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、AG1478及びラパチニブから選択され、CDK阻害剤は、(3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オールである。増殖性障害は乳癌又は肺癌であることが好ましい。
【0122】
特に好適な一実施形態では、EGFR阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、AG1478及びラパチニブから選択され、CDK阻害剤は、(2R3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オールである。増殖性障害は乳癌又は肺癌であることが好ましい。
【0123】
特に好適な一実施形態では、EGFR阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、AG1478及びラパチニブから選択され、CDK阻害剤は、(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールである。増殖性障害は乳癌又は肺癌であることが好ましい。
【0124】
特に好適な一実施形態では、EGFR阻害剤はエルロチニブであり、CDK阻害剤は、(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オールである。増殖性障害は肺癌であることが好ましい。
【0125】
非常に好適な一実施形態では、本発明は、肺癌の治療方法であって、エルロチニブとセリシクリブを含む組合せを対象に投与するステップを含む方法に関する。
【0126】
別の非常に好適な実施形態では、本発明は、乳癌の治療方法であって、エルロチニブとセリシクリブを含む組合せを対象に投与するステップを含む方法に関する。
【0127】
別の非常に好適な実施形態では、本発明は、肺癌の治療方法であって、トラスツズマブとセリシクリブを含む組合せを対象に投与するステップを含む方法に関する。組合せの薬剤は、同時に投与されることが好ましい。
【0128】
別の非常に好適な実施形態では、本発明は、乳癌の治療方法であって、トラスツズマブとセリシクリブを含む組合せを対象に投与するステップを含む方法に関する。組合せの薬剤は、同時に投与されることが好ましい。
【0129】
別の非常に好適な実施形態では、本発明は、肺癌の治療方法であって、AG1478とセリシクリブを含む組合せを対象に投与するステップを含む方法に関する。組合せの薬剤は、同時に投与されることが好ましい。
【0130】
式(I)の化合物を含む組合せ
本発明の一態様は、(i)ErbB阻害剤と、(ii)式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩
【0131】
【化11】


(I)
【0132】
(式中、
及びRは、それぞれ独立に、H又はアルキルであり、
及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル又はアリールであり、
はアルキル又はシクロアルキルであり、そのそれぞれは、1又は複数のOH基で置換されていてもよく、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、NO、OH、OMe、CN、NH、COOH、CONH、又はSONHである)と
を含む組合せに関する。
【0133】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」には、飽和した直鎖状及び分岐状のアルキル基の両方が含まれる。好ましくは、アルキル基は、C1−20アルキル基であり、より好ましくは、C1−15、さらにより好ましくは、C1−12アルキル基、さらにより好ましくは、C1−6アルキル基、より好ましくは、C1−3アルキル基である。特に好適なアルキル基として、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、及びヘキシルが挙げられる。
【0134】
本明細書で使用される場合、用語「シクロアルキル」は、環式アルキル基を指す。シクロアルキル基は、C3−12シクロアルキル基であることが好ましい。
【0135】
本明細書で使用される場合、用語「アリール」は、C6−12芳香族基を指す。一般的な例には、フェニル及びナフチルなどが含まれる。
【0136】
本発明のこの態様については、R及びRの少なくとも1つはH以外であることが好ましい。
【0137】
好適な一実施形態では、R及びRは、それぞれ独立に、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル又はフェニルである。
【0138】
及びRは、それぞれ独立に、H、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル又はt−ブチルであることがより好ましい。
【0139】
及びRは、それぞれ独立に、H、メチル、エチル、イソプロピル又はt−ブチルであることがさらにより好ましい。
【0140】
好適な一実施形態では、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル又はハロアルキルである。R、R、R及びRは、それぞれ独立に、H又はアルキルであることがより好ましい。特に好適な一実施形態では、R、R、R及びRはすべてHである。別の特に好適な実施形態では、R及びRはHであり、R及びRはMeである。
【0141】
好適な一実施形態では、R及びRの一方はエチル又はイソプロピルであり、他方はHである。R及びRの一方はエチルであり、他方はHであることがより好ましい。
【0142】
好適な一実施形態では、Rはイソプロピル又はシクロペンチルである。
【0143】
本発明の非常に好適な一実施形態では、式(I)の化合物は、
3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;
3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;
(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オール;
(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;及び
(3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール
から選択される。
【0144】
医薬組成物
特に好適な実施形態では、本発明の医薬品は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物の形態である。
【0145】
本発明の化合物(その薬学的に許容される塩、エステル及び薬学的に許容される溶媒和物を含めて)は、特にヒトの治療のために、単独で投与することができるが、これらは一般に、医薬担体、賦形剤又は希釈剤と混合して投与される。この医薬組成物は、ヒト用医薬及び獣医薬として、ヒト又は動物に使用するためとすることができる。
【0146】
様々な異なる形態の医薬組成物に対するそのような適当な賦形剤の例は、"Handbook of Pharmaceutical Excipients", 2nd Edition, (1994), Edited by A Wade and PJ Wellerに見出すことができる。
【0147】
治療で使用するのに許容される担体又は希釈剤は、薬学の分野で公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。
【0148】
適当な担体の例として、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトールなどが挙げられる。適当な希釈剤の例として、エタノール、グリセロール、及び水が挙げられる。
【0149】
医薬担体、賦形剤又は希釈剤の選択は、意図した投与経路及び標準的な薬務に関して選択することができる。医薬組成物は、担体、賦形剤若しくは希釈剤として、又はこれらに加えて、任意の適当な結合剤(複数可)、滑剤(複数可)、懸濁剤(複数可)、コーティング剤(複数可)、可溶化剤(複数可)を含むことができる。
【0150】
適当な結合剤の例として、デンプン、ゼラチン、天然の糖、例えば、グルコース、無水ラクトース、易流動性ラクトース、β−ラクトース、トウモロコシ甘味料など、天然及び合成のゴム、例えば、アカシア、トラガカント又はアルギン酸ナトリウムなど、カルボキシメチルセルロース及びポリエチレングリコールが挙げられる。
【0151】
適当な滑剤の例として、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。
【0152】
保存剤、安定剤、染料、さらに香味剤も、医薬組成物中に提供することができる。保存剤の例として、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。酸化防止剤及び懸濁剤も使用することができる。
【0153】
プロドラッグ
本発明は、プロドラッグ形態での本発明の作用剤をさらに含む。そのようなプロドラッグは、一般に、1又は複数の適切な基が、ヒト又は哺乳動物の対象に投与されると、修飾が逆に戻ることができるように修飾された化合物である。そのような逆戻りは、そのような対象中に自然に存在する酵素によって通常実施されるが、そのようなプロドラッグと一緒に第2の作用剤を投与することによって、逆戻りをインビボで実施することが可能である。そのような修飾の例には、エステル(例えば、任意の上述したもの)が含まれ、逆戻りは、エステラーゼなどによって実施することができる。他のそのような系は、当業者に公知である。
【0154】
塩/エステル
本発明の作用剤は、塩又はエステル、特に、薬学的に許容される塩又はエステルとして存在することができる。
【0155】
本発明の作用剤の薬学的に許容される塩には、その酸付加塩又は塩基塩が含まれる。適当な医薬用塩の概説は、Berge et al, J Pharm Sci, 66, 1-19 (1977)に見出すことができる。塩は、例えば、鉱酸などの強無機酸、例えば、硫酸、リン酸又はハロゲン化水素酸;強有機カルボン酸、例えば、酢酸などの、非置換であるか、置換されている(例えば、ハロゲンによって)、1〜4個の炭素原子のアルカンカルボン酸など;飽和又は不飽和ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸若しくはテトラフタル酸;ヒドロキシカルボン酸、例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸若しくはクエン酸;アミノ酸、例えば、アスパラギン酸若しくはグルタミン酸;安息香酸;又は有機スルホン酸、例えば、メタン−若しくはp−トルエンスルホン酸などの、非置換であるか、置換されている(例えば、ハロゲンによって)、(C1−C4)−アルキル−若しくはアリールスルホン酸などを用いて形成される。
【0156】
エステルは、エステル化される官能基に応じて、有機酸又はアルコール/水酸化物を使用して形成される。有機酸として、例えば、酢酸などの、非置換であるか、置換されている(例えば、ハロゲンによって)、1〜12個の炭素原子のアルカンカルボン酸などのカルボン酸;飽和又は不飽和ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸若しくはテトラフタル酸;ヒドロキシカルボン酸、例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸若しくはクエン酸;アミノ酸、例えば、アスパラギン酸若しくはグルタミン酸;安息香酸;又は有機スルホン酸、例えば、メタン−若しくはp−トルエンスルホン酸などの、非置換であるか、置換されている(例えば、ハロゲンによって)、(C1−C4)−アルキル−若しくはアリールスルホン酸などが挙げられる。適当な水酸化物として、無機水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられる。アルコールには、非置換であっても、例えば、ハロゲンによって置換されていてもよい、1〜12個の炭素原子のアルカンアルコールが含まれる。
【0157】
鏡像異性体/互変異性体
本発明は、適切な場合、作用剤のすべての鏡像異性体及び互変異性体も含む。当業者は、化合物は、光学的性質(1又は複数の不斉炭素原子)又は互変異性特性を有することを認識する。対応する鏡像異性体及び/又は互変異性体は、当技術分野で既知の方法によって単離/調製することができる。
【0158】
立体異性体及び幾何異性体
いくつかの本発明の作用剤は、立体異性体及び/又は幾何異性体として存在することができ、例えば、これらは、1又は複数の非対称中心及び/又は幾何的中心を有することができ、したがって、2つ以上の立体異性体及び/又は幾何的形態で存在することができる。本発明は、こうした阻害剤のすべての個々の立体異性体及び幾何異性体、並びにこれらの混合物の使用を企図する。特許請求の範囲で使用される用語は、これらの形態を包含し、但し、前記形態は、適切な機能活性(必ずしも同じ程度までではないが)を保持する。
【0159】
本発明は、作用剤のすべての適当な同位体変形体(isotopic variation)、又は薬学的に許容されるその塩も含む。本発明の作用剤の同位体変形体、又は薬学的に許容されるその塩は、少なくとも1つの原子が、同じ原子番号を有するが、自然に通常見出される原子質量と異なる原子質量を有する原子によって置換されているものとして定義される。作用剤及び薬学的に許容されるその塩の中に組み込むことができる同位体の例として、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素及び塩素の同位体、例えば、それぞれ、2H、3H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F及び36Clなどが挙げられる。作用剤及び薬学的に許容されるその塩のある特定の同位体変形体、例えば、3H又は14Cなどの放射性同位体が組み込まれているものは、薬剤及び/又は基質組織分布研究において有用である。同位体である、トリチウム化した、即ち、3H、及び炭素−14、即ち、14Cは、調製のしやすさ及び検出性にとって特に好適である。さらに、重水素、即ち、2Hなどの同位元素との置換は、より大きな代謝的安定性、例えば、インビボ半減期の増大、又は投与必要量の低減から生じる、ある特定の治療上の利点を提供することができ、状況によっては好適となり得る。本発明の作用剤の同位体変形体、及び本発明の薬学的に許容されるその塩は、一般に、適当な試薬の適切な同位体変形体を使用して、従来の手順によって調製することができる。
【0160】
溶媒和物
本発明は、本発明の作用剤の溶媒和物形態も含む。特許請求の範囲において使用される用語は、これらの形態を包含する。
【0161】
多形
本発明は、さらに、様々な結晶形態、多形形態及び無水形態又は水和形態における本発明の作用剤に関する。化合物は、そのような化合物の合成的調製において使用される溶媒からの精製及び又は単離の方法をわずかに変更することによって、任意のそのような形態で単離することができることが、医薬品産業においてよく確立されている。
【0162】
投与
本発明の医薬組成物は、経口、直腸、膣、非経口、筋肉内、腹腔内、動脈内、クモ膜下、気管支内、皮下、皮内、静脈内、経鼻、頬側又は舌下の投与経路に適合させることができる。
【0163】
経口投与については、圧縮錠剤、ピル、錠剤、ゲルウレ(gellule)、ドロップ、及びカプセルが特に使用される。好ましくは、これらの組成物は、1用量当たり、1〜2000mg、より好ましくは50〜1000mgの活性成分を含有する。
【0164】
他の投与形態は、溶液又はエマルジョンを含み、これは、静脈内、動脈内、クモ膜下、皮下、皮内、腹腔内又は筋肉内に注射することができ、滅菌した、又は滅菌可能な溶液から調製される。本発明の医薬組成物は、坐剤、ペッサリー、懸濁液、エマルジョン、ローション剤、軟膏、クリーム、ゲル、スプレー、溶液又は粉剤の形態とすることもできる。
【0165】
経皮投与の代替の手段は、皮膚パッチの使用によるものである。例えば、活性成分は、ポリエチレングリコール又は液体パラフィンの水性エマルジョンからなるクリーム中に組み込むことができる。活性成分は、必要とされる場合のある安定剤及び保存剤と一緒に、白色ワックス又は白色軟パラフィン基剤からなる軟膏中に、1〜10重量%の濃度で組み込むこともできる。
【0166】
注射用形態は、1用量当たり、10〜1000mg、好ましくは10〜500mgの活性成分を含むことができる。
【0167】
組成物は、単位剤形、即ち、単位用量又は単位用量の複数ユニット若しくはサブユニットを含む別個の部分の形態で製剤化することができる。
【0168】
好適な一実施形態では、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩は、経口又は静脈内投与される。
【0169】
好適な一実施形態では、AG1478は、静脈内投与される。
【0170】
好適な一実施形態では、トラスツズマブは、静脈内投与される。
【0171】
好適な一実施形態では、セツキシマブは、静脈内投与される。
【0172】
好適な一実施形態では、エルロチニブは経口投与される。
【0173】
好適な一実施形態では、ゲフィチニブは経口投与される。
【0174】
好適な一実施形態では、ラパチニブは経口投与される。
【0175】
投与量
当業者は、即席の組成物の1つの適切な用量を容易に決定することによって、過度の実験を行うことなく、対象に投与することができる。一般に、医師は、個々の患者にとって最適となる実際の投与量を決定し、これは、使用される特定の化合物活性、その化合物の代謝的安定性及び作用の長さ、年齢、体重、全体的な健康、性別、飲食物、投与の様式及び時間、排泄率、薬剤の組合せ、特定の状態の重症度、並びに個々の受けている治療を含めた、様々な要因に依存する。本明細書に開示される投与量は、平均ケースの例示的なものである。より多い又はより少ない投与量範囲が適する、個々の場合ももちろんあり得るが、そのようなものも本発明の目的の範囲内である。
【0176】
必要に応じて、作用剤は、0.1〜10mg/kgなどの、体重1kg当たり0.1〜30mg、より好ましくは、体重1kg当たり2〜20mgの用量で投与することができる。
【0177】
CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩は一般に、約0.05〜約5g/日、好ましくは約0.4〜約3g/日を投与される。ロスコビチンは、錠剤又はカプセルで経口投与されることが好ましい。ロスコビチンの総1日量は、単一用量として投与し、又は1日に2、3若しくは4回投与される、別々の投与量に分割することができる。
【0178】
ロスコビチンは、0.4〜3g/日の投与量で、経口又は静脈内投与されることが好ましい。
【0179】
ガイダンスとして、ErbB阻害剤は一般に、医師の指示に従って、関連した参考文献に記載されている投与量で、又は前記ErbB阻害剤について認可された投与量の間で投与される。前記認可された投与量は、製造者又は文献、例えば、www.emea.eu.int/htms/human/epar/azepar.htmから得ることができる、各薬剤についての製品特性の要約から利用可能である。
【0180】
キットのパーツ
本発明のさらなる態様は、
(i)ErbB阻害剤と、
(ii)(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩と
を含むキットのパーツに関する。
【0181】
ErbB阻害剤及びCDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩はそれぞれ、単位剤形であることが好ましい。キットのパーツは、各成分、即ち、上記成分(i)と(ii)の複数の単位剤形を含むことが好ましい。場合により、キットのパーツは、特定の投薬レジメン、例えば、各成分の単位剤形を服用するべき時間、方法、及び頻度を示す指示書の遵守を促進するための手段をさらに含むことができる。
【0182】
本発明を例として、及び以下の図面を参照してさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0183】
【図1】セリシクリブとトラスツズマブが、SkBr3細胞におけるHER2レベルを相乗的に下方制御することを示す図である。より詳細には、SkBr3細胞を10cmの皿中で、約8×10細胞/プレートで播種し、一晩放置して定着させた。細胞を指示された濃度のトラスツズマブ(A)、セリシクリブ(B)又はセリシクリブ+トラスツズマブ(C)とともにインキュベートし、24時間後に収集した。各処理からのタンパク質溶解産物(30μg)を3〜8%のアクリルアミドトリス−アセテートゲル又は10%のアクリルアミドビス−トリスゲル上で分解し、ニトロセルロース膜に移し、示した抗体でプローブした。結果は、2つの独立した実験を表す。
【図2】A549、H460及びH358細胞溶解産物中のEGFRシグナル伝達経路タンパク質の分析結果を示す図である。より詳細には、未処理のA549、H460及びH358細胞からの溶解産物(30μg)を3〜8%のアクリルアミドトリス−アセテートゲル又は10%のアクリルアミドビス−トリスゲル上で分解し、ニトロセルロース膜に移し、示した抗体でプローブした。結果は、2つの独立した実験を表す。
【図3】セリシクリブとAG1478が、H358細胞におけるEGFRシグナル伝達を相乗的に下方制御することを示す図である。より詳細には、H358細胞を10cmの皿中で、約8×10細胞/プレートで播種し、一晩放置して定着させた。細胞をセリシクリブ及びAG1478の存在下(+)又は不存在下(−)で72時間インキュベートした後、収集した。H358細胞中で、セリシクリブに対するIC50は8.5μMであり、AG1478については、IC50は4.0μMであった。各処理からのタンパク質溶解産物(30μg)を3〜8%のアクリルアミドトリス−アセテートゲル又は10%のアクリルアミドビス−トリスゲル上で分解し、ニトロセルロース膜に移し、示した抗体でプローブした。結果は、2つの独立した実験を表す。
【図4】セリシクリブとAG1478が、細胞株に依存した様式でアポトーシスの増大を誘発することを示す図である。より詳細には、H358細胞又はH1650細胞を1×IC50セリシクリブ、AG1478、又はセリシクリブとAG1478で72時間処理した後に収集し、アポトーシスのマーカーについて分析した。(A)各処理からのタンパク質溶解産物(25μg)を4〜12%のアクリルアミドビス−トリスゲル上で分解し、ニトロセルロース膜に移し、切断されたPARP及びアクチン(負荷対照として)を認識する抗体でプローブした。(B)細胞のDNA内容物をヨウ化プロピジウムで染色した後に、フローサイトメトリーによって分析した。サブGl細胞は、正常な二倍体細胞よりも少ないDNAを含むものである。結果は、2つの独立した実験を表す。
【図5】H358異種移植片の増殖に対する、セリシクリブとエルロチニブの組合せの効果を示す図である。より詳細には、マウス(nu/nu)の側腹部の単一部位で、約1×10H358細胞/マウスを皮下注射した。処理は、腫瘍が約110mmになったときに開始し、28日間継続した。結果は、各処理群(9マウス/群)についての平均腫瘍体積(±標準誤差)を示し、媒体、連続して5日間、1日2回腹腔内注射した後、2日中断し、次いで合計4サイクル繰り返した場合のセリシクリブ(50mg/kg)、連続して28日間の毎日の経口強制飼養によるエルロチニブ(100mg/kg)、又は両薬剤の組合せでの処理を表す。
【図6】H292異種移植モデルを使用した、セリシクリブ(50mg 1日2回 腹腔内)、化合物[1](40mg 1日2回 腹腔内)、エルロチニブ(100mg 毎日 経口)並びにエルロチニブ+セリシクリブ、及びエルロチニブ+化合物[1]の組合せの、平均腫瘍体積に対する効果を示す図である。[実施例]
【0184】
材料及び方法
概要
化学物質及び溶媒は、市販供給源から購入し、別段の記載のない限り、受け取った状態で使用した。THF及びEtOは、N下でナトリウム−ベンゾフェノンを用いて、還流下で加熱することによって乾燥し、蒸留によって収集した。トルエンは、N下のナトリウム上で、還流下で加熱することによって乾燥した。CHClは、N下のCaH上で、還流下で加熱することによって乾燥した。使用したマイクロ波発振器は、CEM社製「Discover」モデルであり、環状の単一モード空洞デザインを有しており、これによりマイクロ波照射を試料管に集中させた。TLC(thin-layer chromatography、薄層クロマトグラフィー)は、シリカゲルG60(0.25cm)でコーティングしたガラスプレートを使用して実施した。展開したプレートは、空気で乾燥し、UVランプ(254/365nm)下で分析した。別段の記載のない限り、無水MgSOを有機溶液の標準的な乾燥剤として使用した。フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Fluorochem社製シリカゲル(35〜70μm)を使用して実施した。融点(mp、melting point)は、Electrothermal 9100キャピラリー融点装置を用いて求め、修正していない。略語(dec)は分解点を表す。すべての場合において、H−NMRスペクトルは、重水素化溶媒をロックとして、及び残留溶媒を内部基準として使用して、Broker Avance 300(300.1MHz)又はVarian Gemini 2000(300MHz)分光計で記録した。PENDANTシーケンス(sequence)を使用する13C−NMRスペクトルは、Bruker Avance 300(75.5MHz)分光計で記録した。すべての他の13C−スペクトルは、合成パルスHデカップリングを使用して、Varian Gemini 2000(75.5MHz)分光計で記録した。カップリング定数(J)は、最も近い0.1Hzまで引用する。以下の略語を使用する:s、一重線;d、二重線;t、三重線;q、四重線;qu、五重線(quintuplet);m、多重線及びbr、幅広線。微量元素分析は、Mrs S Williamson、School of Chemistry、Purdie Building、University of St. Andrews、UKによって実施された。得られた結果は計算値の0.4%以内であった。エレクトロスプレー質量スペクトル(ESI、Electrospray mass spectra)は、Waters 2975 HPLCに連結したMicromass社製LCT質量分析計で記録した。分析用RP−HPLCは、Dionex P580ポンプに連結したDionex ASI-100自動試料注入器を使用して実施した。25℃の温度に維持したPhenomenex社製カラム(150×4.60mm、Synergi 4μ hydro-RP 80Å)を分析目的で使用した。HPLCユニットは、Chromeleonソフトウェアを使用して制御した。1mL/分の流速で、HO/MeCN系(0.1%のCFCOOHを含む)を使用して線形勾配溶出を実施した。純度は、クロマトグラム(λ=254nm)の積分によって評価した。
【0185】
ErbB阻害剤
AG1478は、Tocris Biosciences社から得た。トラスツズマブは、Genentech社から得た。セツキシマブは、Imclone社から得た。エルロチニブは、Genentech社から得た。ゲフィチニブは、Astra Zeneca社から得た。ラパタニブ(lapatanib)は、Glaxo SmithKline社から得た。
【0186】
セリシクリブの調製
ロスコビチンは、欧州特許第0874847号明細書(CNRS)に開示されている方法に従って調製した。セリシクリブは、Cyclacel社(Dundee、UK)から得た。(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール[1]、(3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール[2]及び(2R3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール[3]、及び他の式(I)の化合物は、国際公開第2004/016612号パンフレット(Cyclacel Ltd)に開示されている方法に従って調製した。
【0187】
(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オール[4]の調製
(2R,3S)−3−アミノ−ペンタン−2−オールは、アミンに使用した保護基が異なる2つの経路の一方又は他方によって調製した。式(I)の化合物のさらなる詳細は、GB0706632.7と米国特許仮出願第60/921,897号明細書からの優先権を主張している、同時係属のPCT出願<代理人参照P29055WO>に見出すことができる。
【0188】
トリチルを保護基として使用した経路1
(S)−2−(トリチルアミノ)ブタン−1−オール
【0189】
【化12】

【0190】
室温で、アルゴン雰囲気下で、(S)−(+)−2−アミノブタン−1−オール(10g、112.18mmol)のジクロロメタン(DCM、250ml)中の攪拌した溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA、diisopropylethylamine、19.4ml、112.18mmol)、その後に塩化トリチル(31.2g、112.18mmol)を添加した。この反応混合物をこの温度で48時間攪拌し、そのとき、TLC(ヘキサン:エーテル:MeOH;55:40:5)により、反応が完了していたことが示された。溶媒を真空で蒸発し、残留物を酢酸エチル中に溶解させた。有機溶液を水で洗浄し(2回)、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を除去することによって、(S)−2−(トリチル−アミノ)−ブタン−1−オールを薄黄色油状物として得た;収量:33g(89%)。H−NMR(CDCl,250MHz):δ0.72(3H,t,J=7.5Hz,−NHCH(CHCH)CHOH)、1.15〜1.10(m,2H,−NHCH(CHCH)CHOH)、2.05(1H,s,br,NH)、2.24(1H,s,br,OH)、2.62〜2.54(m,1H,−NHCH(CHCH)CHOH)、3.17〜3.08(1H m,−NHCH(CHCH)CHOH)、3.35〜3.29(1H,m,NHCH(CHCH)CHOH)、7.37〜7.2(12H,m,,ArH)、7.65〜7.58(3H,m,ArH);δ(250MHz,CDCl)146.86(C)、129.43(6×CH)、127.90(6×CH)、126.48(3×CH)、71.27(C)、62.72(CH)、48.91(CH)、24.55(CH)、10.47(CH
【0191】
(S)−2−(トリチルアミノ)ブチルアルデヒド
【0192】
【化13】

【0193】
−78℃で、アルゴン雰囲気下で、乾燥ジメチルスルホキシド(2.4ml、2.8当量、33.82mmol)の乾燥ジクロロメタン(30ml)中の攪拌した溶液に、塩化オキサリル(DCM中の2M溶液、8.45ml、1.40当量、16.9mmol)を液滴で添加した。この反応混合物を−78℃で1時間攪拌し、その後、(S)−2−(トリチル−アミノ)−ブタン−1−オール(4g、1当量、12.07mmol)のDCM(30ml)中の溶液を攪拌しながら液滴で添加した。この反応混合物をこの温度で2時間攪拌し、その後、トリエチルアミン(TEA、triethylamine、8.4ml、5当量、60.27mmol)のDCM(30ml)中の溶液を添加し、この溶液を1時間にわたって室温に加温させた。この反応混合物をDCM(100ml)でさらに希釈し、水(250ml)で洗浄した。この水相をDCM(3×50ml)で抽出し、合わせた有機相をブライン(50ml)で洗浄し、乾燥し(NaSO)、真空で蒸発させた。残留物をフラッシュシリカクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン1:4)によって精製することによって、(S)−2−(トリチル−アミノ)−ブチルアルデヒドを薄黄色油状物として得た;収量:3.64g(91%)。H−NMR(CDCl,250MHz):δ0.95(3H,t,J=7.5Hz,−NHCH(CHCH)CHO)、1.72〜1.52[2H,m,NHCH(CHCH)CHO]、2.76(1H,s,br,−NH)、3.41〜3.36[1H,m,NHC(CHCH)CHO]、7.35〜7.17(12H,m,ArH)、7.67〜7.51(3H,m,ArH)、9.05(1H,s,NHCH(CHCHCHO)。δ(250MHz,CDCl)202.95(CO)、146.23(C)、129.23(6×CH)、127.96(6×CH)、126.85(3×CH)、71.13(C)、62.62(CH)、24.78(CH)、10.48(CH
【0194】
(2R,3S)−3−(トリチルアミノ)ペンタン−2−オール
【0195】
【化14】

【0196】
−78℃で、アルゴン雰囲気下で、CuBr.SMe(3g、14.6mmol)の、無水エーテル(100ml)中の攪拌した懸濁液に、メチルリチウム(エーテル中、1.6M、16.5ml、4.0当量、26.5mmol)を液滴で添加し、この溶液を1時間にわたって室温に加温させた。この混合物を−78℃に再冷却し、(S)−2−(トリチル−アミノ)−ブチルアルデヒド(2.2g、6.62mmol)のエーテル(25ml)中の溶液を攪拌しながら液滴で添加した。この反応混合物をこの温度で2時間攪拌し、次いで1時間にわたって室温に加温させた。NHCl(50ml)の飽和水溶液を添加し、2層を分離した。有機相をブライン(50ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空で蒸発させた。残留物をフラッシュシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し、ヘキサン:酢酸エチル(80:20)で溶出することによって、(2R,3S)−3−(トリチルアミノ−ペンタン−2−オールを薄黄色油状物として得た;収量:1.5g(66%)。(75%de 2R,3S:25%de 2S,3S)。H−NMR(d−DMSO,250MHz):δ0.0.47+0.55(2×t,J=7.50+7.26Hz−NHCH(CHCH)CH(CH)OH)、0.99〜1.12(m,5H,−NHCH(CHCH)CH(CH)OH)、2.01(1H,m,,−NHCH(CHCH)CH(CH)OH)、3.22〜3.43(m,1H,−NHCH(CHCHCH(CH)OH)、4.41[1H,d,,J=3.3,NHCH(CHCH)CH(CH)OH]、7.14〜7.56(15H,m,,ArH)。δ(250MHz,CDCl)146.88(C)、128.97(6×CH)、127.83(6×CH)、126.43(3×CH)、71.03(C)、68.13(CH)、58.77(CH)、23.09(CH)、17.88(CH)、10.47(CH
【0197】
(2R,3S)−3−アミノ−ペンタン−2−オール
【0198】
【化15】

【0199】
室温で、アルゴン雰囲気下で、(2R,3S)−3−(トリチル−アミノ)−ペンタン−2−オール(1.64g、4.75mmol)のジクロロメタン(20ml)中の攪拌した溶液に、トリフルオロ酢酸(10ml)を液滴で添加し、この溶液をこの温度で1時間攪拌した。溶媒を真空で蒸発させ、残留物を攪拌しながらヘキサン(150ml)を用いてエーテル(15ml)から沈殿させることによって黄色油状物を得た。溶媒を油状物からデカントし、この油状物をヘキサン(30ml)で洗浄し、真空で乾燥することによって、(2R,3S)−3−アミノ−ペンタン−2−オールを薄黄色油状物として得た;収量:0.30g(98%)。(75%de 2R,3S:25%de 2S,3S)。H−NMR(d−DMSO,250MHz):δ0.913+0.923(2×t,3H,J=7.50+7.50Hz,NHCH(CHCH)CH(CH)OH)、1.11+1.18(3H,2×d,J=6.48+6.48Hz,NHCH(CHCH)CH(CH)OH)、1.41〜1.65(2H,m,NHCH(CHCH)CH(CH)OH)、2.76+2.93[2×1H,m,NHCH(CHCH)CH(CH)OH]、3.61〜3.69+3.80〜3.90[2×1H,m,NHCH(CHCHCH(CH)OH]、7.73(2H,s,br,NH)。
【0200】
ジベンジル化(dibenzylation)によってアミンを保護した経路2
(S)−2−(ジベンジルアミノ)ブタン−1−オール
【0201】
【化16】

【0202】
(S)−(+)−2−アミノブタン−1−オール(5g、56.18mmol)の乾燥アセトニトリル(100ml)中の攪拌した溶液に、乾燥粉末化した炭酸カリウム(31g、224.72mmol)、その後に臭化ベンジル(19g、111.11mmol)を添加した。反応物を室温で24時間攪拌した。溶媒を真空下で除去し、残留物を酢酸エチル(100ml)及び水(100ml)中に溶解させた。有機相を水で再び洗浄し、乾燥し(NaSO)、濃縮することによって、純粋な生成物をわずかに黄色の油状物として得た(14.5g、97.3%)。δ(250MHz,CDCl)0.98(3H,t,J 7.5,CHCH)、1.38〜1.2(1H,m,CHCHCH)、1.94〜1.78(1H,m,CHCH)、2.83〜2.71(1H,m,CCHHCH)、3.22(1H,s,b,OH)、3.65〜3.4(2H,m,COH)、3.47(2H,d,J 17.5,2×CHPh)、3.94(2H,d,J 17.5,2×CHPh)、7.46〜7.26(10H,m,2×C);δ(250MHz,CDCl)139.42(2×C)、129.1(2×CH)、128.52(2×CH)、127.25(2×CH)、61.97(CH)、60.67(CH)、53.23(CH)、17.92(CH)、11.83(CH);m/z 270.2(M+H)
【0203】
(S)−2−(ジベンジルアミノ)ブタナール
【0204】
【化17】

【0205】
塩化オキサリルのジクロロメタン(3.18ml、6.36mmol)中の2Mの溶液を−78.0℃に冷却し、乾燥窒素下で、乾燥ジクロロメタン(20ml)を用いて希釈した。ジメチルスルホキシド(1g、12.72mmol)の無水ジクロロメタン溶液を冷却された攪拌した溶液に液滴で添加した。添加を完了した後、反応物をさらに1時間攪拌した。(S)−2−(ジベンジルアミノ)ブタン−1−オール(1.43g,5.3mmol)のジクロロメタン溶液を5分にわたって添加した。10分後に、ジイソプロピルエチルアミン(2.73g、21.2mmol)を添加した。この反応物を室温に加温させ、攪拌しながら1時間放置した。これを0℃に冷却し、酢酸エチル/水(50ml:50ml)を添加した。有機層を水(50ml)、ブライン(50ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、濃縮した。生成物をフラッシュシリカカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン 1:4)により精製することによって、純粋な生成物(1.28g、90.5%)を得た。δ(250MHz,CDCl)0.88(3H,t,J 7.5,CHCH)、1.77〜1.54(2H,m,CCH)、2.99(1H,t,J 7.5,CCHCH)、3.74〜3.57(4H,m,2×CPh)、7.31〜7.11(10H,m,2×C)9.64(1H,s,CHO);δ(250MHz,CDCl)203.9(CO)、139.33(2×C)、128.99(4×CH)、128.45(4×CH)、127.3(2×CH)、68.46(CH)、54.85(CH)、17.44(CH)、11.83(CH);m/z 268.2(M+H)
【0206】
(2R,3S)−3−(ジベンジルアミノ)ペンタン−2−オール
【0207】
【化18】

【0208】
−78℃で、アルゴン雰囲気下で、CuBr.SMe(1.54g、7.5mmol)の無水エーテル中の攪拌した懸濁液に、メチルリチウム(エーテル中1.6M、9.4ml、15mmol)を液滴で添加した。添加が完了した後、反応物を室温に加温させた。この反応物を−78℃に再冷却し、(S)−2−(ジベンジルアミノ)ブタナール(1g、3.75mmol)のエーテル(20ml)中の溶液を液滴で添加した。添加後、攪拌を2時間継続した。次いで反応をNHCl(10ml)の飽和水溶液でクエンチした。反応混合物をエーテル(2×30ml)で抽出し、合わせた有機相をブライン(20ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空で蒸発させた。残留物をフラッシュシリカゲル勾配カラムクロマトグラフィーによって精製し、ヘキサン:酢酸エチル(100:0→80:20)で溶出することによって、生成物を薄黄色油状物(0.95g、89%)として、唯一の異性体として得た。δ(250MHz,CDCl)1.05(3H,t,J 7.5,CHCH)、1.25[3H,d,J 7.5,CH(C)OH]、1.6〜1.49(1H,m,CHCH)、1.88〜1.73(1H,m,CHCH)、2.41(1H,s,br,OH)、2.66〜2.59(1H,m,CCHCH)、3.85〜3.65(4H,m,2×CPh)、4.05〜3.9(1H,m,COH)、7.41〜7.25(10H,m,ArH)δ(250MHz,CDCl)140.05(2×C)、128.98(4×CH)、128.37(4×CH)、127.3(2×CH)、66.81(CH)、63.65(CH)、55.41(CH)、20.63(CH)18.44(CH)、12.5(CH
【実施例1】
【0209】
2−クロロ−4,6−ジメチルニコチノニトリル
【0210】
【化19】

【0211】
4,6−ジメチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリジン−3−カルボニトリル(5g、34mmol)をオキシ塩化リン(20ml)に添加した。反応物を還流しながら2時間攪拌し、その後完了したと見られた。揮発分を除去し、残留物をガソリンでトリチュレートした。得られた固体を濾別(filter off)し、ヘキサンで洗浄し、乾燥することによって、純粋な白色固体(5.1g、90%)を得た。δ(250MHz,CDCl)2.55(3H,s,CH)、2.57(3H,s,CH)、7.09(1H,s,ArH);δ(250MHz,CDCl)162.64(C)、154.39(C)、152.26(C)、123.22(CH)、114.28(C)、108.31(C)、24.5(CH)、20.54(CH)。;m/z 189(M+Na)
【0212】
4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルカルバミン酸t−ブチルエステル
【0213】
【化20】

【0214】
2−クロロ−4,6−ジメチル−ニコチノニトリル(5g、30.1mmol)を10%の酢酸/エタノール(30ml)中に溶解させた。10%の木炭上パラジウム触媒(0.5g)を添加し、反応物を水素雰囲気下で、60℃で24時間攪拌した。この混合物をセライトの詰め物を通して濾過した。揮発分を除去し、粗残留物をジクロロメタン(30ml)中に溶解させた。次いで攪拌した溶液に、トリエチルアミン(5ml)、その後にジ−tert−ブチルジカーボネート(6.5g、30mmol)を添加した。3時間後に、溶媒を除去し、残留物を酢酸エチル中に溶解させた。これを水(50ml)、飽和ビカーボネート(50ml)で洗浄し、乾燥し、蒸発させた。粗生成物をシリカゲルフラッシュカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン 1:2)により精製することによって、1.4gの純粋な表題化合物を得た(20%の収率)。δ(250MHz,CDCl)1.43(9H,s,3×CH)2.19(3H,s,CH)、2.38(3H,s,CH)、4.19(2H,s,br,ArCNH)、6.84(1H,s,ArH)、8.15(1H,s,ArH);δ(250MHz,CDCl)157.41(CO)、155.63(C)、148.93(CH)、145.91(C)、129.51(C)、124.76(CH)、79.44(C)、46.12(CH)、28.32(3×CH)、23.74(CH)、18.97(CH);m/z 237.2(M+H)
【0215】
(4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチル)−(2−フルオロ−9H−プリン−6−イル)−アミン
【0216】
【化21】

【0217】
0℃で、アルゴン雰囲気下で、6−クロロ−2−フルオロプリン(0.83g、4.9mmol)のn−BuOH(50ml)中の攪拌した溶液に、DIEA(2.5ml、14.7mmol)、その後に(4,6−ジメチルピリジン−3−イル)メタンアミン(1g、7.35mmol)を添加した。この反応混合物をこの温度で1時間攪拌し、次いで室温に戻し、4時間攪拌したが、依然として完了していないと見られたので、反応物を100℃に加熱し、その温度で2時間放置した。溶媒を真空で蒸発させ、残留物をシリカゲル上で勾配フラッシュカラムクロマトグラフィーによって精製し、CHCl:MeOH(100:0→90:10)で溶出することによって、生成物を白色固体として得た;収量:0.86g(65%)。δ(250MHz,CDCl)2.35(3H,s,CH)、2.39(3H,s,CH)、4.61(2H,s,br,NHC)、7.07(1H,s,ArH)、8.13(1H,s,ArH)、8.33(1H,s,ArH)、8.69(1H,s,br,NH);δ(250MHz,CDCl)161.2(C)、158.57(C)、156.08(C)、150(C)、148.08(CH)、148.14(CH)、147.9(CH)、145.93(C)、129.92(C)、129.76(C)、124.37(CH)、41.7(CH)、23.17(CH)、18.14(CH);m/z 273.2(M+H)
【0218】
(4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチル)−(2−フルオロ−9−イソプロピル 9H−プリン−6−イル)−アミン
【0219】
【化22】

【0220】
室温で、アルゴン雰囲気下で、(4,6−ジメチル−ピリジン−3−イルメチル)−(2−フルオロ−9H−プリン−6−イル)−アミン(0.6g、1.9mmol)のDMF(10ml)中の攪拌した溶液に、KCO(粉末化、無水、1.77g、5当量、13mmol)、その後に2−ブロモプロパン(1.8ml、10当量、19mmol)を添加した。この反応混合物を室温で24時間攪拌し、そのとき、TLC(CHCl:MeOH;90:10)により、反応が完了していたことが示された。溶媒を真空で蒸発させ、残留物を水(50ml)と酢酸エチル(50ml)の間で分配し、水相を分離し、さらなるEtOAc(2×50ml)で抽出した。まとめた有機相をブライン(50ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空で蒸発させ、残留物をシリカゲル上で勾配カラムクロマトグラフィーによって精製し、CHCl:MeOH(100:0→95:5)で溶出することによって、生成物を黄色膜として得た(0.4g、59%)。δ(250MHz,CDCl)1.52[6H,d,J 7.5 CH(C]2.27(3H,s,CH)、2.45(3H,s,CH)、4.73〜4.62(3H,m,NHC及びC[CH)、6.91(1H,s,ArH)、7.12(1H,NH)、7.47(1H,s,ArH)、8.32(1H,s,ArH);δ(250MHz,CDCl)160.77(C)、157.89(C)、157.43(C)、156.12(C)、155.79(C)、149.14(CH)、137.7(CH)、128.7(C)、129.76(C)、124.83(CH)、47.2(CH)、40.14(CH)、23.9(CH)、22.47(2×CH)、18.54(CH);m/z 315.3(M+H)
【0221】
(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オール
【0222】
【化23】

【0223】
室温で、アルゴン雰囲気下で、(4,6−ジメチル−ピリジン−3−イルメチル)−(2−フルオロ−9−イソプロピル−9H−プリン−6−イル)−アミン(300mg、0.84mmol)の、n−BuOH/DMSO(5ml、4:1)中の攪拌した溶液に、DIEA(1.7ml、10当量、8.4mmol)、その後に(2R,3S)−3−アミノ−ペンタン−2−オール(0.5g、4.8mmol)を添加した。フラスコに冷却管を装着し、反応混合物を140℃で予熱した油浴中に置き、この温度で72時間攪拌した。この反応混合物を室温に冷却させ、溶媒を真空で蒸発させた。残留物を酢酸エチル(50ml)と水(50ml)の間で分配し、水相をさらなるEtOAc(2×25ml)で抽出し、合わせた有機相をブライン(50ml)で洗浄し、乾燥し(MgSO)、真空で蒸発させた。残留物をシリカゲル上でフラッシュ勾配カラムクロマトグラフィーによって精製し、CHCl:MeOH(100:0→95:5)で溶出することによって、55mgの純粋な表題化合物(12%)を得た。δ(250MHz,CDCl)0.95(3H,t,J 7.5,CHCHCH)、1.06(3H,d,J 7.5,CHCHOH)1.48[6H,d,J 7.5 CH(C]、2.24(3H,s,CH)、2.4(3H,s,CH)、3.92〜3.82(2H,m,NHCH)、4.67〜4.45(3H,m,CEtCMeO)、6.15(1H,s,br,NH)、6.87(1H,s,ArH)、7.37(1H,ArH)、8.31(1H,s,ArH);δ(250MHz,CDCl)160.11(C)、157.68(C)、154.57(C)、149.42(CH)、146.38(C)、134.54(CH)、129.24(C)、124.84(CH)、71.52(CH)、59.65(CH)、46.47(CH)、40.33(CH)、24.94(CH)、23.89(CH)、23.52(2×CH)、17.37(CH)、12.57(CH);m/z 398.3(M+H)
【0224】
略語
以下の略語を使用する:CTD(Carboxyl terminal domain)、カルボキシル末端ドメイン;DMEM(Dulbecco's modified Eagle's medium)、ダルベッコ変法イーグル培地;DMSO(Dimethylsulphoxide)、ジメチルスルホキシド;EGF(Epidermal Growth Factor)、上皮成長因子;EGFR(Epidermal Growth Factor Receptor)、上皮成長因子受容体;ERK(extracellular signal regulated kinase)、細胞外シグナル制御キナーゼ;FCS(Foetal calf serum)、ウシ胎児血清;NSCLC、非小細胞肺癌;PARP(poly-ADP ribose polymerase)、ポリADPリボースポリメラーゼ;PBS(Phosphate-buffered Saline)、リン酸緩衝食塩水;PKB(protein kinase B)、プロテインキナーゼB;SDS−PAGE(sodium dodecyl sulphate-polyacrylamide gel electrophoresis)、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動。
【0225】
細胞株、細胞培養及び試薬
MCF7、A549、H460、SkBr3、H1650及びH358細胞は、ATCC社(Mannassas、USA)から購入した。細胞培養は、RPMI培地中で増殖させたH1650及びH358細胞を除いて、DMEM中で維持した。細胞は、10%(v/v)のウシ胎児血清(FCS)、100ユニット/mlのペニシリン及び100μg/mlのストレプトマイシンを含む培地中で、5%のCOの加湿雰囲気中、37℃で培養した。別段の記載のない限り、すべての試薬はSigma社(Poole、UK)から購入した。
【0226】
薬剤の組合せの分析
実験は、96ウェルプレート中で実施した。SkBr3及びMCF7細胞は、1%(v/v)のFCSを含む培地中に、5,000細胞/ウェルの密度で播種した。10%(v/v)のFCSを含む培地中に、H358、H1650及びH460細胞を3,000細胞/ウェルで播種し、A549細胞を2,000細胞/ウェルで播種した。セリシクリブ(Cyclacel Ltd.社製、Dundee、UK)及びAG1478(Tocris Bioscience社製、Bristol、UK)の原液は、ジメチルスルホキシド(DMSO)中で調製し、トラスツズマブ(Genentech Inc社製、South San Francisco、USA)は、0.9%(w/v)の滅菌食塩液中に溶解させた。各薬剤のIC50値に及ぶ濃度範囲で、各化合物の連続希釈液(1.5倍)を調製した。
【0227】
潜在的な相乗的相互作用の実験評価のために、同時処理法には、個々の化合物を単独で用いて72時間処理した細胞の適当な対照とともに、セリシクリブと、トラスツズマブ又はAG1478とを用いた72時間の細胞の同時処理が含まれた。連続処理法では、1つの薬剤をプレーティングして2時間後に細胞に添加し、24時間放置した。次いで培地を吸引し、第2の薬剤を含む新鮮な培地と交換し、さらに72時間インキュベートした。連続処理法についての2つの個々の処理対照では、薬剤処理の1つを薬剤を含まない培地で置き換えた。すべての処理は三つ組のウェルで実施した。
【0228】
薬剤で処理した後、各ウェル中の生細胞数を10%のアラマーブルー(Roche社製、Lewes、East Sussex、U.K.)を含む培地中で1時間インキュベートし、488〜595nmで吸光度を測定することによって推定した。薬剤相互作用は、Calcusynソフトウェアパッケージ(BioSoft社製、Cambridge、U.K.)を使用して分析した。これは、Chou and Talalayの半有効モデルに基づく[Chou, T.C. and P. Talalay, Quantitative analysis of dose-effect relationships: the combined effects of multiple drugs or enzyme inhibitors. Adv Enzyme Regul, 1984. 22: p. 27-55]。組合せ指数(C.I.、combination index)が1であることは、相加的な薬剤相互作用を示し、1を超えるC.I.は拮抗性であり、1未満のスコアは相乗的であった。
【0229】
ウェスタンブロット分析
細胞を10cmのプレート上で約8×10細胞/プレートで播種し、一晩放置して定着させた。化合物をプレートに添加し、細胞を指定した時間インキュベートした。培地をそれぞれのウェルから取り出し、1,000×gで5分間遠心機にかけることによって、プレート表面からはがれていた任意の細胞をペレットにした。プレートに依然として接着していた細胞を氷冷緩衝液A(20mMのNaCl、1mMのDTT、及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Merck社製、Nottingham、U.K.)を含む、50mMのHEPES、pH7.0)で1回洗浄し、次いで掻爬して0.350mlの緩衝液B(10mMのピロリン酸ナトリウム、10mMのフッ化ナトリウム及び1mMのオルトバナジン酸ナトリウムを含む緩衝液A)中に入れた。次いで再懸濁した細胞を適切な培地細胞ペレット(media cell pellet)を用いてプールし、超音波処理(5アンペアで、Sanyo soniprep 150を使用して、2×3秒のバースト)によって溶解させた。各溶解産物のタンパク質濃度は、BCAアッセイ(Perbio Science, Northumberland、U.K.)を使用して求めた。溶解産物(20〜30μgのタンパク質/ウェル)を3〜8%のアクリルアミドトリス−アセテートゲル又は10%のアクリルアミドビス−トリスゲル(Invitrogen社製、Glasgow、U.K.)上で分解し、Invitrogen社製ウェットトランスファーシステムを使用して、タンパク質をニトロセルロース膜(Schleicher & Schuell社製、London、U.K.)に移した。0.02%(v/v)のTween 20(PBST)及び5%(w/v)の無脂肪のドライミルクを含むPBS中で、室温で1時間膜をブロックした。一次抗体のインキュベーションは、以下の一次抗体を使用して、3%(w/v)のドライミルクを含むPBST中で、2〜8℃で一晩実施した:ErbB2(Calbiochem社製、Nottingham、U.K.)、EGFR(Calbiochem社製)、ホスホ−Tyr1068 EGFR(New England Biolabs社製、Hertfordshire、U.K.)、サイクリンD1(Lab Vision社製、Suffolk、U.K.)、ホスホ−Thr185 ERK1及びホスホ−Thr202 ERK2(Abcam社製、Cambridge、U.K.)、ERK2(Abeam社製)、Asp−214切断PARP(BD Pharmingen社製、Oxford、UK)並びにβ−アクチン。膜をPBST中で3回洗浄し、次いで3%(w/v)ミルクを含むPBST中1:5000の希釈で、適切な西洋わさびペルオキシダーゼ結合二次抗体(Perbio社製)とともに、1時間インキュベートした。膜をPBST中で3回洗浄した後、高感度化学発光キット(Amersham Corporation社製、Buckinghamshire、U.K.)を使用して現像した。
【0230】
フローサイトメトリー
H358又はH1650細胞を10cmのプレート中で、約5×10細胞/プレートで播種し、一晩放置して定着させた。細胞を1×IC50のセリシクリブ、AG1478で、又は両方の薬剤を一緒に用いて処理した。72時間処理した後、細胞をトリプシン処理によって収集し、PBS中で2回洗浄し、次いで−20℃で、70%(v/v)のエタノール中で一晩固定した。細胞を1%(w/v)のBSAを含むPBS中で2回洗浄し、次いで室温で20分間、50μg/mlのヨウ化プロピジウム及び50μg/mlのリボヌクレアーゼAとともにインキュベートした。Becton Dickinson社製LSRフローサイトメーターで、CellQuestプログラムを使用して、フローサイトメトリーによって、DNA含量について細胞を分析した。
【0231】
インビボ研究
メスの(nu/nu)マウスの側腹部の単一部位で、約1×10H358細胞/マウスを皮下注射した。腫瘍を約110mmに増殖させた後、腫瘍サイズによってペアマッチして処置群(9マウス/群)にした。1つの群は、連続して5日間、1日2回腹腔内注射した後、2日中断するようにセリシクリブ(50mg/kg)で処置し、次いでこの処置を合計4サイクル繰り返した。エルロチニブ(100mg/kg)は、連続して28日間、経口強制飼養によって毎日投与した。組合せで処置した群には、両単一薬剤群と同じ様式で投薬した。マウスを少なくとも1週間に2回計量することによって処置の毒性を評価し、腫瘍をノギスを用いて少なくとも1週間に2回測定することによって腫瘍の増殖を求めた。処置の最初の1週間の間に、動物の体重がいくらか減少した。しかし、重量減少は、媒体対照群においても発生したので(8〜11日目の最大重量減少は11%)、これは、セリシクリブに使用した最初の媒体(50mM HCl)に関連していると思われた。10日目に、対照及びセリシクリブを投与している2つの群について、媒体を10%のクレモホル、10%のエタノール、80%の食塩水に変更した。すべての3つの群は、直ちに体重が増加し始めた。腫瘍の測定値は、式:腫瘍体積(mm)=幅(mm)×長さ(mm)×0.52を使用して体積に変換した。腫瘍増殖阻害百分率は、式:1−(処置した腫瘍の体積の変化/対照の腫瘍体積の変化)×100を用いて求めた。それぞれの群について、統計的有意性は、一元配置ANOVAを使用し、その後にダネット検定を使用して、対照群と比較することによって求めた。異なる処置群間の有意性は、両側、対応のないスチューデントT検定を使用して求めた。
【0232】
結果及び考察
CDK又はErbBファミリーのメンバーを標的にする化合物は、癌治療剤として大きな関心を集めている。これらのキナーゼファミリーのいずれの阻害剤も、単一薬剤としていくらかの臨床活性を示しているが、最終的には、他の薬剤と組み合わせて使用される傾向が強い[Dancey, J.E. and H.X. Chen, Strategies for optimizing combinations of molecularly targeted anticancer agents. 2006. 5(8): p. 649-659]。この一連の実験の目的は、これらの2つのプロテインキナーゼファミリーの阻害剤を相乗的に併用することができるかどうかを判定することであった。
【0233】
セリシクリブとトラスツズマブの間の相互作用を評価するために、乳癌細胞株、即ち、HER2を過剰発現するSkBr3、又は低レベルのHER2を発現するMCF7において、組合せ実験を実施した[Wu, K., et al., Flavopiridol and trastuzumab synergistically inhibit proliferation of breast cancer cells: association with selective cooperative inhibition of cyclin D1-dependent kinase and Akt signaling pathways. Molecular Cancer Therapeutics, 2002. 1(9): p. 695-706]。トラスツズマブ(1〜100nM)とともにインキュベートすると、SkBr3細胞の増殖が最大40%低減したが、MCF7細胞に対してはまったく有意な効果がなく(データを示していない)、以前のデータと一致した[Wu, K., et al., Flavopiridol and trastuzumab synergistically inhibit proliferation of breast cancer cells: association with selective cooperative inhibition of cyclin D1-dependent kinase and Akt signaling pathways. Molecular Cancer Therapeutics, 2002. 1(9): p. 695-706]。セリシクリブは、両細胞株の増殖を阻害し、SkBr3及びMCF7細胞におけるIC70は、それぞれ20.4μM及び15.4μMであった。セリシクリブとトラスツズマブを共インキュベートすると、SkBr3細胞株における細胞増殖が適度に相乗的に阻害され(表1)、ED50(組合せにより、細胞増殖が50%阻害される点)で、0.73のCalcusyn組合せ指数(CI)を生じた。HER2シグナル伝達経路によって伝達される分裂促進刺激により、サイクリンD1が発現し、結果としてCDKが活性化され、細胞増殖に至る[Harari, D. and Y. Yarden, Molecular mechanisms underlying ErbB2/HER2 action in breast cancer. Oncogene., 2000. 19(53): p. 6102-14]。したがって、これらの受容体の過剰発現又は構成的活性化により、癌化が生じる。実際に、サイクリンDは、HER2受容体による変換に必要であり[Lee, R.J., et al., Cyclin D1 is required for transformation by activated Neu and is induced through an E2F-dependent signaling pathway. Mol Cell Biol., 2000. 20(2): p. 672-83]、サイクリンD1が欠乏したマウスは、HER2媒介腫瘍形成に耐性である[Yu, Q., Y. Gaeng, and P. Sicinski, Specific protection against breast cancers by cyclin D1 ablation. Nature, 2001. 411(6841): p. 1017-1021、Landis, M.W., et al., Cyclin D1-dependent kinase activity in murine development and mammary tumorigenesis. Cancer Cell., 2006. 9(1): p. 13-22]ことが示されている。相乗的なセリシクリブ/トラスツズマブの組合せの背景にある機構を評価するために、HER2シグナル伝達経路に対する効果の分析を実施した。SkBr3細胞をセリシクリブ、トラスツズマブ又は両薬剤の組合せとともに24時間インキュベートし、細胞溶解産物を調製し、HER2及びサイクリンD1タンパク質のレベルをウェスタンブロットによって検査した。トラスツズマブによる処置では、最大28nMの濃度で、HER2レベルに対する効果は中程度であり(図1A)、これは、この薬剤は、SkBr3細胞中のHER2レベルを劇的に下方制御しないことを実証した以前の知見[Longva, K.E., et al., Herceptin-induced inhibition of ErbB2 signaling involves reduced phosphorylation of Akt but not endocytic down-regulation of ErbB2. Int J Cancer., 2005. 116(3): p. 359-67]と一致している。一方、セリシクリブ単独での処置では、HER2レベルは、用量依存的な様式で減少した(図1B)。セリシクリブによるHER2受容体レベルの下方制御は、おそらくCDK7及び9に対するその阻害効果によるものであり[Ljungman, M. and M.T. Paulsen, The cyclin-dependent kinase inhibitor roscovitine inhibits RNA synthesis and triggers nuclear accumulation of p53 that is unmodified at Ser15 and Lys382. Mol Pharmacol, 2001. 60(4): p. 785-9、Dubois, M.F., et al., Inhibitors of transcription such as 5,6-dichloro-1-beta-D-ribofuranosylbenzimidazole and ioquinoline sulphonamide derivatives (H-8 and H-7) promote dephosphorylation of the carboxyl-terminal domain of RNA polymerase II largest subunit. Journal of biological chemistry, 1994. 269: p. 13331-13336]、この効果により、受容体の転写が減少し、HER2タンパク質は、細胞内に自然に代謝回転されるので減少する[Scott, G.K., et al., Transcriptional repression of ErbB2 by histone deacetylase inhibitors detected by a genomically integrated ErbB2 promoter-reporting cell screen. Mol Cancer Ther., 2002. 1(6): p. 385-92]。トラスツズマブとセリシクリブは、一緒に投与したとき、いずれかの単一薬剤処置単独よりも、HER2受容体の大きな下方制御を生じ、これらの薬剤は、この受容体のレベルを相乗的に下方制御することを示した(図1C)。
【0234】
HER2シグナル伝達経路の最終下流成分の1つとして、サイクリンD1タンパク質レベルに対する組合せの効果を検査することは興味深いことであった。これらの実験において試験した濃度で、トラスツズマブによる処置だけでは、サイクリンD1レベルに対する明らかな効果はまったくなかったが(図1A)、セリシクリブでは、サイクリンD1レベルが、用量依存的な様式で著しく減少した(図1B)。このサイクリンD1の減少は、セリシクリブをトラスツズマブと組み合わせることによってわずかに増強された(図1C)。サイクリンD1レベルは、HER2シグナル伝達の減少の結果として、及びまたサイクリンDl転写のセリシクリブ媒介阻害によっておそらく下方制御されたと思われる[Whittaker, S.R., et al., The Cyclin-dependent kinase inhibitor CYC202 (R-roscovitine) inhibits retinoblastoma protein phosphorylation, causes loss of Cyclin D1, and activates the mitogen-activated protein kinase pathway. Cancer Research, 2004. 64(1): p. 262-272]。これらのデータは、SkBr3細胞では、セリシクリブは、HER2受容体の下方制御、及びHER2分裂促進シグナルを伝えるのに極めて重要であることが示されている、細胞周期調節因子サイクリンD1の減少を促進することによって、HER2シグナル伝達経路に対するトラスツズマブの効力を増強したことを示す[Lee, R.J., et al., Cyclin D1 is required for transformation by activated Neu and is induced through an E2F-dependent signaling pathway. Mol Cell Biol., 2000. 20(2): p. 672-83、Yu, Q., Y. Gaeng, and P. Sicinski, Specific protection against breast cancers by cyclin D1 ablation. Nature, 2001. 411(6841): p. 1017-1021、Landis, M.W., et al., Cyclin D1-dependent kinase activity in murine development and mammary tumorigenesis. Cancer Cell., 2006. 9(1): p. 13-22]。
【0235】
セリシクリブとErbBファミリーメンバーの阻害剤との相乗的相互作用の分析を拡張するために、セリシクリブをEGFRチロシンキナーゼ阻害剤AG1478[Osherov, N. and A. Levitzki, Epidermal-growth-factor-dependent activation of the src-family kinases. Eur J Biochem., 1994. 225(3): p. 1047-53、Levitzki, A. and A. Gazit, Tyrosine kinase inhibition: an approach to drug development. Science., 1995. 267(5205): p. 1782-8]、エルロチニブの類似体と組み合わせて試験した。エルロチニブは、進行NSCLCを治療するために認可されており、臨床試験における肺癌の治療において生存利益を示している[Shepherd, F.A., et al., Erlotinib in Previously Treated Non-Small-Cell Lung Cancer. N Engl J Med, 2005. 353(2): p. 123-132]。セリシクリブとAG1478の組合せは、3つのNSCLC細胞株、即ちNCI−H358、A549及びNCI−H460において最初に評価された。これらの細胞株は、異なるレベルの野生型EGFRを発現し、A549細胞は、最も高いレベルのこの受容体を発現し、H358細胞は最も低いレベルのこの受容体を発現する(図2)。AG1478についてのIC50値は、H358、A549及びH460細胞においてそれぞれ、4μM、6.6μM、及び10.4μMであり、EGFRタンパク質レベルと、AG1478に対する感受性との間に直接の相関はまったくないことを実証している。等価なパターンの感受性がエルロチニブについて報告されており、これらの3つの細胞株をそれぞれ感受性、中間、及び耐性として記述している[Thomson, S., et al., Epithelial to mesenchymal transition is a determinant of sensitivity of non-small-cell lung carcinoma cell lines and xenografts to epidermal growth factor receptor inhibition. Cancer Res., 2005. 65(20): p. 9455-62]。組合せ分析を実施し、同時インキュベーションと順次添加(両方向)を評価した。H358細胞では、同時に薬剤処理すること及びAG1478で前処理しその後にセリシクリブで処理することにより、細胞増殖が相乗的に阻害された(それぞれ、0.74及び0.81のED50でのCI値)(表2)。
【0236】
セリシクリブとAG1478の相乗効果に関与する分子機構を解明するために、細胞毒性分析に使用したものと等価な濃度で、H358細胞をいずれかの薬剤単独で、又は組合せで処理した。細胞溶解産物を調製し、タンパク質をウェスタンブロッティングによって分析した(図3)。最初に、EGFRのレベルに対する化合物の効果及びそのリン酸化状態を研究した。AG1478又はセリシクリブで処理することにより、EGFRのレベルは用量依存的な様式で減少した。AG1478とセリシクリブを一緒に適用すると、EGFRタンパク質レベルは、2つの個々の薬剤処理のいずれよりも有効に減少し、これらの薬剤は、受容体の相乗的な下方制御を促進していたことを示した(図3)。さらに、AG1478による処理では、EGFRリン酸化が用量依存的に減少し、セリシクリブによる処理では、効果は限られていた。EGFRリン酸化のレベルの低減は、同時処理によって増強され、化合物はEGFRの量及び活性化状態を相乗的に下方制御していたことを示した。
【0237】
EGFRシグナル伝達経路に対するセリシクリブとAG1478の組合せの効果をさらに調査するために、この経路の2つの下流成分、即ち、ERKのリン酸化状態及びサイクリンD1タンパク質レベルを分析した。試験した濃度で、セリシクリブ単独では、ERKリン酸化に対する有意な効果はまったくなかった。一方、AG1478により、低濃度でERKリン酸化が刺激され、これは、NSCLC細胞株においてゲフィチニブでも観察された効果であるが[Janmaat, M.L., et al., Response to Epidermal Growth Factor Receptor Inhibitors in Non-Small Cell Lung Cancer Cells: Limited Antiproliferative Effects and Absence of Apoptosis Associated with Persistent Activity of Extracellular Signal-regulated Kinase or Akt Kinase Pathways. Clin Cancer Res, 2003. 9(6): p. 2316-2326]、より高い濃度で効果は最小であった。しかし、組合せは、ERKリン酸化の低減に非常に有効であり、ホスホ−ERKのレベルを明らかに減少させ、EGFRシグナル伝達の阻害を示した。サイクリンD1は、細胞周期の重要な調節因子の1つとして、その役割において大多数のErbB受容体シグナル伝達経路の下流に位置する。実際に、サイクリンD1レベルの低減は、インビトロ及び患者の両方において、EGFR阻害剤に対する応答を得るのに必須であることが示されている[Kalish, L.H., et al., Deregulated Cyclin D1 Expression Is Associated with Decreased Efficacy of the Selective Epidermal Growth Factor Receptor Tyrosine Kinase Inhibitor Gefitinib in Head and Neck Squamous Cell Carcinoma Cell Lines 10.1158/1078-0432.CCR-04-0012. Clin Cancer Res, 2004. 10(22): p. 7764-7774、Petty, W.J., et al., Epidermal growth factor receptor tyrosine kinase inhibition represses cyclin D1 in aerodigestive tract cancers. Clin Cancer Res., 2004. 10(22): p. 7547-54]。細胞のIC50値又はこれを超える濃度のセリシクリブでは、H358細胞において、サイクリンD1レベルが中程度に減少したが、試験した濃度で、AG1478では、このタンパク質のレベルに対する効果は非常にわずかであった。しかし、一緒に適用すると、この2つの薬剤により、用量依存的な様式でサイクリンD1の発現が劇的に低減した(図3)。やはり、セリシクリブの相乗的相互作用に対する寄与は、おそらくCDK7及び9の阻害によるものであり、この阻害によりEGFRシグナル伝達経路の重要成分のレベルの低減に至る。
【0238】
セリシクリブ処理により、アポトーシス細胞死が生じることが知られているが[MacCallum, D.E., et al., Seliciclib (CYC202, R-Roscovitine) Induces Cell Death in Multiple Myeloma Cells by Inhibition of RNA Polymerase II-Dependent Transcription and Down-regulation of Mcl-1. Cancer Res, 2005. 65(12): p. 5399-5407、McClue, S., et al., In vitro and in vivo antitumour propertiess of the cyclin dependent kinase inhibitor CYC202 (R-roscovitine). International journal of cancer, 2002. 102(463-468)]、AG1478、エルロチニブ又はトラスツズマブで処理された多くの細胞株では、アポトーシスの有意な誘発は観察されていない[Nahta, R., et al., Epidermal growth factor receptor expression is a candidate target of the synergistic combination of trastuzumab and flavopiridol in breast cancer. Cancer Research, 2003. 63(13): p. 3626-31、Chinnaiyan, P., et al., Mechanisms of enhanced radiation response following epidermal growth factor receptor signaling inhibition by erlotinib (Tarceva). Cancer Res., 2005. 65(8): p. 3328-35、Huang, S., et al., Dual-agent molecular targeting of the epidermal growth factor receptor (EGFR): combining anti-EGFR antibody with tyrosine kinase inhibitor. Cancer Res., 2004. 64(15): p. 5355-62、Zhou, Y. and M.G. Brattain, Synergy of epidermal growth factor receptor kinase inhibitor AG1478 and ErbB2 kinase inhibitor AG879 in human colon carcinoma cells is associated with induction of apoptosis. Cancer Res., 2005. 65(13): p. 5848-56]。したがって、セリシクリブとAG1478を組み合わせたとき、アポトーシスの相乗的な誘発は予測していなかった。アポトーシスのマーカーとしてPARP切断を使用して、ウェスタンブロット分析により、H358細胞において試験したAG1478濃度で、PARP切断はまったく増大しなかったことが実証された(図3)。対照的に、セリシクリブでは、切断PARPが用量依存的に増加したが、これは、AG1478の存在下で増強されなかった(図3)。総合すると、これらの結果は、H358細胞では、セリシクリブとAG1478の組合せにより、主にEGFRシグナル伝達経路の下方制御によって細胞増殖が相乗的に阻害され、アポトーシス細胞死の誘発が増大するのではなく、細胞増殖が停止することを示す。
【0239】
アポトーシスの誘発をより詳細に調査するために、これらの研究を拡張することによって、NCI−H1650 NSCLC細胞株においてこの組合せを評価した。この細胞株は、突然変異体EGFRを発現し、エルロチニブに対して非常に感受性であり、エルロチニブで処理した後にアポトーシスが誘発されることが報告されている[Yauch, R.L., et al., Epithelial versus Mesenchymal Phenotype Determines In vitro Sensitivity and Predicts Clinical Activity of Erlotinib in Lung Cancer Patients 10.1158/1078-0432.CCR-05-1492. Clin Cancer Res, 2005. 11(24): p. 8686-8698]。Calcusyn分析では、セリシクリブ/AG1478の組合せは、H358細胞よりH1650細胞株においてわずかに相乗的であることが示された(データを示していない)。アポトーシスに対する組合せの効果を評価するために、H1650及びH358細胞を適切な細胞毒性のIC50濃度の化合物で処理し、アポトーシスの誘発を切断PARPのレベルに関してウェスタンブロット分析、及びサブG1 DNA内容物を含む細胞数に関してフローサイトメトリー分析の両方によって判定した。以前に示したように(図3)、IC50濃度では、単一薬剤又は組合せのいずれも、H358細胞において、切断PARPの誘発に対する効果は有意でない(図4A)。DMSO対照中の少量の切断PARPは、この細胞株内での自然のアポトーシスターンオーバーを示し、これは、いずれの処理によっても増大しなかった。対照的に、H1650細胞では、DMSOで処理した対照と比較したとき、セリシクリブ及びAG1478ではともに、切断PARPのレベルの増大は小さかった。さらに、組合せで処理した後では、切断PARPの増大は、いずれの単一薬剤単独より大きかった(図4A)。同じ実験からの細胞のフローサイトメトリー分析により、H358及びH1650細胞の両方について、セリシクリブで処理した後のG2/M期の細胞の特徴的な増加が示された(図4B)。H358細胞では、いずれの処理によっても、DMSOで処理した対照細胞中に存在する約10%を超えて、サブG1 DNA内容物を含む細胞(アポトーシス細胞)は有意に増加しなかった。H1650細胞では、対照細胞は、サブGl内容物を含む細胞数が非常に少なく、(約2.5%);単一薬剤処理ではともに、サブGl集団がわずかに増大し、組合せでは、切断PARPデータに類似した様式で(図4A)、アポトーシス集団がより大幅に増大した(図4B)。処理濃度を細胞毒性のIC50値の1.5倍又は2.25倍に増加させた場合、H1650細胞において同等の結果を得たが、それぞれの場合において、より大きな割合のアポトーシス細胞が検出されたことは重要である(データを示していない)。これらのデータは、AG1478で処理した後に、アポトーシスを誘発しやすい細胞株において、セリシクリブとの組合せにより、アポトーシスの誘発のレベルがより大きくなることを示す。
【0240】
最後に、セリシクリブとエルロチニブの組合せをH358 NSCLC異種移植モデルにおいてインビボで評価した。約110mmのH358腫瘍を有するマウスに、セリシクリブ(50mg/kg)を連続して5日間、1日当たり2回腹腔内投与し、次いで、2日処置を中断した後、このスケジュールを合計28日間繰り返した。エルロチニブ(100mg/kg)は、連続して28日間、1日1回、経口強制飼養により投与し、組合せによる処理については、マウスに、それぞれの単一薬剤と同じスケジュールで投与した。対照マウスには、1日2回のスケジュールでセリシクリブ媒体を投与した。すべての処置を終えて3週間後の49日目で、対照マウスの腫瘍は、平均体積が700mmであり、6倍を超える腫瘍サイズの増大を示した。(図5)。単一薬剤のセリシクリブ又はエルロチニブで処理したマウスの平均腫瘍体積は、それぞれ717mm及び444mmであり、いずれの薬剤も、これらの用量では、それ自体で有意な活性を有さないことを示した。この低レベルのエルロチニブ活性(44%の腫瘍増殖阻害0.05を超えるp)は、この腫瘍タイプについて以前に報告された中程度の活性と相関した[Thomson, S., et al., Epithelial to mesenchymal transition is a determinant of sensitivity of non-small-cell lung carcinoma cell lines and xenografts to epidermal growth factor receptor inhibition. Cancer Res., 2005. 65(20): p. 9455-62]。しかし、49日目までで、セリシクリブとエルロチニブの組合せで処置したマウスの平均腫瘍体積は、153mmであり、93%の腫瘍増殖阻害を示した。ANOVA、その後にダネットの多重比較検定を使用して、すべての群を媒体対照と比較したとき、統計的に異なった唯一の群は、組合せの群であった(0.01未満のp)。個々の群をスチューデントのT検定を使用して互いに比較すると、組合せは、単一薬剤のセリシクリブ及びエルロチニブによる処置からも統計的に有意であった(0.002未満のp)。至適なT/C比(百分率で表した、処置した腫瘍体積の中央値と、対照の腫瘍体積の中央値との比)は、49日目までで22%であった。したがって、このH358異種移植では、エルロチニブ又はセリシクリブのいずれも、単一薬剤として使用される場合特に有効ではないが、この2つの化合物の組合せでは、腫瘍増殖を有意に遅延させる。
【0241】
本文書に示したデータは、セリシクリブなどのCDK阻害剤は、ErbBシグナル伝達経路の阻害剤と相乗的に相互作用することによって、細胞増殖を防止することができることを示す。このデータは、CDK阻害剤とEGFR阻害剤の相乗作用の最初の報告を表す。セリシクリブとAG1478の組合せは、突然変異体EGFR又は野生型EGFRを発現する細胞において相乗的であったことが重要である。セリシクリブとエルロチニブの組合せが、野生型EGFRを発現するH358異種移植モデルにおいて、インビボで劇的な相乗作用を示したことは重要である。分子レベルでは、相乗作用には、ErbB受容体レベルの下方制御の増強、及び下流シグナル伝達の阻害が主に関与していると思われ、ErbBシグナル伝達経路の重要な下流成分の1つである、サイクリンD1の減少が増強される。セリシクリブとErbB受容体ファミリーの阻害剤との組合せは、機構レベルで相乗的に作用すると思われるので、これらの薬剤の組合せは、ErbB阻害剤の臨床的効力を潜在的に改善し、これらの薬剤に感受性である腫瘍の数を増やすこともできるであろう。これらのデータは、これらの組合せは、さらに調査する価値があることを示す。
【0242】
H292及びSkBr3細胞における、セリシクリブ又は第二世代cdk阻害剤と、他のEGFR阻害剤又はHer2阻害剤との、インビトロ及びインビボでの相乗作用の検査
H292細胞を様々な濃度の(i)セリシクリブ又は第二世代阻害剤[1]〜[4]、(ii)ErbB阻害剤AG1478、エルロチニブ、ゲフィチニブ若しくはラパチニブ、又は(iii)これらの組合せで、72時間処理した。細胞をアラマーブルー試薬とともにインキュベートし、吸光度の読みをCalcusynで分析することによって、50%の有効用量値を得た。実験は、三つ組で少なくとも3回繰り返した。結果を以下の表3に示す。
【0243】
実験はまた、ラパチニブと組み合わせたセリシクリブ又は化合物[4]を用いて、Her2を過剰発現する乳癌細胞株SkBr3において実施することによって、Her2シグナル伝達経路を標的化することの相乗効果を評価した(表4)。
【0244】
すべての第二世代化合物について、有意な相乗作用がED50で観察され、セリシクリブで観察されたことと一致した。
【0245】
これらの有望な結果は、H292異種移植モデルを使用してインビボで追跡調査した。腫瘍細胞をヌードマウスに注射し、約130mmに増殖させた。この時点で処置を開始した。複数の群のマウスに、媒体、セリシクリブ、エルロチニブ又は両方の化合物を約2週間投与した。マウスは、毒性の徴候についてモニターし、腫瘍は、2〜3日毎に測定し、以下のグラフにプロットした。セリシクリブ又は(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール[1]を1〜5日目と11〜15日目に、それぞれ50mgと40mgで1日2回投与し、エルロチニブを1〜7日目と11〜15日目に投与した。エルロチニブの投薬は、最初の7日間については、毎日経口で、100mgで開始したが、11日目からは毎日経口で50mgに低減した。
【0246】
セリシクリブ及び(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール[1]は、単一薬剤としてこれらの用量で、腫瘍増殖に対する効果は、あったとしても最小であった(図6)。エルロチニブは、単一薬剤としてこの用量で適度に有効であった。エルロチニブとセリシクリブの組合せは、エルロチニブ単独よりわずかに良好であったが、最も劇的な効果は、(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール[1]とエルロチニブを組み合わせることによって得た。8日目で、両方の組合せは、エルロチニブの単一薬剤処置と著しく異なることが判明した(約0.02のp)。しかし、その後、(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール[1]とエルロチニブの組合せのみが、依然として統計的に有意であり、15日目でp=0.007に到達した。
【0247】
総合すると、このデータは、セリシクリブなどのCDK阻害剤又は化合物[1]〜[4]などの第二世代阻害剤と、EGFR阻害剤との組合せは、インビトロ及びインビボで相乗的であることを実証する。
【0248】
本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本発明の様々な改変及び変形が、当業者にとって明らかになる。本発明を具体的な好適な実施形態に関連して説明してきたが、特許請求した本発明は、そのような具体的な実施形態に不当に制限されるべきでないことが理解されるべきである。実際に、当業者に明白である、本発明を実施するために説明した様式の様々な改変は、本発明によって包含されることが意図されている。
【0249】
表1:SkBr3細胞における、トラスツズマブと組み合わせたセリシクリブ
方法及び材料に記載されているプロトコルを使用して、SkBr3細胞において、セリシクリブとトラスツズマブを組み合わせて試験した。同時処理法を使用し、ED50(細胞増殖が50%阻害される、曲線上の点)について得られた組合せ指数値(CI)を示した。結果は、少なくとも3つの独立した実験の平均である。CI値の定義は以下の通りである。1.1−0.9は相加的であり、0.9〜0.85はわずかに相乗的であり、0.85〜0.7は適度に相乗的であり、0.7〜0.3は相乗的である。
【0250】
【表2】

【0251】
表2:NSCLC細胞株H358における、EGFR阻害剤AG1478と組み合わせたセリシクリブ
方法及び材料に記載されているプロトコルを使用して、NSCLC細胞株H358において、セリシクリブとAG1478を組み合わせて試験した。同時(+)及び順次(/)処理スケジュールを試験し、ED50(細胞増殖が50%阻害される、曲線上の点)について得られた組合せ指数値を示した。結果は、少なくとも3つの独立した実験の平均である。CI値の定義は以下の通りである。1.45〜1.2は適度に拮抗性であり、1.2〜1.1はわずかに拮抗性であり、1.1〜0.9は相加的であり、0.9〜0.85はわずかに相乗的であり、0.85〜0.7は、適度に相乗的であり、0.7〜0.3は相乗的である。
【0252】
【表3】

【0253】
表3:H292細胞における、(i)セリシクリブ又は第二世代阻害剤[1]〜[4]と、(ii)EGFR阻害剤AG1478、エルロチニブ、ゲフィチニブ又はラパチニブとの組合せ
【0254】
【表4】

【0255】
[1]:(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール。
[2]:(3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール。
[3]:(2R3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール。
[4]:(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オール
【0256】
表4:Her2を過剰発現する乳癌細胞株SkBr3における、ラパチニブと組み合わせたセリシクリブ又は化合物[4]
【表5】

【0257】
(参考文献)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)ErbB阻害剤と、(ii)(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩とを含む組合せ。
【請求項2】
ErbB阻害剤がErbB1(EGFR)阻害剤である、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
EGFR阻害剤が、AG1478、セツキシマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、マツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブ、ペルツズマブ、カネルチニブ、バンデタニブ、EKB−569、HKI−272、BIBW−2992、AEE−788、XL647、BMS−599626、PKI−116、及びARRY−334543から選択される、請求項2に記載の組合せ。
【請求項4】
ErbB阻害剤がErbB2(Her2)阻害剤である、請求項1に記載の組合せ。
【請求項5】
ErbB2阻害剤が、トラスツズマブ、ラパチニブ、カネルチニブ、EKB−569、HKI−272、BIBW−2992、AEE−788、XL647、BMS−599626、PKI−116、及びARRY−334543から選択される、請求項4に記載の組合せ。
【請求項6】
CDK阻害剤がR−ロスコビチンである、請求項1〜5のいずれかに記載の組合せ。
【請求項7】
CDK阻害剤が、(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール、又は(3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オールである、請求項1〜5のいずれかに記載の組合せ。
【請求項8】
CDK阻害剤が、(2R3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オールである、請求項1〜5のいずれかに記載の組合せ。
【請求項9】
CDK阻害剤が、(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールである、請求項1〜5のいずれかに記載の組合せ。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の組合せ、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項11】
治療において同時、順次、又は別々に使用するための組合せ製剤としての、(i)ErbB阻害剤と、(ii)(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩とを含む医薬品。
【請求項12】
ErbB阻害剤がErbB1(EGFR)阻害剤である、請求項11に記載の医薬品。
【請求項13】
EGFR阻害剤が、AG1478、セツキシマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、マツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブ、ペルツズマブ、カネルチニブ、バンデタニブ、EKB−569、HKI−272、BIBW−2992、AEE−788、XL647、BMS−599626、PKI−116、及びARRY−334543から選択される、請求項12に記載の医薬品。
【請求項14】
ErbB阻害剤がErbB2(Her2)阻害剤である、請求項11に記載の医薬品。
【請求項15】
ErbB2阻害剤が、トラスツズマブ、ラパチニブ、カネルチニブ、EKB−569、HKI−272、BIBW−2992、AEE−788、XL647、BMS−599626、PKI−116、及びARRY−334543から選択される、請求項14に記載の医薬品。
【請求項16】
CDK阻害剤がR−ロスコビチンである、請求項11〜15のいずれかに記載の医薬品。
【請求項17】
CDK阻害剤が、(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール、又は(3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オールである、請求項11〜15のいずれかに記載の医薬品。
【請求項18】
CDK阻害剤が、(2R3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オールである、請求項11〜15のいずれかに記載の医薬品。
【請求項19】
CDK阻害剤が、(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールである、請求項11〜15のいずれかに記載の医薬品。
【請求項20】
薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物の形態での、請求項11〜19のいずれかに記載の医薬品。
【請求項21】
増殖性障害を治療するのに使用するための、請求項11〜20のいずれかに記載の医薬品。
【請求項22】
増殖性障害が癌である、請求項21に記載の医薬品。
【請求項23】
癌が、肺癌、頭部又は頸部癌、卵巣癌及び乳癌から選択される、請求項22に記載の医薬品。
【請求項24】
肺癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項23に記載の医薬品。
【請求項25】
(i)ErbB阻害剤と、(ii)(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩とを対象に、同時、順次、又は別々に投与するステップを含む、増殖性障害の治療方法。
【請求項26】
増殖性障害が癌である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
癌が、肺癌、頭頸部癌、卵巣癌及び乳癌から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
肺癌が非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
(i)ErbB阻害剤と、(ii)(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩とを対象に、同時、順次、又は別々に投与するステップを含む、非小細胞肺癌(NSCLC)の治療方法。
【請求項30】
CDK阻害剤を対象に投与した後に、ErbB阻害剤を前記対象に、順次又は別々に投与するステップを含む、請求項25〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
ErbB阻害剤を対象に投与した後に、CDK阻害剤を前記対象に、順次又は別々に投与するステップを含む、請求項25〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
ErbB阻害剤がErbB1(EGFR)阻害剤である、請求項25〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
EGFR阻害剤が、AG1478、セツキシマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、マツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブ、ペルツズマブ、カネルチニブ、バンデタニブ、EKB−569、HKI−272、BIBW−2992、AEE−788、XL647、BMS−599626、PKI−116、及びARRY−334543から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
ErbB阻害剤がErbB2(Her2)阻害剤である、請求項25〜31のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
ErbB2阻害剤が、トラスツズマブ、ラパチニブ、カネルチニブ、EKB−569、HKI−272、BIBW−2992、AEE−788、XL647、BMS−599626、PKI−116、及びARRY−334543から選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
CDK阻害剤がR−ロスコビチンである、請求項25〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
CDK阻害剤が、(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール、又は(3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オールである、請求項25〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
CDK阻害剤が、(2R3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オールである、請求項25〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
CDK阻害剤が、(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールである、請求項25〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
CDK阻害剤及びErbB阻害剤が、個々の成分に対して治療有効量でそれぞれ投与される、請求項25〜39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
CDK阻害剤及びErbB阻害剤が、個々の成分に対して治療量以下の量でそれぞれ投与される、請求項25〜39のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
(i)ErbB阻害剤と、
(ii)(a)ロスコビチン;(b)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール;(c)3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オール;及び(d)(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールから選択される、CDK阻害剤、又は薬学的に許容されるその塩と
を含むキットのパーツ。
【請求項43】
ErbB阻害剤がErbB1(EGFR)阻害剤である、請求項42に記載のキット。
【請求項44】
EGFR阻害剤が、AG1478、セツキシマブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、ラパチニブ、パニツムマブ、マツズマブ、ニモツズマブ、ザルツムマブ、ペルツズマブ、カネルチニブ、バンデタニブ、EKB−569、HKI−272、BIBW−2992、AEE−788、XL647、BMS−599626、PKI−116、及びARRY−334543から選択される、請求項43に記載のキット。
【請求項45】
ErbB阻害剤がErbB2(Her2)阻害剤である、請求項42に記載のキット。
【請求項46】
ErbB2阻害剤が、トラスツズマブ、ラパチニブ、カネルチニブ、EKB−569、HKI−272、BIBW−2992、AEE−788、XL647、BMS−599626、PKI−116、及びARRY−334543から選択される、請求項45に記載のキット。
【請求項47】
CDK阻害剤がR−ロスコビチンである、請求項42〜46のいずれかに記載のキット。
【請求項48】
CDK阻害剤が、(3R)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オール、又は(3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−2−メチル−ペンタン−2−オールである、請求項42〜46のいずれかに記載のキット。
【請求項49】
CDK阻害剤が、(2R3S)−3−{9−イソプロピル−6−[(ピリジン−3−イルメチル)−アミノ]−9H−プリン−2−イルアミノ}−ペンタン−2−オールである、請求項42〜46のいずれかに記載のキット。
【請求項50】
CDK阻害剤が、(2R,3S−3−(6−((4,6−ジメチルピリジン−3−イルメチルアミノ)−9−イソプロピル−9H−プリン−2−イルアミノ)ペンタン−2−オールである、請求項42〜46のいずれかに記載のキット。
【請求項51】
(i)ErbB阻害剤と、(ii)式Iの化合物、又は薬学的に許容されるその塩
【化1】


(I)
(式中、
及びRは、それぞれ独立に、H又はアルキルであり、
及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル又はアリールであり、
はアルキル又はシクロアルキルであり、そのそれぞれは、1又は複数のOH基で置換されていてもよく、
、R、R及びRは、それぞれ独立に、H、アルキル、ハロアルキル、ハロゲン、NO、OH、OMe、CN、NH、COOH、CONH、又はSONHである)
を含む組合せ。
【請求項52】
請求項51に記載の組合せを含む医薬品。
【請求項53】
請求項51に記載の組合せ、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項54】
ErbB阻害剤と、請求項51に記載の式(I)の化合物とを対象に、同時、順次、又は別々に投与するステップを含む、増殖性障害の治療方法。
【請求項55】
(i)ErbB阻害剤と、
(ii)請求項51に記載の式(I)の化合物と
を含むキットのパーツ。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−523536(P2010−523536A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501589(P2010−501589)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【国際出願番号】PCT/GB2008/001189
【国際公開番号】WO2008/122779
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(506138030)サイクラセル リミテッド (21)
【Fターム(参考)】