説明

プレーナ型アクチュエータ

【課題】 可動部の揺動動作による空気の流れが発生した場合でも、可動部を安定して揺動動作させることのできるプレーナ型アクチュエータを提供する。
【解決手段】 枠状の固定部と、固定部の内側にトーションバーを介して可動自在に支持され駆動手段により駆動される可動部4と、可動部4の一面側に取付けられた整流部材5と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレーナ型アクチュエータに係り、特に、枠状の固定部に平板状の可動部を揺動可能に軸支し、可動部の揺動動作による空気の流れが発生した場合でも、可動部を安定して揺動動作させることを可能としたプレーナ型アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、枠状の固定部に平板状の可動部を揺動可能に軸支する構造のアクチュエータとして、例えば半導体製造技術を利用し、シリコン基板を異方性エッチングし、枠状の固定部と平板状の可動部と固定部に可動部を軸支するトーションバーとを一体に形成し、可動部に駆動コイルを設け、可動部の駆動コイルに静磁界を付与する例えば永久磁石のような静磁界発生手段を設け、通電により駆動コイルに発生する磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用により発生するローレンツ力を利用して可動部を揺動させる電磁駆動タイプのプレーナ型アクチュエータがある(例えば、特許文献1参照)。
そして、このようなアクチュエータは、例えば、可動部にミラーを設けることで光ビームを偏向走査する光スキャナなどに適用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2722314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のアクチュエータにおいては、可動が揺動動作する際に、可動部の端縁の動作により空気の流れが発生するが、可動部の揺動動作の方向と反対側の面から空気の流れが剥離してしまい、可動部の当該面に負圧が発生してしまうという問題を有している。そのため、可動部の挙動が不安定になってしまうという問題を有している。
【0005】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、可動部の揺動動作による空気の流れが発生した場合でも、可動部を安定して揺動動作させることのできるプレーナ型アクチュエータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係るプレーナ型アクチュエータは、枠状の固定部と、
前記固定部の内側にトーションバーを介して可動自在に支持され駆動手段により駆動される可動部と、
前記可動部の一面側に設けられた整流部材と、
を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1において、前記整流部材は、半円柱形状に形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1において、前記整流部材は、半球状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記整流部材の表面には、凹部が形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか一項において、前記整流部材の表面には、突部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、可動部に整流部材を取付けるようにしているので、この整流部材により、可動部が揺動動作する際に、可動部の端縁部の動作により生じた空気の流れが剥離することがなく、負圧が生じにくくなる。その結果、可動部の揺動動作を安定して行うことができる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、整流部材を半円柱形状に形成するようにしているので、空気の流れを阻害することがなく、負圧の発生を防止して可動部を安定して揺動させることができる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、整流部材を半球状に形成するようにしているので、空気の流れを阻害することがなく、負圧の発生を防止して可動部を安定して揺動させることができる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、整流部材の表面に凹部を形成するようにしているので、空気の流れを阻害することがなく、負圧の発生を防止して可動部を安定して揺動させることができる。
【0015】
請求項5に係る発明によれば、整流部材の表面に突部を形成するようにしているので、空気の流れを阻害することがなく、負圧の発生を防止して可動部を安定して揺動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの可動部部分の斜視図である。
【図3】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの可動部部分の縦断面図である。
【図4】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの整流部材の変形例を示す縦断面図である。
【図5】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの整流部材の変形例を示す縦断面図である。
【図6】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの整流部材の変形例を示す縦断面図である。
【図7】図7(a)は従来のプレーナ型アクチュエータによる空気の流れを示す説明図、図7(b)は本発明に係るプレーナ型アクチュエータによる空気の流れを示す説明図である。
【図8】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの変形例を示す概略図である。
【図9】図8のA−B線における断面図である。
【図10】図8のC−D線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は本発明に係るプレーナ型アクチュエータの実施形態を示す概略図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態のプレーナ型アクチュエータ1は、図示しないデバイス基板上に設置された枠状の固定部2を備えている。この固定部2の内側には、トーションバー3を介して可動部4が揺動自在に支持されており、これら固定部2、可動部4およびトーションバー3は、一体的に形成されている。
【0020】
また、本実施形態においては、可動部4の一面側には、整流部材5が取付けられている。この整流部材5は、図2および図3に示すように、トーションバーの中心軸から可動部4の端部までの長さを半径とする半円柱状に形成されており、整流部材5は、可動部4に対して、例えば、接着剤などにより貼着されるように構成されている。なお、整流部材5は、可動部4を形成するプロセスにおいて、例えば、エッチングなどにより可動部4と一体に形成するようにしてもよい。
【0021】
なお、整流部材5の形状としては、例えば、図4に示すように、半円柱形状の突出量を変更するようにしてもよい。また、図5に示すように、整流部材5の表面に、整流効果を高めるために複数の微小な凹部6を形成するようにしてもよいし、図6に示すように、整流部材5の表面に、整流効果を高めるために複数の微小な突部7を形成するようにしてもよい。さらに、整流部材5を半球状に形成するようにしてもよい。すなわち、整流効果が得られるのであれば、整流部材5の形状は適宜設定することができるものである。なお、整流部材5は、可動部4の動作への影響を少なくするため、例えば、合成樹脂などの軽量な材料を用いるとともに、整流部材5の内部を中空に形成して軽量化を図ることが好ましい。ただし、十分な軽量化を図ることができる場合には、整流部材5の内部を中実に形成するようにしてもよい。
【0022】
また、固定部2の周囲には、可動部4を挟んで互いに反対磁極を対向させて配置される一対の静磁界発生部材(図示せず)が配置されている。なお、静磁界発生部材は、永久磁石でも電磁石でもよい。
【0023】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0024】
このプレーナ型アクチュエータ1の駆動原理は、例えば、特許第2722314号公報等で詳述されているので、以下、光スキャナの場合を例として簡単に説明する。
【0025】
可動部4の駆動コイル(図示せず)に電流を流すと磁界が発生し、この磁界と静磁界発生手段による静磁界との相互作用によりローレンツ力が発生し、トーションバー3の軸方向と平行な可動部4の対辺部分に互いに逆方向の回転力が発生し、この回転力とトーションバー3の復元力とが釣合う位置まで可動部4が回動される。
【0026】
そして、駆動コイルに直流電流を流すことにより、駆動電流量に応じた回動位置で可動部4を停止させることで、反射ミラーにより光ビームを所望の方向に偏向することが可能となる。
【0027】
一方、駆動コイルに交流電流を流すことにより、可動部4が揺動し、反射ミラーにより光ビームを偏向走査できる。可動部4を回動させるための回転力は、駆動コイルに流す駆動電流値に比例するので、駆動コイルに供給する駆動電流値を制御することで、可動部4の振れ角(光ビームの偏向角度)を制御することができる。なお、本実施形態においては、光スキャナの場合を例として作用を説明したが、本発明は光スキャナ以外にも適用できるものである。
【0028】
このとき、可動部4が揺動動作する際に、可動部4の端縁の動作により空気の流れが生じ、図7(a)に示すように、従来の場合には、可動部4の揺動方向と反対側の面において、空気の流れが剥離して負圧を生じることがあるが、本実施形態においては、図7(b)に示すように、整流部材5に沿って空気が流れることになり、負圧が生じにくくなる。また、可動部4に整流部材5を取付けることにより、可動部4の強度を増大させることができ、可動部4に取り付けた反射ミラーの反りなどを低減させることが可能となる。
【0029】
以上述べたように、本実施形態においては、可動部4の一面側に整流部材5を設けるようにしているので、可動部4が揺動動作する際に、可動部4の端縁部の動作により生じた空気の流れが剥離することがなく、負圧が生じにくくなる。その結果、可動部4の揺動動作を安定して行うことができる。
【0030】
なお、前記実施形態においては、1つの可動部4のみを備えた一次元のアクチュエータに適用した場合について説明したが、図8から図10に示すように、固定部2の内側に、第2トーションバー8を介して枠状の第2可動部9を揺動自在に設けるとともに、この第2可動部9の内側に、トーションバー3を介して可動部4を揺動自在に設けた二次元のアクチュエータに適用することも可能である。すなわち、この場合には、図8から図10に示すように、可動部4の一面側に、半円柱状の整流部材5を取付けるとともに、第2可動部9の一面側に整流部材5を取付けるようにすればよい。
【0031】
また、前記実施形態においては、アクチュエータの駆動方式として、電磁駆動方式の場合について説明したが、その他、静電駆動方式や圧電駆動方式のアクチュエータにも適用することが可能である。
【0032】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 プレーナ型アクチュエータ
2 固定部
3 トーションバー
4 可動部
5 整流部材
6 凹部
7 突部
8 第2トーションバー
9 第2可動部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠状の固定部と、
前記固定部の内側にトーションバーを介して可動自在に支持され駆動手段により駆動される可動部と、
前記可動部の一面側に設けられた整流部材と、
を備えていることを特徴とするプレーナ型アクチュエータ。
【請求項2】
前記整流部材は、半円柱形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項3】
前記整流部材は、半球状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項4】
前記整流部材の表面には、凹部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項5】
前記整流部材の表面には、突部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプレーナ型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−123176(P2011−123176A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−279464(P2009−279464)
【出願日】平成21年12月9日(2009.12.9)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【Fターム(参考)】