説明

プリン及びピリミジンCDK阻害剤、並びに自己免疫疾患の治療のためのそれらの使用

本発明は、抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩の使用であって、このCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩が、抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量で投与される使用に関する。本発明の別の態様は、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンを含む組合せ物と、SLEなど抗核抗体に関連する疾患の治療におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗核抗体に関連する疾患を治療する方法に関する。より具体的には、これだけに限らないが、本発明は、ヒトの全身性エリテマトーデス(SLE)などの自己免疫性リウマチ疾患の治療方法、並びにその薬剤組成物及び組合せ物に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫系の目的は、微生物、毒素、癌細胞、及び他人又は他の種からの外来性の血液又は組織など、潜在的有害物質(抗原)から身体を保護することである。抗原は、免疫応答によって破壊され、それには、抗体(抗原に付着し、それをより破壊されやすくする分子)及び感作リンパ球(特定の抗原を認識し破壊する特別な白血球)の産生が含まれる。
【0003】
免疫系障害は、免疫応答が、不適当、過剰、又は不足しているときに起こる。自己免疫障害は、免疫系にそれ自体の組織に対する抗体を産生させるという免疫系の異常な機能化を特徴とするどんな疾患も指す。これは、免疫系が通常無視するはずである物質、即ち、正常な「自己」体組織に反応する過敏症反応によって引き起こされる。
【0004】
通常、免疫系は、「自己」と「非自己」組織を区別することができる。いくつかの免疫系細胞(リンパ球)は、「自己」組織細胞に対して敏感であるが、これらの不完全なリンパ球は、通常、他のリンパ球によって制御(抑制)される。自己免疫障害は、正常な制御過程が中断されるとき、或いは正常な体組織が変化してもはや「自己」と認められない場合に起こる。
【0005】
自己免疫障害は、一般に、体組織のうちの1種若しくは複数のタイプの破壊、器官の異常成長、又は器官機能の変化をもたらす。この障害は、たった1個の器官又は組織タイプに影響を及ぼす恐れもあり、或いは多数の器官及び組織に影響を及ぼす恐れもある。一般に自己免疫障害に影響を受ける器官及び組織としては、赤血球などの血液成分、血管、結合組織、甲状腺や膵臓などの内分泌腺、腎臓や肝臓などの器官、筋肉、関節、及び皮膚が挙げられる。
【0006】
自己免疫障害又は自己免疫関連の障害の例としては、橋本甲状腺炎、悪性貧血、アジソン病、I型糖尿病、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、薬剤誘発性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、ライター症候群、及びグレーブス病が挙げられる。
【0007】
自己免疫疾患の症状は、疾患のタイプに応じて広く変化する。しかし、自己免疫疾患は、しばしば、疲労、眩暈、倦怠感(不調の非特異的な感覚)、熱、及び微熱など非特異的な症状を伴う。
【0008】
特異的自己免疫疾患は、器官若しくは組織の機能低下(例えば、膵臓の島細胞は糖尿病で破壊される)及び/又は器官若しくは組織のサイズ増加(例えば、グレーブス病における甲状腺肥大)を生じる器官又は組織の破壊をもたらす。こうした症状は、特異的な障害、及び影響を受けた器官又は組織に応じて変わる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
自己免疫は、免疫系のバランスのとれた抑制によって制御される。その目的は、正常な体組織に対する免疫応答を低下させるが、微生物及び異常な組織に対する免疫応答をそのままにしておくことである。自己免疫疾患の臨床治療には、一般に、免疫応答を低下させるコルチコステロイド及び免疫抑制剤(シクロホスファミド又はアザチオプリンを含む)の使用が含まれる。しかし、これまで利用可能な治療の多くは、深刻な副作用を伴う。
【0010】
本発明は、理想的に症状を低下させ、自己免疫過程を制御するが、疾患と闘う能力を維持することができる、自己免疫疾患を治療する代替治療法を提供しようとするものである。より詳細には、本発明は、抗核抗体に関連する疾患、特にヒトの全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患の治療に関する。本発明はまた、こうした障害の治療に適した薬剤の組合せ及び組成物を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様は、抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩の使用であって、このCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩が、抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量で投与される使用に関する。
【0012】
本発明の第2の態様は、対象の抗核抗体に関連する疾患を治療する方法であって、前記方法が、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩を、抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量で対象に投与することを含む方法に関する。
【0013】
本発明の第3の態様は、対象の抗核抗体に関連する疾患を、前記対象の抗核抗体のレベルを下方制御することによって治療する方法であって、前記方法が、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩を、抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量で投与することを含む方法に関する。
【0014】
本発明の第4の態様は、対象の抗核抗体に関連する疾患を、抗核抗体のレベルを下方制御することによって治療する方法であって、前記方法が、前記疾患が治療されるように、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩を投与することを含む方法に関する。
【0015】
本発明の第5の態様は、対象の抗核抗体のレベルを下方制御する方法であって、前記方法が、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩を、抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量で対象に投与することを含む方法に関する。
【0016】
本発明の第6の態様は、細胞の抗核抗体のレベルを下方制御する方法であって、前記方法が、前記細胞を、前記細胞の抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量のCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩と接触させることを含む方法に関する。
【0017】
本発明の第7の態様は、抗核抗体に関連する疾患を治療する薬剤組成物であって、前記組成物が、製薬上許容される希釈剤、賦形剤、又は担体と混合された、抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量のCDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤を含む薬剤組成物に関する。
【0018】
本発明の第8の態様は、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンを含む組合せ物に関する。
【0019】
第9の態様は、本発明による組合せ物、及び製薬上許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む薬剤組成物に関する。
【0020】
本発明の第10の態様は、治療において同時に、連続して、又は個別に使用する組合せ製剤としての、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンを含む医薬品に関する。
【0021】
本発明の第11の態様は、製薬上許容される希釈剤、賦形剤、又は担体と混合された、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンを含む薬剤組成物に関する。
【0022】
第12の態様は、抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製における本発明による組合せ物に関する。
【0023】
本発明の第13の態様は、抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩の使用であって、この医薬品が、メチルプレドニゾロンと組み合わせて使用するものである使用に関する。
【0024】
本発明の第14の態様は、抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるメチルプレドニゾロンの使用であって、この医薬品が、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩と組み合わせて使用するものである使用に関する。
【0025】
本発明の第15の態様は、抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製における、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンの使用に関する。
【0026】
本発明の第16の態様は、抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩の使用であって、前記治療が、その対象に、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンを、同時に、連続して、又は個別に投与することを含む使用に関する。
【0027】
本発明の第17の態様は、対象の抗核抗体に関連する疾患を治療する方法であって、前記方法が、その対象に、治療上許容される量のCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンを投与することを含む方法に関する。
【0028】
参照を容易にするために、次に、本発明のこれらの態様及びさらなる態様を、適切な節の見出しのもとに論じる。しかし、各節の教示は、必ずしも特定の節各々に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤
本発明は、1個又は複数のCDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤の使用に関する。疑念を排除するために、この阻害剤は、CDK2、CDK7、若しくはCDK9のうちのいずれか1個の阻害剤でも、又はそのいずれの組合せでもよい。
【0030】
好ましい一実施形態では、この阻害剤は、CDK2の阻害剤である。
【0031】
別の好ましい実施形態では、この阻害剤は、CDK7の阻害剤である。
【0032】
別の好ましい実施形態では、この阻害剤は、CDK9の阻害剤である。
【0033】
別の好ましい実施形態では、この阻害剤は、CDK7及びCDK9からなる阻害剤である。
【0034】
CDK活性を分析する方法は、当業者には周知であろう。さらなる詳細を、添付の実施例の節において概説する。
【0035】
好ましくは、これらの阻害剤は、CDK2、CDK7、又はCDK9のうちの1個又は複数のIC50値が、1mM未満、より好ましくは100μM未満、さらにより好ましくは50μM未満、より好ましくは25μM未満、より好ましくは10μM未満、さらにより好ましくは1μM又は0.5μM又は0.1μM未満を示す。
【0036】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤の適切な例としては、欧州特許第0874847B号(CNRS)、国際公開WO03/002565(Cyclacl Limited)、国際公開WO04/016613(Cyclacl Limited)、国際公開WO04/016612(Cyclacl Limited)に開示されたものなどのプリン誘導体;及び国際公開WO01/72745、国際公開WO02/079193、国際公開WO03/029248、国際公開WO04/043953(すべてCyclacl Limited)に開示されたものなどのピリミジン誘導体が挙げられる。
【0037】
本発明の好ましい一実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤は、
【0038】
【化1】

【0039】
【化2】


及びそれらの薬剤として許容される塩から選択される。
【0040】
特に好ましい一実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤は、化合物[1]〜[3]、[5]〜[8]、[11]、及び[12]から選択される。
【0041】
別の特に好ましい実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤は、化合物[4]、[9]、及び[10]から選択される。
【0042】
さらに別の特に好ましい実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤は、化合物[7]である。
【0043】
これまで、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、抗核抗体のレベルを低下させるのに効果があることは示唆されていなかった。また、こうした阻害剤が自己免疫障害の治療においてメチルプレドニゾロンと一緒に併用療法で使用され得るであろうことは、当技術分野でどんな教示も示唆もされていない。
【0044】
好ましい一実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤は、ロスコビチン、オロモウシン、及びパルバラノールAから選択される。
【0045】
本発明のさらに好ましい実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤は、ロスコビチンである。
【0046】
ロスコビチン、即ち、2−[(1−エチル−2−ヒドロキシエチル)アミノ]−6−ベンジルアミン−9−イソプロピルプリンはまた、2−(1−D,L−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミン−9−イソプロピルプリンと記載される。本明細書では、「ロスコビチン」という用語は、分割されたR及びS鏡像異性体、その混合物、並びにそのラセミ化合物を包含する。
【0047】
本明細書では、「CYC202」という用語は、ロスコビチンのR鏡像異性体、即ち、2−(1−R−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリンを指し、その構造を以下に示す。
【0048】
【化3】

【0049】
ロスコビチンのインビトロ活性は、以下の通りである。
【0050】
【表1】

【0051】
自己免疫障害の治療におけるロスコビチンの使用は当技術分野の文書に記録されているが、これまで、それが抗核抗体のレベルを低下させるのに効果があることは示唆されていなかった。また、ロスコビチンが自己免疫障害の治療においてメチルプレドニゾロンと一緒に併用療法で使用され得るであろうことは、当技術分野でどんな教示も示唆もされていない。
【0052】
本発明のすべての実施形態では、好ましくは、ロスコビチンは、R鏡像異性体の形、即ち、2−(1−R−ヒドロキシメチルプロピルアミノ)−6−ベンジルアミノ−9−イソプロピルプリンであり、以下、「CYC202」と称す。
【0053】
治療活性
前述のように、本発明は、抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩の使用であって、このCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩が、抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量で投与される使用に関する。
【0054】
抗核抗体(ANA)は、血液中に検出可能な異常な抗体であり、細胞の核内のある種の構造に結合する能力を有する。ANAは、免疫系が患者自身の体組織に対して炎症を引き起こす素因となる恐れがある患者に見られる。己自身の組織に対して向けられる抗体は、自己抗体と呼ばれる。免疫系が己自身の身体に不利に作用する傾向は、自己免疫と呼ばれる。
【0055】
抗核抗体の存在は、自己免疫疾患の特徴である。抗核抗体は、タンパク質及び核酸成分を含む大きな細胞複合体にしばしば向かう抗体の多様なグループである。最も頻繁に生じる抗核抗体は、DNAタンパク質複合体又はRNAタンパク質複合体の成分と反応する[W. J. Van Venrooijら、C. A. Von Mulenら]。研究から、一般に高力価であるこれらの自己抗体、即ち高親和性IgG抗体の産生は、T細胞依存的であり、宿主の自己抗原によって推進されることが示された[M. Reichlinら]。
【0056】
自己免疫性として定義される疾患では、組織損傷が、自己抗原に対応する免疫応答によって引き起こされることが示されなければならない。自己免疫疾患は、自己抗体及び/又は自己反応性T細胞によって媒介される恐れがあり、組織損傷は、抗原を有する細胞への直接攻撃、免疫複合体形成、又は局所炎症から生じる恐れがある。T細胞は、炎症又は細胞破壊に直接関与している可能性があり、それらはまた、自己抗体応答を持続するのに必要である。同様に、B細胞は、自己抗原特異的T細胞の応答を持続する上での重要な抗原提示細胞である可能性がある。
【0057】
CD4T細胞は、T細胞によって認識されるペプチドに物理的に連結されるエピトープを結合するB細胞を選択的に活性化する。したがって、自己反応性B細胞と自己反応性T細胞はどちらも自己免疫が関与する疾患に必要である。
【0058】
抗核抗体産生は、インビボでのみ研究され得る。というのは、これらの抗体の産生には、B細胞とT細胞を共に含む機能不全免疫系が必要であり、自己を認識する免疫細胞を選択且つ破壊できないことが求められるからである。
【0059】
T細胞機能に関するインビトロアッセイは、自己免疫疾患の複雑な状況で免疫応答を調節することができる化合物を同定する適切なスクリーニングツールである。こうしたアッセイの1つは、T細胞増殖アッセイであり、そのさらなる詳細は、添付の実施例で説明する。抗核抗体産生が関与する自己免疫疾患では、正常なT細胞機能は、B細胞による自己抗体産生の刺激を必要とする。したがって、T細胞機能(T細胞機能の基準の1つは、免疫の刺激に応じて増殖する能力である)に影響を及ぼす化合物はまた、B細胞と情報交換するT細胞の能力を制御することによって、さらに、T細胞が自己免疫損傷部分に移動するのを阻止することによって自己抗体の形成を阻止すべきである。
【0060】
本明細書では、「抗核抗体」という用語は、抗DNA抗体、抗RNA抗体と、タンパク質の核成分に対する抗体のどちらも含む。
【0061】
抗核抗体に関連する疾患には、自己免疫性リウマチ疾患及び器官特異的自己免疫がある。
【0062】
好ましくは、自己免疫性リウマチ疾患は、薬剤誘発性狼瘡、全身性エリテマトーデス(SLE)、及びリウマチ性関節炎から選択される。
【0063】
リウマチ性関節炎は、関節の内層及び/又は他の内部器官に炎症を伴う慢性自己免疫疾患である。リウマチ性関節炎は、全身に影響を及ぼし、関節炎の最も一般的な形の1つである全身性疾患である。それは、関節の内側を覆っている膜の炎症を特徴とし、それによって、疼痛、硬直、発熱、赤み、及び腫れが引き起こされる。炎症を起こした関節内層、即ち関節滑膜は、骨及び軟骨に侵入し、損傷を与える恐れがある。炎症細胞は、骨及び軟骨を消化することができる酵素を放出する。関係する関節は、その形状及びアライメントを喪失する恐れがあり、その結果疼痛が生じ、動きが低下する。症状としては、一般に、関節の炎症、腫れ、動作困難、及び疼痛が挙げられる。その他の症状としては、食欲不振、発熱、消耗感、及び貧血が挙げられる。
【0064】
これまで、その治療法は、疼痛の軽減、炎症の低下、関節損傷の阻止又は遅延、並びに患者の機能及び健康改善に集中している。薬物は、2グループに分けることができる。即ち、(i)関節痛、硬直、及び腫れの軽減を促進させる対症薬物(NSAIDS、アスピリン、鎮痛剤、コルチコステロイドなど)、並びに(ii)低用量のメトトレキサート、レフルノミド、D−ペニシラミン、スルファサラジン、金療法、ミノサイクリン、アザチオプリン、ヒドロキシクロロキン(またその他の抗マラリア薬)、シクロスポリン、生物学的薬剤などの疾患修飾性抗リウマチ薬である。
【0065】
より好ましくは、自己免疫性リウマチ疾患は、全身性エリテマトーデス(SLE)である。
【0066】
全身性エリテマトーデス
好ましい一実施形態では、本発明は、皮膚、関節、及び内部器官を含めた多くの器官系に影響を及ぼす恐れがある慢性の炎症性自己免疫障害である全身性エリテマトーデス(播種性エリテマトーデス、SLE、狼瘡、狼瘡エリテマトーデスとしても知られる)の治療に関する。この疾患を抱える人々は様々な症状を呈する恐れがあるが、最も一般的な症状のいくつかには、極度の疲労、関節の痛み又は腫れ(関節炎)、原因不明の熱、発疹、及び腎臓の問題がある。現在、SLEに対する治療法はない。
【0067】
この疾患は、男性の数の9倍の女性に影響を及ぼし、アフリカ出身の人々により一般的に見られる。これはどの年齢にも起こり得るが、大抵、10〜50歳の人々に現れる。SLEはまた、ある種の薬剤によって引き起こされる恐れがある。これが起こった場合、それは薬剤誘発性エリテマトーデスとして知られており、その薬物を中止すると、通常元に戻る。
【0068】
この疾患の経過は、軽度の突発性疾病から重篤な致命的疾患に変わる恐れがある。これらの症状はまた、時間と共に特定の個人において大きく変化し、寛解及び悪化の期間を特徴とする。狼瘡の最も一般的ないくつかの症状としては、関節の痛み又は腫れ(関節炎)、原因不明の熱、及び極度の疲労が挙げられる。狼瘡のその他の症状としては、胸痛、脱毛、貧血(赤血球の減少)、口内炎、並びに風邪及びストレスからの指及びつま先の蒼白化又は紫色化が挙げられる。何人かの人々はまた、頭痛、眩暈、うつ、錯乱、又は発作を経験する。新たな症状が、最初の診断の数年後に現れ続ける恐れがあり、様々な症状が、様々な時に起こる恐れがある。その発症に、1個の器官系だけが関与する可能性がある。別の器官は、その後関与するようになる可能性がある。
【0069】
狼瘡(lupus)は、フレアと呼ばれる疾病の期間、及び健康又は寛解の期間を特徴とする。一般に、SLEが診断されると、医師は、患者の年齢、性別、健康、症状、及び生活様式に基づく治療計画を作成するであろう。治療計画を作成する際に、医師は、いくつかの目的、即ち、フレアの阻止、フレアが起きたときのそれらの治療、並びに器官損傷及び合併症の最小化を挙げる。
【0070】
これまで、多くの様々な治療が、SLE罹患者に利用可能である。関節痛、胸痛、又は発熱を患う人々には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)と呼ばれる炎症を低減させる薬剤が、しばしば使用される。NSAIDの一般的な副作用としては、胃の不調、胸やけ、下痢、及び体液貯留が挙げられ得る。何人かの罹患者はまた、肝臓、腎臓、さらには神経学的な合併症を発症する。
【0071】
抗マラリア薬は、狼瘡を治療するのに一般に使用される別のタイプの薬剤である。それらは、一般に、疲労、関節痛、発疹、及び肺の炎症を治療するのに使用されるが、臨床研究によって、抗マラリア薬での連続的な治療がフレアの再発を阻止する可能性があることが分かった。抗マラリア薬の副作用には、胃の不調、及び極めてまれに目の網膜への損傷が挙げられ得る。
【0072】
狼瘡治療の主力には、コルチコステロイドホルモンの使用が含まれる。コルチコステロイドは、急速に炎症を抑制することによって作用し、経口によって、皮膚に施用するクリームで、又は注射によって投与され得る。コルチコステロイドの短期の副作用としては、腫れ、食欲亢進、及び体重増加が挙げられる。これらの副作用は、一般に、薬剤を中止すると止まる。しかし、コルチコステロイドの摂取を急に中止することはしばしば危険である可能性があるので、長期間かけて患者にそれらをやめさせる必要がある。コルチコステロイドの長期の副作用としては、皮膚上の皮膚線条、骨の弱化又は損傷(骨粗しょう症及び骨壊死)、高血圧、動脈への損傷、高血糖(糖尿病)、感染症、及び白内障が挙げられ得る。一般に、用量が多いほど、且つそれらを長く摂取するほど、副作用の危険及び重さは大きくなる。
【0073】
腎臓又は中枢神経系が狼瘡の影響を受ける患者には、免疫抑制剤を使用することができる。これらの免疫抑制剤は、免疫細胞の産生を妨害することによって過敏性の免疫系を抑制する。副作用としては、吐き気、嘔吐、脱毛、膀胱の問題、生殖能力の低下、並びにガン及び感染症の危険増加が挙げられ得る。副作用の危険は、治療の長さと共に増加する。狼瘡に対するその他の治療と同様に、免疫抑制剤が止められた後、再発の危険がある。
【0074】
本発明は、SLE及びその他の自己免疫性リウマチ疾患に代替の治療処置を提供する。具体的には、本発明は、少なくとも疾患の急性期において優れた治療効果を有するが、大きな長期副作用のない、免疫抑制剤及びステロイドに代わる治療を提供することを目的とする。
【0075】
インビボ研究
研究は、マウスにおけるCYC202の効果及びCYC202/メチルプレドニゾロンの組合せの効果を調べるのに行われた。
【0076】
NZB/W一代雑種マウスは、自然発生的にヒトの全身性エリテマトーデスによく似た重篤な自己免疫疾患を発症する。この疾患は、初期の抗核抗体形成、タンパク尿症を伴う免疫複合体糸球体腎炎の発症、及び経時的な腎不全への進行と共に現れ、また、これらのマウスの早期死亡も引き起こす。これは、とりわけ、ヌクレオソーム、即ちヒストンに複合したDNAが最も顕著であるように見える、核及び内在性抗原に対する自己抗体の形成を伴うT細胞及びB細胞の機能障害疾患である。
【0077】
インビボでは、ヌクレオソームは、アポトーシス、即ち狼瘡で妨害されるように見える過程によって産生される。アポトーシス細胞の除去が不十分な状態では、ヌクレオソームは、重要な成分がヌクレオソーム特異的抗体及びヌクレオソーム/IgG複合体であるT細胞依存性免疫応答を推進する自己抗原として作用する。これらは、糸球体基底膜の内因性成分に結合し、炎症を促進する。腎臓常在性の浸潤細胞によって過剰量産生されるサイトカイン及び化学誘引物質は、免疫複合体介在性損傷を増幅し、永続化する。
【0078】
組織学的に、NZB/Wマウスの糸球体変化は、局所的管外性増殖に関連する管内細胞過形成を含み、免疫型沈着物は、メサンギウム中に、且つ糸球体基底膜(GBM)の内皮下面上に検出される。管損傷、間質性炎症、及び線維症は、深刻である。
【0079】
陽性(サイクリン及びサイクリン依存性キナーゼ)及び陰性(サイクリン依存性キナーゼ阻害因子)細胞周期調節タンパク質が、細胞増殖及びアポトーシスを含めた損傷の免疫形及び非免疫形に対する細胞応答を調節する上で重要な役割を果たすことを示す証拠が増加している。メサンギウム細胞などの内因性糸球体細胞の増殖は、IgA腎障害、狼瘡、膜性増殖性糸球体腎炎などの免疫介在性糸球体の損傷の形態に対する特徴的応答である。陽性細胞周期タンパク質(サイクリンD、E、A)の発現並びにCDK2タンパク質のレベル及び活性は、メサンギウム細胞増殖を特徴とする実験用メサンギウム増殖性糸球体腎炎(Thy腎炎)において増大する。このモデルでは、CDK2の阻害は、メサンギウム細胞の増殖及び基質タンパク質の蓄積を低下させ、腎機能を改善した。
【0080】
本出願人によるインビボ研究によって、生後2カ月から、用量200mg/kg及び100mg/kgのCYC202で処置したNZB/W F1マウスは、媒体で処置したマウスより有意に長く(P<0.05)生存することが示された。研究終了(8カ月)時、媒体で処置した13匹のNZB/Wマウスのうち4匹(31%)だけが生存していたが、それぞれ200mg/kg及び100mg/kgのCYC202で処置した13匹のマウスのうちの10匹(77%)及び14匹のマウスのうちの10匹(71%)が生存していた。生後5カ月(治療処置)からCYC202(100mg/kg)を与えられたマウスのグループでは、その生存パーセンテージは、媒体で処置したマウスで記録されたものと差はなかった。
【0081】
本発明の好ましい一実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤の量は、タンパク尿症及び腎機能障害の発症を遅らせるのに十分である。
【0082】
重度のタンパク尿症(>4mg/日)のマウスの累積パーセンテージを、実験グループのすべてにおいて疾患の様々な段階で評価した。媒体グループでは、タンパク尿症マウスのパーセンテージは、時間と共に次第に増加した。研究終了時、タンパク尿マウスのパーセンテージは、85%であった。用量依存的な方法では、生後2カ月から予防的治療として投与したCYC202は、媒体に比べてタンパク尿症の発症を有意に遅延させた(タンパク尿マウスの%、8カ月時:200mg/kgでは23%、媒体に対しP<0.01;100mg/kgでは43%、媒体に対しP<0.05)。CYC202を生後5カ月から狼瘡マウスに投与したとき、媒体に対してタンパク尿マウスのパーセンテージの低下傾向が観察されたが、統計的有意性には達しなかった。
【0083】
5カ月及び8カ月時に、血清血中尿素窒素(BUN)で評価する腎機能を測定した。5カ月時の血清BUNレベルは、すべての実験グループにおいて正常範囲内(<29mg/dl)にあった。媒体グループでは、腎機能は時間と共に悪化し、8カ月時で、生存している動物の50%は、BUNレベルが>30mg/dlであった。生後2カ月から予防的治療として投与したCYC202は、狼瘡マウスにより良好な腎機能をもたらしたが、生後5カ月以降に投与した場合は効果がなかった。
【0084】
本発明の好ましい一実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤の量は、抗核、特に抗DNA抗体のレベルを下方制御するのに十分である。
【0085】
高い抗DNA抗体レベルは、NZB/W F1マウスの特徴である。媒体を投与したマウスは、時間と共に抗DNA抗体のレベル増加を示した。生後5カ月又は8カ月時、生後2カ月から両方の用量のCYC202で処置したマウスは、抗DNA抗体レベルが媒体より有意に低いことを示した。生後5カ月からCYC202の投与を受けたマウスグループでは、抗DNA抗体濃度は、8カ月時で媒体よりも数値的ではあるが有意ではなく低かった。
【0086】
好ましい一実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤は、糸球体及び管間質(tubointerstitial)の変化を低下させるのに十分な量である。
【0087】
研究終了時、媒体を投与したNZB/Wマウスは、局所的管外性増殖に関連する管内細胞過形成を伴う糸球体の変化を示した。免疫沈着物が、メサンギウム中に、且つ糸球体基底膜(GBM)の内皮下面上に検出された。管損傷及び間質性炎症も観察された。生後2カ月からのCYC202の処置は、糸球体細胞過形成、免疫沈着物、及び尿細管間質性損傷を著しく制限した。これらの効果は、CYC202が用量200mg/kgで与えられたとき、より明白であった。生後5カ月からCYC202を投与したマウスでは、腎臓形態に対して中程度の効果しか観察されなかった。
【0088】
好ましい一実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤の量は、PMA及びConAによって誘発されたT細胞増殖を阻害するのに十分である。
【0089】
本発明の好ましい一実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤は、Mcl−1の発現を下方制御するのに十分な量である。
【0090】
好ましい一実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤の量は、単核細胞の間質性蓄積を減少させるのに十分な量である。
【0091】
腎臓を、免疫組織化学法によってF4/80陽性単球/マクロファージに関して分析した。F4/80陽性細胞の顕著な蓄積が、媒体を投与したNZB/Wマウスの腎間質に存在した。生後2カ月から200mg/kgのCYC202で予防的に処置すると、F4/80陽性単球/マクロファージの数が媒体に対して顕著に減少した。用量100mg/kgのCYC202は、単核細胞の間質性蓄積を統計的に有意な程度ではないが制限した。F4/80陽性細胞数の減少は、治療的研究(生後5カ月からの処置)で観察された。
【0092】
要約すれば、本研究の結果は、生後2カ月から予防的治療として投与したCYC202(200及び100mg/kg)が、媒体を投与した動物に比べて、NZB/Wマウスの狼瘡の腎症状を遅延させ、顕著に延命させたことを明らかに示している。具体的には、CYC202は、タンパク尿症及び腎機能障害の発症を遅延させ、単核細胞、糸球体細胞過形成、及び免疫沈着物の間質性蓄積を含めた糸球体及び尿細管間質の変化を制限した。その効果は、用量200mg/kgでより明白である。本研究の顕著な発見は、CYC202による抗DNA抗体レベルの減少であった。これは、おそらくT細胞に対するCYC202効果に起因する可能性があり、また、B細胞に影響を及ぼす可能性があった。インビトロ実験から、PMA及びConAによって、並びに混合リンパ球反応において誘発されたT細胞増殖の濃度依存的阻害が、CYC202の処置後に観察された。さらに、SLEでは、ヒストン又はヌクレオソームに特有の活性化された自己免疫Tヘルパー細胞が、B細胞の抗DNA産生プラズマ細胞への分化を促進させる可能性があるという証拠がある(総説については、Rekvig, Arthritis & Rheumatism 48: 300-312, 2003を参照)。
【0093】
CYC202はまた、抗アポトーシスタンパク質mcl−1の下方制御を含めた転写に効果があることが知られており、したがって、細胞の生存シグナルのバランスを変更することができる。アネルギーT細胞は、この作用機序に特に敏感な可能性がある。
【0094】
生後5カ月からCYC202(100mg/kg)の投与を開始すると、媒体マウスに対してタンパク尿マウスのパーセンテージ及び腎障害のパーセンテージが若干低下した。生存は改善されなかった。この小さな効果は、おそらく低用量に起因すると思われた。
【0095】
組合せ物(combinations)
特に好ましい一実施形態では、この医薬品は、メチルプレドニゾロンとの併用療法で使用するものである。
【0096】
本明細書では、「併用療法」という用語は、メチルプレドニゾロン並びにCDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤を、同時でない場合、これら両方が同時間枠内に治療上作用することができる時間枠内で連続投与する治療を指す。
【0097】
本発明の別の態様は、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンを含む組合せ物に関する。
【0098】
好ましくは、この組合せ物は相乗効果を有する、即ち、この組合せ物は相乗的である。
【0099】
メチルプレドニゾロンは、合成(人工)コルチコステロイドである。その化学名は、11,17,21−トリヒドロキシ−6−メチル−(6a,11b)−プレグナ−1,4−ジエン−3,20−ジオンである。コルチコステロイドは、腎臓に隣接する副腎によって生産される天然由来の化学物質である。コルチコステロイドは、炎症を妨げ、多種多様な炎症性疾患において使用される。経口錠剤、カプセル、液体、局所用クリーム及びゲル、吸入器薬、点眼薬、注射液、並びに静脈注射溶液を含めた多数のコルチコステロイド製剤がある。メチルプレドニゾロンは、一般に、経口錠剤又は液体として処方される。
【0100】
メチルプレドニゾロンは、炎症の迅速な抑制を実現するのに使用される。メチルプレドニゾロンが使用される炎症性状態の例としては、リウマチ性関節炎、全身性エリテマトーデス、急性痛風性関節炎、乾癬性関節炎、潰瘍性大腸炎、及びクローン病が挙げられる。従来の治療が役に立たない深刻なアレルギー状態はまた、メチルプレドニゾロンに反応する可能性がある。例としては、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、薬物性皮膚炎、接触性皮膚炎、及びアトピー性皮膚炎が挙げられる。メチルプレドニゾロンで治療する慢性の皮膚状態としては、疱疹状皮膚炎、天疱瘡、重症の乾癬、及び重症の脂漏性皮膚炎が挙げられる。また、眼のブドウ膜、虹彩、結膜、及び視神経の慢性のアレルギー性状態及び炎症性状態も、メチルプレドニゾロンで治療される。
【0101】
別の態様は、本発明による組合せ物、及び製薬上許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む薬剤組成物に関する。
【0102】
本発明の別の態様は、治療において同時に、連続して、又は個別に使用する組合せ製剤としてのCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンを含む医薬品に関する。
【0103】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤、並びにメチルプレドニゾロンは、同時に、組み合わせて、連続して、又は別々に(投与計画の一部として)投与され得る。
【0104】
本明細書では、「同時に」は、2種の薬剤を同時に投与するという意味に使用され、「組み合わせて」という用語は、それらを、同時でない場合、それら両方が同時間枠内に治療上作用することができる時間枠内で「連続して」投与するという意味に使用される。したがって、「連続」投与によって、最初に投与した薬剤の循環半減期が、両薬剤が同時に治療有効量で存在するようであるならば、もう一方の薬剤は、一方の投与後、5分、10分、又は数時間以内に投与することが可能になる。諸成分の投与間の時間差(delay)は、成分の正確な性質、それらの間の相互作用、及びそれぞれの半減期に応じて変わる。
【0105】
「組み合わせて」又は「連続して」とは異なり、本明細書では、「個別に」は、一方の薬剤ともう一方の薬剤を投与する間の差が著しい、即ち、2番目の薬剤を投与したとき、最初に投与した薬剤が、血流中に治療有効量でもはや存在しない可能性があるという意味に使用される。
【0106】
本発明のさらに別の態様は、
(i)CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びに
(ii)メチルプレドニゾロンを含む、製薬上許容される希釈剤、賦形剤、又は担体と混合された薬剤組成物に関する。
【0107】
別の態様は、抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製における本発明による組合せ物に関する。
【0108】
本発明の別の態様は、抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩の使用であって、この医薬品が、メチルプレドニゾロンと組み合わせて使用するものである使用に関する。
【0109】
本発明のさらに別の態様は、抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるメチルプレドニゾロンの使用であって、この医薬品が、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩と組み合わせて使用するものである使用に関する。
【0110】
本発明のさらなる態様は、抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンの使用に関する。
【0111】
本発明の別の態様は、抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩の使用であって、前記治療が、対象に、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンを、同時に、連続して、又は個別に投与することを含む使用に関する。
【0112】
本発明の別の態様は、対象の抗核抗体に関連する疾患を治療する方法であって、前記方法が、その対象に、治療上許容される量の
(i)CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩;並びに
(ii)メチルプレドニゾロンを投与することを含む方法に関する。
【0113】
前述の実施形態のすべてでは、好ましくは、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤並びにメチルプレドニゾロンは、同時に又は連続して投与される。
【0114】
好ましい一実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤並びにメチルプレドニゾロンは、同時に投与される。
【0115】
特に好ましい一実施形態では、対象にCDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤を投与してから、連続して又は個別に前記対象にメチルプレドニゾロンを投与する。
【0116】
本発明の別の態様は、治療有効量のCDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤、続いて治療有効量のメチルプレドニゾロンを連続投与することを含む増殖性障害を治療する方法に関する。
【0117】
本発明の別の態様は、治療有効量のCDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤、続いて治療有効量のメチルプレドニゾロンを連続投与することを含む増殖性障害の治療で使用する医薬品の製造におけるCDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤の使用に関する。
【0118】
代わりの好ましい実施形態では、対象にメチルプレドニゾロンが投与された後、連続して又は個別に前記対象にCDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が投与される。
【0119】
特に好ましい一実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤並びにメチルプレドニゾロンは、連続して投与される。
【0120】
本発明の好ましい一実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤並びにメチルプレドニゾロンは、個々の成分に関して治療有効量で各々投与される。
【0121】
本発明の別の好ましい実施形態では、CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤並びにメチルプレドニゾロンは、個々の成分に関して治療量以下の量で各々投与される。
【0122】
好ましくは、CDK2、CDK7、又はCDK9の阻害剤は、前述の本発明の第1の態様に関する通りである。
【0123】
薬剤組成物
前に述べたように、本発明の様々な態様は、薬剤組成物に関する。
【0124】
本発明の化合物(薬剤として許容されるその塩、エステル、及び薬剤として許容される溶媒和物を含む)が単独で投与され得る場合でも、それらは、一般に、特にヒトの治療に関する製薬用担体、賦形剤、又は希釈剤との混合物として投与される。こうした薬剤組成物は、ヒト及び獣医学分野においてヒト又は動物使用向けとすることができる。
【0125】
本明細書に記載の薬剤組成物の種々多様な形状に適するこうした賦形剤の例は、"Handbook of Pharmaceutical Excipients", 2nd Edition, (1994), Edited by A Wade and PJ Wellerに見ることができる。
【0126】
治療用途に関して許容される担体又は希釈剤は、製薬技術分野において周知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A. R. Gennaro edit. 1985)に記載されている。
【0127】
適切な担体の例としては、ラクトース、デンプン、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトール、及びその他同種類のものが挙げられる。適切な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロール、及び水が挙げられる。
【0128】
製薬用担体、賦形剤、又は希釈剤の選択は、意図した投与経路及び標準的薬務に関して選択され得る。これらの薬剤組成物は、任意の適切な結合剤、潤滑剤、懸濁化剤、コーティング剤、可溶化剤を、担体、賦形剤、又は希釈剤として、或いは担体、賦形剤、又は希釈剤に加えて含むことができる。
【0129】
適切な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、グルコースなどの天然糖、無水ラクトース、流動性(free-flow)ラクトース、β−ラクトース、トウモロコシ甘味料;アラビアゴム、トラガカント、アルギン酸ナトリウムなどの天然及び合成ゴム、カルボキシメチルセルロース、並びにポリエチレングリコールが挙げられる。
【0130】
適切な潤滑剤の例としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、及びその他同種類のものが挙げられる。
【0131】
防腐剤、安定化剤、染料、さらにはフレーバリング剤も、薬剤組成物に付与することができる。防腐剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルが挙げられる。抗酸化剤及び懸濁化剤も使用することができる。
【0132】
塩/エステル
本発明で使用する化合物は、塩又はエステル、特に、薬剤として許容される塩又はエステルとして存在することができる。
【0133】
本発明の化合物の薬剤として許容される塩には、適切なその酸付加塩又は塩基塩が含まれる。適切な薬剤塩の概説は、Berge et al, J Pharm Sci, 66, 1-19 (1977)に見ることができる。これらの塩は、例えば、鉱酸、例えば、硫酸、リン酸、ハロゲン化水素酸などの強い無機酸を用いて;酢酸など、非置換又は置換(例えばハロゲンによって)された炭素原子1〜4個のアルカンカルボン酸などの強い有機カルボン酸を用いて;飽和又は不飽和ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、又はテトラフタル酸を用いて;ヒドロキシカルボン酸、例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、又はクエン酸を用いて;アミノ酸、例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸を用いて;安息香酸を用いて;或いはメタンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸など、非置換又は置換(例えばハロゲンによって)された(C−C)−アルキル又はアリール−スルホン酸などの有機スルホン酸を用いて生成される。
【0134】
これらのエステルは、エステル化される官能基に応じて、有機酸又はアルコール/水酸化物を使用して生成される。これらの有機酸としては、酢酸など、非置換又は置換(例えばハロゲンによって)された炭素原子1〜12個のアルカンカルボン酸などのカルボン酸;飽和又は不飽和ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、又はテトラフタル酸;ヒドロキシカルボン酸、例えば、アスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、又はクエン酸;アミノ酸、例えば、アスパラギン酸又はグルタミン酸;安息香酸;或いはメタンスルホン酸やp−トルエンスルホン酸など、非置換又は置換(例えばハロゲンによって)された(C−C)−アルキル又はアリール−スルホン酸などの有機スルホン酸が挙げられる。適切な水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどの無機水酸化物が挙げられる。これらのアルコールとしては、非置換でも、例えばハロゲンで置換されていてもよい、炭素原子1〜12個のアルカンアルコールが挙げられる。
【0135】
鏡像異性体/互変異性体
前述の本発明のすべての態様において、本発明は、適切な場合には、関与する化合物の鏡像異性体及び互変異性体すべての使用を含む。当業者は、光学的性質(1個又は複数の不斉炭素原子)又は互変異性特性を有する化合物を認識するであろう。対応する鏡像異性体及び/又は互変異性体は、当技術分野で周知の方法によって単離/調製され得る。
【0136】
立体異性体及び幾何異性体
本発明で使用する化合物は、立体異性体及び/又は幾何異性体として存在することができる。例えば、それらは、1個又は複数の非対称中心及び/又は幾何学的中心を有し、したがって、2個以上の立体異性形及び/又は幾何学形で存在することができる。本発明は、これらの薬剤の個々の立体異性体及び幾何異性体のすべて、並びにそれらの混合物の使用を企図する。特許請求の範囲で使用する用語は、適切な機能活性を保持する前記形態を備えたこれらの形態を包含する(但し同程度である必要はない)。
【0137】
本発明はまた、この薬剤又は薬剤として許容されるその塩の適切な同位体変形物のすべての使用も含む。本発明の薬剤又は薬剤として許容されるその塩の同位体変形物は、少なくとも1個の原子が、原子番号は同じであるが、原子質量が自然界で通常見られる原子質量と異なる原子で置換されているものとして定義される。この薬剤及び薬剤として許容されるその塩に組み入れることができる同位元素の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、及び塩素の同位元素、例えば、それぞれH、H、13C、14C、15N、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Clが挙げられる。この薬剤及び薬剤として許容されるその塩のある種の同位体変形物、例えば、Hや14Cなどの放射性同位元素が組み込まれたものは、薬剤及び/又は基質組織分布研究に有用である。トリチウム、即ちH、及び炭素14、即ち14Cの同位元素は、調製及び検出性の容易さのために特に好ましい。さらに、重水素、即ちHなどの同位元素との置換は、高い代謝安定性、例えば、インビボでの半減期延長又は必要投与量の減少から生じるある種の治療的利点をもたらす可能性があり、したがっていくつかの状況で好まれ得る。本発明の薬剤及び本発明の薬剤として許容されるその塩の同位体変形物は、一般に、適切な試薬の適切な同位体変形物を使用して、従来の手順によって調製され得る。
【0138】
溶媒和物
本発明はまた、本発明の化合物の溶媒和物形態の使用を含む。特許請求の範囲で使用する用語は、これらの形態を包含する。
【0139】
多形体
本発明はさらに、様々な結晶形態、多形形態、含水形態、及び無水形態での本発明の化合物の使用に関する。これらの化合物が、その化合物の合成で使用される溶媒から精製及び/又は単離する方法をわずかに変更することによってこうした形態のいずれかの形態で単離され得ることは製薬業界で十分に確立されている。
【0140】
プロドラッグ
本発明はさらに、プロドラッグ形での本発明の化合物の使用を含む。こうしたプロドラッグは、一般に、1個又は複数の適切な基が、変形物がヒト又は哺乳動物の対象に投与されたとき元の形に戻ることができるように改変された化合物である。こうした反転は、通常、これらの対象中にもとから存在する酵素によって行われるが、インビボで反転を実行させるために、第2の薬剤をこうしたプロドラッグと一緒に投与することが可能である。こうした変形物の例としては、エステル(例えば前述のもののいずれか)が挙げられ、エステラーゼなどが反転を行うことができる。その他のこうした系は、当業者には周知である。
【0141】
投与
本発明の薬剤組成物は、口、直腸、膣、腸管外、筋肉内、腹腔内、動脈内、くも膜下腔内、気管支内、皮下、皮内、静脈内、鼻、頬、又は舌下の投与経路に適する可能性がある。
【0142】
経口投与では、特定の用途は、圧縮錠剤、ピル、錠剤、ゼラチン質カプセル(gellule)、ドロップ、及びカプセルからできている。好ましくは、これらの組成物は、有効成分を1回当たり1mg〜5000mg、より好ましくは10mg〜3000mg含む。
【0143】
その他の投与形態は、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、皮下、皮内、腹腔内、又は筋肉内に注射することができ、無菌溶液又は滅菌溶液から調製される溶液又は乳剤を含む。本発明の薬剤組成物はまた、坐薬、膣坐薬、懸濁剤、乳剤、ローション、軟膏、クリーム、ゲル、スプレー、溶剤、又は散布剤の形態とすることができる。
【0144】
経皮投与の代替手段は、皮膚用パッチ剤の使用によるものである。例えば、有効成分は、ポリエチレングリコール又は流動パラフィンの水性乳剤からなるクリームに組み込まれ得る。この有効成分はまた、必要とされる可能性がある安定化剤や防腐剤などと一緒に、白ろう又は白色ワセリン基剤からなる軟膏中に1〜10重量%の濃度で組み込まれ得る。
【0145】
これらの注射剤形は、有効成分を1回当たり10〜3000mg、好ましくは10〜1000mg含むことができる。
【0146】
これらの組成物は、単位剤形で、即ち単位用量を含む個別分の形で、或いは単位用量の複合ユニット又はサブユニットの形で配合され得る。
【0147】
投与量
当業者は、不必要な実験を行うことなく対象に投与する本発明の組成物の1個の適切な投与量を容易に決定することができる。一般に、医師は、個々の患者に最も適するであろう実際の投与量を決定する。それは、使用する特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び活性の長さ、年齢、体重、一般的健康診断、性別、食事、投与の形態及び時間、排泄速度、複合薬、特定の病態の重さ、並びに個々の患者が受けている治療を含めた様々な因子に依存する。本明細書に開示する投与量は、平均的な場合の例である。もちろん、より多い又はより少ない投与量が正当である個々の例が存在する可能性があるが、それらは本発明の範囲内である。
【0148】
必要に応じて、この薬剤は、体重1kg当たり0.01〜30mg、例えば、体重1kg当たり0.1〜10mg、より好ましくは0.1〜1mgなどの投与量で投与され得る。
【0149】
例示的実施例では、1日当たり10〜3500mgを1回又は複数回患者に投与する。
【0150】
本発明をまた、実施例によって、且つ以下の図を参照して例示する。
[実施例]
【0151】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤
様々な阻害剤化合物を、欧州特許第0874847B号(CNRS)、及び国際公開WO 03/002565、国際公開WO 04/016613、国際公開WO 04/016612、国際公開WO 01/72745、国際公開WO 02/079193、国際公開WO 03/029248、国際公開WO 04/043953(すべてCyclacel Limitedの名義)に記載の方法に従って調製した。
【0152】
キナーゼアッセイ
キナーゼ活性は、ATPからの放射性リン酸塩の適切なポリペプチド基質への組込みを測定することによって調べられた。組換えタンパク質キナーゼ及びキナーゼ複合体は、生成又は市販品購入から得た。これらのアッセイは、96ウェルプレート、及び適切な基質と共に活性酵素2〜4μgを添加した適切なアッセイ緩衝液(一般に、β−グリセロリン酸塩(25mM)、MOPS(20mM)、EGTA(5mM)、DTT(1mM)、NaVO(1mM)、pH7.4)を使用して実施された。この反応は、Mg/ATP混合物(MgCl(15mM)+1ウェル当たり30〜50kBqの[γ−32P]−ATPを有するATP(100μM))の添加によって開始され、混合物を30℃で所望によりインキュベートした。反応を氷上で停止させ、続いて、p81フィルタプレート又はGF/Cフィルタプレート(Whatman Polyfiltronics社製、ケント州、英国)によりろ過した。75mMのオルトリン酸水溶液で3回洗浄した後、プレートを乾燥し、シンチラントを添加し、組み込まれた放射性活性をシンチレーションカウンタ(TopCount、Packard Instruments社製、パングボーン、バークシャー州、英国)で測定した。キナーゼアッセイ用の化合物をDMSO中のストック10mMとして作製し、10%DMSOを含むアッセイ緩衝液で希釈した。データを、曲線近似ソフトウェア(GraphPad Prism version 3.00 for Windows、GraphPad Software社製、サンディエゴ、カリフォルニア州、米国)を使用して分析し、その結果IC50値(キナーゼ活性を50%阻害する試験化合物の濃度)を決定した。
【0153】
CDK7及び9アッセイ
96ウェルマイクロタイタープレートにおいて、CTDペプチド基質(ビオチニル-Ahx-(Tyr-Ser-Pro-Thr-Ser-Pro-Ser)4-NH2(1〜2mg/mL))、及び組換えヒトCDK7/サイクリンH、CDK9/サイクリンT1、又はCDK9/サイクリンK(0.5〜2μg)を、様々な量の試験化合物の存在下で、MOPS(20mM、pH7.2)、β−グリセロリン酸塩(25mM)、EGTA(5mM)、DTT(1mM)、バナジウム酸ナトリウム(1mM)、MgCl(15mM)、及びATP(100μM)(微量の32PγATPを含む)において全量25μLで30℃で45分インキュベートした。プレートを氷上に2分間置いて、反応を停止させた。アビジン(50μg)を各ウェルに添加し、プレートを室温で30分間インキュベートした。サンプルを96ウェルP81フィルタプレートに移動させ、75mMのリン酸で洗浄した(1ウェル当たり4×200μL)。Microscint40シンチレーション液(50μL)を各ウェルに添加し、各サンプルの32P組込み量をPackard Topcountマイクロプレートシンチレーションカウンタを使用して測定した。
【0154】
CYC202
CDK2阻害剤CYC202の投与がNZB/WF1狼瘡易発性マウスの腎疾患の発現を遅延させるのに有効かどうかを評価する研究を行った。
【0155】
実験の開始時に生後2カ月のNZBxNZW F1雌マウス(Harlan Italy s.r.l.社製、ミラノ、イタリア)を使用した。動物の取扱いは、国内法(Decreto Legislativo n.116, Gazzetta Ufficiale suppl 40, 18 febbraio 1992, Circolare n.8, Gazzetta Ufficiale 14 luglio 1994)、並びに国際法及び政策(EEC Council Directive 86/609, OJL358-1, December 1987; Guide for the Care and Use of Laboratory Animals, U.S. National Research Council, 1996)に従う制度ガイドラインに準拠して行われた。動物を12時間暗所/12時間明所サイクルで恒温室に収容し、標準食を与えた。
【実施例1】
【0156】
NZBxNZW F1マウスを、以下のグループに任意に割り当てた。
グループ1(n=18):胃管栄養法で媒体(HCl50mM)を毎日投与されるマウス
グループ2(n=17):胃管栄養法でCYC202(200mg/kg)を毎日投与されるマウス
グループ3(n=19):胃管栄養法でCYC202(100mg/kg)を毎日投与されるマウス
処置は生後2カ月から開始し(予防研究)、生後8カ月まで継続した。各グループの動物4〜5匹を、血清BUN及び抗DNA抗体循環レベルを評価するために生後5カ月時に屠殺した。
【0157】
追加グループのグループ4(マウス、n=14)には、生後5カ月、即ち、免疫複合体沈着が活発に起こっているときから生後8カ月まで胃管栄養法で毎日CYC202(100mg/kg)を与えた(治療研究)。5匹の正常なCD−1マウス(Charles River Italia社製、カルコ、イタリア)を対照として使用した。
【0158】
以下のパラメータを評価した。
尿タンパク排泄:生後5カ月まで毎月、その後2週間毎に測定。
屠殺時に測定:
血清中の抗DNA抗体;
血清BUN;
血清トランスアミナーゼ(AST、ALT);
腎組織構造;
単球/マクロファージの腎間質への蓄積。
【実施例2】
【0159】
狼瘡マウスを、以下のグループに任意に割り当てた。
グループ1(n=10):胃管栄養法で媒体(HCl50mM)を毎日投与されるマウス
グループ2(n=15):胃管栄養法でCYC202を用量200mg/kg毎日投与されるマウス
グループ3(n=12):腹腔内注射でメチルプレドニゾロン(MPS、Urbason、Hoechst s.p.a社製、ミラノ、イタリア)を用量1.5mg/kg毎日投与されるマウス
グループ4(n=16):CYC202(200mg/kg)をMPS(1.5mg/kg)と組み合わせて毎日投与されるマウス
【0160】
処置は、免疫複合体沈着が活発に起こっている生後5カ月から開始し、媒体処置を受ける最後の動物が死亡した12カ月まで継続した。5匹の正常なCD−1マウス(Charles River Italia社製、カルコ、イタリア)を対照として使用した。
【0161】
以下のパラメータを評価した。
生存時;
尿タンパク排泄:生後5カ月まで毎月、その後2週間毎に測定;
血清BUN:生後5カ月時(処置前)から研究終了時まで毎月測定;
腎組織構造:病状末期のマウス及び生後12カ月まで生存したマウスから生検で評価;
F4/80陽性単球/マクロファージの腎間質への蓄積(上記と同じ生検で評価)
【0162】
実施例1及び2:材料及び方法
タンパク尿症及び腎機能
尿タンパク質濃度を、標準としてウシ血清アルブミンを含むクマシーブルーG色素結合アッセイによって決定した。腎機能を、Reflotron試験(Roche Diagnostics Corporation社製、インディアナポリス州、米国)によってヘパリン加血におけるBUNとして評価した。30mg/dlを超えるBUNレベルを、異常と見なした(マウスに関するこの研究での正常範囲:14〜29mg/dl)。
【0163】
抗DNA抗体
血清における抗dsDNA自己抗体のレベルを、前述(Kidney Int, 53:726-734, 1998)の酵素免疫測定法(Diastat anti-ds DNA kit、Bouty Laboratory社製、ミラノ、イタリア)によって評価した。
【0164】
血清トランスアミナーゼ
AST及びALTの血清濃度を、自動分析器(CX5、Beckman Instruments Inc.社製、フラートン、カリフォルニア州)を使用して測定した。
【0165】
腎臓形態
光学顕微鏡:腎皮質の断片を、Dubosq-Brazilに固定し、アルコール中で脱水し、パラフィンに包埋した。切片(3μm)を、ヘマトキシリン、エオシン試薬、マッソン三色試薬、及び過ヨウ素酸シッフ試薬(PAS染色)で染色した。
【0166】
糸球体の管内細胞過形成を、0〜3+の採点システムによって半定量的な方法で評価した(0=細胞過形成なし、1+=軽度、2+=中度、3+=重度)。病変に関与する全糸球体のパーセンテージに基づくその他の変化に関して単一採点を行った。管外性増殖を、0〜3+で評価した(0=細胞過形成なし、1+=関与する糸球体の25%未満、2+=関与する糸球体の25%〜50%、3+=関与する糸球体の50%超)。糸球体沈着を、0〜3+で評価した(0=沈着なし、1+=関与する糸球体の25%未満、2+=関与する糸球体の25%〜50%、3+=関与する糸球体の50%超)。尿細管の変化(萎縮、キャスト、及び拡張)並びに間質の変化(線維症及び炎症)を、0〜3+で評価した(0=変化なし、1+=サンプルの25%未満に影響を及ぼす変化、2+=サンプルの25〜50%に影響を及ぼす変化、3+=サンプルの50%超に影響を及ぼす変化)。少なくとも100個の糸球体を、各生検に対して検査した。間質組織を採点するために、サンプル当たり少なくとも10フィールドを低倍率(10倍)で検査した。すべての腎生検を同じ病理学者によって一重盲検法で分析した。
【0167】
免疫組織化学法
マウス単球及びマクロファージ中に存在する細胞質内抗原に対するラットモノクローナル抗体(F4/80、4μg/ml、Caltag Laboratories社製、バーリンゲーム、カリフォルニア州)を、免疫ペルオキシダーゼ法による浸潤細胞の検出に使用した。切片を0.3%H2O2を含むメタノール中で30分間インキュベートして、内因性ペルオキシダーゼを失活させた。次いで、組織を、0.1%Triton X-100を含むPBS(0.01mol/L、pH7.2)において30分間透過処理し、次いで、正常なヤギ血清(Vector Laboratories社製)で30分間インキュベートした。一次抗体、続いて、二次抗体(ビオチン化ヤギ抗ラットIgG、Vector Laboratories社製)、及びアビジン−ビオチンペルオキシダーゼ複合体(ABC)溶液を4℃で一晩インキュベートし、DABで最終的に発現させた。切片をハリスヘマトキシリンで対比染色した。一次抗体を除去することによって陰性対照を得た。F40/80標的細胞を、各動物につき少なくとも10個の任意に選択した高性能顕微鏡視野(400倍)においてカウントした。
【0168】
統計分析
データを平均±標準誤差(SE)として表す。生存曲線をログランク検定によって分析した。タンパク尿症のデータをフィッシャーの正確確率検定によって分析した。他のすべてのパラメータを、クラスカル・ウォリス検定によって分析した。統計的有意性をP<0.05として定義した。
【0169】
実施例1:結果
体重、飼料摂取量、及び水分摂取量
表1に示すように、狼瘡マウスは、研究中に体重が増加した。体重差は、実験グループ中に観察されなかった。生後2カ月〜5カ月の2週間毎に評価した飼料(表2)及び水分(表3)の摂取量は、媒体及びCYC202で処置したマウス間で同程度であった。
【0170】
狼瘡マウスの生存
生後2カ月から、用量200mg/kg及び100mg/kgのCYC202で処置したNZB/W F1マウスは、媒体マウスより有意に(P<0.05)長く生存した(表4及び図1を参照)。実際に、研究終了(8カ月)時、媒体で処置した13匹のNZB/Wマウスのうち4匹(31%)しか生存せず、200mg/kg及び100mg/kgのCYC202で処置した場合、それぞれ13匹のマウスのうち10匹(77%)及び14匹のマウスのうち10匹(71%)が生存した。生後5カ月からCYC202(100mg/kg)を投与したマウスのグループ(治療処置)では、生存パーセンテージは、媒体マウスで記録されたものと差はなかった。
【0171】
タンパク尿症及び腎機能
重いタンパク尿症(>4mg/日)マウスの累積パーセンテージを、実験グループのすべての様々な段階の疾患において評価した。表5に示すように、媒体グループでは、タンパク尿症マウスのパーセンテージは、時間と共に次第に増加した(図2)。研究終了時、タンパク尿症マウスのパーセンテージは、85%であった。予防的治療として投与したCYC202は、媒体に比べて用量依存的にタンパク尿症の発症を有意に遅延させた(タンパク尿症マウスの%、8カ月時:200mg/kgでは23%、媒体に対してP<0.01;100mg/kgでは43%、媒体に対してP<0.05)。CYC202を生後5カ月から狼瘡マウスに投与した場合、媒体に対してタンパク尿症マウスのパーセンテージが低下する傾向が観察されたが、統計的有意性には達しなかった。
【0172】
5カ月及び8カ月時に、血清BUNで評価する腎機能を測定した。5カ月時の血清BUNレベルは、すべての実験グループにおいて正常範囲内(<29mg/dl)にあった。媒体グループでは、腎機能は時間と共に悪化し、8カ月時では、生存している動物の50%は、BUNレベルが≧30mg/dlであった(表6)。予防的治療として投与したCYC202は、狼瘡マウスにより良好な腎機能をもたらしたが、後に投与した場合は効果がなかった。
【0173】
抗DNA抗体
抗DNA抗体レベルの上昇は、NZB/W F1マウスの特徴である。表7に示すように、媒体を投与したマウスは、時間と共に抗DNA抗体のレベル増加を示した。生後5カ月又は8カ月時、生後2カ月から両方の用量のCYC202で処置したマウスは、抗DNA抗体レベルが媒体より有意に低いことを示した。生後5カ月からCYC202の投与を受けたマウスグループでは、抗DNA抗体濃度は、8カ月時で媒体よりも数値的ではないが有意に低かった(図3)。
【0174】
血清トランスアミナーゼレベル
血清ALT及びASTレベルを、生後2カ月から200mg/kgのCYC202を投与した、又は生後5カ月から100mg/kgのCYC202を投与したNZB/W F1マウスにおいて測定した。血清トランスアミナーゼレベルは、処置による変化はなく、数値は、対照マウスのものと類似していた(表8)。
【0175】
腎臓形態
表9に示すように、研究終了時、媒体を投与したNZB/Wマウスは、局所的管外性増殖に関連する管内細胞過形成を伴う糸球体の変化を示した。免疫タイプの沈着物が、メサンギウム中に、且つ糸球体基底膜の内皮下面上に検出された。管損傷及び間質性炎症も観察された。生後2カ月からのCYC202での処置は、糸球体細胞過形成、免疫沈着物、及び尿細管間質性損傷を著しく制限した。これらの効果は、CYC202が用量200mg/kgで与えられたとき、より明白であった。生後5カ月からCYC202を投与したマウスでは、腎臓形態に対して中程度の効果しか観察されなかった。
【0176】
単球/マクロファージの間質性蓄積
腎臓を、免疫組織化学法によってF4/80陽性単球/マクロファージに関して分析した。F4/80陽性細胞の顕著な蓄積が、媒体を投与したNZB/Wマウスの腎間質に存在した(表10)。200mg/kgのCYC202による予防的処置は、F4/80陽性単球/マクロファージ数を媒体に対して顕著に減少させた。用量100mg/kgのCYC202は、単核細胞の間質性蓄積を統計的に有意な程度ではないが制限した。F4/80陽性細胞数の減少は、治療研究で観察された。
【0177】
本研究の結果は、生後2カ月から予防的治療として投与したCYC202(200及び100mg/kg)が、媒体を投与した動物に比べて、NZB/Wマウスの狼瘡腎症状を遅延させ、顕著に延命させたことを明らかに示している。具体的には、CYC202は、タンパク尿症及び腎機能障害の発症を遅延させ、単核細胞の間質性蓄積を含めた糸球体及び尿細管間質の変化を制限し、その効果は、用量200mg/kgでより明白であった。本研究の顕著な発見は、CYC202による抗DNA抗体レベルの減少であった。これは、おそらくT細胞に対するCYC202効果に起因する可能性があり、また、B細胞に影響を及ぼす可能性がある。インビトロ実験から、PMA及びConAによって、並びに混合リンパ球反応において誘発されたT細胞増殖の濃度依存的阻害が観察された。一方、SLEでは、ヒストン又はヌクレオソームに特有の活性化された自己免疫T細胞が、B細胞の抗DNA産生プラズマ細胞への分化を促進することができるという証拠がある(総説については、Rekvig, Arthritis & Rheumatism 48: 300-312, 2003を参照)。
【0178】
生後5カ月からCYC202(100mg/kg)の投与を開始すると、媒体マウスに対してタンパク尿症マウスのパーセンテージが若干低下し、腎障害が少し軽減した。生存は改善されなかった。
【0179】
実施例2:結果
体重
NZB/W F1マウスは、研究中に体重が増加した。体重差は、実験グループ中に観察されなかった。
【0180】
生存
生後5カ月からCYC202とメチルプレドニゾロン(MPS)の組合せで処置したNZB/W F1マウスは、媒体マウスより有意に(P<0.0001)長く生存した(表11)。特に、媒体を投与したマウスすべてが死亡した12カ月時に、この併用治療で処置した16匹の動物のうち10匹(62%)が生存していた。単一治療を受けたマウスの生存曲線は、媒体グループのものと差はなかった。
【0181】
タンパク尿症
表12は、この疾患の様々な段階で評価したタンパク尿症>4mg/日のマウスの累積パーセンテージを示す。CYC202とMPSの組合せ(association)は、媒体に比べてタンパク尿症の発症を著しく遅らせた。7カ月から10カ月の期間では、併用治療グループのタンパク尿症マウスの割合は、媒体グループのタンパク尿症マウスの割合より著しく低かった(6.2から43.8%対40から90%)。単一治療として投与したCYC202又はMPSは、媒体に比べてタンパク尿症の発症に部分的にのみ影響を及ぼすが、CYC202グループの7.5カ月時に、タンパク尿症マウスのパーセンテージの著しい減少が観察された。
【0182】
腎機能
血清BUNで評価する腎機能を、5カ月(治療前)から12カ月の毎月測定した。表13は、BUNレベルが≧30mg/dlのマウスの累積パーセンテージを示している。5カ月時の血清BUNレベルは、すべての実験グループにおいて正常範囲内(即ち14〜29mg/dl)にあった。媒体グループでは、腎機能は、時間と共に悪化した。したがって、8カ月及び12カ月時にそれぞれ80%及び100%の動物が、BUNレベル≧30mg/dlであった。対照的に、これらの時間ポイントで、併用治療のマウスのわずか27%及び53%が腎機能障害を呈した。単独投与したCYC202又はMPSは、組み合わせて使用したときよりも低い腎臓保護効果を示した。
【0183】
腎臓形態
形態分析は、様々な時点の病状末期のマウス又は12カ月時に屠殺したマウスから得た腎臓標本に対して行われた。データは表14に報告している。媒体を投与したNZB/Wマウスは、局所的管外性増殖に関連する管内細胞過形成を伴う糸球体の変化を示した。免疫タイプの沈着物が、メサンギウム中に、且つ糸球体基底膜の内皮下面上に検出された。また、管損傷及び間質性炎症も観察された。MPSを加えたCYC202での処置は、糸球体細胞過形成、免疫沈着物、及び尿細管間質性損傷を著しく制限した。CYC202又はMPSを単独で投与したマウスでは、腎臓形態に対して中程度の効果が観察された。
【0184】
単球/マクロファージの間質性蓄積
腎臓を、免疫組織化学法によってF4/80陽性単球/マクロファージに関して分析した。F4/80陽性細胞の顕著な蓄積が、媒体を投与したNZB/Wマウスの腎間質に見られた(表15)。CYC202及びMPSを併用投与すると、単球/マクロファージの数が媒体に対して65%減少した(P<0.01)。単独投与したCYC202は、間質浸潤物を33%減少させた。MPS単独で処置したマウスのグループでは、単核細胞の間質性蓄積は、媒体グループに見られるものと類似していた。
【0185】
要約すれば、これらの結果は、低用量のメチルプレドニゾロンと組み合わせたCYC202が、狼瘡マウスの寿命を著しく延長させることを示した。特に、この処置を、疾患の確立期、即ち、免疫複合体沈着が活発に起こる生後5カ月から開始した。この併用治療は、タンパク尿症の発症を遅延させ、腎機能の損傷、並びに糸球体細胞過形成、免疫沈着物、及び尿細管間質変化の発現を制限した。単核細胞の腎間質への蓄積減少が示すように、抗炎症効果も示された。単一治療としてのCYC202又はメチルプレドニゾロンの投与は、中程度の腎臓保護効果をもたらした。
【0186】
結論として、疾患が確立した狼瘡マウスの狼瘡腎症状の改善及び延命におけるCYC202と低用量MPSの組合せによる治療効果の結果は、狼瘡腎炎の新たな治療の基盤を意味する可能性がある。
【0187】
実施例3及び4:材料及び方法
選択したCDK2、7、及び9阻害剤(転写阻害剤)、化合物[1]〜[12]を、抗核抗体への影響に関する代用アッセイとして選択したT細胞増殖アッセイで試験した。
【0188】
前に述べたように、抗核抗体産生は、インビボでのみ研究され得る。というのは、これらの抗体の産生には、B細胞とT細胞を共に含む機能不全免疫系が必要であり、自己を認識する免疫細胞を選択できない且つ破壊できないことが求められるからである。しかし、T細胞機能に関するインビトロアッセイ(例えば、T細胞増殖アッセイ)は、自己免疫疾患の複雑な状況において免疫応答を調節することができる化合物を同定する適切なスクリーニングツールである。したがって、T細胞増殖アッセイは、抗核抗体に対する化合物の効果の基準を提供することができる。
【0189】
末梢血単核細胞の調製
2種の別々のアッセイ、実施例3及び4を実施した。3人又は4人の健常ドナーのバフィコート血液(それぞれ実施例3及び4)を、スコットランド国立輸血サービス(Scottish National Blood Transfusion Services)から得、BD Vacutainer(商標)CPT細胞調製チューブ(採血容量(draw capacity)4mL、クエン酸ナトリウム含有、カタログ番号REF362781)において室温で30分間300gで遠心分離した。末梢血単核細胞(PBMC)層をピペットで回収し、50mL容の遠心分離管に貯蔵し、次いで、3容量のハンクス緩衝塩溶液(w/o型、CaCl及びMgCl、Gibco社製#14175-053)において15分間(室温)300gで遠心分離することによって2回洗浄した。PBMCを、10%ウシ胎児血清を補充したRPMI1640培地に再懸濁させ、生きた細胞の数をトリパンブルー排除によって決定した。
【0190】
細胞刺激及び処置
PBMCを、ウェル培地当たり50μLにおいて1×10細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種した。アッセイ対照として、100μL/ウェルのRPMI1640組織培地/10%ウシ胎児血清(FCS)において、CCRF−CEM白血病及びLP−1多発性骨髄腫細胞をそれぞれ4000及び5000細胞/ウェルで播種し、実験中に刺激又は化合物処理することなく成長させた。すべての刺激物及び化合物を、組織培地において最終濃度の最高4倍になるようにし、次いで、各薬剤及び刺激物25μLを、最終容量が100μL/ウェルになるように諸ウェルに添加した。非刺激対照では、刺激物の代わりに組織培地25μLをウェルに添加し、非処理細胞では、等量のDMSO(最終0.1%)を含む25μL/ウェルの組織培地を添加した。隣接する3個のウェルに各刺激/処理条件に関する処理を行い、分析のために平均値を計算した。
【0191】
実施例3では、これらの細胞を2時間放置して定着させた後、50μg/mLのPHA(フィトヘムアグルチニンPHA−P、Sigma社製、L9132)又は50/250ng/mLのPMA/I(ホルボール12−ミリスチン酸13−酢酸/イオノマイシン、Sigma社製、P8139/I0634)で刺激した。さらに、PBMCを、濃度が0.5μg/mL〜100μg/mLのConA(コンカナバリンA、Sigma社製、C5275)で刺激して、その刺激効果及び最適濃度を確認した。実施例4では、PBMCを、播種直後に前述の50μg/mL又は10μg/mLのConAで刺激した。
【0192】
実施例3では、刺激済又は非刺激PBMCを、IC50、2×IC50、3×IC50、及び4×IC50の濃度の化合物[1]〜[10]で処理した。これらの化合物を、刺激2時間前(播種時)、刺激時、及び刺激2時間後に添加し、次いで、細胞をそれぞれ、37℃、5%COで、50時間、48時間、及び46時間、又は刺激後48時間まで化合物と共にインキュベートした。実施例4では、刺激済PBMCを、化合物[11]及び[12]を加えた上記の化合物で処理し、すべての化合物を前述の濃度の他に0.5×IC50及び0.25×IC50で試験した。これらの化合物を刺激直後に添加し、細胞を48時間及び72時間インキュベートした。これらのIC50は、腫瘍細胞パネルの当組織内(in-house)細胞障害アッセイによる平均72時間IC50に基づくものとした(表16)。但し、当組織内のIC50データが利用できなかったので、このIC50は以前当組織内で用いた公表済IC50に基づいていた化合物[1]及び[3]は除いた。
【0193】
BrdU ELISA及びAlamar Blueアッセイ
刺激及び化合物処理後のPBMCの増殖活性を、細胞増殖ELISA、BrdU(比色法)キット(Roche社製、#1 647 229)を使用してBrdU取り込みを測定することによって決定した。このキットは、Hチミジン取り込み用の非放射性置換法である。細胞をBrdUで2時間標識してから収集した。次いで、プレートを室温で10分間300xgで遠心分離機にかけ、上澄液をピペットでウェルから回収し、細胞を60℃で1時間乾燥させた。FixDenat溶液をプレートに添加(1ウェル当たり100μL)し、30分間インキュベートし、次いで、軽くたたいて(flick)それを除去し、抗BrdU−POD溶液をプレートに添加(1ウェル当たり100μL)し、90分間インキュベートした。洗浄溶液(1ウェル当たり200μL)で3回洗浄した後、プレートを基質溶液(1ウェル当たり100μL)と共に30分間インキュベートし、次いで、1MのHSO(1ウェル当たり25μL)を添加し、Ascent Fluoroskanプレートリーダーで450nMの光学濃度を読み取った。
【0194】
PBMCの生存力を、Alamar Blue試薬(Biosource社製、#DAL1100)を使用して評価した。新しい20%Alamar Blueを培地に作製し、最終濃度が10%になるように各ウェルに100μL添加した。収集時(48時間又は72時間)前にプレートをAlamar Blueと共に5%CO下で37℃で3時間インキュベートし、次いで、Tecan Ultraプレートリーダー上で励起波長535nM及び放射波長595nMを使用して蛍光を読み取った。
【0195】
実施例3:結果
PHAで刺激すると、BrdU取り込みが非刺激細胞に比べて約7倍増加した。DMSO媒体での刺激は、PHA刺激細胞又は非刺激細胞のBrdU取り込み又は生存力に影響を及ぼさなかった(図4)。図5に示すように、試験した化合物すべてによるPHA刺激細胞の処理は、多くのケースで、BrdU取り込みを非刺激細胞で見られるレベルまで減少させた。BrdU取り込みの減少は、IC50ほどの低い濃度で明らかであり、化合物[9]及び[10]を除いて、依然として残っているBrdU取り込みの量は、化合物濃度と相関関係はなく、このことは、これらの化合物がIC50で最大増殖阻害効果に達したということを共に示唆している。化合物[9]及び[10]では、この効果は、明らかに濃度依存的であり、IC50での3〜4倍多いBrdU取り込みは、より高濃度で非刺激レベルに低下する。
【0196】
ほとんどの化合物では、刺激時間に対する化合物の処理時間は、BrdU取り込みレベルに大きな影響を及ぼさない。というのは、この刺激がPBMC播種後の最初の4時間において依然として影響を及ぼしていないという可能性が高いからである。これに対する例外は、化合物[2]、[3]、及び[4]であり、驚くべきことに、これらでは、化合物の処理を刺激と同時に又は刺激後に開始したときよりも事前に化合物処理(2時間前)したときの方がBrdU取り込みの減少が小さい(図5)。
【0197】
PHA処理と同様に、PMA/I刺激は、化合物が存在しない場合、BrdU取り込みを非刺激細胞の約7倍増加させる(図5)。化合物[4]、[9]、及び[10]以外のすべての化合物による処理は、BrdU取り込みを、PHA刺激細胞におけるBrdU取り込みより減少させ、一般にすべての濃度において非刺激細胞で見られるレベルより低いレベルに減少させた。前述のように、PMA/Iで刺激され、DMSOで処理されたPBMCだけが、Alamar Blueアッセイで非常に低い生存力を示したが、BrdU取り込みは増加した(図4)。同様に、PMA/I刺激細胞を化合物[4]、[9]、及び[10]で処理した後に依然として残っているBrdU取り込みは、Alamar Blue値が陰性であるにもかかわらず、PHA刺激細胞におけるBrdU取り込みより高かった。
【0198】
コンカナバリンAの滴定は、ConAが、10μg/mLで最大効果に達して、濃度依存的にPBMCを刺激することを示している。次いで、BrdU取り込みは、非刺激レベルに低下し(より高濃度)、これは、PBMCが試験した高濃度のConAのために生存できないことを示す生存力評価及び顕微鏡観察と一致する。PHA及びPMA/Iと比べると、10μg/mLのConAでの刺激は、生存力を低下させることなく、BrdU取り込みを同等なレベル又は非刺激PBMCの約6倍に増加させる(図7)。
【0199】
実施例4:結果
実施例3から、試験したすべての化合物が、IC50ほどの低濃度で刺激済PBMC細胞の増殖活性に影響を及ぼすことが結論付けられた。IC50より低い薬物濃度でのこの効果の濃度依存性を研究するのに、次の実験(実施例4)を実施した。化合物[11]及び[12]に加えて前に試験したすべての化合物について、より低い濃度、即ち0.5×IC50及び0.25×IC50での処理、並びにDMSO対照を追加して、前述の通りに処理を繰り返した。刺激に対する化合物の処理時間は増殖活性阻害の中心とは思われなかったので、播種直後に、PBMCを刺激し、同時に化合物処理を行った。細胞を、前述同様のPHA又は10μg/mLのConAで刺激した。
【0200】
48時間、さらに延長して72時間の時点で、非刺激細胞に比べて、PHA刺激は、DMSO処理細胞のBrdU取り込みを20倍超増加させ、ConA刺激では、10倍超増加させ、DMSO媒体は、BrdU取り込み又は生存力に影響を及ぼさなかった(図8)。図9に示すように、PHAで刺激したとき、すべての化合物は、濃度依存的にBrdU取り込みを減少させ、IC50又は2×IC50濃度でほぼ最大効果に達した。これは、すでに最大効果に達していたので、IC50を超える濃度で濃度依存性が認められなかったというこれまでの観察を裏付けている。全体として、ConAで刺激したPBMCに同じ効果が見られたが、わずかにより低い濃度で最大効果に達した。これは、BrdUシグナルが、最大効果のバックグラウンドレベルに低下し、これらのシグナルが、一般に、ConA刺激細胞に関する高さがPHA刺激細胞の半分しかないので、アッセイ感度が前者に関してわずかに低い可能性があるという結果となり得る。
【0201】
前述同様に、化合物[4]、[9]、及び[10]は、残りの化合物とはわずかに異なる挙動を示す。前の実験と一致して、化合物[9]及び[10]では、IC50を超える濃度で濃度依存性が明らかに見られ、次いで、それはより低い濃度に及んだ。4×IC50では、BrdU取り込みは、さらに減少しており、シグナルは、ConA刺激細胞のバックグラウンドレベルに接近したが、PHA刺激細胞ではわずかに高かった。理論に拘泥するものではないが、これは、他の化合物と同様に増殖活性を完全に阻害するが、これを実現するにはより高い濃度が必要であることを示唆している。
【0202】
化合物[4]で処理した細胞では、BrdUシグナルは、4×IC50でさえ、どちらの刺激でもバックグラウンドレベルに低下していない。さらに、より高い濃度では、BrdU取り込みと化合物濃度の間にほとんど相関は見られず、これは本発明者らの先の結果と一致していた。理論に拘泥するものではないが、これは、増殖活性に対する化合物[4]の効果が、ほとんどの他の化合物と同様に約2×IC50で最大になるが、実現された阻害の程度はより低いことを示唆している。
【0203】
Alamar Blueアッセイによる生存力評価から、PBMCの生存力は刺激によってわずかに低下するが、一般に、化合物処理、DMSO処理、及び非処理のPBMCの間は匹敵していることが示された。さらに、Alamar Blueカウント数の低下は、化合物濃度の増加に関連しておらず、このことは、BrdU取り込みの減少が、化合物の細胞障害性効果によって引き起こされるものではなく、増殖活性阻害を純粋に表すものであることを裏付けている。
【0204】
要約すれば、これらの実験は、一連の転写阻害剤のいずれかで処理すると、Tリンパ球へのPHA又はConA刺激の影響が変化し、その結果増殖活性の完全な阻害が濃度依存的にもたらされるということを示している。全体として、PHA及びConA刺激細胞に同じ傾向が見られるが、増殖の完全な阻害は、PHA刺激細胞よりもConA刺激細胞において低い薬物濃度で達するように思われる。これは、PHAよりもConAによって実現される低い総刺激の人工産物である可能性がある。ほとんどの化合物は、まず、0.25×IC50又は0.5×IC50ほどの低い濃度で増殖活性阻害がいくらか見られ、次いで約2×IC50で完全に阻害に達するという同じパターンに従うが、増殖活性の降下がどの程度急速であるかについては、化合物濃度の上昇に伴って違いがある。注目すべき例は、0.25×IC50もの低い濃度で完全な阻害に達する化合物[7]である。しかし、IC50値は様々な細胞パネルからの平均に基づくので、異なる化合物の特定の濃度間の比較は注意して行わなければならない。
【0205】
記載したパターンの例外が、同じ影響を及ぼすのに他の化合物より高い濃度を必要とする化合物[9]及び[10]、並びに他のものと同じ濃度依存に従うが、より高い濃度でも増殖活性の完全な阻害を実現することができない化合物[4]に見られる。
【0206】
これらの実験は、PBMC生存力は刺激によってわずかに減少するが、さらなる有意な減少は化合物の処理と関係がないことを示している。より重要なことには、生存力は、明らかに化合物濃度に依存しておらず、したがって、測定されたBrdU取り込みの減少は、化合物の細胞障害ではなく増殖活性の真の阻害を表す。
【0207】
本発明の範囲及び精神から逸脱しない、本発明の様々な改変形態及び変更形態は、当分野の技術者には明らかである。本発明を、特に好ましい実施形態に関して説明してきたが、特許請求の範囲に記載した本発明は、こうした特定の実施形態に必要以上に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、当業者にとって明らかである、記載された本発明を実施するための形態に対する様々な改変は、本発明によって包含されることが意図される。
(参考文献)
Balomenos D. et al. The cell cycle inhibitor p21 controls T-cell proliferation and sex- linked lupus development. Nat. Med, 6:171-176, 2000.
Corna D et al. Mycophenolate mofetil limits renal damage and prolongs life in murine lupus disease. Kidney Int, 51:1583-1589, 1997.
Foster MH. et al. Relevance of systemic lupus erythematosus nephritis animal models to human disease. Semin Nephrol, 19:12-24, 1999.
Gelfand MC et al. Therapeutic studies in NZB/W mice. I. Synergy of azathioprine, cyclophosphamide and methylprednisolone in combination. Arthritis Rheum, 15: 239-246, 1972.
Kewalramani R. et al. Immunopathogenesis of lupus and lupus nephritis:recent insights. Curr Opin Nephrol Hypertens, 11:273-277, 2002.
Von Mulen C. A. et al. Autoantibodies in the Diagnosis of Systemic Rheumatic Diseases. Semin Arthritis Rheum 1995; 24:323-58.
Peutz-Kootstra C.J. et al. Lupus nephritis:lessons from experimental animal models. J Lab Clin Med, 137:244-259, 2001.
Rekvig OP et al. Anti-double-stranded DNA antibodies, nucleosomes, and systemic lupus erythematosus. Arthritis & Rheumatism 48: 300-312, 2003.
Reichlin M. et al. Antinuclear Antibodies: An Overview, Dubois' Lupups Erythematosus 5th Edn, eds Wallace D. J. and Hahn B. H., Williams, Wilkins and Baltimore, 1997, p397-405.
Shankland S.J. et al. Cell cycle regulatory proteins in renal disease: role in hypertrophy, proliferation, and apoptosis. Am J Physiol Renal Physiol, 278:F515-F529, 2000.
Van Venrooij W. J. et al. Manual of Biological Markers of Disease, Section B: Autoantigens. Kluwer Academic Publishing, 1994.
Xu L. et al. Human lupus T cells resist inactivation and escape death by upregulating COX-2. Nature Medicine, 10:411-415, 2004.
Zoja C. et al. Renal expression of monocyte chemoattractant protein-1 in lupus autoimmune mice. J Am Soc Nephrol 8:720-729, 1997.
Zoja C. et al. Bindarit retards renal disease and prolongs survival in murine lupus autoimmune disease. Kidney Int, 53:726-734, 1998.
Zoja C. et al. Mycophenolate mofetil combined with a cyclooxygenase-2
inhibitor ameliorates murine lupus nephritis. Kidney Int, 60:653-663, 2001.
【0208】
【表2】

【0209】
【表3】

【0210】
【表4】

【0211】
【表5】

【0212】
【表6】

【0213】
【表7】

【0214】
【表8】

【0215】
【表9】

【0216】
【表10】

【0217】
【表11】

【0218】
【表12】

【0219】
【表13】

【0220】
【表14】

【0221】
【表15】

【0222】
【表16】

【0223】
【表17】

【0224】
【表18】

【図面の簡単な説明】
【0225】
【図1】生後2カ月又は5カ月から投与量100mg/kg及び200mg/kgのCYC202で処置したNZB/W F1マウスの処置期間(数カ月)に対する生存パーセンテージを示す図である。
【図2】投与量100mg/kg又は200mg/kgのCYC202で処置したNZB/W F1マウスの処置期間(数カ月)に対するタンパク尿症マウスのパーセンテージを示す図である。
【図3】100mg/kg又は200mg/kgのCYC202で処置したNZB/W F1マウスの血清抗DNA抗体(U/ml)を示す図である(対照媒体に対して)。
【図4】非処理又はDMSO媒体で処理した、非刺激及び刺激されたPBMC及び対照細胞のBrdU取り込み(上)及び生存力(下)を示す図である。
【図5】刺激2時間前(−2h)、刺激時(0h)、及び刺激2時間後(+2h)に、4×IC50、3×IC50、2×IC50、及びIC50の濃度のDMSO(左上)又は諸化合物で処理したときの、PHA又はPMA/Iで48時間刺激されたPBMC細胞間のBrdU取り込みの差を示す図である。
【図6】刺激2時間前(−2h)、刺激時(0h)、及び刺激2時間後(+2h)に、4×IC50、3×IC50、2×IC50、及びIC50の濃度のDMSO(左上)又は諸化合物で処理したときの、PHA又はPMA/Iで48時間刺激されたPBMC細胞間の生存力の差を示す図である。
【図7】コンカナバリンAの滴定曲線が10μg/mLで最大刺激を示し(左上)、より高濃度で生存力低下を示す(右上)図である。BrdU取り込みの増加は、PHA及びPMA/I刺激と同程度である(左下)。
【図8】DMSOでの48時間及び72時間処理並びに非処理での、PHA及びConAで刺激されたPBMC並びに非刺激細胞のPBMCにおけるBrdU取り込み(上)及び生存力(下)を示す図である。
【図9A】4×IC50、3×IC50、2×IC50、IC50、0.5×IC50、及び0.25×IC50の諸化合物並びにDMSO対照で48時間及び72時間処理したPHA(左)及びConA(右)刺激PBMCのBrdU取り込みを示す図である。
【図9B】4×IC50、3×IC50、2×IC50、IC50、0.5×IC50、及び0.25×IC50の諸化合物並びにDMSO対照で48時間及び72時間処理したPHA(左)及びConA(右)刺激PBMCのBrdU取り込みを示す図である。
【図10A】4×IC50、3×IC50、2×IC50、IC50、0.5×IC50、及び0.25×IC50の諸化合物並びにDMSO対照で48時間及び72時間処置したPHA(左)及びConA(右)刺激PBMCの生存力を示す図である。
【図10B】4×IC50、3×IC50、2×IC50、IC50、0.5×IC50、及び0.25×IC50の諸化合物並びにDMSO対照で48時間及び72時間処置したPHA(左)及びConA(右)刺激PBMCの生存力を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩の使用であって、前記CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩が抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量で投与される使用。
【請求項2】
疾患が、自己免疫性リウマチ疾患又は器官特異的自己免疫である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
自己免疫性リウマチ疾患が、薬剤誘発性狼瘡、全身性エリテマトーデス(SLE)、及びリウマチ性関節炎から選択される、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
自己免疫性リウマチ疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
抗核抗体が、抗DNA抗体である、請求項1から4のいずれかに記載の使用。
【請求項6】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、Mcl−1の発現を下方制御するのに十分な量である、請求項1から5のいずれかに記載の使用。
【請求項7】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、タンパク尿症及び腎機能障害の発症を遅らせるのに十分な量である、請求項1から6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、糸球体及び管間質の変化を低下させるのに十分な量である、請求項1から7のいずれかに記載の使用。
【請求項9】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、単核細胞の間質性蓄積を減少させるのに十分な量である、請求項1から8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、(PMA及びConAによって誘発された)T細胞増殖を阻害するのに十分な量である、請求項1から9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
医薬品が、メチルプレドニゾロンとの併用療法で使用するものである、請求項1から10のいずれかに記載の使用。
【請求項12】
対象の抗核抗体に関連する疾患を治療する方法であって、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩を、抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量で前記対象に投与することを含む方法。
【請求項13】
対象の自己免疫疾患を、前記対象の抗核抗体のレベルを下方制御することによって治療する方法であって、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩を、抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量で投与することを含む方法。
【請求項14】
対象の抗核抗体に関連する疾患を抗核抗体のレベルを下方制御することによって治療する方法であって、前記疾患が治療されるように、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩を投与することを含む方法。
【請求項15】
対象の抗核抗体のレベルを下方制御する方法であって、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩を、抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量で前記対象に投与することを含む方法。
【請求項16】
疾患が、自己免疫性リウマチ疾患又は器官特異的自己免疫である、請求項12から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
自己免疫性リウマチ疾患が、薬剤誘発性狼瘡、全身性エリテマトーデス(SLE)、及びリウマチ性関節炎から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
自己免疫性リウマチ疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
抗核抗体が、抗DNA抗体である、請求項12から18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、Mcl−1の発現を下方制御するのに十分な量である、請求項12から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、タンパク尿症及び腎機能障害の発症を遅らせるのに十分な量である、請求項12から20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、糸球体及び尿細管間質の変化を低下させるのに十分な量である、請求項12から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、単核細胞の間質性蓄積を減少させるのに十分な量である、請求項12から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、PMA及びConAによって誘発されたT細胞増殖を阻害するのに十分な量である、請求項12から23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
対象にメチルプレドニゾロンを投与することをさらに含む、請求項12から24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
メチルプレドニゾロン、並びにCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩が、同時に、連続して、又は個別に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
細胞内の抗核抗体のレベルを下方制御する方法であって、前記細胞と、前記細胞の抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量のCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩とを接触させることを含む方法。
【請求項28】
抗核抗体に関連する疾患を治療する薬剤組成物であって、製薬上許容される希釈剤、賦形剤、又は担体と混合された、抗核抗体のレベルを下方制御するのに十分な量のCDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤を含む薬剤組成物。
【請求項29】
CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンを含む組合せ物。
【請求項30】
請求項29に記載の組合せ物、及び製薬上許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む薬剤組成物。
【請求項31】
治療において同時に、連続して、又は個別に使用する組合せ製剤としての、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンを含む医薬品。
【請求項32】
CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンが、同時に投与される、請求項31に記載の医薬品。
【請求項33】
製薬上許容される担体、希釈剤、又は賦形剤をさらに含む、請求項31又は32に記載の医薬品。
【請求項34】
抗核抗体に関連する疾患の治療で使用される請求項31から33のいずれかに記載の医薬品。
【請求項35】
疾患が、自己免疫性リウマチ疾患又は器官特異的自己免疫である、請求項34に記載の医薬品。
【請求項36】
自己免疫性リウマチ疾患が、薬剤誘発性狼瘡、全身性エリテマトーデス(SLE)、及びリウマチ性関節炎から選択される、請求項35に記載の医薬品。
【請求項37】
自己免疫性リウマチ疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)である、請求項36に記載の医薬品。
【請求項38】
(i)CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩;並びに
(ii)メチルプレドニゾロン
を含む、製薬上許容される希釈剤、賦形剤、又は担体と混合された薬剤組成物。
【請求項39】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、プリン誘導体又はピリミジン誘導体である、請求項28、30、若しくは38に記載の薬剤組成物、又は請求項31から37のいずれかに記載の医薬品。
【請求項40】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、
【化1】


及び薬剤として許容されるそれらの塩から選択される、請求項28、30、若しくは38に記載の薬剤組成物、又は31から37のいずれかに記載の医薬品。
【請求項41】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、ロスコビチン、オロモウシン、及びパルバラノールA、並びに薬剤として許容されるそれらの塩から選択される、請求項28、30、若しくは38に記載の薬剤組成物、又は請求項31から37のいずれかに記載の医薬品。
【請求項42】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩である、請求項28、30、若しくは38に記載の薬剤組成物、又は請求項31から37のいずれかに記載の医薬品。
【請求項43】
抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製における請求項29に記載の組合せ物の使用。
【請求項44】
抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩の使用であって、前記医薬品が、メチルプレドニゾロンと組み合わせて使用するものである使用。
【請求項45】
抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるメチルプレドニゾロンの使用であって、前記医薬品が、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩と組み合わせて使用するものである使用。
【請求項46】
抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンの使用。
【請求項47】
抗核抗体に関連する疾患を治療する医薬品の調製におけるCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩の使用であって、前記治療が、対象に、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンを、同時に、連続して、又は個別に投与することを含む使用。
【請求項48】
疾患が、自己免疫性リウマチ疾患又は器官特異的自己免疫である、請求項43から47のいずれかに記載の使用。
【請求項49】
自己免疫性リウマチ疾患が、薬剤誘発性狼瘡、全身性エリテマトーデス(SLE)、及びリウマチ性関節炎から選択される、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
自己免疫性リウマチ疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)である、請求項43から49のいずれかに記載の使用。
【請求項51】
抗核抗体が、抗DNA抗体である、請求項43から50のいずれかに記載の使用。
【請求項52】
抗核抗体のレベルを低下させる、請求項43から50のいずれかに記載の使用。
【請求項53】
対象の抗核抗体に関連する疾患を治療する方法であって、前記対象に、治療上許容される量の
(i)CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩;並びに
(ii)メチルプレドニゾロン
を投与することを含む方法。
【請求項54】
CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンが、製薬上許容される希釈剤、賦形剤、又は担体と混合される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンが、同時に、個別に、又は連続して投与される、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
対象にCDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩を投与した後、前記対象にメチルプレドニゾロンを連続して又は個別に投与することを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
対象にメチルプレドニゾロンを投与した後、CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩を連続して又は個別に投与することを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンが、個々の成分に関して治療有効量で各々投与される、請求項53から57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
CDK2及び/若しくはCDK7及び/若しくはCDK9の阻害剤、又は薬剤として許容されるその塩、並びにメチルプレドニゾロンが、個々の成分に関して治療量以下の量で各々投与される、請求項53から57のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
疾患が、自己免疫性リウマチ疾患又は器官特異的自己免疫である、請求項53から57のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
自己免疫性リウマチ疾患が、薬剤誘発性狼瘡、全身性エリテマトーデス(SLE)、及びリウマチ性関節炎から選択される、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
自己免疫性リウマチ疾患が、全身性エリテマトーデス(SLE)である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、プリン誘導体又はピリミジン誘導体である、請求項1から11若しくは請求項43から52のいずれかに記載の使用、又は請求項12から27若しくは請求項53から62のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、
【化2】


【化3】


及び薬剤として許容されるそれらの塩から選択される、請求項1から11若しくは請求項43から52のいずれかに記載の使用、又は請求項12から27若しくは請求項53から62のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、ロスコビチン、オロモウシン、及びパルバラノールAから選択される、請求項1から11若しくは請求項43から52のいずれかに記載の使用、又は請求項12から27若しくは請求項53から62のいずれかに記載の方法。
【請求項66】
CDK2及び/又はCDK7及び/又はCDK9の阻害剤が、ロスコビチン又は薬剤として許容されるその塩である、請求項1から11若しくは請求項43から52のいずれかに記載の使用、又は請求項12から27若しくは請求項53から62のいずれかに記載の方法。
【請求項67】
実質的に本明細書に記載の通りであり、添付の図に基づく方法、使用、組合せ物、薬剤組成物、又は医薬品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate


【公表番号】特表2008−510784(P2008−510784A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528987(P2007−528987)
【出願日】平成17年8月25日(2005.8.25)
【国際出願番号】PCT/GB2005/003350
【国際公開番号】WO2006/021803
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(506138030)サイクラセル リミテッド (21)
【Fターム(参考)】