説明

ヘリウムを調整圧力下に使用した高温プロセスの改善

結晶を成長させるという様な、材料を加工するのに使用される真空炉での無用の副次的反応を最小限にするための方法である。プロセスは、炉室環境で施行され、ヘリウムが炉室へ、不純物を洗い流す流量で、且つ加熱ゾーンに熱安定性を実現し、熱流の変化を最小限にし、加熱ゾーンの温度勾配を最小限にする所定の圧力で投入される。冷却中は、冷却率を上げることを目的に、ヘリウム圧力を使用して熱勾配の縮小が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概括的には、高温運転環境での材料の加工に関する。より厳密には、本発明は、高温真空炉での結晶質材料の作製に関する。
【背景技術】
【0002】
次に続く論考は高温真空炉での結晶の作製に関しているとはいえ、ここに開示されている方法及び装置は、限定するわけではないが様々なガラス、非晶質材料、シリコンインゴットの様な多結晶質インゴット、及び薄膜を含め、各種生成物の作製に使用される如何なる高温運転環境にも適用できることが自明となろう。
【0003】
高温真空炉に見られる様な環境で結晶を作製するためのプロセスは、最終的な結晶品質に影響を及ぼしかねない無用の副次的又は二次的反応の三大分類の何れか又は全てを生じさせ得る。それら三大分類とは、(1)高温化学反応、(2)不安定な化合物の分解、及び(3)一部の特定の元素の昇華又は気化である。
【0004】
高温化学反応には、典型的に、炭素、又は高温炉の建設に使用されることの多いモリブデンやタングステンの様な難燃性金属が係わる。その様な反応が起こったなら、炉は劣化しかねない。グラファイトを含んでいる炉に係わる反応の例として、
C(s) + 2Mo(s) → Mo2C (1)
及び、
H20(g) + C(s) → CO + H2(g) (2)
が挙げられる。一酸化炭素は次に何らかの難燃性金属と反応し、その結果、炭化物と揮発性種が形成されることになる。
【0005】
モリブデンるつぼも、高温、真空中に、Al2O3と反応して、
Al203(s) + Mo(s) → Mo02(g) + AlO(g) + Al(g) (3)
を形成し、そして同様の反応を介して他の化合物も形成される。
【0006】
1412℃の溶融温度、10トルより下の圧力で運転されているシリカるつぼ中のシリコンは、反応すると、
Si02(s) + Si(s) → 2SiO(g) (4)
の反応により気相SiOを形成する。
【0007】
約1400℃で、気相SiOは、10トルより下の圧力で炭素と反応して高反応性の一酸化炭素(CO)とSiCを発生させる。即ち、
2C(s) + SiO(g) → SiC(s) + CO(g) (5)
となる。炭化ケイ素は、溶融により成長させるシリコンの品質を著しく劣化させる恐れがある。
【0008】
また、COは、10トルより下でシリコンと反応して、
CO(s) + Si(s) → C(s) + SiO(g) (6)
に従って炭素と一酸化ケイ素を形成する。その様な反応があると、望ましくないことにSiO気体が冷温領域の炉表面へ蒸着しないとも限らない。加えて、炭化ケイ素は、溶融により成長させるシリコンの品質を著しく劣化させる恐れがある。
【0009】
高温の運転温度では、一部の特定の化合物は不安定になり、分解する。例えば、
2MgO(g) → 2Mg(s) + 02(g) (7)
により、遊離酸素は、炉自体に使用されている材料とも、また炉の中で加工されている材料とも反応して、酸化物を形成する。
【0010】
別の例として、スピネルは、
MgAl204(s) → MgO(g) + Al203(s) (8)
に従って、酸化マグネシウムと酸化アルミニウムに分解する。
【0011】
一部の特定の元素又は化合物が高い温度へ上昇させられたとき、昇華又は蒸発が起こる。知られている様に、全ての金属及び一部の難燃性材料は、高い温度で気化又は昇華し易い。グラファイトは高い温度で炭素蒸気へと昇華してゆく。例えば、グラファイトは、2200℃より上で炭素蒸気へと昇華してゆく。炭素蒸気はるつぼと反応し、るつぼの内容物を汚染する。
【0012】
結晶製造プロセスでは、上述の(1)の反応及び昇華の様な副次的反応は気体種を発生させる。知られている様に、その様な気体は、加工中の材料に捕えられ、結晶に、望ましくない光の散乱を生じさせる混入や気泡の様な不完全性を持たせてしまう。
【0013】
高温環境では、加熱要素にも、それら加熱要素の抵抗性の変化又はパワー源の変化に起因する「ホットスポット」又は例えば漏れのある絶縁によって生じる「コールドスポット」が存在し易くなる。加工中、ホットスポットやコールドスポットがあると、結晶の成長が非均一又は非対称になりかねない。結晶の成長中及び冷却中、ホットスポット及び/又はコールドスポットは結晶中に熱応力勾配を発生させ、その結果、格子の歪み及び/又は亀裂を生じさせる転位を含む応力欠陥が引き起こされる恐れがある。知られている様に、グラファイトフェルトや水分の様な、前の反応生成物又は炉建設材料の微小粒子であって、加熱ゾーン内部で反応する微小粒子の存在は、炉の性能を劣化させかねないし、除き窓を通しての観察をおぼつかなくする恐れさえある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第3,653,432号
【特許文献2】米国特許第3,898,052号
【特許文献3】米国特許第4,256,530号
【特許文献4】米国特許第4,840,699号
【特許文献5】米国特許第7,344,596号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Schmid, Origin of SiC Impurities in Silicon Crystals Grown from the Melt in Vacuum, J. Electrochem. Soc. 126 (1), 935 (1979)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
必要とされているのは、高温環境での加工中の無用の副次的反応及び無用の温度勾配を最小限にしたプロセス及び同プロセスの制御である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の1つの態様によれば、結晶質材料を作製する方法において、a)メルトストック(melt stock)及び随意の種結晶を有するるつぼを炉の加熱ゾーンの中へ装填する段階と、b)炉の加熱ゾーンを運転圧力値まで脱気する段階と、c)炉の加熱ゾーンを加熱して、メルトストックを少なくとも部分的に溶融させる段階と、d)炉の加熱ゾーンを更に最大温度まで加熱して、メルトストックを完全に溶融させ、随意的には種結晶を部分的に溶融させる段階と、e)加熱ゾーンを冷却することにより、完全に溶融したメルトストックから、及び随意的には更に部分的に溶融した種結晶から、結晶質材料を成長させる段階と、f)結晶質材料を炉から取り出す段階と、を含んでいる方法が開示されている。本方法は、炉の加熱ゾーン内への少なくとも1つの非反応性気体の流量を確立する段階と、この段階に続く、炉の加熱ゾーンの少なくとも1つの非反応性気体の圧力を運転圧力より上に確立する段階と、を更に含んでおり、当該段階は結晶質材料を成長させる段階に先立って起こる。
【0018】
本発明の別の態様によれば、結晶質材料を作製するための炉において、加熱ゾーンと、炉に接続されていて加熱ゾーンの真空を維持する真空ポンプアッセンブリと、加熱ゾーンを取り巻いていて加熱ゾーンへ熱を提供する少なくとも1つの加熱器と、炉に接続されていて少なくとも1つの非反応性気体を加熱ゾーンの中へ供給する非反応性気体システムと、炉及び真空ポンプアッセンブリに接続されていて加熱ゾーンの非反応性気体の流量及び圧力を確立し維持する非反応性気体調整システムと、を備えている炉が開示されている。炉は、更に、熱交換器を備えていてもよい。
【0019】
本発明の別の態様によれば、結晶又はインゴットを作製するための高温真空炉であって生成物が少なくとも1つの無用の温度及び圧力依存性副次的反応を被る高温真空炉の中の環境を安定させるための方法において、A)少なくとも1つの副次的反応のそれぞれについて反応蒸気圧力に応じて反応圧力値を確立する段階と、B)加熱ゾーン環境で非反応性であること、小さい粒子径、高い比熱、及び高い熱伝導率、という特性を有している気体を加熱ゾーンに導通する段階と、C)加熱ゾーンの非反応性気体の圧力を確立された反応圧力値に調整する段階と、を含んでいる方法が開示されている。
【0020】
付随の特許請求の範囲は、本発明の主題を厳密に指摘し示差的に主張している。本発明の様々な目的、利点、及び新奇性のある特徴は、次に続く詳細な説明が添付図面と関連付けて読まれることによって、より完全に明白となることであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明を第1の炉型式に適用した場合を描いているブロック図である。
【図2】本発明を第2の炉型式に適用した場合を描いているブロック図である。
【図3】図1及び図2の炉を含め様々な炉に適用することのできる本発明によるプロセス制御のための方法論を概説している基本的な流れ線図である。
【図4】第1の比較プロセスを使用した結晶の品質の分析を表している。
【図5】第2の比較プロセスを使用した結晶の品質の分析を表している。
【図6】サファイア結晶の作製のための本発明を組み入れたプロセス制御方法論の基本的な流れ線図である。
【図7】本発明を使用することによって実現されるサファイア結晶の品質の分析を表している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細に説明されている2つの特定の炉は、図1が材料加工炉で、図2が熱交換器方式(HEM)炉である。しかしながら、本発明は、ブリッジマン法(Bridgman)、ストックバーガー法(Stockbarger)、熱勾配固化法(Thermal Gradient Freeze)、引き上げキロプロス法(Top Seeded Kyropolous)、熱勾配技法(Thermal Gradient Technique)、及び他の方式の炉であって温度の安定性及び均一性と制御が重要とされる炉での、指向性凝固によるインゴットの成長又は結晶の成長に適合させることもできる。
【0023】
材料加工炉
これより図1を参照してゆくが、本発明による、材料加工用に適合された炉システム10は、真空密炉室11を含んでいる。真空ポンプアッセンブリ12が、炉室11の内部を脱気しており、真空ポンプアッセンブリ12は、真空ポンプ12Pと、真空制御器に測定値を提供するための主真空計12Gと、真空弁12Vとを備えているものとして概略的に示されている。その様な真空システムは当技術では知られている。
【0024】
この実施形態では、炉室11の絶縁部15が、絶縁された加熱ゾーン16を形成している。絶縁部15は、グラファイトフェルトの様なグラファイトを基材とする材料又は他の難燃性材料で構成することができる。加熱ゾーン16は、様々な炉設計で使用されている数多くの既知の手段又は構造の何れによって形成されていてもよい。
【0025】
図1の加熱ゾーン16は、炉制御キャビネット21の中のパワー源まで延びているリード線20を有するグラファイト抵抗加熱器17を含んでいる。少なくとも1つの高温計22が、窓23Aとポート23Bの様な窓とポートを介してプロセス温度を測定して、プロセス制御用の温度入力信号を提供する。この実施形態では、加熱ゾーン16に配置されている適正に条件整備されたるつぼ25は、メルトストックを構成している材料の混合物を収容している。抵抗加熱器17はるつぼ25を取り囲んでいる。その様な加熱器と制御は当技術では知られている。
【0026】
この実施形態では、炉システム10は、非反応性気体システム30を組み入れるように適合されている。気体システム30は、非反応性気体を、炉室11によって画定されている体積部であって加熱ゾーン16を含んでいる体積部の中へ供給する。気体システム30は、供給タンク31又は他の供給源を含んでいる。流れ制御器32は、流量監視器33を含んでおり、炉室11内への気体流量を制御する。従来型の流れ制御システムをこの機能を行うように適合させてもよい。
【0027】
気体システム30は、真空弁42が閉じられた状態で、非反応性気体を加熱ゾーン16の中へ、好適には炉室11の基底部のポート40を通して供給する。圧力調整器41が、炉室11の気体圧力を、気体を制御された方式で真空ライン43を通して真空ポンプアッセンブリへブリードすることによって制御している。説明してゆくが、運転中の幾つかの時点では、本発明によれば、真空室11から真空ポンプ12への圧力が調整された排気経路を提供するために、主真空弁12Vは閉じられ弁42は開かれる。結果として、ゾーン16の圧力は上がり、その後、所定圧力に維持される。気体を可変流量で且つ所定圧力で提供するためのシステムは当技術では知られている。
【0028】
熱交換器方式(HEM)炉
図2は、HEM(Heat Exchange Method:熱交換器方式)炉50を描いている。その様な炉の変型は、米国特許第3,653,432号、同第3,898,052号、同第4,256,530号、同第4,840,699号、及び同第7,344,596号に記載されている。図2では、炉システム50は、真空密炉室51を含んでいる。真空ポンプアッセンブリ52が、炉室51の内部を脱気しており、真空ポンプアッセンブリ52は、当技術で知られている、真空ポンプ52Pと、真空制御のために測定値を提供するための真空計52Gと、主真空弁52Vとを備えているものとして示されている。炉室51の絶縁部55が加熱ゾーン56を画定しており、加熱ゾーン56は、幾つもある変型に従って建設することができる。
【0029】
加熱ゾーン56は、典型的には炉制御キャビネット61に関係付けられているパワー源まで延びているリード線60を有するグラファイト抵抗加熱器57によって境界が定められている。少なくとも1つの高温計62が、窓63Aとポート63Bの様な窓とポートを介してプロセス温度を測定して、プロセス制御用の温度入力信号を提供する。熱交換器64は、端が閉鎖されている難粘性金属管を備えるものとすることができ、当該金属管は、るつぼの底中央部から熱を抽出するべく、冷却気体、具体的にはヘリウムを制御された流量で注入するために内管を備えている。熱交換器64は、抵抗加熱器57によって取り囲まれていて適正に条件整備されているるつぼ65を支持する。るつぼ65は、最終的な結晶を生じさせるメルトストックの混合物を収容している。
【0030】
図2では、熱交換器64は、ヘリウム供給タンク71又は他の供給源を有するヘリウム冷却システム70に接続されていることにより、選択的冷却を提供している。ヘリウム再循環ポンプ72が、ヘリウム気体を質量流量制御器73又は熱交換器64への気体流量を制御する弁に送り込む。加熱器57の可変温度制御と熱交換器64への可変ヘリウム流量制御の組合せが、種から熱を指向的に抽出させ、良好な指向的性凝固又は結晶成長が得られるようにるつぼの底部での溶融を可能にする。即ち、熱交換器64は、るつぼの底中央部の種結晶のところに、単結晶成長向けに、制御された方式でヘリウム流を増やして熱交換器温度を下げることによって所望の固体液体界面形状及び成長速度を生み出す温度を生じさせる。単結晶成長は、これにより、固体液体界面が進行するにつれ不純物を液体の中へ効率良く分離させる高度に制御された液体固体温度勾配の下に起こる。結晶をるつぼの底から成長させるブリッジマン法やストックバーガー法の様な結晶成長法、及び結晶成長がるつぼ内部で起こる他の結晶成長法及びインゴット成長法は、熱交換器64又は他の等価装置を、炉及び加工される材料のそれぞれの型式にとって最良のプロセス条件を実現させるべく調整されたヘリウム流と共に使用することによって、恩恵を享受することであろう。
【0031】
この実施形態では、炉システム50は、ヘリウム気体又は他の非反応性気体システム80を組み入れるように適合されている。気体システム80は、供給タンク81又は他の供給源を備えている。質量流量制御器82と流量監視器83が、気体が導管84を通って流れ炉室51の中へ好適には炉室51の底に進入してゆく速度を制御している。
【0032】
図1の装置と同じ様に、炉システム50は、初期に、真空システム52が真空弁52Vを介して加熱ゾーン56を脱気したときに確立される真空下に運転される。第2の脱気経路が、制御弁84と、弁86を通して真空ポンプシステム52の中へ排気する圧力調整器85と、を通して設けられている。運転中の幾つかの時点では、本発明によれば、加熱ゾーン56内に制御可能な気体圧力を提供するために、主真空弁52Vは閉じられ弁84は開かれる。
【0033】
プロセス制御
本発明の1つの態様によれば、結晶質材料を作製する方法において、メルトストックを有するるつぼを炉の加熱ゾーンの中へ提供する段階と、炉の加熱ゾーンを典型的には1トル未満である運転圧力値まで脱気する段階と、を含んでいる方法が開示されている。随意的には、るつぼは更に種結晶を収容していてもよい。この方法では、炉の加熱ゾーンは加熱されてメルトストックを少なくとも部分的に溶融させ、次いで更に最大温度まで加熱されてメルトストックを完全に溶融させ、随意的には、種結晶が使用されている場合には当該種結晶を部分的に溶融させる。本方法は、更に、加熱ゾーンを冷却することにより、完全に溶融したメルトストックから、及び随意的には更に部分的に溶融した種結晶から、結晶質材料を成長させる段階を含んでいる。結晶質材料は、その後、炉から取り出すことができる。
【0034】
本発明の方法は、更に、炉の加熱ゾーン内への少なくとも1つの非反応性気体の流量を確立する段階、及びこの段階に続く、炉の加熱ゾーンの少なくとも1つの非反応性気体の圧力を運転圧力より上に確立する段階を含んでおり、当該段階は、メルトストックを溶融させる段階より前を含め、結晶質材料を成長させる段階に先立って起こる。本発明によれば、これまでに論じられている様に、プロセス制御は、ヘリウム、又は炉環境において非反応性であって且つ小さい粒子径、高い比熱、及び高い熱伝導率を有する何らかの他の気体を使用することによって実現される。本発明による使用の候補とされる非反応性気体には、アルゴン、ヘリウム、及び窒素が挙げられ、酸素の存在しない環境では、水素が挙げられる。
【0035】
或る好適な実施形態では、ヘリウムが有意に好都合であるという理由で選択されている。ヘリウムは高い温度で反応しない。ヘリウムは、アルゴンや窒素よりも優れた熱伝導率と高い比熱を有しており、従って、より優れた温度安定性をもたらす。ヘリウムは、アルゴンよりも小さい粒子径と優れた流動性を有している。これは、優れた対流熱伝達を可能にし、真空中の材料から気体を放散させ易くする。水素はヘリウムよりも優れた熱伝導率と小さい粒子径を有してはいるが、水素は還元気体であり、特にこれらのプロセスの高い運転温度及び条件では、酸素に触れて爆発し易いので、殆どの材料の加工には使用できない。従って、次に続くプロセス制御は、ヘリウム気体使用の観点から述べられている。しかしながら、明らかになってゆく様に、一部のプロセスで、ヘリウムに対比して同様の効果をもたらすのに熱流及び/又は温度の均一性がさほど決定的でないプロセスには、アルゴン又は窒素を使用することもできる。
【0036】
以上により詳細に論じられている様に、高温真空炉の中で結晶を作製するためのプロセスは、最終的な結晶品質に影響を及ぼしかねない無用の副次的又は二次的な各種反応を生じさせることがある。それぞれの無用の副次的反応は、2つの特徴、即ち、(1)反応温度と、(2)気体のこともあれば固体のこともある反応蒸気生成物と、を有している。反応温度は、無用の副次的反応が起こる最小温度である。反応生成物が気相である場合、反応蒸気圧力又は反応圧力は、それより上では副次的反応が抑えられる圧力である。反応温度及び蒸気圧力についての特定の値は、以上に特定されている炉システム及び他の炉システムで遭遇される異なった反応毎に知られている。
【0037】
分解反応は、大抵は、分解生成物の全蒸気圧力以上の不活性気体圧力を掛けることによって抑えることができる。例えば、炭酸分解反応は、CO2の部分圧力が平衡未満であったとしても、CO2の分解蒸気圧力が全圧力よりも大きいときにしか有意な速度で進行しない。同様に、Si3N4の分解は、Si3N4の蒸気圧力より大きい全圧力が維持されれば抑えられる。
【0038】
懸念される無用の副次的反応が1つしかない場合には、反応閾値は、当該の無用の副次的反応の反応温度及び反応蒸気圧力について確立されることになる。複数の無用の副次的反応が係わる場合及び運転温度が閾反応温度より高い場合には、圧力は係わるそれぞれの副次的反応の蒸気圧力よりも高くなくてはならない。Schmid, Origin of SiC Impurities in Silicon Crystals Grown from the Melt in Vacuum, J. Electrochem. Soc. 126 (1), 935 (1979)参照。
【0039】
それら反応蒸気圧力の最大値よりも大きくなるように蒸気圧力閾値が選択され、不純物及び汚染物質を洗い流すように最小ヘリウム流量が確立される。当業者には自明であろうが、反応温度及び反応圧力の閾値には動力学が係わっており、それらの閾値は、何らかの特定の反応についての熱化学的な計算、経験、及び実験によって求められる。次に続く論考では、潜在的な無用の副次的反応の分析により、確立させる反応温度値と確立させる反応圧力値が生成され、それらがプロセスのための臨界値として使用されることになる。
【0040】
次に図3を参照して、本発明のプロセス100は、当業者には知られている典型的な一連の準備段階のステップ101から104で開始される。この特定の実施形態のステップ101は、確実に炉が清浄になるように炉をパージするプロセスを表している。ステップ102の終わりに、るつぼは炉の加熱ゾーンに置かれており、るつぼには加工されるべき材料が収容されている。ステップ103は、何らかの揮発性不純物を除去するための加熱ゾーンの脱気と焼き出し温度を表している。条件が整備された後、ステップ104で、加熱ゾーンの温度は上昇し始め、るつぼの内容物を加工するまでに上がる。
【0041】
ステップ105で、温度が確立された反応温度まで上昇したと判定されると、ステップ106で、ヘリウム気体の流れが開始されて、加熱ゾーン内の圧力を気体発生が最小限に抑えられるように確立された流量及び確立された反応圧力にしてゆく。ヘリウム気体の流量は、正確に調整された圧力を維持し且つ加熱ゾーン及び当該加熱ゾーンで加工されている材料を汚染しかねない汚染物質を洗い流すのに十分である。典型的には、真空炉は、加工される材料に応じてヘリウム気体5乃至250トルの範囲で運転される。圧力をこの範囲に維持することは、ヘリウムの炉室への流入及び炉室からの流出を伴う従来型のシステムを用いて容易に実現される。
【0042】
流量は、ヘリウムが炉室の底から加熱ゾーンに進入するとき、ヘリウムが十分に熱せられていることを保証しなくてはならない。知られている様に、加熱ゾーンの中でより熱い領域からより冷たい領域への熱伝達が増えると、温度勾配は最小に抑えられ、その結果、加熱ゾーンのより高い温度均一性が実現される。加熱ゾーンから炉室のより冷たい部分への総熱伝達も増えることになる。明らかになってゆく様に、熱伝達のその様な増加があると、加熱器制御はより多くのパワーを供給することが求められる。ヘリウムはその優れた熱伝導率と優れた流動性が手伝って、加熱ゾーンの熱伝達を高め、絶縁部を通って室の内壁に至る熱流を増加させる。そうすると、今度は、より高いパワーが必要になる。熱流は、圧力の増減に伴って増減する。何れの所与のプロセスについても、最小圧力は、パワー要求を最小限にし、なお且つ加熱ゾーンの不純物を一掃するのに十分な流量を確保しながら同時に加熱ゾーンの良好な熱均一性をもたらすように選択されなくてはならない。優れた流動性のせいで、ヘリウムは開口部を通って加熱ゾーンの内から外へ流れてゆく。開口部は煙突の役目を果たしており、煙突があると要求されるパワーが増え温度変化が引き起こされるので、加熱ゾーンの外へ出る開口部を最小限にすることが重要である。理想的には、如何なる開口部も最小限にされ、加熱ゾーンでは対称になっているべきである。
【0043】
ステップ107で気体流がその確立されたパラメータに至ったら、真空システムへのヘリウム流を調節する調整器を用いてヘリウムの圧力を制御しながら、加熱ゾーン温度を上げてゆく。
【0044】
ステップ110は、ヘリウムの圧力と流量を維持しながらの結晶を成長させるための運転継続を表している。図1及び図2の圧力調整器41と85及び/又は関連の制御部を有する圧力変換器が、必要な圧力制御を提供する。
【0045】
一例としてステップ110の最中に、グラファイト抵抗炉室に強い還元電位があったとする。仮に酸素漏れがあったなら、炭素蒸気が酸素と反応し合って一酸化炭素を形成することになろう。一酸化炭素は、次に、るつぼ内の加工されている内容物と反応し合って内容物を還元することになろう。
【0046】
酸化アルミニウムが係わる一部の特定のプロセスでは、るつぼはモリブデンから構成されているかもしれない。これは、酸化アルミニウムの亜酸化物への還元を引き起こし、酸化モリブデンを形成させる。本発明によって適用されるヘリウム圧力は、酸化アルミニウムの還元を最小限にし、得られる結晶における光散乱を低減する。
【0047】
ヘリウム雰囲気は、更に、金属、難燃性材料、グラファイト、又は炭素の高温での気化を抑えるものと確信する。これらの蒸気は反応して炉の構成要素を傷めたり、加工されている材料を汚染及び/又は還元したりする恐れがある。ヘリウム圧力を維持することは、転位及び格子歪みの要因源である温度勾配及び変動を最小限にすることによって、加熱ゾーン温度を安定させると思われる。
【0048】
ステップ111で、成長が完了したと判定されると、ステップ112で冷却が開始される。本発明によれば、この冷却は、ヘリウム圧力を上げて行われ、典型的には、ヘリウム圧力をステップ110で使用されていた圧力(即ち、確立された反応圧力値)より上に上げることによって行われる。圧力を上げると、ホットスポット及びコールドスポットが最小限に抑えられることによって加熱ゾーンの温度が安定する。また、ヘリウム又は他の気体の圧力が上がると、炉の水冷室への熱損失が増加することも分かっている。このおかげで、加熱ゾーンの勾配が最小限に抑えられることによってステップ113の冷却時間は縮まり、加熱ゾーンの勾配が最小限に抑えられることで焼きなましが巧くいく公算が高まり、総サイクル時間が縮まるであろう。
【0049】
説明されている本発明のプロセスが理解された上に立ち、その理解を役立てながら、本発明の恩恵について、サファイア結晶を成長させるためのプロセスで本発明の恩恵を受けずに成長させるプロセスの2つの具体例を開示し、次いで、本発明を組み入れたプロセスの或る具体例とそれによって作製された結晶を開示することによって説明してゆく。
【0050】
知られている様に、サファイア結晶は、発光ダイオードを製造する場合に基板として有用である。これも知られている様に、この目的に使用されるサファイア結晶には、高転位密度と光散乱部位密度が所定レベルより下であることに起因する格子歪みを有するはずである。
【0051】
図4は、図2に示されている型式の先行技術による真空炉で、但し非反応性気体の流れを用いずに、作製されたサファイアブールの比較例である。これは、図4に示されているサファイアブールを産み出し、それはブールのC軸に沿った断面に基づいて示されている。図4の横斜線部分は、当該ブールの、発光ダイオード用途向けの格子歪み及び散乱部位の要件に合致する小さい部分を描いている。
【0052】
図5は、図4のブールを作製するためのプロセスを、炉内へのヘリウム添加有り但し圧力制御無しに修正した実験によって作製されたサファイアブールのもう1つの比較例である。横斜線区域は、ブールの、格子歪み及び散乱部位の規格に正に合致し、その結果発光ダイオードの製造に使える部分を表している。よく調べると、これは全ブール体積のうちの僅かな割合である。更に、このブールを作成するためのプロセスサイクルは、図4のブールのプロセスサイクルよりも長かったことも分かっている。
【0053】
図6は、本発明によりアルミニウムからサファイア結晶を作製するためのプロセスの流れ図である。ステップ201は、(i)種をるつぼの中心に、その場所に留まるように位置付け、(ii)るつぼを炉の中に置き、そして(iii)アルミニウムのメルトストックをるつぼに添加する、という物理的要件を表している。
【0054】
ステップ202は、何らかの目立った不純物が真空によって除去されるようにするための炉の脱気及び初期加熱に係わる開始段階である。同時に、ヘリウムの様な冷却気体が、図2の熱交換器64の様な熱交換器を通って流れ始める。次に、ステップ203で、加熱ゾーンの温度は上昇し続け、溶融が観察される。上昇は、幾つもの既知のプロセスによって判定し制御することができるであろう。
【0055】
この特定の例では、この判定は、るつぼの上方から放射率を監視することによってなされる。溶融が起こると、放射率が変化する。放射率変化検出デバイスは、当技術では知られており、様々なものがあり、溶融の始まりを様々なやり方で告げる。これが起こったら、プロセスは溶融段階へと移行する。
【0056】
溶融段階のステップ205で、ヘリウム気体の炉を通る流れが、規定された速度で始まり、その間、図2の主真空弁52Vの様な主真空弁は、加熱ゾーンをパージする又は洗い流すために開かれている。これは、不純物の洗い流しを完遂するのに十分な時間に亘って継続される。
【0057】
ステップ205の動作が完了すると、ステップ206で、主真空弁が閉じられる。加熱ゾーンへ流れ込んでいたヘリウムは、今度は、加熱ゾーンの圧力を制御している真空比例弁を介して除去される。圧力は、5−50トルの範囲、好適には10−30トルの範囲にあり、流量は,1.0SCFHを上回らず、例えば0.05乃至1.0SCFHであり、そこには0.1乃至0.5SCFHが含まれる。本発明によれば、ステップ207に示されている様に、このヘリウム圧力と流量は、サイクルの残り部分を最後まで通して制御される。この圧力と流量の制御のおかげで、確実に、無用の副次的反応が抑えられ、且つ不純物が加熱ゾーンから洗い流されるものと確信する。
【0058】
ステップ206で、温度は、溶融したアルミニウムが種に溶け込む温度である最大値(例えば、「育種温度」)まで上げられる。温度上昇速度及びこの最大温度値でのプロセス持続時間は、多数の要因及び経験に依存する。
【0059】
ステップ211で、制御された方式で温度を下げてゆくことによって成長段階が始まる。具体的には、熱交換器(図2の64)を通るヘリウム流を増やし、それによって、るつぼ及びるつぼの溶融内容物から熱を取り去る。熱交換器のヘリウム流れの最適変化率は実験的に求められ、但し、いったん求められたら、所与の炉について基本的に再現性を維持する。この熱抽出は、指向性凝固が起こってその結果最終的な結晶が作製されることを可能にし、加熱ゾーンの温度が焼きなまし点温度になるまで継続される。ステップ212で焼きなまし温度に達したら、結晶は焼きなまされる。ステップ213で、炉は分離され、ヘリウムは継続して流れ、加熱ゾーンを埋め戻してゆく。その後、得られた結晶を取り出すことができる。
【0060】
実施例
図7は、図6のプロセスを使用して作製されたブールのC軸に沿った断面図である。線の引かれた区域は、ブールの、最小格子歪み及び散乱部位規格に合致し、従って発光ダイオードの製造に使用することのでき得る部分を表している。有効体積については図4及び図5に示されているものを凌ぐ有意な増加があった。その上、このブールの有効体積は、格子歪み及び散乱部位の両方の要件を超えている。この改良された生成物についてのサイクル時間は、図4のプロセス実行でのサイクル時間とほぼ同じであった。
【0061】
経験から、異なった炉は異なった特性を有するものであることは知られている。それらの特性の幾らかは、成長段階中に変化を引き起こしたり、最終的な結晶の品質に悪影響を及ぼしたりする恐れがある。その様な条件が存在しており、その様な条件は成長段階中の熱伝達の定常性を修正することによって克服され得ると判断された場合、パワー供給設定を変えずに温度補正が成し得られる。具体的には、加熱ゾーンのヘリウム圧力を変えることには、加熱ゾーンの温度を極めて優れた制御性で変化させる効果があることが分かっている。こうして、普通は確立されたヘリウム圧力は定常であってもよいのであるが、圧力は、その様な変化を起こす必要があればそれに応じて意図的に変えることができ、それでもなお本発明の恩恵、特に成長段階時の恩恵を実現させることができる。
【0062】
明らかになってゆく様に、本発明は、真空炉でのサファイア結晶の様な結晶の作製を可能にし、それによって、成長させた結晶のかなりの部分が結晶の格子歪み及び散乱についての要件に合致するか又は要件を超えることができることにより、多くの利点をもたらす。本発明を組み入れている炉は、高温環境で典型的に遭遇される、分解、昇華、及び気化の様な無用の反応を最小限にする不活性環境を提供する。本発明を使用すれば、高温プロセスをより高い温度で加熱ゾーンの温度をより均一化して運転することが可能である。非反応性気体の圧力をより高くすれば、炉のホットスポットやコールドスポットによって生じる温度勾配を最小限にできることで、結晶の焼きなまし及び素早い冷却にとってより好都合な熱伝達をもたらす。ホットスポットを最小限にすることは、ゾーン内のヘリウム圧力を上げて熱流を改善することによって実現することができる。非反応性流の流量維持もまた、加熱ゾーンに留まる反応生成物を最小限にする。
【0063】
本発明を或る特定の実施形態の観点から開示してきた。開示されている装置及びプロセスの諸段階には、本発明から逸脱することなく多くの修正がなされる余地がある。従って、全てのその様な変型及び修正を本発明の真髄及び範囲内に入るものとして網羅することが付随の特許請求の範囲の意図である。
【符号の説明】
【0064】
10 炉システム
11 真空密炉室
12 真空ポンプアッセンブリ
12G 主真空計
12P 真空ポンプ
12V 真空弁
15 絶縁部
16 加熱ゾーン
17 グラファイト抵抗加熱器
20 リード線
21 炉制御キャビネット
22 高温計
23A 窓
23B ポート
25 るつぼ
30 非反応性気体システム
31 供給タンク
32 流量制御器
33 流量監視器
40 炉室の基底部のポート
41 圧力調整器
42 真空弁
43 真空ライン
50 熱交換器方式(HEM)炉
51 炉室
52 真空ポンプアッセンブリ
52G 真空計
52P 真空ポンプ
52V 主真空弁
55 絶縁部
56 加熱ゾーン
57 グラファイト抵抗加熱器
60 リード線
61 炉制御キャビネット
62 高温計
63A 窓
63B ポート
64 熱交換器
65 るつぼ
70 ヘリウム冷却システム
71 ヘリウム供給タンク
72 ヘリウム再循環ポンプ
73 質量流量制御器
80 ヘリウム気体又は他の非反応性気体システム
81 供給タンク
82 質量流量制御器
83 流量監視器
84 制御弁、導管
85 圧力調整器
86 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶質材料を作製する方法において、
a)メルトストック(melt stock)及び随意の種結晶を有するるつぼを炉の加熱ゾーンの中へ装填する段階と、
b)前記炉の前記加熱ゾーンを運転圧力値まで脱気する段階と、
c)前記炉の前記加熱ゾーンを加熱して、前記メルトストックを少なくとも部分的に溶融させる段階と、
d)前記炉の前記加熱ゾーンを更に最大温度まで加熱して、前記メルトストックを完全に溶融させ、随意的には前記種結晶を部分的に溶融させる段階と、
e)前記加熱ゾーンを冷却することにより、完全に溶融した前記メルトストックから、及び随意的には更に部分的に溶融した前記種結晶から、前記結晶質材料を成長させる段階と、
f)前記結晶質材料を前記炉から取り出す段階と、から成り、前記e)段階に先立って、前記炉の前記加熱ゾーンへの少なくとも1つの非反応性気体の流量を確立する段階と、当該段階に続く、前記炉の前記加熱ゾーンの前記少なくとも1つの非反応性気体の圧力を前記運転圧力より上に確立する段階と、を更に含んでいる、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの非反応性気体の流量を確立する段階と同圧力を確立する段階は、前記c)段階に先立って起こる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、
a)メルトストック(melt stock)及び随意の種結晶を有するるつぼを炉の加熱ゾーンの中へ装填する段階と、
b)前記炉の前記加熱ゾーンを運転圧力値まで脱気する段階と、
c)前記炉の前記加熱ゾーンを加熱して、前記メルトストックを少なくとも部分的に溶融させる段階と、
d)前記炉の前記加熱ゾーン内への少なくとも1つの非反応性気体の流量を、実質的な温度上昇を伴わずに確立する段階と、
e)前記炉の前記加熱ゾーンの前記少なくとも1つの非反応性気体の圧力を前記運転圧力より上に確立する段階と、
f)前記非反応性気体の流量と圧力を制御しながら、前記炉の前記加熱ゾーンを更に最大温度まで加熱して、前記メルトストックを完全に溶融させ、随意的には前記種結晶を部分的に溶融させる段階と、
g)前記非反応性気体の流量と圧力を制御しながら、前記加熱ゾーンを冷却することにより、完全に溶融した前記メルトストックから、及び随意的には更に部分的に溶融した前記種結晶から、前記結晶質材料を成長させる段階と、
h)前記結晶質材料を前記炉から取り出す段階と、から成る、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記d)段階及び前記e)段階は同時に起こる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記a)段階では、前記るつぼは前記種結晶を有している、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記f)段階に先立って、前記確立された非反応性気体の流量及び圧力を維持しながら、前記炉の前記加熱ゾーンの前記結晶質材料を焼きなます段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記f)段階に先立って、前記加熱ゾーンを気体で埋め戻す段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記気体は非反応性気体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記非反応性気体は、ヘリウム、アルゴン、水素、又は窒素である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記非反応性気体はヘリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの非反応性気体の前記確立された流量は、約1.0SCFHを上回らない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの非反応性気体の前記確立された流量は、約0.1から0.5SCFHの間である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの非反応性気体の前記確立された圧力は、約5から約250トルの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記炉は、冷却気体を流通させることにより作動する熱交換器であって当該炉の前記加熱ゾーンの前記るつぼの下方の中央に配置されている熱交換器を備えており、前記方法は、前記c)段階に先立って、前記冷却気体の流れを開始させることによって前記熱交換器の作動を開始させる段階を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記冷却気体はヘリウムである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記c)段階では、前記メルトストックは実質的に完全に溶融させられる、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの非反応性気体の前記確立された圧力は、約5から約50トルの間である、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記e)段階での、前記炉の前記加熱ゾーンを冷却することには、前記熱交換器への前記冷却気体流を増加させることが含まれる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記e)段階での、前記炉の前記加熱ゾーンを冷却することには、前記少なくとも1つの非反応性気体の前記確立された圧力を変えることが含まれる、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記結晶質材料はサファイアである、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記結晶質材料はサファイアである、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの非反応性気体の前記確立された圧力は、約10から約30トルの間である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記結晶質材料を作製する前記方法は、少なくとも1つの無用の温度及び圧力依存性副次的反応を被り、前記方法は、
i)前記少なくとも1つの無用の副次的反応のそれぞれについての反応温度に応じて反応温度値を確立する段階と、
ii)前記少なくとも1つの無用の副次的反応のそれぞれについての反応蒸気圧力に応じて反応圧力値を確立する段階と、を更に備え、
前記c)段階では、前記炉の前記加熱ゾーンは、前記確立された反応温度値を上回る温度まで加熱され、前記e)段階では、前記少なくとも1つの非反応性気体の前記確立された圧力は、前記確立された反応圧力値を上回る、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
結晶質材料を作製するための炉において、
加熱ゾーンと、
前記炉に接続されていて前記加熱ゾーンの真空を維持する真空ポンプアッセンブリと、
前記加熱ゾーンを取り巻いていて当該加熱ゾーンへ熱を提供する少なくとも1つの加熱器と、
前記炉に接続されていて少なくとも1つの非反応性気体を前記加熱ゾーンの中へ供給する非反応性気体システムと、
前記炉及び前記真空ポンプアッセンブリに接続されていて前記加熱ゾーンの前記非反応性気体の流量及び圧力を確立し維持する非反応性気体調整システムと、を備えている炉。
【請求項25】
熱交換器を更に備えている、請求項24に記載の炉。
【請求項26】
前記非反応性気体システムは、非反応性気体を前記炉の下方から前記加熱ゾーンへ供給する、請求項24に記載の炉。
【請求項27】
前記非反応性気体システムは、供給タンクと流量制御器と流量監視器を備えている、請求項24に記載の炉。
【請求項28】
前記非反応性気体調整システムは、圧力調整器と圧力監視器を備えている、請求項24に記載の炉。
【請求項29】
前記圧力制御器は比例弁である、請求項28に記載の炉。
【請求項30】
結晶又はインゴットを作製するための高温真空炉であって生成物が少なくとも1つの無用の温度及び圧力依存性副次的反応を被る高温真空炉の環境を安定させるための方法において、
A)前記少なくとも1つの副次的反応のそれぞれについて反応蒸気圧力に応じて反応圧力値を確立する段階と、
B)前記加熱ゾーン環境で非反応性であること、小さい粒子径、高い比熱、及び高い熱伝導率、という特性を有している気体を前記加熱ゾーンに導通する段階と、
C)前記加熱ゾーンの前記非反応性気体の圧力を前記確立された反応圧力値に調整する段階と、を含んでいる方法。
【請求項31】
前記非反応性気体は、アルゴン、ヘリウム、水素、及び窒素である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記非反応性気体はヘリウムである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記結晶を制御冷却する段階を追加的に含んでいる、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記制御冷却する段階には、前記少なくとも確立された反応圧力値の非反応性気体圧力を維持する段階が含まれる、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−503811(P2013−503811A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528006(P2012−528006)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【国際出願番号】PCT/US2010/047506
【国際公開番号】WO2011/028787
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(512052889)ジーティー クリスタル システムズ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】