説明

プリント配線板

【課題】より正確に電流を検出できるケルビン接続パターンを有するプリント配線板を提供する。
【解決手段】表面実装型抵抗器の両電極をはんだ付けするための各パッドを、矩形の主パッド20,21と、L字形の副パッド24,25とに分割する。電流を検出するための副引出線26,27は、抵抗器1の規格上の抵抗値が現れる基準点に近い副パッド24,25の特定位置X1,Y1から延び出す。主パッド20,21の面積と副パッド24,25の面積とはほぼ同じである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板に関し、さらに詳しくは、表面実装型電流検出用抵抗器を実装するための配線パターンに関する。
【背景技術】
【0002】
DC/DCコンバータなどのIC(Integrated Circuit)をプリント配線板上に実装するに際しては、出力電流を検出するために、低抵抗でかつ誤差の小さい精密抵抗器を外付けで実装する場合がある。このような抵抗器として表面実装型抵抗器を用いた場合における従来の配線パターンを図8に示し、表面実装型抵抗器を図9に示す。
【0003】
図8を参照して、表面実装型抵抗器1をはんだ付けするための各パッドは2つに分割されている。すなわち、各パッドは、面積の大きい主パッド2,3と、面積の小さい副パッド4,5とからなる。また、図9を参照して、表面実装型抵抗器1は、抵抗体6、一方電極7及び他方電極8からなる。
【0004】
再び図8を参照して、抵抗器1の一方電極7は主パッド2及び副パッド4にまたがって配置され、はんだ付けされる。一方、抵抗器1の他方電極8は主パッド3及び副パッド5にまたがって配置され、はんだ付けされる。ICから出力された大電流は主引出線9、主パッド2、抵抗器1、主パッド3及び主引出線10の順に流れる。副パッド4,5から延び出している副引出線11,12は電圧計に接続され、これにより抵抗器1にかかる電圧が測定され、抵抗器に流れる電流が検出される。このように電流検出用抵抗器に対して、実際の大電流を流すラインと、電流を検出するためのラインとをそれぞれ別々に設けたものを一般に「ケルビン接続」と呼んでいる。ケルビン接続によれば、パッドが一体的な場合と比較して、大電流が流れても電流検出用のラインがその影響を受けにくく、より正確に電流を検出できる。
【0005】
しかしながら、ケルビン接続にも問題がある。図9を参照して、抵抗器1の規格上の抵抗値は抵抗体6の基準点X及びYの間に現れる。一方電極7が主パッド2に接触する基準点Xの真下の位置をX1とすると、位置X1と副引出線11との間には一定の距離L1がある。他方電極8が主パッド3に接触する基準点Yの真下の位置をY1とすると、位置Y1と副引出線12との間には一定の距離L1(たとえば2.0mm)がある。したがって、抵抗体6の規格上の抵抗値以外に、これらの距離L1に相当する抵抗値が加わってしまい、正確に電流を検出できないという問題がある。ただし、副引出線11,12を副パッド4,5の外側ではなく内側から延び出すように配置すれば、その距離L2(たとえば1.25mm)は少しだけ短くなるが、それ以上短くすることはできない。
【0006】
また、はんだは主パッド2及び副パッド4にまたがって塊で盛り付けられるが、主パッド2及び副パッド4の面積が異なるため、表面張力の大きい主パッド2にはんだが偏ってしまう。主パッド3及び5側もこれと同様である。そのため、接触不良が起きやすいという問題がある。
【0007】
特開2002−372551号公報(特許文献1)には、電流検出用抵抗器の実装構造に関する技術が開示されている。この技術によると、電流検出用抵抗器の電圧検出端子(ケルビン端子)に接続する基板上の配線パターンを、電流検出用抵抗器の抵抗体と電気的絶縁を取りながら抵抗体の被測定電流経路に沿って延長してから、被測定電流経路と直角方向に引き出している。また、被測定電流電極の一部を電圧検出端子として用いている電流検出用抵抗器において、被測定電流電極の電圧検出端子部分と基板上のパターンの接続点を、電流検出用抵抗器の抵抗体の被測定電流に沿った方向の中心軸から、互いに反対方向に離隔して配置している。この構造をとると、抵抗体の被測定電流経路とケルビン端子からの配線パターンが相互インダクタンスにより磁気結合し、ケルビン端子間で検出される電圧には、被測定電流経路のインダクタンスの影響による電流の時間的変化に比例した誤差電圧に対して、相互インダクタンスにより形成される電圧がこれを打ち消すように作用する、というものである。しかしながら、ここで用いられている各パッドは2つに分割されていない。
【特許文献1】特開2002−372551号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、より正確に電流を検出できるケルビン接続パターンを有するプリント配線板を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
本発明によるプリント配線板は、第1及び第2の主パッドと、第1及び第2の主引出線と、第1及び第2の副パッドと、第1及び第2の副引出線とを備える。第1の主パッドは、表面実装型抵抗器の一方電極がはんだ付けされる。第2の主パッドは、抵抗器の他方電極がはんだ付けされる。第1の主引出線は、第1の主パッドから延び出す。第2の主引出線は、第2の主パッドから延び出す。第1の副パッドは、第1の主パッドに隣接して配置され、抵抗器の一方電極が第1の主パッドと一緒にはんだ付けされる。第2の副パッドは、第2の主パッドに隣接して配置され、抵抗器の他方電極が第2の主パッドと一緒にはんだ付けされる。第1の副引出線は、抵抗器の規格上の抵抗値が現れる一方基準点に近い第1の副パッドの特定位置から延び出す。第2の副引出線は、抵抗器の規格上の抵抗値が現れる他方基準点に近い第2の副パッドの特定位置から延び出す。
【0010】
このプリント配線板では、副パッドの特定位置から副引出線が延び出しているので、特定位置と副引出線との間の距離が短くなる。その結果、抵抗器に流れる電流を正確に検出できる。
【0011】
好ましくは、第1の主パッドは概略矩形をなす。第1の副パッドは第1の主パッドの互いに隣接する2辺を囲む概略L字形をなす。第2の主パッドは概略矩形をなす。第2の副パッドは第2の主パッドの互いに隣接する2辺を囲む概略L字形をなす。ここで、矩形は長方形だけでなく正方形も含む。
【0012】
この場合、はんだ付けを完了した抵抗器の両側に主パッド及び副パッドの端部が露出し、はんだ付けの良否を目視で判別できる。
【0013】
好ましくは、第1の主パッドの面積は第1の副パッドの面積と同じである。第2の主パッドの面積は第2の副パッドの面積と同じである。ここでは、面積は厳密に同じである必要はなく、実質的に同じでよい。具体的には、面積に10%程度の差があってもよい。
【0014】
この場合、両パッドにわたって盛り付けられたはんだに働く表面張力が同じになる。したがって、はんだが偏ることなく、両方にまたがって均等に盛り付けられる。その結果、抵抗器を確実にはんだ付けでき、接触不良が起こりにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
図1を参照して、DC/DCコンバータ用のIC13には一般に、抵抗器1及びパワートランジスタ14が外付けで接続される。抵抗器1は出力電流を検出するためのもので、抵抗値が低くかつその誤差が小さい精密抵抗が用いられる。
【0017】
[第1の実施の形態]
表面実装型抵抗器1をプリント配線板にはんだ付けするためのパッドの構造を図2に示す。図2を参照して、本発明の実施の形態によるプリント配線板は、主パッド20及び21と、主引出線22及び23と、副パッド24及び25と、副引出線26及び27とを備える。
【0018】
主パッド20は、表面実装型抵抗器1の一方電極7がはんだ付けされる。主パッド21は、抵抗器1の他方電極8がはんだ付けされる。主引出線22は、主パッド20から延び出す。主引出線23は、主パッド21から延び出す。副パッド24は、主パッド20に隣接して配置され、抵抗器1の一方電極7が主パッド20と一緒にはんだ付けされる。副パッド25は、主パッド21に隣接して配置され、抵抗器1の他方電極8が主パッド21と一緒にはんだ付けされる。副引出線26は、抵抗器1の規格上の抵抗値が現れる一方基準点Xに近い副パッド24の特定位置X1から延び出す。副引出線27は、抵抗器1の規格上の抵抗値が現れる他方基準点Yに近い副パッド25の特定位置Y1から延び出す。
【0019】
主パッド20は概略矩形をなす。副パッド24は主パッド20の互いに隣接する2辺を囲む概略L字形をなす。主パッド21は概略矩形をなす。副パッド25は主パッド21の互いに隣接する2辺を囲む概略L字形をなす。主パッド20の面積は副パッド24の面積とほぼ同じである。主パッド21の面積は副パッド25の面積とほぼ同じである。
【0020】
図3は、ケルビン接続の等価回路である。ROUTは抵抗器1の値、rF1は主パッド20側の内部抵抗、rF2は主パッド21側の内部抵抗、rS1は副パッド24側の内部抵抗、rS2は副パッド25側の内部抵抗である。抵抗器1の両電極7,8は内部抵抗rS1,rS2を介して電圧計に接続される。したがって、内部抵抗rS1,rS2が小さいほど抵抗器1に流れる電流を正確に検出できる。
【0021】
このプリント配線板では、特定位置X1,Y1直近の副パッド24,25内側から副引出線26,27が延び出しているので、特定位置X1,Y1から副引出線26,27の端までの距離L3(たとえば0.25mm)が従来よりも短くなる。その結果、内部抵抗rS1,rS2が小さくなるので、抵抗器1に流れる電流を正確に検出できる。
【0022】
また、抵抗器1をリフローではんだ付けする際には、あらかじめクリームはんだを主パッド20,21及び副パッド24,25にまたがるように塊で盛り付けるが、主パッド20,21の面積は副パッド24,25の面積とほぼ同じであるから、はんだに働く表面張力もほぼ同じになる。したがって、はんだが主パッド20,21又は副パッド24,25のいずれかに偏ることはなく、両方にまたがって均等に盛り付けられる。その結果、抵抗器1を主パッド20,21及び副パッド24,25に確実にはんだ付けでき、接触不良が起こりにくい。
【0023】
また、主パッド20,21は概略矩形をなし、副パッド24,25は概略L字形をなしているので、はんだ付けを完了した抵抗器1の両側に主パッド20,21及び副パッド24,25の端部が露出し、はんだ付けの良否を目視で判別できる。
【0024】
リニアテクノロジー製LTC3728LXを用いたDC/DCコンバータでは、電流制限用に精密抵抗器が使用される。規格によると、制限電流Imaxは精密抵抗器の値をRsenseとすると次の式(1)により求められる。
Imax=50mV/Rsense (1)
【0025】
Imax=5.000Aとするためには、Rsense=0.01Ωとする必要がある。これは、パッドの抵抗を無視した場合の設計理想値である。
【0026】
図1に示したパッドを用いた場合と、図8に示したパッドを用いた場合とについて、制限電流を求めると、次の表1のとおりである。
【表1】

【0027】
幅1mm、厚さ35μmの銅箔の長さ1cm(=10mm)当たりの抵抗値は一般に0.0048Ωであるから、従来のパッドの抵抗は0.00096Ω(=2.0mm×0.0048Ω/10)となるのに対し、本発明のパッドの抵抗は0.00012Ω(=0.25mm×0.0048Ω/10)となる。制限電流は、従来の場合は4.562Aであるが、本発明の場合は4.941Aである。したがって、設計理想値に対する検出誤差は、従来の場合は7.5%であるが、本発明の場合は1.2%である。このように、本発明の制限電流は設計理想値に近く、従来よりも正確に電流を検出できる。
【0028】
[第2の実施の形態]
上記第1の実施の形態では、主パッドの面積と副パッドの面積とをほぼ同じにしているが、たとえば図4に示すように、主パッド30,31を概略コの字形にし、副パッド32,33を矩形にし、主パッド30,31の内側に配置してもよい。ただし、この場合、主パッド30,31及び副パッド32,33にわたって盛り付けたはんだが表面張力の違いで主パッド30,31側に偏る可能性がある。また、抵抗器1の実装後は副パッド32,33が隠れてしまうので、はんだ付けの良否を目視で判別できない。
【0029】
[第3の実施の形態]
また、たとえば図5に示すように、主パッド34,35及び副パッド36,37を全て同じ面積の長方形にし、互いに隣接して配置してもよい。ただし、この場合は、抵抗器1の実装後は副パッド36,37がほとんど隠れてしまうので、はんだ付けの良否を目視で判別しにくい。
【0030】
[第4の実施の形態]
上記第1〜第3の実施の形態は図9に示した表面実装型抵抗器1に適したパターンであるが、この第4の実施の形態は図6に示した表面実装型抵抗器40に適したパターンである。表面実装型抵抗器40では、規格上の抵抗値が現れる基準点X及びYが両端面の中心にある。両端面から延び出す一方電極41及び他方電極42は抵抗器本体43に沿って折り曲げられ、抵抗器本体43に貼り付けられている。抵抗器本体43は樹脂で形成され、その中に抵抗体が封入されている。
【0031】
表面実装型抵抗器40を実装するためには、図7に示すように、概略矩形の主パッド44,45を内側に配置し、概略L字型の副パッド46,47を外側に配置する。主引出線48,49は主パッド44,45の内側から延び出す。副引出線50,51は副パッド46,47の外側にある特定位置X1,Y1から延び出す。
【0032】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】一般的なDC/DCコンバータの回路図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態によるプリント配線板のケルビン接続パターンを示す平面図である。
【図3】ケルビン接続の等価回路である。
【図4】本発明の第2の実施の形態によるプリント配線板のケルビン接続パターンを示す平面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態によるプリント配線板のケルビン接続パターンを示す平面図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態によるプリント配線板のケルビン接続パターンを示す平面図である。
【図7】表面実装型抵抗器の外観構成を示す斜視図である。
【図8】図7と異なるタイプの表面実装型抵抗器の外観構成を示す斜視図である。
【図9】電流検出用抵抗器を実装するための従来の配線パターンを示す平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1,40 表面実装型抵抗器
20,21,30,31,34,35,44,45 主パッド
24,25,32,33,36,37,46,47 副パッド
7,41 一方電極
8,42 他方電極
22,23,48,49 主引出線
26,27,50,51 副引出線
X,Y 基準点
X1,Y1 特定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面実装型抵抗器の一方電極がはんだ付けされる第1の主パッドと、
前記抵抗器の他方電極がはんだ付けされる第2の主パッドと、
前記第1の主パッドから延び出す第1の主引出線と、
前記第2の主パッドから延び出す第2の主引出線と
前記第1の主パッドに隣接して配置され、前記抵抗器の一方電極が前記第1の主パッドと一緒にはんだ付けされる第1の副パッドと、
前記第2の主パッドに隣接して配置され、前記抵抗器の他方電極が前記第2の主パッドと一緒にはんだ付けされる第2の副パッドと、
前記抵抗器の規格上の抵抗値が現れる一方基準点に近い前記第1の副パッドの特定位置から延び出す第1の副引出線と、
前記抵抗器の規格上の抵抗値が現れる他方基準点に近い前記第2の副パッドの特定位置から延び出す第2の副引出線とを備えたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
請求項1に記載のプリント配線板であって、
前記第1の主パッドは概略矩形をなし、前記第1の副パッドは前記第1の主パッドの互いに隣接する2辺を囲む概略L字形をなし、前記第2の主パッドは概略矩形をなし、前記第2の副パッドは前記第2の主パッドの互いに隣接する2辺を囲む概略L字形をなす、ことを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプリント配線板であって、
前記第1の主パッドの面積は前記第1の副パッドの面積と同じであり、前記第2の主パッドの面積は前記第2の副パッドの面積と同じである、ことを特徴とするプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−198687(P2008−198687A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30034(P2007−30034)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【出願人】(000000273)オンキヨー株式会社 (502)
【Fターム(参考)】