説明

プリント基板および電気製品、ならびにこれらの廃棄物のリサイクル方法

【課題】鉛を含むか鉛を含まないかを簡単に識別できる、部品を実装したプリント基板または電気製品、ならびにこれらの廃棄物のリサイクル方法を提供する。
【解決手段】プリント基板に、鉛を含まないことを示す識別マークを添付する。また、リサイクルする工程において、プリント基板または電気製品を、識別マークによって、鉛入りのものと鉛を含まないものを識別して選別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル効率に優れたプリント基板および電気製品と、それらの廃棄物のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、電子部品をプリント基板に実装する工程などで使用されるはんだ材料には、多量の鉛が含まれている。
そのため、はんだ材料を用いて電子部品を実装したプリント基板や、これを内蔵する電気製品が、使用後廃棄されて、野ざらしに放置されたり、破砕・埋め立て処分されたりすると、廃棄製品から溶け出したはんだに含まれる鉛によって、地下水が汚染される恐れがある。
この汚染された地下水が飲料水に使用されると、人体に悪影響を及ぼすため、近年、使用済み電気製品の処理方法が、大きな問題となっている。
従来、このような鉛による汚染を防止するため、使用済み電気製品を廃棄およびリサイクル処理をする際、製品を分解して、プリント基板を取り出し、鉛入りはんだを分離回収した後、破砕して素材選別したり、汚染水が漏出しないように設計された管理型処分場に埋設処理したりしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような鉛による環境汚染を防止するため、鉛の完全なリサイクル、または鉛の使用の中止などが要求されている。
また、循環型経済社会を実現していくために、2001年には廃棄家電製品のメーカー引き取りとリサイクルが義務化される。
現状では、図4に示すように、鉛入りのはんだを用いたプリント基板やこれを内蔵する電気製品(以下、単に、鉛入り製品という。)と、鉛を含まないはんだを用いたプリント基板やこれを内蔵する電気製品(以下、単に、鉛フリー製品という。)とが製造され、販売されると、両者が市場で混在し、そのままの状態で回収される。そして、回収された製品は、未処理のまま管理型処分場に埋め立てられるか、回収された製品を分解して鉛を分離回収して無害化した後、素材選別し、リサイクルしたり、廃棄物の飛散及び流出を防止しただけの安定型処分場に埋め立てたりする。
【0004】
廃棄製品を管理型処分場に埋め立てる方法は、作業が簡易ではあるが、管理型処分場は建設費が高いため、処理費用が高くつくという問題がある。
また、素材のリサイクルを行わずに埋め立てる方法では、資源の有効活用という点で問題がある。さらに、処理場そのものが飽和状態になりつつあるという問題がある。
また、回収された廃棄製品を分解してはんだを分離回収するには、そのための設備投資と作業工数を必要とするため、処理費用が高くなる。
鉛フリー製品は、破砕するだけで建設費の安い安定型処分場に埋めることができるため、回収された廃棄製品から鉛フリー製品と鉛入り製品とを選別すれば、処理費用を抑制することができる。
しかし、現状では、回収された廃棄製品を鉛フリー製品と鉛入り製品とに選別するには、非常な手間がかかり効率が良くない。そのため、鉛フリー製品と鉛入り製品との簡単な識別手段が要求されている。
本発明は、上記課題に鑑み、鉛フリーか鉛入りかを簡単に識別できるプリント基板および電気製品を提供することを目的とする。
また、これらの製品のリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプリント基板は、鉛フリーのものと鉛入りのものとの選別に供するプリント基板であって、鉛を含まないはんだ材料によって電子部品が実装され、かつ鉛を含まないことを人が目視で識別可能な、鉛フリーであることを示す識別マークが添付されていることを特徴とする。
前記識別マークは、図形であるのが好ましい。
前記識別マークは、前記プリント基板のデザインと一体化されているのが好ましい。
前記電子部品の電極が、鉛を含まないはんだ材料で被覆された鉛フリー電極であることが好ましい。
前記電子部品が、鉛を含まない鉛フリー部品であることが好ましい。
前記識別マークは、前記基板へのマーキング工程で付与され、前記基板と一体化した印刷であるのが好ましい。
前記識別マークは刻印であるのが好ましい。
前記識別マークはラベルであるのが好ましい。
前記ラベルは、メーカー間で統一されていることが好ましい。
本発明の電気製品は、上記プリント基板とこれを内蔵する筐体とを具備することを特徴とする。
さらに、本発明は、上記プリント基板または上記電気製品を含む廃棄物のリサイクル方法に関し、前記プリント基板または前記電気製品を前記識別マークによって鉛入りのものと鉛を含まないものとに識別して選別する工程を含むことを特徴とする。
本発明は、上記プリント基板または上記電気製品を含む廃棄物のリサイクル方法であって、前記プリント基板または前記電気製品を前記識別マークにより鉛入りのものと鉛を含まないものとに人が目視で選別する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
以上のように、本発明によれば、人体に有害な鉛を含むものと、含まないものとを簡便に選別することができるプリント基板および電気製品を提供することができる。
また、プリント基板を内蔵する家電製品は、4大家電製品に限っても、年間2000万台生産されているため、2001年からの廃棄家電製品リサイクル作業において、仮に100万台の鉛フリー製品が混在して回収されるとすると、鉛フリー製品を識別マークで選別して、はんだの分離回収の対象から除外することにより、およそ50億円/年の費用削減効果が期待できる。
さらに混在比率は年々増加することが予想されるため、効果金額も比例して増大すると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上記のように、本発明は、鉛フリーはんだ材料を用いて電子部品を実装したプリント基板や、このプリント基板を内蔵する電気製品の筐体に、鉛フリーであることを示す識別マークを添付するものである。
この添付された識別マークによって、図5に示すように、市場で混在したままの状態で回収された製品を、鉛フリー製品と鉛入り製品とに簡易に選別することができる。
鉛フリー製品は、人体に有害な鉛の含有量が非常に少なく、このまま埋め立てても、人体にほとんど影響を及ぼさないため、はんだを分離回収することなく、未処理のまま破砕・素材選別して、リサイクルしたり、リサイクルできない素材は、安価な安定型処分場に埋めたりすることができる。
また、分解して鉛を分離除去する無害化処理を行うのは、鉛入り製品だけでよくなる。さらに、処理費用が高い管理型処分場に埋設する製品を減らすことができる。
このように、本発明によると、廃棄製品のリサイクル費用および処理費用を抑制することができる。
【0008】
なお、プリント基板に実装される部品は、その電極が鉛フリーはんだで被覆されている鉛フリー電極であると、部品が実装されたプリント基板に含まれる鉛をより少なくできるとともに、電極と鉛フリーはんだ材料との接合強度を向上させ、製品の寿命を長くすることができる。
また、プリント基板に実装する部品が、ハイブリットICのように、ICチップやコンデンサーなどを基板にはんだづけして構成される部品などである場合は、ICチップなどを接合するはんだ材料にも鉛フリーはんだ材料を用いると、部品が実装されたプリント基板を完全に鉛フリー化できる。このような鉛フリー部品にも、上記と同様な識別マークを添付しておくとよい。
【0009】
識別マークの添付方法としては、印刷、刻印またはラベル等を用いるのが効果的である。
印刷としては、塗装、スタンプ、インクジェット等が使用でき、製造番号等の印字や、外観デザイン印刷等の従来からのマーキング工程と一体化してできる点から好ましい。特に、筐体の外観デザインと一体化した印刷塗装は、消えにくい点で好ましい。
また、インクに蛍光塗料などを用いると、光学センサーなどを使用して、簡単、迅速かつ大量に識別できるため好適である。
刻印は、製品の筐体の成形加工時に、製品デザインと合わせた一体加工や最終工程での刻印が可能であり、煩雑な工程を必要としないとともに、消えにくい点で好適である。
ラベルは、各種電気製品やメーカー各社間で、識別マークを統一しやすく、リサイクル作業工程での識別がより簡単になる点で好ましい。
なお、電気製品に添付する識別マークは、プリント基板実装品と筐体のどちらか一方に添付するのでもよいが、後の工程で製品の分解作業をしなくてもよいという点から、筐体にマークを添付しておくほうが都合がよい。
【0010】
上記のような識別マークを添付されたプリント基板や電気製品の廃棄物をリサイクルする工程は、回収されたプリント基板や電気製品を識別マークによって、鉛フリーのものと鉛入りのものを選別する工程を含む。
このように廃棄製品を識別マークによって選別すると、作業を迅速に行えて好適である。
また、電気製品の筐体に添付された識別マークによって製品を選別できると、後の製品の分解工程を省略できる。
廃棄製品を選別するには、人が識別マークから判断して手作業で分けたり、ベルトコンベアーに製品を乗せて運搬し、認識カメラのような識別マークを認識できるセンサーを用いて、製品をより分けたりするなどの方法がある。
【実施例】
【0011】
以下に、具体的な実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。
《実施例1》
図1は、ポータブルミニディスクプレーヤー用のプリント基板に、リフローはんだ付けプロセスによって各種部品を実装する工程である。
まず、鉛フリーはんだペースト2をプリント基板1の電極上に印刷し、このペースト上に、各種部品3を、その電極4が基板側に向くようにして配置した。そして、熱風や遠赤外線などの熱源5を用いてはんだを溶融して、部品を実装した(リフローはんだ付け)。ついで、プリント基板1に、鉛フリーであることを示す識別マークとしてラベルを貼りつけた。さらに、このプリント基板1を内蔵する製品の筐体6に同様のラベルを貼り付けた。
得られたミニディスクプレーヤーは、使用後回収されたとき、添付されたラベルによって、容易に鉛フリーの製品であることが識別でき、この後のリサイクル工程を簡略することができた。
【0012】
《実施例2》
図2は、電気炊飯器用のプリント基板にフローはんだ付けプロセスによって各種部品を実装する工程である。
まず、プリント基板11に、電極部が鉛フリーはんだ材料で被覆された部品12を所定の位置に挿入した。そして、この基板11を鉛フリーはんだ噴流13上を通過させて部品を実装した(フローはんだ付け)。ついで、プリント基板11に、鉛フリーであることを示す識別マークとして、製品デザインと一体化したマークを印刷した。さらに、このプリント基板11を内蔵する製品の筐体14に同様のマークを印刷した。
この炊飯器は使用後回収されたとき、印刷されたマークによって、鉛フリー製品であることが容易に識別でき、この後のリサイクル工程を簡略化することができた。
【0013】
《実施例3》
図3は、電子部品自動装着機の制御用のプリント基板にリフローおよびフロー混載プロセスによって、各種部品を実装する工程である。
プリント基板21に、上記と同様のリフローおよびフロー工程によって、鉛フリー部品22を実装し、得られたプリント基板21に、識別マークを刻印した。
この基板は、使用後回収されてきたとき、刻印されたマークによって、鉛フリーの基板であることが容易に識別でき、リサイクル工程を簡略化できた。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明のプリント基板および電気製品は、廃棄物のリサイクルに好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】ポータブルミニディスクプレーヤー用のプリント基板に、リフローはんだ付けプロセスによって各種部品を実装する工程を示す図である。
【図2】電気炊飯器用のプリント基板にフローはんだ付けプロセスによって各種部品を実装する工程を示す図である。
【図3】電子部品自動装着機の制御用のプリント基板に、リフローおよびフロー混載プロセスによって、各種部品を実装する工程を示す図である。
【図4】従来の、製品の製造、販売、回収および廃棄処理の過程を示す図である。
【図5】本発明による、製品の製造、販売、回収および廃棄処理の過程を示す図である。
【符号の説明】
【0016】
1、11、21 プリント基板
2 鉛フリーはんだペースト
3、12、22 部品
4 部品電極
5 熱源
6、14 筐体
13 鉛フリーはんだ噴流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛フリーのものと鉛入りのものとの選別に供するプリント基板であって、
鉛を含まないはんだ材料によって電子部品が実装され、かつ鉛を含まないことを人が目視で識別可能な、鉛フリーであることを示す識別マークが添付されていることを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
前記識別マークは、図形である請求項1記載のプリント基板。
【請求項3】
前記識別マークは、前記基板のデザインと一体化されている請求項1または2記載のプリント基板。
【請求項4】
前記電子部品の電極が、鉛を含まないはんだ材料で被覆された鉛フリー電極である請求項1〜3のいずれかに記載のプリント基板。
【請求項5】
前記電子部品が、鉛を含まない鉛フリー部品である請求項1〜4のいずれかに記載のプリント基板。
【請求項6】
前記識別マークは、ラベルである請求項1〜5のいずれかに記載のプリント基板。
【請求項7】
前記識別マークは、前記基板へのマーキング工程で付与され、前記基板と一体化した印刷である請求項1〜5のいずれかに記載のプリント基板。
【請求項8】
前記識別マークは、刻印である請求項1〜5のいずれかに記載のプリント基板。
【請求項9】
前記ラベルは、メーカー間で統一されている請求項6記載のプリント基板。
【請求項10】
請求項1記載のプリント基板とこれを内蔵する筐体とを具備する電気製品。
【請求項11】
請求項1記載のプリント基板または請求項10記載の電気製品を含む廃棄物のリサイクル方法であって、前記プリント基板または前記電気製品を前記識別マークによって鉛入りのものと鉛を含まないものとに識別して選別する工程を含むことを特徴とする廃棄物のリサイクル方法。
【請求項12】
請求項1記載のプリント基板または請求項10記載の電気製品を含む廃棄物のリサイクル方法であって、前記プリント基板または前記電気製品を前記識別マークにより鉛入りのものと鉛を含まないものとに人が目視で選別する工程を含むことを特徴とする廃棄物のリサイクル方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−44180(P2009−44180A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272288(P2008−272288)
【出願日】平成20年10月22日(2008.10.22)
【分割の表示】特願2007−107126(P2007−107126)の分割
【原出願日】平成12年1月6日(2000.1.6)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】