プリントヘッドおよびプリントヘッドにおける副走査方向ずれ補正値の設定方法
【課題】複数の記録素子を並べて構成された記録チップを、複数配列してなるプリントヘッドを用いた場合に、副走査方向に発生する筋を抑制する。
【解決手段】複数のLED(256個)を並べて構成されたSLED63を、主走査方向に複数(Chip1〜Chip60)配列してLEDアレイを構成する。LEDアレイを用いて感光体ドラム上に静電潜像を形成する際、画像データに対し、主走査方向に15360個存在するLEDを複数のブロックにグループ分けし、ブロック毎に点灯タイミングをずらすことで、スキュー補正を施す。スキュー補正に使用するスキュー補正値(分割ブロック数、ブロックの分割位置)を設定するにあたっては、ブロックの分割位置がLEDアレイ端部境界と一致した場合に、このブロックの分割位置を主走査方向にシフトさせる。つまり、ブロックの分割位置とLEDアレイ端部境界とを主走査方向に対してずらす。
【解決手段】複数のLED(256個)を並べて構成されたSLED63を、主走査方向に複数(Chip1〜Chip60)配列してLEDアレイを構成する。LEDアレイを用いて感光体ドラム上に静電潜像を形成する際、画像データに対し、主走査方向に15360個存在するLEDを複数のブロックにグループ分けし、ブロック毎に点灯タイミングをずらすことで、スキュー補正を施す。スキュー補正に使用するスキュー補正値(分割ブロック数、ブロックの分割位置)を設定するにあたっては、ブロックの分割位置がLEDアレイ端部境界と一致した場合に、このブロックの分割位置を主走査方向にシフトさせる。つまり、ブロックの分割位置とLEDアレイ端部境界とを主走査方向に対してずらす。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置等で用いられるプリントヘッドに係り、より詳しくは、複数の記録素子を並べて構成された記録チップを、複数配列してなるプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、まず、例えばドラム状に形成された感光体(感光体ドラム)の表面が帯電装置によって一様に帯電される。帯電された感光体ドラムは、画像データに基づいて制御された露光装置により露光され、その表面に静電潜像が形成される。続いて、感光体上に形成された静電潜像は現像装置により可視像(トナー像)化される。その後、トナー像は感光体の回転に伴って転写部まで搬送されて、記録紙上に静電転写される。そして、記録紙上に担持されたトナー像には定着処理が施されて、永久像となる。
【0003】
このような画像形成装置で用いられる露光装置としては、従来よりレーザダイオードとポリゴンミラーとを組み合わせて、主走査方向にレーザ光を走査露光するレーザ光走査装置(ROS:Raster Output Scanner)が用いられてきた。しかし、近年では、装置の小型化の要請等から、多数のLED(発光ダイオード:Light Emitting Diode)を主走査方向に配列して構成されたLEDプリントヘッド(LPH:LED Print Head)を用いた露光装置も採用されてきている。
【0004】
LPHは、多数のLEDをライン状に配列したLEDチップを、主走査方向に複数配置してなるLEDアレイを備えている(特許文献1参照)。また、LPHは、通常、各LEDから出力された光を感光体表面に結像させるために多数のロッドレンズが配列されたロッドレンズアレイも備えている。画像形成装置では、入力されてくる画像データに基づいてLPHの各LEDを駆動させることにより、感光体へ向けて光を出力し、ロッドレンズアレイによって感光体表面に光を結像させる。これにより、感光体上に主走査方向1ライン分の静電潜像を形成する。そして、感光体を回転させることで感光体ドラムとLPHとが相対移動することにより、感光体の副走査方向に静電潜像を形成する。
【0005】
ところで、このような画像形成装置では、ROSやLPHから照射される主走査方向1ライン分の照射光が、感光体の軸方向と略平行になっていないと、感光体ドラム上に形成される静電潜像に歪みが生じる。例えば、主走査方向1ライン分の照射光が感光体の軸方向に対して斜めになっていると、主走査方向に平行な直線画像を形成しようとした場合、実際に形成される静電潜像は副走査方向に傾斜したものになる。また、主走査方向1ライン分の照射光が感光体の軸方向に対して湾曲した弓状となっていると、主走査方向に平行な直線画像を形成しようとした場合に、実際に形成される静電潜像は副走査方向に湾曲したものになる。このように感光体上の静電潜像に副走査方向の歪みが生じると、当然、静電潜像を現像して形成されるトナー像にも副走査方向の歪みが生じることになってしまう。なお、以下の説明では、前者に起因する副走査方向の歪みをスキュー(skew)と呼び、後者に起因する副走査方向の歪みをボウ(bow)と呼ぶことにする。
【0006】
このような問題に対し、ROSを用いた露光装置において、主走査方向1ライン分の画像データを複数のブロックに分割し、分割されたブロック毎に画像データを副走査にシフト、すなわち画像データを並び替えたり、照射タイミングを変えることにより副走査方向のずれを補正する技術が提案されている(特許文献2参照)。なお、この特許文献2では、まず、無調整のROSを用いてテストパターンの出力を行い、出力されたテストパターンの読み取り結果に基づいて主走査方向1ライン分の照射光の副走査方向ずれ量を検知する。そして、副走査方向ずれ量の検知結果に基づいて、主走査方向に分割するブロック数および各ブロックにおける画像データのシフト方向または照射タイミングのずらし方向(副走査方向上流側、副走査方向下流側)を決定する。そして、実際の画像形成時には、分割されたブロック毎に、それぞれに設定された照射タイミングで光照射を行う。特許文献2では、このような補正を行うことで、副走査方向の歪みすなわちスキューやボウによる歪みを目立ちにくくしている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−218985号公報(第4頁、図5)
【特許文献2】特開平4−317247号公報(第5頁、図6、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のLPHに対し、上記特許文献2に記載される手法を適用して副走査方向の歪み(スキューやボウ)の補正を行った場合、次のような問題が生じた。すなわち、補正後のLPHを装着した画像形成装置を用いてハーフトーン画像を出力した際に、出力されるハーフトーン画像中に副走査方向に沿って延びる筋が発生した。
【0009】
本発明は、かかる技術的課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、複数の記録素子を並べて構成された記録チップを、複数配列してなるプリントヘッドを用いた場合に、副走査方向に発生する筋を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に対し、本発明者が鋭意検討を行ったところ、上述したハーフトーン画像中の筋は、常時発生するものではないことが判明した。これを具体的に説明すると、同一のLPHを用いた場合であっても、感光体に対する取り付け角度を異ならせると、副走査方向の歪みを補正した後に出力したハーフトーン画像中に筋が発生する場合と発生しない場合とが存在することがわかった。これをさらに詳細に検討したところ、副走査方向の歪みを補正するために分割されたブロックの分割位置と、LEDアレイを構成する各LEDチップの境界位置とが一致あるいは近づいた場合に、このような筋が発生しやすいことが判明した。なお、このような筋は、副走査方向に画像データを並べ替える際、画像シフト量の分解能を上げれば上げるほど発生しにくくなるが、その分、並び替えの演算に必要なメモリを必要とし、コスト高になってしまうという問題がある。そこで、本発明者は、各LEDチップの境界位置に対しブロックの分割位置を主走査方向にずらすことにより、このような筋の発生を容易に抑制できることを見出し、本発明を案出するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、主走査方向に複数の記録素子が配列された記録チップを、主走査方向に複数配列してなる記録素子アレイと、主走査方向に設定された所定のブロック毎に、副走査方向に画像データをシフトさせることにより、副走査方向ずれを補正する副走査方向ずれ補正部とを備えたプリントヘッドにおいて、副走査方向ずれ補正部は、隣接する記録チップにおける記録素子同士の境界位置に対し分割位置をずらして設定可能なブロックを用いて、記録マークの副走査方向ずれを補正することを特徴としている。ここで、「副走査方向に画像データをシフトさせる」ことには、画像データの並べ替えを行うことや、記録素子アレイを構成する各記録素子に対する記録信号の供給タイミングを変えるといった概念を含んでいる。
【0012】
このようなプリントヘッドにおいて、副走査方向ずれ補正部は、異なる主走査方向長さとなるように設定されたブロックを用いて、記録マークの副走査方向ずれを補正することができる。また、記録素子アレイを構成する記録チップが千鳥状に配列される場合に、記録素子アレイを構成する各記録チップに対する記録信号の供給タイミングを、所定の記録チップ列を基準として記録チップ列毎に変えることにより、記録素子アレイによって記録される記録マークの副走査方向ずれを補正する千鳥配列補正部をさらに含むことができる。そして、分割位置を設定する設定部と、設定部にて設定された分割位置と隣接する記録チップ同士の境界位置とが一致する場合に、分割位置を境界位置から移動させる修正部とをさらに含むことができる。ここで、修正部は、分割位置と境界位置とが一致する場合であって、境界位置に対応する記録チップ同士の副走査方向の位置ずれが境界位置にて記録素子により記録される像の副走査方向ずれを打ち消す方向である場合に、分割位置を境界位置から移動させないことができる。
【0013】
また、他の観点から捉えると、本発明は、主走査方向に複数の記録素子が配列された記録チップを、主走査方向に複数配列してなる記録素子アレイと、記録素子アレイを構成する記録チップの配置に起因する副走査方向ずれを、各記録素子に対する記録信号の供給タイミングを調整することによって補正する第一の副走査方向ずれ補正部と、記録素子アレイを構成する記録チップの配置以外に起因する副走査方向ずれを、副走査方向に画像データをシフトさせることによって補正する第二の副走査方向ずれ補正部とを含み、第一の副走査方向ずれ補正部は、隣接する記録チップにおける記録素子の境界位置から隣接する境界位置までを1ブロックとして、各記録素子に対する記録信号の供給タイミングを調整し、第二の副走査方向ずれ補正部は、境界位置から主走査方向にシフトした位置に設定される分割位置から隣接する分割位置までを1ブロックとして、副走査方向に画像データをシフトさせることを特徴としている。
【0014】
このようなプリントヘッドにおいて、複数の記録チップが千鳥状に配列される場合に、第一の副走査方向ずれ補正部は、記録チップの千鳥配列補正を行うことができる。また、第二の副走査方向ずれ補正部は、被記録体に対し記録素子アレイが傾斜配置されることにより生じるスキュー、あるいは、被記録体に対し記録素子アレイが湾曲配置されることにより生じるボウを補正することができる。
【0015】
さらに、本発明を方法のカテゴリから捉えると、本発明は、主走査方向に複数の記録素子が配列された記録チップを、主走査方向に複数配列してなる記録素子アレイを備えたプリントヘッドにおける副走査方向ずれ補正値の設定方法であって、記録素子アレイによって記録される記録マークの副走査方向ずれ量を取得するステップと、取得された副走査方向ずれ量に基づき、記録素子アレイにおける主走査方向のブロックの分割数および各ブロックの分割位置を演算するステップと、演算により求められた分割位置が隣接する記録チップにおける記録素子の境界位置と一致する場合に、分割位置を境界位置に対して主走査方向にシフトさせるステップとを含んでいる。
【0016】
このような方法において、記録マークの副走査方向ずれ量を取得するステップでは、記録素子アレイを用いて、記録材上に記録マークを形成し、記録材上に形成された記録マークを読み取り、記録マークの読み取り結果に基づき、記録マークにおける副走査方向ずれ量を取得することができる。また、シフトさせるステップの後、分割位置をメモリに格納するステップをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、記録チップにおける境界位置に対して副走査方向ずれ補正におけるブロックの分割位置を主走査方向にずらすようにしたので、副走査方向に発生する筋を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について詳細に説明する。
<実施の形態1>
図1は本実施の形態が適用されるプリントヘッドを備えた画像形成装置の全体構成を示した図である。図1に示す画像形成装置は、所謂タンデム型のデジタルカラープリンタ1である。この画像形成装置は、画像形成プロセス部10、制御部30、および画像処理部(IPS:Image Processing System)40を備えている。これらのうち、画像形成プロセス部10は、各色の画像データに対応して画像形成を行う。また、制御部30は、画像形成プロセス部10の動作を制御する。さらに、IPS40は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置(IIT)3に接続され、これらから受信された画像データに対して所定の画像処理を施して画像形成プロセス部10に出力する。
【0019】
画像形成プロセス部10は、一定の間隔を置いて並列的に配置される4つの画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kを備えている。画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kは、感光体ドラム12、帯電器13、LEDプリントヘッド(LPH)14、現像器15、およびクリーナ16を備える。ここで、感光体ドラム12は、静電潜像を形成するとともにトナー像を担持する。また、帯電器13は、感光体ドラム12の表面を所定電位で一様に帯電する。LPH14は、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を露光して静電潜像を形成する。現像器15は、LPH14によって得られた静電潜像をトナーで現像する。クリーナ16は、一次転写後の感光体ドラム12表面を清掃する。ここで、各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kは、現像器15に収納されたトナーを除いて、略同様に構成されている。そして、画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kは、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
また、画像形成プロセス部10は、中間転写ベルト21、一次転写ロール22、二次転写ロール23、定着器25、そして画像センサ26を備えている。中間転写ベルト21には、各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kの感光体ドラム12にて形成された各色のトナー像が多重転写される。転写器としての一次転写ロール22は、各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kの各色トナー像を中間転写ベルト21に順次転写(一次転写)させる。二次転写ロール23は、中間転写ベルト21上に転写された重畳トナー像を記録材である用紙Pに一括転写(二次転写)させる。定着器25は、二次転写された画像を用紙P上に定着させる。画像センサ26は、黒の画像形成ユニット11Kよりも中間転写ベルト21の移動方向下流側に、中間転写ベルト21のトナー像担持面に対向して取り付けられる。この画像センサ26は、例えば反射型光センサ等で構成されており、中間転写ベルト21上に一次転写されたトナー像の濃度やその形成位置などを検出する機能を有している。
【0020】
では、このデジタルカラープリンタ1における画像形成動作について説明する。このデジタルカラープリンタ1において、画像形成プロセス部10は、制御部30から供給された同期信号等の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。その際に、PC2やIIT3から入力された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、インタフェースを介して各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kに供給される。そして、例えばイエローの画像形成ユニット11Yでは、帯電器13により所定電位で一様に帯電された感光体ドラム12の表面が、画像処理部40から得られた画像データに基づいて発光するLPH14により露光されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上にはイエローのトナー像が形成される。同様に、他の画像形成ユニット11M,11C,11Kにおいても、マゼンタ、シアン、黒の各色トナー像が形成される。
【0021】
各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kで形成された各色トナー像は、図1の矢印A方向に回動する中間転写ベルト21上に、一次転写ロール22により順次静電吸引される。その結果、中間転写ベルト21上には重畳されたトナー像が形成される。形成された重畳トナー像は、中間転写ベルト21の移動に伴って二次転写ロール23が配設された領域(二次転写部)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部に搬送されると、トナー像が二次転写部に搬送されるタイミングに合わせて用紙Pが二次転写部に供給される。そして、二次転写部にて二次転写ロール23により形成される転写電界により、重畳トナー像は搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写される。
その後、重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト21から剥離され、搬送ベルト24により定着器25まで搬送される。定着器25に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器25によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙載置部(図示せず)に搬送される。
【0022】
では次に、この画像形成装置で用いられるLPH14について詳細に説明する。
図2は、LEDプリントヘッド(LPH)14の構成を示した図である。LPH14は、ハウジング61、LED回路基板62、自己走査型LEDアレイ(Self-Scanning Light Emitting Device:SLED)63を備える。またLPH14は、ロッドレンズアレイ64、ホルダ65、および板バネ66をさらに備える。これらのうち、ハウジング61は、LPH14の支持体として機能する。また、LED回路基板62は、SLED63やSLED63を駆動する駆動回路等を搭載する。さらに、SLED63は、発光することにより感光体ドラム12を露光する。ロッドレンズアレイ64は、SLED63からの光を感光体ドラム12表面に結像させる。さらにまた、ホルダ65は、ロッドレンズアレイ64を支持するとともにSLED63を外部から遮蔽する。そして板バネ66は、ハウジング61をロッドレンズアレイ64方向に付勢する。
【0023】
ハウジング61は、アルミニウム、SUS等のブロックまたは板金で形成され、LED回路基板62を支持している。また、ホルダ65は、ハウジング61およびロッドレンズアレイ64を支持し、SLED63の発光点とロッドレンズアレイ64の焦点とが一致するように設定している。さらに、ホルダ65はSLED63を密閉するように構成されている。そのため、SLED63に外部からゴミが付着することを防ぐことができる。一方、板バネ66は、SLED63およびロッドレンズアレイ64の位置関係を保持するように、ハウジング61を介してLED回路基板62をロッドレンズアレイ64方向に付勢している。
このように構成されたLPH14は、調整ネジ(図示せず)によってロッドレンズアレイ64の光軸方向に移動可能に構成され、ロッドレンズアレイ64の結像位置(焦点面)が感光体ドラム12表面上に位置するように調整される。
【0024】
図3は、図2に示すLED回路基板62の平面図を示している。LED回路基板62には、記録チップとしての60個のSLEDチップ(Chip1〜Chip60)からなるSLED63が、感光体ドラム12の軸線方向と平行になるように精度良く列状に配置されている。ここで、図4は、各LEDチップの連結部を拡大したものである。図4に示すように、各SLEDチップ(Chip1〜Chip60)の端部では、LEDアレイの端部境界が主走査方向に連続的に配置されるように構成されている。すなわち、各LEDチップ(Chip1〜Chip58)は、千鳥状に配列されている。なお、図4では、一例としてChip1、Chip2およびChip3の連結部を示している。
【0025】
そして、本実施の形態に係るLPH14では、各SLEDチップ(Chip1〜Chip60)にそれぞれ記録素子としての256個のLEDが搭載されている。したがって、60個のSLEDチップを有するSLED63全体では、15360個のLEDが設けられることになる。また、SLEDチップChip1の外側端部からSLEDチップChip60の外側端部までの距離(LEDアレイの主走査方向長さ)は、A3SEFの用紙Pへの画像形成に対応するために324mmに設定される。このため、隣接するLEDの間隔は約21.15μmに設定され、このLPH14の主走査方向の出力解像度は略1200dpi(dot per inch)となる。なお、このLPH14の副走査方向の出力解像度は略2400dpiである。ここで、副走査方向の出力解像度は感光体ドラム12の副走査方向の移動速度によって決まるものであり、適宜設定変更することができる。
【0026】
また、LED回路基板62には、信号発生回路100およびレベルシフト回路104が設けられている。さらに、LED回路基板62には、出力電圧を安定化させるための3端子レギュレータからなる電源回路101、SLED63における光量補正値データやLPH14のスキュー補正値等を記憶するEEPROM102、およびデジタルカラープリンタ1本体との間で信号の送受信を行うハーネス103が備えられている。
【0027】
図5は、信号発生回路100の構成およびLED回路基板62の配線構成を示した図である。図5に示すように、信号発生回路100は、各LEDチップ(Chip1〜Chip60)に対して点灯信号ΦI(ΦI1〜ΦI60)を出力する点灯信号発生部110を備えている。また、信号発生回路100は、各LEDチップ(Chip1〜Chip60)を六組(10チップ毎)に分け、それぞれの組に対して転送信号CK1(CK1_1〜CK1_6)および転送信号CK2(CK2_1〜CK2_6)を出力する転送信号発生部130を備えている。
【0028】
また、LED回路基板62上には、各SLEDチップ(Chip1〜Chip60)に電力を供給するVcc=+3.3Vの電源ライン105および接地(GND)された電源ライン106が設けられている。また、信号発生回路100から各SLEDチップ(Chip1〜Chip60)に対して点灯信号ΦI(ΦI1〜ΦI60)を送信する信号ライン107(107_1〜107_60)も設けられている。さらに、転送信号CK1(CK1_1〜1_6)を送信する信号ライン108(108_1〜108_6)も設けられている。さらにまた、転送信号CK2(CK2_1〜2_6)を送信する信号ライン109(109_1〜109_6)も設けられている。
そして、各SLEDチップ(Chip1〜Chip60)には、信号ライン107を介して、Chip1〜Chip60に対する点灯信号ΦI(ΦI1〜ΦI60)が入力される。また、信号ライン108を介して転送信号CK1(CK1_1〜1_6)が、信号ライン109を介して転送信号CK2(CK2_1〜2_6)が、それぞれChip1〜Chip60に入力される。
【0029】
続いて、SLED63の回路構成を説明する。
図6は、SLED63の回路構成を説明する図である。本実施の形態のSLED63は、レベルシフト回路104を介して信号発生回路100に接続されている。レベルシフト回路104は、抵抗R1BとコンデンサC1、および抵抗R2BとコンデンサC2がそれぞれ並列に配置された構成を有し、それぞれの一端がSLED63の入力端子に接続され、他端が信号発生回路100(転送信号発生部130)の出力端子に接続されている。そして、信号発生回路100(転送信号発生部130)から出力される転送信号CK1R,CK1Cおよび転送信号CK2R,CK2Cに基づいて、転送信号CK1および転送信号CK2をSLED63に出力するように構成されている。
なお、本実施の形態のSLED63には、58個のSLEDチップが直列に配列されているが、図6では、1つのSLEDチップだけを示している。そして、以下の説明では、便宜上SLEDチップをSLED63と称することとする。
【0030】
図6に示したように、SLED63は、スイッチ素子としての128個のサイリスタS1〜S128、点灯素子としての128個のLED L1〜L128、128個のダイオードD1〜D128、128個の抵抗R1〜R128、さらには信号ラインに過剰な電流が流れるのを防止する転送電流制限抵抗R1A、R2Aで構成されている。
なお、ここでは、LED L1〜L128への電流の供給を制御するサイリスタS1〜S128とダイオードD1〜D128とで主に構成される部分を転送部と呼ぶ。
【0031】
本実施の形態のSLED63では、各サイリスタS1〜S128のアノード端子(入力端)A1〜A128は電源ライン105に接続されている。この電源ライン105には電源電圧Vcc(Vcc=+3.3V)が供給される。
奇数番目サイリスタS1、S3、…、S127のカソード端子(出力端)K1、K3、…、K127には、信号発生回路100からレベルシフト回路104および転送電流制限抵抗R1Aを介して転送信号CK1が送信される。
また、偶数番目のサイリスタS2、S4、…、S128のカソード端子(出力端)K2、K4、…、K128には、信号発生回路100からレベルシフト回路104および転送電流制限抵抗R2Aを介して転送信号CK2が送信される。
【0032】
一方、各サイリスタS1〜S128のゲート端子(制御端)G1〜G128は、各サイリスタS1〜S128に対応して設けられた抵抗R1〜R128を介して電源ライン106に各々接続されている。なお、電源ライン106は接地(GND)されている。
また、各サイリスタS1〜S128のゲート端子G1〜G128と、各サイリスタS1〜S128に対応して設けられたLED L1〜L128のゲート端子とは各々接続される。
さらに、各サイリスタS1〜S128のゲート端子G1〜G128には、ダイオードD1〜D128のカソード端子が接続されている。そして、サイリスタS1〜S127のゲート端子G1〜G127には、次段のダイオードD2〜D128のアノード端子に各々接続されている。すなわち、各ダイオードD1〜D128はゲート端子G1〜G127を挟んで直列接続されている。
ダイオードD1のアノード端子は転送電流制限抵抗R2Aおよびレベルシフト回路104を介して信号発生回路100に接続され、転送信号CK2が送信される。また、LEDL1〜L128のカソード端子は、駆動電流設定抵抗RIDを介して信号発生回路100(点灯信号発生部110)に接続されて、点灯信号ΦIが送信される。
【0033】
さらには、SLED63には、転送部においてサイリスタS1〜S128およびダイオードD1〜D128を覆うように遮光マスク50を配置している。これは、画像形成動作中に、オン状態にあって電流が流れている状態におけるサイリスタS1〜S128や、電流が流れている状態におけるダイオードD1〜D128からの発光を遮断し、不要光が感光体ドラム12を露光することを抑制するために設けられている。
【0034】
次に、信号発生回路100およびレベルシフト回路104から出力されるSLED63を駆動する信号(駆動信号)について説明する。
図7は、信号発生回路100およびレベルシフト回路104から出力される駆動信号を示すタイミングチャートである。なお、図7に示すタイミングチャートでは、すべてのLEDが光書き込みを行う(発光する)場合について表記している。
(1)まず、画像形成装置から信号発生回路100にリセット信号(RST)が入力されることによって、信号発生回路100では、転送信号CK1Cをハイレベル(以下、「H」と記す。)、転送信号CK1Rを「H」として、転送信号CK1が「H」に設定され、また、転送信号CK2Cをローレベル(以下、「L」と記す。)、転送信号CK2Rを「L」として、転送信号CK2がローレベル(「L」)に設定されて、すべてのサイリスタS1〜S128がオフの状態に設定される(図7(a))。
(2)リセット信号(RST)に続いて、信号発生回路100から出力されるライン同期信号Lsyncが「H」になり(図7(A))、SLED63の動作を開始する。そして、このライン同期信号Lsyncに同期して、図7(E)、(F)、(G)に示すように、転送信号CK2Cおよび転送信号CK2Rを「H」として、転送信号CK2を「H」とする(図7(b))。
(3)次に、図7(C)に示すように、転送信号CK1Rを「L」にする(図7(c))。
【0035】
(4)これに続いて、図7(B)に示すように、転送信号CK1Cを「L」にする(図7(d))。
この状態においては、サイリスタS1のゲート電流が流れ始める。その際に、信号発生回路100のトライステートバッファB1Rをハイインピーダンス(Hiz)にすることで、電流の逆流防止を行う。
その後、サイリスタS1のゲート電流により、サイリスタS1がオンし始め、ゲート電流が徐々に上昇する。それとともに、レベルシフト回路104のコンデンサC1に電流が流れ込むことで、転送信号CK1の電位も徐々に上昇する。
【0036】
(5)所定時間(転送信号CK1電位がGND近傍になる時間)の経過後、信号発生回路100のトライステートバッファB1Rを「L」にする(図7(e))。そうすると、ゲートG1電位が上昇することによって信号ラインΦ1電位の上昇および転送信号CK1電位の上昇が生じ、それに伴いレベルシフト回路104の抵抗R1B側に電流が流れ始める。その一方で、転送信号CK1電位が上昇するのに従い、レベルシフト回路104のコンデンサC1に流れ込む電流は徐々に減少する。
そして、サイリスタS1が完全にオンし、定常状態になると、サイリスタS1のオン状態を保持するための電流がレベルシフト回路104の抵抗R1Bに流れるが、コンデンサC1には流れない。
なお、このとき、図7(B)に示すように、信号発生回路100のトライステートバッファB1Cをハイインピーダンス(Hiz)に設定する(図7(e))。
【0037】
(6)サイリスタS1が完全にオンした状態で、図7(H)に示すように、点灯信号ΦIを「L」にする(図7(f))。このとき、ゲートG1電位>ゲートG2電位であるため、サイリスタ構造のLED L1のほうが早くオンし、点灯する。LED L1がオンするのに伴って、信号ラインΦ1の電位が上昇するため、LED L2以降のLEDはオンすることはない。すなわち、LED L1、L2、L3、L4、…は、最もゲート電圧の高いLED L1のみがオン(点灯)することになる。
【0038】
(7)次に、図7(F)に示すように、転送信号CK2Rを「L」にすると(図7(g))、図7(c)の場合と同様に電流が流れ、レベルシフト回路104のコンデンサC2の両端に電圧が発生する。
(8)図7(E)に示すように、この状態で転送信号CK2Cを「L」にすると(図7(h))、サイリスタスイッチS2がターンオンする。
(9)そして、図7(B)、(C)に示すように、転送信号CK1C、CK1Rを同時に「H」にすると(図7(i))、サイリスタスイッチS1はターンオフし、抵抗R1を通って放電することによってゲートG1電位は除々に下降する。その際、サイリスタスイッチS2は完全にオンする。したがって、点灯信号端子IDからの画像データに対応した点灯信号ΦIを「L」/「H」することで、LED L2を点灯/非点灯させることが可能となる。
なお、この場合ゲートG1の電位はすでにゲートG2の電位より低くなっているため、LED L1がオンすることはない。
【0039】
(10)上記した動作を順次行い、LED L1〜L128を順次点灯させる。
そして、終端のLED L128が消灯した図7中の「転送動作期間」の後においては
、転送信号CK1C、CK1Rを「H」として転送信号CK1を「H」とし、さらに転送信号CK2C、CK2Rを「H」として転送信号CK2を「H」として、転送信号CK1および転送信号CK2を共に所定の時間だけ「H」の状態に保つ(図7中、「転送サイリスタをオフ」)。これによって、すべてのサイリスタS1〜S128がオフする。したがって、この状態においては、すべてのサイリスタS1〜S128に電流が流れることはないので、サイリスタS1〜S128は消灯(非点灯)の状態に保持される。
【0040】
(11)さらに、転送信号CK1、CK2を共に所定の時間だけ「H」の状態に保った後、転送信号CK2C、CK2Rを「L」として転送信号CK2を「L」とする(図7中、「転送部に電流を流さない期間」)。これによって、ダイオードD1〜D128にも電流が流れることがないので、すべてのダイオードD1〜D128も非点灯の状態が保持される。
それにより、点灯信号ΦIが出力されて画像形成が終了した後の、感光体ドラム12(図1参照)が回転を停止した状態を含んだ非定常動作時においては、SLED63の転送部に対して電流が印加されない。そのため、感光体12が回転を停止している状態では、LED L1〜L128とともに、転送部に配置されたサイリスタS1〜S128およびダイオードD1〜D128にも電流が流れることはなく、サイリスタS1〜S128およびダイオードD1〜D128から光が出射されることがないので、感光体ドラム12が不要に露光されることが抑えられている。
【0041】
続いて、図8を参照しながら、信号発生回路100における点灯信号発生部110の構成を詳細に説明する。点灯信号発生部110には、IPS40から送られてくる画像データおよび制御部30から送られてくるライン同期信号Lsyncが入力される。また、点灯信号発生部110には、EEPROM102から、各LEDに対応する光量補正値データやLPH14のスキュー補正値も入力される。一方、点灯信号発生部110は、LPH14を構成する60個のSLED63(Chip1〜Chip60)に点灯信号ΦI1〜ΦI60を出力している。
【0042】
図8に示すように、点灯信号発生部110は、千鳥配列補正部111、スキュー補正部112、点灯時間計算部113、シリアルパラレル変換部114、パルス発生器115(115_1〜115_60)を備えている。
第一の副走査方向ずれ補正部としての千鳥配列補正部111には、IPS40から画像データが入力される。そして、千鳥配列補正部111は、IPS40から入力されてくる画像データをSLED63毎(256ドット毎のデータ群)に分けている。そして、千鳥配列補正部111は、奇数番目のSLED63(Chip1、Chip3、…、Chip59)に対応するデータ群および偶数番目のSLED63(Chip2、Chip4、…、Chip60)に対応するデータ群の出力タイミングを異ならせて、スキュー補正部112に出力している。具体的には、副走査方向下流側に配置される偶数番目のSLED63の発光タイミングが、副走査方向上流側に配置される奇数番目のSLED63の発光タイミングよりも所定時間だけ遅れるように設定を行う。これにより、奇数番目のSLED63により感光体ドラム12上に形成される静電潜像と偶数番目のSLED63により感光体ドラム12上に形成される静電潜像との位置を合わせることが可能になる。
【0043】
第二の副走査方向ずれ補正部としてのスキュー補正部112には、EEPROM102から送られてくるスキュー補正値が入力される。また、スキュー補正部112には、千鳥配列補正部111より千鳥配列補正済みの画像データも入力される。そして、スキュー補正部112は、千鳥配列補正済みの画像データに、スキュー補正を施して点灯時間計算部113に出力している。なお、スキュー補正部112の詳細およびスキュー補正部112で用いられるスキュー補正値の詳細については後述する。
【0044】
点灯時間計算部113には、制御部30から送られてくるライン同期信号LsyncおよびEEPROM102から送られてくる光量補正値データが入力される。また、点灯時間計算部113には、スキュー補正部112より千鳥配列補正済み且つスキュー補正済み画像データ(以下、単にスキュー補正済みの画像データと呼ぶ)も入力される。この光量補正値データは、LPH14を構成する15360個のLEDのそれぞれに対応して設定されている。点灯時間計算部112は、ライン同期信号Lsyncに同期しつつ、スキュー補正部112から送られてくるスキュー補正済みの画像データと、EEPROM102から読み出された各LEDの光量補正値とを用いて、各LEDの点灯時間(点灯クロック数)を計算する。より具体的に説明すると、点灯時間計算部113は、スキュー補正済みの画像データに光量補正値を加味して、光量補正値の大きさに比例して点灯時間が長くなるよう、該当するLEDの点灯クロック数を計算する。
【0045】
シリアルパラレル変換部114は、点灯時間計算部113において計算された各LEDに対する点灯クロック数をパラレルデータに変換する。またパルス発生器115(115_1〜115_60)は、シリアルパラレル変換部114にてパラレル変換された各信号に対し、パルス幅変調にて光量を変えて各点灯信号ΦI1〜ΦI60を発生する。そして、パルス発生器115(115_1〜115_60)は、発生した各点灯信号ΦI1〜ΦI60を、LPH14のSLED63(Chip1〜Chip60)にそれぞれ出力する。これにより、LPH14の各SLED63では、点灯対象となるLEDが、それぞれ設定された点灯時間だけ点灯することになる。
【0046】
では、上記スキュー補正部112におけるスキュー補正について詳細に説明する。本実施の形態に係るデジタルカラープリンタ1では、各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11KにそれぞれLPH14が取り付けられている。各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kにおいて、LPH14は、感光体ドラム12の軸方向と平行となるように所定の精度で装着される。ただし、実際には感光体ドラム12に対してLPH14が斜めに装着されることもあり、このような場合にはスキューが生じる。また、初期状態では感光体ドラム12の軸方向に対してLPH14が平行に装着されていたとしても、デジタルカラープリンタ1内の温度変化等によってLPH14が伸縮(変形)することがあり、このような場合にもスキューが生じる。
【0047】
ここで、LPH14を用いて、感光体ドラム12上に主走査方向に沿って延びる直線状の静電潜像(画像)を作成する場合を考えてみる。このとき、IPS40は、点灯信号発生部110に対し、主走査方向1ライン分のLEDの点灯を指示する画像データを出力する。
図9(a)は、感光体ドラム12の軸方向に対してLPH14が平行に装着されている場合に、LPH14によって感光体ドラム12上に形成される静電潜像を示している。なお、図中において、横方向は主走査方向、縦方向は副走査方向であり、●はLEDを点灯させることによって形成される静電潜像(画像部)、○はLEDを点灯させないことによって形成される静電潜像(背景部)をそれぞれ示している(以下で説明する図9(b)および図9(c)においても同様)。
この場合は、入力されてくる画像データに基づき、副走査方向の第mライン目において主走査方向1ライン分のLEDを点灯させることで、感光体ドラム12上に、主走査方向に平行な静電潜像(画像部)が形成される。
【0048】
また、図9(b)は、感光体ドラム12の軸方向に対してLPH14が斜めに装着された場合に、LPH14によって感光体ドラム12上に形成される静電潜像を示している。
この場合は、副走査方向の第mライン目において主走査方向1ライン分のLEDを点灯させると、感光体ドラム12上に、LPH14の配置状態に対応して、副走査方向に傾斜した(スキューした)静電潜像が形成される。つまり、本来形成すべき静電潜像とは異なる静電潜像が形成されることになってしまう。
【0049】
そこで、本実施の形態では、事前に各LPH14のスキュー量を取得し、得られたスキュー量から必要なスキュー補正値を求め、このスキュー補正値を用いスキュー補正部112において画像データに所定の操作を施すことで、スキュー補正を行っている。これを具体的に説明すると、スキュー補正部112では、スキュー補正値に基づいて主走査方向1ライン分の画像データを複数のブロックに分割し、分割されたブロック毎に画像データを副走査方向にシフトさせずらすことで、スキューの低減を図っている。
【0050】
図9(c)は、このようなスキュー補正を施した画像データを用いた場合に、LPH14によって感光体ドラム12上に形成される静電潜像を示している。なお、図9(c)は、得られたスキュー補正値に基づき、3つのブロックSa-1、Sa、およびSa+1に分割を施した例を示している。また、図9(c)において、ブロックSa-1とブロックSaとの境界を分割位置Xa-1、ブロックSaとSa+1との境界を分割位置Xaと呼ぶことにする。
【0051】
この例では、主走査方向1ライン分の画像データが、ブロックSa-1、Sa、およびSa+1毎に分割される。そして、ブロックSa-1では、副走査方向の第m−1ライン目においてこのブロックSa-1に対応するLEDを点灯させる。またブロックSaでは、副走査方向の第mライン目においてこのブロックSaに対応するLEDを点灯させる。さらに、ブロックSa+1では、副走査方向の第m+1ライン目においてこのブロックSa+1に対応するLEDを点灯させる。すなわち、ブロックSa-1ではブロックSaよりも副走査方向に1ライン分だけ早く画像データを出力し、ブロックSa+1ではブロックSaよりも副走査方向に1ライン分だけ遅く画像データを出力する。
すると、感光体ドラム12上には、図9(c)に示すような静電潜像が形成されることになる。ここで、図9(b)に示すスキュー補正を施さない場合の静電潜像と図9(c)に示すスキュー補正を施した場合の静電潜像とを比較すると、スキュー補正を施すことにより、形成される静電潜像が図9(a)に示す状態に近づくことが理解される。
【0052】
ところで、本実施の形態に係るLPH14は、図3および図4を用いて説明したように、複数のLEDをライン状に配列したSLED63(Chip1〜Chip60)を、主走査方向に千鳥状に配列したLEDアレイを有している。ここで、LEDアレイを構成する各SLED63の取り付け位置には、所定の誤差が許容されている。そして、このような誤差としては、隣接するSLED63同士が主走査方向にずれる主走査方向ずれによる誤差と、隣接するSLED63同士が副走査方向にずれる副走査方向ずれによる誤差とが存在する。
【0053】
このため、上述したスキュー補正に際して設定されるブロックの分割位置と、隣接するSLED63のLEDアレイ境界端部(図4参照)とが一致していると、次のような不具合が生じる。
図10(a)は、図9(c)のうち、分割位置Xa付近を抜き出したものである。この例では、分割位置Xaよりも左側のブロックSaでは副走査方向の第mライン目においてこのブロックSaに対応するLEDを点灯させ、分割位置Xaよりも右側のブロックSa+1では副走査方向の第m+1ライン目においてこのブロックSa+1に対応するLEDを点灯させている。
【0054】
ここで、例えば図10(b)に示すように、隣接するSLED63が主走査方向ずれ(離れる方向)している場合、LEDアレイ端部境界には隙間ができる。このとき、上記分割位置XaがLEDアレイ端部境界に一致していると、形成される静電潜像(トナー像)は、図10(b)に示したように不連続性が強調されてしまう。すると、例えばハーフトーン画像を形成しようとした場合には、この不連続の部位(トナー像が形成されない部位)が副走査方向に延び、結果として筋になってしまう。
【0055】
また、例えば図10(c)に示すように、隣接するSLED63が副走査方向ずれ(離れる方向)している場合、LEDアレイ端部境界には、千鳥配置による隙間にさらに隙間が加味される。このとき、上記分割位置XaがLEDアレイ端部境界に一致していると、形成される静電潜像(トナー像)は、図10(c)に示したように不連続性が強調されてしまう。本実施の形態では、隣接するSLED63間のギャップ分を千鳥補正によって取り除いている。しかし、千鳥補正を施しても新たに加わった隙間については補正を行うことができないために、形成される静電潜像(トナー像)に隙間が残ってしまう。また、千鳥補正が不十分である場合には、千鳥補正を施しても段差が残ってしまうこともある。すると、例えばハーフトーン画像を形成しようとした場合には、この不連続の部位(トナー像が形成されない部位)が副走査方向に延び、結果として筋になってしまう。
【0056】
以上のことから、スキュー補正におけるブロックの分割位置と、隣接するSLED63におけるLEDアレイ端部位置とが一致した場合に、副走査方向の筋が発生しやすくなることが理解される。このため、本実施の形態では、スキュー補正におけるブロックの分割位置が、LEDアレイ端部位置から所定量だけシフトされるように、スキュー補正値の設定を行っている。以下、スキュー補正値の設定について説明を行う。
【0057】
図11は、スキュー補正値の設定を行うスキュー補正値設定部140の構成を示す図である。なお、スキュー補正値設定部140は、実際には制御部30の一機能として実現されている。このスキュー補正値設定部140は、中間転写ベルト21(図1参照)に対向配置される画像センサ26から送られてくる読み取りデータに基づいてスキュー補正値(ブロック分割数およびブロックの分割位置)を設定し、EEPROM102に書き込む機能を有している。そして、スキュー補正値設定部140は、スキュー量演算部141、スキュー補正値演算部142、およびスキュー補正値修正部143を備えている。
【0058】
スキュー量演算部141は、画像センサ26から送られてくる読み取りデータに基づき、LPH14におけるスキュー量(主走査方向両端における副走査方向ずれの量)を演算する。スキュー補正値演算部142は、スキュー量演算部141にて求められたスキュー量に基づき、スキュー補正値(ブロック分割数およびブロックの分割位置)を演算する。スキュー補正値修正部143は、スキュー補正値演算部142にて求められたスキュー補正値に基づき、ブロックの分割位置とLEDアレイ端部位置とが一致している場合に、ブロックの分割位置を主走査方向にシフトさせることにより修正を施している。また、スキュー補正値修正部143は、修正がなされたスキュー補正値を、EEPROM102に書き込んでいる。
【0059】
では次に、図12に示すフローチャートを参照しつつ、スキュー補正値の設定プロセスについて詳細に説明する。
このプロセスでは、まず、デジタルカラープリンタ1を用いてスキュー補正用画像の作成を行う(ステップ101)。すなわち、所定の画像データに対応する静電潜像を、LPH14を用いて感光体ドラム12上に形成し、これをトナーで現像した後、中間転写ベルト21上に一次転写する。このとき、LPH14では、主走査方向両端に設けられるSLED63(Chip1およびChip60)を用い、同一の主走査方向ラインにおいて静電潜像の形成を行う。その結果、中間転写ベルト21上には、例えば図13に示すように、SLED63(Chip1)で作成された静電潜像によって形成された第一のトナー像T1およびSLED63(Chip60)で作成された静電潜像によって形成された第二のトナー像T2が転写される。このとき、感光体ドラム12に対してLPH14が斜めに装着されていると、中間転写ベルト21上のスキュー補正用画像すなわち第一のトナー像T1および第二のトナー像T2には、傾きに対応する副走査方向のずれ(スキュー量)が発生する。
【0060】
次に、中間転写ベルト21上に形成されたスキュー補正用画像すなわち第一のトナー像T1および第二のトナー像T2を、画像センサ26を用いて読み取る(ステップ102)。このとき、画像センサ26は、第一のトナー像T1の検出タイミングと第二のトナー像T2の検出タイミングとのずれ量(時間)をスキュー補正値設定部140に出力する。
【0061】
そして、スキュー量演算部141は、画像センサ26から入力されてくる読み取りデータ(ずれ量)に基づき、中間転写ベルト21の回動速度等を加味してスキュー量を演算する(ステップ103)。次いで、スキュー補正値演算部142は、スキュー量演算部141で得られたスキュー量に基づき、スキューを主走査方向と略平行にするためのスキュー補正値を演算する(ステップ104)。このステップ104では、スキュー補正値として、主走査方向におけるブロック分割数n+1と、各ブロックの分割位置X1〜Xnとを求める。なお、ブロック分割数n+1および各ブロックの分割位置X1〜Xnの具体的な演算手法については後述する。
【0062】
さらに、スキュー補正値修正部143は、スキュー補正値演算部142で得られたスキュー補正値に修正を施す。その具体的な手順は次の通りである。スキュー補正値修正部143では、まず、a=1に設定し(ステップ105)、スキュー補正値の分割位置Xaが256の整数倍であるか否か判断する(ステップ106)。ここで、256は、SLED63を構成するSLEDチップの数である。ここで、分割位置Xaが256の整数倍である場合には、分割位置Xaから64を引いた値を新たな分割位置Xaに設定し(ステップ107)、この分割位置XaをメモリであるEEPROM102に格納する(ステップ108)。一方、ステップ106において分割位置Xaが256の整数倍でない場合には、この分割位置XaをそのままメモリであるEEPROM102に格納する。そして、aの値をa+1に設定し(ステップ109)、aの値が分割位置の数であるnを超えたか否かを判断する(ステップ110)。ここで、a≦nの場合には、ステップ106に戻ってさらに処理を続行する。一方、a>nの場合には、すべての分割位置に対する処理が終了しているので、一連の処理を終了する。
なお、このスキュー補正値の設定は、画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kに設けられる各LPH14において、それぞれ独立して行われる。
【0063】
では次に、具体例を挙げてさらに説明を行う。なお、この説明では、上記ステップ101およびステップ102を実行し、ステップ103において得られたスキュー量が0.5mmであったものとする。
このLPH14では、LEDアレイの主走査方向長さが上述したように324mmである。また、副走査方向の解像度は2400dpiであることから、副走査方向のドットの間隔は10.58μmである。したがって、スキュー量が0.5mmであった場合、0.5/0.01058≒47.2となり、副走査方向に48ステップ分のスキュー補正を行うことが必要になる。これはすなわち、ステップ104で得られるブロック分割数n+1が48であることを意味する。すると、LEDは主走査方向長さ324mm内に15360ドット分のLEDが存在することから、15360/48=320となり、ステップ104で得られる分割位置X1〜X47が320ドット間隔すなわち320ドット目、640ドット目、960ドット目・・・、15040ドット目になる。したがって、スキュー補正値演算部142からは、これらブロック分割数48および分割位置X1〜X47がスキュー補正値として出力されることになる。
【0064】
ここで、表1は、スキュー補正値演算部142で求められた分割位置(修正前)X1〜X47、スキュー補正値修正部143で求められた各分割位置X1〜X47に対する演算結果(Chip位置)、およびスキュー補正値修正部143で修正がなされた分割位置(修正後)X1〜X47を示している。なお、分割位置Xn(修正前)はステップ104で求められ、Chip位置はステップ106で求められ、分割位置Xn(修正後)はステップ106〜108で求められる。
【0065】
【表1】
【0066】
本実施の形態では、SLEDチップ一枚あたりのLED数が256ドットであり、また、分割位置Xnは320ドット間隔である。このため、表1に示すように、256ドットおよび320ドットの最小公倍数である1280ドット毎に、LEDアレイ境界位置と分割位置Xn(具体的にはX4、X8、X12、X16、X20、X24、X28、X32、X36、X40、X44)とが一致する。本実施の形態では、このようにLEDアレイ境界位置と分割位置Xnとが一致する場合に、ステップ107において分割位置Xnを64ドット分主走査方向上流側にシフトさせている。そして、このようにして求められた分割位置Xn(修正後)が、EEPROM102に格納される。
【0067】
次に、図8および図14に示すタイミングチャートを参照しつつ、点灯信号発生部110における画像データの千鳥補正動作およびスキュー補正動作について詳細に説明する。なお、この図は、(a)に示すように、LPH14を構成するSLED63のうち、Chip1〜Chip11までを示している。また、図中の横軸はLPH14を構成する各LEDのドット番号であり、縦軸は時間(タイミング)であり、下側が遅れを示している。
【0068】
今、(b)に示すように、IPS40よりChip1〜Chip60(図中ではChip1〜Chip11)の全LEDを点灯させる画像データが入力されたとする。すると、千鳥配列補正部111では、(c)に示すように、偶数番目のSLEDチップ(Chip2、Chip4、…)に対する画像データの出力タイミングを、奇数番目のSLEDチップ(Chip1、Chip3、…)よりも所定時間だけ遅らせる千鳥配列補正を行って、千鳥補正済みの画像データを出力する。
【0069】
次いで、スキュー補正部112では、千鳥配列補正部111から送られてくる千鳥補正済みの画像データに対し、スキュー補正を施す。ここで、(d)は、表1に示す修正前の分割位置X1〜X47を用いてスキュー補正を施した際の出力画像データ(スキュー補正後の画像データ)を示している。また、(e)は、表1に示す修正後の分割位置X1〜X47を用いてスキュー補正を施した際の出力画像データ(スキュー補正後の画像データ)を示している。
(d)では、Chip5およびChip6のLEDアレイ端部境界とブロック分割位置X4とが一致し、また、Chip10およびChip11のLEDアレイ端部境界とブロック分割位置X8とが一致している。一方、(e)では、上述した手順でスキュー補正値に修正を施すことでこれら分割位置X4およびX8を64ドット分だけ上流側にシフトさせている。このため、(e)では、LEDアレイ端部境界とブロックの分割位置とが一致する部位は主走査方向全域にわたって存在しない。
【0070】
ここで、図15(a)は、図14(d)に示すスキュー補正(分割位置修正前のスキュー補正値を使用)を施した場合に形成されるハーフトーン画像(トナー像)の濃度分布を示している。また、図15(b)は、図14(e)に示すスキュー補正(分割位置修正後のスキュー補正値を使用)を施した場合に形成されるハーフトーン画像(トナー像)の濃度分布を示している。なお、これらの図において、横軸はLEDのドット番号を示しており、縦軸は所定のドットにおける濃度を基準として規格化された濃度差を示している。
【0071】
図15(a)に示すように、分割位置修正前のスキュー補正値を使用してスキュー補正を施した場合には、LEDアレイ端部境界とブロック分割位置とが一致する部位での濃度差が大きくなっている。特に、3840ドット目、5120ドット目、7680ドット目、8960ドット目、10240ドット目、そして12800ドット目では濃度差が−0.02を超えており、他の領域よりも濃度が著しく低くなっている。つまり、ハーフトーン画像中に目に見える筋が発生している。
【0072】
これに対し、図15(b)に示すように、本実施の形態の特徴である分割位置修正後のスキュー補正値を使用してスキュー補正を施した場合には、LEDアレイ端部境界での濃度差がわずかに存在する(濃度差−0.02未満)ものの、そのレベルはきわめて小さく、略一定の濃度が得られている。この場合、ハーフトーン画像中に生じる筋はほとんど目立たない。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態では、複数のLED(本実施の形態では256個)を並べて構成されたSLED63を、主走査方向に複数(本実施の形態では60個)配列してLEDアレイを構成した。そして、LPH14を用いて感光体ドラム12上に静電潜像を形成する際、入力されてくる画像データに対し、主走査方向に15360個存在するLEDを複数のブロックにグループ分けし、ブロック毎に画像データの点灯タイミングをずらすことで、スキュー補正を施すようにした。このようなスキュー補正を施すことで、感光体ドラム12上に形成される静電潜像において、LPH14と感光体ドラム12との相対的な位置関係に起因する副走査方向の歪みを目立たなくすることができる。
【0074】
ここで、本実施の形態では、スキュー補正に使用するスキュー補正値(分割ブロック数、ブロックの分割位置)を設定するにあたり、ブロックの分割位置がLEDアレイ端部境界と一致した場合に、このブロックの分割位置を主走査方向にシフトさせるようにした。つまり、ブロックの分割位置とLEDアレイ端部境界とを主走査方向に対してずらすようにした。これにより、隣接するSLED63の配置状態に起因する副走査方向ずれ量にスキュー補正による副走査方向のずらしが重畳されることがなくなり、この部位における副走査方向の筋を目立たなくすることができる。
【0075】
特に、本実施の形態のようにSLED63を千鳥配置する場合、設定上の副走査方向ずれ量と実際の副走査方向ずれ量とが異なると、千鳥配列補正部111で千鳥配列補正しきれず、副走査方向のずれが残る。このとき、LEDアレイ端部境界とスキュー補正におけるブロックの分割位置とが一致していると、相乗効果で筋がさらに目立ちやすくなってしまう。したがって、本実施の形態で用いた手法は、SLED63を千鳥配置する構成を採用する場合に非常に有効なものとなる。
【0076】
また、他の観点からみると、本実施の形態では、LPH14を構成する各SLED63の配置状態(千鳥配置)に起因する副走査方向の歪み補正は、LEDアレイ端部境界で行い、LPH14の配置状態(感光体ドラム12との相対的な位置関係)に起因する副走査方向の歪み補正は、LEDアレイ端部境界で行わないようにした、と捉えることもできる。
【0077】
なお、本実施の形態では、LEDアレイ端部境界とスキュー補正におけるブロックの分割位置とが一致しているときにのみブロックの分割位置をシフトさせていたが、LEDアレイ端部境界の近傍にブロックの分割位置が設定された場合にも、筋が目立つ懸念がある。そこで、例えばLEDアレイ端部境界の近傍(例えば10ドット程度)にブロックの分割位置が設定された場合にも、ブロック部の分割位置をシフトさせることが好ましい。
【0078】
<実施の形態2>
実施の形態1では、ブロックの分割位置とLEDアレイ端部境界とが一致した場合に、必ずブロックの分割位置をシフトさせていた。これに対し本実施の形態では、特定の条件を満たす場合には、ブロックの分割位置とLEDアレイのLED端部境界とが一致していても、ブロックの分割位置をシフトさせずにそのままとするようにしたものである。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0079】
図16は、本実施の形態に係るSLED63を構成する60個のSLEDチップのうち、Chip1、Chip2、およびChip3の連結部を例示している。なお、本実施の形態においても、60個のSLEDチップはそれぞれ256個のLEDを搭載している。また、奇数番目のSLEDチップ(Chip1、Chip3、…)および偶数番目のSLEDチップ(Chip2、…)は、互い違いすなわち千鳥状に配列されている。
【0080】
ここで、図16(a)は、Chip1とChip2とが副走査方向に対して理想的な状態で配列された例を示している。このとき、Chip1のLEDアレイおよびChip2のLEDアレイは、副走査方向距離D=D0だけ離間して配置される。なお、以下の説明では、距離D0のことを基準距離と呼ぶ。
一方、図16(b)は、Chip1とChip2とが副走査方向に対し離間する方向にずれた状態で配列された例を示している。このとき、Chip1のLEDアレイおよびChip2のLEDアレイは、副走査方向距離D>基準距離D0だけ離間して配置される。
他方、図16(c)は、Chip1とChip2とが副走査方向に対し近接する方向にずれた状態で配列された例を示している。このとき、Chip2のLEDアレイおよびChip3のLEDアレイは、副走査方向距離D<基準距離D0だけ離間して配置される。
【0081】
本来、SLEDチップ同士の境界では、奇数番目のSLEDチップ(例えばChip1)と偶数番目のSLEDチップ(例えばChip2)とを、副走査方向に基準距離D0だけずらした状態で取り付けることが好ましい。ただし、実際には、取り付け精度に許容範囲が設けられることから、例えば数μm程度の副走査方向ずれが生じ得る。
【0082】
そして、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、感光体ドラム12の軸方向に対してLPH14が斜めに装着されることがある。このため、実施の形態1と同様、例えば図9(c)に示したように、設定された分割位置毎に画像データの出力タイミングを順次遅らせたりあるいは早めたりすることで、スキュー補正を施している。
【0083】
図17(a)は、図10(a)と同様に分割位置Xa付近を抜き出したものである。すなわち、この例では、分割位置Xaよりも左側のブロックSaでは副走査方向の第mライン目においてこのブロックSaに対応するLEDを点灯させ、分割位置Xaよりも右側のブロックSa+1では副走査方向の第m+1ライン目においてこのブロックSa+1に対応するLEDを点灯させている。なお、以下の説明では、左側のブロックSaと右側のブロックSbとの分割位置XaがChip1とChip2とのLEDアレイ端部位置に一致しているものとする。
【0084】
これらChip1とChip2とが、図16(a)に示す理想的な状態(D=D0)にあるとする。この場合、LEDアレイ端部位置では、図17(a)に示すように、形成される静電潜像(トナー像)が副走査方向に1ライン分だけずれる。ここで、副走査方向の解像度は2400dpiであることから、副走査方向のドット(ライン)の間隔は10.58μmである。したがって、LEDアレイ端部位置では、副走査方向に10.58μmだけ静電潜像(トナー像)がずれることになる。
【0085】
また、これらChip1とChip2とが、図16(b)および図17(b)に示すように副走査方向に対し離間する方向にずれた状態(D>D0)にあるとする。この場合、LEDアレイ端部位置では、図17(b)に示すように形成される静電潜像(トナー像)の副走査方向ずれ量Gは副走査方向1ライン分(10.58μm)より大きくなる。すなわち、副走査方向の筋が目立ちやすくなってしまう。
【0086】
一方、これらChip1とChip2とが、図16(c)および図17(c)に示すように副走査方向に対し近接する方向にずれた状態(D<D0)にあるとする。この場合、LEDアレイ端部位置では、図17(c)に示すように形成される静電潜像(トナー像)の副走査方向ずれ量Gは副走査方向1ライン分(10.58μm)より小さくなる。すなわち、副走査方向の筋が目立ちにくくなる。
【0087】
そこで、本実施の形態では、スキュー補正値の設定プロセスにおいて、ブロックの分割位置がLEDアレイ端部境界と一致した場合に、このLED端部境界を構成するSLEDチップの基準距離Dに対する副走査方向ずれ量(チップ間ずれ量Yという)を参照している。そして、このチップ間ずれ量Yが、形成される静電潜像(トナー像)の副走査方向ずれ量Gを小さくする方向のずれである場合には、分割位置のシフトを行わず、得られた分割位置をそのまま使用するようにしている。
【0088】
このため、本実施の形態では、各SLEDチップChip1〜Chip60のうち、隣接するSLEDチップ同士(例えばChip1とChip2など)のチップ間ずれ量Yが、事前に取得されている。なお、SLED63を構成するSLEDチップは60個であるため、合わせて59個のチップ間ずれ量が取得される。チップ間ずれ量Yは、LPH14の製造後に各SLEDチップ間の副走査方向距離Dを測定し、得られた副走査方向距離Dから基準距離D0を差し引いた値として得られる。すなわち、Y=D−D0である。ここで、表2は、これらチップ間位置Wとチップ間ずれ量Yとを対応付けたテーブルを例示している。なお、例えばチップ間位置W=1はChip1とChip2とのチップ間位置を表しており、例えばチップ間位置W=59はChip59とChip60とのチップ間位置を表している。そして、表2に示すテーブルは、例えばEEPROM102に予め記憶・保持される。
【0089】
【表2】
【0090】
では、図18に示すフローチャートを参照しつつ、本実施の形態におけるスキュー補正値の設定プロセスについて詳細に説明する。
このプロセスでは、まず、デジタルカラープリンタ1を用いてスキュー補正用画像の作成を行う(ステップ201)。すなわち、所定の画像データに対応する静電潜像を、LPH14を用いて感光体ドラム12上に形成し、これをトナーで現像した後、中間転写ベルト21上に一次転写する。このとき、LPH14では、主走査方向両端に設けられるSLED63(Chip1およびChip60)を用い、同一の主走査方向ラインにおいて静電潜像の形成を行う。その結果、中間転写ベルト21上には、例えば図13に示すように、SLED63(Chip1)で作成された静電潜像によって形成された第一のトナー像T1およびSLED63(Chip60)で作成された静電潜像によって形成された第二のトナー像T2が転写される。このとき、感光体ドラム12に対してLPH14が斜めに装着されていると、中間転写ベルト21上のスキュー補正用画像すなわち第一のトナー像T1および第二のトナー像T2には、傾きに対応する副走査方向のずれ(スキュー量)が発生する。
【0091】
次に、中間転写ベルト21上に形成されたスキュー補正用画像すなわち第一のトナー像T1および第二のトナー像T2を、画像センサ26を用いて読み取る(ステップ202)。このとき、画像センサ26は、第一のトナー像T1の検出タイミングと第二のトナー像T2の検出タイミングとのずれ量(時間)をスキュー補正値設定部140に出力する。
【0092】
そして、スキュー量演算部141は、画像センサ26から入力されてくる読み取りデータ(ずれ量)に基づき、中間転写ベルト21の回動速度等を加味してスキュー量を演算する(ステップ203)。次いで、スキュー補正値演算部142は、スキュー量演算部141で得られたスキュー量に基づき、スキューを主走査方向と略平行にするためのスキュー補正値を演算する(ステップ204)。このステップ204では、スキュー補正値として、主走査方向におけるブロック分割数n+1と、各ブロックの分割位置X1〜Xnとを求める。なお、ブロック分割数n+1および各ブロックの分割位置X1〜Xnの具体的な演算手法は実施の形態1で説明したものと同じである。
【0093】
さらに、スキュー補正値修正部143は、スキュー補正値演算部142で得られたスキュー補正値に修正を施す。その具体的な手順は次の通りである。スキュー補正値修正部143では、まず、a=1に設定し(ステップ205)、スキュー補正値の分割位置Xaが256の整数倍であるか否か判断する(ステップ206)。ここで、256は、SLED63を構成するSLEDチップの数である。ここで、分割位置Xaが256の整数倍である場合には、次に、EEPROM102から、分割位置Xaに対応するチップ間位置Wにおけるチップ間ずれ量Yを読み出す(ステップ207)。そして、スキュー補正値修正部143は、読み出したチップ間ずれ量Yが0以上か否かを判断する(ステップ208)。チップ間ずれ量Yが0以上であった場合、スキュー補正値修正部143は、分割位置Xaから64を引いた値を新たな分割位置Xaに設定し(ステップ209)、この分割位置XaをメモリであるEEPROM102に格納する(ステップ210)。一方、ステップ206において分割位置Xaが256の整数倍でなかった場合、および、ステップ208において分割位置Xaに対応するチップ間位置Wにおけるチップ間ずれ量Yが0より小さかった場合(負の値であった場合)、スキュー補正値修正部143は、この分割位置XaをそのままメモリであるEEPROM102に格納する。そして、aの値をa+1に設定し(ステップ211)、aの値が分割位置の数であるnを超えたか否かを判断する(ステップ212)。ここで、a≦nの場合には、ステップ206に戻ってさらに処理を続行する。一方、a>nの場合には、すべての分割位置に対する処理が終了しているので、一連の処理を終了する。
なお、このスキュー補正値の設定は、画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kに設けられる各LPH14において、それぞれ独立して行われる。
【0094】
では次に、具体例を挙げてさらに説明を行う。なお、ここでは、実施の形態1と同様の条件を前提として説明を行うことにする。すなわち、ステップ203において得られたスキュー量は0.5mmであり、その結果、ステップ204で得られた分割位置X1〜X47が320ドット間隔すなわち320ドット目、640ドット目、960ドット目・・・、15040ドット目になる。したがって、スキュー補正値演算部142からは、これらブロック分割数48および分割位置X1〜X47がスキュー補正値として出力されることになる。
【0095】
ここで、表3は、スキュー補正値演算部142で求められた分割位置(修正前) X1〜X47、スキュー補正値修正部143で求められた各分割位置X1〜X47に対する演算結果(Chip位置)、およびスキュー補正値修正部143で修正がなされた分割位置(修正後)X1〜X47を示している。なお、分割位置Xn(修正前)はステップ204で求められ、Chip位置はステップ206で求められ、分割位置Xn(修正後)はステップ206〜210で求められる。
【0096】
【表3】
【0097】
本実施の形態では、SLEDチップ一枚あたりのLED数が256ドットであり、また、分割位置Xnは320ドット間隔である。このため、表3に示すように、256ドットおよび320ドットの最小公倍数である1280ドット毎に、LEDアレイ境界位置と分割位置Xn(具体的にはX4、X8、X12、X16、X20、X24、X28、X32、X36、X40、X44)とが一致する。本実施の形態では、このようにLEDアレイ境界位置と分割位置Xnとが一致する場合に、まず、ステップ208においてこのLEDアレイ境界位置すなわち対応するチップ間位置Wにおけるチップ間ずれ量Yが0以上か否かを判断している。
【0098】
ここで、表2を参照すると、X4、X8、X12、X16、X20、X24、X28、X32、X36、X40、X44に対応するチップ間位置W=5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55では、W=10、20、45、50におけるチップ間ずれ量Yが負の値となっている。また、他のチップ間位置W=5、15、25、30、35、40、55ではチップ間ずれ量Yが0以上の値となっている。
【0099】
ここで、チップ間ずれ量Yが正の値であるということは、隣接するチップ間の副走査方向距離Dが基準距離D0よりも大きいことを意味する。すなわち、隣接するチップ同士が副走査方向に対し離間する方向にずれた状態で配列されていることである。一方、チップ間ずれ量Yが負の値であるということは、隣接するチップ間の副走査方向距離Dが基準距離D0よりも小さいことを意味する。すなわち、隣接するチップ同士が副走査方向に対し近接する方向にずれた状態で配列されていることである。
【0100】
そして、本実施の形態では、LEDアレイ境界位置と分割位置Xnとが一致する場合であって、対応するチップ間ずれ量Yの値が0以上である場合に、ステップ209において分割位置Xnを64ドット分主走査方向上流側にシフトさせている。そして、このようにして求められた分割位置Xn(修正後)が、EEPROM102に格納される。
一方、LEDアレイ境界位置と分割位置Xnとが一致する場合であっても、対応するチップ間ずれ量Yの値が0より下の負の値である場合には、分割位置Xnをシフトさせることなく、そのままEEPROM102に格納している。
【0101】
次に、図8、および図19に示すタイミングチャートを参照しつつ、点灯信号発生部110における画像データの千鳥補正動作およびスキュー補正動作について詳細に説明する。なお、この図は、(a)に示すように、LPH14を構成するSLED63のうち、Chip1〜Chip11までを示している。また、図中の横軸はLPH14を構成する各LEDのドット番号であり、縦軸は時間(タイミング)であり、下側が遅れを示している。
【0102】
今、(b)に示すように、IPS40よりChip1〜Chip60(図中ではChip1〜Chip11)の全LEDを点灯させる画像データが入力されたとする。すると、千鳥配列補正部111では、(c)に示すように、偶数番目のSLEDチップ(Chip2、Chip4、…)に対する画像データの出力タイミングを、奇数番目のSLEDチップ(Chip1、Chip3、…)よりも所定時間だけ遅らせる千鳥配列補正を行って、千鳥補正済みの画像データを出力する。
【0103】
次いで、スキュー補正部112では、千鳥配列補正部111から送られてくる千鳥補正済みの画像データに対し、スキュー補正を施す。ここで、(d)は、表1に示す修正前の分割位置X1〜X47を用いてスキュー補正を施した際の出力画像データ(スキュー補正後の画像データ)を示している。また、(e)は、表3に示す修正後の分割位置X1〜X47を用いてスキュー補正を施した際の出力画像データ(スキュー補正後の画像データ)を示している。
(d)では、Chip5およびChip6のLEDアレイ端部境界とブロック分割位置X4とが一致し、また、Chip10およびChip11のLEDアレイ端部境界とブロック分割位置X8とが一致している。一方、(e)では、上述した手順でスキュー補正値に修正を施すことで、分割位置X4を64ドット分だけ上流側にシフトさせている。ただし、分割位置X8はChip10およびChip11のLEDアレイ端部境界からシフトさせていない。
【0104】
例えばチップ間ずれ量Yが0以上となっているチップ間位置W(LEDアレイ境界位置)が分割位置に一致している場合(この例ではW=5、15、25、30、35、40、55)、このLEDアレイ境界位置で形成される静電潜像(トナー像)は、必ず副走査方向に1ライン以上ずれる。すなわち、筋が目立ちやすい方向になる。この場合に、分割位置を例えば64ドットだけ上流側にシフトさせれば、新たな分割位置において形成される静電潜像(トナー像)の副走査方向ずれ量は1ライン分で済むことになる。そこで、本実施の形態では、チップ間ずれ量Yが0以上となっているチップ間位置W(LEDアレイ境界位置)が分割位置に一致している場合は、分割位置をシフトさせるようにしている。
【0105】
一方、例えばチップ間ずれ量Yが0より小さいチップ間位置W(LEDアレイ境界位置)が分割位置に一致している場合(この例ではW=10、20、45、50)、このLEDアレイ境界位置で形成される静電潜像(トナー像)は、必ず副走査方向のずれ量が1ライン未満に収まる。すなわち、筋が目立ちにくい方向になる。この場合に、分割位置を例えば64ドットだけ上流側にシフトさせると、新たな分割位置において形成される静電潜像(トナー像)の副走査方向ずれ量は1ライン分となってしまう。つまり、分割位置をシフトさせない方が副走査方向ずれ量が少なくて済むことになる。そこで、本実施の形態では、チップ間ずれ量Yが0より小さい(負の値となっている)チップ間位置Wが分割位置に一致している場合は、分割位置をシフトさせず、そのままとしている。
【0106】
なお、本実施の形態では、LEDアレイ端部境界とスキュー補正におけるブロックの分割位置とが一致しているときにのみブロックの分割位置をシフトさせるか否かを判断していたが、LEDアレイ端部境界の近傍にブロックの分割位置が設定された場合にも、筋が目立つ懸念がある。そこで、例えばLEDアレイ端部境界の近傍(例えば10ドット程度)にブロックの分割位置が設定された場合にも、ブロック部の分割位置をシフトさせるか否かを判断することが好ましい。
【0107】
また、実施の形態1、2では、感光体ドラム12とLPH14とが相対的に傾斜している場合に施されるスキュー補正について説明を行ったが、これに限られるものではない。この手法は、例えば感光体ドラム12に対してLPH14が湾曲配置されることによって生じるボウの補正にも適用することができる。ただし、この場合は、各SLED63(Chip1〜Chip60)を用いた静電潜像(トナー像)を、図12のステップ101で作成するスキュー補正用画像とし、この読み取り結果に基づいて各SLED63の副走査方向ずれ量を把握する必要がある。そして、得られた各SLED63の副走査方向ずれ量に基づいて各SLED63のボウ補正量(ブロック分割数、ブロックの分割位置)を求め、各ブロックの分割位置がLEDアレイ端部位置と一致しないように修正を施せばよい。
【0108】
さらに、実施の形態1、2では、記録素子としてLEDを用いたLPH14を例に説明を行ったが、これに限られるものではなく、例えば液晶シャッタや有機EL素子等の点灯素子を用いたプリントヘッドにも適用することができる。また、他にも、例えば記録素子としてのインク吐出素子を用いたインクジェット用のプリントヘッドにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本実施の形態が適用されるLEDプリントヘッド(LPH)を搭載した画像形成装置の全体構成を示した図である。
【図2】LPHの構成を示した図である。
【図3】LED回路基板の平面図である。
【図4】各SLEDチップの連結部を説明する図である。
【図5】LED回路基板上に形成されている配線図を示した図である。
【図6】SLEDチップ(SLED)の構成を説明するための回路図である。
【図7】画像形成動作におけるLPHの駆動(点灯動作)を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】点灯信号発生部の構成を説明する図である。
【図9】(a)〜(c)は感光体ドラムに対するLPHの装着状態とそのときに形成される静電潜像との関係を説明するための図である。
【図10】(a)〜(c)はスキュー補正におけるブロックの分割位置と、LEDアレイ端部位置とが一致した場合の問題点を説明するための図である。
【図11】スキュー補正値設定部の構成を説明するための図である。
【図12】スキュー補正値の設定プロセスを説明するためのフローチャートである。
【図13】中間転写ベルト上に形成されるスキュー補正用画像としての第一のトナー像および第二のトナー像を説明するための図である。
【図14】点灯信号発生部における画像補正データの千鳥補正動作およびスキュー補正動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図15】(a)は分割位置修正前のスキュー補正値を使用して形成したハーフトーン画像の濃度分布を示すグラフ図であり、(b)は分割位置修正後のスキュー補正値を使用して形成したハーフトーン画像の濃度分布を示すグラフ図である。
【図16】(a)〜(c)は、実施の形態2における各SLEDチップの連結部およびその副走査方向の位置ずれを説明する図である。
【図17】(a)〜(c)は、実施の形態2のスキュー補正におけるブロックの分割位置と、LEDアレイ端部位置とが一致した場合の問題点を説明するための図である。
【図18】実施の形態2におけるスキュー補正値の設定プロセスを説明するためのフローチャートである。
【図19】実施の形態2の点灯信号発生部における画像補正データの千鳥補正動作およびスキュー補正動作を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0110】
1…デジタルカラープリンタ、10…画像形成プロセス部、12…感光体ドラム、13…帯電器、14…LPH、15…現像器、21…中間転写ベルト、26…画像センサ、30…制御部、40…IPS(画像処理部)、63…SLED、100…信号発生回路、110…点灯信号発生部、111…千鳥配列補正部、112…スキュー補正部、113…点灯時間計算部、114…シリアルパラレル変換部、115(115_1〜115_60)…パルス発生器 、130…転送信号発生部、140…スキュー補正値設定部、141…スキュー
量演算部、142…スキュー補正値演算部、143…スキュー補正値修正部、X1〜Xn…分割位置、T1…第一のトナー像、T2…第二のトナー像
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置等で用いられるプリントヘッドに係り、より詳しくは、複数の記録素子を並べて構成された記録チップを、複数配列してなるプリントヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた複写機、プリンタ等の画像形成装置では、まず、例えばドラム状に形成された感光体(感光体ドラム)の表面が帯電装置によって一様に帯電される。帯電された感光体ドラムは、画像データに基づいて制御された露光装置により露光され、その表面に静電潜像が形成される。続いて、感光体上に形成された静電潜像は現像装置により可視像(トナー像)化される。その後、トナー像は感光体の回転に伴って転写部まで搬送されて、記録紙上に静電転写される。そして、記録紙上に担持されたトナー像には定着処理が施されて、永久像となる。
【0003】
このような画像形成装置で用いられる露光装置としては、従来よりレーザダイオードとポリゴンミラーとを組み合わせて、主走査方向にレーザ光を走査露光するレーザ光走査装置(ROS:Raster Output Scanner)が用いられてきた。しかし、近年では、装置の小型化の要請等から、多数のLED(発光ダイオード:Light Emitting Diode)を主走査方向に配列して構成されたLEDプリントヘッド(LPH:LED Print Head)を用いた露光装置も採用されてきている。
【0004】
LPHは、多数のLEDをライン状に配列したLEDチップを、主走査方向に複数配置してなるLEDアレイを備えている(特許文献1参照)。また、LPHは、通常、各LEDから出力された光を感光体表面に結像させるために多数のロッドレンズが配列されたロッドレンズアレイも備えている。画像形成装置では、入力されてくる画像データに基づいてLPHの各LEDを駆動させることにより、感光体へ向けて光を出力し、ロッドレンズアレイによって感光体表面に光を結像させる。これにより、感光体上に主走査方向1ライン分の静電潜像を形成する。そして、感光体を回転させることで感光体ドラムとLPHとが相対移動することにより、感光体の副走査方向に静電潜像を形成する。
【0005】
ところで、このような画像形成装置では、ROSやLPHから照射される主走査方向1ライン分の照射光が、感光体の軸方向と略平行になっていないと、感光体ドラム上に形成される静電潜像に歪みが生じる。例えば、主走査方向1ライン分の照射光が感光体の軸方向に対して斜めになっていると、主走査方向に平行な直線画像を形成しようとした場合、実際に形成される静電潜像は副走査方向に傾斜したものになる。また、主走査方向1ライン分の照射光が感光体の軸方向に対して湾曲した弓状となっていると、主走査方向に平行な直線画像を形成しようとした場合に、実際に形成される静電潜像は副走査方向に湾曲したものになる。このように感光体上の静電潜像に副走査方向の歪みが生じると、当然、静電潜像を現像して形成されるトナー像にも副走査方向の歪みが生じることになってしまう。なお、以下の説明では、前者に起因する副走査方向の歪みをスキュー(skew)と呼び、後者に起因する副走査方向の歪みをボウ(bow)と呼ぶことにする。
【0006】
このような問題に対し、ROSを用いた露光装置において、主走査方向1ライン分の画像データを複数のブロックに分割し、分割されたブロック毎に画像データを副走査にシフト、すなわち画像データを並び替えたり、照射タイミングを変えることにより副走査方向のずれを補正する技術が提案されている(特許文献2参照)。なお、この特許文献2では、まず、無調整のROSを用いてテストパターンの出力を行い、出力されたテストパターンの読み取り結果に基づいて主走査方向1ライン分の照射光の副走査方向ずれ量を検知する。そして、副走査方向ずれ量の検知結果に基づいて、主走査方向に分割するブロック数および各ブロックにおける画像データのシフト方向または照射タイミングのずらし方向(副走査方向上流側、副走査方向下流側)を決定する。そして、実際の画像形成時には、分割されたブロック毎に、それぞれに設定された照射タイミングで光照射を行う。特許文献2では、このような補正を行うことで、副走査方向の歪みすなわちスキューやボウによる歪みを目立ちにくくしている。
【0007】
【特許文献1】特開平6−218985号公報(第4頁、図5)
【特許文献2】特開平4−317247号公報(第5頁、図6、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1のLPHに対し、上記特許文献2に記載される手法を適用して副走査方向の歪み(スキューやボウ)の補正を行った場合、次のような問題が生じた。すなわち、補正後のLPHを装着した画像形成装置を用いてハーフトーン画像を出力した際に、出力されるハーフトーン画像中に副走査方向に沿って延びる筋が発生した。
【0009】
本発明は、かかる技術的課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、複数の記録素子を並べて構成された記録チップを、複数配列してなるプリントヘッドを用いた場合に、副走査方向に発生する筋を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題に対し、本発明者が鋭意検討を行ったところ、上述したハーフトーン画像中の筋は、常時発生するものではないことが判明した。これを具体的に説明すると、同一のLPHを用いた場合であっても、感光体に対する取り付け角度を異ならせると、副走査方向の歪みを補正した後に出力したハーフトーン画像中に筋が発生する場合と発生しない場合とが存在することがわかった。これをさらに詳細に検討したところ、副走査方向の歪みを補正するために分割されたブロックの分割位置と、LEDアレイを構成する各LEDチップの境界位置とが一致あるいは近づいた場合に、このような筋が発生しやすいことが判明した。なお、このような筋は、副走査方向に画像データを並べ替える際、画像シフト量の分解能を上げれば上げるほど発生しにくくなるが、その分、並び替えの演算に必要なメモリを必要とし、コスト高になってしまうという問題がある。そこで、本発明者は、各LEDチップの境界位置に対しブロックの分割位置を主走査方向にずらすことにより、このような筋の発生を容易に抑制できることを見出し、本発明を案出するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、主走査方向に複数の記録素子が配列された記録チップを、主走査方向に複数配列してなる記録素子アレイと、主走査方向に設定された所定のブロック毎に、副走査方向に画像データをシフトさせることにより、副走査方向ずれを補正する副走査方向ずれ補正部とを備えたプリントヘッドにおいて、副走査方向ずれ補正部は、隣接する記録チップにおける記録素子同士の境界位置に対し分割位置をずらして設定可能なブロックを用いて、記録マークの副走査方向ずれを補正することを特徴としている。ここで、「副走査方向に画像データをシフトさせる」ことには、画像データの並べ替えを行うことや、記録素子アレイを構成する各記録素子に対する記録信号の供給タイミングを変えるといった概念を含んでいる。
【0012】
このようなプリントヘッドにおいて、副走査方向ずれ補正部は、異なる主走査方向長さとなるように設定されたブロックを用いて、記録マークの副走査方向ずれを補正することができる。また、記録素子アレイを構成する記録チップが千鳥状に配列される場合に、記録素子アレイを構成する各記録チップに対する記録信号の供給タイミングを、所定の記録チップ列を基準として記録チップ列毎に変えることにより、記録素子アレイによって記録される記録マークの副走査方向ずれを補正する千鳥配列補正部をさらに含むことができる。そして、分割位置を設定する設定部と、設定部にて設定された分割位置と隣接する記録チップ同士の境界位置とが一致する場合に、分割位置を境界位置から移動させる修正部とをさらに含むことができる。ここで、修正部は、分割位置と境界位置とが一致する場合であって、境界位置に対応する記録チップ同士の副走査方向の位置ずれが境界位置にて記録素子により記録される像の副走査方向ずれを打ち消す方向である場合に、分割位置を境界位置から移動させないことができる。
【0013】
また、他の観点から捉えると、本発明は、主走査方向に複数の記録素子が配列された記録チップを、主走査方向に複数配列してなる記録素子アレイと、記録素子アレイを構成する記録チップの配置に起因する副走査方向ずれを、各記録素子に対する記録信号の供給タイミングを調整することによって補正する第一の副走査方向ずれ補正部と、記録素子アレイを構成する記録チップの配置以外に起因する副走査方向ずれを、副走査方向に画像データをシフトさせることによって補正する第二の副走査方向ずれ補正部とを含み、第一の副走査方向ずれ補正部は、隣接する記録チップにおける記録素子の境界位置から隣接する境界位置までを1ブロックとして、各記録素子に対する記録信号の供給タイミングを調整し、第二の副走査方向ずれ補正部は、境界位置から主走査方向にシフトした位置に設定される分割位置から隣接する分割位置までを1ブロックとして、副走査方向に画像データをシフトさせることを特徴としている。
【0014】
このようなプリントヘッドにおいて、複数の記録チップが千鳥状に配列される場合に、第一の副走査方向ずれ補正部は、記録チップの千鳥配列補正を行うことができる。また、第二の副走査方向ずれ補正部は、被記録体に対し記録素子アレイが傾斜配置されることにより生じるスキュー、あるいは、被記録体に対し記録素子アレイが湾曲配置されることにより生じるボウを補正することができる。
【0015】
さらに、本発明を方法のカテゴリから捉えると、本発明は、主走査方向に複数の記録素子が配列された記録チップを、主走査方向に複数配列してなる記録素子アレイを備えたプリントヘッドにおける副走査方向ずれ補正値の設定方法であって、記録素子アレイによって記録される記録マークの副走査方向ずれ量を取得するステップと、取得された副走査方向ずれ量に基づき、記録素子アレイにおける主走査方向のブロックの分割数および各ブロックの分割位置を演算するステップと、演算により求められた分割位置が隣接する記録チップにおける記録素子の境界位置と一致する場合に、分割位置を境界位置に対して主走査方向にシフトさせるステップとを含んでいる。
【0016】
このような方法において、記録マークの副走査方向ずれ量を取得するステップでは、記録素子アレイを用いて、記録材上に記録マークを形成し、記録材上に形成された記録マークを読み取り、記録マークの読み取り結果に基づき、記録マークにおける副走査方向ずれ量を取得することができる。また、シフトさせるステップの後、分割位置をメモリに格納するステップをさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、記録チップにおける境界位置に対して副走査方向ずれ補正におけるブロックの分割位置を主走査方向にずらすようにしたので、副走査方向に発生する筋を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)について詳細に説明する。
<実施の形態1>
図1は本実施の形態が適用されるプリントヘッドを備えた画像形成装置の全体構成を示した図である。図1に示す画像形成装置は、所謂タンデム型のデジタルカラープリンタ1である。この画像形成装置は、画像形成プロセス部10、制御部30、および画像処理部(IPS:Image Processing System)40を備えている。これらのうち、画像形成プロセス部10は、各色の画像データに対応して画像形成を行う。また、制御部30は、画像形成プロセス部10の動作を制御する。さらに、IPS40は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)2や画像読取装置(IIT)3に接続され、これらから受信された画像データに対して所定の画像処理を施して画像形成プロセス部10に出力する。
【0019】
画像形成プロセス部10は、一定の間隔を置いて並列的に配置される4つの画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kを備えている。画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kは、感光体ドラム12、帯電器13、LEDプリントヘッド(LPH)14、現像器15、およびクリーナ16を備える。ここで、感光体ドラム12は、静電潜像を形成するとともにトナー像を担持する。また、帯電器13は、感光体ドラム12の表面を所定電位で一様に帯電する。LPH14は、帯電器13によって帯電された感光体ドラム12を露光して静電潜像を形成する。現像器15は、LPH14によって得られた静電潜像をトナーで現像する。クリーナ16は、一次転写後の感光体ドラム12表面を清掃する。ここで、各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kは、現像器15に収納されたトナーを除いて、略同様に構成されている。そして、画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kは、それぞれがイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー像を形成する。
また、画像形成プロセス部10は、中間転写ベルト21、一次転写ロール22、二次転写ロール23、定着器25、そして画像センサ26を備えている。中間転写ベルト21には、各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kの感光体ドラム12にて形成された各色のトナー像が多重転写される。転写器としての一次転写ロール22は、各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kの各色トナー像を中間転写ベルト21に順次転写(一次転写)させる。二次転写ロール23は、中間転写ベルト21上に転写された重畳トナー像を記録材である用紙Pに一括転写(二次転写)させる。定着器25は、二次転写された画像を用紙P上に定着させる。画像センサ26は、黒の画像形成ユニット11Kよりも中間転写ベルト21の移動方向下流側に、中間転写ベルト21のトナー像担持面に対向して取り付けられる。この画像センサ26は、例えば反射型光センサ等で構成されており、中間転写ベルト21上に一次転写されたトナー像の濃度やその形成位置などを検出する機能を有している。
【0020】
では、このデジタルカラープリンタ1における画像形成動作について説明する。このデジタルカラープリンタ1において、画像形成プロセス部10は、制御部30から供給された同期信号等の制御信号に基づいて画像形成動作を行う。その際に、PC2やIIT3から入力された画像データは、画像処理部40によって画像処理が施され、インタフェースを介して各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kに供給される。そして、例えばイエローの画像形成ユニット11Yでは、帯電器13により所定電位で一様に帯電された感光体ドラム12の表面が、画像処理部40から得られた画像データに基づいて発光するLPH14により露光されて、感光体ドラム12上に静電潜像が形成される。形成された静電潜像は現像器15により現像され、感光体ドラム12上にはイエローのトナー像が形成される。同様に、他の画像形成ユニット11M,11C,11Kにおいても、マゼンタ、シアン、黒の各色トナー像が形成される。
【0021】
各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kで形成された各色トナー像は、図1の矢印A方向に回動する中間転写ベルト21上に、一次転写ロール22により順次静電吸引される。その結果、中間転写ベルト21上には重畳されたトナー像が形成される。形成された重畳トナー像は、中間転写ベルト21の移動に伴って二次転写ロール23が配設された領域(二次転写部)に搬送される。重畳トナー像が二次転写部に搬送されると、トナー像が二次転写部に搬送されるタイミングに合わせて用紙Pが二次転写部に供給される。そして、二次転写部にて二次転写ロール23により形成される転写電界により、重畳トナー像は搬送されてきた用紙P上に一括して静電転写される。
その後、重畳トナー像が静電転写された用紙Pは、中間転写ベルト21から剥離され、搬送ベルト24により定着器25まで搬送される。定着器25に搬送された用紙P上の未定着トナー像は、定着器25によって熱および圧力による定着処理を受けることで用紙P上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Pは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙載置部(図示せず)に搬送される。
【0022】
では次に、この画像形成装置で用いられるLPH14について詳細に説明する。
図2は、LEDプリントヘッド(LPH)14の構成を示した図である。LPH14は、ハウジング61、LED回路基板62、自己走査型LEDアレイ(Self-Scanning Light Emitting Device:SLED)63を備える。またLPH14は、ロッドレンズアレイ64、ホルダ65、および板バネ66をさらに備える。これらのうち、ハウジング61は、LPH14の支持体として機能する。また、LED回路基板62は、SLED63やSLED63を駆動する駆動回路等を搭載する。さらに、SLED63は、発光することにより感光体ドラム12を露光する。ロッドレンズアレイ64は、SLED63からの光を感光体ドラム12表面に結像させる。さらにまた、ホルダ65は、ロッドレンズアレイ64を支持するとともにSLED63を外部から遮蔽する。そして板バネ66は、ハウジング61をロッドレンズアレイ64方向に付勢する。
【0023】
ハウジング61は、アルミニウム、SUS等のブロックまたは板金で形成され、LED回路基板62を支持している。また、ホルダ65は、ハウジング61およびロッドレンズアレイ64を支持し、SLED63の発光点とロッドレンズアレイ64の焦点とが一致するように設定している。さらに、ホルダ65はSLED63を密閉するように構成されている。そのため、SLED63に外部からゴミが付着することを防ぐことができる。一方、板バネ66は、SLED63およびロッドレンズアレイ64の位置関係を保持するように、ハウジング61を介してLED回路基板62をロッドレンズアレイ64方向に付勢している。
このように構成されたLPH14は、調整ネジ(図示せず)によってロッドレンズアレイ64の光軸方向に移動可能に構成され、ロッドレンズアレイ64の結像位置(焦点面)が感光体ドラム12表面上に位置するように調整される。
【0024】
図3は、図2に示すLED回路基板62の平面図を示している。LED回路基板62には、記録チップとしての60個のSLEDチップ(Chip1〜Chip60)からなるSLED63が、感光体ドラム12の軸線方向と平行になるように精度良く列状に配置されている。ここで、図4は、各LEDチップの連結部を拡大したものである。図4に示すように、各SLEDチップ(Chip1〜Chip60)の端部では、LEDアレイの端部境界が主走査方向に連続的に配置されるように構成されている。すなわち、各LEDチップ(Chip1〜Chip58)は、千鳥状に配列されている。なお、図4では、一例としてChip1、Chip2およびChip3の連結部を示している。
【0025】
そして、本実施の形態に係るLPH14では、各SLEDチップ(Chip1〜Chip60)にそれぞれ記録素子としての256個のLEDが搭載されている。したがって、60個のSLEDチップを有するSLED63全体では、15360個のLEDが設けられることになる。また、SLEDチップChip1の外側端部からSLEDチップChip60の外側端部までの距離(LEDアレイの主走査方向長さ)は、A3SEFの用紙Pへの画像形成に対応するために324mmに設定される。このため、隣接するLEDの間隔は約21.15μmに設定され、このLPH14の主走査方向の出力解像度は略1200dpi(dot per inch)となる。なお、このLPH14の副走査方向の出力解像度は略2400dpiである。ここで、副走査方向の出力解像度は感光体ドラム12の副走査方向の移動速度によって決まるものであり、適宜設定変更することができる。
【0026】
また、LED回路基板62には、信号発生回路100およびレベルシフト回路104が設けられている。さらに、LED回路基板62には、出力電圧を安定化させるための3端子レギュレータからなる電源回路101、SLED63における光量補正値データやLPH14のスキュー補正値等を記憶するEEPROM102、およびデジタルカラープリンタ1本体との間で信号の送受信を行うハーネス103が備えられている。
【0027】
図5は、信号発生回路100の構成およびLED回路基板62の配線構成を示した図である。図5に示すように、信号発生回路100は、各LEDチップ(Chip1〜Chip60)に対して点灯信号ΦI(ΦI1〜ΦI60)を出力する点灯信号発生部110を備えている。また、信号発生回路100は、各LEDチップ(Chip1〜Chip60)を六組(10チップ毎)に分け、それぞれの組に対して転送信号CK1(CK1_1〜CK1_6)および転送信号CK2(CK2_1〜CK2_6)を出力する転送信号発生部130を備えている。
【0028】
また、LED回路基板62上には、各SLEDチップ(Chip1〜Chip60)に電力を供給するVcc=+3.3Vの電源ライン105および接地(GND)された電源ライン106が設けられている。また、信号発生回路100から各SLEDチップ(Chip1〜Chip60)に対して点灯信号ΦI(ΦI1〜ΦI60)を送信する信号ライン107(107_1〜107_60)も設けられている。さらに、転送信号CK1(CK1_1〜1_6)を送信する信号ライン108(108_1〜108_6)も設けられている。さらにまた、転送信号CK2(CK2_1〜2_6)を送信する信号ライン109(109_1〜109_6)も設けられている。
そして、各SLEDチップ(Chip1〜Chip60)には、信号ライン107を介して、Chip1〜Chip60に対する点灯信号ΦI(ΦI1〜ΦI60)が入力される。また、信号ライン108を介して転送信号CK1(CK1_1〜1_6)が、信号ライン109を介して転送信号CK2(CK2_1〜2_6)が、それぞれChip1〜Chip60に入力される。
【0029】
続いて、SLED63の回路構成を説明する。
図6は、SLED63の回路構成を説明する図である。本実施の形態のSLED63は、レベルシフト回路104を介して信号発生回路100に接続されている。レベルシフト回路104は、抵抗R1BとコンデンサC1、および抵抗R2BとコンデンサC2がそれぞれ並列に配置された構成を有し、それぞれの一端がSLED63の入力端子に接続され、他端が信号発生回路100(転送信号発生部130)の出力端子に接続されている。そして、信号発生回路100(転送信号発生部130)から出力される転送信号CK1R,CK1Cおよび転送信号CK2R,CK2Cに基づいて、転送信号CK1および転送信号CK2をSLED63に出力するように構成されている。
なお、本実施の形態のSLED63には、58個のSLEDチップが直列に配列されているが、図6では、1つのSLEDチップだけを示している。そして、以下の説明では、便宜上SLEDチップをSLED63と称することとする。
【0030】
図6に示したように、SLED63は、スイッチ素子としての128個のサイリスタS1〜S128、点灯素子としての128個のLED L1〜L128、128個のダイオードD1〜D128、128個の抵抗R1〜R128、さらには信号ラインに過剰な電流が流れるのを防止する転送電流制限抵抗R1A、R2Aで構成されている。
なお、ここでは、LED L1〜L128への電流の供給を制御するサイリスタS1〜S128とダイオードD1〜D128とで主に構成される部分を転送部と呼ぶ。
【0031】
本実施の形態のSLED63では、各サイリスタS1〜S128のアノード端子(入力端)A1〜A128は電源ライン105に接続されている。この電源ライン105には電源電圧Vcc(Vcc=+3.3V)が供給される。
奇数番目サイリスタS1、S3、…、S127のカソード端子(出力端)K1、K3、…、K127には、信号発生回路100からレベルシフト回路104および転送電流制限抵抗R1Aを介して転送信号CK1が送信される。
また、偶数番目のサイリスタS2、S4、…、S128のカソード端子(出力端)K2、K4、…、K128には、信号発生回路100からレベルシフト回路104および転送電流制限抵抗R2Aを介して転送信号CK2が送信される。
【0032】
一方、各サイリスタS1〜S128のゲート端子(制御端)G1〜G128は、各サイリスタS1〜S128に対応して設けられた抵抗R1〜R128を介して電源ライン106に各々接続されている。なお、電源ライン106は接地(GND)されている。
また、各サイリスタS1〜S128のゲート端子G1〜G128と、各サイリスタS1〜S128に対応して設けられたLED L1〜L128のゲート端子とは各々接続される。
さらに、各サイリスタS1〜S128のゲート端子G1〜G128には、ダイオードD1〜D128のカソード端子が接続されている。そして、サイリスタS1〜S127のゲート端子G1〜G127には、次段のダイオードD2〜D128のアノード端子に各々接続されている。すなわち、各ダイオードD1〜D128はゲート端子G1〜G127を挟んで直列接続されている。
ダイオードD1のアノード端子は転送電流制限抵抗R2Aおよびレベルシフト回路104を介して信号発生回路100に接続され、転送信号CK2が送信される。また、LEDL1〜L128のカソード端子は、駆動電流設定抵抗RIDを介して信号発生回路100(点灯信号発生部110)に接続されて、点灯信号ΦIが送信される。
【0033】
さらには、SLED63には、転送部においてサイリスタS1〜S128およびダイオードD1〜D128を覆うように遮光マスク50を配置している。これは、画像形成動作中に、オン状態にあって電流が流れている状態におけるサイリスタS1〜S128や、電流が流れている状態におけるダイオードD1〜D128からの発光を遮断し、不要光が感光体ドラム12を露光することを抑制するために設けられている。
【0034】
次に、信号発生回路100およびレベルシフト回路104から出力されるSLED63を駆動する信号(駆動信号)について説明する。
図7は、信号発生回路100およびレベルシフト回路104から出力される駆動信号を示すタイミングチャートである。なお、図7に示すタイミングチャートでは、すべてのLEDが光書き込みを行う(発光する)場合について表記している。
(1)まず、画像形成装置から信号発生回路100にリセット信号(RST)が入力されることによって、信号発生回路100では、転送信号CK1Cをハイレベル(以下、「H」と記す。)、転送信号CK1Rを「H」として、転送信号CK1が「H」に設定され、また、転送信号CK2Cをローレベル(以下、「L」と記す。)、転送信号CK2Rを「L」として、転送信号CK2がローレベル(「L」)に設定されて、すべてのサイリスタS1〜S128がオフの状態に設定される(図7(a))。
(2)リセット信号(RST)に続いて、信号発生回路100から出力されるライン同期信号Lsyncが「H」になり(図7(A))、SLED63の動作を開始する。そして、このライン同期信号Lsyncに同期して、図7(E)、(F)、(G)に示すように、転送信号CK2Cおよび転送信号CK2Rを「H」として、転送信号CK2を「H」とする(図7(b))。
(3)次に、図7(C)に示すように、転送信号CK1Rを「L」にする(図7(c))。
【0035】
(4)これに続いて、図7(B)に示すように、転送信号CK1Cを「L」にする(図7(d))。
この状態においては、サイリスタS1のゲート電流が流れ始める。その際に、信号発生回路100のトライステートバッファB1Rをハイインピーダンス(Hiz)にすることで、電流の逆流防止を行う。
その後、サイリスタS1のゲート電流により、サイリスタS1がオンし始め、ゲート電流が徐々に上昇する。それとともに、レベルシフト回路104のコンデンサC1に電流が流れ込むことで、転送信号CK1の電位も徐々に上昇する。
【0036】
(5)所定時間(転送信号CK1電位がGND近傍になる時間)の経過後、信号発生回路100のトライステートバッファB1Rを「L」にする(図7(e))。そうすると、ゲートG1電位が上昇することによって信号ラインΦ1電位の上昇および転送信号CK1電位の上昇が生じ、それに伴いレベルシフト回路104の抵抗R1B側に電流が流れ始める。その一方で、転送信号CK1電位が上昇するのに従い、レベルシフト回路104のコンデンサC1に流れ込む電流は徐々に減少する。
そして、サイリスタS1が完全にオンし、定常状態になると、サイリスタS1のオン状態を保持するための電流がレベルシフト回路104の抵抗R1Bに流れるが、コンデンサC1には流れない。
なお、このとき、図7(B)に示すように、信号発生回路100のトライステートバッファB1Cをハイインピーダンス(Hiz)に設定する(図7(e))。
【0037】
(6)サイリスタS1が完全にオンした状態で、図7(H)に示すように、点灯信号ΦIを「L」にする(図7(f))。このとき、ゲートG1電位>ゲートG2電位であるため、サイリスタ構造のLED L1のほうが早くオンし、点灯する。LED L1がオンするのに伴って、信号ラインΦ1の電位が上昇するため、LED L2以降のLEDはオンすることはない。すなわち、LED L1、L2、L3、L4、…は、最もゲート電圧の高いLED L1のみがオン(点灯)することになる。
【0038】
(7)次に、図7(F)に示すように、転送信号CK2Rを「L」にすると(図7(g))、図7(c)の場合と同様に電流が流れ、レベルシフト回路104のコンデンサC2の両端に電圧が発生する。
(8)図7(E)に示すように、この状態で転送信号CK2Cを「L」にすると(図7(h))、サイリスタスイッチS2がターンオンする。
(9)そして、図7(B)、(C)に示すように、転送信号CK1C、CK1Rを同時に「H」にすると(図7(i))、サイリスタスイッチS1はターンオフし、抵抗R1を通って放電することによってゲートG1電位は除々に下降する。その際、サイリスタスイッチS2は完全にオンする。したがって、点灯信号端子IDからの画像データに対応した点灯信号ΦIを「L」/「H」することで、LED L2を点灯/非点灯させることが可能となる。
なお、この場合ゲートG1の電位はすでにゲートG2の電位より低くなっているため、LED L1がオンすることはない。
【0039】
(10)上記した動作を順次行い、LED L1〜L128を順次点灯させる。
そして、終端のLED L128が消灯した図7中の「転送動作期間」の後においては
、転送信号CK1C、CK1Rを「H」として転送信号CK1を「H」とし、さらに転送信号CK2C、CK2Rを「H」として転送信号CK2を「H」として、転送信号CK1および転送信号CK2を共に所定の時間だけ「H」の状態に保つ(図7中、「転送サイリスタをオフ」)。これによって、すべてのサイリスタS1〜S128がオフする。したがって、この状態においては、すべてのサイリスタS1〜S128に電流が流れることはないので、サイリスタS1〜S128は消灯(非点灯)の状態に保持される。
【0040】
(11)さらに、転送信号CK1、CK2を共に所定の時間だけ「H」の状態に保った後、転送信号CK2C、CK2Rを「L」として転送信号CK2を「L」とする(図7中、「転送部に電流を流さない期間」)。これによって、ダイオードD1〜D128にも電流が流れることがないので、すべてのダイオードD1〜D128も非点灯の状態が保持される。
それにより、点灯信号ΦIが出力されて画像形成が終了した後の、感光体ドラム12(図1参照)が回転を停止した状態を含んだ非定常動作時においては、SLED63の転送部に対して電流が印加されない。そのため、感光体12が回転を停止している状態では、LED L1〜L128とともに、転送部に配置されたサイリスタS1〜S128およびダイオードD1〜D128にも電流が流れることはなく、サイリスタS1〜S128およびダイオードD1〜D128から光が出射されることがないので、感光体ドラム12が不要に露光されることが抑えられている。
【0041】
続いて、図8を参照しながら、信号発生回路100における点灯信号発生部110の構成を詳細に説明する。点灯信号発生部110には、IPS40から送られてくる画像データおよび制御部30から送られてくるライン同期信号Lsyncが入力される。また、点灯信号発生部110には、EEPROM102から、各LEDに対応する光量補正値データやLPH14のスキュー補正値も入力される。一方、点灯信号発生部110は、LPH14を構成する60個のSLED63(Chip1〜Chip60)に点灯信号ΦI1〜ΦI60を出力している。
【0042】
図8に示すように、点灯信号発生部110は、千鳥配列補正部111、スキュー補正部112、点灯時間計算部113、シリアルパラレル変換部114、パルス発生器115(115_1〜115_60)を備えている。
第一の副走査方向ずれ補正部としての千鳥配列補正部111には、IPS40から画像データが入力される。そして、千鳥配列補正部111は、IPS40から入力されてくる画像データをSLED63毎(256ドット毎のデータ群)に分けている。そして、千鳥配列補正部111は、奇数番目のSLED63(Chip1、Chip3、…、Chip59)に対応するデータ群および偶数番目のSLED63(Chip2、Chip4、…、Chip60)に対応するデータ群の出力タイミングを異ならせて、スキュー補正部112に出力している。具体的には、副走査方向下流側に配置される偶数番目のSLED63の発光タイミングが、副走査方向上流側に配置される奇数番目のSLED63の発光タイミングよりも所定時間だけ遅れるように設定を行う。これにより、奇数番目のSLED63により感光体ドラム12上に形成される静電潜像と偶数番目のSLED63により感光体ドラム12上に形成される静電潜像との位置を合わせることが可能になる。
【0043】
第二の副走査方向ずれ補正部としてのスキュー補正部112には、EEPROM102から送られてくるスキュー補正値が入力される。また、スキュー補正部112には、千鳥配列補正部111より千鳥配列補正済みの画像データも入力される。そして、スキュー補正部112は、千鳥配列補正済みの画像データに、スキュー補正を施して点灯時間計算部113に出力している。なお、スキュー補正部112の詳細およびスキュー補正部112で用いられるスキュー補正値の詳細については後述する。
【0044】
点灯時間計算部113には、制御部30から送られてくるライン同期信号LsyncおよびEEPROM102から送られてくる光量補正値データが入力される。また、点灯時間計算部113には、スキュー補正部112より千鳥配列補正済み且つスキュー補正済み画像データ(以下、単にスキュー補正済みの画像データと呼ぶ)も入力される。この光量補正値データは、LPH14を構成する15360個のLEDのそれぞれに対応して設定されている。点灯時間計算部112は、ライン同期信号Lsyncに同期しつつ、スキュー補正部112から送られてくるスキュー補正済みの画像データと、EEPROM102から読み出された各LEDの光量補正値とを用いて、各LEDの点灯時間(点灯クロック数)を計算する。より具体的に説明すると、点灯時間計算部113は、スキュー補正済みの画像データに光量補正値を加味して、光量補正値の大きさに比例して点灯時間が長くなるよう、該当するLEDの点灯クロック数を計算する。
【0045】
シリアルパラレル変換部114は、点灯時間計算部113において計算された各LEDに対する点灯クロック数をパラレルデータに変換する。またパルス発生器115(115_1〜115_60)は、シリアルパラレル変換部114にてパラレル変換された各信号に対し、パルス幅変調にて光量を変えて各点灯信号ΦI1〜ΦI60を発生する。そして、パルス発生器115(115_1〜115_60)は、発生した各点灯信号ΦI1〜ΦI60を、LPH14のSLED63(Chip1〜Chip60)にそれぞれ出力する。これにより、LPH14の各SLED63では、点灯対象となるLEDが、それぞれ設定された点灯時間だけ点灯することになる。
【0046】
では、上記スキュー補正部112におけるスキュー補正について詳細に説明する。本実施の形態に係るデジタルカラープリンタ1では、各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11KにそれぞれLPH14が取り付けられている。各画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kにおいて、LPH14は、感光体ドラム12の軸方向と平行となるように所定の精度で装着される。ただし、実際には感光体ドラム12に対してLPH14が斜めに装着されることもあり、このような場合にはスキューが生じる。また、初期状態では感光体ドラム12の軸方向に対してLPH14が平行に装着されていたとしても、デジタルカラープリンタ1内の温度変化等によってLPH14が伸縮(変形)することがあり、このような場合にもスキューが生じる。
【0047】
ここで、LPH14を用いて、感光体ドラム12上に主走査方向に沿って延びる直線状の静電潜像(画像)を作成する場合を考えてみる。このとき、IPS40は、点灯信号発生部110に対し、主走査方向1ライン分のLEDの点灯を指示する画像データを出力する。
図9(a)は、感光体ドラム12の軸方向に対してLPH14が平行に装着されている場合に、LPH14によって感光体ドラム12上に形成される静電潜像を示している。なお、図中において、横方向は主走査方向、縦方向は副走査方向であり、●はLEDを点灯させることによって形成される静電潜像(画像部)、○はLEDを点灯させないことによって形成される静電潜像(背景部)をそれぞれ示している(以下で説明する図9(b)および図9(c)においても同様)。
この場合は、入力されてくる画像データに基づき、副走査方向の第mライン目において主走査方向1ライン分のLEDを点灯させることで、感光体ドラム12上に、主走査方向に平行な静電潜像(画像部)が形成される。
【0048】
また、図9(b)は、感光体ドラム12の軸方向に対してLPH14が斜めに装着された場合に、LPH14によって感光体ドラム12上に形成される静電潜像を示している。
この場合は、副走査方向の第mライン目において主走査方向1ライン分のLEDを点灯させると、感光体ドラム12上に、LPH14の配置状態に対応して、副走査方向に傾斜した(スキューした)静電潜像が形成される。つまり、本来形成すべき静電潜像とは異なる静電潜像が形成されることになってしまう。
【0049】
そこで、本実施の形態では、事前に各LPH14のスキュー量を取得し、得られたスキュー量から必要なスキュー補正値を求め、このスキュー補正値を用いスキュー補正部112において画像データに所定の操作を施すことで、スキュー補正を行っている。これを具体的に説明すると、スキュー補正部112では、スキュー補正値に基づいて主走査方向1ライン分の画像データを複数のブロックに分割し、分割されたブロック毎に画像データを副走査方向にシフトさせずらすことで、スキューの低減を図っている。
【0050】
図9(c)は、このようなスキュー補正を施した画像データを用いた場合に、LPH14によって感光体ドラム12上に形成される静電潜像を示している。なお、図9(c)は、得られたスキュー補正値に基づき、3つのブロックSa-1、Sa、およびSa+1に分割を施した例を示している。また、図9(c)において、ブロックSa-1とブロックSaとの境界を分割位置Xa-1、ブロックSaとSa+1との境界を分割位置Xaと呼ぶことにする。
【0051】
この例では、主走査方向1ライン分の画像データが、ブロックSa-1、Sa、およびSa+1毎に分割される。そして、ブロックSa-1では、副走査方向の第m−1ライン目においてこのブロックSa-1に対応するLEDを点灯させる。またブロックSaでは、副走査方向の第mライン目においてこのブロックSaに対応するLEDを点灯させる。さらに、ブロックSa+1では、副走査方向の第m+1ライン目においてこのブロックSa+1に対応するLEDを点灯させる。すなわち、ブロックSa-1ではブロックSaよりも副走査方向に1ライン分だけ早く画像データを出力し、ブロックSa+1ではブロックSaよりも副走査方向に1ライン分だけ遅く画像データを出力する。
すると、感光体ドラム12上には、図9(c)に示すような静電潜像が形成されることになる。ここで、図9(b)に示すスキュー補正を施さない場合の静電潜像と図9(c)に示すスキュー補正を施した場合の静電潜像とを比較すると、スキュー補正を施すことにより、形成される静電潜像が図9(a)に示す状態に近づくことが理解される。
【0052】
ところで、本実施の形態に係るLPH14は、図3および図4を用いて説明したように、複数のLEDをライン状に配列したSLED63(Chip1〜Chip60)を、主走査方向に千鳥状に配列したLEDアレイを有している。ここで、LEDアレイを構成する各SLED63の取り付け位置には、所定の誤差が許容されている。そして、このような誤差としては、隣接するSLED63同士が主走査方向にずれる主走査方向ずれによる誤差と、隣接するSLED63同士が副走査方向にずれる副走査方向ずれによる誤差とが存在する。
【0053】
このため、上述したスキュー補正に際して設定されるブロックの分割位置と、隣接するSLED63のLEDアレイ境界端部(図4参照)とが一致していると、次のような不具合が生じる。
図10(a)は、図9(c)のうち、分割位置Xa付近を抜き出したものである。この例では、分割位置Xaよりも左側のブロックSaでは副走査方向の第mライン目においてこのブロックSaに対応するLEDを点灯させ、分割位置Xaよりも右側のブロックSa+1では副走査方向の第m+1ライン目においてこのブロックSa+1に対応するLEDを点灯させている。
【0054】
ここで、例えば図10(b)に示すように、隣接するSLED63が主走査方向ずれ(離れる方向)している場合、LEDアレイ端部境界には隙間ができる。このとき、上記分割位置XaがLEDアレイ端部境界に一致していると、形成される静電潜像(トナー像)は、図10(b)に示したように不連続性が強調されてしまう。すると、例えばハーフトーン画像を形成しようとした場合には、この不連続の部位(トナー像が形成されない部位)が副走査方向に延び、結果として筋になってしまう。
【0055】
また、例えば図10(c)に示すように、隣接するSLED63が副走査方向ずれ(離れる方向)している場合、LEDアレイ端部境界には、千鳥配置による隙間にさらに隙間が加味される。このとき、上記分割位置XaがLEDアレイ端部境界に一致していると、形成される静電潜像(トナー像)は、図10(c)に示したように不連続性が強調されてしまう。本実施の形態では、隣接するSLED63間のギャップ分を千鳥補正によって取り除いている。しかし、千鳥補正を施しても新たに加わった隙間については補正を行うことができないために、形成される静電潜像(トナー像)に隙間が残ってしまう。また、千鳥補正が不十分である場合には、千鳥補正を施しても段差が残ってしまうこともある。すると、例えばハーフトーン画像を形成しようとした場合には、この不連続の部位(トナー像が形成されない部位)が副走査方向に延び、結果として筋になってしまう。
【0056】
以上のことから、スキュー補正におけるブロックの分割位置と、隣接するSLED63におけるLEDアレイ端部位置とが一致した場合に、副走査方向の筋が発生しやすくなることが理解される。このため、本実施の形態では、スキュー補正におけるブロックの分割位置が、LEDアレイ端部位置から所定量だけシフトされるように、スキュー補正値の設定を行っている。以下、スキュー補正値の設定について説明を行う。
【0057】
図11は、スキュー補正値の設定を行うスキュー補正値設定部140の構成を示す図である。なお、スキュー補正値設定部140は、実際には制御部30の一機能として実現されている。このスキュー補正値設定部140は、中間転写ベルト21(図1参照)に対向配置される画像センサ26から送られてくる読み取りデータに基づいてスキュー補正値(ブロック分割数およびブロックの分割位置)を設定し、EEPROM102に書き込む機能を有している。そして、スキュー補正値設定部140は、スキュー量演算部141、スキュー補正値演算部142、およびスキュー補正値修正部143を備えている。
【0058】
スキュー量演算部141は、画像センサ26から送られてくる読み取りデータに基づき、LPH14におけるスキュー量(主走査方向両端における副走査方向ずれの量)を演算する。スキュー補正値演算部142は、スキュー量演算部141にて求められたスキュー量に基づき、スキュー補正値(ブロック分割数およびブロックの分割位置)を演算する。スキュー補正値修正部143は、スキュー補正値演算部142にて求められたスキュー補正値に基づき、ブロックの分割位置とLEDアレイ端部位置とが一致している場合に、ブロックの分割位置を主走査方向にシフトさせることにより修正を施している。また、スキュー補正値修正部143は、修正がなされたスキュー補正値を、EEPROM102に書き込んでいる。
【0059】
では次に、図12に示すフローチャートを参照しつつ、スキュー補正値の設定プロセスについて詳細に説明する。
このプロセスでは、まず、デジタルカラープリンタ1を用いてスキュー補正用画像の作成を行う(ステップ101)。すなわち、所定の画像データに対応する静電潜像を、LPH14を用いて感光体ドラム12上に形成し、これをトナーで現像した後、中間転写ベルト21上に一次転写する。このとき、LPH14では、主走査方向両端に設けられるSLED63(Chip1およびChip60)を用い、同一の主走査方向ラインにおいて静電潜像の形成を行う。その結果、中間転写ベルト21上には、例えば図13に示すように、SLED63(Chip1)で作成された静電潜像によって形成された第一のトナー像T1およびSLED63(Chip60)で作成された静電潜像によって形成された第二のトナー像T2が転写される。このとき、感光体ドラム12に対してLPH14が斜めに装着されていると、中間転写ベルト21上のスキュー補正用画像すなわち第一のトナー像T1および第二のトナー像T2には、傾きに対応する副走査方向のずれ(スキュー量)が発生する。
【0060】
次に、中間転写ベルト21上に形成されたスキュー補正用画像すなわち第一のトナー像T1および第二のトナー像T2を、画像センサ26を用いて読み取る(ステップ102)。このとき、画像センサ26は、第一のトナー像T1の検出タイミングと第二のトナー像T2の検出タイミングとのずれ量(時間)をスキュー補正値設定部140に出力する。
【0061】
そして、スキュー量演算部141は、画像センサ26から入力されてくる読み取りデータ(ずれ量)に基づき、中間転写ベルト21の回動速度等を加味してスキュー量を演算する(ステップ103)。次いで、スキュー補正値演算部142は、スキュー量演算部141で得られたスキュー量に基づき、スキューを主走査方向と略平行にするためのスキュー補正値を演算する(ステップ104)。このステップ104では、スキュー補正値として、主走査方向におけるブロック分割数n+1と、各ブロックの分割位置X1〜Xnとを求める。なお、ブロック分割数n+1および各ブロックの分割位置X1〜Xnの具体的な演算手法については後述する。
【0062】
さらに、スキュー補正値修正部143は、スキュー補正値演算部142で得られたスキュー補正値に修正を施す。その具体的な手順は次の通りである。スキュー補正値修正部143では、まず、a=1に設定し(ステップ105)、スキュー補正値の分割位置Xaが256の整数倍であるか否か判断する(ステップ106)。ここで、256は、SLED63を構成するSLEDチップの数である。ここで、分割位置Xaが256の整数倍である場合には、分割位置Xaから64を引いた値を新たな分割位置Xaに設定し(ステップ107)、この分割位置XaをメモリであるEEPROM102に格納する(ステップ108)。一方、ステップ106において分割位置Xaが256の整数倍でない場合には、この分割位置XaをそのままメモリであるEEPROM102に格納する。そして、aの値をa+1に設定し(ステップ109)、aの値が分割位置の数であるnを超えたか否かを判断する(ステップ110)。ここで、a≦nの場合には、ステップ106に戻ってさらに処理を続行する。一方、a>nの場合には、すべての分割位置に対する処理が終了しているので、一連の処理を終了する。
なお、このスキュー補正値の設定は、画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kに設けられる各LPH14において、それぞれ独立して行われる。
【0063】
では次に、具体例を挙げてさらに説明を行う。なお、この説明では、上記ステップ101およびステップ102を実行し、ステップ103において得られたスキュー量が0.5mmであったものとする。
このLPH14では、LEDアレイの主走査方向長さが上述したように324mmである。また、副走査方向の解像度は2400dpiであることから、副走査方向のドットの間隔は10.58μmである。したがって、スキュー量が0.5mmであった場合、0.5/0.01058≒47.2となり、副走査方向に48ステップ分のスキュー補正を行うことが必要になる。これはすなわち、ステップ104で得られるブロック分割数n+1が48であることを意味する。すると、LEDは主走査方向長さ324mm内に15360ドット分のLEDが存在することから、15360/48=320となり、ステップ104で得られる分割位置X1〜X47が320ドット間隔すなわち320ドット目、640ドット目、960ドット目・・・、15040ドット目になる。したがって、スキュー補正値演算部142からは、これらブロック分割数48および分割位置X1〜X47がスキュー補正値として出力されることになる。
【0064】
ここで、表1は、スキュー補正値演算部142で求められた分割位置(修正前)X1〜X47、スキュー補正値修正部143で求められた各分割位置X1〜X47に対する演算結果(Chip位置)、およびスキュー補正値修正部143で修正がなされた分割位置(修正後)X1〜X47を示している。なお、分割位置Xn(修正前)はステップ104で求められ、Chip位置はステップ106で求められ、分割位置Xn(修正後)はステップ106〜108で求められる。
【0065】
【表1】
【0066】
本実施の形態では、SLEDチップ一枚あたりのLED数が256ドットであり、また、分割位置Xnは320ドット間隔である。このため、表1に示すように、256ドットおよび320ドットの最小公倍数である1280ドット毎に、LEDアレイ境界位置と分割位置Xn(具体的にはX4、X8、X12、X16、X20、X24、X28、X32、X36、X40、X44)とが一致する。本実施の形態では、このようにLEDアレイ境界位置と分割位置Xnとが一致する場合に、ステップ107において分割位置Xnを64ドット分主走査方向上流側にシフトさせている。そして、このようにして求められた分割位置Xn(修正後)が、EEPROM102に格納される。
【0067】
次に、図8および図14に示すタイミングチャートを参照しつつ、点灯信号発生部110における画像データの千鳥補正動作およびスキュー補正動作について詳細に説明する。なお、この図は、(a)に示すように、LPH14を構成するSLED63のうち、Chip1〜Chip11までを示している。また、図中の横軸はLPH14を構成する各LEDのドット番号であり、縦軸は時間(タイミング)であり、下側が遅れを示している。
【0068】
今、(b)に示すように、IPS40よりChip1〜Chip60(図中ではChip1〜Chip11)の全LEDを点灯させる画像データが入力されたとする。すると、千鳥配列補正部111では、(c)に示すように、偶数番目のSLEDチップ(Chip2、Chip4、…)に対する画像データの出力タイミングを、奇数番目のSLEDチップ(Chip1、Chip3、…)よりも所定時間だけ遅らせる千鳥配列補正を行って、千鳥補正済みの画像データを出力する。
【0069】
次いで、スキュー補正部112では、千鳥配列補正部111から送られてくる千鳥補正済みの画像データに対し、スキュー補正を施す。ここで、(d)は、表1に示す修正前の分割位置X1〜X47を用いてスキュー補正を施した際の出力画像データ(スキュー補正後の画像データ)を示している。また、(e)は、表1に示す修正後の分割位置X1〜X47を用いてスキュー補正を施した際の出力画像データ(スキュー補正後の画像データ)を示している。
(d)では、Chip5およびChip6のLEDアレイ端部境界とブロック分割位置X4とが一致し、また、Chip10およびChip11のLEDアレイ端部境界とブロック分割位置X8とが一致している。一方、(e)では、上述した手順でスキュー補正値に修正を施すことでこれら分割位置X4およびX8を64ドット分だけ上流側にシフトさせている。このため、(e)では、LEDアレイ端部境界とブロックの分割位置とが一致する部位は主走査方向全域にわたって存在しない。
【0070】
ここで、図15(a)は、図14(d)に示すスキュー補正(分割位置修正前のスキュー補正値を使用)を施した場合に形成されるハーフトーン画像(トナー像)の濃度分布を示している。また、図15(b)は、図14(e)に示すスキュー補正(分割位置修正後のスキュー補正値を使用)を施した場合に形成されるハーフトーン画像(トナー像)の濃度分布を示している。なお、これらの図において、横軸はLEDのドット番号を示しており、縦軸は所定のドットにおける濃度を基準として規格化された濃度差を示している。
【0071】
図15(a)に示すように、分割位置修正前のスキュー補正値を使用してスキュー補正を施した場合には、LEDアレイ端部境界とブロック分割位置とが一致する部位での濃度差が大きくなっている。特に、3840ドット目、5120ドット目、7680ドット目、8960ドット目、10240ドット目、そして12800ドット目では濃度差が−0.02を超えており、他の領域よりも濃度が著しく低くなっている。つまり、ハーフトーン画像中に目に見える筋が発生している。
【0072】
これに対し、図15(b)に示すように、本実施の形態の特徴である分割位置修正後のスキュー補正値を使用してスキュー補正を施した場合には、LEDアレイ端部境界での濃度差がわずかに存在する(濃度差−0.02未満)ものの、そのレベルはきわめて小さく、略一定の濃度が得られている。この場合、ハーフトーン画像中に生じる筋はほとんど目立たない。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態では、複数のLED(本実施の形態では256個)を並べて構成されたSLED63を、主走査方向に複数(本実施の形態では60個)配列してLEDアレイを構成した。そして、LPH14を用いて感光体ドラム12上に静電潜像を形成する際、入力されてくる画像データに対し、主走査方向に15360個存在するLEDを複数のブロックにグループ分けし、ブロック毎に画像データの点灯タイミングをずらすことで、スキュー補正を施すようにした。このようなスキュー補正を施すことで、感光体ドラム12上に形成される静電潜像において、LPH14と感光体ドラム12との相対的な位置関係に起因する副走査方向の歪みを目立たなくすることができる。
【0074】
ここで、本実施の形態では、スキュー補正に使用するスキュー補正値(分割ブロック数、ブロックの分割位置)を設定するにあたり、ブロックの分割位置がLEDアレイ端部境界と一致した場合に、このブロックの分割位置を主走査方向にシフトさせるようにした。つまり、ブロックの分割位置とLEDアレイ端部境界とを主走査方向に対してずらすようにした。これにより、隣接するSLED63の配置状態に起因する副走査方向ずれ量にスキュー補正による副走査方向のずらしが重畳されることがなくなり、この部位における副走査方向の筋を目立たなくすることができる。
【0075】
特に、本実施の形態のようにSLED63を千鳥配置する場合、設定上の副走査方向ずれ量と実際の副走査方向ずれ量とが異なると、千鳥配列補正部111で千鳥配列補正しきれず、副走査方向のずれが残る。このとき、LEDアレイ端部境界とスキュー補正におけるブロックの分割位置とが一致していると、相乗効果で筋がさらに目立ちやすくなってしまう。したがって、本実施の形態で用いた手法は、SLED63を千鳥配置する構成を採用する場合に非常に有効なものとなる。
【0076】
また、他の観点からみると、本実施の形態では、LPH14を構成する各SLED63の配置状態(千鳥配置)に起因する副走査方向の歪み補正は、LEDアレイ端部境界で行い、LPH14の配置状態(感光体ドラム12との相対的な位置関係)に起因する副走査方向の歪み補正は、LEDアレイ端部境界で行わないようにした、と捉えることもできる。
【0077】
なお、本実施の形態では、LEDアレイ端部境界とスキュー補正におけるブロックの分割位置とが一致しているときにのみブロックの分割位置をシフトさせていたが、LEDアレイ端部境界の近傍にブロックの分割位置が設定された場合にも、筋が目立つ懸念がある。そこで、例えばLEDアレイ端部境界の近傍(例えば10ドット程度)にブロックの分割位置が設定された場合にも、ブロック部の分割位置をシフトさせることが好ましい。
【0078】
<実施の形態2>
実施の形態1では、ブロックの分割位置とLEDアレイ端部境界とが一致した場合に、必ずブロックの分割位置をシフトさせていた。これに対し本実施の形態では、特定の条件を満たす場合には、ブロックの分割位置とLEDアレイのLED端部境界とが一致していても、ブロックの分割位置をシフトさせずにそのままとするようにしたものである。なお、本実施の形態において、実施の形態1と同様のものについては、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0079】
図16は、本実施の形態に係るSLED63を構成する60個のSLEDチップのうち、Chip1、Chip2、およびChip3の連結部を例示している。なお、本実施の形態においても、60個のSLEDチップはそれぞれ256個のLEDを搭載している。また、奇数番目のSLEDチップ(Chip1、Chip3、…)および偶数番目のSLEDチップ(Chip2、…)は、互い違いすなわち千鳥状に配列されている。
【0080】
ここで、図16(a)は、Chip1とChip2とが副走査方向に対して理想的な状態で配列された例を示している。このとき、Chip1のLEDアレイおよびChip2のLEDアレイは、副走査方向距離D=D0だけ離間して配置される。なお、以下の説明では、距離D0のことを基準距離と呼ぶ。
一方、図16(b)は、Chip1とChip2とが副走査方向に対し離間する方向にずれた状態で配列された例を示している。このとき、Chip1のLEDアレイおよびChip2のLEDアレイは、副走査方向距離D>基準距離D0だけ離間して配置される。
他方、図16(c)は、Chip1とChip2とが副走査方向に対し近接する方向にずれた状態で配列された例を示している。このとき、Chip2のLEDアレイおよびChip3のLEDアレイは、副走査方向距離D<基準距離D0だけ離間して配置される。
【0081】
本来、SLEDチップ同士の境界では、奇数番目のSLEDチップ(例えばChip1)と偶数番目のSLEDチップ(例えばChip2)とを、副走査方向に基準距離D0だけずらした状態で取り付けることが好ましい。ただし、実際には、取り付け精度に許容範囲が設けられることから、例えば数μm程度の副走査方向ずれが生じ得る。
【0082】
そして、本実施の形態においても、実施の形態1と同様に、感光体ドラム12の軸方向に対してLPH14が斜めに装着されることがある。このため、実施の形態1と同様、例えば図9(c)に示したように、設定された分割位置毎に画像データの出力タイミングを順次遅らせたりあるいは早めたりすることで、スキュー補正を施している。
【0083】
図17(a)は、図10(a)と同様に分割位置Xa付近を抜き出したものである。すなわち、この例では、分割位置Xaよりも左側のブロックSaでは副走査方向の第mライン目においてこのブロックSaに対応するLEDを点灯させ、分割位置Xaよりも右側のブロックSa+1では副走査方向の第m+1ライン目においてこのブロックSa+1に対応するLEDを点灯させている。なお、以下の説明では、左側のブロックSaと右側のブロックSbとの分割位置XaがChip1とChip2とのLEDアレイ端部位置に一致しているものとする。
【0084】
これらChip1とChip2とが、図16(a)に示す理想的な状態(D=D0)にあるとする。この場合、LEDアレイ端部位置では、図17(a)に示すように、形成される静電潜像(トナー像)が副走査方向に1ライン分だけずれる。ここで、副走査方向の解像度は2400dpiであることから、副走査方向のドット(ライン)の間隔は10.58μmである。したがって、LEDアレイ端部位置では、副走査方向に10.58μmだけ静電潜像(トナー像)がずれることになる。
【0085】
また、これらChip1とChip2とが、図16(b)および図17(b)に示すように副走査方向に対し離間する方向にずれた状態(D>D0)にあるとする。この場合、LEDアレイ端部位置では、図17(b)に示すように形成される静電潜像(トナー像)の副走査方向ずれ量Gは副走査方向1ライン分(10.58μm)より大きくなる。すなわち、副走査方向の筋が目立ちやすくなってしまう。
【0086】
一方、これらChip1とChip2とが、図16(c)および図17(c)に示すように副走査方向に対し近接する方向にずれた状態(D<D0)にあるとする。この場合、LEDアレイ端部位置では、図17(c)に示すように形成される静電潜像(トナー像)の副走査方向ずれ量Gは副走査方向1ライン分(10.58μm)より小さくなる。すなわち、副走査方向の筋が目立ちにくくなる。
【0087】
そこで、本実施の形態では、スキュー補正値の設定プロセスにおいて、ブロックの分割位置がLEDアレイ端部境界と一致した場合に、このLED端部境界を構成するSLEDチップの基準距離Dに対する副走査方向ずれ量(チップ間ずれ量Yという)を参照している。そして、このチップ間ずれ量Yが、形成される静電潜像(トナー像)の副走査方向ずれ量Gを小さくする方向のずれである場合には、分割位置のシフトを行わず、得られた分割位置をそのまま使用するようにしている。
【0088】
このため、本実施の形態では、各SLEDチップChip1〜Chip60のうち、隣接するSLEDチップ同士(例えばChip1とChip2など)のチップ間ずれ量Yが、事前に取得されている。なお、SLED63を構成するSLEDチップは60個であるため、合わせて59個のチップ間ずれ量が取得される。チップ間ずれ量Yは、LPH14の製造後に各SLEDチップ間の副走査方向距離Dを測定し、得られた副走査方向距離Dから基準距離D0を差し引いた値として得られる。すなわち、Y=D−D0である。ここで、表2は、これらチップ間位置Wとチップ間ずれ量Yとを対応付けたテーブルを例示している。なお、例えばチップ間位置W=1はChip1とChip2とのチップ間位置を表しており、例えばチップ間位置W=59はChip59とChip60とのチップ間位置を表している。そして、表2に示すテーブルは、例えばEEPROM102に予め記憶・保持される。
【0089】
【表2】
【0090】
では、図18に示すフローチャートを参照しつつ、本実施の形態におけるスキュー補正値の設定プロセスについて詳細に説明する。
このプロセスでは、まず、デジタルカラープリンタ1を用いてスキュー補正用画像の作成を行う(ステップ201)。すなわち、所定の画像データに対応する静電潜像を、LPH14を用いて感光体ドラム12上に形成し、これをトナーで現像した後、中間転写ベルト21上に一次転写する。このとき、LPH14では、主走査方向両端に設けられるSLED63(Chip1およびChip60)を用い、同一の主走査方向ラインにおいて静電潜像の形成を行う。その結果、中間転写ベルト21上には、例えば図13に示すように、SLED63(Chip1)で作成された静電潜像によって形成された第一のトナー像T1およびSLED63(Chip60)で作成された静電潜像によって形成された第二のトナー像T2が転写される。このとき、感光体ドラム12に対してLPH14が斜めに装着されていると、中間転写ベルト21上のスキュー補正用画像すなわち第一のトナー像T1および第二のトナー像T2には、傾きに対応する副走査方向のずれ(スキュー量)が発生する。
【0091】
次に、中間転写ベルト21上に形成されたスキュー補正用画像すなわち第一のトナー像T1および第二のトナー像T2を、画像センサ26を用いて読み取る(ステップ202)。このとき、画像センサ26は、第一のトナー像T1の検出タイミングと第二のトナー像T2の検出タイミングとのずれ量(時間)をスキュー補正値設定部140に出力する。
【0092】
そして、スキュー量演算部141は、画像センサ26から入力されてくる読み取りデータ(ずれ量)に基づき、中間転写ベルト21の回動速度等を加味してスキュー量を演算する(ステップ203)。次いで、スキュー補正値演算部142は、スキュー量演算部141で得られたスキュー量に基づき、スキューを主走査方向と略平行にするためのスキュー補正値を演算する(ステップ204)。このステップ204では、スキュー補正値として、主走査方向におけるブロック分割数n+1と、各ブロックの分割位置X1〜Xnとを求める。なお、ブロック分割数n+1および各ブロックの分割位置X1〜Xnの具体的な演算手法は実施の形態1で説明したものと同じである。
【0093】
さらに、スキュー補正値修正部143は、スキュー補正値演算部142で得られたスキュー補正値に修正を施す。その具体的な手順は次の通りである。スキュー補正値修正部143では、まず、a=1に設定し(ステップ205)、スキュー補正値の分割位置Xaが256の整数倍であるか否か判断する(ステップ206)。ここで、256は、SLED63を構成するSLEDチップの数である。ここで、分割位置Xaが256の整数倍である場合には、次に、EEPROM102から、分割位置Xaに対応するチップ間位置Wにおけるチップ間ずれ量Yを読み出す(ステップ207)。そして、スキュー補正値修正部143は、読み出したチップ間ずれ量Yが0以上か否かを判断する(ステップ208)。チップ間ずれ量Yが0以上であった場合、スキュー補正値修正部143は、分割位置Xaから64を引いた値を新たな分割位置Xaに設定し(ステップ209)、この分割位置XaをメモリであるEEPROM102に格納する(ステップ210)。一方、ステップ206において分割位置Xaが256の整数倍でなかった場合、および、ステップ208において分割位置Xaに対応するチップ間位置Wにおけるチップ間ずれ量Yが0より小さかった場合(負の値であった場合)、スキュー補正値修正部143は、この分割位置XaをそのままメモリであるEEPROM102に格納する。そして、aの値をa+1に設定し(ステップ211)、aの値が分割位置の数であるnを超えたか否かを判断する(ステップ212)。ここで、a≦nの場合には、ステップ206に戻ってさらに処理を続行する。一方、a>nの場合には、すべての分割位置に対する処理が終了しているので、一連の処理を終了する。
なお、このスキュー補正値の設定は、画像形成ユニット11Y,11M,11C,11Kに設けられる各LPH14において、それぞれ独立して行われる。
【0094】
では次に、具体例を挙げてさらに説明を行う。なお、ここでは、実施の形態1と同様の条件を前提として説明を行うことにする。すなわち、ステップ203において得られたスキュー量は0.5mmであり、その結果、ステップ204で得られた分割位置X1〜X47が320ドット間隔すなわち320ドット目、640ドット目、960ドット目・・・、15040ドット目になる。したがって、スキュー補正値演算部142からは、これらブロック分割数48および分割位置X1〜X47がスキュー補正値として出力されることになる。
【0095】
ここで、表3は、スキュー補正値演算部142で求められた分割位置(修正前) X1〜X47、スキュー補正値修正部143で求められた各分割位置X1〜X47に対する演算結果(Chip位置)、およびスキュー補正値修正部143で修正がなされた分割位置(修正後)X1〜X47を示している。なお、分割位置Xn(修正前)はステップ204で求められ、Chip位置はステップ206で求められ、分割位置Xn(修正後)はステップ206〜210で求められる。
【0096】
【表3】
【0097】
本実施の形態では、SLEDチップ一枚あたりのLED数が256ドットであり、また、分割位置Xnは320ドット間隔である。このため、表3に示すように、256ドットおよび320ドットの最小公倍数である1280ドット毎に、LEDアレイ境界位置と分割位置Xn(具体的にはX4、X8、X12、X16、X20、X24、X28、X32、X36、X40、X44)とが一致する。本実施の形態では、このようにLEDアレイ境界位置と分割位置Xnとが一致する場合に、まず、ステップ208においてこのLEDアレイ境界位置すなわち対応するチップ間位置Wにおけるチップ間ずれ量Yが0以上か否かを判断している。
【0098】
ここで、表2を参照すると、X4、X8、X12、X16、X20、X24、X28、X32、X36、X40、X44に対応するチップ間位置W=5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55では、W=10、20、45、50におけるチップ間ずれ量Yが負の値となっている。また、他のチップ間位置W=5、15、25、30、35、40、55ではチップ間ずれ量Yが0以上の値となっている。
【0099】
ここで、チップ間ずれ量Yが正の値であるということは、隣接するチップ間の副走査方向距離Dが基準距離D0よりも大きいことを意味する。すなわち、隣接するチップ同士が副走査方向に対し離間する方向にずれた状態で配列されていることである。一方、チップ間ずれ量Yが負の値であるということは、隣接するチップ間の副走査方向距離Dが基準距離D0よりも小さいことを意味する。すなわち、隣接するチップ同士が副走査方向に対し近接する方向にずれた状態で配列されていることである。
【0100】
そして、本実施の形態では、LEDアレイ境界位置と分割位置Xnとが一致する場合であって、対応するチップ間ずれ量Yの値が0以上である場合に、ステップ209において分割位置Xnを64ドット分主走査方向上流側にシフトさせている。そして、このようにして求められた分割位置Xn(修正後)が、EEPROM102に格納される。
一方、LEDアレイ境界位置と分割位置Xnとが一致する場合であっても、対応するチップ間ずれ量Yの値が0より下の負の値である場合には、分割位置Xnをシフトさせることなく、そのままEEPROM102に格納している。
【0101】
次に、図8、および図19に示すタイミングチャートを参照しつつ、点灯信号発生部110における画像データの千鳥補正動作およびスキュー補正動作について詳細に説明する。なお、この図は、(a)に示すように、LPH14を構成するSLED63のうち、Chip1〜Chip11までを示している。また、図中の横軸はLPH14を構成する各LEDのドット番号であり、縦軸は時間(タイミング)であり、下側が遅れを示している。
【0102】
今、(b)に示すように、IPS40よりChip1〜Chip60(図中ではChip1〜Chip11)の全LEDを点灯させる画像データが入力されたとする。すると、千鳥配列補正部111では、(c)に示すように、偶数番目のSLEDチップ(Chip2、Chip4、…)に対する画像データの出力タイミングを、奇数番目のSLEDチップ(Chip1、Chip3、…)よりも所定時間だけ遅らせる千鳥配列補正を行って、千鳥補正済みの画像データを出力する。
【0103】
次いで、スキュー補正部112では、千鳥配列補正部111から送られてくる千鳥補正済みの画像データに対し、スキュー補正を施す。ここで、(d)は、表1に示す修正前の分割位置X1〜X47を用いてスキュー補正を施した際の出力画像データ(スキュー補正後の画像データ)を示している。また、(e)は、表3に示す修正後の分割位置X1〜X47を用いてスキュー補正を施した際の出力画像データ(スキュー補正後の画像データ)を示している。
(d)では、Chip5およびChip6のLEDアレイ端部境界とブロック分割位置X4とが一致し、また、Chip10およびChip11のLEDアレイ端部境界とブロック分割位置X8とが一致している。一方、(e)では、上述した手順でスキュー補正値に修正を施すことで、分割位置X4を64ドット分だけ上流側にシフトさせている。ただし、分割位置X8はChip10およびChip11のLEDアレイ端部境界からシフトさせていない。
【0104】
例えばチップ間ずれ量Yが0以上となっているチップ間位置W(LEDアレイ境界位置)が分割位置に一致している場合(この例ではW=5、15、25、30、35、40、55)、このLEDアレイ境界位置で形成される静電潜像(トナー像)は、必ず副走査方向に1ライン以上ずれる。すなわち、筋が目立ちやすい方向になる。この場合に、分割位置を例えば64ドットだけ上流側にシフトさせれば、新たな分割位置において形成される静電潜像(トナー像)の副走査方向ずれ量は1ライン分で済むことになる。そこで、本実施の形態では、チップ間ずれ量Yが0以上となっているチップ間位置W(LEDアレイ境界位置)が分割位置に一致している場合は、分割位置をシフトさせるようにしている。
【0105】
一方、例えばチップ間ずれ量Yが0より小さいチップ間位置W(LEDアレイ境界位置)が分割位置に一致している場合(この例ではW=10、20、45、50)、このLEDアレイ境界位置で形成される静電潜像(トナー像)は、必ず副走査方向のずれ量が1ライン未満に収まる。すなわち、筋が目立ちにくい方向になる。この場合に、分割位置を例えば64ドットだけ上流側にシフトさせると、新たな分割位置において形成される静電潜像(トナー像)の副走査方向ずれ量は1ライン分となってしまう。つまり、分割位置をシフトさせない方が副走査方向ずれ量が少なくて済むことになる。そこで、本実施の形態では、チップ間ずれ量Yが0より小さい(負の値となっている)チップ間位置Wが分割位置に一致している場合は、分割位置をシフトさせず、そのままとしている。
【0106】
なお、本実施の形態では、LEDアレイ端部境界とスキュー補正におけるブロックの分割位置とが一致しているときにのみブロックの分割位置をシフトさせるか否かを判断していたが、LEDアレイ端部境界の近傍にブロックの分割位置が設定された場合にも、筋が目立つ懸念がある。そこで、例えばLEDアレイ端部境界の近傍(例えば10ドット程度)にブロックの分割位置が設定された場合にも、ブロック部の分割位置をシフトさせるか否かを判断することが好ましい。
【0107】
また、実施の形態1、2では、感光体ドラム12とLPH14とが相対的に傾斜している場合に施されるスキュー補正について説明を行ったが、これに限られるものではない。この手法は、例えば感光体ドラム12に対してLPH14が湾曲配置されることによって生じるボウの補正にも適用することができる。ただし、この場合は、各SLED63(Chip1〜Chip60)を用いた静電潜像(トナー像)を、図12のステップ101で作成するスキュー補正用画像とし、この読み取り結果に基づいて各SLED63の副走査方向ずれ量を把握する必要がある。そして、得られた各SLED63の副走査方向ずれ量に基づいて各SLED63のボウ補正量(ブロック分割数、ブロックの分割位置)を求め、各ブロックの分割位置がLEDアレイ端部位置と一致しないように修正を施せばよい。
【0108】
さらに、実施の形態1、2では、記録素子としてLEDを用いたLPH14を例に説明を行ったが、これに限られるものではなく、例えば液晶シャッタや有機EL素子等の点灯素子を用いたプリントヘッドにも適用することができる。また、他にも、例えば記録素子としてのインク吐出素子を用いたインクジェット用のプリントヘッドにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本実施の形態が適用されるLEDプリントヘッド(LPH)を搭載した画像形成装置の全体構成を示した図である。
【図2】LPHの構成を示した図である。
【図3】LED回路基板の平面図である。
【図4】各SLEDチップの連結部を説明する図である。
【図5】LED回路基板上に形成されている配線図を示した図である。
【図6】SLEDチップ(SLED)の構成を説明するための回路図である。
【図7】画像形成動作におけるLPHの駆動(点灯動作)を説明するためのタイミングチャートである。
【図8】点灯信号発生部の構成を説明する図である。
【図9】(a)〜(c)は感光体ドラムに対するLPHの装着状態とそのときに形成される静電潜像との関係を説明するための図である。
【図10】(a)〜(c)はスキュー補正におけるブロックの分割位置と、LEDアレイ端部位置とが一致した場合の問題点を説明するための図である。
【図11】スキュー補正値設定部の構成を説明するための図である。
【図12】スキュー補正値の設定プロセスを説明するためのフローチャートである。
【図13】中間転写ベルト上に形成されるスキュー補正用画像としての第一のトナー像および第二のトナー像を説明するための図である。
【図14】点灯信号発生部における画像補正データの千鳥補正動作およびスキュー補正動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図15】(a)は分割位置修正前のスキュー補正値を使用して形成したハーフトーン画像の濃度分布を示すグラフ図であり、(b)は分割位置修正後のスキュー補正値を使用して形成したハーフトーン画像の濃度分布を示すグラフ図である。
【図16】(a)〜(c)は、実施の形態2における各SLEDチップの連結部およびその副走査方向の位置ずれを説明する図である。
【図17】(a)〜(c)は、実施の形態2のスキュー補正におけるブロックの分割位置と、LEDアレイ端部位置とが一致した場合の問題点を説明するための図である。
【図18】実施の形態2におけるスキュー補正値の設定プロセスを説明するためのフローチャートである。
【図19】実施の形態2の点灯信号発生部における画像補正データの千鳥補正動作およびスキュー補正動作を説明するためのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0110】
1…デジタルカラープリンタ、10…画像形成プロセス部、12…感光体ドラム、13…帯電器、14…LPH、15…現像器、21…中間転写ベルト、26…画像センサ、30…制御部、40…IPS(画像処理部)、63…SLED、100…信号発生回路、110…点灯信号発生部、111…千鳥配列補正部、112…スキュー補正部、113…点灯時間計算部、114…シリアルパラレル変換部、115(115_1〜115_60)…パルス発生器 、130…転送信号発生部、140…スキュー補正値設定部、141…スキュー
量演算部、142…スキュー補正値演算部、143…スキュー補正値修正部、X1〜Xn…分割位置、T1…第一のトナー像、T2…第二のトナー像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に複数の記録素子が配列された記録チップを、主走査方向に複数配列してなる記録素子アレイと、
主走査方向に設定された所定のブロック毎に、副走査方向に画像データをシフトさせることにより、副走査方向ずれを補正する副走査方向ずれ補正部とを備えたプリントヘッドにおいて、
前記副走査方向ずれ補正部は、隣接する前記記録チップにおける前記記録素子同士の境界位置に対し分割位置をずらして設定可能な前記ブロックを用いて、記録マークの副走査方向ずれを補正することを特徴とするプリントヘッド。
【請求項2】
前記副走査方向ずれ補正部は、異なる主走査方向長さとなるように設定された前記ブロックを用いて、前記記録マークの副走査ずれを補正することを特徴とする請求項1記載のプリントヘッド。
【請求項3】
前記記録素子アレイを構成する前記記録チップが千鳥状に配列され、
前記記録素子アレイを構成する各記録チップに対する記録信号の供給タイミングを、所定の記録チップ列を基準として記録チップ列毎に変えることにより、当該記録素子アレイによって記録される記録マークの副走査方向ずれを補正する千鳥配列補正部をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のプリントヘッド。
【請求項4】
前記分割位置を設定する設定部と、
前記設定部にて設定された前記分割位置と隣接する記録チップ同士の境界位置とが一致する場合に、当該分割位置を当該境界位置から移動させる修正部と
をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のプリントヘッド。
【請求項5】
前記修正部は、前記分割位置と前記境界位置とが一致する場合であって、当該境界位置に対応する記録チップ同士の副走査方向の位置ずれが当該境界位置にて記録素子により記録される像の副走査方向ずれを打ち消す方向である場合に、当該分割位置を当該境界位置から移動させないことを特徴とする請求項4記載のプリントヘッド。
【請求項6】
主走査方向に複数の記録素子が配列された記録チップを、主走査方向に複数配列してなる記録素子アレイと、
前記記録素子アレイを構成する前記記録チップの配置に起因する副走査方向ずれを、各記録素子に対する記録信号の供給タイミングを調整することによって補正する第一の副走査方向ずれ補正部と、
前記記録素子アレイを構成する前記記録チップの配置以外に起因する副走査方向ずれを、副走査方向に画像データをシフトさせることによって補正する第二の副走査方向ずれ補正部とを含み、
前記第一の副走査方向ずれ補正部は、隣接する前記記録チップにおける前記記録素子の境界位置から隣接する境界位置までを1ブロックとして、各記録素子に対する前記記録信号の供給タイミングを調整し、
前記第二の副走査方向ずれ補正部は、前記境界位置から主走査方向にシフトした位置に設定される分割位置から隣接する分割位置までを1ブロックとして、副走査方向に前記画像データをシフトさせることを特徴とするプリントヘッド。
【請求項7】
複数の前記記録チップが千鳥状に配列され、
前記第一の副走査方向ずれ補正部は、前記記録チップの千鳥配列補正を行うことを特徴とする請求項6記載のプリントヘッド。
【請求項8】
前記第二の副走査方向ずれ補正部は、被記録体に対し前記記録素子アレイが傾斜配置されることにより生じるスキュー、あるいは、当該被記録体に対し当該記録素子アレイが湾曲配置されることにより生じるボウを補正することを特徴とする請求項6記載のプリントヘッド。
【請求項9】
主走査方向に複数の記録素子が配列された記録チップを、主走査方向に複数配列してなる記録素子アレイを備えたプリントヘッドにおける副走査方向ずれ補正値の設定方法であって、
前記記録素子アレイによって記録される記録マークの副走査方向ずれ量を取得するステップと、
取得された前記副走査方向ずれ量に基づき、前記記録素子アレイにおける主走査方向のブロックの分割数および各ブロックの分割位置を演算するステップと、
演算により求められた前記分割位置が隣接する記録チップにおける前記記録素子の境界位置と一致する場合に、当該分割位置を当該境界位置に対して主走査方向にシフトさせるステップと
を含むプリントヘッドにおける副走査方向ずれ補正値の設定方法。
【請求項10】
前記記録マークの副走査方向ずれ量を取得するステップでは、
前記記録素子アレイを用いて、記録材上に記録マークを形成し、
前記記録材上に形成された前記記録マークを読み取り、
前記記録マークの読み取り結果に基づき、当該記録マークにおける副走査方向ずれ量を取得することを特徴とする請求項9記載のプリントヘッドにおける副走査方向ずれ補正値の設定方法。
【請求項11】
前記シフトさせるステップの後、前記分割位置をメモリに格納するステップをさらに含むことを特徴とする請求項9記載のプリントヘッドにおける副走査方向ずれ補正値の設定方法。
【請求項1】
主走査方向に複数の記録素子が配列された記録チップを、主走査方向に複数配列してなる記録素子アレイと、
主走査方向に設定された所定のブロック毎に、副走査方向に画像データをシフトさせることにより、副走査方向ずれを補正する副走査方向ずれ補正部とを備えたプリントヘッドにおいて、
前記副走査方向ずれ補正部は、隣接する前記記録チップにおける前記記録素子同士の境界位置に対し分割位置をずらして設定可能な前記ブロックを用いて、記録マークの副走査方向ずれを補正することを特徴とするプリントヘッド。
【請求項2】
前記副走査方向ずれ補正部は、異なる主走査方向長さとなるように設定された前記ブロックを用いて、前記記録マークの副走査ずれを補正することを特徴とする請求項1記載のプリントヘッド。
【請求項3】
前記記録素子アレイを構成する前記記録チップが千鳥状に配列され、
前記記録素子アレイを構成する各記録チップに対する記録信号の供給タイミングを、所定の記録チップ列を基準として記録チップ列毎に変えることにより、当該記録素子アレイによって記録される記録マークの副走査方向ずれを補正する千鳥配列補正部をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のプリントヘッド。
【請求項4】
前記分割位置を設定する設定部と、
前記設定部にて設定された前記分割位置と隣接する記録チップ同士の境界位置とが一致する場合に、当該分割位置を当該境界位置から移動させる修正部と
をさらに含むことを特徴とする請求項1記載のプリントヘッド。
【請求項5】
前記修正部は、前記分割位置と前記境界位置とが一致する場合であって、当該境界位置に対応する記録チップ同士の副走査方向の位置ずれが当該境界位置にて記録素子により記録される像の副走査方向ずれを打ち消す方向である場合に、当該分割位置を当該境界位置から移動させないことを特徴とする請求項4記載のプリントヘッド。
【請求項6】
主走査方向に複数の記録素子が配列された記録チップを、主走査方向に複数配列してなる記録素子アレイと、
前記記録素子アレイを構成する前記記録チップの配置に起因する副走査方向ずれを、各記録素子に対する記録信号の供給タイミングを調整することによって補正する第一の副走査方向ずれ補正部と、
前記記録素子アレイを構成する前記記録チップの配置以外に起因する副走査方向ずれを、副走査方向に画像データをシフトさせることによって補正する第二の副走査方向ずれ補正部とを含み、
前記第一の副走査方向ずれ補正部は、隣接する前記記録チップにおける前記記録素子の境界位置から隣接する境界位置までを1ブロックとして、各記録素子に対する前記記録信号の供給タイミングを調整し、
前記第二の副走査方向ずれ補正部は、前記境界位置から主走査方向にシフトした位置に設定される分割位置から隣接する分割位置までを1ブロックとして、副走査方向に前記画像データをシフトさせることを特徴とするプリントヘッド。
【請求項7】
複数の前記記録チップが千鳥状に配列され、
前記第一の副走査方向ずれ補正部は、前記記録チップの千鳥配列補正を行うことを特徴とする請求項6記載のプリントヘッド。
【請求項8】
前記第二の副走査方向ずれ補正部は、被記録体に対し前記記録素子アレイが傾斜配置されることにより生じるスキュー、あるいは、当該被記録体に対し当該記録素子アレイが湾曲配置されることにより生じるボウを補正することを特徴とする請求項6記載のプリントヘッド。
【請求項9】
主走査方向に複数の記録素子が配列された記録チップを、主走査方向に複数配列してなる記録素子アレイを備えたプリントヘッドにおける副走査方向ずれ補正値の設定方法であって、
前記記録素子アレイによって記録される記録マークの副走査方向ずれ量を取得するステップと、
取得された前記副走査方向ずれ量に基づき、前記記録素子アレイにおける主走査方向のブロックの分割数および各ブロックの分割位置を演算するステップと、
演算により求められた前記分割位置が隣接する記録チップにおける前記記録素子の境界位置と一致する場合に、当該分割位置を当該境界位置に対して主走査方向にシフトさせるステップと
を含むプリントヘッドにおける副走査方向ずれ補正値の設定方法。
【請求項10】
前記記録マークの副走査方向ずれ量を取得するステップでは、
前記記録素子アレイを用いて、記録材上に記録マークを形成し、
前記記録材上に形成された前記記録マークを読み取り、
前記記録マークの読み取り結果に基づき、当該記録マークにおける副走査方向ずれ量を取得することを特徴とする請求項9記載のプリントヘッドにおける副走査方向ずれ補正値の設定方法。
【請求項11】
前記シフトさせるステップの後、前記分割位置をメモリに格納するステップをさらに含むことを特徴とする請求項9記載のプリントヘッドにおける副走査方向ずれ補正値の設定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−145001(P2007−145001A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278775(P2006−278775)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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