説明

プリント配線板用熱硬化性樹脂組成物およびこれを用いたローフロープリプレグとプリント配線板

【課題】ポリイミドフィルムとの接着強度に優れ、なおかつ成形性、吸湿はんだ耐熱性、ドリル加工性が良好であり、ローフロープリプレグ用材料として好適な熱硬化性樹脂組成物、およびこれを用いたローフロープリプレグとプリント配線板を提供することを目的とする。
【解決手段】下記成分(a)、(b)及び(c)の有機固形分の総量100重量部当り、
(a)分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する樹脂35〜75重量部、
(b)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物10〜25重量部、
(c)エポキシ樹脂10〜45重量部、
(d)縮合リン酸エステル5〜35重量部
(e)エポキシ化ポリブタジエン0.5〜10重量部、
(f)下記式
【化1】


で示される有機リン化合物0.5〜10重量部を含み、かつ
(g)無機充填剤を、前記成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)の固形分の総量100重量部当り、30〜100重量部含む、ことを特徴とするプリント配線板用熱硬化性樹脂組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板用熱硬化性樹脂組成物およびこれを用いたローフロープリプレグとプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界的な環境問題、人体に対する安全性についての関心の高まりに伴って、電気・電子機器については、従来からの難燃性に加えて、より少ない有害性、より高い安全性という要求が増大している。すなわち、電気・電子機器は、単に燃えにくいだけでなく、有害ガスや発煙などの発生が少ないことが要望されている。
【0003】
従来、電気・電子機器の配線に使用するフレキシブルプリント配線板は、フレキシブル銅張積層板、カバーレイ及び接着剤フィルム、ローフロープリプレグ等により構成されるが、そこに使用されているローフロープリプレグには、難燃剤として作用する臭素が含まれる臭素化エポキシ樹脂、特にテトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂が一般に使用されている。
【0004】
このような臭素化エポキシ樹脂は、良好な難燃性を有するものの、燃焼時に有害なハロゲン化水素(臭化水素)ガスを発生することや、ブロモ化ダイオキシン、フラン類を発生する可能性があるため、その使用が抑制されつつある。
【0005】
そこで、ハロゲン元素を使用せずに難燃化する技術としては、例えば、フェノール類とアミン類とホルムアルデヒドから得られるジヒドロベンゾオキサジン環を有する樹脂を主材とし、無機系難燃剤、窒素系難燃剤、リン系難燃剤、エポキシ化ポリブタジエン等をさらに配合した熱硬化性樹脂組成物が開発されている(特許文献1〜3参照)。
【0006】
しかし、このような熱硬化性樹脂組成物を配合して作製されたローフロープリプレグは、フレキシブル部とリジット部の一体化成形において良好な成形性、吸湿はんだ耐熱性、ドリル加工性を示し、かつポリイミド樹脂製ローフロープリプレグに比べて安価であるという優れた特徴を有する一方、フレキシブル部に使用されているポリイミドフィルムとの接着強度が低いという問題を有していた。この接着性の低下は、プリプレグに靭性を与え、加工性を良好にするための成分であるエポキシ化ポリブタジエンによるものであることが分かっているが、これを配合しなければ靭性や加工性が低下する等の問題が生じてしまう。
【特許文献1】特開2000−7901号公報
【特許文献2】特開2002−146061号公報
【特許文献3】特開2004−231847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる状況を鑑みてなされたものであり、ポリイミドフィルムとの接着強度に優れ、なおかつ成形性、吸湿はんだ耐熱性、ドリル加工性が良好であり、ローフロープリプレグ用材料として好適な熱硬化性樹脂組成物、およびこれを用いたローフロープリプレグとプリント配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため、種々検討を重ねてきた結果、分子内にジヒドロベンゾオキサジン環を有する樹脂、フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物、エポキシ樹脂、縮合リン酸エステル、エポキシ化ポリブタジエン、無機充填剤を必須成分とする従来からのハロゲンフリー積層板用樹脂組成物に、特定の有機リン化合物を添加することにより、ポリイミドフィルムとの接着性が大幅に改善することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明に使用する熱硬化性樹脂組成物は、下記成分(a)、(b)及び(c)の有機固形分の総量100重量部当り、
(a)分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する樹脂35〜75重量部、
(b)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物10〜25重量部、
(c)エポキシ樹脂10〜45重量部、
(d)縮合リン酸エステル5〜35重量部
(e)エポキシ化ポリブタジエン0.5〜10重量部、
(f)下記式
【化1】

で示される有機リン化合物0.5〜10重量部を含み、かつ
(g)無機充填剤を、前記成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)の固形分の総量100重量部当り、30〜100重量部含む、ことを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明は、上記本発明の硬化性樹脂組成物を基材に含浸してなるプリプレグであって、該プリプレグ中の該樹脂組成物含有量(樹脂分)が40〜70重量%で、かつ樹脂流れ(試験方法IPC−TM−650No.2.3.18)が1〜12%であることを特徴とするプリント配線板用ローフロープリプレグに関する。
【0011】
さらに、本発明は、上記本発明のプリプレグを用いてなるプリント配線板に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ポリイミドフィルムとの接着強度に優れ、なおかつ成形性、吸湿はんだ耐熱性、ドリル加工性が良好であり、リジットフレックスプリント配線板等、比較的広範囲の用途に適用可能であり、ローフロープリプレグ用材料として好適な熱硬化性樹脂組成物、およびこれを用いたローフロープリプレグとプリント配線板を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明で使用する、(a)分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する樹脂としては、ジヒドロベンゾオキサジン環を有し、当該ジヒドロベンゾオキサジン環の開環反応により硬化する樹脂であれば特に限定されるものではなく、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物、ホルマリン、1級アミンから下記反応式により合成することができる。
【化2】

(式中、Rはアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基またはアルキル基もしくはアルコキシル基で置換されたフェニル基である)
より具体的には、例えば、上記フェノール性水酸基を有する化合物と上記1級アミンとの混合物を、70℃以上に加熱したホルマリンなどのアルデヒド中に添加して、70〜110℃、好ましくは90〜100℃で20〜120分反応させ、その後120℃以下の温度で減圧乾燥することにより、合成することができる。
【0014】
上記フェノール性水酸基を有する化合物としては、例えば、多官能フェノール、ビフェノール化合物、ビスフェノール化合物、トリスフェノール化合物、テトラフェノール化合物、フェノール樹脂などが挙げられる。より具体的に、多官能フェノールとしては、例えば、カテコール、ヒドロキノン、レゾルキノールなどが挙げられ、ビスフェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF及びその位置異性体、ビスフェノールSなどが挙げられ、フェノール樹脂としては、例えば、レゾール樹脂、フェノールノボラック樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、アルキルフェノール樹脂、メラミンフェノール樹脂、ベンゾグアナミンフェノール樹脂、フェノール変性ポリブタジエンなどが挙げられる。また、上記1級アミンとしては、具体的にメチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、置換アニリン等が挙げられる。
【0015】
上記のようにして得られる(a)成分は、各々の成分の反応における比率及び熱硬化反応性を考慮すると、本発明の組成物中に、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の有機固形分の総量100重量部当り、好ましくは35〜75重量部、より好ましくは30〜70重量部含まれる。
【0016】
本発明の成分(b)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物を得るために使用するフェノール類としては、例えば、フェノール又はビスフェノールA、ビスフェノールF等の多価フェノール類、アルキルフェノール類、アミノフェノール、フェニルフェノールなどが挙げられ1種類又は2種類以上併用することができる。また、トリアジン環を有する化合物としては、メラミン又はベンゾグアナミン、アセトグアナミン等のグアナミン誘導体、シアヌル酸又はメチルシアヌレート、エチルシアヌレート等のシアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸又はメチルイソシアヌレート、エチルイソシアヌレート等のイソシアヌル酸誘導体等が挙げられる。この中では耐燃性が良好であり、かつ低価格なメラミンが好ましいが、トリアジン環を有する化合物の種類及び使用量は目的に合わせて適宜選定することがより好ましい。また、アルデヒド類としては特に制限はないが一般的にホルムアルデヒドが使用される。
【0017】
上記(b)成分は、上記フェノール類、上記トリアジン環類を有する化合物、上記アルデヒド類の主原料を、所定の窒素含有量、水酸基当量になる配合で、触媒下にて反応させる。このときの触媒としては、トリアジン環を有する化合物の溶解性が良好であることから塩基性触媒が好ましく、中でも金属類が触媒残として残ると電気絶縁材料として好ましくないため、アミン類が好ましい。反応の順序は制限されず、上記主原料全てを同時でも、2種の主原料を先に選択的に反応させることもできる。フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/フェノール類)は、特に限定されるものではないが、0.2〜1.5が好ましく、0.4〜0.8がより好ましい。また、フェノール類とトリアジン環を有する化合物の重量比は、樹脂化と難燃効果の両方を考慮すると、(フェノール類):(トリアジン環を有する化合物)=10〜98:90〜2であることが好ましく、50〜95:50〜5であることがより好ましい。また、アセトン、メチルエチルケトン等の各種溶剤下の存在下で反応させることにより安定制御が可能となるので好ましい。反応物は中和、水洗、加熱処理、蒸留等を常法に従って行い、未反応のフェノール類、アルデヒド類、溶媒を除去して本発明で使用する(b)成分を得る。
【0018】
上記のようにして得られる(b)成分は、各々の成分の反応における比率及び熱硬化反応性を考慮すると、本発明の組成物中に、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の有機固形分の総量100重量部当り、好ましくは10〜25重量部、より好ましくは15〜20重量部含まれる。
【0019】
本発明に使用される成分(c)エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ化合物、複素環式エポキシ化合物、ジグリシルエステル系エポキシ化合物等が挙げられるが、特に制限されない。単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
また、成分(c)は、各々の成分の反応性及び硬化物特性を考慮すると、本発明の組成物中に、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の有機固形分の総量100重量部当り、好ましくは10〜45重量部含まれる。
【0021】
本発明に使用される(d)縮合リン酸エステルは、例えば、下記一般式
【化3】

(式中R、R、Rは、各々独立にアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等であり、mは1、2又は3であり、nは0、1又は2である。)
で表される構造を有するものであり、リン酸エステルを縮合させて高融点化することにより、高温耐薬品性、耐湿耐熱性、ガラス転移温度(Tg)などの特性を大幅に向上させたものである。
【0022】
成分(d)は、難燃性、耐湿耐熱性及びTgの全てを考慮すると、本発明の組成物中に、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の有機固形分の総量100重量部当り、好ましくは5〜35重量部、より好ましくは5〜20重量部含まれる。
【0023】
本発明で使用される(e)エポキシ化ポリブタジエンとしては、例えば、液状ポリブタジエン樹脂中の二重結合、水酸基及びカルボキシル基などの官能基を利用してオキシシラン基を導入した公知の樹脂を使用することができる。このようなエポキシ化ポリブタジエン樹脂は、オキシシラン酸素を平均3〜12重量部含有し、かつ数平均分子量が500〜10、000であることが好ましい。オキシシラン酸素含有量が3重量部未満の場合はジヒドロベンゾオキサジン環を有する樹脂との相溶性が悪く、その結果ワニスが分離する等の不具合が生じる。他方、オキシシラン酸素含有量が12重量部を越えるものは入手が困難である。また、数平均分子量が500未満のものは入手が困難であり、数平均分子量が10、000を越えると粘度が急激に増大し、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する樹脂との相溶性が悪くなる。
【0024】
(e)エポキシ化ポリブタジエンの配合量は、本発明の組成物中に、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の有機固形分の総量100重量部当り、好ましくは0.5〜10重量部含まれる。エポキシ化ポリブタジエンの配合量が0.5部未満であるとエポキシ化ポリブタジエンの添加の効果が得られ難く、ドリル加工時のクラック発生率が上昇してしまう。また、10重量部を超えると耐難燃性、耐湿耐熱性等の特性が著しく低下する。
【0025】
本発明で用いられる(f)成分は、本発明の樹脂組成物の、ポリイミドフィルムとの接着性を大幅に改善する上で重要な役割を果たす必須成分であり、下記式
【化4】

で示される有機リン化合物(10−(2、5−ジヒドロキシフェニル)−9、10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド)である。
【0026】
成分(f)の使用量は、本発明の組成物中に、(a)成分、(b)成分及び(c)成分の有機固形分の総量100重量部当り、好ましくは0.5〜10重量部含まれる。(f)の添加量が、0.5重量部未満の場合はポリイミドフィルムとの接着性の改善効果が小さく、また10重量部を超えると成形性が低下する傾向がある。この有機リン系化合物は、直接(a)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する樹脂と配合しても良いが、事前に、(a)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する樹脂やエポキシ樹脂、フェノール系硬化剤等と反応させた後に使用することもできる。
【0027】
本発明で用いられる(g)無機充填剤としては、公知の材料を用いることができ、特に限定されず、使用する目的に応じ選択することができる。具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ゼオライトやハイドロタルサイト等の無機水和物、クレー、タルク、ワラストナイト、マイカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、ガラス粉等の汎用に使用されている無機充填剤、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛等のB又はSn系充填剤、酸化亜鉛、酸化スズ等の金属酸化物等が挙げられる。
【0028】
また、(g)無機充填剤は、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、モリブデン酸亜鉛等によりコーティング又は表面処理して、有機成分との接着性を向上させることが好ましい。
【0029】
(g)無機充填剤は、本発明の組成物中に、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、(e)成分および(f)成分の固形分の総量100重量部当り、好ましくは30〜100重量部含まれる。
【0030】
また、本発明に係る樹脂組成物は、その他に必要に応じて充填剤、着色剤、酸化防止剤、還元剤、紫外線不透過剤等を加えることができる。特に、本発明に係る樹脂組成物には、硬化促進剤を配合することが好ましい。硬化促進剤としては、イミダゾール化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等を用いることができ、好ましくは、イミダゾール化合物である。イミダゾール化合物としては、特に限定されないが、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、4、5−ジフェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−ヘプタデシルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾール、2、4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2、4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等が挙げられる。
【0031】
本発明のローフロープリプレグは、本発明の熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸させてなり、当該プリプレグ中の該樹脂組成物分が40〜70重量%で、かつ樹脂流れが1〜12%であることを特徴とするものである。
【0032】
上記基材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス繊維、紙または合成繊維あるいはこれらを複合した基材等が挙げられ、ガラス繊維基材であることが好ましい。ガラス繊維基材としては、例えば、Eガラス、Cガラス、Dガラス、Sガラスなどを使用した織布又は不織布が使用される。また、このガラス繊維基材は、シランカップリング剤で表面処理が施されていることが好ましく、用いるシランカップリング剤は任意であり、従来公知のものが使用できる。
【0033】
また、本発明のプリプレグ中の樹脂分が40重量%未満となると成形が困難となる傾向があり、樹脂分が70重量%を超えると、プレス成形後の樹脂のしみ出しを小さく抑えることが困難となる傾向がある。
【0034】
また、上記樹脂流れは、IPC−TM−650No.2.3.18の試験方法により測定した値であり、より好ましくは2〜8%である。この樹脂流れが1%未満になると、成形が困難となる傾向があり、12%を超えるとプレス成形時の樹脂のしみだし量が多くなる傾向があり、ローフロープリプレグとしての適用範囲が極端に制限される。
【0035】
また、樹脂組成物を基材に含浸させた後の乾燥条件は乾燥温度60〜200℃、乾燥時間1〜30分間で、目的のプリプレグ特性に合わせて自由に選択することができる。
【0036】
本発明のプリント配線板は、例えば、片面銅張ベースフィルムに公知の方法により回路を形成し、これにポリイミド製フィルムをポリイミド系接着剤を介して積層してフレキシブル部とし、さらに両面銅張積層板に回路加工したものをリジッド部とし、これらフレキシブル部とリジット部を上記本発明のプリプレグと共に、圧力1〜5MPa、温度150〜250℃、60〜120分間の条件下で加熱加圧して積層一体化し、積層一体化後の基板に回路加工することで、リジッドフレックスプリント配線板を得ることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
<(a)ジヒドロベンゾオキサジン環を有する樹脂の合成>
ビスフェノールF1000gとメタノール920gを加え攪拌溶解した。ここに、パラホルムアルデヒド652kgを加えた。攪拌しながらアニリン930gを1時間かけて滴下し、1時間後に78〜80℃になるようにした。還流下7時間反応させた後、360mmHgで減圧濃縮を開始した。この減圧度を保ったまま、濃縮を継続し110℃になった地点で、減圧度を90mmHgにした。流出液がなくなったことを確認した後、樹脂をバットに取り出した。以上により、樹脂の軟化点が78℃のジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂を得た。
【0039】
<(b)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物(メラミン変性フェノール樹脂)の合成>
フェノール94重量部に41.5%ホルマリン29重量部、およびトリエチルアミン0.47重量部を加え、80℃にて3時間反応させた。メラミンを19重量部加え、さらに1時間反応させた後、常圧下にて水を除去しながら120℃まで昇温し、温度を保持したまま2時間反応させた。次に常圧下にて水を除去しながら180℃まで昇温し、減圧下にて未反応のフェノールを除去し、軟化点136℃のメラミン変性フェノール樹脂を得た。
【0040】
<樹脂組成物の調製>
(実施例1〜2、比較例1〜3)
上記で得た(a)成分および(b)成分、ならびに(c)フェノールノボラック型エポキシ樹脂(YDPN−638P 東都化成株式会社製)、(d)縮合リン酸エステル(PX−200 大八化学株式会社製)、(e)エポキシ化ポリブタジエン(R−45EPI 出光石油化学株式会社製)、(f)有機リン系化合物(HCA−HQ 三光株式会社製)、(g)水酸化アルミニウム、硬化促進剤として、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール(エピキュアEMI−24 ジャパンエポキシレジン株式会社製)を下記表1の通り配合し、実施例1〜2および比較例1〜3の各熱硬化性樹脂組成物を調製した。なお、(g)水酸化アルミニウムは、電子材料用に一般的に用いられている残留イオン等の少ないもので、粒子径が3μm〜5μmのものを使用した。
【0041】
【表1】

【0042】
<プリプレグおよびフレックスプリント基板の作製>
25μmの絶縁層厚さを有するポリイミドからなる18μm片面銅張ベースフィルム(東レ・デュポン株式会社製、デュポンパイララックスAC(登録商標))に回路を形成したものに、20μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、カプトン100V)に特願平3−302734号に示されるポリイミド系接着剤を30μm厚で塗布したカバーフィルムを積層してフレキシブル部を用意した。
【0043】
また、絶縁層厚さ0.2mm、銅箔厚さ35μmの両面銅張積層板(日立化成工業製 MCL−BE−67G)に回路加工することでリジッド部を用意した。
【0044】
各実施例および比較例の樹脂組成物をメチルエチルケトンに溶解させ、不揮発分が75%になるように調整し、ワニスを作製した。これをIPC品番#1080のガラスクロスに含浸し、170℃で1.5分間乾燥、半硬化させてプリプレグを得た。なお、プリプレグの樹脂分は65±0.5%、樹脂流れは4±1.0%になるように塗工条件を調整した。
【0045】
ついで、上記で得た各プリプレグとフレキシブル部とリジッド部を積層し、これを2.9MPa、190℃、90分間の条件で加熱加圧して一体化した後、回路加工を施すことで、リジッドフレックスプリント基板を得た。
【0046】
<評価>
上記で得られた各プリプレグおよびプリント配線版を用い、以下のような評価を行った。結果を表2に示す。
【0047】
(1)樹脂分:各プリプレグの樹脂組成物含有量を重量法により測定した。
【0048】
(2)樹脂流れ:各プリプレグについて、IPC−TM−650No.2.3.18に準拠して測定した。
【0049】
(3)はんだ耐熱性:121℃、2130hPaのプレッシャークッカー処理装置内に1〜2時間保持後のリジッドフレックスプリント配線板を、260℃に加熱されたはんだ槽に30秒間沈め、ふくれ及びミーズリングの発生の有無を肉眼にて観察した。表中の各記号は、○:変化なし、△:ミーズリングまたは目浮き発生、×:ふくれ発生を意味する(n=3)。
【0050】
(4)成形性:リジッドフレックスプリント配線板のフレキシブル部への樹脂のしみ出し量とボイドの有無を測定した。
【0051】
(5)ドリル加工性:リジッドフレックスプリント配線板を5枚重ねて直径0.25mmのドリル刃で回転数100、000rpm、ドリル送り速度2.5m/分の条件で3000穴、穴あけし、ドリル刃折れ数を評価した(n=2)。
【0052】
(6)接着強度:1cm幅のポリイミドフィルムのラインを形成し、ローフロ−プリプレグに対するポリイミドフィルムの接着強度を測定した。
【0053】
【表2】

【0054】
表2の結果から、エポキシ化ポリブタジエンと有機リン系化合物を添加した実施例1、2および比較例2は、有機リン系化合物を添加していない比較例1に比べて、ポリイミドフィルムへの接着強度が大幅に向上していることが確認された。一方、有機リン系化合物を(a)、(b)及び(c)の有機固形分の総量100重量部当たり13重量部添加した比較例2はボイドの発生及び吸湿はんだ耐熱性が低下することが確認された。また、有機リン系化合物、エポキシ化ポリブタジエンを共に添加していない比較例3は、ポリイミドフィルムとの接着性は良好であるが、ドリル加工性において折れが発生しており、加工性の低下が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)、(b)及び(c)の有機固形分の総量100重量部当り、
(a)分子中にジヒドロベンゾオキサジン環を有する樹脂35〜75重量部、
(b)フェノール類とトリアジン環を有する化合物とアルデヒド類の重縮合物10〜25重量部、
(c)エポキシ樹脂10〜45重量部、
(d)縮合リン酸エステル5〜35重量部
(e)エポキシ化ポリブタジエン0.5〜10重量部、
(f)下記式
【化1】

で示される有機リン化合物0.5〜10重量部を含み、かつ
(g)無機充填剤を、前記成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)の固形分の総量100重量部当り、30〜100重量部含む、ことを特徴とするプリント配線板用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1記載のプリント配線板用熱硬化性樹脂組成物を基材に含浸してなるプリプレグであって、該プリプレグ中の該樹脂組成物含有量(樹脂分)が40〜70重量%で、かつ樹脂流れ(試験方法IPC−TM−650No.2.3.18)が1〜12%であることを特徴とするプリント配線板用ローフロープリプレグ。
【請求項3】
請求項2記載のプリプレグを用いてなるプリント配線板。

【公開番号】特開2006−316104(P2006−316104A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−137388(P2005−137388)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】