説明

ヘッドレストの製造装置

【課題】 ヘッドレストを発泡成形する際、パッド成形用の発泡液の硬化時間を短縮してヘッドレストの製造の作業性を向上させることである。
【構成】 金型1内の表皮A内に注入ノズルCを挿入し、注入ノズルCを介して注入ガン30より、パッド成形用の発泡液を注入後、注入ノズルCを閉蓋装置2によって閉蓋することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレストの製造装置、詳しくは袋状に縫製した表皮を金型内にセットし、その表皮内にパッド発泡成形用の発泡液を注入して表皮にパッドを一体発泡して成形するヘッドレストの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のヘッドレストは、金型にセットした表皮内に注入ノズルを挿入し、この注入ノズルを介して前記発泡液を注入してパッドを表皮、ステーと一体発泡成形している。この発泡成形時に、該発泡液が表皮内で発泡して注入ノズル内から外部に発泡液が発泡して噴出する。
【0003】
斯かる発泡液の外部への噴出を防止するために、発泡が完了し硬化するまで注入ノズルの注入口を閉口するため押さえ続けている(例えば、特許第3650860号公報)。
【0004】
【特許文献1】特許第3650860号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、従来品は発泡液を注入した後、発泡して硬化するまでの一定時間、表皮内に挿入した注入ノズルの注入口を押さえ続けなければならない。
【0006】
即ち、発泡液が硬化するまで他のヘッドレストを製造するために、射出成形機による注入ガンを注入ノズルへ接合する必要がある。
【0007】
従って、多数の金型を使用して連続的にヘッドレストを発泡成形する際、前記発泡液の硬化時間が必要となるため、作業性が悪い不具合があった。
【0008】
そこで、本発明は斯様な従来品による不具合を除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以上の目的を達成するための本発明に係るヘッドレストの製造装置は、内部に袋状に縫製した表皮をセットすると共に、その表皮に注入ノズルの下端を挿入して装着する金型と、この金型に上下方向に揺動可能に軸着する開閉片と、この開閉片の一端側に前記注入ノズルの上端開放口を開閉する蓋体と、この蓋体を前記注入ノズルの上端開放口方向に付勢する構成からなる閉蓋機構と、前記注入ノズルの上方に昇降可能に取付けて前記表皮内に注入するパッド成形用の発泡液を注入ノズルを介して表皮内に注入する射出成形機の注入ガン付の射出部と、この注入ガン側に取付けて下降時に前記開閉片を押圧して蓋体を注入ノズルより離脱させる上下動杆からなる開蓋機構とから構成することを特徴とする構成である。
【0010】
そして、前記注入ガンの注入口方向に向けてスライドし、内部に注入ガンの排出口に付着した発泡液洗浄用の洗浄ブラシを回動可能に軸着し上部開放状の洗浄タンクからなる洗浄機構を有するようにするのが好ましい。
【0011】
また、前記洗浄タンクの注入ガン側の側壁は前記洗浄ブラシ方向に傾斜する上下二段の傾斜状に形成し、前記上下動杆は下部を折畳可能に連結し、その下部の前記上下にローラを設けるようにする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、注入ガンを介して注入ノズルより袋状の表皮内に発泡液を注入後、注入ガンを上昇させて注入ノズルの注入口より離脱させると、注入ノズルの注入口が蓋体で閉口される。そのため、発泡液が発泡時に注入ノズルの注入口より外部に噴出することがない。
【0013】
従って、表皮内に発泡液を注入後、発泡液が発泡し硬化するまで、注入ガンで注入ノズルの注入口を押さえ続ける必要がないため、ヘッドレストの製造時間を短縮しえる。加えて、注入ノズルを蓋体で開閉する構造であるため、注入ノズルの開閉タイミングが一定化し安定する。更に、機械的に蓋体による注入ノズルの開閉を行うため構造が簡単で故障が少なくなる。
【0014】
また、注入ガンの排出口に付着した発泡液が洗浄ブラシで洗浄されるため、次に、表皮内に発泡液を注入してヘッドレストを製造する際に、その表皮内に挿入した注入ノズルに発泡液を注入できる。
そのため、更に、ヘッドレストの製造時間を短縮できる。
【0015】
更に、洗浄機構における洗浄タンクの注入ガン側の側壁が上下二段の傾斜状に形成し、上下動杆の下部を折畳可能且つ上下二段状にローラを設けているため、洗浄タンクが的確且つスムーズに移動可能となり、注入ガンの排出口が洗浄ブラシで的確に洗浄される。
【発明を解決するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
本発明は図4に示すように、袋状に縫製した通気性を有する表皮A内に、パッド成形用の発泡液を注入してパッドBを一体に成形するヘッドレストの製造装置であって、表皮A内には金属製のステーS、Sがあらかじめ装着されている。
【0017】
そして、この表皮Aは図1に示すように、割り型10A、10Bからなる金型1にセットし、その表皮内A内には樹脂製の筒状注入ノズルCを挿入し、この注入ノズルCを介して射出成形機の注入ガン3より前記発泡液が注入される。
【0018】
なお、発泡液が発泡し硬化した後、図4に示す状態から注入ノズルCは矢印方向にヘッドレストより抜き取られ、内部に硬化した発泡液を除去後、再利用される。
【0019】
以上の金型1の割り型10A、10Bにおける合わせ個所には注入ノズルCの保持部10C、10Cを一体に設けて、金型1のキャピティ内にセットした袋状の表皮Aに下部を挿入した注入ノズルCを保持するようにしている。
【0020】
この金型1にはアーム10Dが固設され、このアーム10Dに閉蓋機構2が設けてあり、閉蓋機構2は開閉片20、蓋体21、22などより構成されている。開閉片20はピン2Aによって上下方向に揺動可能に軸着され、この開閉片20の一端下面側に、前記注入ノズルCの注入口を開閉する蓋体21、22が固定され、この蓋体21、22が注入ノズルCの注入口を閉蓋するように、前記開閉片20はバネ(不図示)によって付勢されている。
【0021】
なお蓋体の一部22は注入ノズルCの注入口内に嵌合するように、この一部22に一体に設けた蓋体の他部21は注入口より大径に形成して、発泡液の発泡時における注入ノズルCの注入口からの噴出を完全に防止している。
【0022】
前記開閉片20の他端上面には押圧片23が一体に固定され、この押圧片23を前記バネの弾力に抗して開蓋機構4を構成する上下動杆40A、40Bによって下方に押し下げると、前記蓋体21、22が上方に移動して注入ノズルCの注入口より離脱する。
【0023】
押圧片23は上下動杆4の下降によって押圧されて下方に押し下げられ、上下動杆4は射出成形機Eの射出部3側に昇降可能に取付けられ、射出部3に取付ける支杆43に一体の上部杆40Bと、この上部杆40Bにピンにより折り畳み自在に連結する下部杆40Aとから構成され、下部杆40Aには上下二段状にローラ41、42が設けてある。
【0024】
以上の金型1は、図3に示すように多数個配設され、ローラ61…付の回転盤6上に搭載されている。そして、各々の金型1…はスライド8により回転盤6上を回転中心方向などにスライドできるようになっている。
【0025】
そして、回転盤6上の中央の上方に、前記射出成形機Eの射出部3が固設されており、この射出部3は床Gに固定した門形状の支柱7の水平部中央に取付けられている。
この射出部3に、前記注入ノズルCに発泡液を注入する注入ガン30が上下方向に移動可能に装着されている。
【0026】
従って、前記注入ノズルCが注入ガン30の下方に位置するように、前記金型1は移動可能に回転盤6に搭載され、金型1に表皮Aをセットする際、或いは、表皮A内にパッドBを発泡成形した後は、各金型1…を回転盤6の回転中心より離れた周縁部に移動して、表皮Aが金型1にセットし易いように、或いは、一体発泡した表皮AにパッドBを金型1より取り出せ易いにしている。
【0027】
以上の支柱7の水平部には内部に洗浄ブラシ51と洗浄タンク50とからなる洗浄装置5が、注入ガン30方向にスライド可能に装着されている。
【0028】
そして、注入ガン30は下降することにより、その排出口が図2に示すように注入ノズルCの注入口内に嵌合するように形成され、注入ガン30より注入ノズルCに発泡液が注入されるように構成されている。この注入ガン30は前記上下動杆4と別個に上下動するように構成されている。
【0029】
以上の洗浄タンク50は上部に開放口を有する箱体で、その開放口より洗浄ブラシ51の一部が露出するように配設され、洗浄ブラシ51はモータの駆動力によって図1矢印方向に回転し、注入ガン30の排出口に付着した発泡液B1を除去するように形成されている。
【0030】
そして、洗浄タンク50はその注入ガン30方向の側壁52、53が図1に示すように、上下二段状の傾斜面に形成して、洗浄タンク50を図1矢印方向にスライドした際、上下動杆4にスムーズに、また、上下動杆4には二個のローラ41、42が上下に設けてあるため、傾斜状の側壁52、53が無理なく移動でき、注入ガン30の排出口が図1鎖線に示すように洗浄ブラシ51に当接されるように構成されている。
【0031】
なお、以上の洗浄タンク50を注入ガン30方向にスライドさせた際は上部杆40Bに対して下部杆40Aは折曲し、下端のローラ41が洗浄タンク50の上面に当接する。
【0032】
次に、本発明装置の動作を説明する。
まず、回転盤6の周縁部において、金型1内にステーS、Sを挿着した表皮Aをセットし、その表皮Aに設けた通孔に注入ノズルCの下部を挿入し、割り型10A、10Bからなる金型1を合わせる。
【0033】
次に、回転盤6を回転させると共に、この注入ノズルC付の表皮Aをセットした金型1を射出部3下方に位置するように移動させる。
この状態において、注入ノズルCの上部に位置する注入口は、蓋体21、22によって閉口されている。
【0034】
然る後、上下動杆4を下降させて、押圧片23を押し下げると開閉片2が揺動し、蓋体21、22が持ち上がり、注入ノズルCの注入口より離脱し、注入口は開口する。
【0035】
それとほぼ同時に注入ガン30が下降して、注入ノズルCの注入口に注入ガン30の排出口が嵌合する。
【0036】
すると、図2に示すように、射出成形型Eより発泡液B´が射出部3の注入ガン30、注入ノズルCを介して金型1内の表皮A内に注入される。
【0037】
この発泡液B1を適量注入した後、上下動杆4及び注入ガン30を図2矢印方向に上昇させると、注入ガン30が注入ノズルCより離脱し、上下動杆4の押圧片23の押圧状態を解除する。すると、開閉片2はバネの弾力により、蓋体21、22が下方に回動して注入ノズルCの注入口を閉蓋する(第1図)。
【0038】
これは、表皮A内に注入した発泡液B1が発泡し注入ノズルCより外部に噴出する前に行われる。
【0039】
従って、注入ノズルCの注入口を蓋体21、22で閉口した状態で発泡B1が発泡硬化する。
【0040】
発泡液B1を注入後、注入ノズルCの注入口を蓋体21、22で閉口した後、その金型1を回転盤6の中央より周縁部に移動させて、発泡液B1を硬化させる。硬化してパッドBを成形することによりヘッドレストが製造される。そして、割り型10A、10Bからなる金型1を開放して図4に示すヘッドレストを取り出す。然る後、ヘッドレストより注入ノズルCを抜き取り、その注入ノズルCの内部に硬化した発泡液を除去して注入ノズルCを再利用する。
【0041】
そして、前記上下動杆4、注入ガン30を上昇させた後、洗浄装置5が図1矢印方向である注入ガン30方向に移動して、洗浄ブラシ51で注入ガン30の排出口に付着した発泡液B’を除去することにより注入ガン30の排出口を洗浄する。
【0042】
前記洗浄機構5の洗浄ブラシ51が注入ガン30の排出口に移動する際、上下動杆4に洗浄タンク50の側壁52、53が当接して、上下動杆4の下部杆40Aが垂直状に固定されている上部杆40Bに対して折曲し、ローラ41、42のいずれか一方が側壁52、53に当接し、下部杆40A自体が側壁52、53に直接接触することがないため、洗浄機構5の注入ガン30方向への移動を円滑に行うことができる。
【0043】
そして、注入ガン30の下端に有する排出口を洗浄ブラシ51で洗浄後は、洗浄機構5が元の位置に移動する。
【0044】
以下、これを繰り返してヘッドレストを製造する。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上ヘッドレストの製造装置について説明したが、アームレストなどにも本発明に係る装置は利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明装置の要部の部分切欠平面図である。
【図2】発泡液の注入状態を説明する要部の部分切欠平面図である。
【図3】本発明装置を説明する説明図である。
【図4】本発明装置によって製造したヘッドレストの部分切欠図である。
【符号の説明】
【0047】
1…金型、2…閉蓋機構、3…射出部、4…開蓋機構、5…洗浄機構、A…表皮、B…パッド、C…注入ノズル。















【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に袋状に縫製した表皮をセットすると共に、その表皮に注入ノズルの下端を挿入して装着する金型と、
この金型に上下方向に揺動可能に軸着する開閉片と、この開閉片の一端側に前記注入ノズルの上端開放口を開閉する蓋体と、この蓋体を前記注入ノズルの上端開放口方向に付勢する構成からなる閉蓋機構と、
前記注入ノズルの上方に昇降可能に取付けて前記表皮内に注入するパッド成形用の発泡液を注入ノズルを介して表皮内に注入する射出成形機の注入ガン付の射出部と、
この注入ガン側に取付けて下降時に前記開閉片を押圧して蓋体を注入ノズルより離脱させる上下動杆からなる開蓋機構と
から構成するヘッドレストの製造装置。
【請求項2】
前記注入ガンの注入口方向に向けてスライドし、内部に注入ガンの排出口に付着した発泡液洗浄用の洗浄ブラシを回動可能に軸着し上部開放状の洗浄タンクからなる洗浄機構を有する前記請求項1記載のヘッドレストの製造装置。
【請求項3】
前記洗浄タンクの注入ガン側の側壁は前記洗浄ブラシ方向に傾斜する上下二段の傾斜状に形成し、前記上下動杆は下部を折畳可能に連結し、その下部の前記上下にローラを設けてなる前記請求項2記載のヘッドレストの製造装置。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−83433(P2009−83433A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259291(P2007−259291)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】