説明

プリント配線板の製造方法及びプリント配線板

【課題】 比較的簡便で安価な手法により導体パターンの表面に凹部を形成する。
【解決手段】 絶縁フィルム1上に形成した、導体パターン2pの表面に凹部2dを形成するプリント配線板の製造方法であって、エッチング阻害剤を含むエッチング液13を導体パターン2pの表面の一部に接触させてエッチングすることで、導体パターン2pの表面に、略平坦なエッチング底面2t及び略垂直なエッチング側壁2sを有する凹部2dを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の製造方法及びプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板には、可撓性を有する絶縁フィルム上に銅箔等により導体パターンを形成した、TAB(Tape Automated Bonding)方式やCOF(Chip On Film)方式等のプリント配線板がある。現在、プリント配線板は、例えば液晶表示デバイスやプリンタ等の用途で活用され、量産されている。
【0003】
上述のプリント配線板の製造工程では、例えば絶縁フィルム上に形成した導体パターン上にソルダーレジストや封止樹脂を形成したり、導体パターンに含まれる電極に半導体チップが備える電極を接合したりする。近年、導体パターンに含まれる配線の微細化により、配線の表面積(接触面積、接合面積)が小さくなっている。このため、導体パターンとその上層との密着性を向上させることが好ましい。例えば特許文献1には、セラミックス基板上のメタライズ層にプラズマエッチングを施して、0.5nm〜150nmの間隔で、 深さ0.5nm〜100nmのディンプルを形成し、メタライズ層に対する金属メッ
キ層の付着強度(密着性)を向上させる例が開示されている。密着性の向上を目的とする表面粗化の手法としては、この他、サンドブラストによる処理等が知られている。
【0004】
また、上述のプリント配線板の製造工程では、例えば配線の一部に、配線よりも高く突出したバンプ電極を形成する。その際、例えばバンプ電極は、配線の一部に錫(Sn)や金(Au)等のメッキにより形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−065294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、導体パターンとその上層との密着性を向上させるため、例えば上述のようなプラズマ処理による表面粗化をプリント配線板に適用すると、大掛かりなプラズマ装置が必要となり、コストがかかってしまう。また、サンドブラストによる表面粗化を適用すると、絶縁フィルムに傷が生じるなど、プリント配線板に物理的なダメージを与えてしまうおそれがある。
【0007】
また、上述したように配線の一部にメッキによりバンプ電極を形成した場合、バンプ電極の加工精度が低く、また、バンプ電極を厚く形成するためメッキに長時間を要し、コストがかかっていた。
【0008】
本発明の目的は、比較的簡便で安価な手法により導体パターンの表面に凹部を形成することが可能なプリント配線板の製造方法及びプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、絶縁フィルム上に形成した導体パターンの表面に凹部を形成するプリント配線板の製造方法であって、エッチング阻害剤を含むエッチング液を前記導体パターンの表面の一部に接触させてエッチングすることで、前記導体パターンの表面に、略平坦なエッチング底面及び略垂直なエッチング側壁を有する凹部を形成するプリ
ント配線板の製造方法が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、前記凹部を複数形成して前記導体パターンの表面を粗化させる第1の態様に記載のプリント配線板の製造方法が提供される。
【0011】
本発明の第3の態様によれば、前記導体パターンの配線に、バンプ電極形成領域の周囲をエッチングによる前記凹部で除去することで、前記配線の一部が突出したバンプ電極を形成する第1の態様に記載のプリント配線板の製造方法が提供される。
【0012】
本発明の第4の態様によれば、絶縁フィルムと、前記絶縁フィルム上に形成された導体パターンと、エッチング阻害剤を含むエッチング液を前記導体パターンの表面の一部に接触させてエッチングすることで前記導体パターンの表面に形成された、略平坦なエッチング底面及び略垂直なエッチング側壁を有する凹部と、を備えるプリント配線板が提供される。
【0013】
本発明の第5の態様によれば、前記導体パターンの表面には、前記凹部が複数形成され、前記導体パターンの表面が粗化されている第4の態様に記載のプリント配線板が提供される。
【0014】
本発明の第6の態様によれば、前記導体パターンの配線にバンプ電極形成領域の周囲が前記凹部で除去されて形成され、前記配線の一部が突出したバンプ電極を有する第4の態様に記載のプリント配線板が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、比較的簡便で安価な手法により導体パターンの表面に凹部を形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造方法の各工程を示す工程図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るプリント配線板に、半導体チップを実装する様子を示す模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るプリント配線板の製造方法の各工程を示す工程図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るプリント配線板に、半導体チップを実装する様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<本発明の第1実施形態>
以下に、本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造方法及びプリント配線板について説明する。
【0018】
(1)プリント配線板の製造方法
本発明の第1実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、例えば絶縁フィルム上に形成した導体パターンに凹部を複数形成して導体パターンの表面を粗化させたプリント配線板の製造に用いられる。本実施形態に係るプリント配線板の製造方法について、主に図1を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法の各工程を示す工程図である。
【0019】
図1(a)に示すように、まずは、導体層2が形成された絶縁フィルム1を用意する。
絶縁フィルム1は、例えば長尺状に形成されたポリイミド(PI)等の可撓性を有する有機樹脂材からなる。導体層2が形成された絶縁フィルム1は、絶縁フィルム1上に、例えばニッケル(Ni)−クロム(Cr)スパッタリング膜を形成し、このスパッタリング膜上に電解メッキにより銅(Cu)層を形成することによって製作される。或いは、例えば圧延銅箔等を絶縁フィルム1に貼り合わせることにより、導体層2を形成してもよい。
【0020】
次に、導体層2の表面を洗浄して脱脂及び化学研磨等の前処理を行った後、図1(b)に示すように例えばフォトレジスト3を導体層2上に塗布し、図1(c)に示すように、フォトマスク11を用いて露光・現像し、図1(d)に示すフォトレジストパターン3pを得る。なお、図中のフォトレジスト3は、例えば感光された部分がフォトレジストパターン3pとして残るネガ型レジストとして示されているが、ポジ型レジストや、ドライフィルム等を用いることも可能である。
【0021】
続いて、フォトレジストパターン3pをマスクとして、例えば塩化第二鉄(FeCl)溶液や塩化第二銅(CuCl)溶液等のエッチング液を用い、導体層2をエッチングする。これにより、図1(e)に示すように、導体パターン2pが形成される。導体パターン2pには、例えばインナーリードやアウターリード等からなる配線(リード)や、半導体チップが実装される電極等が含まれる。その後、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ溶液を用いてフォトレジストパターン3pを除去する。フォトレジストパターン3p除去後の様子を、図1(f)に示す。
【0022】
次に、得られた導体パターン2pに複数の凹凸部2cを形成して表面粗化させる。すなわち、エッチング阻害剤を含むエッチング液13を導体パターン2pの表面の一部に接触させ、導体パターン2pの一部の領域を、エッチング液の打力を伴わない自発的なエッチングにより除去することで、前記導体パターン2pの表面に、略平坦なエッチング底面2t及び略垂直なエッチング側壁2sを有する凹部2dと、エッチングされなかった部分が突出するように残った凸部2bと、を形成する。
【0023】
具体的には、まず、図1(g)に示すように、エッチング阻害剤を含むエッチング液13を液槽12に満たし、導体パターン2pが形成された側がエッチング液13の液面に対向するよう、絶縁フィルム1を液槽12の上方に配置する。この状態で、ローラ面に複数の突起14bを有する塗布ローラ14を回転させながら、互いに対向する絶縁フィルム1の導体パターン2pとエッチング液13との間を移動させることで、エッチング液13を直接塗布方式あるいはスタンプ方式で導体パターン2pの表面に付着させていく。つまり、塗布ローラ14が有する突起14bは、回転しながらエッチング液13中を潜り抜け、それぞれの突起14bにエッチング液13の液滴13dが付着する。液滴13dの付着した突起14bはさらに回転を続け、突起14bの先端部分が導体パターン2pの表面と接触して、導体パターン2pの表面に液滴13dが移動し、付着する。なお、塗布ローラ14や突起14bは、例えば塩化ビニル、アクリル等の樹脂材や、チタン(Ti)等、エッチング液13によって浸食されない材料にて構成することができる。また、塗布ローラ14は、図1(g)に示すような繊維状や針状の突起を有するものに限らず、ローラ面にエッチング液を吸い込むスポンジ状(多孔質状)や繊維質状の微小な凹凸を有する塗布ローラなどでもよい。また、塗布ローラ14が備える各突起14bの間隔や配置パターンを種々変更することで、導体パターン2pの表面に所定の間隔・配置で所定量の液滴13dを付着させることができる。
【0024】
ここで、エッチング液13は、例えば塩化第二鉄(FeCl)溶液や塩化第二銅(CuCl)溶液等であり、例えば導体パターン2pを構成する金属銅等を酸化して溶解させる。また、エッチング液13に含まれるエッチング阻害剤は、例えばアミン類、エーテル類、グリコール類、アゾール類等の化合物を含む、いわゆるインヒビタであり、例えば
導体パターン2pの付着面にエッチングを阻害する保護膜を形成する。
【0025】
上記エッチング阻害剤を含むエッチング液13を、上記手法により導体パターン2pの表面の一部に接触させて、打力等の物理的な力を加えずに保持すると、導体パターン2pの表面において自発的・化学的なエッチングが進行する。これにより、エッチング液13中の塩化第二鉄或いは塩化第二銅等による導体パターン2pのエッチングと、エッチング阻害剤による保護膜の形成とが同時に進行する。そして、保護膜が次第に厚く形成されていくと、最終的には、所定量の導体パターン2pが除去されたところでエッチングが停止する。つまり、上記のようにエッチング液13の液滴13dを導体パターン2pの表面に接触させた場合は、液滴13dを中心として、導体パターン2pの膜厚方向及びこれと直行する方向それぞれについて、所定厚さの導体パターン2pが除去された後にエッチングが停止し、図1(h)に示すように、略平坦なエッチング底面2t及び略垂直なエッチング側壁2sを有する凹部2dが形成される。このとき、凹部2dの深さ、つまり、導体パターン2pの表面からエッチング底面2tまでの深さは、例えば1μm以上2μm以下となる。また、凹部2dの直径は例えば2μm以上4μm以下となる。一方、液滴13dが接触したところを除く領域には、導体パターン2pが突出するように残ることで、凸部2bが形成される。
【0026】
このように、上記塗布ローラ14が備える各突起14bの間隔や配置パターンに応じた液滴13dの付着位置にしたがって、種々の間隔や配置パターンを有する凹凸部2cを形成することが可能である。凹凸部2cは、導体パターン2pの所定位置、例えば半導体チップが接合される電極の表面のみに形成してもよく、導体パターン2pの表面全体に形成してもよい。
【0027】
その後、図1(i)に示すように、半導体チップが実装される電極等の一部の領域を除き、導体パターン2p上に例えばソルダーレジスト4が形成される。そして、ソルダーレジスト4に覆われていない、導体パターン2pの露出した表面には、例えば錫(Sn)や金(Au)等のメッキ5が施される。ソルダーレジスト4やメッキ5により、導体パターン2pが保護される。また、後述するように、メッキ5により導体パターン2pの接続信頼性を高めることができる。
【0028】
以上により、絶縁フィルム1と、絶縁フィルム1上に形成された導体パターン2pと、エッチング阻害剤を含むエッチング液を前記導体パターンの表面の一部に接触させて、導体パターン2pの一部の領域を自発的なエッチングにより除去することで導体パターン2pの表面に形成された、略平坦なエッチング底面2t及び略垂直なエッチング側壁2sを有する凹部2dと、エッチングされなかった導体パターン2pが突出するように残った凸部2bと、を備えたプリント配線板が製造される。本実施形態に係るプリント配線板においては、凹部2dが複数形成されることで、導体パターン2pが表面粗化された状態(ディンプル状表面、又は微細突起付き表面)となる。
【0029】
上記のように製造されたプリント配線板には、その後、半導体チップが実装される。上述のプリント配線板に半導体チップを実装する様子を、図2(a)、(b)に示す。図中のプリント配線板には、導体パターン2pの一部として形成され、表面に凹凸部2cを有する電極2eの断面が示されている。
【0030】
半導体チップ21の実装にあたっては、図2(a)に示すように、半導体チップ21の備える金(Au)等からなる電極22が絶縁フィルム1上の電極2eに対向するよう、半導体チップ21を配置する。そして、絶縁フィルム1上の電極2eと半導体チップ21の備える電極22とを接触させた状態で両者に圧力及び超音波振動を加え、図2(b)に示すように、電極2eと電極22とを接合する。このとき、半導体チップ21の備える電極
22に絶縁フィルム1上の電極2eがめり込んだ状態となり、例えば電極2eの備えるメッキ5を構成する錫と、電極22を構成する金とが共晶結合を形成する。これによって、導体パターン2pの接続信頼性を高めることができる。その後、絶縁フィルム1と半導体チップ21との隙間に封止樹脂6等を充填し、プリント配線板への半導体チップ21の実装が完了する。
【0031】
(2)第1実施形態に係る効果
本実施形態によれば、以下に示すひとつ又は複数の効果が得られる。
【0032】
(a)本実施形態によれば、エッチング阻害剤を含むエッチング液13を導体パターン2pの表面の一部に接触させ、導体パターン2pの一部の領域を自発的なエッチングにより除去することで、導体パターン2pの表面に、略平坦なエッチング底面2t及び略垂直なエッチング側壁2sを有する凹部2dと、エッチングされなかった導体パターン2pが突出するように残った凸部2bと、を形成する。これにより、比較的簡便で安価な手法により導体パターン2pの表面に凹部2dと凸部2bとを形成することが可能となる。
【0033】
上述のように、導体層に表面粗化等の加工を施す場合、一般に用いられるプラズマ処理やサンドブラスト等には、大型装置によるコストの増大や、プリント配線板へのダメージ等の問題がある。
【0034】
しかしながら、本実施形態では、エッチング阻害剤を含むエッチング液13を用いて導体パターン2pに凹部2dを形成するので、比較的簡便で安価に導体パターン2pに凹凸部2cを形成することができるほか、プリント配線板へのダメージも低減することが可能である。
【0035】
(b)また、本実施形態によれば、凹部2dを複数形成して導体パターン2pの表面を粗化させる。これにより、導体パターン2p上に形成されるソルダーレジスト4やメッキ5、封止樹脂6との密着性を向上させることができ、ソルダーレジスト4やメッキ5、封止樹脂6の膜剥がれを抑制することができる。
【0036】
(c)また、本実施形態によれば、導体パターン2pの表面を粗化させることで、導体パターン2pに実装される半導体チップ21の電極22との接合抵抗を低減し、また、接合強度を向上させることができる。
【0037】
近年のプリント配線板の微細化に伴い、半導体チップと接合される導体パターンの接合面積が縮小している。このため、例えば従来において、導体パターンに表面粗化を施さずに半導体チップを実装した場合、半導体チップとの接合抵抗が増大し、また、接合強度が低下してしまうことにより、パッケージ基板としての信頼性や性能が低下する場合があった。
【0038】
しかしながら、本実施形態においては、導体パターン2pの表面に凹凸部2cを形成して表面を粗化することにより、導体パターン2pの接合面積を増大させることができ、接合抵抗を低減することができる。また、いわゆるアンカー効果により接合強度を向上させ、より確実に半導体チップ21の電極22と導体パターン2pとを接合することができる。したがって、良好な電気的特性を得ることができ、パッケージ基板としての信頼性や性能の向上を図ることができる。
【0039】
(d)また、本実施形態によれば、導体パターン2pの表面に形成される凹部2dは、導体パターン2pの表面からエッチング底面2tまでの深さが1μm以上2μm以下、直径が2μm以上4μm以下となっている。このような凹凸部2cを設けることで、導体パタ
ーン2pの接合面積をより増大させることができ、半導体チップ21等との接合をより強固にすることができる。
【0040】
(e)また、本実施形態によれば、パターンを種々変更した複数の突起14bを有する塗布ローラ14を用い、導体パターン2pの表面に形成される凹凸部2cのパターンを制御する。これにより、パターニングが施され、複雑な構造を有する導体パターン2pに対しても、所定位置に容易に凹凸部2cを形成することができる。
【0041】
(f)また、本実施形態によれば、導体パターン2pの表面には、略平坦なエッチング底面2t及び略垂直なエッチング側壁2sを有する凹部2dと、エッチングされなかった導体パターン2pが突出するように残った凸部2bと、が形成される。これにより、アンカー効果による接合強度の向上を図ることができるばかりでなく、導体パターン2pの表面における伝送損失の抑制が容易となる。すなわち、導体パターン2pに高周波電流を流す場合、高周波電流は表皮効果により導体パターン2pの表面に集中して流れる。本実施形態で導体パターン2pの表面に形成された凹凸部2cは、深さ1μm以上2μm以下の規則的な矩形状の凹凸であるため、伝送損失を小さく抑えることができる。
【0042】
一方、上述のような、プラズマ処理やサンドブラストによる手法では、導体パターンの表面はランダムで鋭角な形状の凹凸部を有することとなり、高周波電流に対する伝送損失が大きい。
【0043】
<本発明の第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係るプリント配線板の製造方法及びプリント配線板について説明する。
【0044】
(1)プリント配線板の製造方法
本発明の第2実施形態に係るプリント配線板の製造方法は、例えば絶縁フィルム上に形成した導体パターンの配線(リード)に、エッチングによりバンプ電極を形成する。本実施形態に係るプリント配線板の製造方法について、主に図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に係るプリント配線板の製造方法の各工程を示す工程図である。
【0045】
本実施形態に係るプリント配線板の製造方法では、上述の実施形態と同様の方法により導体パターン2pを形成する。すなわち、図1の(a)〜(f)までの工程を実施し、導体パターン2pを得る。導体パターン2pの配線が形成された絶縁フィルム1を、図3(a)に示す。
【0046】
本実施形態では、導体パターン2pの配線に、バンプ電極形成領域の周囲をエッチングによる凹部2dで除去することで、配線の一部が突出したバンプ電極を形成している。
【0047】
まずは、図3(b)に示すように、導体パターン2pの配線が形成された絶縁フィルム1上に、例えばフォトレジスト3を塗布し、図3(c)に示すように、フォトマスク11を用いて露光・現像し、図3(d)に示すフォトレジストパターン3pを得る。フォトレジストパターン3pは、バンプ電極が形成される領域の周囲を除く、絶縁フィルム1の全面に形成されている。本実施形態においても、ネガ型・ポジ型のレジストや、ドライフィルム等を適宜、使用することができる。
【0048】
次に、フォトレジストパターン3pをマスクとして、例えばエッチング阻害剤を含むエッチング液13を用い、導体パターン2pをエッチングする。具体的には、フォトレジストパターン3pの形成された導体パターン2pを、エッチング阻害剤を含むエッチング液13中に浸漬する。本実施形態においても、上述の実施形態と同様のエッチング阻害剤及
びエッチング液13を用いることができる。
【0049】
このように、浸漬によりエッチング液13を導体パターン2pの表面に接触させ、導体パターン2pの表面において自発的なエッチングを進行させる。つまり、エッチング液13によるエッチングと、エッチング阻害剤による保護膜の形成とが同時に進行することで、所定量の導体パターン2pが除去され、図3(e)に示すように、凹部2dが形成され、エッチングされなかった配線が突出するように残った凸部2bが、バンプ電極として形成されたところで、保護膜のエッチング阻害効果によりエッチングが停止する。よって、凹部2dの有するエッチング底面2tは略平坦となる。すなわち、上面が略平坦な配線が得られる。また、凹部2dの有するエッチング側壁2sは、エッチング底面2tに対して略垂直となる。このエッチング側壁2sは、導体パターン2pが突出するように残った凸部2b、すなわち、バンプ電極の側壁の一部をなす。バンプ電極は、例えば直径が数μm〜数百μmに形成される。
【0050】
なお、導体パターン2pのエッチングを促進させるため、絶縁フィルム1をエッチング液13中で揺動したり、エッチング液13を循環させて液流を発生させたりしてもよいが、このような物理的な力があまりにも強いと、自発的なエッチングの進行が阻害され、導体パターン2pにおいて上記所定の形状が得られない。
【0051】
その後、水酸化ナトリウム等のアルカリ溶液を用いてフォトレジストパターン3pを除去し、図3(f)に示すように、例えば凸部2b等の一部の領域を除く導体パターン2p上に、ソルダーレジスト4を形成する。さらに、図3(g)に示すように、凸部2b等、導体パターン2pの露出した表面に、例えば錫(Sn)や金(Au)等のメッキ5を施す。
【0052】
以上により、導体パターン2pの配線に、一部突出した凸部2bがバンプ電極を構成してなる本実施形態に係るプリント配線板が製造される。
【0053】
図4に示すように、上記プリント配線板には、その後、半導体チップ21が実装される。すなわち、絶縁フィルム1上に形成されたバンプ電極である凸部2bと、半導体チップ21が備える電極22とが接合され、半導体チップ21が実装される。
(2)第2実施形態に係る効果
本実施形態においても、上述の実施形態と同様の効果を奏する。
【0054】
(a)また、本実施形態によれば、エッチング阻害剤を含むエッチング液13を導体パターン2pの配線の表面に接触させ、配線の一部の領域を自発的なエッチングにより除去することで凸部2bであるバンプ電極を形成することができる。これにより、高い加工精度で、かつ、簡易に短時間で、バンプ電極付きのプリント配線板が得られる。
【0055】
これに対し、上述の従来技術のように、配線の一部にメッキによりバンプ電極を形成すると、バンプ電極の形状制御が困難である等、高精度にバンプ電極を形成することが難しかった。また、バンプ電極を厚く形成しなければならず、メッキに時間を要していた。
【0056】
(b)また、例えばバンプ電極とバンプに接続される配線とを、従来のエッチング技術により形成するには、例えばフォトレジストパターンをマスクとし、従来のエッチング液を用いて導体パターンをハーフエッチングする方法が考えられる。この場合、ハーフエッチングで導体パターンの一部が除去された凹部が配線となる。ところが、エッチングの停止機能を持たない従来のエッチング液では、エッチングが等方的に進み、得られる凹部のエッチング底面やエッチング側壁が湾曲した曲面となるとともに、所定幅を有する配線が安定的に得られない。
【0057】
しかしながら、本実施形態では、エッチング阻害剤を含むエッチング液13を用い、自発的なエッチングにより導体パターン2pの一部を除去するので、略平坦なエッチング底面2t及び略垂直なエッチング側壁2sが形成され、所定幅を有し、断面が矩形状の配線を安定的に得ることができる。
【0058】
<本発明の他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0059】
例えば、上述の第1実施形態においては、導体パターン2pに凹凸部2cを形成するため、複数の突起14bを有する塗布ローラ14を用いてエッチング液13の液滴13dを導体パターン2pに付着させたが、これ以外の手法を用いて凹部を形成することも可能である。例えば、ディスペンサにより液滴13dを所望のパターンに付着させてもよく、スクリーン印刷を用いたり印刷技術を応用したインクジェットを用いたりして、エッチング液を塗布するようにしてもよい。また、フォトリソグラフィ技術によりフォトレジストパターンをマスクとするウェットエッチング等により凹凸部を形成することも可能である。インクジェット方式やフォトリソグラフィ方式によれば、凹凸部のパターン精度をより向上させることができる。
【0060】
また、上述の実施形態においては、塩化第二鉄溶液や塩化第二銅溶液等をエッチング液13として用い、また、エッチング液13中に含まれるエッチング阻害剤は、アミン類、エーテル類、グリコール類、アゾール類等の化合物を含むとしたが、エッチング液13及びエッチング阻害剤は、これに限られない。また、例えば導体パターンに吸着したエッチング阻害剤自体や、エッチング阻害剤と導体パターンを構成する金属銅とが反応して形成される難溶解性化合物等が、保護膜となりうる。エッチングの阻害手法も保護膜によるものに限らず、エッチングの進行と阻害とが同時に起こるよう構成された溶剤等であれば、本発明に適用することができる。
【0061】
また、上述の実施形態においては、絶縁フィルム1はポリイミド(PI)より構成されるとしたが、PI以外にも、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、液晶ポリマ(LCP)、アラミド、ガラスエポキシ樹脂等の有機樹脂を成分とする材料を使用することができる。
【0062】
また、上述の実施形態においては、塩化第二鉄溶液や塩化第二銅溶液等をエッチング液として、導体パターン2pを形成するものとしたが、エッチング阻害剤を含むエッチング液を用いて導体パターンを形成してもよい。その場合、導体層表面にスプレー等によりエッチング液を吹き付けることで、異方性エッチングを実現することができる。すなわち、スプレーによる打力が加わる導体層の膜厚方向へのエッチングは、阻害されることなく進行する。一方、エッチング側壁には物理的な力が加わらないため、エッチング阻害剤による保護膜が形成され、略垂直な形状を備える導体パターンを形成することができる。
【0063】
また、上述の実施形態で示したような、導体パターン2pの表面粗化や、バンプ電極形成のみならず、導体層の種々の加工工程において、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 絶縁フィルム
2p 導体パターン
2b 凸部
2c 凹凸部
2d 凹部
2s エッチング側壁
2t エッチング底面
13 エッチング液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁フィルム上に形成した導体パターンの表面に凹部を形成するプリント配線板の製造方法であって、
エッチング阻害剤を含むエッチング液を前記導体パターンの表面の一部に接触させてエッチングすることで、前記導体パターンの表面に、略平坦なエッチング底面及び略垂直なエッチング側壁を有する凹部を形成する
ことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
前記凹部を複数形成して前記導体パターンの表面を粗化させる
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
前記導体パターンの配線に、バンプ電極形成領域の周囲をエッチングによる前記凹部で除去することで、前記配線の一部が突出したバンプ電極を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載のプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルム上に形成された導体パターンと、
エッチング阻害剤を含むエッチング液を前記導体パターンの表面の一部に接触させてエッチングすることで前記導体パターンの表面に形成された、略平坦なエッチング底面及び略垂直なエッチング側壁を有する凹部と、を備える
ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項5】
前記導体パターンの表面には、前記凹部が複数形成され、
前記導体パターンの表面が粗化されている
ことを特徴とする請求項4に記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記導体パターンの配線にバンプ電極形成領域の周囲が前記凹部で除去されて形成され、前記配線の一部が突出したバンプ電極を有する
ことを特徴とする請求項4に記載のプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−142506(P2012−142506A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−903(P2011−903)
【出願日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(508196494)日立電線フィルムデバイス株式会社 (14)
【Fターム(参考)】