説明

プリンタ装置

【課題】シート状の媒体(ロールメディア)搬送の際に、板状の媒体搬送用に設けられた搬送補助部材により印字面に発生する微小な凹凸を無くし、シート状、板状の印刷媒体についてそれぞれ印刷品質を向上させたプリンタを提供すること。
【解決手段】プリンタ装置10は、媒体支持手段13において、複数の搬送補助部材40を備え、搬送補助部材は、支持軸と、支持軸に対して回転自在に取り付けられた回転部材とを備えて構成されるとともに、搬送補助部材は、印刷媒体Sを支持する支持面に設けられた収容凹部50に収容されることで前記媒体支持手段に取り付けられ、印刷媒体の種類に応じて、回転部材の上部が前記支持面に対して上方に突出した第一状態と、前記回転部材の上部が前記支持面に対して下方に陥没した第二状態と、の間で変更可能となされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタヘッドからインクを吐出させることにより印刷媒体に印刷を施すプリンタ装置に関し、さらに詳細には、シート状、板状の印刷媒体に対して印刷可能なプリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラテンに対してシート状の印刷媒体(以下、シート状媒体と称す)を前後に送る制御と、プラテンと対向したプリンタヘッドを左右に移動させながらインクを吐出させる制御とを組み合わせて行うことにより、印刷媒体に印刷を施すプリンタ装置(インクジェットプリンタ)が知られている。近年、このようなプリンタ装置を用いて、シート状媒体のみならず板状の印刷媒体(以下、板状媒体と称す)に印刷を施したいという要求がある。この要求に応えるべく、例えばプラテンの前後それぞれに、板状媒体を水平に支持するための支持部材を設ける構成が知られている。この構成により、板状媒体を水平に支持しつつ前後に送ることができて、板状媒体に対して印刷可能となる。
【0003】
例えば特許文献1の図3には、プラテン10の前後に第1支持腕101及び第2支持腕103を設けて板状のメディア20を水平に支持しておき、送りローラ15を回転させることにより板状のメディア20を前後に移動させる構成が開示されている。この特許文献1の図3に示す構成では、送りローラ15を回転させることにより、プラテン10の上面に対して板状のメディア20の下面が摺動しながら前後に移動するようになっている。
【0004】
ところで近年、大型(例えば、左右幅が約1mで前後長さが約1.6m)の板状媒体に印刷を施したいという要望がある。上記特許文献1の図3に示す構成を用いて、このような大型の板状媒体に印刷を施す場合、板状媒体とプラテン10との接触面積が広いため、プラテン10の上面と板状媒体の下面との摺動抵抗が大きくなり、送りローラ15に過度の負担がかかることがある。このように、送りローラ15に過度の負担がかかると、例えば送りローラ15と板状媒体との当接部分にすべりが発生しやすくなり、位置精度を確保しながら板状媒体を精度良く前後に送ることが困難となり、印刷品質の低下に繋がる虞があった。
【0005】
そこで、プラテン上に突出した搬送補助部材を設けることで、板状の媒体搬送時には、この搬送補助部材により摺動抵抗を低減させ、送りローラと板状媒体との当接部分に発生するすべりを防止して、位置精度を確保しながら板状の印刷媒体を精度良く前後方向に送る技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−301842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記搬送補助部材はプラテン上に突出して設けられているため、シート状の媒体(ロールメディア)に対して印刷を行う場合、搬送補助部材により微小な凹凸が印字面に発生してしまい、印刷品質の低下に繋がる虞があった。
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、シート状の媒体(ロールメディア)搬送の際に、板状の媒体搬送用にプラテン上に設けられた搬送補助部材により印字面に発生する微小な凹凸を無くし、シート状、板状の印刷媒体についてそれぞれ印刷品質を向上させたプリンタ装置及び媒体支持手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載のプリンタ装置は、印刷媒体を支持する媒体支持手段に支持された印刷媒体に対して、互いに直交する前後方向および左右方向にプリンタヘッドを対向した状態で相対移動させながらインクを吐出させて印刷媒体に印刷を施すプリンタ装置であって、前記媒体支持手段に対して前記前後方向上流側に配設されて対となった挟持口−ラにより印刷媒体を挟持した状態で、前記挟持ローラの一方を回転駆動させて前記印刷媒体を前記前後方向に送り前記媒体支持手段上に位置させる媒体搬送機構と、前記プリンタヘッドを前記左右方向に移動させるヘッド移動機構と、前記媒体搬送機構による印刷媒体の送り制御、および前記ヘッド移動機構による前記プリンタヘッドの移動制御を行う印刷制御部とを備え、前記媒体支持手段は、前記プリンタヘッドと対向する部分よりも前記前後方向下流側に配された複数の搬送補助部材を備え、前記搬送補助部材は、支持軸と、前記支持軸に対して回転自在に取り付けられた回転部材とを備えて構成されるとともに、記搬送補助部材は、印刷媒体を支持する支持面に設けられた収容凹部に、前記支持軸を前記左右方向に向けて収容されることで前記媒体支持手段に取り付けられ、印刷媒体の種類に応じて、前記回転部材の上部が前記支持面に対して上方に突出した第一状態と、前記回転部材の上部が前記支持面に対して下方に陥没した第二状態と、の間で変更可能となされていること、を特徴とする。
本発明の請求項2に記載のプリンタ装置は、請求項1において、前記収容凹部の底部が、第一底部と、前記支持面からの距離が前記第一底部よりも離間して設けられた第二底部とを有しており、印刷媒体が板状の場合には、前記支持軸を前記第一底部に位置させることで、前記回転部材の上部が前記支持面に対して上方に突出した第一状態とされ、印刷媒体がシート状の場合には、前記支持軸を、前記第二底部にに位置させることで、前記回転部材の上部が前記支持面に対して下方に陥没した第二状態とされること、を特徴とする。
本発明の請求項3に記載の媒体支持手段は、支持された印刷媒体に対して、互いに直交する前後方向および左右方向にプリンタヘッドを対向した状態で相対移動させながらインクを吐出させて印刷媒体に印刷を施すプリンタ装置において、印刷媒体を支持する媒体支持手段であって、前記プリンタヘッドと対向する部分よりも前記前後方向下流側に配された複数の搬送補助部材を備え、前記搬送補助部材は、支持軸と、前記支持軸に対して回転自在に取り付けられた回転部材とを備えて構成されるとともに、前記搬送補助部材は、印刷媒体を支持する支持面に設けられた収容凹部に、前記支持軸を前記左右方向に向けて収容されることで前記媒体支持手段に取り付けられ、印刷媒体の種類に応じて、前記回転部材の上部が前記支持面に対して上方に突出した第一状態と、前記回転部材の上部が前記支持面に対して下方に陥没した第二状態と、の間で変更可能となされていること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、搬送補助部材が、印刷媒体の種類に応じて、回転部材の上部が支持面に対して上方に突出した第一状態と、回転部材の上部が支持面に対して下方に陥没した第二状態と、の間で変更可能となされているので、板状の印刷媒体に対しては、第一状態とすることで搬送補助部材によるベアリングにより板状媒体を精度良く前後へ送ることができる。一方、シート状の印刷媒体に対しては、第二状態とすることで回転部材により印字面に発生する微小な凹凸を無くすことができ、良好に印刷を行うことができる。このように本発明では、印刷媒体の種類に応じて、搬送補助部材によるプラテンベアリングのON/OFFの切り替えが可能となり、その結果、本発明では、シート状、板状の印刷媒体についてそれぞれ印刷品質を向上させたプリンタ装置及び媒体支持手段を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用したプリンタ装置(シート状媒体に対して印刷を施す状態)を示した斜視図である。
【図2】上記プリンタ装置の印刷ユニット近傍を示した斜視図である。
【図3】上記プリンタ装置のプラテンを示した斜視図である。
【図4】搬送補助部材を第一状態とした様子を示す斜視図である。
【図5】図4中のX1−X1部分を示した断面図である。
【図6】搬送補助部材を第二状態とした様子を示す斜視図である。
【図7】図6中のX2−X2部分を示した断面図である。
【図8】上記プリンタ装置(板状媒体に対して印刷を施す状態)を斜め前方から見た斜視図である。
【図9】上記プリンタ装置(板状媒体に対して印刷を施す状態)を斜め後方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。なお、以下においては便宜上、各図面に示す矢印方向をそれぞれ前後、左右及び上下と定義して説明を行う。
図1は、本発明のプリンタ装置の一構成例を示す図である。
本発明のプリンタ装置は、印刷媒体を支持する媒体支持手段に支持された印刷媒体に対して、互いに直交する前後方向(搬送方向)及び左右方向(走査方向)にプリンタヘッドを対向した状態で相対移動させながらインクを吐出させて印刷媒体に印刷を施すプリンタ装置である。
【0013】
このプリンタ装置は、媒体支持手段の上面と略同一の高さ位置に左右に延びて設けられ回転駆動される送りローラ、及び各々回転自在なピンチローラが前記送りローラの上方に左右に並んで設けられたローラアッセンブリを複数有し、前記媒体支持手段上に載置された印刷媒体を前記送りローラと前記ピンチローラとの間に挟み込んで前後に搬送する搬送機構と、前記プリンタヘッドを前記左右方向に移動させるヘッド移動機構と、前記媒体搬送機構による印刷媒体の送り制御、及び前記ヘッド移動機構による前記プリンタヘッドの移動制御を行う印刷制御部と、を備える。
【0014】
そして本発明のプリンタ装置は、前記媒体支持手段は、前記プリンタヘッドと対向する部分よりも前記前後方向下流側に配された複数の搬送補助部材を備え、前記搬送補助部材は、支持軸と、前記支持軸に対して回転自在に取り付けられた回転部材とを備えて構成されるとともに、前記搬送補助部材は、印刷媒体を支持する支持面に設けられた収容凹部に、前記支持軸を前記左右方向に向けて収容されることで前記媒体支持手段に取り付けられ、印刷媒体の種類に応じて、回転部材の上部が前記支持面に対して上方に突出した第一状態と、前記回転部材の上部が前記支持面に対して下方に陥没した第二状態と、の間で変更可能となされていること、を特徴とする。
【0015】
本発明では、搬送補助部材が、印刷媒体の種類に応じて、回転部材の上部が支持面に対して上方に突出した第一状態と、回転部材の上部が支持面に対して下方に陥没した第二状態と、の間で変更可能となされているので、板状の印刷媒体に対しては、第一状態とすることで搬送補助部材によるベアリングにより板状媒体を精度良く前後へ送ることができる。一方、シート状の印刷媒体に対しては、第二状態とすることで回転部材により印字面に発生する微小な凹凸を無くすことができ、良好に印刷を行うことができる。このように本発明では、印刷媒体の種類に応じて、搬送補助部材によるプラテンベアリングのON/OFFの切り替えが可能となり、その結果、本発明では、シート状、板状の印刷媒体についてそれぞれ印刷品質を向上させることができる。
【0016】
図1〜4を参照しながら、本発明を適用したプリンタ装置10の構成について説明する。なお、プリンタ装置10は本来、図1に示すような構成となっており、この構成を用いてシート状媒体Sに印刷を施すことができるようになっている。一方、板状媒体に対して印刷を施すときには、図8及び図9に示すように、このプリンタ装置10に対して後述する後側支持台60及び前側支持台70を取り付ける。このように、プリンタ装置10は、シート状媒体S及び板状媒体のどちらに対しても印刷可能となっている。以下の説明では、紫外線が照射されて硬化する紫外線硬化型のインク(以下、UVインクと称す)を用いて印刷を施す構成を例示している。
【0017】
プリンタ装置10は、図1に示すように、左右の支持脚11a,11bを有した支持脚11と、支持脚11により支持された中央ボディ部12と、中央ボディ部12の左側に設けられた左ボディ部14と、中央ボディ部12の右側に設けられた右ボディ部15と、左右ボディ部14,15を繋ぐとともに中央ボディ部12の上側に離間して平行に延びた上ボディ部16とを備えて構成される。中央ボディ部12には、その上面に露出して左右に延びた平板状のプラテン13が設けられている。中央ボディ部12の左端部前面側には、操作スイッチ類や表示装置類等から構成された操作部18が設けられている。
【0018】
中央ボディ部12の左端部には、コントローラ19が内蔵されている。このコントローラ19は、後述するプリンタ装置10の各構成都に作動信号を出力して、各構成部の駆動制御を行うようになっている。具体的には、後述する上下移動機構(図示せず)、前後駆動モータ25、プリンタヘッド32、右紫外線照射装置33R、左紫外線照射装置33L、及び左右駆動モータ39等の駆動制御を行うようになっている。上ボディ部16の下部前面側には、左右に延びたガイドレール17が設けられている。このガイドレール17に対して、印刷ユニット30が左右へ移動自在に取り付けられている。
【0019】
印刷ユニット30は、図2に示すように、キャリッジ31、プリンタヘッド32、右紫外線照射装置33R及び左紫外線照射装置33Lを主体に構成される。この印刷ユニット30には、印刷対象である印刷媒体(シート状媒体又は板状媒体)の厚みに応じて、例えばガイドレール17に対して印刷ユニット30を上下移動させる上下移動機構(図示せず)が設けられている。この上下移動機構により、使用する印刷媒体の厚みに関わらずプリンタヘッド32と印刷媒体との間隔を、印刷に適した所定間隔に設定できるようになっている。
【0020】
この印刷ユニット30をガイドレール17に沿って左右に往復移動させる機構として、例えば上ボディ部16の内部を左右に延びて配設された左右搬送用ベルト(図示せず)とキャリッジ31とを連結しておき、この左右搬送用ベルトを右ボディ部15に設けられた左右駆動モータ39(図1参照)により駆動させる機構を用いることが可能である。キャリッジ31は、その後面側がガイドレール17と嵌合し、ガイドレール17に沿って左右に往復移動自在となっている。また、キャリッジ31は、上記プリンタヘッド32、右紫外線照射装置33R及び左紫外線照射装置33Lの取り付けベースとなっている。
【0021】
プリンタヘッド32は、例えばマゼンタヘッド、イエローヘッド、シアンヘッド及びブラックヘッドから構成される。それぞれのプリンタヘッド32の下面には、下方に向けてUVインクを吐出するための複数の吐出ノズル(図示せず)が形成されている.右紫外線照射装置33Rは、プリンタヘッド32の右側に隣接して搭載されている。この右紫外線照射装置33Rは、その内部に紫外線を照射する例えばLED等の光源が搭載されており、この光源からの紫外線が下方に向けて照射されるようになっている。左紫外線照射装置33Lは、上記右紫外線照射装置33Rと同一構成となっており、プリンタヘッド32の左側に隣接して搭載されている。右紫外線照射装置33R及び左紫外線照射装置33Lから照射される紫外線によって、プリンタヘッド32から吐出されて印刷媒体に付着したUVインクを、確実に硬化させることができるようになっている。
【0022】
図2に示すように、上ボディ部16の下部には、複数のローラアッセンブリ100が左右に並んで取り付けられている。このローラアッセンブリ100の前側先端部には、ピンチローラ131が回転自在に取り付けられている。ピンチローラ131の下方には、左右に延びる円筒状の送りローラ21が、プラテン13の上面に対して突出するように配設されている。この送りローラ21は、例えば中央ボディ部12の内部に設けられた前後駆動モータ(図示せず)により回転駆動されるようになっている。
なお、ここでは、送りローラ21が左右に延びた一本の円筒状である場合を例として挙げているが、これに限定されるものではない。
【0023】
ローラアッセンブリ100は、送りローラ21に対してピンチローラ131を押し付けたクランプ位置と、ピンチローラ131を離間させたアンクランプ位置とに設定可能となっている。この構成より、印刷媒体をピンチローラ131と送りローラ21との間に挟み、クランプ装置23をクランプ位置に設定した上で、送りローラ21を回転させることにより、印刷媒体を所定距離だけ前方又は後方に送ることができるようになっている。
【0024】
送りローラ21の表面のうちでピンチローラ131と当接する部分は、例えば金属製のメッシュ部材22が貼り付けられて固定されている。このように構成することにより、送りローラ21と印刷媒体との接触抵抗を増大させることができ、すべりを発生することなく精度良く前後に送ることが可能である。
【0025】
また、プラテン13には複数の吸引孔13aが形成されるとともに、プラテン13の下面にはこの吸引孔13aと連通した減圧室(図示せず)が設けられている。例えばシート状媒体Sに対して印刷を行う際、上記減圧室を負圧に設定することにより、シート状媒体Sをプラテン13の上面に吸着させて固定することができる。
【0026】
上述の構成より、シート状媒体Sに対して印刷を施す場合には、シート状媒体Sをプラテン13に吸着させて固定した状態で、印刷ユニット30を左右に移動させながらUVインクの吐出及び紫外線の照射を行って印刷を施す。そして、プラテン13に対するシート状媒体Sの吸着を解除し、シート状媒体Sを所定距離だけ前方に送った後、再びシート状媒体Sをプラテン13に固定してUVインクの吐出及び紫外線の照射を行う。この作動を繰り返して行うことにより、シート状媒体Sに対して所望の印刷を施すことができる。
【0027】
以上説明した構成に加えて、本発明を適用したプリンタ装置10においては、特に板状媒体に対して印刷を施すときに板状媒体を精度良く前後へ送ることを目的として、複数の搬送補助部材40がプラテン13に設けられている。この搬送補助部材40の構成について、図3〜図7を追加参照しながら説明する。
プラテン13(媒体支持手段)は、前記プリンタヘッドと対向する部分よりも前記前後方向下流側に配された複数の搬送補助部材40を備え、前記搬送補助部材40は、軸部材42(支持軸)と、前記軸部材42に対して回転自在に取り付けられた支持ローラ41(回転部材)とを備えて構成されるとともに、記搬送補助部材40は、印刷媒体を支持する支持面(プラテン上面)に設けられた収容凹部50に、前記軸部材42を前記左右方向に向けて収容されることで前記プラテン13(媒体支持手段)に取り付けられる。
【0028】
図3の2点鎖線で囲んだ部分に、搬送補助部材40の分解斜視図を示している。この分解斜視図から分かるように、搬送補助部材40は、支持ローラ41、軸部材42、2つのワッシャ43および押さえ金具44から構成される。
支持ローラ41(回転部材)は、例えば金属材料を用いてリング状に形成されている。また、支持ローラ41として、例えば外周直径約7mm、内周直径約3mmのベアリングを用いることも可能である。
軸部材42は、例えば金属材料を用いて形成された軸であり、上記支持ローラ41の中心開口部に対して左右へ挿入される。
【0029】
ワッシャ43は、例えば金属材料を用いてリング状に形成されている。また、このワッシャ43の中心開口部に対して軸部材42が挿入され、2つのワッシャ43が支持ローラ41の左右に分かれて位置している。
支持ローラ41およびワッシャ43に軸部材42が挿入された状態において、軸部材42に対して支持ローラ41およびワッシャ43は回転自在となっている。
押さえ金具44は、例えば厚さ約0.15〜0.20mmのSUS(ステンレス鋼)を用いて板状に形成されている。
【0030】
上記の各部材が、図3の中段に示す搬送補助部材40のように組み立てられた後、軸部材42を左右に向けた状態で、プラテン13に形成された収容凹部50に収容される。そして、固定ねじ45を締結することより、搬送補助部材40をプラテン13に固定する。
【0031】
そして特に本発明では、印刷媒体の種類に応じて、前記支持ローラ41の上部が前記支持面に対して上方に突出した第一状態と、前記支持ローラ41の上部が前記支持面に対して下方に陥没した第二状態と、の間で変更可能となされている。
具体的には、印刷媒体が板状の場合、搬送補助部材40を、支持ローラ41の上部が前記支持面に対して上方に突出した第一状態とする。また、印刷媒体がシート状の場合、搬送補助部材40を、前記支持ローラ41の上部が前記支持面に対して下方に陥没した第二状態にする。
【0032】
図4及び図5は、搬送補助部材40を第一状態とした様子を示す図であり、図4は斜視図、図5は図4中のX1−X1部分を示した断面図である。図6及び図7は、搬送補助部材40を第二状態とした様子を示す図であり、図6は斜視図、図7は図6中のX2−X2部分を示した断面図である。
図5及び図7に示すように、収容凹部50の底部には段差が設けられており、第一底部50aと、前記支持面からの距離が前記第一底部50aよりも離間して設けられた第二底部50bとを有している。
【0033】
印刷媒体が板状の場合には、図5に示すように、前記軸部材42を前記第一底部50aに位置させることで、前記支持ローラ41の上部が前記支持面に対して上方に突出した第一状態とされる。
図4から分かるように、押さえ金具44により軸部材42がプラテン13に押し付けられて固定され、この固定された軸部材42に対して支持ローラ41が回転自在となっている。この固定された状態において、支持ローラ41の上端部は、プラテン13の上面に対して約0.1mmだけ突出している。
印刷媒体が板状の場合には、搬送補助部材40を第一状態とすることで、搬送補助部材40によるプラテンベアリングが可能(ON)となり、板状媒体を精度良く前後へ送ることができる。
【0034】
すなわち、プラテン13(媒体支持手段)が、プリンタヘッドと対向する部分よりも前後方向下流側に、支持面に対して突出した搬送補助部材40を備えて構成されている。この構成より、例えばある程度の剛性を備えた板状の印刷媒体に対して印刷を施すときに、この印刷媒体を、挟持ローラおよび搬送補助部材40により支持された状態で搬送することができ、印刷媒体とプラテン13とが直接接触することを防止できる。
よって、例えば大型で重い板状の印刷媒体に印刷を施す場合、板状の印刷媒体と媒体支持手段40との間に発生する摺動抵抗を低減させることができ、比較的小さな力により搬送可能となる。そのため、板状の印刷媒体を前後方向に送る挟持ローラと板状の印刷媒体との当接部分にすべりが発生せず、位置精度を確保しながら板状の印刷媒体を精度良く前後方向に送り、高品質な印刷が可能となる。
【0035】
一方、印刷媒体がシート状の場合には、図7に示すように、前記軸部材42を、前記第二底部50bに位置させることで、前記支持ローラ41の上部が前記支持面に対して下方に陥没した第二状態とされる。
印刷媒体が板状の場合には、搬送補助部材40を第二状態とすることで、プラテンベアリングがOFFとなり、支持ローラ41によって印字面に発生する微小な凹凸を無くすことができ、シート状の印刷媒体に対して良好に印刷を行うことができる。
【0036】
このように本発明では、搬送補助部材40によるプラテンベアリングのON/OFFの切り替えが可能となる。これにより、本発明では、板状の印刷媒体に対しては搬送補助部材40によるベアリングにより板状媒体を精度良く前後へ送ることができる。一方、シート状の印刷媒体に対しては印字面に発生する微小な凹凸がなく良好に印刷を行うことができる。その結果、本発明では、シート状、板状の印刷媒体についてそれぞれ印刷品質を向上させることができる。
【0037】
また、以上のように構成されるプリンタ装置10を用いて板状媒体に印刷を施すときには、板状媒体を略水平に支持するために、プリンタ装置10の後方に後側支持台60を、前方に前側支持台70を取り付ける(図8及び図9参照)。以下に、この後側支持台60の構成について、図8を追加参照しながら説明する。なお、前側支持台70は、後側支持台60と同一構成となっているため、その説明は省略する。
【0038】
図8に示すように、後側支持台60は、複数の搬送ローラ62が前後に並んで配設された前後長さ約1.2mの搬送レール61が、支持脚63により揺動自在に支持されて構成される。この搬送レール61と支持脚63とを繋ぐように傾斜調整板64が取り付けられており、傾斜調整板64は支持脚63に対して揺動自在に取り付けられている。この傾斜調整板64には、長穴65が形成されている。この構成から、長穴65に固定ねじ66を挿通させて搬送レール61に締結することにより、傾斜調整板64と搬送レール61とを固定できるとともに、支持脚63に対する搬送レール61の傾斜角度を任意に設定することが可能である。
【0039】
例えば、図8および図9に示すように搬送レール61を略水平な状態で固定したり、または、搬送レール61を下方に傾斜させて折りたたむも可能である。なお、この後側支持台60は、使用されていないときにはコンパクトに折りたたんだ様態で保管しておくことができるので、保管場所の省スペース化を図ることが可能である。
【0040】
以上説明してきたように、本発明のプリンタ装置では、搬送補助部材40が、印刷媒体の種類に応じて、支持ローラ41(回転部材)の上部が支持面に対して上方に突出した第一状態と、支持ローラ41の上部が支持面に対して下方に陥没した第二状態と、の間で変更可能となされているので、板状の印刷媒体に対しては、第一状態とすることで搬送補助部材40によるベアリングにより板状媒体を精度良く前後へ送ることができる。一方、シート状の印刷媒体に対しては、第二状態とすることで支持ローラ41により印字面に発生する微小な凹凸を無くすことができ、良好に印刷を行うことができる。このように本発明では、印刷媒体の種類に応じて、搬送補助部材によるプラテンベアリングのON/OFFの切り替えが可能となり、その結果、本発明では、シート状、板状の印刷媒体についてそれぞれ印刷品質を向上させることができる。
【0041】
以上、本発明のプリンタ装置について説明してきたが、本発明は上述した例に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば上述の実施形態では、UVインクを用いて印刷を行う構成を示したが、このUVインク以外に、例えば水性インク、油性インク又はソルベントインク等を使用するプリンタ装置に対しても、本発明を適用することができる。
また、上述の実施形態において、搬送補助部材40として、支持ローラ41を軸部材42に回転自在に取り付けた構成を例示したが、この構成に限定されない。支持ローラ41の代わりに、例えば摺動抵抗の少ない部材を、プラテン13の上面から僅かに突出させて複数配設した構成でも良い。
また、上述の実施形態において、複数の搬送補助部材40が、前後に並ぶようにプラテン13に設けられた構成を示して説明したが、プラテン13上における搬送補助部材40を設ける位置は特に限定されない。板状媒体をプラテン13に接触させることなく前後へ送ることができれば、搬送補助部材40の個数および配設位置は、任意に設計可能である。
【0042】
なお、前記実施形態では、媒体に対して印刷を施すプリント手段のみを備えたプリンタ装置に、本発明の搬送補助部材を搭載したものとして説明したが、厚さの異なる媒体を扱う装置であれば、これに限らない。例えば、プリント手段及びカッティング手段の双方を搭載したプリンタ装置であってもよい。ここで、カッティング手段は、媒体をカットする刃が搭載されるカッティングヘッドを相対移動させてカッティングを行う機構及び制御機能である。また、本発明の搬送補助部材は、カッティング手段のみを搭載するカッティングプロッタに搭載してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、プリンタヘッドからインクを吐出させることにより印刷媒体に印刷を施すプリンタ装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0044】
S シート状媒体(印刷媒体)、10 プリンタ装置、13 プラテン(媒体支持手段)、19 コントローラ(印刷制御部)、21 送りローラ(挟持ローラ)、131 ピンチローラ(挟持ローラ)、25 前後駆動モータ(媒体搬送機構)、32 プリンタヘッド、39 左右駆動モータ(ヘッド移動機構)、40搬送補助部材、 41支持ローラ(回転部材)、42 軸部材(支持軸)、50 収容凹部、60 後側支持台(上流側支持台)、 61 搬送レール(媒体支持レール)、63 支持脚(レール支持脚)、70 前側支持台(下流側支持台)、100 ローラアッセンブリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を支持する媒体支持手段に支持された印刷媒体に対して、互いに直交する前後方向および左右方向にプリンタヘッドを対向した状態で相対移動させながらインクを吐出させて印刷媒体に印刷を施すプリンタ装置であって、
前記媒体支持手段に対して前記前後方向上流側に配設されて対となった挟持口−ラにより印刷媒体を挟持した状態で、前記挟持ローラの一方を回転駆動させて前記印刷媒体を前記前後方向に送り前記媒体支持手段上に位置させる媒体搬送機構と、
前記プリンタヘッドを前記左右方向に移動させるヘッド移動機構と、
前記媒体搬送機構による印刷媒体の送り制御、および前記ヘッド移動機構による前記プリンタヘッドの移動制御を行う印刷制御部とを備え、
前記媒体支持手段は、前記プリンタヘッドと対向する部分よりも前記前後方向下流側に配された複数の搬送補助部材を備え、
前記搬送補助部材は、支持軸と、前記支持軸に対して回転自在に取り付けられた回転部材とを備えて構成されるとともに、
前記搬送補助部材は、印刷媒体を支持する支持面に設けられた収容凹部に、前記支持軸を前記左右方向に向けて収容されることで前記媒体支持手段に取り付けられ、
印刷媒体の種類に応じて、前記回転部材の上部が前記支持面に対して上方に突出した第一状態と、前記回転部材の上部が前記支持面に対して下方に陥没した第二状態と、の間で変更可能となされていること、を特徴とするプリンタ装置。
【請求項2】
前記収容凹部の底部が、第一底部と、前記支持面からの距離が前記第一底部よりも離間して設けられた第二底部とを有しており、
印刷媒体が板状の場合には、前記支持軸を前記第一底部に位置させることで、前記回転部材の上部が前記支持面に対して上方に突出した第一状態とされ、
印刷媒体がシート状の場合には、前記支持軸を、前記第二底部にに位置させることで、前記回転部材の上部が前記支持面に対して下方に陥没した第二状態とされること、を特徴とする請求項1に記載のプリンタ装置。
【請求項3】
支持された印刷媒体に対して、互いに直交する前後方向および左右方向にプリンタヘッドを対向した状態で相対移動させながらインクを吐出させて印刷媒体に印刷を施すプリンタ装置において、印刷媒体を支持する媒体支持手段であって、
前記プリンタヘッドと対向する部分よりも前記前後方向下流側に配された複数の搬送補助部材を備え、
前記搬送補助部材は、支持軸と、前記支持軸に対して回転自在に取り付けられた回転部材とを備えて構成されるとともに、
前記搬送補助部材は、印刷媒体を支持する支持面に設けられた収容凹部に、前記支持軸を前記左右方向に向けて収容されることで前記媒体支持手段に取り付けられ、
印刷媒体の種類に応じて、前記回転部材の上部が前記支持面に対して上方に突出した第一状態と、前記回転部材の上部が前記支持面に対して下方に陥没した第二状態と、の間で変更可能となされていること、を特徴とする媒体支持手段。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−83973(P2011−83973A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238631(P2009−238631)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】