説明

プリント配線板及びプリント回路板

【課題】電子部品のはんだ付けにおいて発生するボイドの残留を抑制することのできるプリント配線板及びプリント回路板を得る。
【解決手段】プリント配線板2aは、絶縁体からなる基材と、電子部品を表面実装するための金属箔で基材の表面を覆っているパッド11aと、パッド11a及び基材を貫通する貫通孔としてのボイド排出孔19とを備え、基材のボイド排出孔19の内壁は絶縁体で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、はんだ粒子とフラックスとの混合物であるソルダーペーストを用いるリフロー工法により電子部品を実装するプリント配線板及びプリント回路板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プリント配線板に実装される電子部品は、QFP(Quad Flat Package)やQFN(Quad Flat No lead package)などのような表面実装型のパッケージが広く採用されている。一方で、このようなパッケージの小型化、高密度化に伴って、電子部品の発熱量が増加する傾向にあるため、パッケージ外縁の信号電極とは別にパッケージの底面に放熱電極を設け、プリント配線板を覆っている銅箔領域である放熱パッドに放熱電極をはんだ付けすることによって、電子部品の内部で発生する熱をプリント配線板に逃がすことができるようにした電子部品が増えている。
【0003】
しかしながら、電子部品の放熱電極とプリント配線板の放熱パッドとをはんだ付けする際、リフロー加熱中にソルダーペーストのフラックスから発生したガスや、ソルダーペーストの塗布時に巻き込んだ空気等の気体により、気泡(以下、ボイドと称する)が発生し、この発生したボイドが溶融したはんだの中に存在したまま冷却されて固まることがある。放熱電極と放熱パッドとの間のはんだにボイドが残留すると、電子部品内で発生する熱がプリント配線板に逃げることの妨げとなり、電子部品の動作不良を引き起こす要因の一つとなっている。
【0004】
従来のプリント配線板として、底面電極用パッド上に、ソルダーレジストによって形成されるスリットを設け、ソルダーペーストの溶融時に発生したボイドをスリットを通じて外部へ排出することで、発生したボイドの残留を抑制しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−311417号公報(第3−4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ソルダーレジストや底面電極用パッドは非常に薄い膜で構成されるため、従来のプリント配線板では、ソルダーレジストや底面電極用パッドによって形成されるスリットの高さは非常に低く、プリント配線板上のスリットの面積に対してスリットが外部へ開口している開口部の断面積は非常に小さいものとなる。このため、ソルダーペーストの溶融時に発生したボイドの多くが、スリットに移動して開口部から外部へ排出される前にはんだ付け工程が完了してしまい、発生したボイドの残留を十分に抑制できないという問題点があった。
また、上記の問題点を解消するためにスリットの数を増やすと、電子部品と底面電極用パッドとがはんだ付けされる接合面積が減少するため、はんだ付けの接合強度が低くなったり、放熱性が低くなったりするという問題点がある。
【0007】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、電子部品のはんだ付けにおいて発生するボイドの残留を抑制することのできるプリント配線板及びプリント回路板を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係るプリント配線板は、絶縁体からなる基材と、電子部品を表面実装するための金属箔で前記基材の表面を覆っているパッドと、前記パッド及び前記基材を貫通する貫通孔とを備え、前記基材の前記貫通孔内壁は絶縁体で構成されたものである。
【0009】
また、この発明に係るプリント回路板は、絶縁体からなる基材と、金属箔で前記基材の表面を覆っているパッドと、前記パッド及び前記基材を貫通する貫通孔とを設け、前記基材の前記貫通孔内壁は絶縁体で構成されているプリント配線板、並びに、前記パッド上に表面実装された電子部品を備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、プリント配線板の電子部品表面実装用のパッドに、パッド及び基材を貫通する貫通孔を設け、貫通孔内壁は絶縁体で構成されるようにしたので、電子部品のはんだ付けにおいてソルダーペーストの溶融時に発生するボイドを、貫通孔を通じて外部に排出することができ、ボイドの残留を抑制することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係るプリント回路板の構成を示す平面図である。
【図2】一般的なプリント配線板の電子部品実装工程の遷移図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るプリント配線板の構成を示す平面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るプリント配線板の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るプリント配線板の電子部品実装工程における放熱電極付近の拡大図である。
【図6】ソルダーペーストの加熱から冷却までの温度プロファイルを示す図である。
【図7】本発明に係る両面プリント配線板及び多層プリント配線板の断面図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係るプリント配線板の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は本発明に係るプリント回路板1の構成を示す平面図であり、プリント回路板1は、プリント配線板2の上に、各種の電子部品を実装したものである。図において、各種の電子部品として、対向する2辺から信号電極を延ばしたSOP(Small Outline Package)と呼ばれるパッケージ3、受動部品4、及び底面に放熱電極が設けられた放熱電極付きパッケージ5が実装されている。プリント配線板2には、回路パターンを形成する金属箔としての銅箔(図示せず)、プリント配線板2の表面を覆ってはんだが付着するのを防止するソルダーレジスト6、電子部品を表面実装するための金属箔としての銅箔領域である放熱電極用パッド(図示せず。以下、放熱パッド、と称する。)、信号電極用パッド7を備えている。放熱パッド、信号電極用パッド7にそれぞれ放熱電極付きパッケージ5の放熱電極(図示せず)、信号電極8がはんだ付けされることで、放熱電極付きパッケージ5とプリント配線板2が電気的に接続されて電子回路を形成する。
【0013】
まず、図2により、放熱電極付きパッケージ5をプリント配線板2にはんだ付けする実装工程について説明する。
【0014】
図2はリフロー工法による放熱電極付きパッケージ5の実装工程を示す遷移図であり、図2(4)は図1のA−A矢視断面図である。
【0015】
図2(1)は、図1の放熱電極付きパッケージ5を実装する前のプリント配線板2を示している。
プリント配線板2は、実装される放熱電極付きパッケージ5の放熱電極9及び信号電極8の位置にそれぞれ対応して、基材10の表面に放熱パッド11及び信号電極用パッド7が設けられている。放熱パッド11及び信号電極用パッド7の周りはソルダーレジスト6で囲まれており、このソルダーレジスト6は、絶縁体である樹脂で構成され、プリント配線板2の表面を保護するとともに、はんだブリッジ等のはんだ付け工程上の不具合を抑制している。
【0016】
図2(2)は、放熱パッド11及び信号電極用パッド7上にそれぞれソルダーペースト12、13が塗布された状態を示す。ソルダーペースト12、13は、はんだ粒子とフラックスとを含む混合物であり、フラックスの主成分は有機溶剤とロジンである。ソルダーペースト12、13の塗布には、放熱パッド11及び信号電極用パッド7に対応する位置に開口が設けられたメタルマスク(図示せず)を用いたコンタクト印刷による方法がよく用いられる。コンタクト印刷では、メタルマスクとプリント配線板2とを位置合わせし、メタルマスクの開口を通して、メタルマスクと略等しい厚みのソルダーペーストが、それぞれ放熱パッド11及び信号電極用パッド7上に転写されることにより、ソルダーペースト12、13が形成される。ここではソルダーペースト12、13を、メタルマスクを用いたコンタクト印刷で塗布したが、スクリーンを用いたギャップ印刷やディスペンサを用いたインクジェット印刷など、どのような方法で塗布してもよい。
【0017】
図2(3)は、ソルダーペースト12、13が塗布されたプリント配線板2に対して、放熱電極付きパッケージ5を載置した状態を示す。放熱電極付きパッケージ5は、樹脂で覆われたパッケージボディ14、パッケージボディ14の底面に設けられた金属製の放熱電極9、パッケージボディ14の各辺から4方向に延びた金属製の信号電極8から構成される。
【0018】
図2(4)は、図2(3)の放熱電極付きパッケージ5とプリント配線板2とがはんだ付けされた状態を示す。放熱電極付きパッケージ5を載置したプリント配線板2をリフロー炉等により加熱すると、ソルダーペースト12、13に含まれるはんだ粒子は一旦溶融する。その後、プリント配線板2を冷却するとはんだが凝固してはんだ15、16となり、放熱パッド11及び放熱電極9、信号電極用パッド7及び信号電極8がそれぞれ電気的に接続される。
ボイド17は、放熱パッド11と放熱電極9との間のはんだ15に残留したボイドであり、ボイド18は、信号電極用パッド7と信号電極8との間のはんだ16に残留したボイドである。
【0019】
実施の形態1.
次に、図3〜6により本発明の実施の形態1について説明する。
図3は、本発明の実施の形態1に係るプリント配線板2aの構成を示す平面図であり、図4は、図3のプリント配線板2aのB−Bの位置における矢視断面図である。
【0020】
図3及び図4において、プリント配線板2aには、布状に編まれたガラス繊維に樹脂が含浸された絶縁体からなる基材10aの表面を、放熱電極付きパッケージ5を表面実装するための金属箔としての銅箔で覆った放熱パッド11a及び信号電極用パッド7が設けられており、放熱パッド11a及び信号電極用パッド7の周りはソルダーレジスト6で囲まれている。
また、プリント配線板2aの厚み方向に放熱パッド11a及び基材10aを貫通する貫通孔としてのボイド排出孔19が複数設けられている。基材10aのボイド排出孔19の内壁は基材10aが露出しており、ボイド排出孔19の開口部の大きさは、開口部の中心から重力によってはんだが落ちないような大きさである。さらに、放熱パッド11aには、ボイド排出孔19の外周に沿って銅箔で覆っていない略円状の金属箔逃げ部としての銅箔逃げ部20が形成されており、この銅箔逃げ部20は基材10aが露出している。
【0021】
次に、図5及び図6により、リフロー工法によるはんだ付け工程において、発生したボイドがボイド排出孔19から排出されるメカニズムを説明する。
図5は、リフロー工法による放熱電極付きパッケージ5の実装工程における放熱電極9付近の拡大図である。
図6は、リフロー炉によるプリント配線板の加熱及び冷却の典型的な温度プロファイルであり、横軸はリフロー炉を通過する際の経過時間、縦軸はその時点での温度を示す。温度プロファイルは、予熱区間、本加熱区間、冷却区間に大別される。
【0022】
図5(1)は、加熱前の放熱電極9周辺の拡大図を示し、放熱パッド11a、ボイド排出孔19、及び銅箔逃げ部20の上にソルダーペースト12が塗布されている。加熱前のソルダーペースト12に含まれるフラックスはゲル状であり、活性度が低い状態である。また、ソルダーペースト12は、粘性が高い粘弾性流体となっている。
【0023】
図5(2)は、リフロー工法におけるはんだ付け工程の予熱区間における放熱電極9周辺の拡大図を示す。予熱区間におけるソルダーペースト12に含まれるフラックスは、温度上昇とともに軟化し、ロジン成分が次第に活性化しながら溶融するため、流動性を増す。活性化したフラックスは、はんだ粒子、放熱パッド11a、及び放熱電極9の表面の酸化膜を還元する。
また、予熱区間の温度領域では、フラックスに含まれる有機溶剤が気化し、また酸化膜が還元されて生じた水蒸気が気化し、初期ボイド17aが発生する。ソルダーペースト12aと大気との境界に接しているフラックスに含まれる有機溶剤は気化して大気へ排出されるが、ボイド排出孔19からも同様に排出される。
【0024】
図5(3)は、リフロー工法におけるはんだ付け工程の本加熱区間における放熱電極9周辺の拡大図を示す。本加熱区間では、放熱電極9周辺の温度がはんだの溶融温度を超えるため、ソルダーペースト12aに含まれるはんだ粒子は互いに融合し、液状のはんだ15aとなる。予熱区間において、はんだ粒子、放熱パッド11a、及び放熱電極9の表面の酸化膜は還元され除去されているため、液状のはんだ15aは放熱パッド11a及び放熱電極9に濡れ広がるが、銅箔逃げ部20は樹脂の基材10aが露出しているため、銅箔逃げ部20に対して濡れ広がることはなく、ボイド排出孔19にも落ちない。
【0025】
一方、液体と気体が接していると、液体と気体との界面には界面面積を小さくする方向に表面張力が作用する。ボイドが融合すると、初期ボイド17aと液状のはんだ15aとの界面面積が小さくなるため、初期ボイド17aは融合して成長したボイド17bとなる。成長したボイド17bは、液状のはんだ15aの中を移動する。液状のはんだ15aと大気との境界に達したボイド17cは、液状のはんだ15aと大気との界面の面積が小さくなるよう、大気へ排出される。銅箔逃げ部20に達したボイド17dも、液状のはんだ15aと大気との界面の面積が小さくなるよう、ボイド排出孔19を通じて大気へ排出される。
【0026】
図5(4)は、リフロー工法におけるはんだ付け工程の冷却区間における放熱電極9周辺の拡大図を示す。冷却区間では、放熱電極9周辺の温度がはんだの溶融温度を下回るため、液状のはんだ15aは固化し、冷却後のはんだ15bとなる。
【0027】
本加熱区間において大気に排出されなかったボイド17eは冷却区間にはほとんど外部へ排出されることはなく、冷却後のはんだ15bに残留することになるが、本実施の形態1では、プリント配線板2a上の放熱パッド11aに、基材10aの厚み方向に放熱パッド11a及び基材10aを貫通するボイド排出孔19を設けたので、はんだ付けが完了する前にボイド17dをボイド排出孔19を通じて大気へ排出することができ、その結果、ボイドが少なく放熱性の高いプリント回路板を得ることができる。また、銅箔逃げ部20を設けたので、成長したボイド17bが液状のはんだ15aと大気との界面に接する確率を高めることができ、ボイド排出孔19を通じてより多くのボイド17bを大気へ排出することができる。
【0028】
本実施の形態1では、基材10aの表面に放熱パッド11aを備える片面プリント配線板について説明したが、図7(1)の断面図で示すように、基材10bの表面に放熱パッド11aを備え、基材10bの裏面に配線パターン21を備える両面プリント配線板22、または図7(2)の断面図で示すように、基材10cの表面に放熱パッド11aを備え、基材10c、10dと配線パターン21、21aとをウエハース状に積み重ねた多層プリント配線板23においても実施することが可能である。
【0029】
また、本実施の形態1では、ボイド排出孔19の外周に銅箔で覆わず基材10aが露出している銅箔逃げ部20を設ける構成としたが、ボイド排出孔19の外周も銅箔で覆ってボイド排出孔19の開口部のみ開口するように構成してもよい。片面プリント配線板2aの場合は、ボイド排出孔19の内壁は樹脂の基材10aが露出させることによって、リフロー工法によるはんだ付け工程において、液状のはんだ15aは、ボイド排出孔19の内壁に濡れ広がらないのでボイド排出孔19には落ちず、発生したボイド17dはボイド排出孔19を通じて排出される。両面プリント配線板22や多層プリント配線板23の場合は、基材10aのボイド排出孔19の内壁をソルダーレジスト等のはんだの付着を防止する絶縁層で覆えば、液状のはんだ15aは、ボイド排出孔19の内壁に濡れ広がらず、ボイド排出孔19に落ちない。片面プリント配線板2aにおいても、基材10aのボイド排出孔19の内壁をソルダーレジスト等のはんだの付着を防止する絶縁層で覆って、液状のはんだ15aが、ボイド排出孔19の内壁に濡れ広がらず、ボイド排出孔19に落ちないようにしてもよい。
【0030】
さらにまた、本実施の形態1では、ボイド排出孔19の外周に銅箔逃げ部20を設ける構成としたが、ボイド排出孔19の外周に露出した基材10aの上にソルダーレジスト等の絶縁層を設けて、放熱パッド11bのボイド排出孔19の外周を絶縁層で囲う構成としてもよい。この場合も、液状のはんだ15aは、ボイド排出孔19の外周を囲っているソルダーレジストに濡れ広がらないので、液状のはんだ15aはボイド排出孔19に落ちない。
【0031】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2に係るプリント配線板2bの構成を示す平面図である。図1と同じ符号のものは同様の機能を有するので、説明を繰り返さない。
【0032】
実施の形態2においては、放熱パッド11bの内側及び外縁部に、プリント配線板2bの厚み方向に放熱パッド11b及び基材10aを貫通するボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bがそれぞれ複数設けられており、ボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bの内壁は基材10aが露出している。また、放熱パッド11bに設けられたボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bの外周に沿って銅箔で覆われていない略円状の銅箔逃げ部20a及び外縁銅箔逃げ部20bが形成されており、銅箔逃げ部20a及び外縁銅箔逃げ部20bも基材10aが露出している。
【0033】
銅箔逃げ部20a及び外縁銅箔逃げ部20bを拡大すれば、成長したボイド17bが液状のはんだ15aと大気との界面に接する確率を高めることができ、ボイドの排出効果をさらに高め、例えば銅箔逃げ部20a及び外縁銅箔逃げ部20bを略円状に拡大すると、放熱電極9と放熱パッド11bとのはんだ付けの接合面積が小さくなり、放熱効果も低くなる、という弊害が生じる可能性がある。そこで、本実施の形態2では、銅箔逃げ部20a及び外縁銅箔逃げ部20bの外周の複数個所に銅箔逃げ部20a及び外縁銅箔逃げ部20bから外側に突き出るように放熱パッド11bの銅箔を切り欠いた銅箔切り欠き24a及び外縁銅箔切り欠き24bを設け、銅箔逃げ部20a及び外縁銅箔逃げ部20bと同様に基材10aが露出するようにした。
【0034】
次に、動作について説明する。本加熱区間においては、上記実施の形態1と同様に、液状のはんだ15aと大気との境界に達したボイド17cは大気へ排出され、銅箔逃げ部20a及び外縁銅箔逃げ部20bに達したボイド17dもボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bを通じて大気へ排出される。
【0035】
ボイドは気体であり、表面張力により丸く広がるため、成長したボイド17dが液状のはんだ15aの中を移動して銅箔切り欠き24aに接すると、銅箔切り欠き24aを通じて銅箔逃げ部20aに誘導され、ボイド排出孔19aを通じて大気に排出される。同様に、成長したボイド17dが液状のはんだ15aの中を移動して外縁銅箔切り欠き24bに接すると、外縁銅箔切り欠き24bを通じて外縁銅箔逃げ部20bに誘導され、外縁ボイド排出孔19bを通じて大気に排出される。
【0036】
以上のように、本実施の形態2では、上記実施の形態1に対して、銅箔逃げ部20aの外周に銅箔逃げ部20aから外側に突き出るように放熱パッド11bの銅箔を切り欠いた銅箔切り欠き24a、外縁銅箔逃げ部20bの外周に外縁銅箔逃げ部20bから外側に突き出るように放熱パッド11bの銅箔を切り欠いた外縁銅箔切り欠き24bをさらに備える構成とすることにより、放熱電極9と放熱パッド11bとのはんだ付けの接合面積の減少を抑えつつ、ボイド17をさらに効率よく排出することができる。
【0037】
なお、本実施の形態2では、基材10aの表面に放熱パッド11bを備える片面プリント配線板2bにおいて実施する形態としたが、実施の形態1と同様、両面プリント配線板22や多層プリント配線板23についても実施することが可能である。
特に、両面プリント配線板22及び多層プリント配線板23には配線パターン21、21aが存在することにより、放熱パッド11b上のボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bを配置する箇所が制限される場合がある。このような場合であっても、本実施の形態2によると、ボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bの配置数を増加させることなく、発生したボイドの残留をさらに抑制することができる。
【0038】
また、本実施の形態2では、ボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bの外周に銅箔で覆わず基材10aが露出している銅箔逃げ部20a及び外縁銅箔逃げ部20bを設け、さらにその周りに銅箔切り欠き24a及び外縁銅箔切り欠き24bを設ける構成としたが、銅箔逃げ部20a及び外縁銅箔逃げ部20bを設けずにボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bの放熱パッド11b側の開口部の外周の複数個所に、ボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bから外側に突き出るように放熱パッド11bの銅箔を切り欠いた銅箔切り欠き24a及び外縁銅箔切り欠き24bを形成するようにしてもよい。これにより、実施の形態1と同様、片面プリント配線板2bの場合は、ボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bの内壁は樹脂の基材10aが露出しているため、液状のはんだ15aは、ボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bの内壁に濡れ広がらないので、ボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bには落ちず、発生したボイド17dはボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bを通じて排出される。両面プリント配線板22や多層プリント配線板23の場合も、実施の形態1と同様、ボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bの内壁をソルダーレジスト等の絶縁層で覆えば、液状のはんだ15aは、ボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bの内壁に濡れ広がらず、ボイド排出孔19a及び外縁ボイド排出孔19bに落ちない。
【0039】
また、上記実施の形態2では、放熱パッド11aの中心及び各頂点と中心とを結ぶ線上のほぼ真ん中にボイド排出孔19を設けており、上記実施の形態2では、放熱パッド11bの中心及び各頂点と中心とを結ぶ線上のほぼ真ん中にボイド排出孔19aを設け、放熱パッド11bの各辺のほぼ真ん中にボイド排出孔19bを設けたが、このように、放熱パッド11a、11bの全体をカバーできるようボイド排出孔19を配置すると、ボイドの排出効果は高くなる。
【0040】
上記実施の形態1及び2では、基材10aのボイド排出孔19の内壁は基材10aが露出している場合について説明したが、液状のはんだ15aが濡れ広がらないソルダーレジスト等の絶縁層で覆われていてもよい。
【0041】
上記実施の形態1及び2では、放熱電極付きパッケージ5としてパッケージボディ14の各辺から4方向に信号電極を延ばしたQFP(Quad Flat Package)を用いて説明したが、電子部品本体の底面に放熱電極9を有するものであれば、どのような電子部品であってもよい。
【0042】
また、上記実施の形態1及び2では、ボイド排出孔19、19a、19bを、プリント配線板2a、2bの厚み方向に垂直に貫通する構成としたが、放熱パッド11a、11b及び基材10aを貫通していれば垂直でなくてもよく、例えば、斜めに放熱パッド11a、11b及び基材10aを貫通するような構成であってもよい。
【0043】
両面プリント配線板22及び多層プリント配線板23において、ボイド排出孔19、19a、19bは、基材裏面や積み重ねた基材に設けられた回路パターンに影響しないように全ての放熱パッド11a、11b、配線パターン21、21a及び基材10b、10c、10dを貫通していれば、プリント配線板2a、2bの厚み方向に垂直に延びる構成でなくてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 プリント回路板
2、2a、2b プリント配線板
5 放熱電極付きパッケージ
6 ソルダーレジスト
9 放熱電極
10、10a、10b、10c、10d 基材
11、11a 放熱パッド
12、12a ソルダーペースト
15、15a、15b はんだ
17、17a、17b、17c、17d、17e ボイド
19、19a ボイド排出孔
19b 外縁ボイド排出孔
20、20a 銅箔逃げ部
20b 外縁銅箔逃げ部
24a 銅箔切り欠き
24b 外縁銅箔切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体からなる基材と、
電子部品を表面実装するための金属箔で前記基材の表面を覆っているパッドと、
前記パッド及び前記基材を貫通する貫通孔とを備え、
前記基材の前記貫通孔内壁は絶縁体で構成されていることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記パッドの前記貫通孔外周に前記金属箔で覆っていない金属箔逃げ部を設けたことを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記金属箔逃げ部は、前記基材を略円状に露出させたことを特徴とする請求項2記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記貫通孔から外側に突き出るように前記パッドの前記金属箔を切り欠いたことを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記金属箔逃げ部から外側に突き出るように前記パッドの前記金属箔を切り欠いたことを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項6】
前記金属箔逃げ部にはんだの付着を防止する絶縁層を設けて、前記パッドの前記貫通孔外周を前記絶縁層で囲ったことを特徴とする請求項2または請求項3のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項7】
前記基材の前記貫通穴内壁は該基材が露出していることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項8】
前記基材の前記貫通穴内壁をはんだの付着を防止する絶縁層で覆ったことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のプリント配線板。
【請求項9】
絶縁体からなる基材と、金属箔で前記基材の表面を覆っているパッドと、前記パッド及び前記基材を貫通する貫通孔とを設け、前記基材の前記貫通孔内壁は絶縁体で構成されているプリント配線板、
並びに、前記パッド上に表面実装された電子部品を備えたことを特徴とするプリント回路板。
【請求項10】
前記プリント配線板の前記パッドの前記貫通孔外周に前記金属箔で覆っていない金属箔逃げ部を設けたことを特徴とする請求項9記載のプリント回路板。
【請求項11】
前記金属箔逃げ部は、前記基材を略円状に露出させたことを特徴とする請求項10記載のプリント回路板。
【請求項12】
前記プリント配線板の前記貫通孔から外側に突き出るように前記パッドの前記金属箔を切り欠いたことを特徴とする請求項9記載のプリント回路板。
【請求項13】
前記金属箔逃げ部から外側に突き出るように前記パッドの前記金属箔を切り欠いたことを特徴とする請求項10又は11のいずれか1項に記載のプリント回路板。
【請求項14】
前記金属箔逃げ部にはんだの付着を防止する絶縁層を設けて、前記パッドの前記貫通孔外周を前記絶縁層で囲ったことを特徴とする請求項10または請求項11のいずれか1項に記載のプリント回路板。
【請求項15】
前記基材の前記貫通穴内壁は該基材が露出していることを特徴とする請求項9乃至請求項14のいずれか1項に記載のプリント回路板。
【請求項16】
前記基材の前記貫通穴内壁をはんだの付着を防止する絶縁層を覆ったことを特徴とする請求項9乃至請求項14のいずれか1項に記載のプリント回路板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−222110(P2012−222110A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85546(P2011−85546)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】