説明

ヘテロ二量体タンパク質結合組成物

本発明は、抗原結合ドメインに関してFcドメインを新たに方向付けするという目的上、IgG Fabドメイン内のHおよびL鎖の配列の交換により抗原結合およびエフェクター機能を最大化するための改変免疫グロブリン組成物の作成方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫グロブリンタンパク質に由来するヘテロ二量体タンパク質結合組成物、こうしたヘテロ二量体タンパク質結合組成物の製造方法およびそれらの用途の分野に関する。より具体的には、本発明は、抗原結合ドメインに関してFcドメインを新たに方向付けし(reorient)かつ決定的な(critical)結合部位をより到達可能にするという目的上、IgG Fabドメイン内のHおよびL鎖の間で配列を交換することにより、抗原結合を保存しつつ免疫エフェクター機能を最大化するためのヘテロ二量体タンパク質結合組成物の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数十年間、抗体は、それらの特異的結合特性および高安定性により、研究および診断、ならびにより最近は疾患の治療的処置において必須であった。モノクローナル抗体は、当初、選ばれたB細胞株を不死骨髄腫細胞株と融合してハイブリドーマ、すなわち該選択されたB細胞クローンの選択された抗体タイプのみを分泌する不死細胞を製造することにより生じられた。組換えDNA技術の使用は、抗体の新たな製造方法ならびに新たな抗体構築物の設計を可能にした。
【0003】
構造上、各抗体は2本の同一の「H」鎖および2本の同一の「L」鎖の相互作用により形成され、それらの全部は結合してY形状分子を形成する(H鎖はY全体に、そしてL鎖は2本の腕のみにわたる)。免疫グロブリンG抗体分子は、抗原結合を決定する相補性決定領域(CDR)、エフェクター機能を決定する定常領域、および枠組み領域を含有する。多様な定常領域が多様な生物学的効果の範囲全体を媒介し得る。例えばアレルギー反応はIgE結合に続く一方、IgM結合は補体系の活性化に至り得る。
【0004】
抗体は、Y単位の数およびH鎖のタイプに基づき5クラスすなわちIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEに分割し得る。いかなる抗体のL鎖もκ若しくはλタイプ(ポリペプチドの分子の特徴の記述)いずれかに分類され得るが;しかしながらH鎖は各抗体のサブクラスを決定する。IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEのH鎖はそれぞれγ、μ、α、δおよびεとして知られる。
【0005】
最も一般に使用される抗体はIgGであり、これはタンパク質分解酵素パパインにより3部分すなわち2個のF(ab)領域および1個のFc領域に、若しくはタンパク質分解酵素ペプシンにより2部分すなわち1個のF(ab’)2および1個のFcに切断され得る。F(ab)領域は、抗原結合に決定的に重要である抗体の「腕」を含んでなる。Fc領域は、抗体の「尾部」を構成しかつ免疫応答において役割を演じ、そしていくつかの免疫化学的手順の間に抗体を操作するための有用な「ハンドル」としてはたらく定常領域のCH2およびCH3ドメインを含んでなる。抗体上のF(ab)領域の数はそのサブクラスと対応し、そして抗体の「価」(大ざっぱに述べれば、抗体がその抗原を結合しうる「腕」の数)を決定する。
【0006】
従って、抗体構築物は、限定されるものでないがH若しくはL鎖の最低1個のCDRまたはそれらのリガンド結合部分、H鎖若しくはL鎖可変領域、H鎖若しくはL鎖定常領域、フレームワーク領域、あるいはそれらのいずれかの部分を挙げることができる、免疫グロブリン分子の少なくとも一部分を含んでなるいかなるタンパク質若しくはペプチド含有分子も包含し得る。抗体フラグメントは、2個のFabフラグメントを生じるY形状の抗体分子の「ヒンジ」領域で切断するプロテアーゼ、パパインでの抗体の切断により生成されるCDR抗原結合部位を含有する、Fabとして知られる免疫グロブリン分子のフラグ
メントを包含し得る。抗体は、限定されるものでないがヒト、マウス、ウサギ、ラット、げっ歯類、霊長類を挙げることができるいかなる哺乳動物若しくはそれらのいずれかの組合せも包含し得るか、若しくはそれら由来であり得る。
【0007】
細胞表面の標的を結合する多数の治療的IgG抗体は、それらの完全な治療能力を実現するために、隣接細胞上のFc受容体(FcR)への同時の結合に依存する。これは、FcRおよび抗原の同時の結合(抗体が細胞性免疫応答を体液性免疫応答に結びつける手段)が、抗原を発現する細胞の抗体依存性細胞傷害(ADCC)若しくは食作用のようなエフェクター機能に至り得るからである。しかしながら、より多くの抗体がin vitro ADCCアッセイで評価されるようになりつつあるので、数種の抗体が、FcRを発現するエフェクター細胞の存在下で、標的(抗原を発現する)細胞株への良好な結合を示し得るにもかかわらず標的細胞の細胞傷害性を誘発し得ないことが、ますます明らかになりつつある。他の可能な説明を予見し得るとは言え、少なくとも数種の抗体については、こうした抗体上のFcR結合部位が、これらの抗体がそれらの細胞表面抗原に結合される場合に隣接細胞上のFcRに物理的に到達可能でないことがあることがありそうである(図1)。現在のデータおよびモデルは、Fcドメインが、ヒンジ領域でのFcR結合に適応するためにFabドメインに関しておよそ90°曲がることを必要とすることを示唆している。抗原に結合される場合に細胞表面に「平行に」向けられている抗体にとって、とりわけ抗原が剛性でありかつ「波打つ」ことが不可能である場合に、原形質膜若しくは何らかの他の分子から立体障害を伴わずこの劇的な再配置をとることは可能でないかもしれない。同一の理由から、抗体上のC1q結合部位は、C1qすなわち古典的補体固定経路の最初の成分に到達可能でないことがあり、補体溶解活性の欠如をもたらす。
【0008】
IgG抗体は、分子内のいくつかの部位、とりわけヒンジ領域で曲がる能力をもつ柔軟な分子である。抗体は、Fcドメインに関してFabドメインの捻れ/ターンを受けることもまた報告されている。この捻れ/ターン能力は隣接細胞上のFcRへのFcR結合部位の到達可能性に影響を与えることがありそうであるとは言え、こうした可動性は制限され、従っていかなるFcR結合部位もFcRに到達可能に十分にすることはありそうでない。結果、所定の抗体が所望の細胞表面抗原に対する高い親和性および特異性を有しうる一方、その完全な治療的能力は、抗原の結合に際してのその向きがFcに媒介されるエフェクター機能の動員に好都合でない場合になお制限されうる。ここに記述される本発明は、こうした抗体のこの問題の解決手段を提供する。
【発明の開示】
【0009】
[発明の要約]
本発明は、免疫グロブリン分子のH鎖およびL鎖を有するヘテロ二量体タンパク質結合組成物であり、該ヘテロ二量体タンパク質結合組成物は、L鎖配列で置換されたH鎖配列およびH鎖配列で置換されたL鎖配列を有する。それらのFcR結合部位を隣接細胞上のFcRに到達不可能に若しくはC1q結合部位を可溶性C1q補体タンパク質に到達不可能にしておくような様式で細胞表面(若しくは別の方法で不溶性の)抗原に結合する抗体は、ADCC、FcR媒介性の食作用および補体溶解のようなエフェクター機能を動員するそれらの固有の能力を完全に利用し得ない。ここに記述される本発明は、抗原結合ドメインに関してFc結合の相対位置およびC1q結合ドメインを新たに方向付けすることにより、この問題に対する解決策を提供する。これは、抗体(Ab)分子の残部を非常に異なる位置で新たに方向付けしつつ抗原結合ドメインの構造を保存する様式でAbのHおよびL鎖の間でアミノ酸配列を交換することにより達成される。HおよびL鎖の間で交換されることによりこれを達成し得る配列の例は、a)H鎖のFdドメイン全体(V−C1)およびL鎖全体(V−C)、b)H鎖の可変領域(V)およびL鎖の可変領域(V)、ならびにc)Vの相補性決定領域(CDR)およびVのCDRを包含する。逆に、例えば免疫エフェクター機能が誘発されないようにこれらの結合部位がより少な
く到達可能であるために、そのFcR結合部位およびC1q結合部位が容易に到達可能であるAbを改変することが望ましいことができる。これは、同一の型の上述された配列交換アプローチにより達成し得る。
【0010】
従って、本発明により、免疫グロブリンのHおよびL鎖からの配列の多様なサブセットを、抗原結合ドメインに関してFcドメインを新たに方向付けするという目的上、特定の1AbのHおよびL鎖の間で交換する。これらの配列を交換されている適切に製造されたAbバリアントは、抗原結合親和性および特異性を保持するはずであるが、しかし、抗原に関してそれらのFcドメインが「反転」されている。細胞表面抗原の場合、Fcドメインのこの新たな向きは、AbのFcR結合部位への乏しい到達可能性とFcR結合部位への良好な到達可能性の間の差違をなしうる(図2B)。到達可能性の問題は、原形質膜若しくは隣接分子による妨害によりFcR結合部位を露出させるために必要な配置をとることが可能でないAbに帰されうる。加えて、本発明は、多様なIgGアイソタイプ(例えばIgG1、IgG2、IgG3若しくはIgG4)またはなお多様なIgクラス(例えばIgA、IgD、IgG、IgE若しくはIgM)からのFcドメインを混合かつ一致させることによる付加的な調整を見込む。
【0011】
本発明は、別の局面において、前述のヘテロ二量体タンパク質結合構築物をコードするポリヌクレオチドおよびそれらの最低1種の指定される配列、ドメイン、部分若しくはバリアントを含んでなる単離された核酸分子を提供する。本発明は、こうした核酸分子を含んでなる組換えベクター、こうした核酸および/若しくは組換えベクターを含有する宿主細胞、ならびにこうした核酸、ベクターおよび/若しくは宿主細胞の作成および/若しくは使用方法をさらに提供する。
【0012】
本発明は、本明細書に記述されるところの宿主細胞を、最低1種のこうしたヘテロ二量体タンパク質結合構築物が検出可能かつ/若しくは回収可能な量で発現される条件下で培養することを含んでなる、宿主細胞中でのこうしたヘテロ二量体タンパク質結合構築物の発現方法もまた提供する。宿主細胞は、COS−1、COS−7、HEK293、BHK21、CHO、BSC−1、Hep G2、Ag653、SP2/0、HeLa、骨髄腫若しくはリンパ腫細胞、またはそれらのいずれかの派生物、不死化若しくは形質転換細胞から選択しうる。ヘテロ二量体タンパク質結合構築物が検出可能かつ/若しくは回収可能な量で発現されるようなin vitro、in vivo若しくはin situの条件下で該構築物をコードする核酸を翻訳することを含んでなる、最低1種のこうしたヘテロ二量体タンパク質結合構築物の製造方法もまた提供される。
【0013】
本発明は、本明細書に記述されるところの本発明の単離されたヘテロ二量体タンパク質結合構築物をコードする核酸および/若しくはタンパク質ならびに適する担体若しくは希釈剤の双方を含んでなる最低1種の組成物もまた提供する。該担体若しくは希釈剤は既知の担体若しくは希釈剤に従って製薬学的に許容できうる。該組成物は最低1種のさらなる化合物、タンパク質若しくは組成物もまた含み得る。
【0014】
本発明は、当該技術分野で既知かつ/若しくは本明細書に記述されるところの関連した状態の前、後若しくは間に細胞、組織、器官、動物若しくは患者における最低1種の疾患状態を調節若しくは処置するために治療的有効量の本発明のヘテロ二量体タンパク質結合構築物を投与するための最低1種の方法若しくは組成物をさらに提供する。
【0015】
本発明は、治療的若しくは予防的有効量の本発明の最低1種のヘテロ二量体タンパク質結合構築物の送達のための最低1種の組成物、装置および/若しくは方法もまた提供する。
【0016】
本発明は、当該技術分野で既知かつ/若しくは本明細書に記述されるところの関連した状態の前、後若しくは間に細胞、組織、器官、動物若しくは患者における最低1種の疾患状態を診断するための、最低1種のヘテロ二量体タンパク質結合構築物の方法若しくは組成物をさらに提供する。
【0017】
本発明の最低1種のヘテロ二量体タンパク質結合構築物を含んでなる医療用具もまた提供され、該装置は、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、気管支内、腹腔内(intraabdominal)、嚢内、軟骨内、体腔内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚部内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内(intraperitoneal)、胸腔内、前立腺内、肺内、直腸内、腎内、網膜内、髄腔内、滑液包内、胸内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣、直腸、頬側、舌下、鼻内若しくは経皮から選択される最低1様式により該抗体構築物を接触若しくは投与するのに適する。
【0018】
包装資材、および溶液若しくは凍結乾燥された形態の本発明の最低1種の単離されたヘテロ二量体タンパク質結合構築物を含んでなる容器を含んでなる、ヒトの製薬学的若しくは診断的使用のための製品もまた提供される。該製品は、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、動脈内、気管支内、腹腔内(intraabdominal)、嚢内、軟骨内、体腔内、腔内、小脳内、脳室内、結腸内、頚部内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内(intraperitoneal)、胸腔内、前立腺内、肺内、直腸内、腎内、網膜内、髄腔内、滑液包内、胸内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣、直腸、頬側、舌下、鼻内若しくは経皮送達装置若しくは系の1成分として容器を有することを場合によっては含み得る。
【0019】
本発明の最低1種の単離されたヘテロ二量体タンパク質結合構築物を回収可能な量で発現することが可能な宿主、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物若しくは植物細胞を含んでなる、該抗体の製造方法もまた提供される。上の方法により製造した最低1種のヘテロ二量体タンパク質結合構築物が本発明でさらに提供される。
【0020】
本発明は、本明細書に記述されるいかなる発明もさらに提供する。
【0021】
[発明の詳細な記述]
A.定義
別の方法で定義されない限り、本発明に関して使用される科学および技術用語は、当業者により一般に理解される意味を有する。
【0022】
さらに、文脈により別の方法で必要とされない限り、単数形の用語は複数を包含し、かつ、複数の用語は単数を包含する。一般に、本明細書に記述される細胞および組織培養、分子生物学、タンパク質およびオリゴ若しくはポリヌクレオチド化学ならびにハイブリダイゼーションに関してかつその技術において利用される学術用語は当該技術分野で公知かつ一般に使用されるものである。標準的技術が、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、組織培養および形質転換(例えば電気穿孔法、リポフェクション)に使用される。
【0023】
酵素反応および精製技術は、当該技術分野で一般に達成されたところの、若しくは本明細書に記述されるところの、製造元の仕様に従って実施する。前述の技術および手順は、一般に、当該技術分野で公知のかつ引用かつ論考される多様な一般的およびより特殊な参考文献に記述されるところの慣習的方法に従って実施する。(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー 1989(引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。)本明細書に記述される実験室手順、ならびに分析、合
成有機、医薬品および製薬化学の技術に関して利用される学術用語は当該技術分野で公知かつ一般に使用されるものである。化学合成、化学分析、製薬学的製造、製剤、ならびに患者の送達および処置の標準的技術が使用される。
【0024】
本出願で使用される全部の科学および技術用語は、別の方法で指定されない限り、当該技術分野で一般に使用される意味を有する。本出願で使用されるところの以下の語若しくは句は以下の意味を有する。
【0025】
「抗体」、「Ab」若しくは「抗体ペプチド(1種若しくは複数)」は、無傷の抗体、若しくは特異的結合について無傷の抗体と競合するその結合フラグメントを指す。結合フラグメントは、組換えDNA技術、または無傷の抗体の酵素若しくは化学的切断により製造する。結合フラグメントは、Fab、Fab’、F(abl)2、Fvおよび一本鎖抗体を包含する。「二特異性」若しくは「二官能性」抗体以外の抗体は、同一のその結合部位のそれぞれを有することが理解される。抗体は、過剰の抗体が、対受容体に結合される受容体の量を最低約20%、40%、60%若しくは80%、およびより通常は約85%以上(in vitro競合結合アッセイで測定されるところの)低下させる場合に、対受容体への受容体の接着を実質的に阻害する。
【0026】
本明細書で使用されるところの「ヘテロ二量体タンパク質結合組成物」;「改変Ig分子」;もしくは「交換ドメイン抗体構築物」は、改変された抗体が1個若しくはそれ以上のH鎖ドメインがL鎖上のドメインに交換されかつ/またはL鎖の1個若しくはそれ以上のドメインがH鎖のドメインに交換されているために天然に存在するIg分子と異なる免疫グロブリン(「Ig」)分子を意味しており;ここで、交換されたドメインは元の抗体と同一のクラス若しくは異なるIgクラスのいずれであってもよい。改変Ig分子は、例えば、選ばれた一列に配置されかつ細胞中で発現される、Igドメイン若しくはその部分をコードするポリヌクレオチドを使用する慣習的遺伝子組み換えにより作成し得る。あるいは、改変Ig分子は、慣習的ポリペプチド合成技術を使用して合成し得る。Ig分子は、IgA(IgA1およびIgA2を包含する)、IgM、IgG、IgD若しくはIgE分子であり得る。
【0027】
本明細書で使用されるところの「定常領域ドメイン」若しくは「定常ドメイン」は、C、C1、ヒンジ、C2、CおよびC4を包含するIg分子の定常部分内の1ドメインを指す。本明細書で使用されるところの「可変領域ドメイン」若しくは「可変ドメイン」は、特定の一領域に対するIgの特異性を賦与するIg分子の部分を指す。
【0028】
本明細書で使用されるところの「抗原」は、免疫グロブリン分子の抗原結合領域に結合すること若しくは免疫応答を導き出すことのいずれかが可能な物質を意味している。本明細書で使用されるところの「抗原」は、限定されるものでないが、抗原決定基、ハプテンおよび免疫源を挙げることができる。
【0029】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン若しくはT細胞受容体への特異的結合が可能ないかなるタンパク質決定基も包含する。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸若しくは糖側鎖のような分子の化学的に活性の表面グループ分けよりなり、そして、通常、特定の三次元構造の特徴ならびに特定の電荷の特徴を有する。抗体は、解離定数が1mM、好ましくは100nMおよび最も好ましくは10nMである場合に抗原を特異的に結合すると言われる。
【0030】
本明細書で使用されるところの「ベクター」は、宿主細胞中で目的の1種若しくはそれ以上の遺伝子若しくはポリヌクレオチド配列を送達しかつ好ましくは発現することが可能である構築物を意味している。ベクターの例は、限定されるものでないが、ウイルスベク
ター、裸のDNA若しくはRNA発現ベクター、陽イオン性縮合剤と会合したDNA若しくはRNA発現ベクター、リポソーム中に被包化されたDNA若しくはRNA発現ベクター、および産生体細胞のようなある種の真核生物細胞を挙げることができる。
【0031】
本明細書で使用されるところの「ポリヌクレオチド」若しくは「核酸」は、一若しくは二本鎖いずれかの形態のデオキシリボヌクレオチド若しくはリボヌクレオチドポリマーを意味しており、そして、別の方法で制限されない限り、天然に存在するヌクレオチドに類似の様式で核酸にハイブリダイズする天然のヌクレオチドの既知のアナログを包含する。別の方法で示されない限り、特定の核酸配列は、場合によっては相補配列を包含する。ポリヌクレオチド配列は、免疫グロブリンの可変および/若しくは定常領域ドメインをコードしうる。本明細書で使用されるところの「単離されたポリヌクレオチド」という用語は、ゲノム、cDNA、若しくは合成起源のポリヌクレオチド、またはそれらの何らかの組合せを意味している。その起源のおかげで、「単離されたポリヌクレオチド」は、(1)該「単離されたポリヌクレオチド」が天然に見出されるポリヌクレオチドの全部若しくは一部分と会合していないか、(2)天然に連結されていないポリヌクレオチドに作動可能に連結されているか、若しくは(3)より大きな配列の一部として天然に存在しない。
【0032】
本明細書で使用されるところの「製薬学的に許容できる担体」は、Igと組み合わせられる場合にIgが生物学的活性を保持することを可能にしかつ被験体の免疫系と非反応性であるいかなる物質も包含する。例は、限定されるものでないが、リン酸緩衝生理的食塩水溶液、水のような標準的製薬学的担体、油/水乳剤のような乳剤、および多様な型の湿潤剤のいずれも挙げることができる。エアゾル若しくは非経口投与のための好ましい希釈剤は、リン酸緩衝生理的食塩水若しくは通常の(0.85%)生理的食塩水を包含する。
【0033】
付随する請求の範囲で使用されるところの「ある(a)」は最低1を意味しておりかつ複数を包含し得る。本明細書で使用されるところの「作動可能に連結される」という用語は、それらが意図された様式で機能することを可能にする関係にある位置を指す。コーディング配列に「作動可能に連結された」制御配列は、該制御配列のものと適合性の条件下で該コーディング配列の発現が達成されるような様式で連結される。
【0034】
本明細書で使用されるところの「制御配列」という用語は、それらが連結されているコーディング配列の発現およびプロセシングを遂げるのに必要であるポリヌクレオチド配列を指す。こうした制御配列の性質は宿主生物体に依存して異なり;原核生物中では、こうした制御配列は一般にプロモーター、リボソーム結合部位および転写終止配列を包含し;真核生物においては、こうした制御配列は一般にプロモーターおよび転写終止配列を包含する。「制御配列」という用語は、少なくとも、その存在が発現およびプロセシングに不可欠である全成分を包含することを意図しており、また、例えば、その存在が有利である付加的な成分、リーダー配列および融合パートナー配列もまた包含し得る。
【0035】
本明細書で使用されるところの20種の慣習的アミノ酸およびそれらの略語は慣習的使用法に従う。本発明の改変された抗体を構成するアミノ酸はしばしば略記される。アミノ酸の呼称は、当該技術分野で十分に理解されるところのその一文字記号、その三文字記号、名称若しくは3ヌクレオチドコドン(1種若しくは複数)によりアミノ酸を呼称することにより示し得る(Alberts,B.ら、Molecular Biology of The Cell、第3版、Garland Publishing,Inc.、ニューヨーク、1994を参照されたい)。
【0036】
ポリペプチドに適用されるところの「実質的同一性」という用語は、2種のペプチド配列を至適に整列する場合に最低80%の配列同一性、好ましくは最低90%の配列同一性、より好ましくは最低95%の配列同一性、および最も好ましくは最低99%の配列同一
性を共有することを意味している。
【0037】
好ましくは、同一でない残基位置は保存的アミノ酸置換により異なる。
【0038】
保存的アミノ酸置換は、類似の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば:脂肪族側鎖を有するアミノ酸はグリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸はセリンおよびトレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸はアスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸はフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸はリシン、アルギニンおよびヒスチジンであり;イオウ含有側鎖を有するアミノ酸はシステインおよびメチオニンである。好ましい保存的アミノ酸置換群は;バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リシン−アルギニン、アラニン−バリン、グルタミン酸−アスパラギン酸、およびアスパラギン−グルタミンである。
【0039】
本明細書に論考されるとおり、抗体すなわち免疫グロブリン分子のアミノ酸配列中の小さな変動は、本発明により包含されるとして企図されるが、但し、アミノ酸配列中の変動は最低75%、より好ましくは最低80%、90%、95%、および最も好ましくは99%を維持する。とりわけ保存的アミノ酸置換が企図される。保存的置換は、それらの側鎖が関係するアミノ酸の一族内で起こるものである。遺伝子にコードされるアミノ酸は、一般に、族:(1)酸性=アスパラギン酸、グルタミン酸;(2)塩基性=リシン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;および(4)荷電していない極性=グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシンに分割される。より好ましい族は:脂肪族−ハイドロックス(hydrox)=セリン、トレオニン;アミド含有=アスパラギン、グルタミン;脂肪族=アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン;芳香族=フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンである。例えば、ロイシンのイソロイシン若しくはバリンでの、アスパラギン酸のグルタミン酸での、トレオニンのセリンでの孤立した置換、または構造上関係するアミノ酸でのあるアミノ酸の類似の置換は、とりわけ該置換が枠組み部位内のアミノ酸を巻き込まない場合に、生じる分子の結合若しくは特性に対し大きな影響を有しないであろうと期待することは合理的である。アミノ酸変化が機能的ペプチドをもたらすかどうかは、ポリペプチド派生物の比活性をアッセイすることにより容易に決定し得る。アッセイは本明細書に詳細に記述される。抗体すなわち免疫グロブリン分子のフラグメント若しくはアナログは当業者により容易に製造され得る。フラグメント若しくはアナログの好ましいアミノおよびカルボキシ末端は、機能的ドメインの境界近くに存在する。
【0040】
構造および機能ドメインは、ヌクレオチドおよび/若しくはアミノ酸配列データの公的若しくは占有の配列データベースとの比較により同定し得る。好ましくは、コンピュータ化比較方法を使用して、既知の構造および/若しくは機能の他のタンパク質中に存在する配列モチーフ若しくは予測されるタンパク質コンホメーションドメインを同定する。既知の三次元構造に折り畳まるタンパク質配列の同定方法は既知である。(Bowieら Science 253:164(1991))。従って、前述の例は、本発明により構造および機能ドメインを定義するのに使用しうる配列モチーフおよび構造的コンホメーションを当業者が認識し得ることを示す。
【0041】
好ましいアミノ酸置換は、(1)タンパク質分解に対する感受性を低下させ、(2)酸化に対する感受性を低下させ、(3)タンパク質複合体を形成するための結合親和性を変え、(4)結合親和性を変え、および(4)こうしたアナログの他の物理化学若しくは機能特性を賦与する若しくは改変するものである。アナログは、天然に存在するペプチド配列以外の配列の多様なムテインを包含し得る。例えば、単一若しくは複数のアミノ酸置換
(好ましくは保存的アミノ酸置換)を、天然に存在する配列中で(好ましくは分子間接触を形成するドメイン(1個若しくは複数)の外側のポリペプチドの部分で行いうる。
【0042】
保存的アミノ酸置換は親配列の構造的特徴を実質的に変えないはずである(例えば、置換アミノ酸は、親配列中に存在するらせんを破壊、若しくは親配列を特徴付ける他の型の二次構造を破壊する傾向がないはずである)。
【0043】
(技術に認識されるポリペプチドの二次およびS三次構造の例は、Creighton編、Proteins,Structures and Molecular Principles W.H.Freeman and Company、ニューヨーク 1984;C.BrandenとJ.Tooze編、Introduction to Protein Structure Garland Publishing、ニューヨーク州ニューヨーク 1991;Thorntonら Nature 354:105 1991(それぞれ引用することにより本明細書に組み込まれる)に記述されている)。
【0044】
患者という用語はヒトおよび家畜の被験体を包含する。
【0045】
B.抗体構造
基本的な抗体の構造単位は四量体を含んでなる。各四量体はポリペプチド鎖の2個の同一の対から構成され、各対は1本の「L」(約25kDa)および1本の「H」鎖(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識を司る約100ないし110若しくはそれ以上のアミノ酸の可変領域を包含する。各鎖のカルボキシ末端部分は、主としてエフェクター機能を司る定常領域を定義する。ヒトL鎖はκおよびλ L鎖と分類される。H鎖定常領域はμ、δ、γ、αおよびεと分類され、そして抗体のアイソタイプをそれぞれIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと定義する。
【0046】
γ H鎖定常領域のそれぞれは、CH1、ヒンジ、CH2およびCH3ドメインを含有し、γ−3中のヒンジドメインは4種の異なるエキソンによりコードされる。(MorriosnとOi“Chimeric Ig Genes”、Immunoglobulin Genes pp.259−274 Honjoら編、Academic Press Limited、カリフォルニア州サンディエゴ 1989中)。LおよびH鎖内で、可変および定常領域は約12若しくはそれ以上のアミノ酸の「J」領域により結合され、H鎖は約10より多いアミノ酸の「D」領域もまた包含する。(全般として:Fundamental Immunology 第7章(Paul,W.編、第2版、Raven Press、ニューヨーク 1989)(全部の目的上そっくりそのまま引用することにより組み込まれる)を参照されたい)。各L/H鎖対の可変領域が抗体の結合部位を形成する。従って無傷の抗体は2個の結合部位を有する。二官能性若しくは二特異性抗体でを除き、該2結合部位は同一である。該鎖は全部、相補性決定領域すなわちCDRともまた呼ばれる3個の超可変領域により結合される比較的保存された枠組み領域(FR)の同一の一般構造を表す。
【0047】
各対の2本の鎖からのCDRは枠組み領域により整列され、特異的1エピトープに結合することを可能にする。N末端からC末端まで、LおよびH鎖双方がドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含んでなる。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、免疫学的目的のタンパク質のKabat配列(Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest)(国立保健研究所 メリーランド州ベセスダ 1987および1991;ChotiaとLesk J.Mol.Biol.196:901−917 1987;Chothiaら Nature 342:878−883 1989)の定義に従う。
【0048】
二特異性若しくは二官能性抗体は、2種の異なるH/L鎖対および2個の異なる結合部位を有する人工のハイブリッド抗体である。二特異性抗体は、ハイブリドーマの融合若しくはFab’フラグメントの連結を包含する多様な方法により製造し得る。(例えば、SongsivilaiとLachmann Clin.Exp.Immunol.79:315−321 1990;Kostelnyら J.Immunol.148:1547−1553 1992を参照されたい)。
【0049】
二特異性抗体の製造は、慣習的抗体の製造と比較して相対的に労働集約的過程であり得、そして収量および純度の程度は二特異性抗体について一般により低い。
【0050】
二特異性抗体は単一結合部位を有するフラグメント(例えばFab、FabおよびFv)の形態で存在しない。
【0051】
C.本発明の抗体
本発明は、Fcドメインを抗原結合ドメインに関して新たに方向付けするという目的上、1個若しくはそれ以上のH鎖ドメインがL鎖上のドメインに交換されかつ/またはL鎖の1個若しくはそれ以上のドメインがH鎖のドメインに交換されている改変抗体を創製するための抗体分子の工作にとりわけ関する。
【0052】
本発明により、抗体の定常領域のLおよびH鎖からの1個若しくはそれ以上の免疫グロブリン定常ドメインを交換することによりFc受容体と相互作用するその能力において抗体の特徴を改変するための、複数の天然の若しくは改変された免疫グロブリン(Ig)定常ドメインの利用方法が提供される。特定のAbのアミノ酸配列が一旦決定されれば、そのAbのHおよびL鎖配列のいずれかの組合せをコードする遺伝子を製造するために、標準的組換えDNAの方法および/若しくはDNA合成が当業者により使用され得る。抗原結合ドメインに関してFcドメインを新たに方向付けするという目的上、特定のAbのHおよびL鎖の間で交換しうる配列の多様なサブセットが存在する。例は:
H鎖FdおよびL鎖全体(図2A)−V−C−hg−C2−C3を作成する
H鎖およびV−C1 L鎖は最低量の工作を必要とするはずである。FdとL鎖の間の全部の接触点が維持されるはずである。
V領域(図2A)−V−C1−hg−C2−C3 H鎖およびV−C L鎖を作成するためにHおよびL鎖のV領域を交換することは、Vドメインと隣接Cドメインの間の新たな界面を適応させるための小さな工作のみを必要とするはずである。
CDR−Ab上のこれらの抗原結合モチーフは理論上鎖間で交換し得るとは言え、抗原結合を保存することは、CDRに隣接する配列に対する広範囲の工作を必要とすることがありそうであるとみられる
を包含する。
【0053】
これらの配列が交換されている適切に製造されたAbバリアントは抗原結合親和性および特異性を保持するはずであるが、しかしそれらのFcドメインが抗原に関して「反転(fliped)」されている。細胞表面抗原の場合には、Fcドメインのこの新たな向きは、FcR結合部位への乏しい到達可能性と、AbのFcR結合部位への良好な到達可能性の間の差違をなしうる(図2B)。到達可能性の問題は、原形質膜若しくは隣接分子による妨害によりFcR結合部位を露出させるために必要な配置を取ることが可能でないAbに帰されうる。
【0054】
こうしたAbバリアントは、可溶性抗原若しくはウイルス、例えばFcR結合部位若しくはC1q結合部位がエピトープ以外の標的の一部分からの立体障害により阻害されている大型標的に対する利点もまた賦与しうる。こうしたAb上のFcR結合部位若しくはC1q結合部位の到達不可能性は、免疫複合体のFcR媒介性の消失若しくは標的の補体媒
介性の溶解に影響し得る。
【0055】
一方の鎖から他方に交差するためのアミノ酸配列中の正確な点の決定において若干の程度の柔軟性が存在することができる。V−C−hg−C2−C3 H鎖およびV−C1 L鎖の2例を図3に示す。
【0056】
腫瘍細胞標的への良好な結合しかしわずかなADCC活性を示すAbは、Fcドメインの新たな方向付けが腫瘍細胞に対する高められたADCC活性につながり得るため、本発明の良好な候補であるとみられる。再工作された遺伝子を製造し得、そしてその後、慣習的Abに使用される同一の細胞系で発現させ得、そして、生じるAb変異体を、慣習的Abに使用される同一の方法、すなわちプロテインA若しくはプロテインGクロマトグラフィーにより精製し得る。抗原結合能力について試験した後、ADCC若しくは補体溶解アッセイが、再工作したAbバリアントが元のAbより大きな細胞死滅活性を有したかどうかを示すとみられる。例えば固定した抗原に結合されるAbにFcR細胞がどのくらい良好に結合するかを評価することにより、元のAbに対し再工作されたものでのFcドメインの到達可能性を比較する生物物理的手段もまた存在しうる。
【0057】
本発明は、従って、IgG Ab上のFcR結合部位およびC1q結合部位を新たに方向付けしかつおそらくはるかにより到達可能にする新規手段を提供する。数種のAbの効力は、これらの部位を到達可能にすることにより劇的に高められることがありそうである(とりわけ、ADCC、食作用若しくは補体活性化がその作用機序の一部であるAb)。それらの作用機序の一部としてこうした免疫エフェクター機能を動員しないなお他のAbもまた、同時のFcR結合の効果によりその細胞表面若しくは別の方法で固定された抗原に対するより高い親和性を実現することにより、本発明により利益を得るとみられる。同時のFcR結合が大きくなるほど、その抗原から直ちに解離するいかなるAbもその抗原に緊密な近接でFcRにより保持されることができ、それにより再会合の機会を大きく増大させることがよりありそうになる。このアプローチは、しばしば、より好都合な向きで結合する同一抗原に対する完全に異なるAbについて検索することより魅力的な選択肢であることができる。
【0058】
抗体ドメインの物理的結合はいずれかの慣習的技術を利用して達成しうる。好ましい態様において、ドメインの物理的連結は組換え的に達成され、すなわち、こうしたドメインをコードする遺伝子構築物が、それからの発現に際して該分子の正しい集成を可能にする様式で発現系に導入される。前述の例を図2および3に描く。
【0059】
こうした改変Igを構築するため、一般に、改変されるべきAbの選択されたHC若しくはLCドメインをコードするDNAを、容易に単離、工作および同一Abの他の鎖をコードする遺伝子中の選択した部位にクローン化し得る。例えば、1アプローチにおいて、HCのVおよびC1コーディング配列を同時にPCR増幅しかつC1コーディング配列の直後に翻訳終止コドンを含有するように改変し得る。コードされるポリペプチドは改変されたAbのLCを構成し得る。同時に、同一AbのVおよびCコーディング配列を同時にPCR増幅し、そしてHCのヒンジ、C2およびC3ドメインをコードする配列に、例えばこうしたコーディング配列のオーバーラップPCRアプローチにより正確に結合することを可能にするように工作し得る。こうした遺伝子によりコードされるポリペプチドが改変AbのHCを構成し得る。LおよびH鎖のこれらの構築物をその後、発現のため適する細胞株にトランスフェクトする。この様式で、図2Bおよび3に描かれる分子を製造し得る。
【0060】
以下の実施例において、ヒトVおよびCドメインをコードする配列を、同一AbのH鎖分子上のVおよびC1ドメインの代わりに挿入した。同時に、VおよびC
ドメインを、同一AbのVおよびCドメインの代わりに挿入した。他の好ましい態様は、別のAbのVおよびC1若しくはVおよびCコーディング配列(おそらく元のAbと同一の抗原若しくは異なる抗原を認識するもの)を使用することを包含し得る。こうした戦略は、例えばFcR結合を変えることに加え、他の動物種からの対応する抗原に対するより大きな反応性を与えることにより、抗原特異性を変え得る。交換されたドメインは、IgDのような別のIgアイソタイプのL鎖からのドメインでもまたありうる。通常、H鎖のC1ドメインはL鎖定常領域と緊密に会合されており、そしてこの会合は、H鎖およびL鎖双方上の疎水性の面を埋める。
【0061】
さらに、交換された定常領域は、天然の抗体中に存在する天然の形態の定常領域に制限されることを必要としない。むしろ、本発明での使用のための交換された定常領域ドメインは、例えば定常領域ドメインの突然変異誘発、次いで高められた活性についてスクリーニングすることにより生成し得るか、若しくは合成で製造し得る。
【0062】
本発明は、ヒト、ヒト以外の霊長類、ヤギ、ウサギ、ニワトリ、ラット、ハムスター若しくはマウスのような多様な種からの抗体で実施し得る。他の可能性は、CD4のようなAb以外のタンパク質から免疫グロブリンドメインを挿入することであるとみられる。挿入される配列は、免疫グロブリンドメインであることを必要としないことがある。他の配列は、Abの効力を改良するために必要とされる柔軟性若しくは空間配置を賦与することが可能でありうる。例は、(Gly−Gly−Gly−Ser)のようなグリシンおよびセリン残基から構成されるポリペプチドリンカーを包含する。
【0063】
本発明が、全般として受容体とそのリガンドの間の相互作用を高めることのためにもまた応用可能であることが認識されるであろう。この点に関して、受容体若しくはリガンド部分のいずれかを、受容体およびリガンドの親和性(affinity)、親和性(avidity)若しくは単に相互作用する能力を高める1部分以上を有する分子を生成するように改変しうる。別の方法を述べたので、本発明は、Fc受容体結合ドメインの空間的特徴を改変することにより、そのFc標的に対する分子の親和性の増大方法を提供する。最終結果は、改変された分子がFc受容体に対するより大きい親和性を有することができることである。加えて、免疫グロブリンドメインを交換することは外来タンパク質配列を導入しないため、該改変された分子は免疫原性であることがより少なくありそうである。
【0064】
E.改変抗体の設計
上で論考したとおり、本発明の好ましい改変抗体構築物を製造するのに使用される基本設計は、1個若しくはそれ以上のH鎖ドメインを抗体のL鎖定常領域に置換しかつ/または1個若しくはそれ以上のL鎖ドメインをH鎖定常領域に置換することである。本発明の1構築物は、HおよびL鎖V領域を交換して、V−C1−hg−C2−C3 H鎖およびV−C L鎖を作成することである(図2Aに示されるとおり)。改変されるべきである抗体は、ヒト、げっ歯類若しくは他の供給源のいかなる抗体からも選択してよく、そしてキメラ、ヒト化、ヒト若しくは合成抗体でありうる。一態様において、改変されるべきである抗体は、正常若しくはトランスジェニックマウスの免疫化により生成しうる。該抗体は当該技術分野で既知の多数の方法のいずれによってもさらに改変しうる。一般に、改変抗体は、交換された定常ドメイン若しくは他の挿入配列をコードするポリヌクレオチドを、抗体の定常領域をコードするプラスミドに単純に置換すること、および改変抗体を製造するための適する宿主細胞中で該プラスミドを発現することにより製造しうる。該挿入物は直接作成しても若しくはリンカー分子を伴ってもよい。挿入物およびリンカーの性質は、意図される機能を実施する、すなわち抗体分子のFc受容体結合を改変するのに必要なように設計し得る。抗体免疫グロブリン分子を改変する挿入物のアミノ酸組成および長さは、当該技術分野の既知のところの多様な異なる配列を含有する構築物を試験することにより決定しうる。
【0065】
ある種の特徴を有する改変された分子が望ましい場合、その特徴をなんらかの方法で改良するように、定常領域挿入物にある種の突然変異を導入することが望ましいことができるか若しくは必要でありうる。しかしながら、ヒトでの使用のための抗体が望ましい場合には、免疫原性を低下させるために挿入物をヒト配列に可能な限り近づけることが望ましい。従って、免疫原性を生成することを回避するように、可能な限り少ないアミノ酸変化を改変された分子に導入することが一般に望ましい。
【0066】
最低2種の異なる抗原に対する結合特異性を有する二特異性、ヘテロ特異性、ヘテロ複合物若しくは類似のモノクローナルのヒト化抗体もまた使用し得る。こうした場合は、結合特異性の一方を1種の抗原に対しかつ他方のものをいずれかの他の抗原に対し指定しうる。二特異性抗体の作成方法は当該技術分野で既知である。伝統的に、二特異性抗体の組換え製造は、2本のH鎖が異なる特異性を有する2本の免疫グロブリンH鎖/L鎖対の共発現に基づく(MilsteinとCuello、Nature 305:537 1983)。免疫グロブリンHおよびL鎖の無作為な取り合わせのため、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を生じ、それらのうち1種のみが正しい二特異性構造を有する。アフィニティークロマトグラフィー段階により通常なされる正しい分子の精製はむしろ厄介であり、そして生成物の収量は低い。類似の手順が開示されている、(例えば、第WO 93/08829号、米国特許第6210668号、同第6193967号、同第6132992号、同第6106833号、同第6060285号、同第6037453号、同第6010902号、同第5989530号、同第5959084号、同第5959083号、同第5932448号、同第5833985号、同第5821333号、同第5807706号、同第5643759号、同第5601819号、同第5582996号、同第5496549号、同第4676980号、第WO 91/00360号、同第WO 92/00373号、欧州特許第EP 03089号、Trauneckerら、EMBO J.10:3655 1991;Sureshら、Methods in Enzymology 121:210 1986(それぞれそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる))。
【0067】
以下の実施例において、改変Abは、H鎖Fd領域をコードするDNA配列を置換してV−C1−hg−C2−C3 H鎖およびV−C1−hg−C2−C
L鎖を作成するための組換えDNAの方法を使用して製造した。
【0068】
それが由来した未改変マウス抗体に比較した改変抗体の配列を図3に示す。
【0069】
好ましくは、改変抗体構築物またはそれらのリガンド結合部分若しくはバリアントは最低1種のタンパク質リガンド若しくは受容体を結合し、そしてそれにより対応するタンパク質若しくはそのフラグメントの最低1種の生物学的活性を提供する。多様な治療上若しくは診断上意義のあるタンパク質が当該技術分野で公知であり、そして、こうしたタンパク質の適するアッセイ若しくは生物学的活性もまた当該技術分野で公知である。いずれかの数の生物学的に活性のタンパク質を結合する改変抗体を本発明とともに使用しうる。TNF、レプチン、インターロイキン(IL−1からIL−23など)のいずれか、および補体活性化(例えばC3b)に関与するタンパク質に結合しかつ従ってそれらの活性を調節する抗体がとりわけ興味深い。腫瘍上で発現されるタンパク質などを包含する、ある種の疾患状態で差別的に発現されるターゲッティングタンパク質もまた興味深い。これらの分類のリガンドの全部は、本明細で引用される参考文献および他の参考文献に記述される方法により発見されうる。改変抗体のとりわけ好ましい一群はサイトカイン受容体に結合するものである。サイトカインは最近、それらの受容体記号に従って分類された(Inglot 1997、Archivum Immunologiae Therapiae
Experimentalis 45:353−7(ここに引用することによりそっく
りそのまま組み込まれる)を参照されたい)。
【0070】
改変定常領域を含んでなる本発明の改変抗体は、当該技術分野で既知かつ/若しくは本明細書に記述されるところの、ハイブリドーマ、ファージディスプレイ(Katsube,Y.ら、Int J Mol.Med、1(5):863−868 1998)のようないずれかの適する方法、若しくはトランスジェニック動物を使用する方法から得られる抗体を使用して製造し得る。
【0071】
本発明の改変抗体構築物は、それが由来した親抗体からの天然の突然変異若しくは人的操作のいずれかからの1個若しくはそれ以上のアミノ酸の置換、欠失若しくは付加を包含し得る。
【0072】
別の局面において、本明細書に記述されるところの改変抗体構築物は有機部分の共有結合によりさらに改変しうる。こうした改変は、改良された薬物動態特性(例えば増大されたin vivo血清半減期)を伴う抗体若しくは抗原結合フラグメントを生じ得る。有機部分は、直鎖状若しくは分枝状の親水ポリマー基、脂肪酸基若しくは脂肪酸エステル基であり得る。特定の態様において、親水ポリマー基は約800ないし約120,000ダルトンの分子量を有し得、そしてポリアルカングリコール(例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG))、炭水化物ポリマー、アミノ酸ポリマー若しくはポリビニルピロリドンであり得、また、脂肪酸若しくは脂肪酸エステル基は約8から約40個までの炭素原子を含み得る。
【0073】
本発明の改変抗体および抗原結合フラグメントは、抗体に直接若しくは間接的に共有結合されている1個若しくはそれ以上の有機部分を含み得る。本発明の抗体若しくは抗原結合フラグメントに結合されている各有機部分は、独立に、親水ポリマー基、脂肪酸基若しくは脂肪酸エステル基であり得る。本明細書で使用されるところの「脂肪酸」という用語はモノカルボン酸およびジカルボン酸を包含する。該用語が本明細書で使用されるところの「親水ポリマー基」は、オクタン中でよりも水中でより溶解性である有機ポリマーを指す。例えばポリリシンはオクタン中でよりも水中でより溶解性である。従ってポリリシンの共有結合により改変された抗体が本発明により包含される。本発明の抗体を改変するのに適する親水ポリマーは直鎖状若しくは分枝状であり得、そして、例えばポリアルカングリコール(例えばPEG、モノメトキシポリエチレングリコール(mPEG)、PPGなど)、炭水化物(例えばデキストラン、セルロース、オリゴ糖、多糖など)、親水性アミノ酸のポリマー(例えばポリリシン、ポリアルギニン、ポリアスパラギン酸など)、ポリアルカンオキシド(例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドなど)およびポリビニルピロリドンを包含する。好ましくは、本発明の抗体を改変する親水ポリマーは、別個の分子実体として約800ないし約150,000ダルトンの分子量を有する。例えばPEG5000およびPEG20,000(ここで下付き文字はポリマーの平均分子量(ダルトン)である)を使用し得る。親水ポリマー基は1ないし約6個のアルキル、脂肪酸若しくは脂肪酸エステル基で置換し得る。脂肪酸若しくは脂肪酸エステル基で置換される親水ポリマーは、適する方法を使用することにより製造し得る。例えば、アミン基を含んでなるポリマーを脂肪酸若しくは脂肪酸エステルのカルボキシレートに結合し得、そして、脂肪酸若しくは脂肪酸エステル上の活性化されたカルボキシレート(例えばN,N−カルボニルジイミダゾールで活性化された)をポリマー上のヒドロキシル基に結合し得る。
【0074】
本発明の抗体を改変するのに適する脂肪酸および脂肪酸エステルは飽和であり得るか、または1個若しくはそれ以上の不飽和単位を含有し得る。本発明の抗体を改変するのに適する脂肪酸は、例えば、n−ドデカノエート(C12、ラウレート)、n−テトラデカノエート(C14、ミリステート)、n−オクタデカノエート(C18、ステアレート)、
n−エイコサノエート(C20、アラキデート)、n−ドコサノエート(C22、ベヘネート)、n−トリアコンタノエート(C30)、n−テトラコンタノエート(C40)、cisα α9−オクタデカノエート(C18、オレエート)、全cisα5,8,11,14−エイコサテトラエノエート(C20、アラキドネート)、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン二酸などを包含する。適する脂肪酸エステルは、直鎖状若しくは分枝状の低級アルキル基を含んでなるジカルボン酸のモノエステルを包含する。低級アルキル基は1から約12まで、好ましくは1ないし約6個の炭素原子を含み得る。
【0075】
改変ヒト抗体および抗原結合フラグメントは、1種若しくはそれ以上の修飾剤との反応によるような適する方法を使用して製造し得る。該用語が本明細書で使用されるところの「修飾剤」は、活性化基を含んでなる適する有機基(例えば親水ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)を指す。「活性化基」は、適切な条件下で第二の化学基と反応してそれにより修飾剤と該第二の化学基の間に共有結合を形成し得る化学部分若しくは官能基である。例えば、アミン反応性の活性化基は、トシレート、メシレート、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)などのような親電子基を包含する。チオールと反応し得る活性化基は、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロリル、ピリジルジスルフィド、5−チオール−2−ニトロ安息香酸チオール(TNB−チオール)などを包含する。アルデヒド官能基をアミン若しくはヒドラジド含有分子に結合し得、また、アジド基は三価のリン基と反応してホスホルアミデート若しくはホスホルイミド結合を形成し得る。活性化基の分子への適する導入方法は当該技術分野で既知である(例えば、Hermanson,G.T.、Bioconjugate Tecniques、Academic Press カリフォルニア州サンディエゴ 1996を参照されたい)。活性化基は、有機基(例えば親水ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)に直接、またはリンカー部分、例えば1個若しくはそれ以上の炭素原子が酸素、窒素若しくはイオウのようなヘテロ原子により置換されている二価のC−C12基により結合され得る。適するリンカー部分は、例えば、テトラエチレングリコール、−(CH−、−NH−(CH−NH−、−(CH−NH−および−CH−O−CH−CH−O−CH−CH−O−CH−NH−を包含する。リンカー部分を含んでなる修飾剤は、例えば1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下にモノ−Boc−アルキルジアミン(例えばモノ−Boc−エチレンジアミン、モノ−Boc−ジアミノヘキサン)を脂肪酸と反応させて、遊離アミンと脂肪酸のカルボキシレートの間にアミド結合を形成することにより製造し得る。Boc保護基は、トリフルオロ酢酸(TFA)での処理により生成物から除去して、記述されるところの別のカルボキシレートに結合され得る一級アミンを露出させ得るか、若しくは、無水マレイン酸と反応され得、そして生じる生成物を環化して脂肪酸の活性化マレイミド誘導体を生じさせ得る。(例えば、Thompsonら、第WO 92/16221号明細書(その教示全体は引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。)
【0076】
本発明の改変抗体は、ヒト抗体若しくは抗原結合フラグメントを修飾剤と反応させることにより製造し得る。例えば、有機部分を、アミン反応性の修飾剤、例えばPEGのNHSエステルを使用することにより部位非特異的様式で抗体に結合し得る。改変ヒト抗体若しくは抗原結合フラグメントは、抗体若しくは抗原結合フラグメントのジスルフィド結合(例えば鎖内ジスルフィド結合)を還元することによってもまた製造し得る。還元された抗体若しくは抗原結合フラグメントをその後、チオール反応性の修飾剤と反応させて、本発明の改変抗体を製造し得る。本発明の抗体の特定部位に結合されている有機部分を含んでなる改変ヒト抗体および抗原結合フラグメントは、逆タンパク質分解(Fischら、Bioconjugate Chem.、3:147−153 1992;Werlenら、Bioconjugate Chem.、5:411−417 1994;Kumaranら、Protein Sci.6(10):2233−2241 1997;It
ohら、Bioorg.Chem.、24(1):59−68 1996;Capellasら、Biotechnol.Bioeng.、56(4):456−463 1997;およびHermanson,G.T.、Bioconjugate Tecniques、Academic Press カリフォルニア州サンディエゴ 1996に記述される方法)のような適する方法を使用して製造し得る。
【0077】
F.改変抗体の製造
本発明のキメラ抗体の定常(C)領域をコードするヒト遺伝子、フラグメントおよび領域を、ヒト胎児肝ライブラリーから既知の方法により得ることができる。ヒトC領域遺伝子は、ヒト免疫グロブリンを発現かつ産生するものを包含するいかなるヒト細胞からも得ることができる。ヒトC領域は、γ、μ、α、δ、εを包含するヒトH鎖の既知のクラス若しくはアイソタイプ、ならびにG1、G2、G3およびG4のようなそれらのサブタイプのいずれからも得ることができる。H鎖アイソタイプが抗体の多様なエフェクター機能を司るため、C領域の選択は、補体固定若しくは抗体依存性細胞傷害(ADCC)における活性のような所望のエフェクター機能により導かれることができる。好ましくは、C領域はγ1(IgG1)に由来する。ヒトC領域はいずれかのヒトL鎖アイソタイプすなわちκ若しくはλ、好ましくはκに由来し得る。
【0078】
ヒト免疫グロブリンC領域をコードする遺伝子は、標準的クローニング技術(Sambrookら Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー 1989;Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology 1987−1993)によりヒト細胞から得られる。ヒトC領域遺伝子は、2クラスのL鎖、5クラスのH鎖、およびそれらのサブクラスを表す遺伝子を含有する既知のクローンから容易に入手可能である。F(abおよびFabのようなキメラ抗体フラグメントは、適切に切断されているキメラH鎖遺伝子を設計することにより製造し得る。例えば、F(abフラグメントのH鎖部分をコードするキメラ遺伝子は、CH1ドメインおよびH鎖のヒンジ領域、次いで切断された分子を生じるための転写終止コドンをコードするDNA配列を包含するとみられる。
【0079】
一般に、本発明のマウス、ヒト若しくはマウスおよびキメラ抗体、フラグメントおよび領域は、特定の抗体のHおよびL鎖抗原結合領域をコードするDNAセグメントをクローン化すること、ならびにこれらのDNAセグメントをそれぞれCおよびC領域をコードするDNAセグメントに結合してマウス、ヒト若しくはキメラの免疫グロブリンをコードする遺伝子を生じることにより製造される。
【0080】
従って、好ましい一態様において、交換された配列を含有するヒトC領域の少なくとも一部分をコードする第二のDNAセグメントに連結された、結合(J)セグメントを伴う機能的に再配列されたV領域のような、ヒト若しくはヒト以外の起源の抗体の少なくとも抗原結合領域をコードする第一のDNAセグメントを含んでなる融合キメラ遺伝子が創製される。
【0081】
可変、定常若しくは挿入物配列の配列は、該キメラ抗体が目的の抗原に結合しかつそれを阻害する能力を維持する程度まで、挿入、置換および欠失により改変しうる。当業者は、適用可能な機能アッセイを実施することによりこの活性の維持を確かめ得る。
【0082】
本発明の抗体構築物は、場合によっては、当該技術分野で公知のところの細胞株、混合細胞株、不死化細胞若しくは不死化細胞のクローン集団により産生され得る。(例えば、Ausubelら編、Current Protocols in Molecular
Biology、John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨーク州ニューヨーク 1987−2001;Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー 1989;HarlowとLane、antibodies,a Laboratory Manual、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー 1989;Colliganら編、Current Protocols in Immunology、John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨーク 1994−2001;Colliganら、Current Protocols in Protein Science、John Wiley & Sons、ニューヨーク州ニューヨーク 1997−2001(それぞれ引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる)を参照されたい。)
【0083】
1アプローチにおいて、ハイブリドーマは、適する不死細胞株(例えば、限定されるものでないが、Sp2/0、Sp2/0−AG14、NS/O、NS1、NS2、AE−1、L.5、>243、P3X63Ag8.653、Sp2 SA3、Sp2 MAI、Sp2 SS1、Sp2 SA5、U937、MLA144、ACT IV、MOLT4、DA−1、JURKAT、WEHI、K−562、COS、RAJI、NIH 3T3、HL−60、MLA 144、NAMAIWA、NEURO 2Aなどを挙げることができる骨髄腫細胞株、若しくはヘテロミエローマ、それらの融合生成物、またはそれら由来のいずれかの細胞若しくは融合細胞、あるいは当該技術分野で既知のところのいずれかの他の適する細胞株。(例えばwww.atcc.org、www.lifetech.comを参照されたい)などを、限定されるものでないが単離若しくはクローン化された脾、末梢血、リンパ、扁桃、または他の免疫若しくはB細胞含有細胞、あるいは組換え若しくは内因性のウイルス、細菌、藻類、原核生物、両生類、昆虫、は虫類、魚類、哺乳動物、げっ歯類、ウマ、ヒツジ(ovine)、ヤギ、ヒツジ(sheep)、霊長類、真核生物のゲノムのDNA、cDNA、rDNA、ミトコンドリアDNA若しくはRNA、葉緑体DNA若しくはRNA、hnRNA、mRNA、tRNA、一本鎖、二本鎖若しくは三本鎖、ハイブリダイズされたなど、またはそれらのいずれかの組合せのような内因性若しくは異種いずれかの核酸としてH若しくはL鎖定常若しくは可変または枠組みまたはCDR配列を発現するいずれかの他の細胞を挙げることができる抗体産生細胞と融合することにより製造される。(例えば、Ausubel、上記、およびColligan、Immunology、上記、第2章(引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる)を参照されたい。)
【0084】
いずれかの他の適する宿主細胞もまた、本発明の改変された抗体、その指定されるフラグメント若しくはバリアントをコードする異種若しくは内因性核酸を発現させるために使用し得る。融合(ハイブリドーマ)若しくは組換え細胞は、選択的培養条件若しくは他の適する既知の方法を使用して単離し得、そして、限界希釈、細胞分取若しくは他の既知の方法によりクローン化し得る。所望の特異性をもつ抗体を産生する細胞は適するアッセイ(例えばELISA)により選択し得る。
【0085】
ヒト以外の若しくはヒトの抗体の工作すなわちヒト化方法を使用し得、そして当該技術分野で公知である。一般に、ヒト化すなわち工作された抗体はヒト以外である供給源からの1個若しくはそれ以上のアミノ酸残基を有する。これらのヒトアミノ酸残基はしばしば「輸入」残基と称され、典型的には、既知のヒト配列の「輸入」可変、定常若しくは他のドメインから採用される。既知のヒトIg配列は開示されている;(例えば、www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi;www.atcc.org/phage/hdb.html;www.sciquest.com/;www.abcam.com/;www.antibodyresource.com/onlinecomp.html;www.public.iastate.edu/〜
pedro/research_tools.html;www.mgen.uni−heidelberg.de/SD/IT/IT.html;www.whfreeman.com/immunology/CH05/kuby05.htm;www.library.thinkquest.org/12429/Immune/Antibody.html;www.hhmi.org/grants/lectures/1996/vlab/;www.path.cam.ac.uk/〜mrc7/mikeimages.html;www.antibodyresource.com/;mcb.harvard.edu/BioLinks/Immunology.html.www.immunologylink.com/;pathbox.wustl.edu/〜hcenter/index.html;www.biotech.ufl.edu/〜hcl/;www.pebio.com/pa/340913/340913.html;www.nal.usda.gov/awic/pubs/antibody/;www.m.ehime−u.ac.jp/〜yasuhito/Elisa.html;www.biodesign.com/table.asp;www.icnet.uk/axp/facs/davies/links.html;www.biotech.ufl.edu/〜fccl/protocol.html;www.isac−net.org/sites_geo.html;aximt1.imt.uni−marburg.de/〜rek/AEPStart.html;baserv.uci.kun.nl/〜jraats/links1.html;www.recab.uni−hd.de/immuno.bme.nwu.edu/;www.mrc−cpe.cam.ac.uk/imt−doc/public/INTRO.html;www.ibt.unam.mx/vir/V_mice.html;imgt.cnusc.fr:8104/;www.biochem.ucl.ac.uk/〜martin/antibodies/index.html;antibody.bath.ac.uk/;abgen.cvm.tamu.edu/lab/wwwabgen.html;www.unizh.ch/〜honegger/AHOseminar/Slide01.html;www.cryst.bbk.ac.uk/〜ubcg07s/;www.nimr.mrc.ac.uk/CC/ceaewg/ccaewg.htm;www.path.cam.ac.uki/〜mrc7/humanisation/TAHHP.html;www.ibt.unam.mx/vir/structure/stat_aim.html;www.biosci.missouri.edu/smithgp/index.html;
Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,米国保健省(U.S.Dept.Health)1983(それぞれそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)。)
【0086】
こうした輸入された配列を使用して、免疫原性を低下させ得るか、または、結合、親和性(affinity)、オン速度(on−rate)、オフ速度(off−rate)、親和性(avidity)、特異性、半減期、若しくは当該技術分野で既知のところのいずれかの他の適する特徴を低下し得るか、高め得るか、若しくは改変し得る。一般に、ヒト以外若しくはヒトのCDR配列の一部若しくは全部が維持される一方、可変および定常領域のヒト以外の配列がヒト若しくは他のアミノ酸で置換される。抗体はまた、抗原に対する高親和性および他の好都合な生物学的特性の保持を伴いヒト化し得る。この最終目標を達成するため、ヒト化抗体は、場合によっては、親およびヒト化配列の三次元モデルを使用する親配列および多様な概念的ヒト化産物の分析の方法により製造し得る。三次元免疫グロブリンモデルは一般に入手可能でありかつ当業者になじみがある。選択した候補免疫グロブリン配列のありそうな三次元コンホメーション構造を具体的に説明しかつ表示するコンピュータプログラムを利用可能である。これらの表示の検査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基のありそうな役割の解析、すなわち、候補免疫グロブリンのその抗原を結合する能力に影響する残基の解析を可能にする。こうして、標的抗原(1種
若しくは複数)に対する増大された親和性のような所望の抗体の特徴が達成されるように、FR残基をコンセンサスおよび輸入配列から選択しかつ組合せ得る。一般に、CDR残基は抗原結合に影響することに直接かつ最も実質的に関与する。本発明の抗体のヒト化若しくは工作は、限定されるものでないが:(Winter、Jonesら、Nature
321:522 1986;Riechmannら、Nature 332:323 1988;Verhoeyenら、Science 239:1534 1988;Simsら、J.Immunol.151:2296 1993;ChotiaとLesk、J.Mol.Biol.196:901 1987;Carterら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:4285 1992;Prestaら、J.Immunol.151:2623 1993;米国特許第5723323号、同第5976862号、同第5824514号、同第5817483号、同第5814476号、同第5763192号、同第5723323号、同第5,766886号、同第5714352号、同第6204023号、同第6180370号、同第5693762号、同第5530101号、同第5585089号、同第5225539号;同第4816567号明細書、PCT/:第US98/16280号、第US96/18978号、第US91/09630号、第US91/05939号、第US94/01234号、第GB89/01334号、第GB91/01134号、第GB92/01755号明細書;第WO90/14443号、同第WO90/14424号、同第WO90/14430号明細書、欧州特許第EP 229246号明細書(それぞれ引用することにより本明細書にそっくりそのまま組み込まれる)、その中に引用される包含される参考文献)に記述されるものを挙げることができるいずれかの既知の方法を使用して実施し得る。
【0087】
本発明の抗体は、それらの乳中でこうした抗体を産生するヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジなどのようなトランスジェニック動物すなわち哺乳動物を提供するために最低1種の抗体構築物をコードする核酸を使用してもまた製造し得る。こうした動物は既知の方法を使用して提供し得る。(例えば、限定されるものでないが米国特許第5,827,690号;同第5,849,992号;同第4,873,316号;同第5,849,992号;同第5,994,616号、同第5,565,362号;同第5,304,489号など(それらのそれぞれは引用することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる)を参照されたい。)
【0088】
本発明の抗体は、加えて、植物部分若しくはそれから培養される細胞中でこうした抗体、指定される部分若しくはバリアントを産生するトランスジェニック植物および培養植物細胞(限定されるものでないがタバコおよびトウモロコシを挙げることができる)を提供するために、最低1種の抗体構築物をコードする核酸を使用して製造し得る。制限しない一例として、組換えタンパク質を発現するトランスジェニックタバコ葉が、例えば誘導可能なプロモーターを使用して大量の組換えタンパク質を提供するのに成功裏に使用されている。(例えば、Cramerら、Curr.Top.Microbol.Immunol.240:95−118 1999を参照されたい)およびその中に引用される参考文献。また、トランスジェニックトウモロコシが、他の組換え系で産生されるか若しくは天然の供給源から精製されるものと同等の生物学的活性を伴い、商業生産レベルで哺乳動物タンパク質を発現するのに使用されている。(例えば、Hoodら、Adv.Exp.Med.Biol.464:127−147 1999およびその中に引用される参考文献を参照されたい。)一本鎖抗体(scFv)のような抗体フラグメントを包含する抗体はまた、タバコ種子およびバレイショ塊茎を包含するトランスジェニック植物種子からも大量に産生されている。(例えば、Conradら、Plant Mol.Biol.38:101−109 1998およびその中に引用される参考文献を参照されたい。)従って、本発明の抗体は、既知の方法に従ってトランスジェニック植物を使用してもまた製造し得る。(例えば、Fischerら、Biotechnol.Appl.Biochem.、30:99−198、Oct.、1999;Maら、Trends Biotec
hnol.13:522−7 199;Maら、Plant Physiol.109:341−6 1995;Whitelamら、Biochem.Soc.Trans.22:940−944 1994;およびその中に引用される参考文献もまた参照されたい;上の参考文献のそれぞれは引用することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる。)
【0089】
抗原に対する抗体の親和性(affinity)若しくは親和性(avidity)はいずれかの適する方法を使用して実験的に決定し得る。(例えば、Berzofskyら、“Antibody−Antigen Interactions”、Fundamental Immunology、Paul,W.E.編、Raven Press ニューヨーク州ニューヨーク 1984中;Kuby,Janis Immunology、W.H.Freeman and Company ニューヨーク州ニューヨーク 1992;および本明細書に記述される方法を参照されたい。)特定の抗体−抗原相互作用の測定される親和性は、多様な条件(例えば塩濃度、pH)下で測定される場合に変動し得る。従って、親和性および他の抗原結合パラメータ(例えばK、K、K)の測定は、好ましくは抗体および抗原の標準化された溶液、ならびに本明細書に記述される緩衝液のような標準化された緩衝液を用いて行う。
【0090】
G.核酸分子
本明細書に提供される情報を使用して、本発明の抗体構築物をコードする本発明の核酸分子を、本明細書に記述される若しくは当該技術分野で既知のところの方法を使用して得ることができる。
【0091】
本発明の核酸は、mRNA、hnRNA、tRNA若しくはいずれかの他の形態のようなRNAの形態、または限定されるものでないがクローニングにより得られるか若しくは合成で製造されるcDNAおよびゲノムDNAを挙げることができるDNAの形態、あるいはそれらのいずれかの組合せであり得る。DNAは三本鎖、二本鎖若しくは一本鎖、またはそれらのいずれかの組合せであり得る。DNA若しくはRNAの少なくとも1本の鎖のいずれかの部分が、センス鎖としてもまた知られるコーディング鎖であり得るか、または、それはアンチセンス鎖ともまた称される非コーディング鎖であり得る。
【0092】
本発明の単離された核酸分子は、1種若しくはそれ以上のイントロン、改変された抗体構築物のコーディング配列を含んでなる最低1種のH鎖若しくはL鎖核酸分子のCDR1、CDR2および/若しくはCDR3のような最低1個のCDRの最低1個の指定される部分、ならびに、上述されたものと実質的に異なるヌクレオチド配列を含んでなるがしかし遺伝暗号の縮重により本明細書に記述されかつ/若しくは当該技術分野で既知のところの最低1種のこうした改変抗体構築物をなおコードする核酸分子を場合によっては含む1個のオープンリーディングフレーム(ORF)を含んでなる核酸分子を包含し得る。もちろん遺伝暗号は当該技術分野で公知である。従って、本発明の特定の抗体をコードするこうした縮重核酸バリアントを生成することが当業者にとって慣例であるとみられる。(例えばAusubelら、上記を参照されたい)、そしてこうした核酸バリアントは本発明に包含される。
【0093】
本明細書で示されるとおり、抗体構築物をコードする核酸を含んでなる本発明の核酸分子は、限定されるものでないが、抗体フラグメントのアミノ酸配列を独力でコードするもの、該抗体全体若しくはその一部分のコーディング配列、抗体、フラグメント若しくは部分のコーディング配列、ならびに、限定されるものでないが、転写、スプライシングおよびポリアデニル化シグナル(例えば−リボソーム結合およびmRNAの安定性)を包含するmRNAプロセシングである役割を演じる転写され翻訳されない配列のような非コーディング5’および3’配列を挙げることができる付加的な非コーディング配列と一緒の最
低1種のイントロンのような前述の付加的なコーディング配列を伴う若しくは伴わない最低1個のシグナルリーダー若しくは融合ペプチドのコーディング配列のような付加的な配列;付加的な官能性を提供するもののような付加的なアミノ酸をコードする付加的なコーディング配列を挙げることができる。従って、抗体をコードする配列は、抗体のフラグメント若しくは一部分を含んでなる融合抗体の精製を容易にするペプチドをコードする配列のようなマーカー配列に融合し得る。
【0094】
核酸の構築
本発明の単離された核酸は、当該技術分野で公知のところの(a)組換え法、(b)合成技術、(c)精製技術若しくはそれらの組合せを使用して作成し得る。
【0095】
該核酸は本発明のポリヌクレオチドに加えて配列を便宜的に含み得る。例えば、1個若しくはそれ以上のエンドヌクレアーゼ制限部位を含んでなるマルチクローニング部位を、ポリヌクレオチドの単離で補助するために核酸に挿入し得る。また、翻訳可能な配列を、本発明の翻訳されたポリヌクレオチドの単離で補助するために挿入し得る。例えば、ヘキサヒスチジンマーカー配列は、本発明のタンパク質を精製するための便宜的手段を提供する。本発明の核酸(コーディング配列を除外する)は、場合によっては、本発明のポリヌクレオチドをクローン化かつ/若しくは発現するためのベクター、アダプター若しくはリンカーである。
【0096】
付加的な配列を、クローニングおよび/若しくは発現でのそれらの機能を至適化するため、ポリヌクレオチドの単離で補助するため、または細胞中へのポリヌクレオチドの導入を改良するために、こうしたクローニングおよび/若しくは発現配列に付加し得る。クローニングベクター、発現ベクター、アダプターおよびリンカーの使用は当該技術分野で公知である。(例えば、Ausubel、上記;若しくはSambrook、上記を参照されたい)
【0097】
核酸の組換え構築方法
RNA、cDNA、ゲノムDNA、若しくはそれらのいずれかの組合せのような本発明の単離された核酸組成物は、当業者に既知のいずれかの数のクローニング方法論を使用して生物学的供給源から得ることができる。いくつかの態様において、ストリンジェント条件下で本発明のポリヌクレオチドに選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドプローブを使用して、cDNA若しくはゲノムDNAライブラリー中の所望の配列を同定する。RNAの単離ならびにcDNAおよびゲノムライブラリーの構築は当業者に公知である。(例えば、Ausubel、上記;若しくはSambrook、上記を参照されたい)
【0098】
核酸のスクリーニングおよび単離方法
cDNA若しくはゲノムライブラリーを、本明細書に開示されるもののような本発明のポリヌクレオチドの配列に基づくプローブを使用してスクリーニングし得る。ゲノムDNA若しくはcDNA配列とハイブリダイズさせて同一若しくは異なる生物体中の相同な遺伝子を単離するためにプローブを使用し得る。当業者は、ハイブリダイゼーションの多様な程度のストリンジェントを該アッセイで使用し得;そしてハイブリダイゼーション若しくは洗浄媒体のいずれかがストリンジェントであり得ることを認識するであろう。ハイブリダイゼーションの条件がよりストリンジェントになる際に、二重鎖形成が起こるためにプローブと標的の間のより大きな程度の相補性が存在しなければならない。ストリンジェントの程度は、温度、イオン強度、pH、およびホルムアミドのような部分的変性溶媒の存在により制御し得る。例えば、ハイブリダイゼーションのストリンジェントは、0%ないし50%の範囲内のホルムアミドの濃度の操作により反応体溶液の極性を変化させることにより便宜的に変動させ得る。検出可能な結合に必要とされる相補性(配列同一性)の程度は、ハイブリダイゼーション媒体および/若しくは洗浄媒体のストリンジェントに従
って変動することができる。相補性の程度は、至適には100%、若しくは70〜100%、またはその中のいずれかの範囲若しくは値であることができる。しかしながら、プローブおよびプライマー中の小さな配列の変動は、ハイブリダイゼーションおよび/若しくは洗浄媒体のストリンジェントを低下させることにより補償され得ることが理解されるべきである。
【0099】
RNA若しくはDNAの増幅方法は当該技術分野で公知であり、そして本明細書に提示される教示および手引きに基づき、過度の実験を伴わずに本発明により使用し得る。
【0100】
DNA若しくはRNAの既知の増幅方法は、限定されるものでないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および関係する増幅方法(例えば、Mullisらへの米国特許第4,683,195号、同第4,683,202号、同第4,800,159号、同第4,965,188号;Taborへの同第4,795,699号および同第4,921,794号;Innisへの同第5,142,033号;Wilsonらへの同第5,122,464号;Innisへの同第5,091,310号;Gyllenstenらへの同第5,066,584号;Gelfandらへの同第4,889,818号;Silverらへの同第4,994,370号;Biswasへの同第4,766,067号;Ringoldへの同第4,656,134号明細書を参照されたい)、ならびに、二本鎖DNA合成のための鋳型として標的配列に対するアンチセンスRNAを使用するRNA媒介性の増幅(例えば、Ausubel、上記;Sambrook、上記;商品名NASBAをもつMalekらへの米国特許第5,130,238号明細書(それらの参考文献の内容全体は引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい)を挙げることができる。
【0101】
例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術を使用して、本発明のポリヌクレオチドおよび関連遺伝子の配列をゲノムDNA若しくはcDNAライブラリーから直接増幅し得る。PCRおよび他のin vitro増幅方法もまた、例えば発現されるべきタンパク質をコードする核酸配列をクローン化するため、サンプル中の所望のmRNAの存在を検出するためのプローブとして使用するための核酸を作成するため、核酸配列決定のため、若しくは他の目的上有用であり得る。(in vitro増幅方法により当業者を指図するのに十分な技術の例は:Berger、上記;Sambrook、上記;Ausubel、上記;Mullisら、米国特許第4,683,202号 1987;Innisら、PCR Protocols A Guide to Methods and Applications、編、Academic Press Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ 1990に見出される。)ゲノムPCR増幅のために商業的に入手可能なキットは当該技術分野で既知である。例えばAdvantage−GCゲノムPCRキット(Clontech)を参照されたい。加えて、例えばT4の遺伝子32プロテイン(Boehringer Mannheim)を、長いPCR産物の収量を向上させるのに使用し得る。
【0102】
核酸の合成構築方法
本発明の単離された核酸は、既知の方法(例えばAusubelら、上記を参照されたい)を使用する直接化学合成によってもまた製造し得る。化学合成は、一般に一本鎖オリゴヌクレオチドを生じ、それが相補配列とのハイブリダイゼーション若しくは鋳型として該一本鎖を使用するDNAポリメラーゼでの重合により、二本鎖DNAに転化され得る。当業者は、DNAの化学合成は約100若しくはそれ以上の塩基の配列に制限され得る一方で、より長い配列をより短い配列の連結により得ることができることを認識するであろう。
【0103】
H.組換え発現カセット
本発明はさらに、本発明の核酸を含んでなる組換え発現カセットを提供する。本発明の核酸配列、例えば本発明の抗体をコードするcDNA若しくはゲノム配列を使用して、最低1種の所望の宿主細胞に導入し得る組換え発現カセットを構築し得る。組換え発現カセットは、典型的に、意図される宿主細胞中での該ポリヌクレオチドの転写を指図することができる転写開始制御配列に作動可能に連結された本発明のポリヌクレオチドを含むことができる。異種および非異種(すなわち内因性)双方のプロモーターを、本発明の核酸の発現を指図するのに使用し得る。
【0104】
いくつかの態様において、プロモーター、エンハンサー若しくは他の要素としてはたらく単離された核酸を、本発明のポリヌクレオチドの発現を上方若しくは下方制御するように、非異種の形態の本発明のポリヌクレオチドの適切な位置(上流、下流若しくはイントロン中)に導入し得る。例えば、内因性プロモーターを突然変異、欠失および/若しくは置換によりin vivo若しくはin vitroで変えることができる。
【0105】
I.ベクターおよび宿主細胞
本発明は、本発明の単離された核酸分子を包含するベクター、該組換えベクターで遺伝子的に工作されている宿主細胞、および当該技術分野で公知であるところの組換え技術による本発明の最低1種の抗体構築物の製造にもまた関する。(例えば、Sambrookら、上記;Ausubel、上記(それぞれそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。)
【0106】
ポリヌクレオチドは、場合によっては、宿主中での増殖のための選択可能なマーカーを含有するベクターに結合し得る。一般に、プラスミドベクターはリン酸カルシウム沈殿のような沈殿物中で若しくは荷電した脂質との複合体で導入される。ベクターがウイルスである場合、適切なパッケージング細胞株を使用してそれをin vitroでパッケージングし得、そしてその後宿主細胞に移入し得る。
【0107】
DNA挿入物は適切なプロモーターに効果的に連結すべきである。発現構築物は、転写開始、終止のための部位、および転写された領域中に翻訳のためのリボソーム結合部位をさらに含有することができる。該構築物により発現される成熟転写物のコーディング部分は、好ましくは、始めの翻訳開始、および翻訳されるべきmRNAの端に適切に配置された終止コドン(例えばUAA、UGA若しくはUAG)を包含することができ、UAAおよびUAGが哺乳動物若しくは真核生物細胞発現に好ましい。
【0108】
発現ベクターは、好ましくは、しかし場合によっては最低1種の選択可能なマーカーを包含することができる。こうしたマーカーは、限定されるものでないが、真核生物培養物についてメトトレキサート(MTX)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR、米国特許第4,399,216号;同第4,634,665号;同第4,656,134号;同第4,956,288号;同第5,149,636号;同第5,179,017号明細書、アンピシリン、ネオマイシン(G418)、ミコフェノール酸若しくはグルタミン合成酵素(GS、米国特許第5,122,464号;同第5,770,359号;同第5,827,739号明細書)耐性、ならびに大腸菌(E.coli)および他の細菌若しくは原核生物中で培養するためのテトラサイクリン若しくはアンピシリン耐性遺伝子を挙げることができる(上の特許はここに引用することによりそっくりそのまま組み込まれる)。上述された宿主細胞の適切な培地および培養条件は当該技術分野で既知である。適するベクターは当業者に容易に明らかであろう。宿主細胞中へのベクター構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介性トランスフェクション、陽イオン性脂質媒介性トランスフェクション、電気穿孔法、形質導入、感染若しくは他の既知の方法により遂げることができる。(こうした方法は当該技術分野すなわちSambrook、上記、第1〜4および16〜18章;Ausubel、上記、第1、9、13、
15、16章に記述されている。)
【0109】
本発明の最低1種の抗体は、融合タンパク質のような改変された形態で発現され得、そして、分泌シグナルのみならず、しかしまた付加的な異種機能領域も包含し得る。例えば、付加的なアミノ酸、とりわけ荷電したアミノ酸の一領域を抗体のN末端に付加して、精製の間若しくはその後の取扱および保存の間の宿主細胞中での安定性および持続性を改良し得る。また、ペプチド部分を本発明の抗体に付加して精製を容易にし得る。こうした領域は抗体若しくはその最低1フラグメントの最終精製の前に除去し得る。(こうした方法は多くの標準的実験室手引書、すなわちSambrook、上記;第17.29−17.42および18.1−18.74章;Ausubel、上記、第16、17および18章に記述されている。)
【0110】
当業者は、本発明のタンパク質をコードする核酸の発現に利用可能な多数の発現系を知っている。あるいは、本発明の核酸は、本発明の抗体をコードする内因性DNAを含有する宿主細胞において(操作により)スイッチを入れることにより宿主細胞中で発現させ得る。(こうした方法は、例えば米国特許第5,580,734号、同第5,641,670号、同第5,733,746号および同第5,733,761号明細書(そっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)に記述されるとおり当該技術分野で公知である。)
【0111】
抗体、それらの指定される部分若しくはバリアントの製造に有用な細胞培養物の具体的説明は哺乳動物細胞である。哺乳動物細胞系は、しばしば細胞の単層の形態にあることができるとは言え、哺乳動物細胞懸濁液若しくはバイオリアクターもまた使用し得る。無傷のグリコシル化タンパク質を発現することが可能な多数の適する宿主細胞株が当該技術分野で開発されており、そして、例えばAmerican Type Culture Collection、バージニア州マナサス(www.atcc.org)から容易に入手可能である、COS−1(例えばATCC CRL 1650)、COS−7(例えばATCC CRL−1651)、HEK293、BHK21(例えばATCC CRL−10)、CHO(例えばATCC CRL 1610)およびBSC−1(例えばATCC CRL−26)細胞株、Cos−7細胞、CHO細胞、hep G2細胞、P3X63Ag8.653、SP2/0−Ag14、293細胞、HeLa細胞などを包含する。好ましい宿主細胞は、骨髄腫およびリンパ腫細胞のようなリンパ系起源の細胞を包含する。とりわけ好ましい宿主細胞はP3X63Ag8.653細胞(ATCC受託番号CRL−1580)およびSP2/0−Ag14細胞(ATCC受託番号CRL−1851)である。とりわけ好ましい一態様において、組換え細胞はP3X63Ab8.653若しくはSP2/0−Ag14細胞である。
【0112】
これらの細胞の発現ベクターは、限定されるものでないが、複製起点;プロモーター(例えば後期若しくは初期SV40プロモーター、CMVプロモーター(米国特許第5,168,062号;同第5,385,839号明細書)、HSV tkプロモーター、pgk(ホスホグリセリン酸キナーゼ)プロモーター、EF−1αプロモーター(米国特許第5,266,491号明細書)、最低1種のヒト免疫グロブリンプロモーター;エンハンサー、および/若しくはリボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位(例えばSV40ラージT AgポリA付加部位)のようなプロセシング情報部位、ならびに転写終止配列を挙げることができる発現制御配列の1種若しくはそれ以上を包含し得る。例えばAusubelら、上記;Sambrookら、上記を参照されたい。)本発明の核酸若しくはタンパク質の産生に有用な他の細胞は、例えばAmerican Type Culture Collectionの細胞株およびハイブリドーマカタログ(Catalogue of Cell Lines and Hybridomas)(www.atcc.org)または他の既知の若しくは商業的供給源から既知かつ/若
しくは入手可能である。
【0113】
真核生物宿主細胞を使用する場合、ポリアデニル化若しくは転写終止配列が典型的にベクター中に組み込まれる。終止配列の一例はウシ成長ホルモン遺伝子からのポリアデニル化配列である。転写物の正確なスプライシングのための配列もまた包含され得る。スプライシング配列の一例はSV40からのVP1イントロンである(Spragueら、J.Virol.45:773−781 1983)。加えて、宿主細胞中で複製を制御するための遺伝子配列を、当該技術分野で既知のとおり、ベクターに組み込み得る。
【0114】
J.抗体構築物のクローン化および哺乳動物細胞中での発現
典型的な哺乳動物発現ベクターは、mRNAの転写の開始を媒介する最低1種のプロモーター要素、抗体コーディング配列、ならびに転写の終止および転写物のポリアデニル化に必要とされるシグナルを含有する。付加的な要素は、エンハンサー、コザック配列、ならびにRNAスプライシングのためのドナーおよびアクセプター部位により隣接される介在配列を包含する。高効率の転写はSV40からの初期および後期プロモーター、レトロウイルス、例えばRSV、HTLVI、HIVIからの末端反復配列(LTR)、ならびにサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモーターで達成し得る。しかしながら細胞要素もまた使用し得る(例えばヒトアクチンプロモーター)。本発明の実施における使用に適する発現ベクターは、例えば、pIRES1neo、pRetro−Off、pRetro−On、PLXSN若しくはpLNCX(Clonetech Lantibodies、カリフォルニア州パロアルト)、pcDNA3.1(+/−)、pcDNA/Zeo(+/−)若しくはpcDNA3.1/Hygro(+/−)(Invitrogen)、PSVLおよびPMSG(Pharmacia、スウェーデン・ウプサラ)、pRSVcat(ATCC 37152)、pSV2dhfr(ATCC 37146)ならびにpBC12MI(ATCC 67109)のようなベクターを包含する。使用し得る哺乳動物宿主細胞は、ヒトHela 293、H9およびJurkat細胞、マウスNIH3T3およびC127細胞、Cos 1、Cos 7およびCV1、ウズラQC1−3細胞、マウスL細胞ならびにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を包含する。
【0115】
あるいは、該遺伝子は染色体に組込まれた遺伝子を含有する安定細胞株で発現し得る。dhfr、gpt、ネオマイシン若しくはハイグロマイシンのような選択可能なマーカーとのコトランスフェクションは、トランスフェクトされた細胞の同定および単離を可能にする。
【0116】
トランスフェクトされた遺伝子は、大量のコードされた抗体を発現するようにまた増幅もし得る。DHFR(ジヒドロ葉酸還元酵素)マーカーは、数百若しくはなお数千コピーの目的の遺伝子を運搬する細胞株を開発するのに有用である。別の有用な選択マーカーは酵素グルタミン合成酵素(GS)である(Murphyら、Biochem.J.227:277−279 1991;Bebbingtonら、Bio/Technology
10:169−175 1992)。これらのマーカーを使用して、哺乳動物細胞を選択培地中で増殖させ、そして最高の耐性を伴う細胞を選択する。これらの細胞株は染色体中に組込まれた増幅された遺伝子(1種若しくは複数)を含有する。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)およびNSO細胞がしばしば抗体の製造に使用される。
【0117】
発現ベクターpC1およびpC4は、ラウス肉腫ウイルスの強力なプロモーター(LTR)(Cullenら、Molec.Cell.Biol.5:438−447 1985)およびCMV−エンハンサーのフラグメント(Boshartら、Cell 41:521−530 1985)を含有する。例えば制限酵素切断部位BamHI、XbaIおよびAsp718を含むマルチクローニング部位が目的の遺伝子のクローニングを容易にする。該ベクターは、3’イントロンに加え、ラットプレプロインスリン遺伝子のポリ
アデニル化および終止シグナルを含有する。
【0118】
K.CHO細胞中でのクローニングおよび発現
ベクターpC4を抗体構築物の発現に使用しうる。プラスミドpC4はプラスミドpSV2−dhfr(ATCC受託番号37146)の派生物である。該プラスミドはSV40初期プロモーターの制御下にマウスDHFR遺伝子を含有する。これらのプラスミドでトランスフェクトされている、ジヒドロ葉酸活性を欠くチャイニーズハムスター卵巣若しくは他の細胞を、化学療法剤メトトレキサートを補充した選択培地(例えばα−MEM、Life Technologies、メリーランド州ゲイタースバーグ)中で該細胞を増殖させることにより選択し得る。メトトレキサート(MTX)に耐性の細胞中でのDHFR遺伝子の増幅は十分に報告されている(例えばF.W.Altら、J.Biol.Chem.253:1357−1370 1978;J.L.HamlinとC.Ma、Biochem.et Biophys.Acta 1097:107−143 1990;およびM.J.PageとM.A.Sydenham、Biotechnology 9:64−68 1991を参照されたい)。増大する濃度のMTX中で増殖された細胞は、DHFR遺伝子の増幅の結果として、標的酵素DHFRを過剰産生することにより該薬物に対する耐性を発生させる。第二の遺伝子がDHFR遺伝子に連結されている場合、それは通常共増幅かつ過剰発現される。このアプローチを使用して1,000コピー以上の増幅された遺伝子(1種若しくは複数)を運搬する細胞株を開発し得ることが当該技術分野で既知である。その後、メトトレキセートを除去する場合に、宿主細胞の1種若しくはそれ以上の染色体に組込まれた増幅された遺伝子を含有する細胞株が得られる。
【0119】
プラスミドpC4は、目的の遺伝子を発現するために、ラウス肉腫ウイルスの末端反復配列(LTR)の強力なプロモーター(Cullenら、Molec.Cell.Biol.5:438−447 1985)、およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)の前初期遺伝子のエンハンサーから単離されたフラグメント(Boshartら、Cell 41:521−530 1985)を含有する。プロモーターの下流に遺伝子の組込みを可能にするBamHI、XbaIおよびAsp718制限酵素切断部位がある。これらのクローニング部位の後に、該プラスミドは、3’イントロンおよびラットプレプロインスリン遺伝子のポリアデニル化部位を含有する。他の高効率プロモーター、例えばヒトb−アクチンプロモーター、SV40初期若しくは後期プロモーター、または他のレトロウイルス、例えばHIVおよびHTLVIからの末端反復配列もまた発現に使用し得る。ClontechのTet−OffおよびTet−On遺伝子発現系および類似の系を使用して、改変抗体構築物を哺乳動物細胞中で調節された様式で発現させ得る(M.GossenとH.Bujard、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:5547−5551 1992)。mRNAのポリアデニル化のため、例えばヒト成長ホルモン若しくはグロビンからの他のシグナル遺伝子を同様に使用し得る。染色体中に組込まれた目的の遺伝子を運搬する安定細胞株もまた、gpt、G418若しくはハイグロマイシンのような選択可能なマーカーとのコトランスフェクションに際して選択し得る。最初に1種以上の選択可能なマーカー、例えばG418およびメトトレキサートを使用することが有利である。
【0120】
プラスミドpC4を制限酵素で消化し、そしてその後、当該技術分野で既知の手順により仔ウシ腸ホスファターゼを使用して脱リン酸化する。該ベクターをその後1%アガロースゲルから単離する。
【0121】
例えば、本発明の改変抗体構築物のHCおよびLC可変領域に対応する、配列番号7および8に提示されるところの完全な改変抗体構築物をコードするDNA配列を、既知の方法段階に従って使用する。適するヒト定常領域(すなわちHCおよびLC領域)をコードする単離された核酸もまた本構築物で使用する。
【0122】
単離された可変および定常領域をコードするDNA配列ならびに脱リン酸化したベクターをその後、T4 DNAリガーゼで連結する。大腸菌(E.coli)HB101若しくはXL−1 Blue細胞をその後形質転換し、そして、例えば制限酵素分析を使用して、プラスミドpC4に挿入されたフラグメントを含有する細菌を同定する。
【0123】
活性のDHFR遺伝子を欠くチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞をトランスフェクションに使用する。5μgの発現プラスミドpC4を、0.5□gのプラスミドpSV2−neoとともにリポフェクションを使用してコトランスフェクトする。プラスミドpSV2neoは、優勢な選択可能なマーカー、すなわちG418を包含する抗生物質の一群に対する耐性を賦与する酵素をコードするTn5からのneo遺伝子を含有する。該細胞を、1μg/mlのG418を補充したα−MEMに接種する。2日後に細胞をトリプシン処理し、そして、10、25若しくは50ng/mlのメトトレキサートおよび1μg/mlのG418を補充したα−MEM中でハイブリドーマクローニングプレート(Greiner、ドイツ)に接種する。約10〜14日後に、単一クローンをトリプシン処理し、そしてその後、異なる濃度のメトトレキサート(50nM、100nM、200nM、400nM、800nM)を使用して6ウェルペトリ皿若しくは10mlフラスコに接種する。最高濃度のメトトレキサートで増殖するクローンをその後、なおより高濃度のメトトレキサート(1mM、2mM、5mM、10mM、20mM)を含有する新たな6ウェルプレートに移す。100〜200mMの濃度で増殖するクローンが得られるまで、同一の手順を反復する。所望の遺伝子産物の発現を、例えばSDS−PAGEおよびウエスタンブロット、若しくは逆相HPLC分析により分析する。
【0124】
L.抗体の精製
改変抗体構築物は、限定されるものでないが、プロテインA精製、硫酸アンモニウム若しくはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン若しくは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーを挙げることができる公知の方法により、組換え細胞培養物から回収かつ精製し得る。高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)もまた精製に使用し得る。(例えば、Colligan、Current Protocols in Immunology、若しくはCurrent Protocols in Protein Science、John Wiley & Sons、ニューヨーク州ニューヨーク、1997−2001、第1、4、6、8、9、10章(それぞれそっくりそのまま引用することにより本明細書に組み込まれる)を参照されたい。)
【0125】
J.利用性
本発明の単離された核酸は、細胞、組織、器官若しくは動物(哺乳動物およびヒトを包含する)での効果を測定する、限定されるものでないが免疫障害若しくは疾患、心血管系障害若しくは疾患、感染性、悪性および/若しくは神経学的障害若しくは疾患、アレルギー性障害若しくは疾患;皮膚障害若しくは疾患;血液学的障害若しくは疾患;ならびに/または肺障害若しくは疾患、あるいは他の既知の若しくは指定される状態の最低1種から選択される最低1種の状態の発生を診断、監視、調節、処置、軽減、予防することを助ける、またはそれらの症状を低下させるのに使用し得る、最低1種の抗体構築物若しくはその指定されるバリアントの製造に使用し得る。
【0126】
こうした方法は、最低1種の改変抗体構築物を含んでなる組成物若しくは製薬学的組成物の有効量を、症状、効果若しくは機構のこうした調節、処置、軽減、予防若しくは低下の必要な細胞、組織、器官、動物若しくは患者に投与することを含み得る。該有効量は、本明細書に記述されるか若しくは関連技術分野で既知のところの既知の方法を使用して行
われかつ測定されるところの、単一(例えばボーラス)、複数若しくは連続投与あたり約0.001ないし500mg/kgの、または単一、複数若しくは連続投与あたり0.01〜5000μg/ml血清濃度、あるいはその中のいずれかの有効な範囲若しくは値の血清濃度を達成するための量を含み得る。
【0127】
K.改変抗体構築物組成物
本発明はまた、天然に存在しない組成物、混合物若しくは形態で提供される、本明細書に記述されかつ/若しくは当該技術分野で既知のところの、最低1、最低2、最低3、最低4,最低5、最低6若しくはそれ以上のそれらの抗体を含んでなる、最低1種の抗体構築物組成物もまた提供する。こうした組成物は、製薬学的に許容できる担体とともに本発明の最低1種の改変抗体を含んでなる、天然に存在しない組成物を含んでなる。こうした抗体構築物組成物は、40〜99%からのどこかの本発明の改変抗体構築物を包含し得る。こうした組成物のパーセントは、当該技術分野で既知若しくは本明細書に記述されるところの、液体若しくは乾燥溶液、混合物、懸濁液、乳液若しくはコロイドとして重量、容量、濃度、モル濃度若しくは重量モル濃度である。
【0128】
本発明の改変抗体構築物または指定される部分若しくはバリアントの組成物は、限定されるものでないが希釈剤、結合剤、安定剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、保存剤、補助物質などを挙げることができるいずれかの適する補助物質の最低1種をさらに含み得る。製薬学的に許容できる補助物質が好ましい。こうした滅菌溶液の制限しない例および製造方法は当該技術分野で公知である;(Gennaro編、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Publishing
Co.ペンシルバニア州イーストン 1990。)当該技術分野で公知若しくは本明細書に記述されるところの、改変抗体構築物組成物の投与様式、溶解性および/若しくは安定性に適する製薬学的に許容できる担体は慣例に選択し得る。
【0129】
本組成物で有用な製薬学的賦形剤および添加物は、単独で若しくは組合せで1〜99.99重量若しくは容量%を含んでなる、単独で若しくは組合せで存在し得る、限定されるものでないがタンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、ならびに炭水化物(例えば、単糖、二、三、四およびオリゴ糖を包含する糖;アルジトール、アルドン酸のような誘導体化糖、エステル化糖など;ならびに多糖若しくは糖ポリマー)を挙げることができる。例示的タンパク質賦形剤は、ヒト血清アルブミン(HSA)のような血清アルブミン、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどを包含する。緩衝能力においてもまた機能し得る代表的アミノ酸/改変抗体構築物または指定された部分若しくはバリアントの成分は、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどを包含する。好ましい1アミノ酸はグリシンである。
【0130】
本発明での使用に適する炭水化物賦形剤は、例えば、果糖、麦芽糖、ガラクトース、ブドウ糖、D−マンノース、ソルボースなどのような単糖;乳糖、ショ糖、トレハロース、セロビオースなどのような二糖;ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどのような多糖;およびマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトールソルビトール(グルチトール)、ミオイノシトールなどのようなアルジトールを包含する。本発明での使用に好ましい炭水化物賦形剤は、マンニトール、トレハロースおよびラフィノースである。
【0131】
改変抗体構築物組成物は緩衝剤若しくはpH調節剤もまた包含し得;典型的には、緩衝剤は有機酸若しくは塩基から調製される塩である。代表的緩衝剤は、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸若しくはフタル酸の塩のような有機
酸の塩;トリス、塩酸トロメタミン若しくはリン酸緩衝剤を包含する。本組成物中での使用に好ましい緩衝剤はクエン酸塩のような有機酸の塩である。
【0132】
加えて、本発明の改変抗体構築物または指定される部分若しくはバリアントの組成物は、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(dextrate)(例えば2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンのようなシクロデキストリン)、ポリエチレングリコールのようなポリマー賦形剤/添加物、着香料、抗菌剤、甘味料、抗酸化剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば「TWEEN 20」および「TWEEN 80」のようなポリソルベート)、脂質(例えばリン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えばコレステロール)、ならびにキレート剤(例えばEDTA)を包含し得る。
【0133】
本発明の改変抗体構築物組成物での使用に適するこれらおよび付加的な既知の製薬学的賦形剤および/若しくは添加物は当該技術分野で既知である、(例えば、Remington:The Science & Practice of Pharmacy、第19版、Williams & Williams、1995;Physician’s Desk Reference、第52版、Medical Economics、ニュージャージー州モントベール 1998(それらの開示は引用することによりそっくりそのまま本明細書に組み込まれる)に列挙されるとおり。)好ましい担体若しくは賦形剤物質は、炭水化物(例えば糖およびアルジトール)ならびに緩衝剤(例えばクエン酸塩)若しくはポリマー剤である。
【0134】
L.製剤
上に示されたとおり、本発明は、製薬学的に許容できる製剤中に最低1種の改変抗体構築物を含んでなる、製薬学的若しくは家畜の使用に適する、好ましくは生理的食塩水若しくは選ばれた塩を含むリン酸緩衝液ならびに保存された溶液である安定な製剤、および保存剤を含有する製剤、ならびに複数回使用の保存される製剤を提供する。保存される製剤は、最低1種の既知の、または最低1種のフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウムおよびチメロサール若しくはそれらの混合物よりなる群から場合によっては選択される保存剤を水性希釈剤中に含有する。限定されるものでないが0.001、0.003、0.005、0.009、0.01、0.02、0.03、0.05、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.3、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9またはその中のいずれかの範囲若しくは値を挙げることができる、0.001〜5%またはその中のいずれかの範囲若しくは値のような、当該技術分野で既知のところのいかなる適する濃度若しくは混合物も使用し得る。制限しない例は、保存剤なし、0.1〜2%m−クレゾール(例えば0.2、0.3、0.4、0.5、0.9、1.0%)、0.1〜3%ベンジルアルコール(例えば0.5、0.9、1.1、1.5、1.9、2.0、2.5%)、0.001〜0.5%チメロサール(例えば0.005、0.01)、0.001〜2.0%フェノール(例えば0.05、0.25、0.28、0.5、0.9、1.0%)、0.0005〜1.0%アルキルパラベン(1種若しくは複数)(例えば0.00075、0.0009、0.001、0.002、0.005、0.0075、0.009、0.01、0.02、0.05、0.075、0.09、0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、0.9、1.0%)などを包含する。
【0135】
上に示されたとおり、本発明は、包装資材、ならびに、場合によっては水性希釈剤中の処方された緩衝剤および/若しくは保存剤とともに最低1種の改変抗体構築物の溶液を含んでなる最低1本のバイアルを含んでなる製品を提供し、前記包装資材は、こうした溶液を1、2、3、4、5、6、9、12、18、20、24、30、36、40、48、54、60、66、72時間若しくはそれ以上の期間にわたり保持し得ることを示すラベルを含んでなる。本発明はさらに、包装資材、凍結乾燥された最低1種の改変抗体構築物を含んでなる第一のバイアル、および処方された緩衝剤若しくは保存剤の水性希釈剤を含んでなる第二のバイアルを含んでなる製品を含んでなり、前記包装資材は、該最低1種の改変抗体構築物を該水性希釈剤中で再構成して24時間若しくはそれ以上の期間にわたり保持し得る溶液を形成することを患者に指示するラベルを含んでなる。
【0136】
本発明の製品中の最低1種の改変抗体構築物の範囲は、再構成に際して、水分を含む/乾燥系での場合に約1.0μg/mlから約1000mg/mlまでの濃度を生じる量を包含するとは言え、より低いおよびより高い濃度が操作可能であり、そして、意図される送達ベヒクルに依存し、例えば溶液製剤は経皮貼付剤、肺、経粘膜、または浸透圧若しくは微小ポンプ法と異なることができる。
【0137】
好ましくは、該水性希釈剤は、場合によっては製薬学的に許容できる保存剤をさらに含んでなる。好ましい保存剤は、フェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウムおよびチメロサール若しくはそれらの混合物よりなる群から選択されるものを包含する。該製剤中で使用される保存剤の濃度は抗菌効果を生じるのに十分な濃度である。こうした濃度は選択される保存剤に依存し、そして当業者により容易に決定される。
【0138】
他の賦形剤、例えば等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、保存増強剤を、場合によってはかつ好ましくは希釈剤に添加し得る。グリセリンのような等張剤が既知濃度で一般に使用される。生理学的に耐えられる緩衝剤を、好ましくは改良されたpH制御を提供するように添加する。該製剤は、約pH4から約pH10までのような広範なpH、および約pH5から約pH9までの好ましい範囲、ならびに約6.0ないし約8.0の最も好ましい範囲を包括し得る。好ましくは、本発明の製剤は約6.8と約7.8の間のpHを有する。好ましい緩衝剤は、リン酸緩衝液、最も好ましくはリン酸ナトリウム、とりわけリン酸緩衝生理的食塩水(PBS)を包含する。
【0139】
Tween 20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、TWEEN 40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、TWEEN 80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)、Pluronic F68(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー)およびPEG(ポリエチレングリコール)のような製薬学的に許容できる可溶化剤、あるいはポリソルベート20若しくは80またはポロキサマー184若しくは188、Pluronic(R)ポリル、他のブロックコポリマーのような非イオン性界面活性剤、ならびにEDTAおよびEGTAのようなキレート剤のような他の添加物を、凝集を低下させるために製剤若しくは組成物に場合によっては添加し得る。これらの添加物は、ポンプ若しくはプラスチック容器を使用して該製剤を投与する場合にとりわけ有用である。製薬学的に許容できる界面活性剤の存在は、タンパク質が凝集する傾向を緩和する。
【0140】
本発明の製剤は、最低1種の抗体構築物、ならびにフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウムおよびチメロサール若しくはそれらの混合物よりなる群か
ら選択される保存剤を水性希釈剤中で混合することを含んでなる方法により製造し得る。最低1種の抗体構築物および保存剤を水性希釈剤中で混合することは、慣習的溶解および混合手順を使用して実施する。適する製剤を製造するために、例えば、緩衝溶液中の測定した量の最低1種の抗体構築物を、該タンパク質および保存剤を所望の濃度で提供するのに十分な量で緩衝溶液中で所望の保存剤と組み合わせる。この方法の変形物が当業者により認識されるであろう。例えば、成分を添加する順序、付加的な添加物を使用するかどうか、製剤を製造する温度およびpHは、全部、使用される濃度および投与手段について至適化し得る因子である。
【0141】
特許請求される製剤は、澄明な溶液として、または、水、保存剤および/若しくは賦形剤、好ましくはリン酸緩衝液ならびに/若しくは生理的食塩水および選ばれた塩を水性希釈剤中に含有する第二のバイアルで再構成される凍結乾燥された最低1種の抗体構築物のバイアルを含んでなる二本のバイアルとして、患者に提供し得る。単一溶液バイアル若しくは再構成を必要とする二本のバイアルのいずれも複数回再使用し得、そして単一若しくは複数周期の患者処置に十分であり得、そして従って現在利用可能よりも便宜的な処置レジメンを提供し得る。
【0142】
本特許請求される製品は、即座ないし24時間若しくはそれ以上の期間にわたる投与に有用である。従って、現在特許請求される製品は患者に大きな利点を提供する。本発明の製剤は、場合によっては、約2℃から約40℃までの温度で安全に保存し得、かつ、タンパク質の生物学的活性を長期間保持し得、従って、該溶液を6、12、18、24、36、48、72若しくは96時間またはそれ以上の期間にわたり保持かつ/若しくは使用し得ることを示す包装ラベルを可能にする。保存される希釈剤を使用する場合、こうしたラベルは1〜12か月、半年、1年半および/若しくは2年までの使用を包含し得る。
【0143】
本発明における最低1種の改変抗体構築物の溶液は、最低1種の抗体を水性希釈剤中で混合することを含んでなる方法により製造し得る。混合することは慣習的溶解および混合手順を使用して実施する。適する希釈剤を調製するため、例えば、水若しくは緩衝剤中の測定した量の最低1種の抗体を、該タンパク質および場合によっては保存剤若しくは緩衝剤を所望の濃度で提供するのに十分な量で組み合わせる。この方法の変形物が当業者により認識されるであろう。例えば、成分を添加する順序、付加的な添加物を使用するかどうか、製剤を製造する温度およびpHは、全部、使用される濃度および投与手段について至適化し得る因子である。
【0144】
特許請求される製品は、澄明な溶液として、または水性希釈剤を含有する第二のバイアルで再構成される凍結乾燥された最低1種の抗改変抗体構築物のバイアルを含んでなる二本のバイアルとして患者に提供し得る。単一の溶液バイアル若しくは再構成を必要とする二本のバイアルのいずれも複数回再使用し得、かつ、単一若しくは複数周期の患者処置に十分であり得、そして従って現在利用可能よりも便宜的な処置レジメンを提供する。
【0145】
特許請求される製品は、薬局、診察室、若しくは他のこうした施設(institutions)および施設(facility)に澄明な溶液、若しくは水性希釈剤を含有する第二のバイアルで再構成される凍結乾燥された最低1種の改変抗体構築物のバイアルを含んでなる二本のバイアルを提供することにより、患者に間接的に提供し得る。この場合の澄明な溶液は大きさが1リットルまでもしくはなおより大きくあり得、それから最低1種の抗体溶液のより小さな部分をより小さいバイアルへの移動のため1回若しくは複数回取得しかつ薬局若しくは診療所によりそれらの顧客および/若しくは患者に提供し得る大型リザーバを提供する。
【0146】
これらの単一バイアル系を含んでなる認識される装置は、例えばBecton Dic
kensen(ニュージャージー州フランクリンレイクス、www.bectondickenson.com)、Disetronic(スイス・ブルクドルフ、www.disetronic.com;Bioject、オレゴン州ポートランド(www.bioject.com);National Medical Products、Weston Medical(英国ピータースボロ、www.weston−medical.com)、Medi−Ject Corp(ミネソタ州ミネアポリス、www.mediject.com)により作成若しくは開発されるところの、BD Pen、BD Autojector(R)、Humaject(R)、NovoPen(R)、B−D(R)Pen、AutoPen(R)およびOptiPen(R)、GenotropinPen(R)、Genotronorm Pen(R)、Humatro Pen(R)、Reco−Pen(R)、Roferon Pen(R)、Biojector(R)、iject(R)、J−tip Needle−Free Injector(R)、Intraject(R)、Medi−Ject(R)のような溶液の送達のためのペン注入器装置を包含する。二本のバイアル系を含んでなる認識される装置は、HumatroPen(R)のような再構成した溶液の送達のためのカートリッジ中で凍結乾燥した薬物を再構成するためのペン注入器装置を包含する。
【0147】
現在特許請求される製品は包装資材を包含する。包装資材は、規制当局により要求される情報に加え、該製品を使用し得る条件を提供する。本発明の包装資材は、2本のバイアルの水分を含む/乾燥生成物について、該最低1種の抗改変抗体構築物を水性希釈剤中で再構成して溶液を形成しかつ2〜24時間若しくはそれ以上の時間にわたり該溶液を使用するための患者に対する説明書を提供する。単一バイアルの溶液製品について、該ラベルは、こうした溶液を2〜24時間若しくはそれ以上の時間にわたり使用し得ることを示す。現在特許請求される製品はヒトの製薬学的生成物の使用に有用である。
【0148】
本発明の製剤は、最低1種の改変抗体構築物および選択された緩衝液、好ましくは生理的食塩水若しくは選ばれた塩を含有するリン酸緩衝液を混合することを含んでなる方法により製造し得る。最低1種の抗体および緩衝剤を水性希釈剤中で混合することは、慣習的溶解および混合手順を使用して実施する。適する製剤を製造するため、例えば、水若しくは緩衝液中の測定した量の最低1種の抗体を、該タンパク質および緩衝剤を所望の濃度で提供するのに十分な量で水中で所望の緩衝剤と組み合わせる。本方法の変形物が当業者により認識されるであろう。例えば、成分を添加する順序、付加的な添加物を使用するかどうか、製剤を製造する温度およびpHは、全部、使用される濃度および投与手段について至適化し得る因子である。
【0149】
特許請求される安定なすなわち保存される製剤は、澄明な溶液として、または保存剤若しくは緩衝剤および賦形剤を水性溶液中に含有する第二のバイアルで再構成される凍結乾燥された最低1種の抗改変抗体構築物のバイアルを含んでなる二本のバイアルとして患者に提供し得る。単一の溶液バイアル若しくは再構成を必要とする二本のバイアルのいずれも複数回再使用し得、かつ、単一若しくは複数周期の患者処置に十分であり得、そして従って現在利用可能よりも便宜的な処置レジメンを提供する。
【0150】
本明細書に記述される安定なすなわち保存される製剤または溶液のいずれか中の最低1種の改変抗体構築物は、SC若しくはIM注入;経皮、肺、経粘膜、植込物、浸透圧ポンプ、カートリッジ、微小ポンプ、若しくは当該技術分野で公知のところの当業者により認識される他の手段を包含する多様な送達方法を介して、本発明により患者に投与し得る。
【0151】
M.治療的応用
本発明は、本発明の最低1種の改変抗体構築物を使用する、当該技術分野で既知の若しくは本明細書に記述されるところの細胞、組織、器官、動物若しくは患者における疾患の調節若しくは処置方法もまた提供する。
【0152】
本発明は、限定されるものでないが肥満、免疫関連疾患、心血管系疾患、感染性疾患、悪性疾患若しくは神経学的疾患の最低1種を挙げることができる、細胞、組織、器官、動物若しくは患者における最低1種の疾患の調節若しくは処置方法もまた提供する。
【0153】
典型的には、病理学的状態の処置は、該組成物に含有されるの比活性に依存して、平均して用量あたり患者1キログラムあたり最低約0.01から500ミリグラムまでの範囲の最低1種の抗サンティボディ(Santibody)、および好ましくは単一若しくは複数回投与あたり患者1キログラムあたり最低約0.1から100ミリグラムまでの改変抗体構築物に合計でなる最低1種の改変抗体構築物組成物の有効量若しくは投薬量を投与することにより遂げられる。あるいは、有効血清濃度は単一若しくは複数回投与あたり0.1〜5000μg/mlの血清濃度を含み得る。適する投薬量は医学実務者に既知であり、そしてもちろん、特定の疾患状態、投与されている組成物の比活性、および処置を受けている特定の患者に依存することができる。いくつかの場合には、所望の治療量を達成するために、反復投与、すなわち、所望の1日用量若しくは効果が達成されるまで個々の投与を反復する特定のモニター若しくは計量された用量の反復個別投与を提供することが必要であり得る。
【0154】
好ましい用量は、場合によっては、0.1〜100mg/kg/投与、またはそのいずれかの範囲、値若しくは画分、あるいは、単一若しくは複数回投与あたり0.1〜5000μg/mlの血清濃度またはそのいずれかの範囲、値若しくは画分の血清濃度を達成するためを包含し得る。
【0155】
あるいは、投与される投薬量は、特定の剤の薬力学的特徴ならびにその投与様式および経路;受領者の齢、健康状態および重量;症状の性質および程度、付随する処置の種類、処置の頻度、ならびに所望の効果のような既知の因子に依存して変動し得る。通常、有効成分の投薬量は体重1キログラムあたり約0.1ないし100ミリグラムであり得る。投与あたり若しくは徐放形態物中で通常1キログラムあたり0.1ないし50、および好ましくは0.1ないし10ミリグラムが、所望の結果を得るのに有効である。
【0156】
内的投与に適する投薬形態物(組成物)は、一般に、単位若しくは容器あたり約0.1ミリグラムから約500ミリグラムまでの有効成分を含有する。これらの製薬学的組成物中で、有効成分は通常、組成物の総重量に基づき約0.5〜99.999重量%の量で存在することができる。
【0157】
非経口投与のためには、該抗体は、溶液、懸濁液、乳液、若しくは製薬学的に許容できる非経口ベヒクルを伴うか若しくは別個に提供される凍結乾燥粉末として処方し得る。こうしたベヒクルの例は、水、生理的食塩水、リンゲル液、D−ブドウ糖溶液、および1〜10%ヒト血清アルブミンである。リポソーム、および不揮発性油のような非水性ベヒクルもまた使用し得る。ベヒクル若しくは凍結乾燥粉末は、等張性(例えば塩化ナトリウム、マンニトール)ならびに化学的安定性(例えば緩衝剤および保存剤)を維持する添加物を含有し得る。該製剤は既知の若しくは適する技術により滅菌する。
【0158】
適する製薬学的担体は、この分野の標準的参照教科書、Remington’s Pharmaceutical Sciences、A.Osolの最新版に記述されている。
【0159】
本発明を全般的に記述したので、それは、具体的説明として提供されかつ制限するとして意図していない以下の実施例を参照して、より容易に理解されるであろう。
【実施例1】
【0160】
改変抗体の製造
改変Abをコードする遺伝子は、a)IgG1,k AbのVおよびC1ドメインをコードするDNA配列を同一AbのVおよびCドメインをコードするDNA配列で、ならびにb)同一AbのVおよびCドメインをコードするDNA配列を同一AbのVおよびC1ドメインをコードするDNA配列で置換するため、PCR増幅および組換えDNA技術を使用することにより製造した。
【0161】
−C−hg−C2−C3 HCをコードするプラスミドを製造するため、元のLC cDNA配列を含有するプラスミドp3123を、ATG翻訳開始コドンからシグナル配列、V、およびCドメインまで伸長する765bpのフラグメントを増幅したオーバーラップPCRプロトコルで鋳型として使用した。該反応をプライミングするのに使用した下流のオリゴヌクレオチドは、Cコーディング配列の直後の天然に存在する翻訳終止コドンを、IgG1 HCヒンジ配列の最初の23塩基をコードするDNA配列で置換するようにさらにはたらいた。元のHC cDNA配列を含有するプラスミドp3122をその後、Cコーディング配列(上流のオリゴヌクレオチドプライマー中に組み込まれる)の最後の22塩基、次いでヒンジ、C2およびC3ドメインをコードする配列を包含した715bpのフラグメントを増幅した第二のPCR反応で使用した。下流のオリゴヌクレオチドプライマーがNotI制限部位を提供した。該2種のPCR産物を、765bpおよび715bpの増幅産物、第一のPCR反応からの上流のオリゴヌクレオチドプライマー、および第二のPCR反応からの下流のオリゴヌクレオチドプライマーを含有した第三のPCR反応で効果的に結合した。増幅は、従って、それら双方が含有したオーバーラップ配列の22bpで交差アニーリングする2フラグメントに依存した。生じる増幅産物は長さが1480bpであり、そしてXbaIおよびNotI制限部位によりそれぞれ隣接されるV−C−hg−C2−C3をコードした。該増幅されたDNAをXbaIおよびNotIで消化し、そしてベクターp2106のXbaIおよびNotI部位の間にクローン化して、新たなHCをコードする最終発現プラスミドp4034を形成した。ベクターp2106は、CMV前初期プロモーター、およびATG開始コドンの上流のイントロンA、ならびにSV40由来の転写終止配列を提供する。
【0162】
−C1 LCをコードするプラスミドを製造するため、元のHC cDNA配列を含有するプラスミドp3122を、ATG翻訳開始コドンからシグナル配列、VおよびC1ドメインまで伸長する808bpのフラグメントを増幅したオリゴヌクレオチドにプライミングされるPCR反応で鋳型として使用した。該増幅産物は、C1ドメインのC末端のDKKVアミノ酸配列の直後に翻訳終止コドンを含有した。該オリゴヌクレオチドプライマーはまた、クローニングの目的上、ATG開始コドンの上流のXbaI制限部位および終止コドンの下流のNotI制限部位も提供した。増幅されたDNAをXbaIおよびNotIで消化し、そして切断されたDNAをプラスミドベクターp2106のXbaIおよびNotI部位の間にクローン化して、新たなLCをコードする最終発現プラスミドp4033を形成した。
【0163】
新たなHCおよび新たなLCプラスミドの共発現により改変Abを製造するため、ヒトHEK 293細胞をリポフェクションによりプラスミドp4033およびp4034で一過性にトランスフェクトした。簡潔には、トランスフェクション前日に、10%FBSを含むDMEM中で増殖させた細胞を6ウェルプレートにプレーティングし、そして5%COインキュベーター中37℃で一夜インキュベートした。翌日、100μlの無血清培地(Opti−MEM I)に再懸濁した各1μgのp4033およびp4034を10μlのリポフェクション試薬と混合し、そして室温で10分間放置した。培地を細胞から吸引し、そして10%FBSを含む新鮮DMEMを添加した。インキュベーション後にDNA/リポフェクション試薬複合体を細胞に添加し、そして穏やかに回転させて混合し
た。抗体発現および分泌のための時間を可能にするための5%COインキュベーター中37℃で72時間のさらなるインキュベーション後に、細胞上清を収集しかつ遠心分離して細胞破片を除去した。
【0164】
細胞上清中の改変Abの存在について試験するため、4種の異なる捕捉試薬を使用するELISAアッセイを実施した。96ウェルEIAプレートを、a)ヤギポリクローナル抗ヒトIgG FcフラグメントAb、b)元のAbのV領域に特異的なC508モノクローナルAb、c)元のAbのV領域のイディオタイプ部分(抗原結合)に特異的なC585モノクローナルAb、ならびにd)C508およびC585と同一のアイソタイプ(マウスIgG2bk)の陰性対照モノクローナルAbいずれかで被覆した。被覆は0.05M炭酸緩衝液、pH9.5中で実施し、そして4℃で一夜インキュベートした。PBS中1%BSAを使用してプレートをブロッキングした。HEK 293細胞の一過性トランスフェクションからの細胞上清を連続希釈し、そしてブロッキングしたプレートに添加した。対照サンプルは、元の未改変Abをコードするプラスミドp3122およびp3123で同時にトランスフェクトしたHEK 293からの細胞上清、ならびに標準曲線を作成するのに使用した精製した元のAbを包含した。捕捉されたタンパク質を、HRP標識ヤギ抗ヒトFc−γ抗体およびTMB基質を使用して検出した。発色反応を0.5M HClで停止した。プレートを450nmで読み取った。
【0165】
抗ヒトIgG FcフラグメントAbを捕捉試薬として使用した場合に得られた陽性のELISAシグナルは、改変HCおよび改変LCでトランスフェクトしていた細胞の上清中にAb様分子が実際に存在したことを示した。HCは、それらがLCと会合しない限り細胞から通常分泌されないため、この結果単独は、改変HCおよびLCが相互と会合してIgG Abに典型的な(HL)の4本鎖複合体を形成したことをありそうにした。それはまた、改変AbのFcドメイン上のエピトープが、ヤギ抗ヒトFc Abにより良好に認識されたことも示した。ヤギ抗ヒトFc Abが改変Abおよび未改変Abと等しく良好に反応したという仮定を使用すれば、元のAbの標準曲線を使用するELISAデータからの計算は、改変Abの発現レベル(約2.7μg/ml)が未改変Abの発現レベル(約2.0μg/ml)に類似であることを示した。
【0166】
未改変のAb標準由来の濃度を使用して、抗V領域Ab C508およびC585への改変および未改変Abサンプルの結合をタンパク質濃度に対しプロットした。該結果は、改変および未改変のAbによる結合が識別不可能であることが見出されたことを示した。これは、C508およびC585モノクローナルAbのV領域の結合部位が改変Abで完全に保存されているかもしれないことを示唆している。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
改変Ab遺伝子を製造するのに使用したオリゴヌクレオチドプライマー−
【0167】
【化1】

【図面の簡単な説明】
【0168】
本明細の一部分を形成する図面において、
【図1】細胞表面抗原および隣接細胞上のFcRへのAbによる同時結合が、該抗原の移動性およびAbの向きによりどのように影響され得るかの図解である。
【図2】AbのHおよびL鎖の間の配列を交換することの効果を示す図である。Fd=HCのV−C1ドメイン。
【図3】未改変Abの関連するアミノ酸配列が、本発明の改変Abにどのように比較しうるかを示す。アミノ酸は一文字記号で表す。HCから発するアミノ酸は大文字で示し、また、LCから発するアミノ酸は小文字で示す。「X」は鎖の交差の点に印を付ける。
【図4】未改変Ab若しくは改変Abいずれかを含有するトランスフェクトした細胞からの細胞上清を、未改変Ab若しくは陰性対照Abの抗原結合領域に特異的なmAb(C508若しくはC585)で被覆したプレートとともにインキュベートすることにより得られる結合データを示す。細胞上清中の未改変および改変Abの濃度は、精製した未改変Abを標準として用いる抗ヒトFc ELISAを使用して予め測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HおよびL鎖を有する改変免疫グロブリン分子を含んでなるヘテロ二量体タンパク質結合組成物であって、1個若しくはそれ以上のL鎖ドメインが免疫グロブリンH鎖上の1個若しくはそれ以上のH鎖ドメインの代わりに用いられており、そして/または、1個若しくはそれ以上のH鎖ドメインが免疫グロブリン分子の免疫グロブリンL鎖上の1個若しくはそれ以上のL鎖ドメインの代わりに用いられている、上記組成物。
【請求項2】
−C L鎖ドメインが、免疫グロブリンH鎖のV−C1領域の代わりに用いられており、そして、H鎖のV−C1ドメインが免疫グロブリンL鎖のV−C L鎖領域の代わりに用いられている、請求項1に記載の改変免疫グロブリン分子。
【請求項3】
免疫グロブリン分子がIgG1である、請求項1に記載の改変免疫グロブリン分子。
【請求項4】
抗原結合領域をさらに含んでなる、請求項1に記載の改変免疫グロブリン分子。
【請求項5】
免疫グロブリン分子が、IgA、IgG、IgM、IgE若しくはIgD分子である、請求項1に記載の改変免疫グロブリン分子。
【請求項6】
請求項1に記載の改変免疫グロブリン分子をコードするポリヌクレオチド。
【請求項7】
請求項6に記載のポリヌクレオチドを含んでなるベクター。
【請求項8】
請求項8に記載のベクターでトランスフェクトされた宿主細胞。
【請求項9】
請求項8に記載の宿主細胞を培養すること、およびそのように産生された改変免疫グロブリン分子を回収することを含んでなる、改変免疫グロブリン分子の製造方法。
【請求項10】
細胞が真核生物若しくは原核生物細胞である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
細胞が、哺乳動物、鳥類、は虫類、昆虫、植物、細菌、真菌若しくは酵母細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
哺乳動物細胞が、ヒト、ウサギ、マウス、ラット、ハムスター若しくはウシ細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
宿主細胞が、COS−1、COS−7、HEK 293、BHK21、CHO、BSC−1、HepG2、653、SP2/0、NS/0、HeLa、他の骨髄腫細胞若しくはリンパ腫細胞、またはそれらのいずれかの誘導、不死化若しくは形質転換細胞から選択される最低1種である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の改変免疫グロブリン分子および製薬学的に許容できる担体を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の組成物を被験体に投与することを含んでなる、被験体における感染症に対する処置若しくは保護方法。
【請求項16】
請求項6に記載の単離された核酸および担体若しくは希釈剤を含んでなる核酸組成物。
【請求項17】
ベクターが、後期若しくは初期SV490プロモーター、CMVプロモーター、HSV
tkプロモーター、pgk(ホスホグリセリン酸キナーゼ)プロモーター、ヒト免疫グロブリンプロモーター若しくはEF−1αプロモーターよりなる群から選択される最低1個のプロモーターを含んでなる、請求項7に記載の抗体ベクター。
【請求項18】
ベクターが、メトトレキサート(MTX)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ネオマイシン(G418)若しくはグルタミン合成酵素(GS)の最低1種から選択される最低1種の選択遺伝子若しくはその一部分を含んでなる、請求項7に記載の抗体ベクター。
【請求項19】
改変免疫グロブリンが検出可能若しくは回収可能な量で発現されるような、in vitro、in vivo若しくはsituの条件下で、請求項6に記載の核酸またはそれにストリンジェント条件下でハイブリダイズする内因性核酸を翻訳することを含んでなる、請求項1に記載の改変免疫グロブリンの製造方法。
【請求項20】
障害若しくは状態を調節する有効量の請求項1に記載の最低1種の改変免疫グロブリンを細胞、組織、器官若しくは動物と接触若しくはそれらに投与することを含んでなる、前記細胞、組織、器官若しくは動物における最低1種の障害若しくは状態の調節方法。
【請求項21】
前記有効量が、前記細胞、組織、器官若しくは動物1キログラムあたり0.01〜100mgである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記接触すること若しくは前記投与することが、静脈内、筋肉内、コーラス(colus)、皮下、呼吸、吸入、膣、直腸、頬側、舌下、鼻内若しくは経皮から選択される最低1様式による、請求項20〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
水性希釈剤中に、請求項1に記載の最低1種の改変免疫グロブリン、および滅菌水、滅菌緩衝水から選択される最低1種、またはフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム、アルキルパラベン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウムおよびチメロサールよりなる群から選択される最低1種の保存剤若しくはそれらの混合物を含んでなる製剤。
【請求項24】
改変免疫グロブリンの濃度が約0.1mg/mlないし約100mg/mlである、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
等張剤をさらに含んでなる、請求項24に記載の製剤。
【請求項26】
生理学的に許容できる緩衝剤をさらに含んでなる、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
第一の容器中の凍結乾燥された形態の請求項1に記載の最低1種の改変免疫グロブリン、および、水性希釈剤中の滅菌水、滅菌緩衝水、またはフェノール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム、アルキルパラベン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウムおよびチメロサールよりなる群から選択される最低1種の保存剤若しくはそれらの混合物を含んでなる任意の第二の容器を含んでなる製剤。
【請求項28】
請求項24に記載の製剤をそれの必要な患者に投与することを含んでなる、患者における疾患若しくは状態の処置方法。
【請求項29】
請求項1に記載の最低1種の改変免疫グロブリンの製造方法であって、前記抗体または指定される部分若しくはバリアントを回収可能な量で発現することが可能な宿主細胞若しくはトランスジェニック動物若しくはトランスジェニック植物若しくは植物細胞を提供することを含んでなる、上記方法。
【請求項30】
宿主細胞が、哺乳動物細胞、植物細胞若しくは酵母細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
トランスジェニック動物が哺乳動物である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
トランスジェニック哺乳動物が、ヤギ、ウシ、ヒツジ、ウマおよびヒト以外の霊長類から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項33】
請求項1に記載の最低1種の抗体を発現するトランスジェニック動物若しくは植物。
【請求項34】
請求項29に記載の方法により製造された最低1種の改変免疫グロブリン。
【請求項35】
ADCC、FcR媒介性食作用および補体溶解のようなエフェクター機能を動員するFcR結合およびC1q結合ドメインを有する免疫グロブリン分子の能力の改変方法であって、免疫グロブリンH鎖上の1個若しくはそれ以上のH鎖ドメインの代わりに1個若しくはそれ以上のL鎖ドメインを用い、かつ/または免疫グロブリン分子の免疫グロブリンL鎖上の1個若しくはそれ以上のL鎖ドメインの代わりに1個若しくはそれ以上のH鎖ドメインを用いて、それにより該免疫グロブリン分子の抗原結合ドメインに関してFcR結合およびC1q結合ドメインの相対位置を新たに方向付けすることを含んでなる、上記方法。

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−531049(P2008−531049A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558073(P2007−558073)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/006438
【国際公開番号】WO2006/093794
【国際公開日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(503054122)セントカー・インコーポレーテツド (74)
【Fターム(参考)】