説明

プロピレン系ブロック共重合体の製造方法

【課題】剛性は保ちつつも耐衝撃性に優れるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】チタン原子等を必須成分とする固体触媒成分(A)と、有機アルミニウム化合物(B)と、電子供与性化合物(C)とを接触させて得られる重合用触媒の存在下で、ロピレン等を重合させる重合工程(I)を行った後、プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとを更に共重合させる重合工程(II)を行うプロピレン系ブロック共重合体の製造方法であって、ルイス酸化合物(D)及び酸素原子含有電子供与性化合物(E)を、重合工程(II)の間、又は、重合工程(II)の前に反応系内に添加する、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン系ブロック共重合体は、例えば、自動車内外装材や電気部品箱体等の成形体材料として、広く利用されている。
【0003】
耐衝撃性、剛性及び加工性等の品質バランス良好なプロピレン系ブロック共重合体の製造方法として、例えば、特許文献1には、プロピレンを特定量重合させたプロピレン単独重合スラリー又はプロピレンと他のオレフィンを特定量共重合させた共重合スラリーを、エーテル又はエステル及びジアルキルアルミニウムハライドが共存する反応機に移液した後、更にエチレン及びプロピレンを重合させる方法が開示されている。
【特許文献1】特許第3325419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来の方法によって得られるプロピレン系ブロック共重合体は、剛性及び耐衝撃性の双方を必ずしも十分に満足するものではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、剛性は保ちつつも耐衝撃性に優れるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、チタン原子、マグネシウム原子及びハロゲン原子を必須成分とする固体触媒成分(A)と、有機アルミニウム化合物(B)と、電子供与性化合物(C)とを接触させて得られる重合用触媒の存在下で、プロピレンを単独重合又はプロピレンとプロピレン以外のオレフィンとを共重合させて、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が90重量%以上である重合体成分(1)を生成させる重合工程(I)を行った後、プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとを更に共重合させて、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が10〜90重量%である重合体成分(2)を生成させる重合工程(II)を行うプロピレン系ブロック共重合体の製造方法であって、ルイス酸化合物(D)及び酸素原子含有電子供与性化合物(E)を、重合工程(II)の間、又は、重合工程(II)の前に反応系内に添加する、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法を提供する。
【0007】
このようなプロピレン系ブロック共重合体の製造方法によれば、剛性は保ちつつも耐衝撃性に優れるプロピレン系ブロック共重合体を製造することができる。この理由について本発明者らは以下のように推測する。一般的には、プロピレン系ブロック共重合体の剛性は、プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとの共重合比率、重合体成分(1)の融点、重合体成分(1)と重合体成分(2)の比率等によって概ね決定されるものである。そして、これらの比率を変化させて剛性を高めると、通常、耐衝撃性は低下する。一方、本発明は、ルイス酸化合物(D)及び酸素原子含有電子供与性化合物(E)を、重合工程(I)の開始後から、重合工程(II)の終了前までの間に反応系内に添加することを特徴としている。このように、ルイス酸化合物(D)、及び酸素原子含有電子供与性化合物(E)を反応系内に添加することで、ドナー成分である電子供与性化合物(C)が、酸素原子含有電子供与性化合物(E)と入れ替わる。このことにより、重合工程(II)におけるポリマーの構造を好適なものとすることができ、プロピレン系ブロック共重合体の耐衝撃性が優れたものとなる。本発明の製造方法によれば、プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとの共重合比率、重合体成分(1)の融点、重合体成分(1)と重合体成分(2)の比率等を変化させることなく、耐衝撃性を高めることができるため、剛性は保ちつつも耐衝撃性に優れるプロピレン系ブロック共重合体を製造することができる。
【0008】
ルイス酸化合物(D)及び酸素原子含有電子供与性化合物(E)は、重合工程(I)の後、かつ、重合工程(II)の前に、ルイス酸化合物(D)、酸素原子含有電子供与性化合物(E)の順で反応系内に添加することが好ましい。
【0009】
ルイス酸化合物(D)及び酸素原子含有電子供与性化合物(E)をこのように反応系内に添加することで、電子供与性化合物(C)と酸素原子含有電子供与性化合物(E)が円滑に入れ替わるため、プロピレン系ブロック共重合体の耐衝撃性を更に高めることができる。
【0010】
酸素原子含有電子供与性化合物(E)は、アルコキシ基含有芳香族炭化水素化合物であり、当該アルコキシ基含有芳香族炭化水素化合物のアルコキシ基は、エトキシ基を含有することが好ましい。酸素原子含有電子供与性化合物(E)として、このような化合物を用いることで、プロピレン系ブロック共重合体の耐衝撃性を更に高めることができる。
【0011】
チタン原子、マグネシウム原子及びハロゲン原子を必須成分とする固体触媒成分(A)は、Si−O結合を有する有機ケイ素化合物の存在下において、下記一般式(i)で表されるチタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元することにより得られる固体触媒成分前駆体(a)と、ハロゲン含有化合物(b)と、電子供与体(c)と、を接触させて得られる固体触媒成分であることが好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
ここで、式(i)中、aは1〜20の数を表し、Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。Xはハロゲン原子又は炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基を表し、全てのXは同一であっても異なっていてもよい。
【0014】
固体触媒成分(A)として、このような化合物を用いることで、剛性の高いプロピレン系ブロック共重合体を効率良く得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、剛性は保ちつつも耐衝撃性に優れるプロピレン系ブロック共重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法は、チタン原子、マグネシウム原子及びハロゲン原子を必須成分とする固体触媒成分(A)と、有機アルミニウム化合物(B)と、電子供与性化合物(C)とを接触させて得られる重合用触媒の存在下で、プロピレンを単独重合又はプロピレンとプロピレン以外のオレフィンとを共重合させて、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が90重量%以上である重合体成分(1)を生成させる重合工程(I)を行った後、プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとを更に共重合させて、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が10〜90重量%である重合体成分(2)を生成させる重合工程(II)を行うプロピレン系ブロック共重合体の製造方法であって、ルイス酸化合物(D)及び酸素原子含有電子供与性化合物(E)を、重合工程(II)の間、又は、重合工程(II)の前に反応系内に添加するものである。
【0018】
固体触媒成分(A)は、チタン原子、マグネシウム原子及びハロゲン原子を含む限りにおいて特に制限はなく、公知の触媒を用いることができる。このような固体触媒成分(A)としては、例えば、特公昭46−34092号公報、特公昭47−41676号公報、特公昭55−23561号公報、特公昭57−24361号公報、特公昭52−39431号公報、特公昭52−36786号公報、特公平1−28049号公報、特公平3−43283号公報、特開平4−80044号公報、特開昭55−52309号公報、特開昭58−21405号公報、特開昭61−181807号公報、特開昭63−142008号公報、特開平5−339319号公報、特開昭54−148093号公報、特開平4−227604号公報、特開平6−2933号公報、特開昭64−6006号公報、特開平6−179720号公報、特公平7−116252号公報、特開平8−134124号公報、特開平9−31119号公報、特開平11−228628号公報、特開平11−80234号公報、特開平11−322833号公報及び特開平2004−182981号公報に記載された固体触媒成分が挙げられる。
【0019】
固体触媒成分(A)は、チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子の他に、電子供与体を更に含有することが好ましい。当該電子供与体としては、後述の有機酸のエステル類もしくはエーテル類が好ましい。
【0020】
固体触媒成分(A)は、例えば、下記(1)〜(5)の方法によって製造される。
【0021】
(1)ハロゲン化マグネシウム化合物とチタン化合物とを接触させる方法。
(2)ハロゲン化マグネシウム化合物と、電子供与体と、チタン化合物とを接触させる方法。
(3)ハロゲン化マグネシウム化合物とチタン化合物とを電子供与性溶媒に溶解させて溶液を得、次いで、該溶液を担体物質に含浸させる方法。
(4)ジアルコキシマグネシウム化合物と、ハロゲン化チタン化合物と、電子供与体とを接触させる方法。
(5)マグネシウム原子、チタン原子および炭化水素オキシ基を含有する固体成分と、ハロゲン化化合物と、電子供与体および/または有機酸ハライドとを接触させる方法。
【0022】
(1)〜(5)の方法の中でも、マグネシウム原子、チタン原子および炭化水素オキシ基を含有する固体成分と、ハロゲン化化合物と、電子供与体および/または有機酸ハライドとを接触させる方法(5)が好ましい。
【0023】
具体的には、固体触媒成分(A)は、Si−O結合を有する有機ケイ素化合物の存在下において、下記一般式(i)で表されるチタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元することにより得られる固体触媒成分前駆体(a)と、ハロゲン含有化合物(b)と、電子供与体(c)と、を接触させて得られる固体触媒成分であることが好ましい。
【0024】
【化2】

【0025】
ここで、式(i)中、aは1〜20の数を表し、Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。Xはハロゲン原子又は炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基を表し、全てのXは同一であっても異なっていてもよい。
【0026】
Si−O結合を有する有機ケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリエトキシエチルシラン、ジエトキシジエチルシラン、エトキシトリエチルシラン、テトライソプロポキシシラン、ジイソプロポキシ−ジイソプロピルシラン、テトラプロポキシシラン、ジプロポキシジプロピルシラン、テトラブトキシシラン、ジブトキシジブチルシラン、ジシクロペントキシジエチルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、シクロヘキシロキシトリメチルシラン、フェノキシトリメチルシラン、テトラフェノキシシラン、トリエトキシフェニルシラン、ヘキサメチルジシロヘキサン、ヘキサエチルジシロヘキサン、ヘキサプロピルジシロキサン、オクタエチルトリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルヒドロポリシロキサン、フェニルヒドロポリシロキサン等を例示することができる。
【0027】
有機マグネシウム化合物としては、例えば、メチルマグネシウムクロライド、エチルマグネシウムクロライド、プロピルマグネシウムクロライド、イソプロピルマグネシウムクロライド、ブチルマグネシウムクロライド、sec−ブチルマグネシウムクロライド、tert−ブチルマグネシウムクロライド、イソアミルマグネシウムクロライド、ヘキシルマグネシウムクロライド、オクチルマグネシウムクロライド、2−エチルヘキシルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムクロライド、ベンジルマグネシウムクロライドが挙げられる。
【0028】
ハロゲン含有化合物(b)とは、ハロゲンを含有する化合物のことである。ハロゲン含有化合物(b)としては、例えば、四塩化チタン、四臭化チタン、四ヨウ化チタン等のテトラハロゲン化チタン、メトキシチタントリクロライド、エトキシチタントリクロライド、ブトキシチタントリクロライド、フェノキシチタントリクロライド、エトキシチタントリブロマイド等のトリハロゲン化アルコキシチタン、ジメトキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジクロライド、ジブトキシチタンジクロライド、ジフェノキシチタンジクロライド、ジエトキシチタンジブロマイド等のジハロゲン化ジアルコキシチタンテトラクロロメタン、トリクロロメタン、ジクロロメタン、モノクロロメタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、テトラクロロシラン、トリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ノルマルプロピルトリクロロシラン、ノルマルブチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ベンジルトリクロロシラン、パラトリルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、ジクロロシラン、メチルジクロロシラン、エチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、メチルエチルジクロロシラン、モノクロロシラン、トリメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、テトラクロロゲルマン、トリクロロゲルマン、メチルトリクロロゲルマン、エチルトリクロロゲルマン、フェニルトリクロロゲルマン、ジクロロゲルマン、ジメチルジクロロゲルマン、ジエチルジクロロゲルマン、ジフェニルジクロロゲルマン、モノクロロゲルマン、トリメチルクロロゲルマン、トリエチルクロロゲルマン、トリノルマルブチルクロロゲルマン、テトラクロロ錫、メチルトリクロロ錫、ノルマルブチルトリクロロ錫、ジメチルジクロロ錫、ジノルマルブチルジクロロ錫、ジイソブチルジクロロ錫、ジフェニルジクロロ錫、ジビニルジクロロ錫、メチルトリクロロ錫、フェニルトリクロロ錫、ジクロロ鉛、メチルクロロ鉛、フェニルクロロ鉛等が挙げられる。
【0029】
電子供与体(c)は、電子供与性を示す化合物である。電子供与体(c)としては、フタル酸、フタル酸モノエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸メチルエチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジノルマルプロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジノルマルブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ジノルマルヘプチル、フタル酸ジイソヘプチル、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジノルマルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジシクロヘキシル、フタル酸ジフェニル、フタル酸ジクロライド等のフタル酸誘導体、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−ジメチルオクチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ノルマルヘプチル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン及び2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン等の1,3−ジエーテル化合物、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−n−アミルエーテル、ジイソアミルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−ブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル等のジアルキルエーテル化合物が挙げられる。
【0030】
固体触媒成分(A)として、このような化合物を用いることで、剛性の高いプロピレン系ブロック共重合体を効率良く得ることができる。
【0031】
有機アルミニウム化合物(B)とは、分子内に少なくとも一つのAl−炭素結合を有する化合物のことである。有機アルミニウム化合物(B)としては、例えば、下記一般式(b−1)及び下記式(b−2)で表される化合物が挙げられる。
【0032】
AlY3‐w …(b−1)
Al−O−AlR …(b−2)
【0033】
なお、式(b−1)中、R〜Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、Yはハロゲン原子、水素原子又はアルコキシ基を表し、wは2≦w≦3を満足する数である。
【0034】
下記一般式(b−1)又は下記式(b−2)で表される化合物としては、例えば、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジエチルアルミニウムハイドライド、ジイソブチルアルミニウムハイドライド等のジアルキルアルミニウムハイドライド、ジエチルアルミニウムクロライド等のジアルキルアルミニウムハライド、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物のようなトリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、テトラエチルジアルモキサン、テトラブチルジアルモキサン等のアルキルアルモキサンが挙げられる。
【0035】
有機アルミニウム化合物(B)は、重合活性と重合体成分(1)の立体規則性の観点からは、トリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、または、アルキルアルモキサンが好ましく、とりわけトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物またはテトラエチルジアルモキサンであることが好ましい。
【0036】
電子供与性化合物(C)とは、電子供与性元素を含む化合物のことである。電子供与性化合物(C)としては、酸素含有化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物、硫黄含有化合物が挙げられ、なかでも酸素含有化合物または窒素含有化合物が好ましく、特に酸素含有化合物が好ましい。このような化合物を用いることで、立体規則性の高い重合体成分(1)を含有するプロピレン系ブロック共重合体を効率良く得ることが可能となる。
【0037】
酸素含有化合物としては、アルコキシケイ素類、エーテル類、エステル類、ケトン類などが挙げられる。重合活性と重合体成分(1)の立体規則性の観点からは、アルコキシケイ素類またはエーテル類が好ましい。
【0038】
アルコキシケイ素類としては、例えば、下記一般式(c−1)で表される化合物が挙げられる。
【0039】
Si(OR4‐r …(c−1)
【0040】
式(c−1)中、Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基、水素原子又はヘテロ原子含有置換基を表し、Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、rは0≦r<4を満足する数を表す。全てのR及び全てのRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0041】
炭素原子数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、tert−アミル基、等の分岐鎖状アルキル基、シクロペンンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、シクロペンテニル基等のシクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基が挙げられる。Rとして炭素原子数1〜20の炭化水素基を用いる場合、一般式(c−1)で表されるアルコキシケイ素化合物は、ケイ素原子と直接結合した炭素原子が2級もしくは3級炭素であるRを少なくとも1つ有することが好ましい。
【0042】
ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子が挙げられる。ヘテロ原子含有置換基としては、具体的には、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基、エチルn−プロピルアミノ基、ジn−プロピルアミノ基、ピロリル基、ピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジル基、パーヒドロインドリル基、パーヒドロイソインドリル基、パーヒドロキノリル基、パーヒドロイソキノリル基、パーヒドロカルバゾリル基、パーヒドロアクリジニル基、フリル基、ピラニル基、パーヒドロフリル基、チエニル基等が挙げられる。Rとしてヘテロ原子含有置換基を用いる場合、一般式(c−1)で表されるアルコキシケイ素化合物は、下記一般式(c−2)で表されるケイ素化合物であることが好ましい。
【0043】
(R10N)Si(OR11 …(c−2)
【0044】
ここで、Rは炭素原子数1〜12の炭化水素基、R10は炭素原子数1〜12の炭化水素基又は水素、R11は炭素原子数1〜6の炭化水素基を表す。
【0045】
一般式(c−1)で表されるアルコキシケイ素化合物としては、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジ−tert−ブチルジメトキシシラン、tert−ブチルメチルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−ブチルジメトキシシラン、tert−アミルメチルジメトキシシラン、tert−アミルエチルジメトキシシラン、tert−アミルnプロピルジメトキシシラン、tert−アミル−n−ブチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、tert−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、ジシクロブチルジメトキシシラン、シクロブチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロブチルイソブチルジメトキシシラン、シクロブチル−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソプロピルジメトキシシラン、シクロペンチルイソブチルジメトキシシラン、シクロペンチル−tert−ブチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソプロピルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシル−tert−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルシクロペンチルジメトキシシラン、シクロヘキシルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、フェニルイソプロピルジメトキシシラン、フェニルイソブチルジメトキシシラン、フェニル−tert−ブチルジメトキシシラン、フェニルシクロペンチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソブチルジエトキシシラン、ジ−tert−ブチルジエトキシシラン、tert−ブチルメチルジエトキシシラン、tert−ブチルエチルジエトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジエトキシシラン、tert−ブチル−n−ブチルジエトキシシラン、tert−アミルメチルジエトキシシラン、tert−アミルエチルジエトキシシラン、tert−アミル−n−プロピルジエトキシシラン、tert−アミル−n−ブチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルエチルジエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、2−ノルボルナンメチルジメトキシシラン、ビス(パーヒドロキノリノ)ジメトキシシラン、ビス(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)(パーヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)メチルジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)メチルジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)エチルジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)エチルジメトキシシラン、(パーヒドロキノリノ)(n−プロピル)ジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)(n−プロピル)ジメトキシシラン、((パーヒドロキノリノ)(tert−ブチル)ジメトキシシラン、(パーヒドロイソキノリノ)(tert−ブチル)ジメトキシシラン、ジメチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリn−プロポキシシラン、ジn−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチルn−プロピルアミノトリエトキシシラン、t−ブチルアミノトリエトキシシラン、エチルn−プロピルアミノトリエトキシシラン、エチルイソプロピルアミノトリエトキシシランおよびメチルエチルアミノトリエトキシシランが挙げられる。
【0046】
エーテル類としては、例えば、ジアルキルエーテル、下記一般式(c−3)で表されるジエーテル化合物及び環状エーテル化合物が挙げられる。なお、エーテル類は、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
【化3】

【0048】
一般式(c−3)中、R12及びR15はそれぞれ独立に炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは脂環式のアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。R13及びR14はそれぞれ独立に炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状若しくは脂環式のアルキル基、アリール基、アラルキル基又は水素原子を表す。
【0049】
上述のエーテル類の具体例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−ブチルエーテル、メチルシクロヘキシルエーテル、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ビス(シクロヘキシルメチル)−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−3,7−ジメチルオクチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシルメチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−ヘプチル−2−ペンチル−1,3−ジメトキシプロパン等を挙げることができる。
【0050】
なお、環状エーテル化合物とは、環系に少なくとも一つの−C−O−C−結合を有する複素環式化合物であり、具体例としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、2,5−ジメトキシテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ヘキサメチレンオキシド、1,3−ジオキセパン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、2−メチル−1,3−ジオキソラン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、2,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、フラン、2,5−ジメチルフラン及びs−トリオキサンが挙げられる。
【0051】
窒素含有化合物としては、例えば、2,6−ジメチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの2,6−置換ピペリジン類、2,5−置換ピペリジン類、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルメチレンジアミンなどの置換メチレンジアミン類、1,3−ジベンジルイミダゾリジンなどの置換イミダゾリジン類などが挙げられる。
【0052】
リン含有化合物としては、例えば、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル等のホスホン酸エステル類、ジメトキシフェニルホスフィン、メトキシジフェニルホスフィン、ジエトキシフェニルホスフィン、エトキシフェニルホスフィン等のホスフィン酸エステル類などが挙げられる。
【0053】
硫黄含有化合物としては、例えば、チオフェン、2,5−ジメチルチオフェン、2,5−ジエチルチオフェン、テトラヒドロチオフェン、2,5−ジメチルテトラヒドロチオフェン、2,5−ジエチルテトラヒドロチオフェン等のチオフェン類が挙げられる。
【0054】
重合用触媒を得る場合の、固体触媒成分(A)と、有機アルミニウム化合物(B)と、電子供与性化合物(C)との接触方法は、特に限定されないが、例えば、下記(6)〜(8)の方法が挙げられる。
(6)重合槽に供給する前に上記各成分を混合して接触させる方法。
(7)上記各成分を別々に重合槽に供給して重合槽中で接触させる方法。
(8)重合槽に供給する前に上記各成分の一部を混合して接触させ、それと残りの成分を別々に重合槽に供給して接触させる方法。
【0055】
なお、(A)〜(C)の各成分を溶媒で希釈してから接触させてもよく、希釈せずに接触させてもよい。
【0056】
また、上記の方法(6)における重合槽への触媒の供給や、方法(7)及び(8)における重合槽への成分の供給は、通常、窒素やアルゴンのような不活性ガス雰囲気下、かつ、水分のない状態で実施される。
【0057】
重合用触媒は、上述のように(A)〜(C)の各成分をそのまま接触させる方法により準備してもよいが、例えば、固体触媒成分(A)及び有機アルミニウム化合物(B)の存在下、少量のオレフィンを予備重合させて予備重合触媒を得た後に、必要量の(A)〜(C)成分と、当該予備重合触媒を接触させる方法によって準備してもよい。
【0058】
予備重合の方法は特に限定されないが、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン及びトルエンのような不活性炭化水素を溶媒とするスラリー重合法を用いることが好ましい。なお、当該溶媒の一部または全部を、液状のオレフィンに変えてもよい。
【0059】
予備重合における有機アルミニウム化合物(B)の使用量は、固体触媒成分(A)中のチタン原子1モル当たり、通常0.5〜700モル、好ましくは0.8〜500モル、特に好ましくは1〜200モルである。
【0060】
予備重合されるオレフィンの量は、固体触媒成分(A)1g当たり通常0.01〜1000g、好ましくは0.05〜500g、特に好ましくは0.1〜200gである。
【0061】
上記スラリー重合法におけるスラリー濃度は、好ましくは1〜500g−固体触媒成分(A)/リットル−溶媒、特に好ましくは3〜300g−固体触媒成分(A)/リットル−溶媒である。予備重合温度は、好ましくは−20〜100℃、特に好ましくは0〜80℃である。予備重合における気相部のオレフィンの分圧は、好ましくは0.01〜2MPa、特に好ましくは0.1〜1MPaであるが、予備重合の圧力や温度において液状であるオレフィンについては、この限りではない。予備重合時間は特に制限されず、好ましくは通常、2分間から15時間である
【0062】
予備重合において、固体触媒成分(A)、有機アルミニウム化合物(B)及びオレフィンを重合槽へ供給する方法としては、固体触媒成分(A)と有機アルミニウム化合物(B)とを供給した後、オレフィンを供給する方法や、固体触媒成分(A)とオレフィンとを供給した後、有機アルミニウム化合物を供給する方法を例示することができる。オレフィンを重合槽へ供給する方法としては、重合槽内の圧力を所定の圧力に維持するようにオレフィンを順次供給する方法や、オレフィンの所定量の全量を一括して供給する方法を例示することができる。なお、予備重合で得られるオレフィン重合体の分子量を調節するために、水素のような連鎖移動剤を用いてもよい。
【0063】
また、必要に応じて、予備重合時に、電子供与性化合物(C)を反応系に添加してもよい。予備重合で用いられる電子供与性化合物(C)の量は、固体触媒成分(A)中に含まれるチタン原子1モルに対して、通常0.01〜400モル、好ましくは0.02〜200モル、特に好ましくは、0.03〜100モルであり、有機アルミニウム化合物1モルに対して、通常0.003〜5モル、好ましくは0.005〜3モル、特に好ましくは0.01〜2モルである。
【0064】
予備重合において、電子供与性化合物(C)を重合槽へ供給する方法は特に制限されない。このような方法としては、例えば、電子供与性化合物(C)のみを供給する方法や、電子供与性化合物(C)と有機アルミニウム化合物(B)との接触物を供給する方法、を例示することができる。予備重合で使用されるオレフィンは、重合工程(I)及び(II)で使用されるオレフィンと同一であっても異なっていてもよい。
【0065】
重合工程(I)は、上述のように準備した重合用触媒の存在下で、プロピレンを単独重合又はプロピレンとプロピレン以外のオレフィンとを共重合させて重合体成分(1)を生成させる工程である。ここで、重合体成分(1)中のプロピレンに基づく単量体単位の含有量は、重合体成分(1)の総重量に対して90重量%以上、好ましくは95重量%以下となるように調製される。なお、重合体成分(1)は、プロピレンの単独重合体であることが特に好ましい。プロピレンに基づく単量体単位の含有量をこのような範囲とすることで、剛性などのプロピレン系ブロック共重合体の物性を所望のものに近づけることができる。なお、重合工程(I)及び後述の重合工程(II)に用いられるプロピレン以外のオレフィンとしては、例えば、エチレン及び炭素原子数4〜10のα−オレフィンが挙げられる。また、重合体成分(1)の示差走査熱量計(DSC)によって測定される融点(Tm)は、160℃以上であることが好ましい。このような融点(Tm)を有する重合体成分(1)から形成されたプロピレン系ブロック共重合体は、成形材料として用いた場合に所望の剛性を有するものとなる。
【0066】
重合工程(II)は、重合工程(I)によって得た重合体成分(1)に、プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとを更に共重合させて、重合体成分(2)を生成させる工程である。この工程により、重合体成分(1)及び(2)を含有するプロピレン系ブロック共重合体を製造することができる。ここで、重合体成分(2)中のプロピレンに基づく単量体単位の含有量は、重合体成分(2)の総重量に対して10〜90重量%、好ましくは30〜70重量%となるように調整される。また、プロピレン系ブロック共重合体の総重量に対する、重合体成分(2)の含有量は、10〜50重量%とすることが好ましく、15〜40重量%とすることが更に好ましい。重合体成分(2)中のプロピレンに基づく単量体単位の含有量及びプロピレン系ブロック共重合体中の重合体成分(2)の含有量をこのような範囲とすることで、剛性などのプロピレン系ブロック共重合体の物性を所望のものに近づけることができる。
【0067】
なお、重合体成分(2)の、極限粘度([η])は、0.1〜10dl/gであり、好ましくは1〜8dl/gであり、より好ましくは2〜6dl/gである。ここで、極限粘度([η])は、135℃のテトラリン中で測定されるものをいう。
【0068】
さらに、重合体成分(2)の示差走査熱量計(DSC)によって測定されるガラス転移温度(Tg)は、−50℃以下であることが好ましい。また、プロピレンと共重合されるプロピレン以外のオレフィンがエチレンの場合には、13C核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR)によって測定されるエチレン−プロピレン結合部のメソピーク強度に対するラセミピーク強度比が0.01〜0.7であることが好ましい。
【0069】
重合工程(I)及び(II)において用いられる有機アルミニウム化合物(B)の使用量は、固体触媒成分(A)中のチタン原子1モル当たり、通常1〜1000モル、好ましくは5〜600モルである。
【0070】
重合工程(I)及び(II)において用いられる電子供与性化合物(C)の使用量は、固体触媒成分(A)中に含まれるチタン原子1モルに対し、通常0.1〜2000モル、好ましくは0.3〜1000モル、特に好ましくは、0.5〜800モルであり、有機アルミニウム化合物(B)1モルに対し、通常0.001〜5モル、好ましくは0.005〜3モル、特に好ましくは0.01〜1モルである。
【0071】
重合工程(I)及び(II)における重合温度は、通常−30〜300℃、好ましくは20〜180℃、より好ましくは50〜95℃である。重合圧力は特に制限されず、工業的かつ経済的であるという観点から、一般に常圧〜10MPa、好ましくは0.2〜5MPa程度である。重合形式はバッチ式でも連続式でもよい。重合方法として、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのような不活性炭化水素溶媒を用いるスラリー重合法、該溶媒を用いる溶液重合法、重合温度において液状であるオレフィンを媒体とするバルク重合法、および、気相重合法を例示することができる。良好な粉体性状を得る観点からは、重合工程(II)は気相重合法であることが好ましい。
【0072】
また、重合工程(I)及び(II)において、水素のような連鎖移動剤を用いることで、得られるオレフィン重合体の分子量を調節してもよい。
【0073】
そして、本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法においては、ルイス酸化合物(D)及び酸素原子含有電子供与性化合物(E)を、重合工程(II)の間、又は、重合工程(II)の前に反応系内に添加する。このような操作を行うことによって、剛性は保ちつつも耐衝撃性に優れるプロピレン系ブロック共重合体を製造することができる。
【0074】
ルイス酸化合物(D)と酸素原子含有電子供与性化合物(E)の添加順序は、ルイス酸化合物(D)と酸素原子含有電子供与性化合物(E)を同時に添加するか、又はルイス酸化合物(D)を添加後に酸素原子含有電子供与性化合物(E)を添加することが好ましい。
【0075】
添加方法はバッチ式であっても連続式であってもよい。ルイス酸化合物(D)と酸素原子含有電子供与性化合物(E)は、そのまま用いても良いし、不活性炭化水素溶媒等で希釈して用いても良い。
【0076】
なお、ルイス酸化合物(D)と酸素原子含有電子供与性化合物(E)を添加するタイミングとしては、重合工程(II)の開始時であってもよいし、重合工程(I)の終了直前であってもよい。プロピレン系ブロック共重合体の耐衝撃性を更に向上させる観点からは、重合工程(I)の後、かつ、重合工程(II)の前に、ルイス酸化合物(D)、酸素原子含有電子供与性化合物(E)の順で反応系内に添加することが好ましい。
【0077】
ルイス酸化合物とは、非共有電子対を受け取る能力をもつ化合物であり(「講座有機反応機構1 酸と塩基」、1ページ、井本稔編、岡本善之著、東京化学同人)、例えば、ハロゲン化亜鉛、ハロゲン化チタン、ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化スズ等のハロゲン化金属化合物、アルコキシチタン、アルコキシアルミニウム等のアルコキシ金属化合物等が挙げられる。
【0078】
本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法においては、ルイス酸化合物(D)としてハロゲン元素含有有機アルミニウム化合物が使用される。ハロゲン元素含有有機アルミニウム化合物は、Al−炭素結合及びAl−ハロゲン結合を、少なくともそれぞれ一つ分子内に有するものであり、例えば、下記一般式(d−1)で表される化合物が挙げられる。
【0079】
AlX …(d−1)
【0080】
式(d−1)中、Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子、Yは水素原子またはアルコキシ基を表し、aとbは1≦a≦2、cは0≦c≦1を満足する数であり、a+b+c=3である。
【0081】
ハロゲン元素含有有機アルミニウム化合物の具体例としては、例えば、ジメチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムアイオダイド等のジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムジアイオダイド等のアルキルアルミニウムジハライド、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロライドとの混合物のようなトリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物が例示できる。
【0082】
ルイス酸化合物(D)の使用量は、固体触媒成分(A)中のチタン原子1モル当たり、通常0.001〜10モル、好ましくは0.01〜1モルである。(D)成分の使用量をこのような範囲とすることで、プロピレン系ブロック共重合体の耐衝撃性を更に向上させることができる。
【0083】
酸素原子含有電子供与性化合物(E)は電子供与部位の官能基に酸素原子を含有する化合物である。このような官能基としてはアルコキシ基、エーテル基、エステル基、ケトン基が挙げられ、プロピレン系ブロック共重合体の耐衝撃性を高める観点からは、酸素原子含有電子供与性化合物(E)は、アルコキシ基含有芳香族炭化水素化合物であることが好ましい。
【0084】
アルコキシ基含有芳香族炭化水素化合物は、分子内にアルコキシ基を含有する芳香族炭化水素化合物である。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示されるが、アルコキシ基含有芳香族炭化水素化合物のアルコキシ基は、エトキシ基を含有することが好ましい。酸素原子含有電子供与性化合物(E)として、このような化合物を用いることで、プロピレン系ブロック共重合体の耐衝撃性を更に高めることができる。
【0085】
アルコキシ基含有芳香族炭化水素化合物の具体例としては、例えば、1,2−ジエトキシベンゼン、フェネトール、2−エトキシアニソール、1,2−ジエトキシ−3−メチルベンゼン、1,2−ジエトキシ−3−エチルベンゼン、1,2−ジエトキシ−3−フルオロベンゼン、1,2−ジエトキシ−3−クロロベンゼン、1,2−ジエトキシ−3−メトキシベンゼン、1,2,3−トリエトキシベンゼン、1,2−ジエトキシ−4−メチルベンゼン、1,2−ジエトキシ−4−エチルベンゼン、1,2,4−トリエトキシベンゼン、1,2−ジエトキシ−4−フルオロベンゼン、1,2−ジエトキシ−4−クロロベンゼンが挙げられる。
【0086】
酸素原子含有電子供与性化合物(E)の使用量は、固体触媒成分(A)中に含まれるチタン原子1モルに対し、通常0.001〜10モル、好ましくは0.01〜5モル、特に好ましくは、0.01〜1モルであり、ルイス酸化合物(D)1モルに対し、通常0.1〜50モル、好ましくは0.5〜20モル、特に好ましくは1〜10モルである。
【実施例】
【0087】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0088】
まず、実施例及び比較例における各物性値の測定方法を以下に示す。
【0089】
[物性値の測定方法]
(1)極限粘度([η]、単位:dl/g);
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2及び0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって推算した。なお、溶媒としてはテトラリンを用い、温度は135℃で測定した。
【0090】
(1−1)プロピレン系ブロック共重合体の極限粘度;
(1−1a)重合体成分(1)の極限粘度([η]P);
重合体成分(1)の極限粘度([η]P)は、重合工程(I)の後に重合槽内より重合体パウダーを取り出し、取り出した重合パウダーの極限粘度を上記(1)の方法で測定することにより求めた。
【0091】
(1−1b)重合体成分(2)の極限粘度([η]EP);
重合体成分(2)の極限粘度([η]EP)は、重合体成分(1)の極限粘度([η]P)とプロピレン系ブロック共重合体全体の極限粘度([η]T)をそれぞれ上記(1)の方法で測定し、重合体成分(2)のプロピレン系ブロック共重合体全体に対する重量比率(X)を用いて次式から計算した。なお、重量比率(X)は後述の(2)の測定方法によって求めた。
[η]EP=[η]T/X−(1/X−1)[η]P;
【0092】
(2)重合体成分(2)のプロピレン系ブロック共重合体全体に対する重量比率(X、単位:重量%)及び重合体成分(2)中のエチレン含量:(C2´、単位:重量%);
10mmΦの試験管中で約200mgのプロピレン系ブロック共重合体を3mlのオルソジクロロベンゼンに均一に溶解させて試料を調整し、その試料を13C−NMRスペクトルで測定した。13C−NMRスペクトルでの測定条件を以下に示す。
測定温度:135℃;
パルス繰り返し時間:10秒;
パルス幅:45°;
積算回数:2500回;
【0093】
上述のように測定したプロピレン系ブロック共重合体の13C−NMRスペクトルの結果を用い、Kakugoらの報告(Macromolecules1982年、15号、1150ページ〜1152ページ)に記載の方法に準拠して、重合体成分(2)のプロピレン系ブロック共重合体全体に対する重量比率(X、単位:重量%)及び重合体成分(2)中のエチレン含量:(C2´、単位:重量%)求めた。
【0094】
(3)重合体成分(2)のガラス転移温度(Tg、単位:℃);
示差走査熱量測定装置(TAインスツルメンツ社製 DSC Q100)を使用し、プロピレン系ブロック共重合体約10mgを窒素雰囲気下で200℃で溶融させた後、200℃で5分間保持し、次いで、10℃/分の降温速度で−90℃まで降温した後、10℃/分で昇温する際の吸熱曲線からJIS K7121に規定の方法で測定した。
【0095】
(4)重合体成分(1)の融点(Tm、単位:℃);
上記(3)で測定された吸熱ピークの内、150℃〜170℃の範囲に現れるピークをTmとした。
【0096】
(5)重合体成分(1)の20℃キシレン可溶部量(CXS、単位:重量%);
重合工程(I)の後に重合槽内より重合体成分(1)を重合体パウダーとして取り出し、20℃の冷キシレンに可溶な分量を百分率(重量%)で表した。
【0097】
[実施例1〜7、比較例1〜4]
以下に示す方法によりプロピレン系ブロック共重合体を製造し、上述の物性について測定を行った。
【0098】
[実施例1]
内容積3リットルの撹拌機付きステンレス製オートクレーブを減圧乾燥させた後、アルゴン置換を行い、冷却した。その後、当該オートクレーブ内を真空とした。
【0099】
(B)成分としてトリエチルアルミニウム4.4ミリモル、(C)成分としてtert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン0.44ミリモル及び(A)成分として特開2004−182981号公報の実施例1(2)に記載の固体触媒成分10.6ミリグラムを準備し、準備した(A)〜(C)成分をガラスチャージャー内のヘプタン中で接触させた。
【0100】
接触させた(A)〜(C)成分をオートクレーブ内に一括で投入した。次に、液化プロピレン780gをオートクレーブ内に供給し、更に、水素1MPaを供給した。その後、オートクレーブを80℃まで昇温し重合を開始した。
【0101】
重合開始10分後、未反応プロピレンを重合系外へパージした。その後、オートクレーブ内をアルゴンで置換し、生成した重合体成分(1)(以下、場合によりP部と称す。)を少量サンプリングした。サンプリングしたポリマーの極限粘度[η]Pは0.94dl/gであった。
【0102】
次いで、上記オートクレーブを減圧し、(D)成分としてエチルアルミニウムジクロライド(EtAlCl)0.33ミリモルとヘプタン20ミリリットルをガラスチャージャー内で混合してオートクレーブ内へ投入し、30分攪拌した。その後、(E)成分として1,2−ジエトキシベンゼン 0.88ミリモルとヘプタン20ミリリットルをガラスチャージャー内で混合してオートクレーブ内へ投入し、30分攪拌した。
【0103】
さらに、上記3リットルオートクレーブと連結した内容積24リットルのボンベ内を真空にして、プロピレン310g、エチレン160gを添加した(プロピレンに対するエチレンの量比=0.77モル/モル)後80℃に昇温することで調製した混合ガスを上記3リットルオートクレーブへ連続的にフィードし、重合圧力を0.8MPaとして1時間重合を行った。1時間後オートクレーブ内のガスをパージして重合を終了し、生成した重合体を60℃で5時間減圧乾燥して215gの重合パウダーを得た。得られたポリマーの極限粘度[η]Tは1.85dl/gであり、分析の結果、重合体成分(2)(以下、場合によりEP部と称す。)の含量は26.0重量%であった。これにより、後段部(EP部)で生成したポリマーの極限粘度[η]EPは4.44dl/gと推算される。また、P部のTmは161.8℃、EP部でのエチレン含量は54重量%、EP部のTgは−57.7℃であった。重合条件及びその結果のまとめを、表1及び2に示す。
【0104】
[比較例1]
(A)成分の使用量を13.3ミリグラムとしたこと、(D)成分としてのエチルアルミニウムジクロライドと(E)成分としての1,2−ジエトキシベンゼンを添加しなかったこと、及び、重合工程(II)すなわちEP部を生成させるための重合時間を35分としたこと以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。重合条件及びその結果のまとめを、表1及び2に示す。
【0105】
[比較例2]
(A)成分の使用量を9.6ミリグラムとしたこと、3リットルオートクレーブと連結した内容積24リットルのボンベに添加するプロピレンに対するエチレンの量比を1.4モル/モルとしたこと、及び、重合工程(II)すなわちEP部を生成させるための重合時間を1.5時間としたこと以外は、比較例1と同様の方法で重合を行った。重合条件及びその結果のまとめを、表1及び2に示す。
【0106】
[比較例3]
(A)成分の使用量を7.3ミリグラムとしたこと、(D)成分を添加しなかったこと、及び、重合工程(II)すなわちEP部を生成させるための重合時間を30分としたこと以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。重合条件及びその結果のまとめを、表1及び2に示す。
【0107】
[比較例4]
(A)成分の使用量を11.4ミリグラムとしたこと、(E)成分として1,2−ジエトキシベンゼンの代わりに2,6−ルチジンを用いたこと、3リットルオートクレーブと連結した内容積24リットルのボンベに添加するプロピレンとエチレンの量比を0.57モル/モルとしたこと、及び、重合工程(II)すなわちEP部を生成させるための重合時間を3時間としたこと以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。重合条件及びその結果のまとめを、表1及び2に示す。
【0108】
[実施例2]
(A)成分の使用量を8.7ミリグラムとしたこと、(E)成分として1,2−ジエトキシベンゼンの代わりに1,2−ジメトキシベンゼンを使用したこと、及び、重合工程(II)すなわちEP部を生成させるための重合時間を5時間としたこと以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。重合条件及びその結果のまとめを、表1及び2に示す。
【0109】
[実施例3]
(A)成分の使用量を9.1ミリグラムとしたこと、3リットルオートクレーブと連結した内容積24リットルのボンベに添加するプロピレンとエチレンの量比を0.54モル/モルとしたこと、及び、重合工程(II)すなわちEP部を生成させるための重合時間を50分としたこと以外は、実施例1と同様の方法で重合を行った。重合条件及びその結果のまとめを、表1及び2に示す。
【0110】
[実施例4]
(A)成分の使用量を12.5ミリグラムとしたこと、(E)成分の1,2−ジエトキシベンゼン使用量を0.75ミリモルとしたこと、及び、重合工程(II)すなわちEP部を生成させるための重合時間を2時間としたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合を行った。重合条件及びその結果のまとめを、表1及び2に示す。
【0111】
[実施例5]
(A)成分の使用量を10.5ミリグラムとしたこと、(E)成分の1,2−ジエトキシベンゼン使用量を0.50ミリモルとしたこと、(E)成分添加後の攪拌時間を10分としたこと、及び、重合工程(II)すなわちEP部を生成させるための重合時間を1時間としたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合を行った。重合条件及びその結果のまとめを、表1及び2に示す。
【0112】
[実施例6]
(A)成分の使用量を11.3ミリグラムとしたこと、(E)成分の1,2−ジエトキシベンゼン使用量を0.50ミリモルとしたこと、(E)成分添加後の攪拌時間を1時間としたこと、及び、重合工程(II)すなわちEP部を生成させるための重合時間を50分としたこと以外は、実施例3と同様の方法で重合を行った。重合条件及びその結果のまとめを、表1及び2に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
表1中、重合活性は、固体触媒成分(A)の重量に対する、生成したプロピレン系ブロック共重合体の重量を示す。
【0115】
【表2】

【0116】
剛性は、主に重合体成分(1)の融点に起因し、全般的な耐衝撃性は[η]EPに起因し、低温における耐衝撃性は重合体成分(2)のTgに起因すると推測される。ここで、[η]EPは高いほど耐衝撃性がよく、重合体成分(2)のTgは低いほど低温における耐衝撃性がよい。
【0117】
以上のように、実施例1〜6で得られたプロピレン系ブロック共重合体は、比較例1〜4で得られたプロピレン系ブロック共重合体と比較して、主に重合体成分(1)の融点がほぼ等しいにもかかわらず、[η]EPが十分高く、かつ、重合体成分(2)のTgも十分に低いものであった。すなわち、本発明のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法によれば、剛性は保ちつつも耐衝撃性に優れるプロピレン系ブロック共重合体を提供できることを確認した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン原子、マグネシウム原子及びハロゲン原子を必須成分とする固体触媒成分(A)と、有機アルミニウム化合物(B)と、電子供与性化合物(C)とを接触させて得られる重合用触媒の存在下で、プロピレンを単独重合又はプロピレンとプロピレン以外のオレフィンとを共重合させて、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が90重量%以上である重合体成分(1)を生成させる重合工程(I)を行った後、プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとを更に共重合させて、プロピレンに基づく単量体単位の含有量が10〜90重量%である重合体成分(2)を生成させる重合工程(II)を行うプロピレン系ブロック共重合体の製造方法であって、
ルイス酸化合物(D)及び酸素原子含有電子供与性化合物(E)を、重合工程(II)の間、又は、重合工程(II)の前に反応系内に添加する、プロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
【請求項2】
ルイス酸化合物(D)及び酸素原子含有電子供与性化合物(E)を、重合工程(I)の後、かつ、重合工程(II)の前に、ルイス酸化合物(D)、酸素原子含有電子供与性化合物(E)の順で反応系内に添加する、請求項1に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
【請求項3】
酸素原子含有電子供与性化合物(E)が、アルコキシ基含有芳香族炭化水素化合物であり、当該アルコキシ基含有芳香族炭化水素化合物のアルコキシ基がエトキシ基を含有する、請求項1又は2に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
【請求項4】
チタン原子、マグネシウム原子及びハロゲン原子を必須成分とする固体触媒成分(A)が、
Si−O結合を有する有機ケイ素化合物の存在下において、下記一般式(i)で表されるチタン化合物を有機マグネシウム化合物で還元することにより得られる固体触媒成分前駆体(a)と、
ハロゲン含有化合物(b)と、
電子供与体(c)と、
を接触させて得られる固体触媒成分である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法。
【化1】


[式(i)中、aは1〜20の数を表し、Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基を表す。Xはハロゲン原子又は炭素原子数1〜20の炭化水素オキシ基を表し、全てのXは同一であっても異なっていてもよい。]


【公開番号】特開2010−13587(P2010−13587A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176269(P2008−176269)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】