説明

プリント配線板およびその製造方法

【課題】製造工程を簡素化することができるプリント配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のプリント配線板1は、金属基板2と、金属基板2の表面上に設けられた絶縁層3と、絶縁層3の表面上に設けられ、ガラス転移温度が20℃〜300℃であって熱可塑性を有するポリイミド樹脂により形成された接着層6と、接着層6の表面上に設けられた金属箔層8とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ハードディスクドライブにおける磁気ヘッドサスペンション用の基板として使用されるプリント配線板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器分野においては、電子機器の高密度化や小型化等に伴い、種々の用途に、プリント配線板が広く用いられている。例えば、データ転送の高速化が要求されるハードディスクドライブにおける磁気ヘッドを搭載するための磁気ヘッドサスペンション用の基板としてプリント配線板が使用されている。
【0003】
このようなプリント配線板としては、例えば、ステンレス(SUS)等により形成された金属基板と、金属基板の上に積層された絶縁層と、絶縁層上に積層され、所定の配線パターンが形成された銅箔からなる導電層を備え、各層を所定の形状にエッチングしたプリント配線板が開示されている。
【0004】
また、このプリント配線板においては、一般に、絶縁層と銅箔からなる導電層との間の密着強度を向上させるために、導電層が積層される絶縁層の表面上に、例えば、スパッタリング法により、クロム薄膜と銅箔膜を順次形成する方法により、導電層の下地となる導体薄膜(シード層)を形成する構成としている(例えば、特許文献1参照)。そして、導体薄膜の一部を、化学エッチング(ウェットエッチング)等の公知のエッチング法により除去することにより、絶縁層の表面に、導体薄膜を有する導電層を、セミアディティブ法により形成する構成となっている。
【0005】
また、上述のハードディスクドライブにおける磁気ヘッドサスペンション用の基板として使用されるプリント配線板としては、例えば、絶縁層の、導電層が積層された表面と反対側の表面上に、ステンレス(SUS)等により形成された金属基板を備えるプリント配線板が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2007−250747号公報
【特許文献2】特開2002−25213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のプリント配線板においては、上述のごとく、導電層の下地となる導体薄膜を形成する必要があり、導体薄膜の一部を、化学エッチング(ウェットエッチング)等の公知のエッチング法により除去する必要があるため、プリント配線板の製造工程が煩雑になるという問題があった。特に、絶縁層の、導電層が積層された表面と反対側の表面上に金属基板を備えるプリント配線板においては、金属基板側からも、上述の導体薄膜の一部を、公知のエッチング法により除去する必要があるため、プリント配線板の製造工程が更に煩雑になるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、製造工程を簡素化することができるプリント配線板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、金属基板と、金属基板の表面上に設けられた絶縁層と、絶縁層の表面上に設けられ、ガラス転移温度が20℃〜300℃であって熱可塑性を有するポリイミド樹脂により形成された接着層と、接着層の表面上に設けられた金属箔層とを備えることを特徴とするプリント配線板である。
【0009】
同構成によれば、上記従来技術における、絶縁層と絶縁層の表面上に積層された導体薄膜との密着強度に比し、接着層と接着層の表面上に設けられた金属箔層の密着強度を向上させることができる。従って、上記従来技術とは異なり、プリント配線板の製造工程において、導電層の下地となる導体薄膜を形成する必要がなくなるとともに、導体薄膜の一部を除去する必要がなくなる。その結果、上記従来技術に比し、プリント配線板の製造工程を簡素化することが可能になる。
【0010】
また、上記従来技術とは異なり、プリント配線板の製造工程において、例えば、スパッタリング法により、導電層の下地となる導体薄膜を形成する必要がなくなるため、導体薄膜に起因するマイグレーション等の絶縁劣化の発生を防止することが可能になる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプリント配線板であって、金属箔層の厚みが、0.1μm〜5μmであることを特徴とする。同構成によれば、金属箔層の厚みが、0.1μm〜5μmと薄いため、金属箔層を形成した後の工程における処理(例えば、金属箔層の表面上に、銅めっきからなるめっき層を形成する工程における処理や、金属箔層の一部を、公知のエッチング法により除去する工程における処理)が容易になる。従って、プリント配線板の製造工程がより一層簡素化できる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のプリント配線板であって、接着層の熱膨張係数が、10ppm/℃以上30ppm/℃以下であることを特徴とする。
【0013】
同構成によれば、プリント配線板1の製造工程における、エッチング、ラミネート処理等の熱処理の際に発生する熱により、接着層が収縮して、プリント配線板において反り等の変形が発生するのを効果的に抑制することが可能になる。
【0014】
また、本発明の請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプリント配線板は、プリント配線板の製造工程を簡素化することができるという優れた特性を備えているため、請求項4に記載の発明のように、ハードディスクドライブに使用されるサスペンション用の基板として用いられるプリント配線板として好適に使用できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、金属基板の表面上に絶縁層を形成する工程と、絶縁層の表面上にガラス転移温度が20℃〜300℃であって熱可塑性を有するポリイミド樹脂からなる接着層を形成する工程と、金属箔を接着層によりラミネート接着して、接着層を介して、絶縁層の表面上に金属箔層を形成する工程とを少なくとも含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法である。
【0016】
同構成によれば、上記従来技術における、絶縁層と当該絶縁層の表面上に積層された導体薄膜との密着強度に比し、金属箔層と接着層の密着強度を向上させることができる。従って、上記従来技術とは異なり、プリント配線板の製造工程において、導電層の下地となる導体薄膜を形成する必要がなくなるとともに、導体薄膜の一部を除去する必要がなくなる。その結果、上記従来技術に比し、プリント配線板の製造工程を簡素化することが可能になる。
【0017】
また、上記従来技術とは異なり、プリント配線板の製造工程において、例えば、スパッタリング法により、導電層の下地となる導体薄膜を形成する必要がなくなるため、導体薄膜に起因するマイグレーション等の絶縁劣化の発生を防止することが可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、製造工程を簡素化することができるプリント配線板およびその製造方法を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るプリント配線板の概略構成を示す断面図である。本発明のプリント配線板1は、例えば、ハードディスクドライブにおける磁気ヘッドを搭載するための磁気ヘッドサスペンション用の基板として使用されるものである。このプリント配線板1は、図1に示すように、金属箔により形成された金属基板2と、当該金属基板2の表面上に設けられた絶縁層3と、当該絶縁層3上に設けられ、所定の配線パターンを有する導電層4とを備えている。
【0020】
金属基板2としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、チタン、モリブデン、クロム、亜鉛等からなる金属箔が使用できる。また、これらの金属箔のうち、放熱性、ばね性、および耐食性に優れているステンレスからなる金属箔を使用することが好ましい。本実施形態においては、金属基板2の厚みが、1μm〜100μmのものが好適に使用できる。
【0021】
絶縁層3としては、柔軟性にすぐれた樹脂材料が使用される。かかる樹脂としては、例えば、ポリエステル等の、プリント配線板用として汎用性のある樹脂を使用することができる。また、特に、柔軟性に加えて高い耐熱性をも有しているのが好ましく、かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリアミド系の樹脂や、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系の樹脂が好適に使用される。また、本実施形態においては、絶縁層3の厚みが、5μm〜200μmのものが好適に使用できる。
【0022】
また、導電層4としては、絶縁層3の表面上に形成された金属箔層8と、当該金属箔層8の表面上に形成されためっき層12により構成されている。この金属箔層8としては、導電性、耐久性を考慮して、例えば、銅箔が好適に使用できる。また、本実施形態においては、プリント配線板1の製造工程をより一層簡素化するとの観点から、薄い金属箔層8を使用することが好ましく、金属箔層8の厚みが、0.1μm〜5μmのものが好適に使用でき、1μm〜3μmのものが更に好適に使用できる。また、めっき層12は、例えば、銅、アルミ、ニッケル、金、はんだ、またはこれらの合金等により形成されており、導電性向上の観点から、特に、銅めっきが好適に使用できる。また、本実施形態においては、導電層4の厚みが、2μm〜50μmのものが好適に使用できる。
【0023】
また、本実施形態においては、図1に示すように、導電層4とグランド用の接続端子(不図示)をアース接続する際の接続信頼性を高めるために、導電層4の表面をめっき層5により被覆する構成としている。そして、環境への配慮から、鉛を含有しないめっき層5を使用することが好ましい。また、導電層4と接続端子間の接続信頼性の低下を防止するとの観点から、鉛を含有しないめっき層5として、金めっき層を使用することができる。導電層4の表面へのめっき処理は、無電解めっき法、または電解めっき法により行われ、金めっき層を設ける際には、露出した導電層4の表面に対して、まず、拡散防止層としてのニッケルめっき層を形成した後、当該ニッケルめっき層の表面上に金めっき層を形成する方法が採用される。
【0024】
また、図1に示すように、プリント配線板1において、導電層4の一部の表面上に、他の絶縁層15が積層されており、当該他の絶縁層15により、導電層4の一部が被覆される構成としている。この他の絶縁層15としては、柔軟性にすぐれた樹脂材料が使用され、上述の絶縁層3と同様のものも使用することができる。なお、本実施形態においては、他の絶縁層15の厚みが、1μm〜25μmのものが好適に使用できる。
【0025】
ここで、本実施形態においては、図1に示すように、絶縁層3の表面上に接着層6が設けられるとともに、当該接着層6の表面上に導電層4が設けられる構成となっている。そして、接着層6が、ガラス転移温度が20℃〜300℃であって熱可塑性を有するポリイミド樹脂により形成されている点に特徴がある。なお、ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(DMA)を用いて測定された接着層6の物性値である。
【0026】
このような構成により、上記従来技術における、絶縁層と当該絶縁層の表面上に積層された導体薄膜との密着強度に比し、金属箔層8と接着層6の密着強度を向上させることが可能になる。従って、上記従来技術とは異なり、プリント配線板1の製造工程において、導電層の下地となる導体薄膜を形成する必要がなくなるとともに、導体薄膜の一部を、化学エッチング(ウェットエッチング)等の公知のエッチング法により除去する必要がなくなる。
【0027】
また、本実施形態においては、接着層6の熱膨張係数が、10ppm/℃以上30ppm/℃以下であることが好ましい。これは、10ppm/℃未満、または30ppm/℃より大きい場合は、発熱によりプリント配線板1に反りが発生し、加工の際の位置合わせや磁気ヘッドサスペンションとハードディスクの位置を制御することが困難になるという不都合が生じる場合があるからである。なお、ここでいう「熱膨張係数」とは、温度変化に対して物質が膨張する割合のことを言い、本実施形態においては、一定の圧力下で温度を変化させた場合に、接着層6の長さが変化する割合のことを言う。より具体的には、サーマルメカニカルアナリシス法(TMA法)により、温度範囲5℃から200℃、昇温速度または降温速度10℃/minの条件で測定した値のことを言う。
【0028】
このような構成により、後述する、プリント配線板1の製造工程における、エッチング、ラミネート処理等の熱処理の際に発生する熱により、接着層6が収縮して、プリント配線板1において反り等の変形が発生するのを効果的に抑制することが可能になる。
【0029】
なお、プリント配線板1において反り等の変形が発生するのをより一層効果的に抑制するとの観点から、接着層6の熱膨張係数は、10ppm/℃以上30ppm/℃以下であることがより好ましく、金属基板2の熱膨張係数と接着層6の熱膨張係数との差が−5ppm/℃以上5ppm/℃以下であることが更に好ましい。
【0030】
次に、図1に示すプリント配線板の製造方法の一例について、図面を参照して説明する。図2(a)〜(i)は、本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するための断面図である。また、図3(a)〜(e)は、本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するための断面図であり、図2の続きの工程を示す図である。
【0031】
まず、図2(a)に示すように、金属基板2を用意する。この金属基板2としては、例えば、上述のステンレスからなる金属箔を使用することができる。次に、図2(b)に示すように、金属基板2の表面上に、例えば、ポリイミド系のカバーコートインクをスクリーン印刷等により塗工して乾燥させることにより、金属基板2の表面上に、ポリイミド樹脂からなるフィルム状の絶縁層3を形成する。次いで、図2(c)に示すように、絶縁層3の表面上に、ガラス転移温度が20℃〜300℃であって熱可塑性を有するポリイミド樹脂をスクリーン印刷等により塗工して乾燥させることにより、絶縁層3の表面上に、熱可塑性を有するポリイミド樹脂からなる接着層6を形成する。
【0032】
次いで、図2(d)に示すように、既知の熱ラミネータや熱プレス装置を用いて加熱加圧処理を行うことにより、銅箔等の金属箔を接着層6によりラミネート接着して、接着層6を介して、絶縁層3の表面上に、導電層4の下地となる金属箔層8を設ける。
【0033】
次いで、図2(e)に示すように、金属箔層8の表面において、導電層4が形成される部分と反転する部分に、レジスト10を形成するとともに、金属基板2の表面において、レジスト11を形成する。レジスト10,11の形成は、例えば、ドライフィルムレジストを用いる等、公知の方法を使用することができる。より具体的には、金属箔層8、および金属基板2の表面に、例えば、アクリル樹脂系のドライフィルムレジストを、ラミネート法を用いて形成することができ、また、ノボラック樹脂系のレジストを、スピンコート法を用いて形成することができる。その後、当該レジストを加工処理することにより、図2(e)に示すように、所定の開口パターンを有するレジスト10,11を形成する。
【0034】
そして、図2(f)に示すように、レジスト11をマスクとして使用し、例えば、化学エッチング(ウェットエッチング)等の公知のエッチング法により、金属基板2のエッチングを行い、当該金属基板2を選択的に除去することにより、金属基板2を所定の形状にする。
【0035】
次いで、図2(g)に示すように、レジスト10をマスクとして、当該レジスト10から露出する金属箔層8の表面上に、無電解めっきにより、例えば、銅めっきからなるめっき層12を形成する。なお、めっき層12の厚みは、2〜30μmであることが好ましい。
【0036】
次いで、図2(h)に示すように、上述のレジスト10,11を、例えば、公知のレジスト剥離液等を用いて除去する。その後、図2(i)に示すように、レジスト10が形成されていた金属箔層8の一部を、同様に、化学エッチング(ウェットエッチング)等の公知のエッチング法により除去することにより、絶縁層3の表面に、接着層6を介して、金属箔層8およびめっき層12からなる導電層4を、セミアディティブ法により形成する構成となっている。このように、本実施形態においては、まず、金属基板2、絶縁層3、接着層6、金属箔層8、およびめっき層12を順次積層した基材を形成する。
【0037】
次いで、図3(a)に示すように、金属基板2の表面において、レジスト13を形成する。レジスト13の形成は、上述のレジスト10,11と同様に、例えば、ドライフィルムレジストを用いる等、公知の方法を使用することができる。より具体的には、金属基板2の表面に、例えば、アクリル樹脂系のドライフィルムレジストを、ラミネート法を用いて形成することができ、また、ノボラック樹脂系のレジストを、スピンコート法を用いて形成することができる。その後、当該レジストを加工処理することにより、図3(a)に示すように、所定の開口パターンを有するレジスト13を形成する。
【0038】
次いで、図3(b)に示すように、レジスト13をマスクとして使用し、例えば、化学エッチング(ウェットエッチング)等の公知のエッチング法により、絶縁層3、および接着層6に対して同時にエッチングを行い、絶縁層3、および接着層6を同時に選択的に除去する。
【0039】
次いで、図3(c)に示すように、上述のレジスト13を、例えば、レジスト剥離液等を用いて除去する。次いで、図3(d)に示すように、導電層4の表面をめっき処理して、当該導電層4の表面をめっき層5により被覆する。この導電層4の表面へのめっき処理は、例えば、露出した導電層4の表面に対して、まず、拡散防止層としてのニッケルめっき層を形成した後、当該ニッケルめっき層の表面上に金めっき層を形成する。
【0040】
次いで、図3(e)に示すように、導電層4の一部の表面上に、他の絶縁層15を積層して、導電層4の一部を他の絶縁層15で被覆することにより、図1に示すプリント配線板1が製造される。具体的な他の絶縁層15の形成方法としては、例えば、ポリイミド系の感光性カバーコートインクをスクリーン印刷等により塗工して乾燥させ、さらに、露光現像することにより、導電層4の一部の表面上に、ポリイミド樹脂からなるフィルム状の他の絶縁層15を形成する方法が採用できる。
【0041】
以上に説明した本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)本実施形態におけるプリント配線板1は、金属基板2と、金属基板2の表面上に設けられた絶縁層3と、絶縁層3の表面上に設けられた接着層6と、接着層6の表面上に設けられた金属箔層8とを備えている。そして、接着層6が、ガラス転移温度が20℃〜300℃であって熱可塑性を有するポリイミド樹脂により形成されている。従って、上記従来技術における、絶縁層と当該絶縁層の表面上に積層された導体薄膜との密着強度に比し、金属箔層8と接着層6の密着強度を向上させることが可能になる。従って、上記従来技術とは異なり、プリント配線板1の製造工程において、導電層の下地となる導体薄膜を形成する必要がなくなるとともに、導体薄膜の一部を除去する必要がなくなる。その結果、上記従来技術に比し、プリント配線板1の製造工程を簡素化することが可能になる。また、上記従来技術とは異なり、プリント配線板1の製造工程において、例えば、スパッタリング法により、導電層の下地となる導体薄膜を形成する必要がなくなるため、導体薄膜に起因するマイグレーション等の絶縁劣化の発生を防止することが可能になる。
【0042】
(2)本実施形態においては、金属箔層8の厚みを、0.1μm〜5μmに設定する構成としている。従って、金属箔層8の厚みを薄くしているため、金属箔層8を形成した後の工程における処理(例えば、上述の、金属箔層8の表面上に、銅めっきからなるめっき層12を形成する工程における処理や、金属箔層8の一部を、公知のエッチング法により除去する工程における処理)が容易になる。従って、プリント配線板1の製造工程がより一層簡素化できる。
【0043】
(3)本実施形態においては、接着層6の熱膨張係数を、10ppm/℃以上30ppm/℃以下に設定する構成としている。従って、プリント配線板1の製造工程における、エッチング、ラミネート処理等の熱処理の際に発生する熱により、接着層6が収縮して、プリント配線板1において反り等の変形が発生するのを効果的に抑制することが可能になる。
【0044】
(4)また、本実施形態のプリント配線板1は、製造工程を簡素化することができるという優れた特性を備えているため、特に、ハードディスクドライブに使用されるサスペンション用の基板として用いられるプリント配線板として好適に使用できる。
【0045】
(5)本実施形態におけるプリント配線板1の製造方法は、金属基板2の表面上に絶縁層3を形成する工程と、絶縁層3の表面上に、ガラス転移温度が20℃〜300℃であって熱可塑性を有するポリイミド樹脂からなる接着層6を形成する工程と、金属箔を接着層6によりラミネート接着して、接着層6を介して、絶縁層3の表面上に金属箔層8を形成する工程とを少なくとも含む構成としている。従って、上記従来技術における、絶縁層と当該絶縁層の表面上に積層された導体薄膜との密着強度に比し、金属箔層8と接着層6の密着強度を向上させることが可能になる。従って、上記従来技術とは異なり、プリント配線板1の製造工程において、導電層の下地となる導体薄膜を形成する必要がなくなるとともに、導体薄膜の一部を除去する必要がなくなる。その結果、上記従来技術に比し、プリント配線板1の製造工程を簡素化することが可能になる。また、上記従来技術とは異なり、プリント配線板1の製造工程において、例えば、スパッタリング法により、導電層の下地となる導体薄膜を形成する必要がなくなるため、導体薄膜に起因するマイグレーション等の絶縁劣化の発生を防止することが可能になる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の設計変更をすることが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0047】
上記実施形態においては、ポリイミド系のカバーコートインクをスクリーン印刷等により塗工して乾燥させることにより、金属基板2の表面に、ポリイミド樹脂からなるフィルム状の絶縁層3を形成する構成としたが、当該絶縁層3である樹脂フィルムの片面に接着剤層(不図示)が設けられたものを用意し、当該接着剤層を介して、金属基板2と絶縁層3を貼り合わせて使用しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の活用例としては、例えば、ハードディスクドライブにおける磁気ヘッドサスペンション用の基板として使用されるプリント配線板およびその製造方法が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施形態に係るプリント配線板の概略構成を示す断面図である。
【図2】(a)〜(i)は、本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するための断面図である。
【図3】(a)〜(e)は、本発明の実施形態に係るプリント配線板の製造方法を説明するための断面図であり、図2の続きの工程を示す図である。
【符号の説明】
【0050】
1…プリント配線板、2…金属基板、3…絶縁層、4…導電層、5…めっき層、6…接着層、8…金属箔層、12…めっき層、15…他の絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板と、
前記金属基板の表面上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の表面上に設けられ、ガラス転移温度が20℃〜300℃であって熱可塑性を有するポリイミド樹脂により形成された接着層と、
前記接着層の表面上に設けられた金属箔層と
を備えることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記金属箔層の厚みが、0.1μm〜5μmであることを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記接着層の熱膨張係数が、10ppm/℃以上30ppm/℃以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
ハードディスクドライブに使用されるサスペンション用の基板として用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項5】
金属基板の表面上に絶縁層を形成する工程と、
前記絶縁層の表面上にガラス転移温度が20℃〜300℃であって熱可塑性を有するポリイミド樹脂からなる接着層を形成する工程と、
金属箔を前記接着層によりラミネート接着して、前記接着層を介して、前記絶縁層の表面上に金属箔層を形成する工程と
を少なくとも含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−267042(P2009−267042A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114126(P2008−114126)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】