説明

プローブの真直度測定方法

【課題】真直度測定用のセンサなどを別途用意しなくても、プローブの真直度を実際の使用環境の中で測定することができるプローブの真直度測定方法を提供する。
【解決手段】形状誤差が既知の測定基準面72を有する測定治具71を、測定基準面72がXYステージ2の移動方向に傾斜するように、XYステージ2の載置面2Aに載置する準備工程と、プローブのスタイラス14が測定基準面に一定圧で接触するように駆動用アクチュエータを制御しながらXYステージを所定距離移動させ、そのときのスタイラスの変位位置をプローブの変位検出器から測定する測定工程と、これによって得られたスタイラスの測定位置Zreal、計算によって得られるスタイラスの理論位置Znomおよび測定基準面の傾斜角度θから、スタイラスの真直誤差を求める演算工程と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブの真直度測定方法に関する。詳しくは、プローブを用いて被測定物の形状や表面粗さなどの表面性状を測定する表面性状測定装置において、プローブの真直度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プローブを用いて被測定物の形状や表面粗さなどの表面性状を測定する表面性状測定装置として、粗さ測定機、輪郭測定機、三次元倣い測定機などが知られている。
例えば、三次元倣い測定機では、上下方向(Z軸方向)へ移動可能なZ軸スライダに、スタイラス(測定子)がZ軸方向へ微小変位可能なプローブを取り付け、このプローブのスタイラスを被測定物に接触させ、このときの押し込み量(測定子のZ軸方向の押し込み量)が一定になるようにZ軸スライダを上下方向へ移動させながら、倣い測定を行う。
【0003】
従来、倣い測定機に取り付けられるプローブは、例えば、特許文献1に記載の表面形状測定用トレーサなどのように、スタイラスのZ軸方向への変位が微小で、かつ、押し込み量も一定であるため、測定子をZ軸方向へ移動させる直線案内機構の真直度が、測定精度に大きな影響を与えることは少ない。
【0004】
最近では、低測定力で高速な測定を実現するために、プローブ自体の測定範囲を広くし、かつ、測定力をアクティブに制御して低測定力で高速な倣い測定を、倣いプローブ自体で行うシステムも提案されているが、このような測定範囲を広くしたプローブを用いると、スタイラスをZ軸方向へ移動させる直線案内機構の真直度が、測定精度に大きな影響を与える。
例えば、図7に示すように、プローブ8内に設けられる直線案内機構の真直度によっては、プローブ8のスタイラス14がZ軸方向へΔz変位したとき、X軸またはY軸方向に対してずれる。すると、X軸およびY軸における変位を検出している検出値と、スタイラス14の測定点とが異なってしまうため、測定誤差が生じる。
【0005】
そのため、従来の測定機などにおいては、プローブ内に設けられる直線案内機構の運動精度を補正するため真直度測定が行われる。
従来の真直度測定では、図8に示すように、スタイラス14の先端に触針14Aに代えて静電容量センサ101を取り付けてスタイラス14をZ軸方向へ移動させ、ゲージブロック102などのデータム面103(参照平面)を基準として、各位置でのデータム面とのギャップを計測することによって、スタイラス14(スタイラスを移動させる直線案内機構)の真直度を求める方法がとられている。
【0006】
【特許文献1】特開昭64−53109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の方法では、測定の都度、スタイラスの先端に静電容量センサを取り付けて測定しなければならないため、静電容量センサを別に用意する必要がある。
このことは、経済的負担が大きく、また、取り付けや取り外し作業を伴ううえ、真直度精度も用いる静電容量センサの精度に影響される。
さらに、静電容量センサの場合、センサとコントローラとを接続するケーブルの屈曲力がスタイラスに外力として加わるため、静電容量センサを取り付けていないときのスタイラスの運動軌跡とは異なる運動軌跡となってしまい、正確な真直度測定を行えない。
【0008】
本発明の目的は、真直度測定用のセンサなどを別途用意しなくても、プローブの真直度を実際の使用環境の中で測定することができるプローブの真直度測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の表面性状測定装置は、被測定物を載置する載置面を有し、その載置面と平行な方向へ移動可能に設けられたテーブルと、プローブとを備え、前記プローブは、筐体と、この筐体に移動可能に設けられ被測定物の表面に接触される測定子と、この測定子を前記テーブルの載置面に対して略直交するテーブル直交方向へ変位させる測定子移動機構と、前記筐体に対する前記測定子の変位量を検出する変位検出手段とを含んで構成され、前記テーブルと前記プローブとを相対移動させ、前記プローブの測定子を被測定物の表面に接触させながら、被測定物の表面性状を測定する表面性状測定装置において、前記プローブの真直度を測定するプローブの真直度測定方法であって、形状誤差が既知の測定基準面を有する測定治具を、前記測定基準面が前記テーブルの移動方向に沿って傾斜するように、前記テーブルの載置面に載置する準備工程と、前記プローブの測定子が前記測定治具の測定基準面に一定圧で接触するように前記測定子移動機構を制御しながら前記テーブルを所定距離移動させ、そのときの測定子の変位位置を前記変位検出手段で測定する測定工程と、この測定工程によって得られた前記測定子の測定位置、前記テーブルが所定距離移動したときに前記測定子が真直誤差なく理想的に変位したと仮定した際の測定子の理論位置および前記載置面に対する前記測定基準面の傾斜角度から、前記プローブの真直誤差を求める演算工程と、を備えることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、準備工程において、形状誤差が既知の測定基準面を有する測定治具を、測定基準面がテーブルの移動方向に沿って傾斜するように、テーブルの載置面に載置する。
続いて、測定工程において、プローブの測定子が測定治具の測定基準面に一定圧で接触するように、測定子移動機構を制御しながらテーブルを所定距離移動させ、そのときの測定子の変位位置をプローブの変位検出手段によって測定する。
最後に、演算工程において、測定工程によって得られた測定子の測定位置、計算によって得られる測定子の理論位置および測定基準面の傾斜角度から、プローブの真直度を求める。具体的には、測定工程によって得られた測定子の測定位置をZreal(x,y)、計算によって得られる測定子の理論位置をZnom(x,y)、測定基準面の傾斜角度をθとしたとき、プローブの真直誤差を、
プローブの真直誤差={Zreal(x,y)−Znom(x,y)}/tanθ
から求める。
【0011】
従って、真直度測定用のセンサなどを別途用意しなくても、プローブの真直度を実際の使用環境の中で測定することができる。そのため、経済的負担を軽減でき、また、真直度測定用のセンサの取り付けや取り外し作業も不要であるから、測定作業を効率化でき、しかも、真直度精度も静電容量センサの精度に影響されない。さらに、静電容量センサとコントローラとの接続するケーブルの屈曲力が測定子に外力として加わることがないため、高精度な真直度測定を実現できる。
【0012】
本発明のプローブの真直度測定方法において、前記表面性状測定装置は、先端に前記プローブを取付可能な可動部材と、前記テーブルと前記可動部材とを前記載置面と平行な面内において互いに直交するXおよびY軸方向へ相対変位させるX軸駆動機構およびY軸駆動機構と、前記テーブルと前記可動部材とのXおよびY軸方向への相対変位量を検出するX軸変位検出手段およびY軸変位検出手段と、前記可動部材を前記XおよびY軸方向に対して直交するZ軸方向へ変位させるZ軸駆動機構と、前記可動部材のZ軸方向への変位量を検出するZ軸変位検出手段とを備える、構成が好ましい。
【0013】
このような構成によれば、X軸駆動機構、Y軸駆動機構を駆動させて、テーブルと可動部材とをXおよびY軸方向へ相対変位させるとともに、Z軸駆動機構を駆動させて、プローブをZ軸方向へ変位させながら、プローブの測定子を被測定物の表面に接触させる。プローブの測定子の押し込み量が一定(測定力が一定)になるように、測定子移動機構を駆動させながら、X軸駆動機構およびY軸駆動機構を駆動させて、テーブルと可動部材とをX軸方向およびY軸方向へ相対移動させる。
この相対移動において、例えば、一定時間毎に、X軸変位検出手段、Y軸変位検出手段、Z軸変位検出手段およびプローブの変位検出手段からの検出値を取り込んで、測定子が接触している被測定物の測定点座標値を求めれば、測定力一定状態で被測定物表面の形状や粗さなどを倣い測定することができる。
【0014】
この倣い測定において、倣いプローブの測定子の測定力が一定になるように、測定子移動機構を駆動させながら、倣い測定を行う。その際、予め、プローブの測定子移動機構の真直誤差が求められているから、この真直誤差を、各軸変位検出手段(X、Y軸変位検出手段)の検出値に対して補正すれば、測定子が接触している被測定物の測定点を高精度に求めることができる。
従って、測定子移動機構を駆動させながら、倣い測定を行う際に問題となる、プローブの直線案内機構などに起因する測定精度の低下を回避できる。このことは、測定誤差の発生を少なくするために、直線案内機構の真直度を高精度に組立、加工したり、あるいは、プローブの取り付け精度を高精度に組み付けたりする必要もないので、組立や加工作業、あるいは、作業者への負担を軽減できる。
【0015】
本発明のプローブの真直度測定方法において、前記プローブは、前記筐体に設けられたベースと、このベースに設けられ先端に接触部を有する測定子と、この測定子を振動させる加振素子と、前記測定子の振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子とを含んで構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、加振要素によって測定子を振動させ、この状態において、測定子を被測定物の表面に接触させる。測定子が被測定物の表面に接触すると、測定子の振動が拘束されるため、検出素子からの検出信号が減衰される。従って、検出素子からの検出信号の減衰量が常に一定になるように、測定子移動機構を制御しながら倣い測定を行うことにより、高精度な倣い測定を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<全体構成の説明(図1および図2参照)>
図1は、本実施形態に係る表面性状測定装置を示す正面図、図2は、同表面性状測定装置の側面図である。
本実施形態に係る表面性状測定装置は、基台1と、被測定物を載置するテーブルとしてのXYステージ2と、このXYステージ2を水平面内の互いに直交するXおよびY軸方向へ変位させるX軸駆動機構3およびY軸駆動機構4と、基台1の上面に跨って設けられた門形フレーム5と、この門形フレーム5のクロスレール5Aに設けられた可動部材としてのZ軸スライダ6と、このZ軸スライダ6をXおよびY軸方向に対して直交するZ軸方向へ変位させるZ軸駆動機構7と、Z軸スライダ6に取り付けられたプローブ8とを含んで構成されている。
【0017】
XYステージ2は、上面に被測定物を載置する平坦な載置面2Aを有し、その載置面2Aと平行な面内において互いに直交するXおよびY軸方向へ移動可能に設けられている。
X軸駆動機構3およびY軸駆動機構4は、例えば、ボールねじ軸と、このボールねじ軸に螺合されたナット部材とを有する送りねじ機構によって構成されている。
Z軸駆動機構7も、X軸駆動機構3やY軸駆動機構4と同様に、例えば、ボールねじ軸と、このボールねじ軸に螺合されたナット部材とを有する送りねじ機構によって構成されている。
【0018】
<プローブ8の説明(図3参照)>
プローブ8は、Z軸スライダ6に取り付けられた筐体11と、この筐体11に設けられたセンサ部12と、このセンサ部12をZ軸方向へ変位させる測定子移動機構としての駆動用アクチュエータ17と、この駆動用アクチュエータ17によるセンサ部12の変位量(つまり、筐体11に対するセンサ部12の変位量)を検出する変位検出手段としてのセンサ部変位検出器18(スケールと検出ヘッドからなる)とを含んで構成されている。
【0019】
センサ部12は、金属製のベース13と、このベース13にZ軸方向と平行に設けられ被測定物の表面に接触される測定子としてのスタイラス14と、このスタイラス14を振動(軸方向へ振動)させる加振素子15と、スタイラス14の振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子16とから構成されている。スタイラス14の先端には、ダイヤモンドチップやルビーなどで構成された接触部としての触針14Aが接着固定されている。加振素子15および検出素子16は、1枚の圧電素子によって構成され、ベース13にそれぞれ1枚ずつ接着固定されている。
【0020】
いま、センサ部12の加振素子15に対して、特定の周波数と振幅をもつ入力信号を与えると、検出素子16では、特定の周波数と振幅の出力信号が得られる。
スタイラス14が被測定物と非接触状態にあるとき、スタイラス14の共振周波数で一定の振幅をもつ入力信号を加振素子15に加えると、スタイラス14が共振し、検出素子16に振幅Poの出力信号が得られる。スタイラス14が被測定物に接触すると、出力信
号の振幅がPoからPxに減衰する。
従って、センサ部12を被測定物に接触させる際、減衰率(Px/Po)が常に一定となるように、駆動用アクチュエータ17でセンサ部12と被測定物との距離を制御すれば、測定力一定状態で被測定物の形状や粗さを測定することができる。
【0021】
<制御システムの説明(図4参照)>
本制御システムは、制御装置31と、プローブ8と、駆動・変位検出装置41と、表示部51と、入力部61とを含んで構成されている。
駆動・変位検出装置41は、X軸駆動機構3、Y軸駆動機構4およびZ軸駆動機構7のほかに、XYステージ2のXおよびY軸方向への変位量を検出するX軸変位検出器42およびY軸変位検出器43、Z軸スライダ6のZ軸方向への変位量を検出するZ軸変位検出器44を備えている。
【0022】
制御装置31は、プローブ8のセンサ部12およびセンサ部変位検出器18からの出力信号を入力として駆動用アクチュエータ17を駆動する倣い制御部32と、真直度補正データ記憶部33と、計数及び補正演算処理部34と、この計数及び補正演算処理部34からの出力に基づいて各軸駆動機構3,4,7を制御する制御処理部35と、計数及び補正演算処理部34からの出力を表示部51に表示する測定データ処理部36とを含んで構成されている。
【0023】
真直度補正データ記憶部33には、プローブ8の駆動用アクチュエータ17のZ軸方向の各変位位置における真直誤差が補正データとして記憶されている。具体的には、駆動用アクチュエータ17をZ軸方向へ移動した各位置でのXおよびY軸方向の真直誤差が補正データとして記憶されている。
計数及び補正演算処理部34は、真直度補正データ記憶部33の中からセンサ部変位検出器18からの検出値に対応する補正データを読み出し、この補正データで各軸変位検出器、つまり、X,Y軸変位検出器42,43の検出値を補正して、スタイラス14の座標値を算出する。
【0024】
<真直度測定の説明(図5および図6参照)>
図5は、真直度測定の様子を示している。予め、真直度測定に用いる測定治具71を用意しておく。
測定治具71は、正面(図5の状態)から見て直角三角形状、平面から見て矩形形状のブロックで、斜面が高精度に仕上げられかつ形状誤差が既知の測定基準面72として形成されている。例えば、底面に対して測定基準面72の傾斜角度θが45°の直角プリズムなどによって構成されている。
【0025】
まず、測定基準面72がXYステージ2の移動方向、例えば、X軸方向に沿って傾斜するように、測定治具71をXYステージ2の載置面2Aに載置する(準備工程)。
続いて、プローブ8の駆動用アクチュエータ17の駆動により、センサ部12をZ軸方向へ変位させ、スタイラス14の触針14Aを測定治具71の測定基準面72に接触させる。スタイラス14の触針14Aが測定治具71の測定基準面72に一定圧で接触するように駆動用アクチュエータ17を駆動制御しながら、XYステージ2をX軸方向へ一定ピッチずつ移動させ、そのときのスタイラス14の変位位置をセンサ部変位検出器18によって測定する(測定工程)。
【0026】
例えば、図6に示すように、XYステージ2をX軸方向へ移動させたときに、測定工程によって得られたスタイラス14の測定位置をZreal(x,y)、計算によって得られるスタイラス14の理論位置、つまり、スタイラス14が真直誤差なく理想的にZ軸方向へ変位したと仮定した際のスタイラス14の位置をZnom(x,y)、測定基準面72の傾斜角度をθとすると、プローブの真直誤差は、
プローブの真直誤差={Zreal(x,y)−Znom(x,y)}/tanθ
から求められる。
これを、計数及び補正演算処理部34において行う(演算工程)。つまり、計数及び補正演算処理部34では、予め、測定基準面72の傾斜角度θを記憶し、この傾斜角度θとXYステージ2の移動量とからスタイラス14の理論位置を求め、これらとスタイラス14の測定位置とからプローブの真直誤差を求める。
【0027】
次に、測定治具71の向きを90度回転させたのち、プローブ8の駆動用アクチュエータ17の駆動により、スタイラス14の触針14Aを測定治具71の測定基準面72に接触させる。スタイラス14の触針14Aが測定治具71の測定基準面72に一定圧で接触するように駆動用アクチュエータ17を駆動制御しながら、XYステージ2をY軸方向へ一定ピッチずつ移動させ、そのときのスタイラス14の変位位置をセンサ部変位検出器18によって測定する(測定工程)。続いて、同様にしてプローブの真直誤差を演算する(演算工程)。
このようにして求められたプローブの真直誤差、つまり、スタイラス14のZ軸方向の各位置におけるX,Y軸方向の真直誤差を真直度補正データ記憶部33に記憶させたのち、測定を行う。
【0028】
<倣い測定の説明>
倣い測定にあたっては、X軸駆動機構3およびY軸駆動機構4を駆動させて、XYステージ2をX軸方向およびY軸方向へ変位させるとともに、Z軸駆動機構7を駆動させて、プローブ8をZ軸方向へ変位させながら、プローブ8のスタイラス14を被測定物の表面に接触させる。
プローブ8の検出素子16からの出力信号が一定の減衰率になるように、駆動用アクチュエータ17を駆動させながら、X軸駆動機構3およびY軸駆動機構4を駆動させて、XYステージ2をX軸方向およびY軸方向へ移動させる。
【0029】
この測定時において、一定時間毎に、センサ部変位検出器18からの検出値を読み込んだのち、真直度補正データ記憶部33のなかから検出値に対応する補正値を読み出し、この補正値でX,Y軸変位検出器42,43の検出値を補正して、スタイラス14の座標値を算出する。
これにより、プローブ8の駆動用アクチュエータ17(直線案内機構)の真直度などに起因する測定精度の低下を回避できるから、高精度な倣い測定を実現できる。
【0030】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、真直度測定用のセンサなどを別途用意しなくても、プローブの真直度を実際の使用環境の中で測定することができる。そのため、経済的負担を軽減でき、また、真直度測定用のセンサの取り付けや取り外し作業も不要であるから、測定作業を効率化でき、しかも、真直度精度も静電容量センサの精度に影響されない。さらに、静電容量センサとコントローラとを接続するケーブルの屈曲力が測定子に外力として加わることがないため、高精度な測定を実現できる。
【0031】
また、真直度測定によって得られた真直誤差を補正値として真直度補正データ記憶部33に記憶し、この真直度補正データ記憶部33の中からセンサ部変位検出器18で検出された検出値に対応する補正値を読み出したのち、この補正値でX,Y軸変位検出手段42,43の検出値を補正して、スタイラス14の座標値を算出するようにしたから、プローブ8の直線案内機構の真直度などに起因する測定精度の低下を回避できる。
このことは、測定誤差の発生を少なくするために、直線案内機構の真直度を高精度に組立、加工したり、あるいは、倣いプローブの取り付け精度を高精度に組み付けたりする必要もないので、加工や組立作業、あるいは、作業者の負担を軽減できる。
【0032】
<変形例>
本発明は、前述の実施形態に限定されるものでなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良などは本発明に含まれる。
前記実施形態では、XYステージ2をX軸方向およびY軸方向へ移動可能に構成したが、XYステージ2と可動部材であるZ軸スライダ6とを、水平面内の互いに直交するXおよびY軸方向へ相対変位可能に構成してもよい。例えば、ステージ2をY軸方向へ変位可能に構成するとともに、Z軸スライダ6をX軸およびZ軸方向へ移動可能に構成するようにしてもよい。
【0033】
前記実施形態では、ステージ2とプローブ8を取り付けたZ軸スライダ6とが、X,Y,Z軸方向へ相対移動する三次元の測定装置を対象としたが、例えば、プローブ8を取り付けたZ軸スライダ6がZ軸方向へ移動可能で、ステージ2がX,Y軸方向のいずれか一軸方向へ移動可能な構成、つまり、二次元の測定装置であってもよい。
【0034】
前記実施形態では、振動式の倣いプローブ8を用いたが、これに限られない。例えば、スタイラス14が被測定物に接触したときに発生するスタイラスの変位を検出する構造、あるいは、スタイラス14が被測定物に接触したときに発生するスタイラス14の撓みを検出する構造などであってもよい。
【0035】
前記実施形態では、測定治具71として、直角プリズムを用いたが、これに限られない。例えば、測定基準面72を有する平板状の測定治具(例えば、オプティカルフラットなど)を、測定基準面72が傾斜するように、補助台などを用いて、ステージ2の載置面2A上に載置してもよい。
また、測定基準面72の傾斜角度θについても、前記実施形態だ述べた45°に限らず、他の角度であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、被測定物の表面粗さを測定する表面粗さ測定機、形状測定機、三次元倣い測定機などに利用可能である。とくに、微細形状の測定に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る表面性状測定装置の一実施形態を示す正面図。
【図2】同上実施形態の側面図。
【図3】同上実施形態のプローブを示す図。
【図4】同上実施形態の制御システムを示す図。
【図5】同上実施形態において、真直度測定の様子を示す図。
【図6】同上実施形態において、真直誤差を求める説明図。
【図7】プローブにおいて、測定子が変位した際の真直度誤差を示す図。
【図8】従来の真直度測定の様子を示す図。
【符号の説明】
【0038】
2…XYステージ(テーブル)、
3…X軸駆動機構、
4…Y軸駆動機構、
6…Z軸スライダ(可動部材)、
7…Z軸駆動機構、
8…プローブ、
11…筐体、
12…センサ部、
13…ベース、
14…スタイラス(測定子)、
15…加振要素、
16…検出要素、
17…駆動用アクチュエータ(測定子移動機構)、
18…センサ部変位検出器(センサ部変位検出手段)、
31…制御装置、
33…真直度補正データ記憶部(補正データテーブル)、
34…計数及び補正演算処理部
42…X軸変位検出器(X軸変位検出手段)、
43…Y軸変位検出器(Y軸変位検出手段)、
44…Z軸変位検出器(Z軸変位検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を載置する載置面を有し、その載置面と平行な方向へ移動可能に設けられたテーブルと、プローブとを備え、
前記プローブは、筐体と、この筐体に移動可能に設けられ被測定物の表面に接触される測定子と、この測定子を前記テーブルの載置面に対して略直交するテーブル直交方向へ変位させる測定子移動機構と、前記筐体に対する前記測定子の変位量を検出する変位検出手段とを含んで構成され、
前記テーブルと前記プローブとを相対移動させ、前記プローブの測定子を被測定物の表面に接触させながら、被測定物の表面性状を測定する表面性状測定装置において、前記プローブの真直度を測定するプローブの真直度測定方法であって、
形状誤差が既知の測定基準面を有する測定治具を、前記測定基準面が前記テーブルの移動方向に沿って傾斜するように、前記テーブルの載置面に載置する準備工程と、
前記プローブの測定子が前記測定治具の測定基準面に一定圧で接触するように前記測定子移動機構を制御しながら前記テーブルを所定距離移動させ、そのときの測定子の変位位置を前記変位検出手段で測定する測定工程と、
この測定工程によって得られた前記測定子の測定位置、前記テーブルが所定距離移動したときに前記測定子が真直誤差なく理想的に変位したと仮定した際の測定子の理論位置および前記載置面に対する前記測定基準面の傾斜角度から、前記プローブの真直誤差を求める演算工程と、を備えることを特徴とするプローブの真直度測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプローブの真直度測定方法において、
前記演算工程では、前記測定工程によって得られた前記測定子の測定位置をZreal(x,y)、前記測定子の理論位置をZnom(x,y)、前記載置面に対する前記測定基準面の傾斜角度をθとしたとき、前記プローブの真直誤差を、
プローブの真直誤差={Zreal(x,y)−Znom(x,y)}/tanθ
から求める、ことを特徴とするプローブの真直度測定方法。
【請求項3】
請求項1に記載のプローブの真直度測定方法において、
前記表面性状測定装置は、先端に前記プローブを取付可能な可動部材と、前記テーブルと前記可動部材とを前記載置面と平行な面内において互いに直交するXおよびY軸方向へ相対変位させるX軸駆動機構およびY軸駆動機構と、前記テーブルと前記可動部材とのXおよびY軸方向への相対変位量を検出するX軸変位検出手段およびY軸変位検出手段と、前記可動部材を前記XおよびY軸方向に対して直交するZ軸方向へ変位させるZ軸駆動機構と、前記可動部材のZ軸方向への変位量を検出するZ軸変位検出手段とを備える、ことを特徴とするプローブの真直度測定方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載のプローブの真直度測定方法において、
前記プローブは、前記筐体に設けられたベースと、このベースに設けられ先端に接触部を有する測定子と、この測定子を振動させる加振素子と、前記測定子の振動状態を検出し検出信号として出力する検出素子とを含んで構成されている、ことを特徴とするプローブの真直度測定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−186207(P2009−186207A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23759(P2008−23759)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】