説明

ベベルギヤ、動力伝達機構および多軸駆動装置

【課題】可動側ベベルギヤが固定側ベベルギヤに係合して噛み合う際に、ストッパ等の別部材を必要とすることなく可動側ベベルギヤのガタや傾きが抑えられ、歯先干渉を生じにくくする。
【解決手段】コイルばね36で付勢された出力側ベベルギヤ34が入力側ベベルギヤ52方向に進出して入力側ベベルギヤ52に係合した際、双方のベベルギヤ34,52に形成した内周側のストッパ面37a,57aどうし、外周側のストッパ面37b,57bどうしを当接させ、出力側ベベルギヤ34のそれ以上の進出を規制してガタや傾きの発生を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベベルギヤ、ベベルギヤを有する動力伝達機構、および車両用電動シート等に適用されて好適な1つのモータで複数の出力軸を駆動する多軸駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートにあっては、全体の前後方向のスライドや座面高さの上下動、あるいはシートバック(背もたれ)のリクライニング等、複数箇所の位置を調節可能として、乗員の体形や姿勢に適合できるようにした形式のものが多い。これらの可動部位の調節は手動でなされるものであったが、より便利なものとして、モータ駆動により調節する電動シートが提供されている。
【0003】
複数の可動部位をそれぞれ独立して駆動するには、可動部位に連結した各出力軸ごとにモータを1つ1つ連結させる構成が考えられるが、これではモータの数が多くなる。そこで、1つのモータで複数の出力軸を駆動すれば効率的であり、そのために、複数の可動部位に連結した各出力軸に、クラッチを介してモータの動力が伝達されるようにし、クラッチを断接して各可動部位を選択的に駆動するものが提案されている(特許文献1等参照)。このようないわゆる多軸駆動装置としては、複数の出力軸上に軸方向に移動自在にそれぞれ設けた従動側ベベルギヤを、モータ軸上の駆動側ベベルギヤに対して噛み合い可能に付勢した状態で設け、従動側ベベルギヤを押圧するカムによって従動側ベベルギヤを駆動側ベベルギヤに対して離接させて動力伝達の経路を切り換えるものが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−156123号公報
【特許文献2】特公昭54−41898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に記載されるような多軸駆動装置においては、軸方向に移動可能な可動側ベベルギヤが固定側ベベルギヤ(特許文献2ではそれぞれ従動側ベベルギヤ、駆動側ベベルギヤ)に係合して噛み合う際には、軸方向が適切な噛み合い位置に位置付けられて安定したバックラッシのもとに動力伝達がなされる必要がある。そこで従来では、ギヤホルダ等の保持部材に形成したストッパに、ばね等の付勢部材で付勢される可動側ベベルギヤを突き当てて付勢方向のストロークエンド位置を規制し、その位置で固定側ベベルギヤに噛み合わせる構成とするものがある。
【0006】
しかして、省スペースやコストダウンを図るためにストッパを廃止したい場合、可動側ベベルギヤは片持ちで支持される状態となるため、ガタや傾きが生じやすくなる。このように可動側ベベルギヤにガタや傾きが生じると、出力側ベベルギヤと係合して回転伝達されている際に、ギヤ歯の歯先干渉が生じ、場合によってはギヤ歯の破損を招くおそれがある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、互いに係合して噛み合った状態において歯先干渉が生じにくいベベルギヤと、そのようなベベルギヤを用いた動力伝達機構および多軸駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に記載のベベルギヤは、ギヤ歯の内周側および外周側に、ギヤ歯のピッチ円の延長面上に沿った環状のストッパ面が形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のベベルギヤによれば、互いに係合して噛み合った状態において、双方のストッパ面どうしが当接することにより相手側へのそれ以上の進出が規制される。このため、ベベルギヤのガタや傾きが抑えられ、歯先干渉が生じにくくなる。
【0010】
次に、本発明の請求項2に記載の動力伝達機構は、軸方向に移動不能に支持される固定側ベベルギヤと、この固定側ベベルギヤに対し進退自在、かつ進出時に固定側ベベルギヤに係合可能とされる可動側ベベルギヤと、この可動側ベベルギヤを進出方向に付勢する付勢部材と、前記可動側ベベルギヤを進退させ、進出時に前記固定側ベベルギヤに係合させる切り換え手段とを備えた動力伝達機構において、前記固定側ベベルギヤと前記可動側ベベルギヤに、請求項1に記載のベベルギヤが用いられ、可動側ベベルギヤが固定側ベベルギヤに係合した時に、前記ストッパ面どうしが当接して可動側ベベルギヤの進出が規制されることを特徴とする。
【0011】
本発明の動力伝達機構によれば、付勢部材で付勢された可動側ベベルギヤが固定側ベベルギヤ方向に進出して固定側ベベルギヤに係合した際、双方のベベルギヤに形成されたストッパ面どうしが互いに当接することにより、可動側ベベルギヤのそれ以上の進出が規制されるとともに、可動側ベベルギヤのガタや傾きが抑えられる。したがって、可動側ベベルギヤの係合時の位置を規制するストッパ等の別部材を要することなく、可動側ベベルギヤのガタや傾きを抑えることができる。
【0012】
次に、本発明の請求項3に記載の多軸駆動装置は、請求項2に記載の動力伝達機構を複数有し、これら複数の動力伝達機構の前記固定側ベベルギヤと前記可動側ベベルギヤのうちの一方にモータの動力が伝達され、他方に車両に具備される可動機構が出力軸を介して連結されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のベベルギヤによれば、互いに係合して噛み合った状態において、ガタや傾きが抑えられ、歯先干渉が生じにくくなるといった効果を奏する。
【0014】
また、本発明の動力伝達機構によれば、可動側ベベルギヤが固定側ベベルギヤに係合して噛み合う際に、ストッパ等の別部材を必要とすることなく可動側ベベルギヤのガタや傾きが抑えられて適切な噛み合い状態を得ることができるといった効果を奏する。
【0015】
また、本発明の多軸駆動装置によれば、具備された動力伝達機構の可動側ベベルギヤが固定側ベベルギヤに係合して噛み合う際に、ストッパ等の別部材を必要とすることなく可動側ベベルギヤのガタや傾きが抑えられて適切な噛み合い状態を得ることができる多軸駆動装置が提供されるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る多軸駆動装置を示す斜視図である。
【図2】同多軸駆動装置の平面図である。
【図3】同多軸駆動装置の可動部を示す平面図である。
【図4】同多軸駆動装置の出力部を示す図であって、(a)斜視図、(b)断面図である。
【図5】同出力部の出力側ベベルギヤと入力側ベベルギヤとの係合状態を示す断面図である。
【図6】出力側ベベルギヤが入力側ベベルギヤから離れた状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
【0018】
(1)多軸駆動装置の構成
図1および図2は、一実施形態に係る多軸駆動装置の斜視図および平面図である。これら図で符号1は上方に開口する凹所2を有するケース、10はケース1の凹所2内に収容されたセレクタ(切り換え手段)、20はケース1の下部に固定されたモータである。ケース1の凹所2の開口は、ケース1に固定される図示せぬカバーによって覆われる。セレクタ10は図2においてY方向に長い略長方形状の板状部材であって、幅方向(X方向)の中央部にはY方向に延びる2つのガイド孔19が形成されている。これらガイド孔19には、凹所2の底部から突出するガイド突起3がそれぞれ挿入されており、セレクタ10はガイド孔19がガイド突起3にガイドされることによりY方向にスライド自在に支持されている。
【0019】
セレクタ10の長手方向に沿う両側面のうち、図2で右側の側面は第1カム面11に形成されている。また、左側の側面の下側は第2カム面12に形成されており、上側にはY方向に歯列が並ぶラック18が形成されている。ラック18にはケース1に回転自在に支持されるピニオン17が噛み合わされている。ピニオン17には上記カバーの上方に配設される図示せぬダイヤルが回転軸を介して固定されている。このダイヤルを回転させるとピニオン17が回転し、これによってラック18を介してセレクタ10がダイヤルの回転方向に応じてY方向に往復移動させられるようになっている。
【0020】
セレクタ10のX方向両側には、図3にも示すように各カム面11,12に対向して出力部30が配設されている。この場合、第1カム面11に対して2つの出力部30(第1出力部30Aと第2出力部30B)がY方向に離間して配設され、第2カム面12に対して1つの出力部30(第3出力部30C)が配設されている。これら出力部30は、ケース1に形成された収容部4に収容されている。
【0021】
図2および図3の符号21は、上方に突出するモータ20のモータ軸である。モータ軸21は正逆回転させられるもので、このモータ軸21には、ピニオン22が固定されている。そしてこのピニオン22の周囲には、各出力部30に対応して3つの入力側クラッチ部材50が、ケース1に回転自在に支持されて配設されている。各入力側クラッチ部材50は同一構成であって、図5に示すように、平歯車からなりピニオン22に噛み合う入力ギヤ51と、入力ギヤ51の上面に一体に形成された入力側ベベルギヤ(固定側ベベルギヤ)52とから構成されている。モータ20は、例えば上記ダイヤル等に設けられるスイッチによってON・OFFおよび回転方向が選択され、モータ20が稼働すると、全ての入力側クラッチ部材50が回転する。
【0022】
各出力部30(30A〜30C)は同一構成であって、図4に示すように、カム面11(12)に対向した状態で配設される出力軸31と、出力軸31と一体回転可能、かつカム面11(12)に対し出力軸31の軸方向に沿って進退自在に設けられた出力側クラッチ部材32と、出力側クラッチ部材32を入力側ベベルギヤ52に向かって進出するように付勢するコイルばね(付勢部材)36とから構成されている。
【0023】
出力軸31は、図1に示すように、ケース1に形成された円筒状の支持部5内に、回転自在、かつセレクタ10から離れる後方への移動は規制される状態に支持されている。出力軸31は、車両用電動シートの、例えばシート座面の高さを調節する機構、シートバック(背もたれ部)の角度を調節するリクライニング機構、およびシートの前後位置を調節する機構等の可動機構に対し、図示せぬトルクケーブルを介してそれぞれ接続される。トルクケーブルは、出力軸31の後端面に形成された断面矩形状の装着穴31b(図1および図4参照)にその一端部が挿入され、出力軸31とともに回転する。
【0024】
図4に示すように、出力側クラッチ部材32は、出力軸31のセレクタ10側に外装された円筒状のスライド軸33と、このスライド軸33の先端側に一体形成され、ギヤ歯341がセレクタ10側に向く出力側ベベルギヤ(可動側ベベルギヤ)34と、出力側ベベルギヤ34の中心から軸方向に突設されたピン35とから構成されている。
【0025】
スライド軸33は内周面が出力軸31の外周面に周方向に相対回転不能、すなわち一体回転可能で、かつ軸方向にスライド自在にスプライン結合されており、出力軸31の軸方向に沿ってカム面11(12)に対し進退自在とされている。
コイルばね36は、圧縮状態で出力軸31およびスライド軸33の内部に収容されており、スライド軸33を出力軸31からカム面11(12)に向かって付勢している。これにより出力側クラッチ部材32のピン35は、先端がカム面11(12)に突き当たるようになっている。ピン35の先端面は球面状に形成されており、上記ダイヤルによってセレクタ10がY方向に送られると突き当たっているカム面11(12)に摺接する。
【0026】
セレクタ10の第1カム面11には、第1出力部30Aおよび第2出力部30Bに対応する凹部13(第1凹部13Aおよび第2凹部13B)が形成されており、第2カム面12には、第3出力部30Cに対応する凹部13(第3凹部13C)が形成されている。上記のようにセレクタ10がY方向に移動するように操作されると、いずれかの出力部30のピン35が対応する凹部13に対向し、この時ピン35は出力側クラッチ部材32全体がコイルばね36でカム面11(12)に向かって付勢されていることにより、その凹部13に突出して嵌り込む。
【0027】
このようにピン35が凹部13に嵌り込むと出力側クラッチ部材32全体がセレクタ10方向にスライドし、出力側ベベルギヤ34が入力側ベベルギヤ52に係合して噛み合い、クラッチ接続状態となる。図2に示すように、出力側クラッチ部材32のピン35はケース1に形成された壁部6の貫通孔7を貫通しており、クラッチ接続時には出力側ベベルギヤ34の先端面が壁部6に当接し、これによって出力側クラッチ部材32の進出時のストロークエンドが規制されるようになっている。
【0028】
クラッチ接続時にモータ20が稼働して入力側クラッチ部材50が回転すると、その回転が入力側ベベルギヤ52から出力側ベベルギヤ34に伝わって出力側クラッチ部材32が回転し、スライド軸33の回転が出力軸31に伝わって出力軸31が回転し、トルクケーブルが回転して作動する。また、ピン35が凹部13に対向しない状態では、ピン35は凹部13以外のカム面11(12)に当接し、カム面11(12)によりコイルばね36に抗して出力軸31側に押される。この時には、出力側ベベルギヤ34は入力側ベベルギヤ52から離れ、回転は伝わらないクラッチ切断状態となる。
【0029】
本実施形態では、上記の入力側ベベルギヤ52、出力側ベベルギヤ34、コイルばね36およびセレクタ10により、本発明に係る動力伝達機構が構成されている。
【0030】
図6に示すように、入力側ベベルギヤ52のギヤ歯521の内周側および外周側には、ギヤ歯521のピッチ円の延長面上に沿った環状のストッパ面57a,57bがそれぞれ形成されている。一方、出力側ベベルギヤ34にも同様に、ギヤ歯341の内周側および外周側にギヤ歯341のピッチ円の延長面上に沿った環状のストッパ面37a,37bがそれぞれ形成されている。図5に示すように、出力側ベベルギヤ34が入力側ベベルギヤ52に係合して噛み合うと、出力側ベベルギヤ34の内周側のストッパ面37aが入力側ベベルギヤ52の内周側のストッパ面57aに当接し、出力側ベベルギヤ34の外周側のストッパ面37bが入力側ベベルギヤ52の外周側のストッパ面57bに当接するようになっている。
【0031】
(2)多軸駆動装置の作用
次に、上記多軸駆動装置の作用を説明する。
図2および図3は、上記ダイヤルを回転させてセレクタ10をY方向に送ることにより、第1出力部30Aにおける出力側ベベルギヤ34のピン35が第1凹部13Aに突出して嵌り込んだ状態を示している。この時、第1出力部30Aの出力側ベベルギヤ34は、第1出力部30Aに対応する入力側ベベルギヤ52に係合し、クラッチ接続の状態となる。一方、他の出力部30(第2出力部30Bと第3出力部30C)においては、ピン35がカム面11,12に押されて出力側ベベルギヤ34は対応する入力側ベベルギヤ52から離れ、クラッチ切断状態となる。
【0032】
この状態からセレクタ10がY1方向に所定距離送られると、第2出力部30Bのピン35が第2凹部13Bに突出して嵌り込み、当該第2出力部30Bにおける出力側ベベルギヤ34が対応する入力側ベベルギヤ52に噛み合い、クラッチ接続状態となる。この時、他の出力部30(第1出力部30Aと第3出力部30C)においてはピン35がカム面11,12に押されて出力側ベベルギヤ34は対応する入力側ベベルギヤ52から離れ、クラッチ切断状態となる。
【0033】
さらにセレクタ10がY1方向に所定距離送られると、第3出力部30Cのピン35が第3凹部13Cに突出して嵌り込み、当該第3出力部30Cにおける出力側ベベルギヤ34が対応する入力側ベベルギヤ52に噛み合い、クラッチ接続状態となる。この時、他の出力部30(第1出力部30Aと第2出力部30B)においてはピン35がカム面11に押されて出力側ベベルギヤ34は対応する入力側ベベルギヤ52から離れ、クラッチ切断状態となる。
【0034】
セレクタ10は上記ダイヤルを正逆回転させることによりY方向に往復移動し、その移動の途中においてピン35がセレクタ10の凹部13A〜13Cのうちのいずれか1つに突出して嵌り込み、その時、上記のように第1〜第3出力部30A〜30Cのうちの1つの出力部30が選択されたことになり、その出力部30における出力側ベベルギヤ34が対応する入力側ベベルギヤ52に噛み合ってクラッチ接続状態となる。
【0035】
そしてこのようにクラッチ接続状態の時に上記スイッチをONにしてモータ20を稼働させると、モータ20の動力が入力側ベベルギヤ52から出力側ベベルギヤ34に伝わり、出力軸31が回転する。これにより、選択された出力部30の出力軸31に接続されているトルクケーブルが回転して作動状態となる。また、スイッチによってモータ20の回転方向を切り換えることにより、出力軸31とともにトルクケーブルの回転方向も切り換えられる。
【0036】
さて、本実施形態では、図5に示すように出力側ベベルギヤ34が入力側ベベルギヤ52に係合した際に、双方のベベルギヤ34,52に形成された内周側のストッパ面37a,57aどうし、および外周側のストッパ面37b,57bどうしが互いに当接する。このため、コイルばね36で押される出力側ベベルギヤ34はそれ以上の進出が規制される。ここで、本実施形態の場合、クラッチ接続時には出力側ベベルギヤ34の先端面がケース1の壁部6に当接し、これによって出力側クラッチ部材32の進出時のストロークエンドが規制されることは上記の通りである。ところが、コイルばね36の力を受ける壁部6がセレクタ10側に変形した場合には、出力側ベベルギヤ34は所定の規制位置よりも進出してしまう。
【0037】
しかしながら本実施形態では、クラッチ接続状態では出力側ベベルギヤ34のストッパ面37a,37bが入力側ベベルギヤ52のストッパ面57a,57bにそれぞれ当接するため、出力側ベベルギヤ34の進出が規制され、壁部6の変形は生じない。したがって、本実施形態の壁部6の形成を省略することができる。壁部6を省略した場合、出力部30は片持ちで支持されるため先端側の出力側ベベルギヤ34にはガタや傾きが生じやすくなるが、本実施形態では上記のようにストッパ面37a,37bがストッパ面57a,57bにそれぞれ当接するため、ガタや傾きといった現象は生じにくくなる。
【0038】
例えば、図5に示すように、出力側ベベルギヤ34が矢印P1方向に傾く力を受けた場合には、内周側のストッパ面37aが相手側(入力側ベベルギヤ52)の内周側のストッパ面57aに当接することにより、傾きが抑えられる。また、出力側ベベルギヤ34が矢印P2方向に傾く力を受けた場合には、外周側のストッパ面37bが相手側の外周側のストッパ面57bに当接することにより、傾きが抑えられる。このような作用により、ベベルギヤ34,52は適切な噛み合い状態が保持され、その結果、ギヤ歯341,521の歯先干渉が生じにくくなり、破損等の不具合を回避することができる。また、上記のように壁部6のような出力側ベベルギヤ34の位置を規制するストッパ等の別部材を廃止した場合には、コストダウンが図られるという利点がある。
【0039】
なお、上記実施形態では、入力側ベベルギヤ52および出力側ベベルギヤ34がそれぞれ本発明の固定側ベベルギヤおよび可動側ベベルギヤであって、入力側ベベルギヤ52にモータ20の動力が伝達され、出力側ベベルギヤ34に出力軸31が連結されているが、本発明では、固定側ベベルギヤと可動側ベベルギヤのうちの一方にモータの動力が伝達され、他方に出力軸が連結される形態であってもよい。すなわち上記実施形態では、出力側ベベルギヤ34にモータの動力が伝わり、入力側ベベルギヤ52に出力軸を連結するといった逆の構成も考えられる。
【0040】
また、上記実施形態では、本発明のセレクタ10を直線運動するものとしたが、本発明ではセレクタ10を円板状の回転部材とし、その周面をカム面として複数の出力部30を該カム面の周囲に配置する形態に変更することができる。
【符号の説明】
【0041】
10…セレクタ(切り換え手段)
20…モータ
31…出力軸
34…出力側ベベルギヤ(可動側ベベルギヤ)
341…出力側ベベルギヤのギヤ歯
36…コイルばね(付勢部材)
37a…出力側ベベルギヤの内周側のストッパ面
37b…出力側ベベルギヤの外周側のストッパ面
52…入力側ベベルギヤ(固定側ベベルギヤ)
521…入力側ベベルギヤのギヤ歯
57a…入力側ベベルギヤの内周側のストッパ面
57b…入力側ベベルギヤの外周側のストッパ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ギヤ歯の内周側および外周側に、ギヤ歯のピッチ円の延長面上に沿った環状のストッパ面が形成されていることを特徴とするベベルギヤ。
【請求項2】
軸方向に移動不能に支持される固定側ベベルギヤと、
この固定側ベベルギヤに対し進退自在、かつ進出時に固定側ベベルギヤに係合可能とされる可動側ベベルギヤと、
この可動側ベベルギヤを進出方向に付勢する付勢部材と、
前記可動側ベベルギヤを進退させ、進出時に前記固定側ベベルギヤに係合させる切り換え手段と、
を備えた動力伝達機構において、
前記固定側ベベルギヤと前記可動側ベベルギヤに、請求項1に記載のベベルギヤが用いられ、可動側ベベルギヤが固定側ベベルギヤに係合した時に、前記ストッパ面どうしが当接して可動側ベベルギヤの進出が規制されることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項3】
請求項2に記載の動力伝達機構を複数有し、
これら複数の動力伝達機構の前記固定側ベベルギヤと前記可動側ベベルギヤのうちの一方にモータの動力が伝達され、他方に車両に具備される可動機構が出力軸を介して連結されることを特徴とする多軸駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−177460(P2012−177460A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41888(P2011−41888)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】