説明

プリント配線基板の製造方法

【課題】 下地金属層にNi−Ti−Mo合金を設けた2層フレキシブル配線基板のエッチング処理を良好に行い、微細配線加工品でも十分な絶縁信頼性を有するプリント配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】 絶縁体フィルムの少なくとも片面にチタン、モリブデン、ニッケルを含有する下地金属層を、接着剤を介さずに直接形成し、該下地金属層上に銅被膜層を形成した2層フレキシブル基板に、エッチング法によってパターン形成するプリント配線基板の製造方法において、前記2層フレキシブル基板を、塩化第2鉄溶液または塩酸を含む塩化第2銅溶液によりエッチング処理する工程と、その後、得られた2層フレキシブル基板を塩酸を含む酸性エッチング液で処理する工程と、さらにその後、フェリシアン化カリウムまたは過マンガン酸塩を含むアルカリ性エッチング液で処理する工程を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント基板、TABテープ、COFテープ等の電子部品の素材となるプリント配線基板の製造方法に係り、より詳しくは下地金属層にNi−Ti−Mo合金を設けた2層フレキシブル基板のエッチング処理を良好に行い、微細配線加工品でも十分な絶縁信頼性を有するプリント配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フレキシブル配線板を作製するために用いられる基板は、絶縁体フィルム上に接着剤を用いて導体層となる銅箔を貼り合わせた3層フレキシブル基板(例えば、特許文献1参照)と、該絶縁体フィルム上に接着剤を用いることなしに乾式めっき法または湿式めっき法により導体層となる銅被膜層を直接形成した2層フレキシブル基板とに大別される。
ところで、近年の電子機器の高密度化に伴い、配線幅も狭ピッチ化した配線板が求められるようになってきている。3層フレキシブル基板の場合は、基板である絶縁体フィルム上に形成した銅被膜層に所望の配線パターンに従ってエッチングして配線部の形成を行って配線板を製造する場合に、配線部の側面がエッチングされるといういわゆるサイドエッチングが生ずるために配線部の断面形状が裾広がりの台形になり易い。このため、配線幅も狭ピッチ化した配線板が求められるようになってきており、この要求を満たすために、従来の貼り合わせ銅箔の代わりに、2層フレキシブル基板が現在主流になりつつある。
2層フレキシブル基板を作製するには、絶縁体フィルム上に均一な厚さの銅導体層を形成する手段として、通常は、電気銅めっき法が採用される。電気銅めっきを行うために、電気銅めっき被膜を施す絶縁体フィルムの上に薄膜の金属層を形成して表面全面に導電性を付与し、その上に電気銅めっき処理を行うのが一般的である(例えば、特許文献2参照)。また、絶縁体フィルム上に薄膜の金属層を得るためには、真空蒸着法、イオンプレーティング法などの乾式めっき法を使用するのが一般的である。
【0003】
上記2層フレキシブル基板において、絶縁体フィルムと銅導体層との密着性は、その界面にCuOやCu2O等の脆弱層が形成されるために非常に弱く、プリント配線板に要求される銅層との密着強度を維持するため、絶縁体フィルムと銅導体層との間に下地金属層として、Ni−Cr合金層を設けることが行われている(特許文献3参照)。しかしながら、最近のフレキシブル基板においては、配線パターンの高密度化、さらに他方では高電圧での使用が進み、絶縁信頼性が重要になってきており、この特性の指標として恒温恒湿バイアス試験(HHBT)等が実施されている。
【0004】
下地金属層としてNi−Cr合金層を設けた2層フレキシブル基板を用いて、たとえば、85℃−85%R.H.の恒温恒湿槽内で、印加電圧40VでHHBTを行った場合、配線ピッチ30μmでは、実用上必要とされる所定の絶縁抵抗値に対し、1000時間以上の絶縁信頼性を確保できるのに対し、サブトラクティブ法で配線ピッチを30μmより狭ピッチに加工した場合には、絶縁信頼性を1000時間以上保持することができないというのが実状であった。
【0005】
このような状況下、2層フレキシブル基板の改良も行われており、特許文献4では、上記特性の改善のため、下地金属層にNi−Ti−Mo合金を設けた2層フレキシブル基板を提案している。この2層フレキシブル基板によれば、下地金属層にチタンが含まれていることから、耐熱ピール強度の低下を防止することができ、また、同時にモリブデンが含まれていることから、耐食性、絶縁信頼性を向上することができる。したがって、この2層フレキシブル基板を用いることによって、密着性、耐食性が高く、欠陥のない配線部を有する信頼性の高い狭幅、狭ピッチの配線部を持ったフレキシブル配線板を効率よく得ることができるので、その効果は極めて大きい。
【0006】
しかしながら、上記下地金属層にNi−Ti−Mo合金を設けた2層フレキシブル基板にサブトラクティブ法で狭ピッチ配線を形成すると、下地金属層としてNi−Cr合金層を用いた基板よりも下地金属層のエッチングスピードが遅く、下地金属層が銅配線とエッチングされた絶縁フィルムとの間に帯状に残る傾向がある。このように狭ピッチでの配線加工で配線間に金属成分が残ることは、絶縁信頼性が悪くなるばかりでなく、配線加工上の不具合にもつながってしまう。
【0007】
通常、2層めっき基板にサブトラクティブ法により配線パターンを形成する際は、エッチング液として、例えば、塩化第2鉄(FeCl)を水に溶解した塩化第2鉄溶液や、塩化第2銅(CuCl・2HO)を水に溶解し、適量の塩酸を加えた塩化第2銅溶液を使用してエッチングすることが行われるが、特許文献5では、上記エッチング液により配線を形成後、過マンガン酸カリウム溶液等の酸化剤を用いて洗浄することで、銅配線のサイドエッチングを抑えて配線間に残留する金属成分を除去する方法を開示している。また、特許文献6では、塩化第2鉄溶液または塩酸を含む塩化第2銅溶液でエッチング処理後、塩酸を含む酸性エッチング液、過マンガン酸カリウム溶液等のアルカリ性エッチング液の1種または2種以上を併用して処理することにより、Ni−Cr合金のエッチング残りを溶解することを提案している。この場合、銅配線のサイドエッチングの少ない方法でNi−Cr合金のエッチング残りを除去することは可能であった。
【特許文献1】特開平6−132628号公報
【特許文献2】特開平8−139448号公報
【特許文献3】特開平6−120630号公報
【特許文献4】特開2006−73765公報
【特許文献5】特開2003−188495号公報
【特許文献6】特開2005−23340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、Ni−Ti−Mo合金はNi−Cr合金よりも塩化第2鉄溶液または塩酸を含む塩化第2銅溶液に対してエッチングスピードが遅く、下地金属層にNi−Ti−Mo合金を設けた2層フレキシブル基板にサブトラクティブ法で狭ピッチ配線を形成すると、銅リードの周囲に下地金属層が帯状に溶け残りやすい。上記の酸性エッチング液でさらにエッチング処理をした場合、Ni−Cr合金の場合とは異なり、銅リード周辺のNi−Ti−Mo合金の溶け残りを除去することができない。また、上記アルカリ性エッチング液で処理すると若干の溶解は見られるが、除去するまでには至らず、十分な効果が得られないという課題を有していた。
【0009】
本発明の目的は、下地金属層にNi−Ti−Mo合金を用いた2層フレキシブル配線板の製造における上記の問題点を解決し、微細配線加工品でも十分な絶縁信頼性を有するプリント配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、下地金属層にNi−Ti−Mo合金を設けた2層フレキシブル基板にサブトラクティブ法で微細配線を形成するためのエッチング方法について詳しく検討を加えた結果、塩化第2鉄溶液または塩酸を含む塩化第2銅溶液で銅リードを形成後、上記アルカリ性エッチング液で処理した後、さらに上記酸性エッチング液で処理した場合、銅リード周辺の下地金属層の溶け残りを除去することは困難であり、効果が得られず、一方、塩化第2鉄溶液または塩酸を含む塩化第2銅溶液で銅リードを形成後、銅リード周辺の下地金属層の溶け残りを除去するために上記酸性エッチング液で処理した後、さらに上記アルカリ性エッチング液で処理することにすれば、銅リード周辺の下地金属層の溶け残りを除去できることを見出し、本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明に係るプリント配線基板の製造方法は、絶縁体フィルムの少なくとも片面にチタン、モリブデン、ニッケルを含有する下地金属層を、接着剤を介さずに直接形成し、該下地金属層上に銅被膜層を形成した2層フレキシブル基板に、エッチング法によってパターン形成するプリント配線基板の製造方法において、前記2層フレキシブル基板を、塩化第2鉄溶液または塩酸を含む塩化第2銅溶液によりエッチング処理する工程と、その後、得られた2層フレキシブル基板を塩酸を含む酸性エッチング液で処理する工程と、さらにその後、フェリシアン化カリウムまたは過マンガン酸塩を含むアルカリ性エッチング液で処理する工程を具備することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明方法は、前記下地金属層が、チタンの割合が5〜22重量%、モリブデンの割合が2〜40重量%で、残部がニッケルのNi−Ti−Mo合金を主として含有し、膜厚が3〜50nmであることを特徴とし、さらに、前記塩酸を含む酸性エッチング液が、1〜12Nの塩酸を含み、さらに酸化剤、界面活性剤、錯化剤、促進剤、銅の腐食抑制剤、および還元剤のうち少なくとも1種以上を含有する溶液であることを特徴とし、さらにまた、前記フェリシアン化カリウムまたは過マンガン酸塩を含むアルカリ性エッチング液が、0.1〜5重量%のフェリシアン化カリウムまたは過マンガン酸塩と、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含み、さらに酸化剤、錯化剤、pH緩衝剤および促進剤のうち少なくとも1種以上を含有する溶液であることを特徴とするものである。
なお、絶縁体フィルムとしては、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルムから選ばれた樹脂フィルムを用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプリント配線基板の製造方法は、下地金属層に密着性、耐食性の高いNi−Ti−Mo合金を設けた2層フレキシブル基板にサブトラクティブ法でプリント配線基板を形成するためのエッチング方法として、塩化第2鉄溶液又は塩酸を含む塩化第2銅溶液で銅リードを形成後、塩酸を含む酸性エッチング液で処理し、さらにフェリシアン化カリウム又は過マンガン酸塩を含むアルカリ性エッチング液で処理することで、微細配線加工が可能となり、また絶縁信頼性の高いプリント配線基板を得ることができ、その工業的価値は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明において、絶縁体フィルムの少なくとも片面にチタン、モリブデン、ニッケルを含有する下地金属層を、接着剤を介さずに直接形成し、該下地金属層上に銅被膜層を形成した2層フレキシブル基板に、エッチング法によってパターン形成する際、前記2層フレキシブル基板を、塩化第2鉄溶液または塩酸を含む塩化第2銅溶液によりエッチング処理し、その後、得られた2層フレキシブル基板を塩酸を含む酸性エッチング液で処理し、さらにその後、フェリシアン化カリウムまたは過マンガン酸塩を含むアルカリ性エッチング液で処理することとしたのは、以下に記載する理由による。
【0015】
チタン、モリブデン、ニッケルを含有する下地金属層を、接着剤を介さずに直接形成し、該下地金属層上に銅被膜層を形成した2層フレキシブル基板に、塩化第2鉄溶液または塩酸を含む塩化第2銅溶液によるエッチングで微細加工パターンを形成すると、下地金属層のNi−Ti−Mo合金は銅導体層よりもエッチング速度が遅いためリードの周囲にNi−Ti−Mo合金が溶け残ってしまう。微細加工の場合、リードとリードのスペースが、下地金属層の溶け残りのため狭くなってしまうことは配線加工での不具合に繋がり、さらには絶縁信頼性が悪くなる可能性がある。
そこで、絶縁体フィルムの少なくとも片面に、チタン、モリブデン、ニッケルを含有する下地金属層を、接着剤を介さずに直接形成し、該下地金属層上に銅被膜層を形成した2層フレキシブル基板に、エッチング法によってパターン形成する際、前記2層フレキシブル基板を、塩化第2鉄溶液または塩酸を含む塩化第2銅溶液によりエッチング処理を行い、その後、得られた2層フレキシブル基板を塩酸を含む酸性エッチング液で処理して、リード周辺の溶け残ったNi−Ti−Mo合金部の不動態化した表面層を除去し、さらにフェリシアン化カリウムまたは過マンガン酸塩を含むアルカリ性エッチング液で処理して、リード周辺のNi−Ti−Mo合金を除去すれば、銅層をサイドエッチングしてしまうことによりリード細りさせることなく、微細配線加工が可能となる。また、前記絶縁体フィルム上に、前記下地金属層を採用し、前記本発明のエッチング法によってパターンを形成することによって、密着性が高く、耐食性を有し、かつ絶縁信頼性の高い銅導体層を形成したプリント配線基板を得ることができる。
【0016】
本発明において絶縁基板材料として用いられる絶縁体フィルムは、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルムから選ばれる市販の熱硬化フィルムである。ポリイミド系のフィルムおよびポリアミド系のフィルムは、はんだリフロー等の高温の接続が必要な用途に適している点で好ましい。
また、上記絶縁体フィルムは、フィルム厚さが8〜75μmのものが好適に使用することができる。なお、ガラス繊維、CNT等の無機質材料を適宜添加することもできる。
【0017】
本発明では、前記フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介さずに乾式めっき法で直接下地金属層としてNi−Ti−Mo合金を形成し、該下地金属層上に所望の厚さの銅導体層を形成する。ここで、前記下地金属層として、チタンの割合を5〜22重量%、モリブデンの割合を2〜40重量%とし、残部を主としてニッケルのNi−Ti−Mo合金とし、膜厚を3〜50nmとしたのは、以下に示す理由による。
すなわち、チタンは熱劣化によって耐熱ピール強度が著しく低下することを防止するために必要であるが、5重量%未満では耐熱ピール強度が熱劣化で著しく低下することを防止できなくなるため好ましくなく、他方、22重量%を超えるとエッチングが難しくなるためである。なお、好ましくは5〜15重量%であり、より好ましくは6〜12重量%である。
また、モリブデンは耐食性、絶縁信頼性の向上のために必要であるが、2重量%未満では添加効果が現れず、耐食性、絶縁信頼性の向上が見られないため好ましくなく、他方、40重量%を超えると耐熱ピール強度が極端に低下する傾向にあるため好ましくない。
さらに、通常ニッケル基の合金ターゲットの場合、ニッケルの割合が93%より大きいとスパッタリングターゲット自体が強磁性体となってしまい、マグネトロンスパッタリングで成膜する場合には、成膜スピードが低下してしまうため好ましくないが、本発明のターゲット組成(ニッケルのNi−Ti−Mo合金)では、ニッケル量は93%以下となるため、マグネトロンスパッタリング法を用いて成膜した場合でも良好な成膜レートを得ることができる。また、Ni−Ti−Mo合金に耐熱性や耐食性を向上する目的で遷移金属元素を目的特性に合わせて適宜添加することが可能である。なお、本発明の下地金属層には、Ni−Ti−Mo合金以外に、ターゲット作製時に取り込まれるなどして含まれる1重量%以下の不可避不純物が存在していてもよいことはいうまでもない。
【0018】
さらにまた、下地金属層の膜厚を3〜50nmとしたのは、3nm未満と薄いと配線加工を行う時のエッチング液が染み込み配線部が浮いてしまう等により配線ピール強度が著しく低下するなどの問題が発生し、他方、膜厚が50nmを超えて厚くなると、エッチングを行うことが難しくなるためである。
【0019】
本発明において、前記絶縁体フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介さずに直接下地金属層としてNi−Ti−Mo合金を形成する方法として採用する乾式めっき法としては、抵抗加熱蒸着、イオンプレーティング蒸着、スパッタリング蒸着などの手法を用いることができる。その際、乾式めっき法のみで銅被膜層を形成することも可能であるが、乾式めっき法で銅層を形成した後、該銅被膜層の上にさらに湿式めっき法で銅被膜層を積層形成することは、比較的厚い膜を形成することに適している。
なお、本発明法により製造されるプリント配線基板の場合は、下地金属層上に形成された銅被膜層を、乾式めっき法で形成された銅被膜層と該銅被膜層の上に湿式めっき法で積層形成された銅被膜層として形成することができる。乾式めっき法で形成された銅被膜層と該銅被膜層の上に湿式めっき法で積層形成された銅被膜層を合わせた銅被膜層の膜厚は、10nm〜35μmであることが好ましい。10nmよりも薄い場合は、乾式めっき法で形成される銅被膜層が薄くなるため、その後の湿式めっき工程で給電がし辛くなるため好ましくなく、他方、35μmよりも厚くなると生産性が低下するため好ましくない。
【0020】
次に、本発明のプリント配線基板の製造方法を具体的に説明する。
まず、前記したようにポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルムから選ばれる市販の熱硬化フィルムである絶縁体フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介さずに直接下地金属層を形成し、該下地金属層上に所望の厚さの銅導体層を形成する。その際、前記フィルムは通常水分を含んでおり、乾式めっき法によりチタン、モリブデン、ニッケルを主として含有する下地金属層を形成する前に、大気乾燥または真空乾燥を行い、フィルム中に存在する水分を取り去っておく必要がある。これが不十分であると、下地金属層との密着性が悪くなってしまうからである。また、乾燥後のフィルム表面を改質することも可能である。改質層の形成方法としては、薬品による化学処理あるいは、プラズマ処理やコロナ放電、紫外線照射処理等の物理処理を採用することができる。
【0021】
乾式めっき法によりチタン、モリブデン、ニッケルを主として含有する下地金属層を形成する場合、例えば巻取式スパッタリング装置を用い下地金属層を形成する場合には、下地金属層の組成を有する合金ターゲットをスパッタリング用カソードに装着するか、あるいはニッケル−チタン合金ターゲットとモリブデンターゲットを2基のカソードに装着して、同時スパッタリングを行い、各カソードの投入電力をコントロールすることによって所望の膜組成の下地金属層を得ることも可能である。
具体的には、フィルムをセットしたスパッタリング装置内を真空排気後、Arガスを導入し、装置内を1.3Pa程度に保持し、さらに装置内の巻取巻出ロールに装着した絶縁体フィルムを毎分3m程度の速さで搬送しながら、カソードに接続したスパッタリング用直流電源より電力を供給しスパッタリング放電を開始し、フィルム上にニッケル−チタン−モリブデン合金を主として含有する金属層を連続成膜する。この成膜によって所望の膜厚のニッケル−チタン−モリブデン合金を主として含有する下地金属層がフィルム上に形成される。
【0022】
続いて、銅被膜層を形成するため、前記と同様に、銅ターゲットをスパッタリング用カソードに装着したスパッタリング装置を用い、乾式めっき法により銅被膜層を成膜することができる。この時、下地金属層と銅被膜層は同一真空室内で連続して形成することが好ましい。また、該銅被膜層の上にさらに湿式めっき法により銅被膜層を形成する場合には、電気銅めっき処理のみで行う場合と、一次めっきとして無電解銅めっき処理、二次めっきとして電解銅めっき処理等の湿式めっき法を組み合わせて行う場合がある。
ここで、一次めっきとして無電解銅めっき処理を行うのは、乾式めっきを蒸着で行った場合、粗大なピンホールが形成されることがあり、表面に樹脂フィルムが露出する箇所ができることがあるため、基板全面に無電解銅めっき被膜層を形成させることにより、フィルム露出面を覆って基板面全面を良導体化し、これによってピンホールの影響を受けることがないようにするためである。そして、前記無電解銅めっき被膜層の上に、二次めっきとして電気銅めっき処理を施す。これは所望の厚さの銅導体層を形成するためである。
なお、無電解めっきで使用する無電解めっき液は、含まれる金属イオンが自己触媒性を有し、かつヒドラジン、ホスフィン酸ナトリウム、ホルマリンなどの還元剤によって還元されて金属析出する還元析出型のものであればいずれでもよいが、本発明の主旨からいって、下地金属層に生じているピンホールにより露出した絶縁体フィルムの露出部分の良導体化をはかることが目的でもあることから、導電性が良好で比較的作業性のよい無電解銅めっき液が最適である。また、かかる一次めっきとしての無電解銅めっき処理による銅めっき被膜層の厚さは、基板面におけるピンホールによる欠陥修復が可能で、かつ、後述する二次めっきとして電気銅めっき処理を施す際に電気銅めっき液によって溶解されない程度の厚さであればよく、0.01〜1.0μmの範囲であることが好ましい。
【0023】
このようにして下地金属層上に形成された銅被膜層によれば、下地金属層形成時に発生した大小様々なピンホールによる影響を受けない良好で導体層の密着度の高いプリント配線基板を得ることが可能となる。
なお、本発明において行われる湿式銅めっき処理は、一次、二次ともに常法による湿式銅めっき法における諸条件を採用すればよい。また、このようにして下地金属層上に形成する乾式・湿式めっき法による銅被膜層の合計厚さは、前記したように生産性を考慮すると35μm以下が好ましい。
【0024】
次に、前記した本発明に係る2層フレキシブル基板を用いて、該2層フレキシブル基板の少なくとも片面に、配線パターンを個別に形成する。また、所定の位置に層間接続のためのヴィアホールを形成して、各種用途に用いることもできる。
より具体的には、(a)高密度配線パターンをフレキシブルシートの少なくとも片面に個別に形成する。(b)前記配線層が形成されたフレキシブルシートに、該配線層とフレキシブルシートとを貫通するヴィアホールを形成する。(c)必要に応じて前記ヴィアホール内に導電性物質を充填して該ホール内を導電化する。前記配線パターンの形成方法としては、フォトエッチング等の従来公知の方法、例えば、少なくとも片面に銅被膜層形成された2層フレキシブル基板を準備して、該銅上にスクリーン印刷あるいはドライフィルムをラミネートして感光性レジスト膜を形成後、露光現像してパターニングする方法を採用することができる。
【0025】
次いで、エッチング液で該金属箔を選択的にエッチング除去した後、レジストを除去して所定の配線パターンを形成する。
具体的には、前記2層フレキシブル基板を、塩化第2鉄溶液又は塩酸を含む塩化第2銅溶液によりエッチング処理を行う。その後、得られた2層フレキシブル基板を塩酸を含む酸性エッチング液で処理する。塩酸を含む酸性エッチング液は、1〜12Nの塩酸を含み、さらに酸化剤、界面活性剤、錯化剤、促進剤、銅の腐食抑制剤、および還元剤のうち少なくとも1種以上を含有する溶液であることが好ましい。これら添加剤の配合量は一般に0.01〜20%とするのが好ましい。また、市販されているNi−Cr下地金属層の除去用のものを用いることが可能で、処理方法は、スプレー法、浸漬法のいずれでも可能である。酸性エッチング液の処理温度は、好ましくは20℃〜70℃であるが、温度が低いと不動態層の除去が不十分になりやすくエッチング時間が長くなる。また、温度が高いと塩酸ミストの発生が多くなり、銅の溶解量も増加するため、より好ましくは40℃〜60℃とする。前記塩酸を含む酸性エッチング液の処理時間は30秒から3分が好ましい。さらにその後、フェリシアン化カリウム又は過マンガン酸塩を含むアルカリ性エッチング液で処理する。フェリシアン化カリウム又は過マンガン酸塩を含むアルカリ性エッチング液は、0.1〜5重量%のフェリシアン化カリウム又は過マンガン酸塩と、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを含み、さらに酸化剤、錯化剤、pH緩衝剤及び促進剤のうち少なくとも1種以上を含有する溶液であることが好ましい。
【0026】
アルカリ性エッチング液はフェリシアン化カリウム又は過マンガン酸塩から選ばれる酸化剤を少なくとも1種以上を含み、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ類を添加してアルカリ性にしたものである。アルカリ性エッチング液は錯化剤、pH緩衝剤、反応促進剤などを含むことができる。
また、アルカリ性エッチング液は市販のデスミア処理液を用いることが可能で、いずれにしても酸化剤の濃度は、好ましくは0.01〜5%であるが、高濃度になると基材のポリイミドフィルムにダメージが発生し、低濃度ではエッチング速度が低くエッチング時間が増加するため0.5〜3%がより好ましい。また、アルカリ類添加によるpH範囲は、好ましくは10〜14であるが、pHが高いとエッチング速度が速いがポリイミドのダメージがでてくる。pHが低いと素材のダメージはないが、エッチング速度が遅くなるため、より好ましいpH範囲は11〜13である。
アルカリ性エッチング液の処理方法は、スプレー法、浸漬法のいずれでも可能である。処理温度は、好ましくは10〜90℃であるが、高温では基材のポリイミドフィルムのダメージが発生し、低温ではエッチング速度が低くエッチング時間が増加するため20〜50℃がより好ましい。アルカリ性エッチング液の処理時間は、好ましくは15秒〜5分である。銅の溶解がないため処理時間は長くても差し支えないが、工程上30秒〜2分がより好ましい。
【0027】
本発明方法は、前記したように、絶縁体フィルムの少なくとも片面に、チタン、モリブデン、ニッケルを含有する下地金属層を、接着剤を介さずに直接形成し、該下地金属層上に銅被膜層を形成した2層フレキシブル基板に、エッチング法によってパターン形成するプリント配線基板の製造方法において、前記2層フレキシブル基板を、塩化第2鉄溶液又は塩酸を含む塩化第2銅溶液によりエッチング処理を行い、その後、得られた2層フレキシブル基板を塩酸を含む酸性エッチング液で処理し、さらにフェリシアン化カリウム又は過マンガン酸塩を含むアルカリ性エッチング液で処理することによって、前記2層フレキシブル基板を、塩化第2鉄溶液又は塩酸を含む塩化第2銅溶液によりエッチング処理を行い、その後、得られた2層フレキシブル基板を塩酸を含む酸性エッチング液で処理して、リード周辺の溶け残ったNi−Ti−Mo合金部の不動態化した表面層を除去し、さらにフェリシアン化カリウムまたは過マンガン酸塩を含むアルカリ性エッチング液で処理して、リード周辺のNi−Ti−Mo合金を除去することにより、銅層をサイドエッチングしてしまうことによりリード細りさせることなく、微細配線加工を行う。
【0028】
本発明のプリント配線基板の製造方法により、エッチング法を用いてパターン形成されたプリント配線基板は、例えば30μmピッチでパターン形成されたとき、85℃−85%R.H.の環境下、印加電圧40Vでの恒温恒湿バイアス試験(HHBT試験)で、絶縁信頼性が1000時間以上であるという、優れた特性を得ることができ、高い絶縁信頼性を有するプリント配線基板を得ることができる。配線をより高密度化するためには、両面に銅被膜層が形成された2層フレキシブル基板を準備し、両面をパターン加工して基板両面に配線パターンを形成することが好ましい。全配線パターンを幾つかの配線領域に分割するかどうかは該配線パターンの配線密度の分布等によるが、例えば配線パターンを配線幅と配線間隔がそれぞれ50μm以下の高密度配線領域とその他の配線領域に分け、プリント基板との熱膨張差や取扱い上の都合等を考慮し、分割する配線基板のサイズを10〜65mm程度に設定して適宜分割すればよい。
【0029】
また、前記ヴィアホールの形成方法としては、従来公知の方法を使用でき、例えばレーザー加工、フォトエッチング等により、前記配線パターンの所定の位置に、該配線パターンとフレキシブルシートを貫通するヴィアホールを形成する。ヴィアホールの直径は、ホール内の導電化に支障がない範囲内で小さくすることが好ましく、通常100μm以下、好ましくは50μm以下にする。
該ヴィアホール内には、めっき、蒸着、スパッタリング等により銅等の導電性金属を充填、あるいは所定の開孔パターンを持つマスクを使用して導電性ペーストを圧入、乾燥し、ホール内を導電化して層間の電気的接続を行う。前記導電性金属としては、銅、金、ニッケル等が挙げられる。
【実施例1】
【0030】
厚さ38μmのポリイミドフィルム(東レ・ディユポン社製、製品名「カプトン150EN」)を巻取式スパッタリング装置に装着し、その片面に下地金属層の第1層として5重量%Ti−20重量%Mo−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、5重量%Ti−20重量%Mo−Ni合金下地金属層を成膜した。別途同条件で成膜した一部を透過電子顕微鏡(TEM:日立製作所(株)製)を用いて膜厚を測定したところ20nmであった。
上記Ni−Ti−Mo膜を成膜したフィルム上に、さらにその上に第2層として、Cuターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用いて、スパッタリング法により銅被膜層を200nmの厚さに形成し、取り出した後、電気めっきで8μmまで銅層を成膜した。こうして形成された導電性金属層である銅層の表面に、ドライフィルムをラミネートして感光性レジスト膜を形成後、露光・現像して、配線ピッチが28μm(ライン幅;14μm、スペース幅;14μm)となるように櫛歯試験片を形成し、このパターンをマスキング材として、銅層を第二鉄溶液40°Be(ボーメ)を用いてエッチングした後、レジストを除去して試験片を作製した(サブトラクティブ法)。
その後、酸性エッチング液CH−1920に50℃、1分間浸漬し、さらにアルカリ性エッチング液MLB−213を用い、過マンガン酸カリウム濃度を約3%、pHを12に調整し、50℃、1分間浸漬し、リード周囲に見られるNi−Ti−Mo合金の帯状の溶け残り部の幅を測定した。その結果を表1に示す。
また、回路エッチングを行った後に、錫めっき処理工程を設け、回路上に錫めっきを行った。錫めっきには、錫めっき液としてシプレー・ファーイースト(株)製のLT−34を用い、溶液温度75℃で約0.6μm相当をめっきし、該サンプルを150℃、1時間熱処理した。その後、絶縁信頼性試験を3サンプルについて行った
本実施例におけるエッチング性の確認は、光学顕微鏡で観察し、図1に示すように絶縁体フィルム3の銅リード1の周囲に見られるNi−Ti−Mo合金2の帯状の溶け残り部の幅を測定した。また、HHBT試験片の絶縁抵抗値の測定を行い、10−6Ω以下の抵抗値の場合はリード間にエッチング残渣があるとみなし、エッチング性は良くないと判定した。また、耐環境試験であるHHBT試験は、上記試験片を用い、JPCA−ET04に準拠し、85℃85%RH環境下で、DC40Vを端子間に印加し、1000時間抵抗を観察する方法を採用し、抵抗が10Ω以下になった時点でショート不良と判断し、1000時間経過後も10Ω以上であれば合格とし絶縁信頼性があると判断した。なお、絶縁信頼性試験は3サンプルについて行った。
表1に示す結果より明らかなごとく、Ni−Ti−Mo合金の溶け残り幅は極めて小さく、また絶縁信頼性試験の結果についてもすべて良好であった。
【0031】
[比較例1]
実施例1と同様に、厚さ38μmのポリイミドフィルム(東レ・ディユポン社製、製品名「カプトン150EN」)を巻取式スパッタリング装置に装着し、その片面に下地金属層の第1層として5重量%Ti−20重量%Mo−Ni合金ターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用い、直流スパッタリング法により、5重量%Ti−20重量%Mo−Ni合金下地金属層を成膜した。別途同条件で成膜した一部を透過電子顕微鏡(TEM:日立製作所(株)製)を用いて膜厚を測定したところ20nmであった。
上記Ni−Ti−Mo膜を成膜したフィルム上に、さらにその上に第2層として、Cuターゲット(住友金属鉱山(株)製)を用いて、スパッタリング法により銅被膜層を200nmの厚さに形成し、取り出した後、電気めっきで8μmまで銅層を成膜した。こうして形成された導電性金属層である銅層の表面に、ドライフィルムをラミネートして感光性レジスト膜を形成後、露光・現像して、配線ピッチが28μm(ライン幅;14μm、スペース幅;14μm)となるように櫛歯試験片を形成し、このパターンをマスキング材として、銅層を第二鉄溶液40°Be(ボーメ)を用いてエッチングした後、レジストを除去して試験片を作製した(サブトラクティブ法)。
上記試験片を光学顕微鏡で観察し、リード周囲に見られるNi−Ti−Mo合金の帯状の溶け残り部の幅を測定した結果と、実施例1と同様にして絶縁信頼性試験を3サンプルについて行った結果を表1に併せて示す。
表1に示す結果より明らかなごとく、Ni−Ti−Mo合金の溶け残り幅は3.5μmと極めて大きく、また絶縁信頼性試験の結果はいずれも抵抗が10Ω以下になりショート不良となった。
【0032】
[比較例2]
実施例1と同様にして得られた2層フレキシブル基板について、実施例1と同様に塩化第二鉄溶液でエッチングして櫛歯試験片を形成した後、さらに酸性エッチング液CH−1920(メック(株)製)に50℃、1分間浸漬しリード周囲に見られるNi−Ti−Mo合金の帯状の溶け残り部の幅を測定した結果と、実施例1と同様にして絶縁信頼性試験を3サンプルについて行った結果を表1に併せて示す。
表1に示す結果より明らかなごとく、Ni−Ti−Mo合金の溶け残り幅は2.6μmと大きく、また絶縁信頼性試験の結果はいずれも抵抗が10Ω以下になりショート不良となった。また、比較例1と同様にして絶縁信頼性試験を3サンプルについて行ったが、いずれも抵抗が10Ω以下になりショート不良となった。
【0033】
[比較例3]
実施例1と同様にして得られた2層フレキシブル基板について、実施例1と同様に塩化第二鉄溶液でエッチングして櫛歯試験片を形成した後、アルカリ性エッチング液MLB−213(ローム・アンド・ハース電子材料(株)製)を用い、過マンガン酸カリウム濃度を約3%、pHを12に調整し、50℃、1分間浸漬しリード周囲に見られるNi−Ti−Mo合金の帯状の溶け残り部の幅を測定した結果と、実施例1と同様にして絶縁信頼性試験を3サンプルについて行った結果を表1に併せて示す。
表1に示す結果より明らかなごとく、Ni−Ti−Mo合金の溶け残り幅は実施例1に比べ1.8μmと大きく、また絶縁信頼性試験の結果は3サンプルのうち2サンプルの抵抗が10Ω以下になりショート不良となった。
【0034】
[比較例4]
実施例1と同様にして得られた2層フレキシブル基板について、実施例1と同様に塩化第二鉄溶液でエッチングして櫛歯試験片を形成した。その後、アルカリ性エッチング液MLB−213を用い、過マンガン酸カリウム濃度を約3%、pHを12に調整し、50℃、1分間浸漬し、さらに酸性エッチング液CH−1920に50℃、1分間浸漬し、リード周囲に見られるNi−Ti−Mo合金の帯状の溶け残り部の幅を測定した結果と、実施例1と同様にして絶縁信頼性試験を3サンプルについて行った結果を表1に併せて示す。
表1に示す結果より明らかなごとく、Ni−Ti−Mo合金の溶け残り幅は実施例1に比べ2.0μmと大きく、また絶縁信頼性試験の結果は3サンプルのうち2サンプルの抵抗が10Ω以下になりショート不良となった。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のプリント配線基板の製造方法は、下地金属層に密着性、耐食性の高いNi−Ti−Mo合金を設けた2層フレキシブル基板にサブトラクティブ法でプリント配線基板を形成するためのエッチング方法として、塩化第2鉄溶液または塩酸を含む塩化第2銅溶液で銅リードを形成後、塩酸を含む酸性エッチング液で処理し、さらにフェリシアン化カリウムまたは過マンガン酸塩を含むアルカリ性エッチング液で処理することで、微細配線加工が可能となり、また絶縁信頼性の高いプリント配線基板を得ることができ、その工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る2層フレキシブル基板の配線部の溶け残り状態を表す概略平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 銅リード
2 Ni−Ti−Mo合金層
3 絶縁体フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体フィルムの少なくとも片面にチタン、モリブデン、ニッケルを含有する下地金属層を、接着剤を介さずに直接形成し、該下地金属層上に銅被膜層を形成した2層フレキシブル基板に、エッチング法によってパターン形成するプリント配線基板の製造方法において、前記2層フレキシブル基板を、塩化第2鉄溶液または塩酸を含む塩化第2銅溶液によりエッチング処理する工程と、その後、得られた2層フレキシブル基板を、塩酸を含む酸性エッチング液で処理する工程と、さらにその後、フェリシアン化カリウムまたは過マンガン酸塩を含むアルカリ性エッチング液で処理する工程を具備することを特徴とするプリント配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記下地金属層が、チタンの割合が5〜22重量%、モリブデンの割合が2〜40重量%で、残部がニッケルのNi−Ti−Mo合金を主として含有し、膜厚が3〜50nmであることを特徴とする請求項1記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項3】
塩酸を含む酸性エッチング液が、1〜12Nの塩酸を含み、さらに酸化剤、界面活性剤、錯化剤、促進剤、銅の腐食抑制剤、および還元剤のうち少なくとも1種以上を含有する溶液であることを特徴とする請求項1または2に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項4】
フェリシアン化カリウムまたは過マンガン酸塩を含むアルカリ性エッチング液が、0.1〜5重量%のフェリシアン化カリウムまたは過マンガン酸塩と、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを含み、さらに酸化剤、錯化剤、pH緩衝剤および促進剤のうち少なくとも1種以上を含有する溶液であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプリント配線基板の製造方法。
【請求項5】
絶縁体フィルムは、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリテトラフルオロエチレン系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリエチレンナフタレート系フィルム、液晶ポリマー系フィルムから選ばれた樹脂フィルムであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプリント配線基板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−262945(P2008−262945A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102387(P2007−102387)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】