説明

プレス成形体の製造方法及びバリ除去装置

【課題】成形材料をプレス成形してプレス成形体を得るにあたり、発生したバリを容易に除去することができるプレス成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】成形材料2をプレス成形することによりプレス成形体Aを製造するプレス成形体Aの製造方法に関する。成形材料2をプレス成形して成形体1を形成すると同時にこのプレス成形によって前記成形体1に溝4を、この成形体1に生じるバリ3の基端部の近傍に形成する工程と、得られた成形体1に生じたバリ3に応力をかけることにより前記溝4の形成位置で成形体1からバリ3を分離して除去する工程とを含む。バリ3に応力をかけて押し割るだけで、バリ3の跡が突出することなくバリ3をきれいに除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス成形により発生するバリを容易に除去することができるプレス成形体の製造方法及びプレス成形体を製造するにあたり、発生したバリを容易に除去することができるバリ除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形材料やセメント成形材料2等の成形材料2をプレス成形する場合には、金型の分割面(パーティング面14)に成形材料2が浸入することにより、成形体1にバリ3が発生しやすい。このため、プレス成形時に成形体1にバリ3が発生しないようにする試みが種々なされており(特許文献1,2参照)、また射出成形の場合にも同様にバリ3の発生を防止する試みが行われている(特許文献3参照)。
【0003】
しかし、このようなバリ3の発生が避けがたい場合には、プレス成形後の成形体1からバリ3を除去する工程が必要となる。バリ3を除去するためには、バリ3を人の手で折り割って除去したり、ルーター等で切削して除去したりすることが行われている。
【0004】
プレス成形体Aの製造工程の一例として、図9,10に、建築物のコーナー部分に設けられる建築外装材である、断面L字型の出隅役物A1を製造する場合を挙げる。この出隅役物A1は、図8に示すように外面の出隅面8及び両側の端面6が凹凸状に形成されているもので、これにより意匠性の向上が図られている。
【0005】
このような出隅役物A1を製造する場合には、上型10と下型9の間に成形材料2を配置し、プレス成形を行う。この場合、上型10と下型9との間のパーティング面14に浸入した成形材料2により、図9(c)及び図10に示すように成形体1の端縁部分にバリ3が発生する。このバリ3を人の手で押し割る場合には、図10(c)に示すようにバリ3の基端部の跡3aが突出して残る。そこで、続いてルーター等を用いて前記バリ3の跡3aを切削して仕上げを行う必要がある。
【特許文献1】特開2007−1205号公報
【特許文献2】特開2005−221785号公報
【特許文献3】特開平6−311737号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように従来においてはバリ3を人の手で押し割る場合にはバリ3をきれいに除去することが難しく、続いてルーター等による切削仕上げを行わなければならない場合が多い。また、バリ3の除去をルーター等で行ったり、前記のようにバリ3除去後の仕上げをルーターで行ったりする場合、図8(a)に示すようにバリ3が発生している部分が凹凸状になってプレス成形体Aを製造する場合には、その凹凸に沿ってルーター等をあてなければならず、非常に煩雑な手間が必要となる。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、成形材料をプレス成形してプレス成形体を得るにあたり、発生したバリを容易に除去することができるプレス成形体の製造方法、及びプレス成形体を製造するにあたり、発生したバリを容易に除去することができるバリ除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、成形材料2をプレス成形することによりプレス成形体Aを製造するプレス成形体Aの製造方法であって、成形材料2をプレス成形して成形体1を形成すると同時にこのプレス成形によって前記成形体1に溝4を、この成形体1に生じるバリ3の基端部の近傍に形成する工程と、得られた成形体1に生じたバリ3に応力をかけることにより前記溝4の形成位置で成形体1からバリ3を分離して除去する工程とを含むことを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、成形材料2をプレス成形することにより、平坦面5と、この平坦面5の端縁に接する凹凸状の端面6とを有するプレス成形体Aを製造するプレス成形体Aの製造方法であって、成形材料2をプレス成形して成形体1を形成すると同時に成形体1の平坦面5の端縁からこの平坦面5と交差する方向の外方に向けて突出するバリ3を形成する工程と、前記成形体1の平坦面5側からバリ3を切削することによりバリ3を除去する工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、平坦面5と、この平坦面5の端縁と接する凹凸状の端面6とを有する成形体1における、前記平坦面5の端縁からこの平坦面5と交差する方向の外方に突出するバリ3を除去するバリ除去装置Bであって、前記成形体1の平坦面5に当接する当接部31と、この当接部31の成形体1におけるバリ3の発生位置と合致する位置に設けられた切削具32とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、プレス成形と同時にバリ3除去のための溝4が形成され、バリ3に応力をかけて押し割るだけで、バリ3の跡3aが突出することなくバリ3をきれいに除去することができて、プレス成形によってバリ3が発生する場合にこのバリ3を容易且つ確実に除去することができるようになり、特に凹凸形状を有するプレス成形体Aを製造する場合におけるバリ3の除去のための煩雑な手間を削減することができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、バリ3の突出方向が成形体1の平坦面5と直交する外方に規制されることで、凹凸形状を有する成形体1であるにもかかわらず、前記平坦面5側から切削具32等をバリ3にあてることで、煩雑な手間をかけることなくバリ3を容易且つ確実に除去することができるものである。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、バリ3を有する成形体1の平坦面5に当接部31を当接し、この平坦面5に沿って成形体1に対して当接部31を移動しながら切削具32にてバリ3を切削することで、煩雑な手間がかかることなくバリ3を容易且つ確実に除去することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0015】
ここでは、プレス成形体Aとして、建築外装材の出隅役物A1を製造する場合を例に挙げて説明する。
【0016】
本実施形態で製造される出隅役物A1は、図8に示すような形状を有する。この出隅役物A1は断面L字状の部材として形成されている。出隅役物A1の内側の入隅状となった二つの面(以下、入隅面7という)は、平坦面5として形成されており、この平坦面5が略直角に突き合わされたようになっている。また、出隅役物A1の外側の出隅状となった面(以下、出隅面8という)は凹凸模様が形成されており、両側の端面6も凹凸状に形成されている。かかる出隅役物A1は、屋外側に露出する部分の形状が凹凸状をなすことで建築物の意匠性を向上するために用いられる。
【0017】
このようなプレス成形体Aを得るための成形材料2としてはセメント系成形材料、樹脂成形材料等、プレス成形に採用される適宜のものを用いることができるが、例えば、無機粉粒体と熱可塑性樹脂を配合した樹脂成形材料2を挙げることができる。
【0018】
上記無機粉粒体としては、無機質材料を粉砕したものを用いることができ、例えば繊維セメント板など、窯業系無機質建材の廃材を粉砕したものを使用することができる。窯業系無機質建材の廃材は、製造段階から、建築物解体段階に至るまで発生し、累積発生量は大量となる。このような窯業系無機質建材の廃材を粉砕して原料として使用すれば、廃材の有効利用が可能になって、環境保護を有効に達成することができる。
【0019】
無機粉粒体は上記のような窯業系無機質建材の廃材を粉砕したものの他に、フライアッシュ、ペーパースラッジ灰、焼却灰、その溶融スラグなどの焼却灰を用いることもできる。これらの産業廃棄物にあっても、大量の有効再利用が可能になるものである。またこれらはもともと粉粒状であるため、粉砕を行なうことが不要であり、製造コストを低く抑えることができる。
【0020】
無機粉粒体の粒径は特に制限されないが、平均粒径が0.01〜7mmの範囲であることが好ましい。
【0021】
上記熱可塑性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレンなど任意のものを用いることができる。この熱可塑性樹脂としては熱可塑性樹脂の成形品からなるプラスチック製品の廃材を用いることができる。プラスチック製品の廃材も窯業系無機質建材と同様に発生量は大量であるので、プラスチック製品を原料として使用すれば、廃材の有効利用が可能になる。
【0022】
上記の無機粉粒体と熱可塑性樹脂とを配合し、混合・混練することによって樹脂成形材料2を得ることができる
また、この樹脂成形材料2には、更にエラストマーを配合しても良い。エラストマーとしては特に限定されず、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の適宜のものを用いることができる。
【0023】
成形材料2中の各成分の配合量は特に限定されず、各成分の特性をバランス良く発揮させるために適宜の割合で配合する。特に成形材料2中の無機紛粒体の含有量が50〜85質量%の範囲であれば、成形材料2を溶融した場合の流動性が良好になると共に成形体1の曲げ強度や衝撃強度の向上や、比重の低減を図ることができ、且つ、成形材料2の粘着性を低減して成形材料2を混練機等から成形金型Cへ移す際の混練機等への付着が生じにくくなって作業性が向上し、更に、成形体1の線膨張率を低減して熱寸法安定性を向上することができる。
【0024】
また、成形材料2にはこれらの三成分の他に、必要に応じて着色剤等の微量成分を配合しても良い。
【0025】
また、成形材料2中に配合される熱可塑性樹脂及びエラストマーとしては、その一部又は全部として、エラストマーが添加された熱可塑性樹脂の成形品を用いることもでき、このときこのような成形品からなるプラスチック製品の廃材を用いることができる。このようなプラスチック製品も例えば自動車のバンパー等として広く用いられているため、その廃材も窯業系無機質建材と同様に発生量が大量であり、このプラスチック製品を原料として使用すれば、エラストマーの供給源としても廃材の有効利用が可能になる。
【0026】
このような無機粉粒体と熱可塑性樹脂とエラストマーを配合し、これを熱可塑性樹脂の溶融温度付近に加熱しながら強制的に混合・混練することによって、成形材料2を得ることができる。
【0027】
図1,2は、プレス成形の一例を示す。ここで用いる成形金型Cは、出隅役物A1の入隅面7に合致する平坦な二つの成形面9aが、入隅面7と同様に略直角に突き合わせるように形成された第一の型体9(以下、便宜上、下型9という)と、出隅面8の面形状と合致する凹凸状の二つの成形面10aが、出隅面8と同様に略直角に突き合わせるように形成された第二の型体10(以下、便宜上、上型10という)とを備える。上型10は成形面10aがそれぞれ形成された二つの分割型24にて構成されており、この分割型24が突き合わされることで上型10が構成される。上型10の各分割型24には成形面10aの両方の端縁側に、出隅役物A1の両側の端面6を形成するための端面覆い部12が下型9側に向けて突出して設けられている。端面覆い部12の内側では成形面10aは出隅役物A1の端面6の形状と合致する凹凸状に形成されている。この上型10と下型9とを型締めすると、各成形面9a,10aの間に出隅役物A1の形状に合致する空間(成形空間13)が形成され、下型9と上型10の端面覆い部12とが接触して重なっている面がパーティング面14になる。
【0028】
また、下型9の成形面9aには、型締め時の状態におけるパーティング面14の近傍に、このパーティング面14との境界に沿って(すなわち端面覆い部12の内面に沿って)凸条15が突設されている。端面覆い部12の内面は既述のように凹凸状に形成されているため、凸条15は前記凹凸形状に沿った形状に形成される。この型締め状態では成形面9aとパーティング面14との境界と、凸条15との間には、僅かな隙間があいている。この隙間の幅寸法(すなわち、成形体1の溝4とバリ3の間の寸法)は0.5〜2.0mmの範囲であることが好ましい。また、この凸条15の成形面9aからの突出寸法(すなわち、成形体1の溝4の深さ寸法)は2.0〜5.0mmの範囲であることが好ましい。更に、型締め状態におけるこの凸条15の先端と上型10の成形面10aとの最短距離の寸法(すなわち、成形体1の溝4の底部と成形体1の外面との間の最短寸法)は1.0mm以下であることが好ましい。このような場合、後述するバリ3の除去時にバリ3を特に容易且つその基端部の跡が突出することなく除去することができる。
【0029】
プレス成形時には、図1(a)に示すように上記成形金型Cの下型9と上型10との間に溶融状態にある成形材料2を配置し、この状態で図1(b)に示すように型締めをする。これにより成形材料2は成形空間13内に充填されて出隅役物A1の形状に成形される。この型締め状態で成形材料2を冷却固化することで、成形体1が形成される。このとき図2(a)に示すように余剰の成形材料2が上型10の端面覆い部12と下型9との間のパーティング面14に浸入し、バリ3が発生する。また、凸条15と合致する箇所には溝4が形成される。
【0030】
次いで、図1(c)に示すように上型10と下型9とを離して型開きし、更に成形体1を脱型する。この成形体1は出隅役物A1の形状に形成され、且つその側端縁からは、図2(b)に示すようにバリ3が入隅面7に沿った外側方に向けて突出するように形成されている。また、入隅面7の外側縁にはバリ3の基端部の近傍に上記溝4が形成されている。溝4は成形体1の入隅面7においてその側端縁に沿って凹設されており、この溝4の外側方に前記バリ3が形成されている。
【0031】
このような成形体1が得られた後、図2(c)に示すようにこの成形体1からバリ3を除去することでプレス成形体Aが得られる。バリ3の除去はバリ3に対して応力を加えることにより行うことができ、この作業は作業者等による人の手で行うことが可能であるが、その他適宜の方法で行うこともできる。このとき上記のように溝4が設けられていることから、バリ3に応力が加えられた際にバリ3は溝4の形成位置において成形体1から容易に分離されるものであり、このときバリ3は基端部を含む全体が除去されて、このバリ3の除去により得られるプレス成形体Aからはバリ3の基端部の跡3aが突出するようなことが防止される。このため、バリ3を容易に除去することができると共に、バリ3の除去後に研磨や切削等の作業を行う必要がなくなる。
【0032】
尚、この場合、バリ3と共にプレス成形体Aの一部が欠けることになるが、成形体1の溝4とバリ3の間の寸法をできるだけ小さくすることでこのような欠けを小さくすることができ、また、欠けが発生する部分を本例における出隅役物A1の入隅面7側の側端縁のように目立たない部位に生じるようにすれば、このような欠けがプレス成形体Aにおいて目立たないようにすることができる。
【0033】
図3,4はプレス成形の他の例を示す。この成形金型Cも、上記図1,2に示すものと同様に上型10と下型9とから構成されるが、溝4を形成するための凸条15は設けられていない。
【0034】
この下型9には、成形面9aの両側の外側端縁と連続するようにして、成形体1の下型9からの脱型方向に沿ってこの脱型方向とは反対側に向かう合わせ面19が設けられている。また、上型10を構成する各分割型24には、成形面10aの外側端縁と連続するようにして、前記下型の合わせ面19に合致する合わせ面18が設けられている。各合わせ面18,19の、下型9からの脱型方向の寸法は特に制限されないが、5〜10mmの範囲であることが好ましい。型締め時には前記合わせ面18,19が重なってパーティング面14が構成されるものであり、すなわちパーティング面14が成形体1の平坦面5を形成するための成形面9aと交差する方向であり、且つ成形体1の脱型方向と同一の方向になる。
【0035】
プレス成形時には、図3(a)に示すように上記成形金型Cの下型9と上型10との間に溶融状態にある成形材料2を配置し、図3(b)に示すように型締めをする。これにより成形材料2は成形空間13内に充填されて出隅役物A1の形状に成形される。この型締め状態で成形材料2を冷却固化することで、成形体1が形成される。図4(a)に示すようにこのとき余剰の成形材料2がパーティング面14に浸入し、バリ3が発生する。
【0036】
次いで、図3(c)に示すように上型10の各分割型24と下型9を離して型開きし、更に成形体1を脱型する。この成形体1は出隅役物A1の形状に形成され、且つその側端縁からは、図4(b)に示すようにバリ3が平坦面5である入隅面7と交差する方向の外方に向けて突出するように形成されている。このときバリ3は成形体1の脱型方向と沿った方向に形成されているため、バリ3が成形体1の脱型を阻害することがない。
【0037】
このような成形体1が得られた後、この成形体1からバリ3を除去することで図4(c)ようにプレス成形体Aが得られる。バリ3の除去にあたっては、作業者等の人の手やその他適宜の手法でバリ3に応力をかけて折り取った後、そのバリ3の基端部の跡3aを適宜の切削具32で切削し、或いはこのバリ3を予め折り取ることなく適宜の切削具32で切削して除去することができる。このとき、成形体1の端縁に対して切削具32で切削する際には、この成形体1の端面6が本実施形態のように凹凸状に形成されていても、バリ3は平坦面5である入隅面7と交差する外方に向けて突出しているため、切削具32や研磨具をバリ3に対して前記平坦面5である入隅面7側からバリ3にあてることにより、端面6の凹凸形状に阻害されることなく容易にバリ3を除去することができる。
【0038】
図5,6はプレス成形の更に他の例を示す。この成形金型Cも、上記図1,2に示すものと同様に上型10と下型9とから構成されるが、溝4形成のための凸条15は設けられていない。
【0039】
この下型9には、成形面9aの両側の外側端縁と連続するようにして、この成形面9aと略直交する方向の下方(上型10とは反対側の方向)に向かう合わせ面22が設けられており、更にこの合わせ面22と連続するようにしてこの合わせ面22の下端から外側に向けて下方(上型10とは反対側の方向)に傾斜する合わせ面23が設けられている。これにより、二つの合わせ面22,23の組み合わせが断面L字状に形成される。また、上型10を構成する各分割型24には、成形面10aの外側端縁と連続するようにして、前記下型9の合わせ面22に合致する、下方(下型10側の方向)に向かう合わせ面20が設けられており、更にこの合わせ面20と連続して前記下型9の合わせ面21と合致するように下方(下型10側の方向)に傾斜する合わせ面23が形成されている。これにより二つの合わせ面20,21の組み合わせは、上型10の合わせ面22,23の組み合わせと合致する断面L字状に形成される。ここで、下型9の合わせ面22及び上型10の合わせ面20の、成形面9aと略直交する方向の寸法は特に制限されないが、できるだけ短い方が好ましく、特に2.0〜5.0mmの範囲であることが好ましい。型締め時には前記下型9の合わせ面22,23と上型10の合わせ面20,21が重なってパーティング面14が構成されるものであり、すなわちパーティング面14は、成形体1の平坦面5を形成するための成形面9aの端縁から、この成形面9aと直交する方向に向かった後、外側に傾斜する方向に向かうような断面L字状になる。
【0040】
プレス成形時には、図5(a)に示すように上記成形金型Cの下型9と上型10との間に溶融状態にある成形材料2を配置し、図5(b)に示すように型締めをする。これにより成形材料2は成形空間13内に充填されて出隅役物A1の形状に成形される。この型締め状態で成形材料2を冷却固化することで、成形体1が形成される。このとき図6(a)に示すように余剰の成形材料2がパーティング面14に浸入し、断面L字状のバリ3が発生する。
【0041】
次いで、図5(c)に示すように上型10の各分割型24と下型9を離して型開きすると共に脱型を行う。このとき上型10を構成する各分割型24は、下型9に対し、上型10の合わせ面20と下型9の合わせ面22とに沿った方向、すなわち成形面9aに対して垂直な方向にそれぞれ移動させることで、引っ掛かりなく型開きすることができる。
【0042】
また、下型9からの成形体1の脱型の際、バリ3と、下型9の成形面22,23とがかみ合っているが、バリ3が薄く十分に弾性があれば前記かみ合いにより脱型が阻害されることがない。特に上記のように下型9の合わせ面22及び上型10の合わせ面20の、成形面9aと略直交する方向の寸法が5.0mm以下であれば、成形体1を容易に脱型することができる。
【0043】
この成形体1は、出隅役物A1の形状に形成され、且つその側端縁からは、図6(b)に示すように断面L字状のバリ3が平坦面5である入隅面7と直交する方向に向けて入隅面7から突出するように形成されている。
【0044】
このような成形体1が得られた後、図6(c)に示すようにこの成形体1からバリ3を除去することでプレス成形体Aが得られる。バリ3の除去にあたっては、作業者等の人の手やその他適宜の手法でバリ3に応力をかけて折り取った後、そのバリ3の基端部の跡3aを適宜の切削具32で切削し、或いはこのバリ3を予め折り取ることなく適宜の切削具32で切削して除去することができる。このとき、成形体1の端縁に対して切削具32で切削する際には、この成形体1の端面6が本実施形態のように凹凸状に形成されていても、バリ3は平坦面5である入隅面7と交差する外方に向けて突出しているため、切削具32や研磨具をバリ3に対して前記平坦面5である入隅面7側からバリ3にあてることにより、端面6の凹凸形状に阻害されることなく容易にバリ3を除去することができる。
【0045】
図3,4や図5,6のようにして成形体1の平坦面5の端縁からこの平坦面5と交差する方向の外方に突出するバリ3が形成されるようにした場合には、図7に示すようなバリ除去装置Bを用いてバリ3の除去を行うことができる。
【0046】
このバリ除去装置Bは、成形体1の平坦面5に当接する当接部31を有すると共に、この当接部31に切削具32が設けられている。
【0047】
図示の例では当接部31は出隅役物A1の各入隅面7の形状に合致する二つの傾斜部17を有する断面山形状に形成されており、この各傾斜部17を成形体1の各入隅面7に同時にあてることで、一方の入隅面7の外側端縁から他方の入隅面7の外側端縁に亘って当接するようになっている。
【0048】
切削具32としては図示のものでは軸回転駆動するローラ状のものが、各傾斜部17にそれぞれ設けられている。バリ除去装置Bには前記切削具32を回転駆動するモータ等の適宜の駆動機構が設けられている。この切削具32の回転軸は傾斜部17の傾斜方向と平行な方向になっており、且つこの切削具32の周面が常に傾斜部17の傾斜と面一になるように形成されている。この切削具32の周面には螺旋刃が刻設されている。各切削具32は、当接部31を成形体1の入隅面7に当接した際に、各入隅面7の外側端縁の位置、すなわちバリ3が形成されている位置と合致する位置にそれぞれ配置されるようになっている。
【0049】
このようなバリ除去装置Bを用いてバリ3の除去を行うにあたっては、バリ除去装置Bの各傾斜部17を成形体1の平坦な各入隅面7に当接させると共に、切削具32を各入隅面7の外側端縁に当接させる。この状態で切削具32を回転駆動すると共に、当接部31を入隅面7に沿って成形体1の長手方向(入隅面7の外側端縁に沿った方向)に移動させる。
【0050】
これにより、切削具32が入隅面7の外側端縁に生じているバリ3(予めバリ3を折り取った場合の、未だ突出しているバリ3のを含む)を切削して除去し、このバリ3が除去された部分が突出しないようにすることができる。このとき当接部31は平坦な入隅面7に沿って成形体1に対して移動させるだけで良いので、煩雑な手間がかかることなくバリ3の除去を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態の一例を示すものであり、(a)〜(c)は断面図である。
【図2】同上の実施の形態の例を示すものであり、(a)〜(c)は一部の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態の他例を示すものであり、(a)〜(c)は断面図である。
【図4】同上の実施の形態の例を示すものであり、(a)〜(c)は一部の断面図である。
【図5】本発明の実施の形態の更に他例を示すものであり、(a)〜(c)は断面図である。
【図6】同上の実施の形態の例を示すものであり、(a)〜(c)は一部の断面図である。
【図7】バリ除去装置の一例を示す断面図である。
【図8】プレス成形体である出隅役物の一例を示すものであり、(a)は正面図、(b)は断面図である。
【図9】従来技術の一例を示すものであり、(a)〜(c)は断面図である。
【図10】同上の従来技術の例を示すものであり、(a)〜(c)は一部の断面図である。
【符号の説明】
【0052】
A プレス成形体
B バリ除去装置
1 成形体
2 成形材料
3 バリ
4 溝
5 平坦面
6 端面
31 当接部
32 切削具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料をプレス成形することによりプレス成形体を製造する方法であって、成形材料をプレス成形して成形体を形成すると同時にこのプレス成形によって前記成形体に溝を、この成形体に生じるバリの基端部の近傍に形成する工程と、得られた成形体に生じたバリに応力をかけることにより前記溝の形成位置で成形体からバリを分離して除去する工程とを含むことを特徴とするプレス成形体の製造方法。
【請求項2】
成形材料をプレス成形することにより、平坦面と、この平坦面の端縁に接する凹凸状の端面とを有するプレス成形体を製造する方法であって、成形材料をプレス成形して成形体を形成すると同時に成形体の平坦面の端縁からこの平坦面と交差する方向に向けて突出するバリを形成する工程と、前記成形体の平坦面側からバリを切削することによりバリを除去する工程とを含むことを特徴とするプレス成形体の製造方法。
【請求項3】
平坦面と、この平坦面の端縁と接する凹凸状の端面とを有する成形体における、前記平坦面の端縁からこの平坦面と交差する方向に突出するバリを除去するバリ除去装置であって、前記成形体の平坦面に当接する当接部と、この当接部の成形体におけるバリの発生位置と合致する位置に設けられた切削具とを具備することを特徴とするバリ除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−273056(P2008−273056A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120013(P2007−120013)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(503367376)クボタ松下電工外装株式会社 (467)
【Fターム(参考)】