説明

プローブカードのクランプ機構及び検査装置

【課題】プローブカードの落下を確実に防止することができるプローブカードのクランプ機構を提供する。
【解決手段】本発明のクランプ機構10は、インサートリング21下面に固定されたシリンダリング11と、シリンダリング11と嵌合した状態で昇降するピストンリング12と、ピストンリング12に連結され且つプローブカード30を支承するアウターリング13と、を備え、インサートリング21下面の外周縁部に全周に渡って形成され且つ圧縮空気が給排される深溝21Aと、深溝21A内にその内部の圧縮空気を所定圧力に保つOリング14と、ピストンリング12上面に全周に渡って形成され且つピストンリング12によりシール部材を深溝21A内で昇降させる環状突起部と、シリンダリング11のフランジ部11Bとピストンリング12のリング部12Bの間に周方向に所定間隔を空けて弾装された複数のコイルスプリング15と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プローブカードのクランプ機構及び検査装置に関し、更に詳しくは、検査中にプローブカードが落下することを確実に防止することができるプローブカードのクランプ機構及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の検査装置は、例えば図3に示すように、互いに隣接するローダ室1及びプローバ室2を備えている。ローダ室1は、複数枚の半導体ウエハWをカセット単位で収納するカセット収納部と、カセットから半導体ウエハWを一枚ずつ搬出入するウエハ搬送機構と、ウエハ搬送機構によって半導体ウエハWを搬送する間に半導体ウエハWをプリアライメントするプリアライメント機構と、を備えている。プローバ室2は、半導体ウエハWを保持しX、Y、Z及びθ方向に移動可能に構成されたウエハチャック3と、このウエハチャック3上の半導体ウエハWに形成された複数の電極パッドに接触する複数のプローブ4Aを有するプローブカード4と、このプローブカード4をカードホルダ(図示せず)介して固定するクランプ機構5と、を備え、制御装置の制御下で半導体ウエハWに形成された各デバイスの電気的特性検査を行なうように構成されている。尚、図3において、6はウエハチャック3と協働して半導体ウエハWとプローブカード4との位置合わせを行うアライメント機構で、6Aは上カメラ、6Bは下カメラである。
【0003】
クランプ機構5は、図3に示すようにプローバ室2の上面を形成するヘッドプレート7の開口部に装着されている。従来のクランプ機構5は、例えば本出願人が提案した特許文献1に記載のものがある。そこで、以下では、特許文献1に記載のクランプ機構を図4、図5に基づいて説明する。
【0004】
クランプ機構5は、図4、図5に示すように、ヘッドプレート7に固定されたインサートリング8と中心を一致させてその下面に図4に矢印A方向で正逆回転可能に取り付けられたロックリング51と、このロックリング51を囲んだ状態でインサートリング8の下面に対して取り付けられた支持リング52と、この支持リング52とこの支持リング52により図4に矢印B方向で正逆回転可能に支持され且つ後述のようにロックリング51を正逆回転操作するために連結された操作リング53と、この操作リング53にレバー54を介して連結されたエアシリンダ55と、を備え、エアシリンダ55のロッド55Aの伸縮により操作リング53を所定角度θだけ正逆回転させるようにしてある。
【0005】
ロックリング51は、図5に示すように、インサートリング8内周の筒状部8Aと嵌合するシリンダリング511と、このシリンダリング511の外周のフランジ部上面に装着されて気密室512を形成するOリング513と,このOリング513が嵌装されて気密室512を形成し得る下向きの溝を有すると共にシリンダリング511に従って昇降するピストンリング514と、このピストンリング514の全周に渡って形成された溝と係合して周方向で回転自在になったカード受けリング515と、を備えている。更に、インサートリング8下面には周方向等間隔に複数の窪みがピストンリング514の真上に位置させて形成され、これらの窪みにコイルスプリング516が装着されている。そして、複数のコイルスプリング516によってピストンリング514を常に下方に付勢している。
【0006】
カード受けリング515の内周面には図4、図5に示すように周方向間隔に複数の係合部515Aが中心に向けて延設され、また、カードホルダ41の外周面には周方向等間隔に複数の係合部41Aが外側に向けて延設されている。カード受けリング515の各係合部515Aの間をカードホルダ41の各係合部41Aが通り抜け、カード受けリング515が周方向に回転することにより各係合部515Aと各係合部41Aが係合してカード受けリング515でカードホルダ41を支持する。また、インサートリング8とシリンダリング511には外部から気密室512へ通じる流路がそれぞれ形成され、この流路を介して空気供給源から気密室512内へ圧縮空気を供給する。
【0007】
従って、気密室512では圧縮空気の受給により上昇した空気圧でピストンリング514と共に持ち上げられたカード受けリング515とシリンダリング511とでカードホルダ41を図5に示すように挟持する。また、プローブカードを交換する時には、コイルスプリング516の付勢力と気密室512内の排気によりピストンリング514を介してカード受けリング515が下降してカードホルダ41を解除し、この状態でカード受けリング515を回転させてプローブカードを取り外す。
【0008】
また、カード受けリング515には縦溝と横溝からなる側面形状が逆L字状の溝が形成され、操作リング53の内周面に取り付けられた操作用ピン(図示せず)が逆L字状の溝(図示せず)に嵌入し、操作リング53とカード受けリング515が連結されている。更に、操作リング53の内周面には操作用ピンから周方向に所定間隔を隔てた第1係合部(図示せず)が設けられ、この第1係合部の下側には周方向に傾斜する傾斜面が形成されている。カード受けリング515の外周面には縦溝から周方向に所定間隔を隔てた第2係合部(図示せず)が設けられ、第2係合部の下側には第1係合部の傾斜面と係合可能な同一傾斜角の傾斜面が形成されている。そして、操作リング53を操作し、操作ピンを介してカード受けリング515を回転させてカード受けリング515とシリンダリング511とでカードホルダ41を挟持すると、気密室512内の圧縮空気が何らかの原因で抜けても第1係合部と傾斜面と第2係合部の傾斜面が係合し、カード受けリング515、延いてはプローブカードが落下しないようになっている。
【0009】
【特許文献1】特開平10−308424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のクランプ機構5は、気密室512から圧縮空気が何らかの原因で抜けた場合のプローブカード4の落下防止策として、操作リング53及びカード受けリング515それぞれに傾斜面を有する第1、第2係合部を設けなくてはならず、クランプ機構5の構造が複雑になって加工コストが高くなる問題があった。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、プローブカードの落下を確実に防止することができると共に構造を簡素化してコストを低減することができるプローブカードのクランプ機構及び検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の請求項1に記載のプローブカードのクランプ機構は、検査装置のヘッドプレートに固定されたインサートリングに固定され且つプローブカードを着脱可能に固定するプローブカードのクランプ機構において、上記インサートリング下面に固定されたシリンダリングと、上記シリンダリングに、その外側から嵌合した状態で昇降するピストンリングと、上記ピストンリングに連結され且つ上記プローブカードを支承するアウターリングと、を備え、上記インサートリング下面の外周縁部に全周に渡って形成され且つ気体が給排される深溝と、上記深溝内にその内部の気体を所定圧力に保つように装着されたリング状のシール部材と、上記ピストンリング上面に全周に渡って形成され且つ上記ピストンリングの昇降により上記シール部材を上記深溝内で昇降させるリング状の突起と、上記シリンダリングのフランジ部と上記ピストンリングの上面の間に周方向に所定間隔を空けて弾装された複数のスプリングと、を有することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載のプローブカードのクランプ機構は、検査装置のヘッドプレートに固定されたインサートリングに固定され且つプローブカードを着脱可能に固定するプローブカードのクランプ機構において、上記インサートリング下面に固定されたフランジ部を有するシリンダリングと、上記シリンダリングに、その外側から嵌合した状態で昇降するピストンリングと、上記ピストンリングに外周面に周方向に沿って形成された溝と嵌合する突起部を有し且つ上記プローブカードを支承する支承部を有するアウターリングと、を備え、上記インサートリングの下面には気体供給源に接続される深溝が全周に渡って形成されていると共に上記深溝にはその内部の気密を保つようにリング状のシール部材が装着されており、上記ピストンリングには上記深溝内の上記シール部材を支承するリング状突起が形成されており、また、上記シリンダリングのフランジ部と上記ピストンリングの上面の間には周方向に所定間隔を空けて複数のスプリングが弾装されており、上記深溝内に供給された気体の圧力で上記ピストンリングを上記シリンダリングに対して下降させて上記プローブカードを取り外す共に、上記深溝内の気体を排気して上記複数のスプリングによって上記ピストンリングを上昇させて上記シリンダリングと上記アウターリングの支承部で上記プローブカードを挟持することを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項3に記載のプローブカードのクランプ機構は、請求項1または請求項2に記載の発明において、上記アウターリングは、カードホルダを介して上記プローブカードを支承することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項4に記載のプローブカードのクランプ機構は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、上記深溝には気体供給源が接続されていることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項5に記載の検査装置は、被検査体と電気的に接触して電気的検査を行うプローブカードと、上記プローブカードを着脱可能に保持するクランプ機構と、上記クランプ機構がインサートリングを介して固定されたヘッドプレートを備えた検査装置において、上記クランプ機構は、上記インサートリング下面に固定されたシリンダリングと、上記シリンダリングに、その外側から嵌合した状態で昇降するピストンリングと、上記ピストンリングに連結され且つ上記プローブカードを支承するアウターリングと、を備え、上記インサートリング下面の外周縁部に全周に渡って形成され且つ気体が給排される深溝と、上記深溝内にその内部の気体を所定圧力に保つように装着されたリング状のシール部材と、上記ピストンリング上面に全周に渡って形成され且つ上記ピストンリングの昇降により上記シール部材を上記深溝内で昇降させるリング状の突起と、上記シリンダリングのフランジ部と上記ピストンリングの上面の間に周方向に所定間隔を空けて弾装された複数のスプリングと、を有することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の請求項6に記載の検査装置は、被検査体と電気的に接触して電気的検査を行うフローブカードと、上記プローブカードを着脱可能に保持するクランプ機構と、上記クランプ機構がインサートリングを介して固定されたヘッドプレートを備えた検査装置において、上記クランプ機構は、上記インサートリング下面に固定されたフランジ部を有するシリンダリングと、上記シリンダリングに、その外側から嵌合した状態で昇降するピストンリングと、上記ピストンリングに外周面に周方向に沿って形成された溝と嵌合する突起部を有し且つ上記プローブカードを支承する支承部を有するアウターリングと、を備え、上記インサートリングの下面には気体供給源に接続される深溝が全周に渡って形成されていると共に上記深溝にはその内部の気密を保つようにリング状のシール部材が装着されており、上記ピストンリングには上記深溝内の上記シール部材を支承するリング状突起が形成されており、また、上記シリンダリングのフランジ部と上記ピストンリングの上面の間には周方向に所定間隔を空けて複数のスプリングが弾装されており、上記深溝内に供給された気体の圧力で上記ピストンリングを上記シリンダリングに対して下降させて上記プローブカードを取り外す共に、上記深溝内の気体を排気して上記複数のスプリングによって上記ピストンリングを上昇させて上記シリンダリングと上記アウターリングの支承部で上記プローブカードを挟持することを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の請求項7に記載の検査装置は、請求項5または請求項6に記載の発明において、上記アウターリングは、カードホルダを介して上記プローブカードを支承することを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の請求項8に記載の検査装置は、請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の発明において、上記深溝には気体供給源が接続されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、プローブカードの落下を確実に防止することができると共に構造を簡素化してコストを低減することができるプローブカードのクランプ機構及び検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のプローブカードのクランプ機構の一実施形態の右半分を示す断面図である。
【図2】(a)、(b)はそれぞれ図1の示すプローブカードのクランプ機構を示す図1に相当する断面図で、(a)はプローブカードを固定した状態を示す図、(b)はプローブカードを取り外す状態を示す図である。
【図3】従来の検査装置の一部を破断して示す正面図である。
【図4】従来のプローブカードのクランプ機構を示す平面図である。
【図5】図3のIV−IVに沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図1、図2に示す実施形態に基づいて本発明を説明する。
【0023】
本実施形態の検査装置は、ローダ室及びプローバ室を備え、プローバ室に設けられたプローブカードのクランプ機構(以下、単に「クランプ機構」と称す。)以外は従来の検査装置に準じて構成されている。そこで、以下では、本実施形態のクランプ機構10を中心に説明する。
【0024】
本実施形態のクランプ機構10は、例えば図1に示すように、ヘッドプレート20に固定されたインサートリング21下面の内周縁部に固定されたシリンダリング11と、シリンダリング11の外側から嵌合した状態で昇降するピストンリング12と、ピストンリング12の下端部に連結され且つプローブカード30を支承するカード受けリングとしてのアウターリング13と、を備え、後述のようにプローブカード30を着脱するように構成されている。プローブカード30にはカードホルダ31が付設され、クランプ機構10はカードホルダ31を介してプローブカード30を着脱する。インサートリング21、シリンダリング11、ピストンリング12及びアウターリング13は、いずれも軸芯を共有している。
【0025】
本実施形態のクランプ機構10は、上記の各構成部材以外にも従来と同様に図4、図5に示す支持リング、支持リングで正逆回転可能に支持された操作リング、操作リングを正逆回転させるレバー及びエアシリンダ等を備え、アウターリング13を正逆回転操作するように構成されている。これらの部材は、従来と同様に構成されているため、図1及び図2には図示されていない。
【0026】
図1に示すように、インサートリング21下面の外周縁部には全周に渡って例えばリング状の深溝21Aが形成され、また、インサートリング21にはその外周面から径方向の内側に向かう気体通路21Bが複数個所に形成されている。深溝21Aの径方向の断面形状は最奥部に行くほど狭くなり、その頂部で複数個所の気体通路21Bと連通している。これらの気体通路21Bの開口には例えば空気供給源(図示せず)がそれぞれ接続され、空気供給源から複数の気体通路21Bを介して深溝12A内へ圧縮空気を矢印Xで示すように供給し、また、深溝21Aから複数の気体通路21Bを介して外部へ圧縮空気を矢印Yで示すように排気するようにしてある。深溝21A内の圧縮空気の圧力は、検査装置の使用に即して適宜設定することができる。
【0027】
上述のように気体通路21Bはインサートリング21の外周面で開口しているように、気体通路21Bに接続される空気配管やアウターリング13を回転操作するための空気配管は、いずれもヘッドプレート20の上面側に配管され、配管作業の利便性を確保している。従来はこれらの空気配管がヘッドプレートの下面側に配管されていたため、配管作業の作業性が悪く、配管作業に多くの時間を割かざるを得なかった。また、空気配管等をヘッドプレート20の上面に配置したため、プローブカード30が取り付けられたヘッドプレート20の下面を平坦にすることができ、熱、振動等によるネジの緩みなどによる不具合を防止することができる。
【0028】
シリンダリング11は、図1に示すように、円筒状の直胴部11Aと、シリンダ部11Aの下端に形成されたフランジ部11Bとを有し、シリンダ部11Aの上端面がインサートリング21の下面に接続固定されている。
【0029】
また、ピストンリング12は、図1に示すように、シリンダリング11より大径に形成された円筒状の直胴部12Aと、直胴部12Aの上端のやや下方に直胴部12Aと直交するように形成された幅広のリング部12Bと、直胴部12Aの下端に形成されたフランジ部12Cと、直胴部12Aの延長線上でリング部12Bから突出する環状突起部12Dと、を有し、後述のようにシリンダリング11に対して昇降するように構成されている。環状突起部12Dは、インサートリング21のリング状の深溝21Aと嵌合し、後述のシール部材を支承している。また、リング部12Bとフランジ部12Cの間には全周に渡ってアウターリング13を連結するための溝が形成されている。
【0030】
図1に示すように、深溝21Aには全周に渡って円形状のシール部材(例えば、Oリング)14が嵌め込まれ、Oリング14によって深溝21Aの開口部を塞ぎ、内部の圧縮空気を所定圧力に保っている。また、深溝21Aにはピストンリング12の環状突起部12Aが嵌入し、深溝21A内のOリング14を支承している。
【0031】
更に図1に示すように、シリンダリング11のフランジ部11Bの上面とピストンリング12のリング部12Bの下面にはそれぞれ周方向全周に渡って所定間隔を空けて例えば円形状の凹部が複数設けられ、これらの凹部間にそれぞれコイルスプリング15が弾装され、ピストンリング12を水平状態のまま常に上方へ付勢している。従って、インサートリング21の深溝21A内に圧縮空気を供給することによってOリング14及びピストンリング12を下降させ、深溝21A内の圧縮空気を排気することによってピストンリング12が複数のコイルスプリング15によって付勢されて上昇する。
【0032】
また、アウターリング13は、図1に示すように、外周縁に形成され且つピストンリング12のリング部12Bとフランジ部12C間に形成された溝と係合する係合部13Aと、係合部13Aの下方から係合部13Aと平行して中心に向けて所定幅を持って延設されたリング部13Bと、リング部13Bの内周端の周方向所定間隔を空けた位置から中心に向けて延設された複数箇所のカード受け部13Cと、を有している。そして、隣接するカード受け部13Cの間は切欠部として形成され、この切欠部をリング状のカードホルダ31の外周端から水平方向に延設された複数の係合部31Aが通り抜けるようになっている。また、カード受け部13Cは、リング部13Bより薄肉状に形成されてリング部13Bとの境界に段部を形成している。この段部の高さがカードホルダ31の係合部31Aの肉厚と実質的に同一寸法に形成されている。
【0033】
従って、ピストンリング12が複数のコイルスプリング15を介して上昇することによりアウターリング13のカード受け部13Cとシリンダリング11のフランジ部11Bとでカードホルダ31の係合部31Aを挟持してプローブカード30をクランプ機構10に固定することができる。
【0034】
次に、クランプ機構10の動作について図2を参照しながら説明する。例えば、クランプ機構10に固定されたプローブカード30を交換する時には、例えばカード搬送機構がクランプ機構10の真下まで移動した後、上昇してプローブカード30を受ける態勢になる。
【0035】
この時、空気供給源の圧縮空気をインサートリング21の気体通路21Bから深溝21A内に供給し、深溝21A内の空気圧が上昇すると、深溝21A内の空気圧がコイルスプリング15の付勢力に打ち勝ってOリング14が下降する。これに伴ってOリング14を支承するピストンリング12及びアウターリング13が図2の(a)に示す状態から下降し、同図の(b)に示すようにカードホルダ31の係合部31Aがシリンダリング11のフランジ部11Bから離間してプローブカードの固定を解除すると共に、カード搬送機構でプローブカード30を支承する。これによりカードホルダ31の係合部31Aがアウターリング13のカード受け部13Cから僅かに浮上する。
【0036】
この間に回転操作リング(図示せず)がアウターリング13を回転させてカードホルダ31の係合部31Aがアウターリング13のカード受け部13Cから外れる。引き続き、カード搬送機構が下降してクランプ機構10からプローバ室の外部へ搬送する。その後、次のプローブカード30をカード搬送機構でクランプ機構10まで搬送し、プローブカード30を取り外す時とは逆の操作でアウターリング13を回転させると、プローブカード30のカードホルダ31の係合部31Aがアウターリング13のカード受け部13C上に位置する。この時、深溝21A内の圧縮空気を排気して空気圧を下げると、コイルスプリング15の付勢力が深溝21A内の空気圧に打ち勝ち、ピストンリング12及びアウターリング13を介してプローブカード30を持ち上げ、アウターリング13のカード受け部13Cとシリンダリング11のフランジ部11Bとでカードホルダ31を挟持し、プローブカード30をクランプ機構10で固定する。これによって、プローブカード30で半導体ウエハの電気的特性検査を行うことができる。
【0037】
プローブカード30によって半導体ウエハの電気的特性検査をしている時に、何らかの原因でインサートリング21の深溝21A内の圧縮空気の圧力が低下することがあっても、本実施形態のクランプ機構10ではコイルスプリング15の付勢力でプローブカード30を固定しているため、プローブカード30がクランプ機構10から落下することがなく、プローブカード30が半導体ウエハにぶつかってプローブカード30及び半導体ウエハが損傷することがなく、所定の検査を確実に行うことができる。
【0038】
以上説明したように本実施形態によれば、従来と違ってコイルスプリング15の付勢力でプローブカード30を固定するため、インサートリング21の深溝21A内の空気圧が何らかの原因で低下することがあっても、プローブカード30がクランプ機構10から落下してプローブカード30や半導体ウエハを損傷することがなく、常に安定した検査を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、クランプ機構10に用いられる空気配管等をヘッドプレート20の上面に配置したため、メンテナンス作業等を作業効率が格段に向上させることができる。また、ヘッドプレート20の下面が平坦になったため、熱、振動等によるネジの緩みをなくすことができる。
【0040】
尚、本発明は上記実施形態に何ら制限されるものではなく、必要に応じて各構成要素を適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、半導体製造分野の検査装置に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 クランプ機構
11 シリンダリング
11B フランジ部
12 ピストンリング
12D 環状突起部
13 アウターリング
13C カード受け部(支承部)
14 Oリング(シール部材)
15 コイルスプリング
20 ヘッドプレート
21 インサートリング
21A 深溝
30 プローブカード
31 カードホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査装置のヘッドプレートに固定されたインサートリングに固定され且つプローブカードを着脱可能に固定するプローブカードのクランプ機構において、上記インサートリング下面に固定されたシリンダリングと、上記シリンダリングに、その外側から嵌合した状態で昇降するピストンリングと、上記ピストンリングに連結され且つ上記プローブカードを支承するアウターリングと、を備え、上記インサートリング下面の外周縁部に全周に渡って形成され且つ気体が給排される深溝と、上記深溝内にその内部の気体を所定圧力に保つように装着されたリング状のシール部材と、上記ピストンリング上面に全周に渡って形成され且つ上記ピストンリングの昇降により上記シール部材を上記深溝内で昇降させるリング状の突起と、上記シリンダリングのフランジ部と上記ピストンリングの上面の間に周方向に所定間隔を空けて弾装された複数のスプリングと、を有することを特徴とするプローブカードのクランプ機構。
【請求項2】
検査装置のヘッドプレートに固定されたインサートリングに固定され且つプローブカードを着脱可能に固定するプローブカードのクランプ機構において、上記インサートリング下面に固定されたフランジ部を有するシリンダリングと、上記シリンダリングに、その外側から嵌合した状態で昇降するピストンリングと、上記ピストンリングに外周面に周方向に沿って形成された溝と嵌合する突起部を有し且つ上記プローブカードを支承する支承部を有するアウターリングと、を備え、上記インサートリングの下面には気体供給源に接続される深溝が全周に渡って形成されていると共に上記深溝にはその内部の気密を保つようにリング状のシール部材が装着されており、上記ピストンリングには上記深溝内の上記シール部材を支承するリング状突起が形成されており、また、上記シリンダリングのフランジ部と上記ピストンリングの上面の間には周方向に所定間隔を空けて複数のスプリングが弾装されており、上記深溝内に供給された気体の圧力で上記ピストンリングを上記シリンダリングに対して下降させて上記プローブカードを取り外す共に、上記深溝内の気体を排気して上記複数のスプリングによって上記ピストンリングを上昇させて上記シリンダリングと上記アウターリングの支承部で上記プローブカードを挟持することを特徴とするプローブカードのクランプ機構。
【請求項3】
上記アウターリングは、カードホルダを介して上記プローブカードを支承することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプローブカードのクランプ機構。
【請求項4】
上記深溝には気体供給源が接続されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のプローブカードのクランプ機構。
【請求項5】
被検査体と電気的に接触して電気的検査を行うフローブカードと、上記プローブカードを着脱可能に保持するクランプ機構と、上記クランプ機構がインサートリングを介して固定されたヘッドプレートを備えた検査装置において、上記クランプ機構は、上記インサートリング下面に固定されたシリンダリングと、上記シリンダリングに、その外側から嵌合した状態で昇降するピストンリングと、上記ピストンリングに連結され且つ上記プローブカードを支承するアウターリングと、を備え、上記インサートリング下面の外周縁部に全周に渡って形成され且つ気体が給排される深溝と、上記深溝内にその内部の気体を所定圧力に保つように装着されたリング状のシール部材と、上記ピストンリング上面に全周に渡って形成され且つ上記ピストンリングの昇降により上記シール部材を上記深溝内で昇降させるリング状の突起と、上記シリンダリングのフランジ部と上記ピストンリングの上面の間に周方向に所定間隔を空けて弾装された複数のスプリングと、を有することを特徴とすることを特徴とする検査装置。
【請求項6】
被検査体と電気的に接触して電気的検査を行うフローブカードと、上記プローブカードを着脱可能に保持するクランプ機構と、上記クランプ機構がインサートリングを介して固定されたヘッドプレートを備えた検査装置において、上記クランプ機構は、上記インサートリング下面に固定されたフランジ部を有するシリンダリングと、上記シリンダリングに、その外側から嵌合した状態で昇降するピストンリングと、上記ピストンリングに外周面に周方向に沿って形成された溝と嵌合する突起部を有し且つ上記プローブカードを支承する支承部を有するアウターリングと、を備え、上記インサートリングの下面には気体供給源に接続される深溝が全周に渡って形成されていると共に上記深溝にはその内部の気密を保つようにリング状のシール部材が装着されており、上記ピストンリングには上記深溝内の上記シール部材を支承するリング状突起が形成されており、また、上記シリンダリングのフランジ部と上記ピストンリングの上面の間には周方向に所定間隔を空けて複数のスプリングが弾装されており、上記深溝内に供給された気体の圧力で上記ピストンリングを上記シリンダリングに対して下降させて上記プローブカードを取り外す共に、上記深溝内の気体を排気して上記複数のスプリングによって上記ピストンリングを上昇させて上記シリンダリングと上記アウターリングの支承部で上記プローブカードを挟持することを特徴とする検査装置。
【請求項7】
上記アウターリングは、カードホルダを介して上記プローブカードを支承することを特徴とする請求項5または請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
上記深溝には気体供給源が接続されていることを特徴とする請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−64659(P2011−64659A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218242(P2009−218242)
【出願日】平成21年9月21日(2009.9.21)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】