説明

プロピレン重合のための触媒成分を調製する方法

本発明は、重合触媒成分を調製する方法に関する。この方法において、xが0より大きく2未満であり、各R1が独立してアルキル基を表す、化学式Mg(OR1xCl2-xを持つ固体化合物であって、グリニャール化合物をアルコキシまたはアリールオキシ含有シラン化合物と反応させることにより得られる化合物が、内部電子供与体およびMがTi,Zr,Hf,AlまたはSiであり得、各R2およびR3が、独立して、アルキル、アルケニルまたはアリール基を表し、vがMの価数であり、wがvより小さい、化学式M(OR2v-w(R3wの化合物により形成される群から選択される少なくとも1種類の活性化化合物と、中間体反応生成物を得るために不活性分散剤の存在下で接触せしめられ、中間体反応生成物が、ハロゲン含有Ti化合物と接触せしられる。その成分を含む触媒系は、オレフィン重合において改善された性能を示す。本発明はまた、少なくとも1種類のオレフィンを、その触媒成分を含む重合触媒系およびこの触媒成分を含む重合触媒系と接触させることによって、ポリオレフィンを製造する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合触媒成分を調製する方法に関する。本発明はまた、その触媒成分を含む重合触媒系および少なくとも1種類のオレフィンを、触媒成分を含む重合触媒系に接触させることによって、ポリオレフィンを製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポリプロピレンなどのポリオレフィンの調製に適した触媒系およびそれらの成分が一般に知られており、そのような触媒成分を調製するための必須要素としては、固体のマグネシウム含有化合物およびその上に担持されるチタン化合物が挙げられる。そのような触媒は、一般に、チーグラー・ナッタ触媒と称される。そのような触媒成分の調製が、例えば、特許文献1に記載されている。この文献には3工程プロセスが開示されており、そこでは、最初の2工程において、特定のモルホロジーのMg含有担体が調製され、その後、Mg含有担体が、四塩化チタンと、必要に応じて電子供与化合物に接触せしめられる。この触媒成分の利点は、それにより製造された触媒系が、オレフィン、特にプロピレンの重合において高い活性を示すことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第96/32427A1号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、より良好な性能、特により高い活性を示す触媒が、当該業界において引き続き必要とされている。
【0005】
本発明の課題は、重合触媒成分を調製する方法を提供すること、および例えば、高い嵩密度および狭い粒径分布などの、得られたポリオレフィンに要求される他の特徴を維持しながら、オレフィン、特にプロピレンの重合において向上した活性を示す、この触媒成分を含む重合触媒系を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、重合触媒成分を調製する方法であって、
i) R4が有機基であり、Xがハロゲンであり、zが0より大きく2未満である化合物R4zMgX2-Zを、アルコキシまたはアリールオキシ含有シラン化合物と接触させて、xが0より大きく2未満であり、各R1が独立してアルキル基を表す、化学式Mg(OR1xCl2-xの固体のマグネシウム含有化合物を得る工程、
ii) 固体のMg(OR1xCl2-xを、内部電子供与体およびMがTi,Zr,Hf,AlまたはSiであり得、各R2およびR3が、独立して、アルキル、アルケニルまたはアリール基を表し、vがMの価数であり、wがvより小さい、化学式M(OR2v-w(R3wの化合物により形成される群から選択される少なくとも1種類の活性化化合物と、不活性分散剤の存在下で接触させて、中間体反応生成物を得る工程、および
iii) その中間体反応生成物を、必要に応じて内部供与体の存在下で、ハロゲン含有Ti化合物と接触させる工程、
を有してなる方法により達成される。
【0007】
同時係属出願の国際公開第2006/056338A1号パンフレットにおいて、同様の方法が開示されているが、その開示は、yが0より大きく2より小さく、各Rが独立してアルキル基である化学式Mg(OR)yCl2-yの化合物が、不活性分散剤の存在下で、チタンテトラアルコキシドおよび/またはアルコールと接触せしめられる方法に限定されていることは事実である。
【0008】
固体のマグネシウム含有化合物が、ハロゲン含有チタン化合物と接触せしめられる前に、不活性分散剤の存在下で、少なくとも1種類の先に定義された活性化化合物で処理された場合、より高い活性を有する触媒系が得られる、すなわち、触媒系1グラム当たり高い収率でポリオレフィンが得られることが、本発明による方法の利点である。活性がより高いと、製造されるポリマー中に存在する触媒残留物の量が少なくなり、ポリオレフィン製造における触媒費用が減少する。さらに別の利点は、活性化化合物を変えることによって、例えば、プロピレンおよびエチレンの共重合における、前記成分を含む触媒系のエチレン感度に影響を与えることができることである。
【0009】
オレフィン重合のためのチーグラー・ナッタ型の触媒系において有利な性能を示す触媒成分を製造するための同定プロセスが多くの文献の主題となっている。例えば、欧州特許出願公開第0268274A2号および同第0398698A2号の各明細書において、マグネシウムアルコキシド、チタンテトラアルコキシドおよび/またはケイ素化合物を反応させることによって得られた触媒成分を含む触媒が開示されている。
【0010】
米国特許第5229342号明細書には、マグネシウム金属、チタンテトラアルコキシド、トリエチルボレート、塩化第2鉄およびエタノールの反応により、特定のマグネシウム錯体の溶液を製造する工程を含むプロセスが開示されている。
【0011】
米国特許第4771023号明細書において、固体の触媒成分を得るために、有機ケイ素化合物の存在下で、有機マグネシウム化合物がチタンハロアルコキシドと反応せしめられる。
【0012】
英国特許出願公開第2112402A号明細書には、ハロゲン化アルキルマグネシウムまたはハロゲン化アルコキシマグネシウムを、少なくとも金属アルコキシド、シラン化合物、およびハロゲン含有Ti化合物を、本発明とは異なる工程順序で反応させることによって得た固体の触媒成分を含む触媒が開示されている。
【0013】
国際公開第89/02446A1号パンフレットにおいて、固体の触媒成分が、シリカ担体を、最初に可溶性マグネシウムクロロアルコキシド化合物と、次いで、チタン化合物と反応させることによって製造される。
【0014】
欧州特許出願公開第0921135A1号明細書には、本発明とは異なる様々な様式で、マグネシウム、チタンおよび電子供与化合物から調製できる固体の触媒成分をアルコールと接触させるることが開示されている。
【0015】
欧州特許第1383808B1号明細書において、重合触媒系が、マグネシウムクロロアルコキシドから調製されるが、それを芳香族炭化水素溶媒中のチタンテトラアルコキシドと多段階工程で直接反応させることにより調製される。
【0016】
これらの文献のどれも、グリニャール化合物およびシラン化合物から得られた固体のマグネシウムクロロアルコキシドを、本出願の請求項に記載された活性化化合物と反応させる中間体工程は開示も示唆もされていない。国際公開第96/32427A1号パンフレットにおいては、触媒成分が化学式Mg(OR)yCl2-yの固体のマグネシウム含有担体から製造された場合でも、中間体活性化工程は必要ないであろうことさえも示されている。
【0017】
本発明による方法の工程i)において、固体のマグネシウム含有担体は、例えば、国際公開第96/32427A1号および同第01/23441A1号の各パンフレットに記載されているように、R4が有機基であり、Xがハロゲンであり、zが0より大きく2未満である化合物R4zMgX2-Zを、アルコキシまたはアリールオキシ含有シラン化合物と接触させることにより調製される。
【0018】
グリニャール化合物とも称される化合物R4zMgX2-Zにおいて、Xは塩素または臭素であることが好ましく、塩素がより好ましい。
【0019】
有機基R4は、好ましくは1から20までの炭素原子を含有する、脂肪族または芳香族基であって差し支えない。R4は、アルキル、アリール、アラルキル、アルコキシド、フェノキシドなど、またはそれらの混合物であって差し支えない。R4基の適切な例は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、フェニル、トリル、キシリル、メシチルおよびベンジルである。本発明の好ましい実施の形態において、R4は、芳香族基、例えば、フェニル基を表す。
【0020】
zが0より大きく2未満である化学式R4zMgX2-Zのグリニャール化合物が、zが約0.5から1.5であることにより特徴付けられることが好ましい。
【0021】
工程i)に用いられるアルコキシまたはアリールオキシ含有シランは、nから0から4までに及んで差し支えなく、好ましくはnが0から1までであり、各R5およびR6基が、独立して、R2およびR3について以下に定義されるように、例えば、1〜20のC原子を有する、必要に応じて、1つ以上のヘテロ原子、例えば、O,N,SまたはPを含有する、アルキル、アルケニルまたはアリール基を表す一般化学式Si(OR54-n6を持つ化合物または化合物の混合物であることが好ましい。
【0022】
適切なシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジエチルジフェノキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、イソブチルイソプロピルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、トリフルオロプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(ペルヒドロイソキノリノ)ジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジノルボルニルジメトキシシラン、ジ(n−プロピル)ジメトキシシラン、ジ(イソプロピル)ジメトキシシラン、ジ(n−ブチル)ジメトキシシランおよび/またはジ(イソブチル)ジメトキシシランが挙げられる。本発明による方法において固体のMg含有化合物を調製する際に、テトラエトキシシランをシラン化合物として使用することが好ましい。
【0023】
工程i)において、国際公開第01/23441A1号パンフレットに記載されているように、特に大きな粒子の有利なモルホロジーの粒子が得られるように、混合装置に、シラン化合物およびグリニャール化合物が同時に導入されることが好ましい。ここで、「モルホロジー」は、固体のMg化合物およびそれから製造された触媒の粒子の形状を称するだけでなく、触媒粒子の粒径分布(スパンとしても特徴付けられる)、その微粒子の含有量、粉末の流動性、および嵩密度も称する。さらに、そのような触媒成分に基づく触媒系を用いた重合プロセスにおいて生成されるポリオレフィン粉末は、その触媒成分と類似のモルホロジーを有することがよく知られている(いわゆる「レプリカ効果」;例えば、S.van der Ven, Polypropylene and other Polyolefins, Elsevier 1990, p.8-10参照のこと)。したがって、長さ/直径比(I/D)が2より小さく、粉末流動性が良好な、ほとんど丸いポリマー粒子が得られる。
【0024】
同時に導入されるとは、国際公開第01/23441A1号パンフレットに記載されているように、最初の反応生成物とシラン化合物の導入が、これらの化合物の混合装置への導入中のモル比Mg/Siが実質的に変動しないような様式で行われることを意味する。
【0025】
シラン化合物およびグリニャール化合物は、連続的またはバッチ様式で混合装置に導入して差し支えない。両方の化合物が連続的に混合装置に導入されることが好ましい。
【0026】
混合装置は様々な形態を有して差し支えない。混合装置は、シラン化合物がグリニャール化合物と予混される混合装置であっても差し支えなく、それらの化合物間の反応が行われる撹拌反応装置であっても差し支えない。
【0027】
工程i)に関して、前記化合物が、混合物が反応装置に導入される前に、予混されることが好ましい。このようにして、最良のモルホロジー(高い嵩密度、狭い粒径分布、(実質的に)微粒子のないこと、優れた流動性)を持つ触媒成分が形成される。
【0028】
工程i)中のSi/Mgモル比は、幅広い範囲、例えば0.2から20の範囲に亘ってよい。Si/Mgモル比が0.4から1.0であることが好ましい。
【0029】
上述した反応工程における予混期間は、幅広い範囲、例えば0.1から300秒の範囲に亘ってよい。予混は1から50秒の間に行われることが好ましい。
【0030】
予混工程中の温度は、特に重要ではなく、例えば、0から80℃に及んでよく、その温度が10℃と50℃の間にあることが好ましい。
【0031】
前記化合物間の反応は、例えば、−20℃と100℃の間の温度で、好ましくは0℃から80℃の温度で行われるであろう。
【0032】
シラン化合物とグリニャール化合物との間の反応から得られる固体生成物は、通常、不活性溶媒、例えば、ペンタン、イソペンタン、ヘキサンまたはヘプタンなどの、例えば、1〜20のC原子を持つ炭化水素溶媒で濯ぐことによって精製する。この固体生成物は、貯蔵し、その不活性溶媒中の懸濁物としてさらに使用できる。あるいは、この生成物は、乾燥させ、好ましくはある程度、好ましくは穏やかな条件下で、例えば、周囲温度と大気圧で、乾燥させてもよい。
【0033】
化学式Mg(OR1xCl2-xの固体のマグネシウム含有化合物において、R1基は一般に、1〜12の炭素原子を含有するアルキル基である。このアルキル基は、直鎖型であっても分岐型であってもよい。
【0034】
1基が1〜8の炭素原子を含有することが好ましい。R1基の少なくとも1つがエチル基であることがより好ましい。好ましい実施の形態において、各R1基がエチル基を表す。
【0035】
固体のマグネシウム含有化合物は、工程ii)において、内部電子供与体およびMがTi,Zr,Hf,AlまたはSiであり得、各R2およびR3が、独立して、アルキル、アルケニルまたはアリール基を表し、vがMの価数であり、wがvより小さい、化学式M(OR2v-w(R3wの化合物により形成される群から選択される少なくとも1種類の活性化化合物と反応せしめられる。
【0036】
内部供与体(内部電子供与体とも称される)は、本発明において、オレフィン重合のための(チーグラー・ナッタ)触媒系の固体触媒成分の調製における(すなわち、マグネシウム含有担体をハロゲン含有Ti化合物および内部供与体と接触させる)反応体として一般に記載される電子供与化合物として定義される。適切な内部電子供与体の例が、当業者に公知であり、その例としては、カルボン酸、無水カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸ハロゲン化物、アルコール、エーテル、ケトン、アミン、アミド、ニトリル、アルデヒド、アルコキシド、スルホンアミド、チオエーテル、および窒素、酸素、硫黄および/またはリンなどのヘテロ原子を1つ以上含有する他の有機化合物が挙げられる。
【0037】
適切なカルボン酸は脂肪族であっても(部分的に)芳香族であってもよい。その例としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソブタン酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、シクロヘキサンモノカルボン酸、シス−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、フェニルカルボン酸、トルエンカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸および/またはトリメリト酸が挙げられる。
【0038】
上述したカルボン酸の無水物を、例えば、無水酢酸、無水酪酸および無水メタクリル酸などの、無水カルボン酸の例として述べることができる。
【0039】
上述したカルボン酸のエステルの適切な例には、蟻酸エステル、例えば、蟻酸ブチル;酢酸エステル、例えば、酢酸エチルおよび酢酸ブチル;アクリル酸エステル、例えば、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸イソブチル;安息香酸エステル、例えば、安息香酸メチルおよび安息香酸エチル;メチル−p−トルエート;エチル−ナフテートおよびフタル酸エチル、例えば、フタル酸モノメチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジアリルおよび/またはフタル酸ジフェニルがある。
【0040】
適切なカルボン酸ハロゲン化物の例には、上述したカルボン酸のハロゲン化物、例えば、塩化アセチル、臭化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブタノイル、ヨウ化ブタノイル、臭化ベンゾイル、塩化p−トルイルおよび/または二塩化フタロイルがある。
【0041】
適切なアルコールは、1〜12のC原子を持つ直鎖または分岐脂肪族アルコール、または芳香族アルコールである。その例としては、メタノール、エタノール、ブタノール、イソブタノール、ヘキサノール、キシレノールおよびベンジルアルコールが挙げられる。これらのアルコールは、単独で用いても、組合せで用いてもよい。
【0042】
本発明の好ましい実施の形態において、アルコールはエタノールまたはヘキサノールである。
【0043】
適切なエーテルの例には、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテル、アニソールおよびエチルフェニルエーテル、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロフェニル−1,3−ジメトキシプロパン、2−エチル−2−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンおよび/または9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンがある。また、テトラヒドロフラン(THF)などの環状エーテル、またはトリエーテルを用いても差し支えない。
【0044】
ヘテロ原子を含有する他の有機化合物の適切な例としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、2,6−ジメチルピペリジン、ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、イミダゾール、ベンゾニトリル、アニリン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジメチルアセトアミド、チオフェノール、2−メチルチオフェン、イソプロピルメルカプタン、ジエチルチオエーテル、ジフェニルチオエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、アニソール、アセトン、トリフェニルホスフィン、トリフェニルホスファイト、ジエチルホスフェートおよび/またはジフェニルホスフェートが挙げられる。
【0045】
少なくとも1種類の活性化化合物は、MがTi,Zr,Hf,AlまたはSiであり得、各R2およびR3が、独立して、アルキル、アルケニルまたはアリール基を表し、vがMの価数であって、3または4のいずれかであり、wがvより小さい、化学式M(OR2v-w(R3wのものであって差し支えない。R2およびR3基は、直鎖、分岐または環状のアルキルまたはアルケニル基であって差し支えなく、適切な基は、1から20の炭素原子、好ましくは1〜12または1〜8の炭素原子を含有する。それらの基は、独立して異なっていても、同じであってもよい。好ましい実施の形態において、R2およびR3は、エチル、プロピルまたはブチルであり、全ての基がエチル基であることがより好ましい。R2およびR3基は、例えば、アルキル基によって必要に応じて置換された、芳香族炭化水素基であって差し支えなく、例えば、6から20の炭素原子を含有して差し支えない。
【0046】
2およびR3基は、例えば、O,N,SまたはPなどのヘテロ原子を1種類以上、必要に応じて含有してもよい。
【0047】
前記活性化化合物中のMは、TiまたはSiであることが好ましい。
【0048】
本発明の好ましい実施の形態において、wの値は0であり、活性化化合物は、例えば、4〜32のC原子を含有するチタンテトラアルコキシドである。この化合物中の4つのアルコキシド基は、同じであっても、独立して異なっていてもよい。この化合物中のアルコキシド基の少なくとも1つがエトキシ基であることが好ましい。この化合物が、チタンテトラエトキシドなどのテトラアルコキシドであることがより好ましい。
【0049】
活性化化合物として適したSi含有化合物は、工程i)について先に列記したものと同じである。
【0050】
本発明による方法において、1種類の活性化化合物を使用して差し支えないが、2種類以上の化合物の混合物を使用してもよい。
【0051】
先に定義した化学式M(OR2v-w(R3wの化合物の内部電子供与体との組合せが、例えば、高い活性を示し、そのエチレン感度に内部供与体を選択することによって影響を与えることができ、例えば、プロピレンおよびエチレンのコポリマーを調製する上で特に有利な触媒系を得るための、活性化化合物として好ましい。
【0052】
Ti系化合物、例えば、チタンテトラエトキシドを、エタノールやヘキサノールなどのアルコールと、または酢酸エチル、安息香酸エチルまたはフタル酸エステルなどのエステル化合物と共に、もしくはジブチルエーテルなどのエーテルと共に、またはピリジンと共に用いることが好ましい。
【0053】
本発明による方法に2種類以上の活性化化合物を使用する場合、添加順序は、重要ではないが、使用する化合物に依存して、触媒の性能に影響を与えるかもしれない。それらの添加は、当業者により、実験に基づいて最適化されるであろう。前記化合物は、一緒に添加しても、または連続的に添加しても差し支えない。例えば、カルボン酸エステルは、チタンテトラアルコキシドによる処理の前、最中または後に加えてもよく、またはその組合せを加えても差し支えない。
【0054】
本発明の好ましい実施の形態において、内部供与体化合物が最初に化学式Mg(OR1xCl2-xの化合物に加えられ、その後、化学式M(OR2v-w(R3wの化合物が加えられる。活性化化合物は、例えば、0.1〜6時間で、好ましくは0.5〜4時間で、最も好ましくは1〜2.5時間で、ゆっくりと加えられることが好ましい。
【0055】
本発明による方法において、不活性分散剤が炭化水素溶媒であることが好ましい。この分散剤は、例えば、1〜20のC原子を有する脂肪族または芳香族炭化水素であってよい。
【0056】
分散剤は脂肪族炭化水素であることが好ましく、ペンタン、イソペンタン、ヘキサンまたはヘプタンがより好ましく、ヘプタンが最も好ましい。
【0057】
本発明による方法において、活性化化合物のMg(OR1xCl2-xに対するモル比は、幅広い範囲に及んでよく、例えば、0.02と1.0の間である。モル比は、好ましくは0.05と0.5の間、より好ましくは0.06と0.4の間、さらには0.07と0.2の間である。
【0058】
本発明による方法において、工程ii)における温度は、−20℃から70℃の範囲、好ましくは−10℃から50℃の範囲、より好ましくは−5℃から40℃の範囲、最も好ましくは0℃と30℃の間の範囲にあって差し支えない。
【0059】
反応混合物の内の少なくとも1種類は、ちょうどよいときに、例えば、0.1から6時間、好ましくは0.5から4時間、より特別に1〜2.5時間で添加される。
【0060】
得られた固体の中間体生成物は、好ましくは不活性分散剤としても用いられる溶媒によりさらに洗浄し、次いで、貯蔵し、その不活性溶媒中の懸濁物としてさらに使用できる。あるいは、その生成物を、乾燥させてよく、好ましくはゆっくりと穏やかな条件下で、例えば、周囲温度と大気圧で、好ましくは部分的に乾燥させてもよい。
【0061】
制御されたモルホロジーの固体のMg含有生成物から出発すると、そのモルホロジーは、活性化化合物による処理中に悪影響を受けない。得られた固体の中間体生成物は、Mg含有化合物と少なくとも1種類の活性化化合物の付加物であると考えられ、まだ制御されたモルホロジーのものである。この中間体反応生成物は、その後、工程iii)において、好ましくは1つ以上の工程において内部電子供与体化合物の存在下で、ハロゲン含有チタン化合物と接触せしめられる。
【0062】
好ましい実施の形態によれば、本発明による方法は、xが0より大きく2未満であり、各R1が独立して1〜8の炭素原子を持つアルキル基を表す、化学式Mg(OR1xCl2-xを持つ固体化合物が、不活性分散剤の存在下で、カルボン酸エステルおよびチタンテトラアルコキシドと接触せしめられて、固体の中間体反応生成物が得られ、次いで、その中間体反応生成物が、内部供与体の存在下で四塩化チタンと接触せしめられる。
【0063】
本発明による方法において、中間体生成物とハロゲン含有チタン化合物との間の接触におけるTi/Mgモル比は、好ましくは10と100の間、最も好ましくは10と50の間にある。
【0064】
本発明による方法において、中間体反応生成物は、内部供与体の存在下で、ハロゲン含有Ti化合物と接触せしめられることが好ましい。内部電子供与体として使用できる適切な化合物は、当業者に公知であり、先のように定義される。
【0065】
中間体生成物の四塩化チタンによる処理中のマグネシウムに対する内部電子供与体のモル比は、幅広い範囲、例えば、0.05と0.75の間に亘ってよい。
【0066】
このモル比が0.1と0.4の間にあることが好ましい。
【0067】
内部電子供与体として、フタル酸ジブチルを使用することが好ましく、フタル酸ジ−n−ブチルがより好ましい。
【0068】
中間体生成物とハロゲン含有チタン化合物を接触させている間、不活性分散剤を使用することが好ましい。この分散剤は、形成される副生成物の実質的に全てが分散剤中に溶解するように選択されることが好ましい。適切な分散剤の例としては、例えば、4〜20のC原子を持つ、脂肪族および芳香族の炭化水素およびハロゲン化芳香族溶媒が挙げられる。その例としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘプタン、o−クロロトルエンおよびクロロベンゼンが挙げられる。
【0069】
工程iii)において中間体生成物およびハロゲン含有チタン化合物を接触させる最中の反応温度は、好ましくは0℃と150℃の間、より好ましくは50℃と150℃の間、最も好ましくは60℃と120℃の間である。それより高いかまたは低い温度では、本発明の方法により調製された触媒成分から調製した触媒系の活性が低くなってしまう。得られる反応生成物は、本発明の触媒系の活性を得るために、通常は不活性脂肪族または芳香族炭化水素またはハロゲン化芳香族化合物によって、精製される。所望であれば、反応工程とその後の精製工程は、1回以上繰り返してもよい。最終的な洗浄は、他の工程について先に記載したように、懸濁されたまたは少なくともある程度乾燥した触媒成分を得るように、脂肪族炭化水素により行うことが好ましい。
【0070】
本発明はさらに、本発明による方法により得られる重合触媒成分、およびこの触媒成分を含む重合触媒系に関する。
【0071】
この重合触媒系は、本発明による触媒成分および共触媒を含む。この触媒系が、外部電子供与体、または単に外部供与体としても称される、外部電子供与化合物も含むことが好ましい。この外部供与体化合物の主な機能は、3以上の炭素原子を有するオレフィンの重合における触媒系の立体選択性に影響を与えることであり、この理由のために、選択性制御剤とも称される。
【0072】
本発明はさらに、少なくとも1種類のオレフィンを、本発明による方法により得られた触媒成分を含む重合触媒系に接触させることによって、ポリオレフィンを製造する方法に関する。
【0073】
ポリオレフィンの調製は、本発明による触媒成分、共触媒および必要に応じて外部供与体を含む触媒系の存在下で、1種類以上のオレフィンを同時におよび/または連続して重合させることにより行われる。
【0074】
本発明の利点は、得られたポリマーが、触媒の残留物を少量しか含有せず、好ましい嵩密度および粒径分布を有することである。
【0075】
本発明の方法において重合できるオレフィンは、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキセン、オクテンおよび/またはブタジエンなどの、2から10の炭素原子を含有するモノおよびジ−オレフィンであってよい。
【0076】
本発明の好ましい実施の形態によれば、オレフィンは、プロピレンホモポリマーまたはコポリマーが得られるように、プロピレンまたはプロピレンとエチレンの混合物である。プロピレンコポリマーは、ここでは、コモノマー含有量が比較的少ない、例えば、10モル%までのいわゆるランダムコポリマー、並びにコモノマー含有量が多い、例えば、5から80モル%、より一般的に10から60モル%のいわゆるインパクトコポリマーの両方を含むことを意味する。
【0077】
要するに、そのようなインパクトコポリマーは、実際に、コモノマー含有量が少なく結晶化度が高い第1の成分、およびコモノマー含有量が多く、結晶化度が低いまたはさらにはゴム状性質を有する第2の成分などの、異なるプロピレンポリマーのブレンドである。
【0078】
一般に、共触媒は、元素の周期表の1,2,12または13族からの金属を含有する有機金属化合物である(Handbook of Chemistry and Physics, 70th Edition, CRC Press, 1989-1990)。
【0079】
共触媒が有機アルミニウム化合物であることが好ましい。この有機アルミニウム化合物は、例えば、各R7が独立して、例えば、1〜10のC原子を持つアルキル基または例えば、6〜20のC原子を持つアリール基を表す、化学式AlR73を有する化合物であってよい。適切な有機アルミニウム化合物の例には、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、および/またはトリオクチルアルミニウムがある。共触媒がトリエチルアルミニウムであることが好ましい。
【0080】
適切な外部供与体の例としては、前記触媒成分の調製に使用できる内部供与体として先に記載された化合物が挙げられる。有機ケイ素化合物を外部供与体として使用することもできる。外部供与体の混合物を使用しても差し支えない。
【0081】
外部供与体として適切な有機ケイ素化合物の例には、nが0から4までで差し支えなく、好ましくはnは1または2であり、各R8およびR9が、独立して、R2およびR3について先に定義したように、例えば、1〜20のC原子を持つ、1種類以上のヘテロ原子、例えば、O,N,SまたはPを必要に応じて含有する、アルキルまたはアリール基を表す、一般化学式Si(OR84-n9nの化合物または化合物の混合物がある。適切な化合物の例としては、先に記載したように、活性化化合物として使用できるシラン化合物が挙げられる。
【0082】
外部供与体として使用される有機ケイ素化合物は、n−プロピルトリメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジ(イソプロピル)ジメトキシシランまたはジ(イソブチル)ジメトキシシランであることが好ましい。
【0083】
重合中の重合触媒系におけるチタンに対する共触媒の金属のモル比は、例えば、5から2000までで、変動してもよい。この比が50と300の間にあることが好ましい。
【0084】
重合触媒系におけるアルミニウム/外部供与体のモル比は、好ましくは0.1と200の間、より好ましくは1と100の間である。
【0085】
重合プロセスは、気相または液相(バルクまたはスラリー)で行うことができる。スラリー(液相)における重合の場合、分散剤が存在する。適切な分散剤の例としては、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンおよび液体のプロピレンが挙げられる。
【0086】
例えば、重合温度と時間、モノマーの圧力、触媒の汚染の回避、スラリープロセスにおける重合媒体の選択、ポリマーのモル質量を制御するためのさらなる成分(水素などの)の使用、および他の条件などの、本発明による方法の重合条件が、当業者によく知られている。
【0087】
重合温度は、幅広い範囲に亘ってもよく、例えば、プロピレンの重合については、0℃と120℃の間、好ましくは40℃と100℃の間である。
【0088】
(プロピレン)(共)重合中の圧力は、例えば、0.1と6MPaの間、好ましくは0.5〜3MPaの間である。
【0089】
重合中に得られるポリオレフィンのモル質量は、重合中に水素またはその目的に適していることが知られている任意の他の添加剤を加えることによって制御することができる。
【0090】
重合は、連続様式またはバッチ様式で行って差し支えない。スラリー、バルク、および気相重合プロセス、これらのタイプの重合プロセスの各々の多段プロセス、または多段プロセスにおける異なるタイプの重合プロセスの組合せが、ここでは考えられる。
【0091】
重合プロセスは、単段気相プロセスまたは多段、例えば、各段において気相プロセスが用いられる2段の気相プロセスであることが好ましい。
【0092】
気相重合プロセスの例としては、撹拌床反応装置および流動床反応装置システムの両方が挙げられる。そのようなプロセスは当該技術分野においてよく知られている。典型的な気相αオレフィン重合反応装置システムは、αオレフィンモノマーおよび触媒系を加えることができ、成長するポリマー粒子の撹拌床を含有する反応装置容器を含む。
【実施例】
【0093】
本発明を、それに限定されない以下の実験により説明する。
【0094】
実験I〜XXVI:プロピレンのスラリー重合

実験I
I.A. グリニャール形成工程
還流凝縮器および漏斗を備えたフラスコにマグネシウム(24.3g、1モル)を入れた。このフラスコを窒素雰囲気下に置いた。マグネシウムを1時間に亘り80℃で加熱し、その後、ジブチルエーテル(170ml)およびクロロベンゼン(60ml)の混合物を加えた。次いで、この反応混合物に、ヨウ素(0.03g)およびn−クロロブタン(3ml)を連続して加えた。ヨウ素の色が消えた後、温度を97℃に上昇させ、クロロベンゼン(220ml)を2.5時間に亘りゆっくりと加えた。この過程で形成された濃い反応混合物を、97℃でさらに8時間に亘り撹拌した。次いで、撹拌と加熱を停止し、固体物質を48時間に亘り沈殿させた。この沈殿物の上の溶液をデカンテーションにより、1.36モルMg/lの濃度の塩化フェニルマグネシウムの反応生成物I.Aの溶液を得た。この溶液を、さらに別の触媒調製に用いた。
【0095】
I.B. 化学式Mg(OR1xCl2-xを持つ化合物の調製
工程Iの反応生成物の溶液(200ml、0.272モルMg)および100mlのテトラエトキシシラン(TES)のジブチルエーテル(DBE)溶液(33.4mlのTESおよび66.6mlのDBE)を15℃に冷却し、次いで、撹拌機およびジャケットを備えた、0.45mlの容積の混合装置に同時に添加した。その後、予混した反応生成物I.AおよびTES溶液を反応装置に導入した。この混合装置(ミニミキサ)を、ミニミキサのジャケット内で循環している冷水によって、10℃に冷却した。これらの試薬の接触時間は、ミニミキサおよびミニミキサと反応装置との間の接続管内で13秒であった。ミニミキサ内の撹拌速度は1000rpmであった。ミニミキサ内で形成された混合物を、撹拌しながら、0.7lの反応装置に導入した。この反応装置に100mlのDBEを入れ、5℃に冷却した。添加時間は1時間であった。この反応装置内の撹拌速度は200rpmであった。
【0096】
添加が完了したら、反応混合物を0.5時間に亘り5℃に保持し、次いで、60℃まで加熱し、1時間に亘りこの温度に保持した。次いで、撹拌を停止し、固体物質を沈殿させた。上清を、デカンテーションにより除去した。300mlのヘプタンを用いて、固体物質を3回洗浄した。その結果、110mlのヘプタン中に懸濁された、反応生成物I.Bである薄黄色の固体物質を得た。
【0097】
I.C. Mg含有担体の活性化
0℃での不活性窒素雰囲気内で、機械式撹拌機を備えた250mlのガラスフラスコに、60mlのヘプタン中に分散された5gの反応生成物I.Bのスラリーを注いだ。その後、20mlのヘプタン中の1.57mlのチタンテトラエトキシド(TET)の溶液を1時間に亘り25℃で加えた。TET/Mgの比=0.2。
【0098】
このスラリーを90分間で30℃までゆっくりと暖まらせ、さらに2時間に亘りその温度に保持した。最後に、上清液を固体物質(約5.5g)からデカンテーションにより除去し、この物質を30℃で90mlのヘプタンで1回洗浄した。その結果、15mlのヘプタン中に懸濁された反応生成物I.Cを得た。
【0099】
I.D. 触媒成分の調製
反応装置を窒素雰囲気下に置き、これに125mlの四塩化チタンを加えた。この反応装置を115℃に加熱し、15mlのヘプタン中に約5.5gの反応生成物I.Cを含有する懸濁液を、撹拌しながらそれに加えた。次いで、反応混合物を15分間に亘り115℃に保持し、2.4mlのフタル酸ジブチルを反応装置に加えた。次いで、反応混合物を105分間に亘り115℃に保持した。次いで、撹拌を停止し、固体物質を沈殿させた。上清を、デカンテーションにより除去し、その後、固体生成物を20分間に亘り100℃でクロロベンゼン(125ml)で洗浄した。次いで、洗浄溶液を、デカンテーションにより除去し、その後、四塩化チタン(62.5ml)およびクロロベンゼン(62.5ml)の混合物を加えた。反応混合物を30分間に亘り115℃に保持し、その後、固体物質を沈殿させ、最後の処理をもう一度繰り返した。得られた固体物質を、60℃で150mlのヘプタンを用いて5回洗浄し、その後、ヘプタン中に懸濁された触媒成分を得た。
【0100】
I.E. プロピレンの重合
プロピレンの重合を、工程I.Dによる触媒成分、トリエチルアルミニウムおよびプロピルトリメトキシシランを含む触媒系の存在下で、1時間に亘り、70℃の温度、0.7MPaの全圧および水素の存在下(55ml)で、ヘプタン(300ml)中においてステンレス鋼製反応装置(0.7lの容積を持つ)内で行った。触媒成分の濃度は0.033g/lであり、トリエチルアルミニウムの濃度は4.0ミリモル/lであり、プロピルトリメトキシシランの濃度は0.4ミリモル/lであった。
【0101】
プロピレン重合中の触媒性能についてのデータが表1に示されている。得られたポリマー粉末の粒子は丸い形状を有した。
【0102】
実験II〜III
工程I.Cにおいて、それぞれ、0.79mlのチタンテトラエトキシド(Ti/Mg=0.1)、および0.39mlのチタンテトラエトキシド(Ti/Mg=0.05)を用いたことを除いて、実験Iを繰り返した。
【0103】
その結果が表1に示されている。
【0104】
実験IV
工程I.Cを以下のように行ったことを除いて、実験Iを繰り返した:0℃の不活性窒素雰囲気下で、機械式撹拌機を備えた250mlのガラスフラスコに、60mlのヘプタン中に分散した5gの反応生成物I.Bのスラリーを注いだ。その後、20mlヘプタン中の0.33mlのエタノール(EtOH/Mg=0.15)の溶液を1時間で撹拌しながら添加した。この反応混合物を30分間に亘り0℃に維持した後、20mlのヘプタン中の1.18mlのチタンテトラエトキシド(TET/Mg=0.15)の溶液を1時間に亘り0℃で加えた。このスラリーを90分間で30℃までゆっくりと暖まらせ、その温度にさらに2時間保持した。最後に、上清液を固体の反応生成物(約5.5g)からデカンテーションにより除去し、この反応生成物を30℃で90mlのヘプタンで1回洗浄した。
【0105】
その結果が表1に示されている。
【0106】
実験V〜VII
工程I.Cにおいて、0.28mlのエタノール(EtOH/Mg=0.125)および0.79mlのチタンテトラエトキシド(Ti/Mg=0.1);0.22mlのエタノール(EtOH/Mg=0.1)および0.99mlのチタンテトラエトキシド(Ti/Mg=0.125);並びに0.22mlのエタノール(EtOH/Mg=0.1)および0.79mlのチタンテトラエトキシド(Ti/Mg=0.1)をそれぞれ使用したことを除いて、実験IVを繰り返した。
【0107】
その結果が表1に示されている。
【0108】
実験VIII
工程I.Cを以下のように行ったことを除いて、実験IVを繰り返した:20℃の不活性窒素雰囲気下で、機械式撹拌機を備えた250mlのガラスフラスコに、60mlのヘプタン中に分散した5gの反応生成物I.Bのスラリーを注いだ。その後、20mlヘプタン中の0.22mlのエタノール(EtOH/Mg=0.1)の溶液を1時間で撹拌しながら添加した。この反応混合物を30分間に亘り20℃に維持した後、20mlのヘプタン中の0.79mlのチタンテトラエトキシド(TET/Mg=0.1)の溶液を1時間に亘り加えた。このスラリーを90分間で30℃までゆっくりと暖まらせ、その温度にさらに2時間保持した。最後に、上清液を固体の反応生成物からデカンテーションにより除去し、この反応生成物を30℃で90mlのヘプタンで1回洗浄した。
【0109】
その結果が表1に示されている。
【0110】
実験IX
工程I.Cを以下のように行ったことを除いて、実験IVを繰り返した:0℃の不活性窒素雰囲気下で、機械式撹拌機を備えた250mlのガラスフラスコに、60mlのヘプタン中に分散した5gの反応生成物I.Bのスラリーを注いだ。その後、20mlヘプタン中の0.22mlのエタノール(EtOH/Mg=0.1)および0.99mlのチタンテトラエトキシド(TET/Mg=0.125)の溶液を1時間で撹拌しながら添加した。このスラリーを90分間で30℃までゆっくりと暖まらせ、その温度にさらに2時間保持した。最後に、上清液を固体の反応生成物(約5.5g)からデカンテーションにより除去し、この反応生成物を30℃で90mlのヘプタンで1回洗浄した。
【0111】
その結果が表1に示されている。
【0112】
実験X
工程I.Dを以下に記載するように行ったことを除いて、実験VIIを繰り返した。
【0113】
反応装置を窒素雰囲気下に置き、これに四塩化チタン(87.5ml)を加えた。反応装置を115℃に加熱し、これに、15mlのヘプタン中に5gの反応生成物I.Cを含有する懸濁液を撹拌しながら加えた。次いで、この反応混合物を15分間に亘り115℃に保持し、2mlのフタル酸ジブチルを反応装置に加えた。次いで、反応混合物を105分間に亘り115℃に保持し、撹拌を停止し、固体物質を沈殿させた。上清をデカンテーションにより除去し、その後、固体生成物を20分間に亘り100℃でクロロベンゼン(87.5ml)により洗浄した。次いで、洗浄溶液をデカンテーションにより除去し、その後、チタンテトラエトキシド(44ml)およびクロロベンゼン(44ml)の混合物を加えた。この反応混合物を30分間に亘り115℃に保持し、その後、固体物質を沈殿させ、最後の処理をもう一度繰り返した。得られた固体物質を、60℃で150mlのヘプタンを用いて5回洗浄し、その後、ヘプタン中に懸濁された触媒成分を得た。
【0114】
その結果が表1に示されている。
【0115】
実験XI
工程I.Dを以下に記載するように行ったことを除いて、実験VIIを繰り返した。
【0116】
反応装置を窒素雰囲気下に置き、これに四塩化チタン(50ml)およびトルエン(50ml)の混合物を加えた。次いで、これに、15mlのヘプタン中に5gの反応生成物I.Cを含有する懸濁液を25℃で撹拌しながら加えた。反応装置を115℃に加熱し、この反応混合物を15分間に亘り115℃に保持し、1.65mlのフタル酸ジブチルを反応装置に加えた。次いで、反応混合物を1時間に亘り115℃に保持た。次いで、撹拌を停止し、固体物質を沈殿させた。上清をデカンテーションにより除去し、その後、固体生成物を20分間に亘り100℃でトルエン(100ml)により洗浄した。次いで、洗浄溶液をデカンテーションにより除去し、その後、四塩化チタン(50ml)およびトルエン(50ml)の混合物を加えた。この反応混合物を30分間に亘り115℃に保持し、その後、固体物質を沈殿させ、最後の処理をもう一度繰り返した。得られた固体物質を、60℃で150mlのヘプタンを用いて5回洗浄し、その後、ヘプタン中に懸濁された触媒成分を得た。
【0117】
その結果が表1に示されている。
【0118】
実験XII
工程I.Dを行うときに、トルエンの代わりにクロロベンゼンを用いたことを除いて、実験XIを繰り返した。
【0119】
その結果が表1に示されている。
【0120】
比較実験A
実験Iを繰り返したが、活性化工程I.Cは行わなかった。
【0121】
その結果が表1に示されている。
【0122】
実験XIII
XIII.A. グリニャール形成工程
マグネシウム(97.2g、4モル)を2時間に亘り90℃の真空下で乾燥させ、漏斗と撹拌機を備えたフラスコ内に入れて窒素雰囲気下に置いた。次いで、280mlのジブチルエーテルおよび70mlのクロロベンゼンの混合物を加え、温度を80℃に上昇させた。次いで、この反応混合物に、0.2gのヨウ素および12mlのn−クロロブタンの混合物を加えた。ヨウ素の色が消えた後、温度を97℃に上昇させ、200mlのジブチルエーテルおよび180mlのクロロベンゼンの混合物を25分間に亘り加え、次いで、800mlのクロロベンゼンおよび200mlのジブチルエーテルを約2.5時間で加えた。この過程で形成された濃い反応混合物を102±2℃でさらに4時間に亘り撹拌した。次いで、撹拌と加熱を停止し、固体物質を48時間に亘り沈殿させた。沈殿物上の溶液をデカンテーションで除去することによって、1.36モルMg/lの濃度の塩化フェニルマグネシウム(PhxMgCl2-x、反応生成物XIII.A)の溶液を得た。これをさらなる触媒の調製に用いた。
【0123】
XIII.B. Mg含有化合物の調製
約460mlの工程XIII.Aの反応生成物(約0.624モルのMg)の溶液および230mlのジブチルエーテル(DBT)中のテトラエトキシシラン(TES)の溶液(73mlのTESおよび157mlのDBT)を、撹拌機およびジャケットを備えた0.45mlの容積を持つ混合装置に連続的に添加した。その後、予混した反応生成物XIII.AおよびTES溶液を反応装置に導入した。この混合装置(ミニミキサ)およびそこへの供給管を、ミニパイプのジャケット内と供給管の周りを循環する冷水によって、7.5℃に冷却した。これらの試薬の接触時間は、ミニミキサおよびミニミキサと反応装置との間の接続管内で20秒であった。ミニミキサ内の撹拌速度は1000rpmであった。ミニミキサ内で形成された混合物を、撹拌しながら、1.2lの反応装置に導入した。この反応装置に370mlのDBEおよび130mlのクロロベンゼンを予め装填し、35℃に加熱した。添加時間は6時間であった。この反応装置内の平均撹拌速度は415rpmであった。
【0124】
添加が完了したら、反応混合物を30分間で60℃に昇温させ、1時間に亘り60℃に保持した。次いで、撹拌を停止し、固体物質を沈殿させた。上清を、デカンテーションにより除去した。各洗浄に700mlのヘプタンを用いて、固体物質を3回洗浄した。その結果、300mlのヘプタン中に懸濁された、反応生成物XIII.Bである薄黄色の固体物質を得た。
【0125】
XIII.C. 活性化工程
0℃での不活性窒素雰囲気内で、機械式撹拌機を備えた250mlのガラスフラスコに、60mlのヘプタン中に分散された5gの反応生成物XIII.Bのスラリーを注いだ。その後、20mlのヘプタン中の1.0mlのエタノールの溶液を1時間に亘り25℃で加え、エタノール/Mgの比=0.45を得た。この混合物を30分間に亘り0℃に保持した後、20mlのヘプタン中の0.79mlのチタンテトラエトキシド(TET/Mg=0.1)の溶液を1時間に亘り0℃で加え、その後、スラリーを90分間で30℃にゆっくりと加熱し、その温度にさらに2時間に亘り保持した。最後に、上清液を固体反応生成物(約5.5g)からデカンテーションにより除去し、この反応生成物を30℃で90mlのヘプタンで1回洗浄した。このスラリーをさらに2時間に亘り30℃に保持した。さらに最後に、上清液を固体物質(約5.5g)からデカンテーションにより除去し、この物質を30℃で80mlのヘプタンで1回洗浄した。その結果、15mlのヘプタン中に懸濁された反応生成物XIII.Cを得た。
【0126】
XIII.D. 触媒成分の調製
この工程は、工程I.Dと完全に同じに行い、ヘプタン中に懸濁された触媒成分を得た。
【0127】
XIII.E. プロピレンの重合
プロピレンの重合を、工程XIII.Dによる触媒成分、トリエチルアルミニウムおよびジイソブチルジメトキシシランを含む触媒の存在下で、1時間に亘り、70℃の温度、0.7MPaの全圧および水素の存在下(頭隙に1.5%v/v)で、ヘプタン(5.5l)中においてステンレス鋼製反応装置(12lの容積を持つ)内で行った。触媒成分の濃度は0.023g/lであり、トリエチルアルミニウムの濃度は1.9ミリモル/lであり、ジイソブチルジメトキシシランの濃度は0.95ミリモル/lであった。
【0128】
プロピレン重合中の触媒性能についてのデータが表2に示されている。得られたポリマー粉末の粒子は丸い形状を有し、良好な流動挙動を示した。
【0129】
実験XIV〜XXVI
得られた触媒によるプロピレン重合の結果と共に、表2に列記されたような活性化剤のMgに対するモル比で、他の活性化化合物を工程Cに用いたことを除いて、実験XIIIを繰り返した。
【0130】
実験1〜14: プロピレンとエチレンの気相共重合
1.8リットルの容積を持つステンレス鋼製反応装置内で、エチレンとプロピレンの気相共重合を行った。この重合は2工程からなるものであった:
1) 表3に示した実験の工程Dにおいて得られた触媒成分、トリエチルアルミニウムおよびジイソブチルジメトキシシランを含む触媒系の存在下における、70℃の温度、2.1MPaの全圧および1%(v/v)の水素の存在下での、1時間に亘るプロピレンの単独重合。触媒の量は15mgであり、Al/Tiのモル比は270であり、Si/Tiのモル比は11.3であった。1時間後、反応装置の通気によって、全圧を1.43MPaに減少させた。減圧後、50標準化リットル/時の流量を用いて、酸素と窒素の気体混合物(0.5%のv/vO2)を導入し、次の工程で形成されるコポリマーの量に影響を与えるように、添加時間を10秒と60秒の間で変化させた。
【0131】
2) 共重合の第2工程は、エチレンで全圧を2.1MPaに戻すことによって開始した。0.6%(v/v)の水素濃度および66℃の温度での0.5のモル比のエチレン/プロピレンの流れを適用することによって、この圧力を1時間に亘り保持した。
【0132】
上述した実験において調製した触媒による共重合中の触媒性能についてのデータが表3に示されている。−aと−bの実験の間の差は、工程1と2の間で加えられた酸素の異なる量から生じている。得られた全てのポリマー粉末の粒子は丸い形状を有し、容易に流動することを示した。
【0133】
表3のデータから、プロピレン重合において高い活性を有する活性化触媒成分を含む触媒系が、本発明の活性化工程を用いずに製造された従来の触媒よりも、いくぶん低いエチレン感度を示すようであることが観察される。さらに、活性化工程に用いた化合物を変えることによって、エチレン感度に影響を与えられると結論付けられる。例えば、チタンテトラエトキシドおよび活性化化合物としてのカルボン酸エステルにより製造された触媒は、プロピレン−エチレンコポリマーの調製においてエチレンの取り込みが比較的高く、非活性化触媒と比較して、全体的に良好な性能を示す。
【0134】
省略形および測定方法:
・ Ti質量%は、触媒成分中のチタンの%で表した質量含有量である
・ 活性KgPP/gcatは、触媒成分のグラム当たりに得られたポリプロピレンの量である
・ アタクチック・ポリプロピレン(aPP)の質量パーセントは以下のようにして決定した:ポリプロピレン粉末(xg)およびヘプタンの分離において得られた濾液(yml)の100mlをスチームバスで乾燥させ、次いで、60℃の真空下で乾燥させた。これにより、zgのaPPが生成された。aPP(qg)の総量は:(y/100)×z
aPPの質量パーセントは:(q/(q+x))×100%
・ ポリプロピレン粉末の嵩密度(BD)はASTM D1895にしたがって決定した
・ スパン((d90−d10)/d50)と表されるPP粉末の粒径分布は、ASTM D1921の方法Aにしたがって決定した
・ RCは、ポリマー粉末におけるゴム含有量(プロピレン−エチレンコポリマー)であり、RCC2は、ポリマーのゴム部分におけるC2(エチレン)含有量である。RCおよびRCC2は、公知の手法によりNMRを用いて校正したIR分光法により測定した
・ MFIは、2.16kgの荷重により230℃で測定したメルトフローインデックスである。
【表1】

【表2】

【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合触媒成分を調製する方法であって、
i) R4が有機基であり、Xがハロゲンであり、zが0より大きく2未満である化合物R4zMgX2-Zを、アルコキシまたはアリールオキシ含有シラン化合物と接触させて、xが0より大きく2未満であり、各R1が独立してアルキル基を表す、化学式Mg(OR1xCl2-xの固体のマグネシウム含有化合物を得る工程、
ii) 前記固体のMg(OR1xCl2-xを、内部電子供与体およびMがTi,Zr,Hf,AlまたはSiであり得、各R2およびR3が、独立して、アルキル、アルケニルまたはアリール基を表し、vがMの価数であり、wがvより小さい、化学式M(OR2v-w(R3wの化合物により形成される群から選択される少なくとも1種類の活性化化合物と、不活性分散剤の存在下で接触させて、中間体反応生成物を得る工程、および
iii) 前記中間体反応生成物をハロゲン含有Ti化合物と接触させる工程、
を有してなる方法。
【請求項2】
前記R1基の少なくとも1つがエチル基を表すことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記活性化化合物が、カルボン酸、無水カルボン酸、カルボン酸エステル、アルコール、エーテル、およびチタンテトラアルコキシドにより形成される群から選択されることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記活性化化合物2種類の混合物が用いられることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記化学式M(OR2v-w(R3wの化合物および前記内部電子供与体の組合せが前記活性化化合物として用いられることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の方法。
【請求項6】
MがTiであり、前記内部電子供与体がカルボン酸エステルであることを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記R2基の少なくとも1つがエチル基を表すことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記分散剤が脂肪族炭化水素であることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記活性化化合物のMg(OR1xCl2-xに対するモル比が0.05と0.5の間であることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9いずれか1項記載の方法により得られた触媒成分および共触媒を有してなる重合触媒系。
【請求項11】
前記共触媒が、元素の周期表の1,2,12または13族からの金属を含有する有機金属化合物であり、外部電子供与体をさらに含むことを特徴とする請求項10記載の触媒系。
【請求項12】
少なくとも1種類のオレフィンを請求項10または11記載の重合触媒系と接触させることによるポリオレフィンを製造する方法。
【請求項13】
前記オレフィンがプロピレンまたはプロピレンとエチレンの混合物であることを特徴とする請求項12記載の方法。

【公表番号】特表2009−537675(P2009−537675A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511403(P2009−511403)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004572
【国際公開番号】WO2007/134851
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】