説明

ベルトループ付けミシン

【課題】適正なベルトループの縫着を行う。
【解決手段】針上下動機構と、ループクランプ31と、ループ押さえ52と、載置台51と、布押さえ71と、第一の移動機構50と、第二の移動機構70と、クランプ移動機構30と、単一のフォーク部材38とを備え、第二の移動機構の駆動源を布送りモータ74とし、ループクランプが挟持するベルトループBの幅方向に折り目となる折り目縫い目L2を形成し、当該折り目縫い目から折り返される方向にクランプ移動機構によりループクランプを移動させ、折り返されたベルトループにより隠れた状態となる折り目縫い目の上から重ね縫い目L3を形成する重ね縫い目形成制御と、重ね縫い目形成制御の実行の際に、第二の移動機構の布送りモータを制御して設定補正量に応じて折り目縫い目に対して重ね縫い目の形成位置を補正する制御を行う重ね縫い目位置補正制御とを行う制御手段80を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトループ付けミシンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のベルトループ付けミシンは、細長い布片であるベルトループの両端部のそれぞれを、先端が二叉状の二つのフォーク部材の先端部の間に挿通し、各フォーク部材を互いに逆回転させることで両端部を内側に折り返した状態でミシンの針落ち位置に供給し、生地への縫いつけを行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記従来のベルトループ付けミシンは、二つのフォーク部材でベルトループを供給することから、ベルトループの両端部についていずれも内側に折り返した状態で生地に縫着を行う、最も基本的な縫いつけしかすることができなかった。
そこで、より多彩なベルトループの縫着を可能とするために、昨今では、一つのフォーク部材とベルトループを挟持するループクランプとを備えるベルトループ付けミシンが案出されている。例えば、ベルトループの一端部を略Z字状に折りたたんで縫いつける縫着の形状がある。かかるミシンでは、ループクランプが挟持した状態のベルトループの一端部で第一の縫着を行い、その第一の縫着部で折り返されるようにループクランプを移動させ、第一の縫着部からループクランプが移動した方向寄りの所定位置で第二の縫着を行い、今度はループクランプを逆方向に移動させることで第二の縫着部でベルトループを折り返し、折り返されたベルトループに対して第二の縫着部と同じ位置で重ねて縫製を行うことでZ字状に折り込まれた形状の縫着を可能としていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−311060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ベルトループ付けミシンでは、通常のベルトループの縫着であればベルトループの両端部の二カ所に針落ちが行えるように生地を移動させれば良く、上述したZ字状の折り込みを入れる場合でも三カ所で足りるため、これら針落ち位置を切り換えるために生地の移動を行うアクチュエータとしてはエアシリンダが使用されていた。
しかしながら、生地の移動をエアシリンダで行う場合には、図15に示す問題が生じていた。即ち、前述した第二の縫着と第三の縫着のように、先行する縫着部H1を折り目としてベルトループBを折り返し、Bの折り返し端部から縫い目H2までの幅Lを任意に定めることができないという問題があった。縫い目H2は縫製物の表面に露出するためデザイン上の観点から幅Lを任意に変更したいという要請や、幅Lを拡張することで折り返し部分に膨らみを持ちたい等の要請があるが、これらの要請に応えることはできなかった。特にベルトループBの厚さが変わると、図15(B)に示すように上述の幅Lも変わってしまい、その幅Lがベルトループの生地によって変わってしまい一定とすることもできないということも問題であった。
【0006】
また、先行する縫い目H1に重ねて次の縫い目H2を形成するので、薄手のベルトループや生地の場合に、同じ位置に重ねて針落ちが行われることでベルトループBや生地の痛みが激しくなるという問題もあった。
また、同じ位置に縫い目H1,H2が重ねて形成されることで縫い目部分の盛り上がりが大きくなったり硬くなったりするという問題もあった。
【0007】
また、ベルトループBや生地Cが薄い場合には、図15(C)に示すように、先行する縫い目H1の形成後にベルトループBを折り返すためにループクランプが引っ張ると、生地Cが浮き上がってベルトループBの折り目がループクランプ側に移動してしまい、同じ位置に上から縫製を行っても、ベルトループBの落ち返し端部からズレてしまう場合があり、デザイン通りの縫いを行うことができないという問題もあった。
【0008】
本発明は、ベルトループの縫い目を適正に形成することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、縫い針を上下動させる針上下動機構と、長手方向が所定方向に向けられた状態の前記ベルトループを挟持し且つ解放可能なループクランプと、下降動作により前記ベルトループを押さえつけるループ押さえと、前記ベルトループの縫着が行われる布地が載置される載置台と、前記布地を保持する布押さえと、前記縫い針に対して前記載置台の載置面に沿った任意の位置に前記ループ押さえ及び載置台を移動させる第一の移動機構と、前記布押さえを介して前記ベルトループの長手方向に沿って前記布地を移動させる第二の移動機構と、前記ループクランプを前記載置台の載置面に沿った任意の位置に移動させるクランプ移動機構と、先端に形成された二叉部の間に前記ベルトループを介挿させる単一のフォーク部材を回転させて前記ベルトループを折曲させる折曲機構と、を備えたベルトループを布地に縫着するベルトループ付けミシンにおいて、前記第二の移動機構の駆動源を、任意の動作量に制御可能な布送りモータとし、前記ループクランプが挟持するベルトループの幅方向に折り目となる折り目縫い目を形成し、当該折り目縫い目から折り返される方向に前記クランプ移動機構により前記ループクランプを移動させ、折り返されたベルトループにより隠れた状態となる折り目縫い目の上から重ね縫い目を形成する重ね縫い目形成制御と、前記重ね縫い目形成制御の実行の際に、ベルトループ長手方向における前記折り目縫い目の位置に対する前記重ね縫い目の位置の距離である補正量に応じて、前記第二の移動機構の布送りモータを制御して、前記重ね縫い目の形成位置を補正する制御を行う重ね縫い目位置補正制御とを行うことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記設定補正量の値を設定する補正量設定手段を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記折り目縫い目の縫いパターンを設定するパターン設定手段を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記制御手段は、前記重ね縫い目形成制御において、前記折り目縫い目から折り返される方向に前記クランプ移動機構により前記ループクランプを移動させた後に、逆方向への移動により布地の引っ張りを戻す動作を行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明は、第二の移動機構の駆動源を任意の動作量に制御可能な布送りモータとしていることから、重ね縫い目形成制御の際に、布送りモータにより、設定補正量に応じて隠し縫い目に対して重ね縫い目の形成位置を補正する制御を行うことができる。従って、ベルトループの折り返し端部から縫い目までの幅を任意に変えて縫製することが可能となり、ベルトループの縫い目についてデザイン上の要求に応えることができ、デザイン性の高い縫製の可能なベルトループ付けミシンを提供することが可能となる。
さらに、布送りモータにより、設定補正量に応じて重ね縫い目の形成位置を補正することができるので、ベルトループの厚さが異なる場合でも、薄手の場合には、重ね縫い目を内側(ベルトループの長手方向中間寄り)に位置補正し、厚手の場合には、重ね縫い目を外側(ベルトループの長手方向端部寄り)に位置補正することで、折り返し端部から縫い目までの幅の均一化を図ることが可能となる。
【0014】
さらに、薄手の生地又はベルトループに対して、折り目縫い目に重ねて重ね縫い目を形成する場合に、折り返しの引っ張りにより、ベルトループの折り返し端部の位置がずれて重ね縫い目がベルトループに乗らなくなるような場合でも、ベルトループの内側に重ね縫い目が形成されるように設定補正量を設定することにより、ベルトループの上に正確に重ね縫い目を形成することが可能となる。
また、薄手の生地又はベルトループに対して、折り目縫い目に重ねて重ね縫い目を形成すると、重ねて多くの針落ちが行われることにより、生地又はベルトループが痛んでしまう場合があるが、そのような場合には、重ね縫い目を折り目縫い目からずらして形成することができるので、生地やベルトループの保護を図ることが可能となる。
さらに、同じ位置に縫い目が重ねて形成されることで縫い目部分の盛り上がりが大きくなったり硬くなったりする場合があるが、これも上記と同様に、重ね縫い目を折り目縫い目からずらして形成することができるので、盛り上がりの発生や硬くなる部分の発生を抑止することが可能となる。
【0015】
請求項2記載の発明は、設定補正量の値を設定する補正量設定手段を備えているので、必要に応じて縫い目位置の任意の補正が容易に実行することが可能となる。
【0016】
請求項3記載の発明は、折り目縫い目の縫いパターンを設定するパターン設定手段を備えているので、例えば、折り目縫い目などのように折り返しのためにのみ縫い目を形成する場合には、縫いの時間短縮のためにすぐに縫うことが可能なしつけ縫いを選択したり、縫着の強度を高めたい場合には、縫着強度に優れる閂止め縫いを選択するなど、必要に応じて適切な縫いパターンを選択することが可能となる。
【0017】
請求項4記載の発明は、制御手段が、重ね縫い目形成制御において、折り目縫い目から折り返される方向にクランプ移動機構によりループクランプを移動させた後に、逆方向への移動により布地の引っ張りを戻す動作を行わせるので、ループクランプによるベルトループの引っ張りにより、生地が引きつった状態のまま縫いが行われたり、ループクランプによるベルトループの引っ張りにより、縫い目形位置がずれたりする事態を回避でき、縫い品質の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施の形態に係るベルトループ付けミシンの全体を示す斜視図である。
【図2】ベルトループ付けミシンの制御系を示すブロック図である。
【図3】縫い針周辺の斜視図である。
【図4】Z形状の縫い付けを行う場合に設定される複数のパラメータを示した説明図である。
【図5】Z形状の縫い付けを行う際の動作制御示したフローチャートである。
【図6】Z形状の縫い付けを行う際の動作を示す動作説明図であり、図6(A)〜図6(C)の順番で動作が進められる。
【図7】Z形状の縫い付けを行う際の図6に示した動作の続きの動作を示す動作説明図であり、図7(A)〜図7(C)の順番で動作が進められる。
【図8】Z形状の縫い付けを行う際の図7に示した動作の続きの動作を示す動作説明図であり、図8(A)〜図8(C)の順番で動作が進められる。
【図9】Z形状の縫い付けを行う際の図8に示した動作の続きの動作を示す動作説明図であり、図9(A)〜図9(C)の順番で動作が進められる。
【図10】Z形状の縫い付けを行う際の図9に示した動作の続きの動作を示す動作説明図であり、図10(A)〜図10(C)の順番で動作が進められる。
【図11】図11(A)はベルトループの折り返し端部から縫い目までの幅を小さくした場合の側面図、図11(B)大きくした場合の側面図、図11(C)はベルトループの折り返し端部から縫い目までの幅を小さくした場合の平面図、図11(D)大きくした場合の平面図を示している。
【図12】ベルトループの厚さが異なる場合でも設定補正量によりベルトループの折り返し端部から縫い目までの幅を均一に揃えることができることを示す説明図である。
【図13】ベルトループや生地が薄い場合でも設定補正量によりベルトループから重ね縫い目がずれないように縫いを施すことができることを示す説明図である。
【図14】図14(A)はベルトループの両端部を内側に折り返した一般的な縫着の例を示し、図14(B)は内側に折り返された端部を長く確保したセミクラッシック仕様の縫着の例を示している。
【図15】図15(A)と図15(B)はベルトループの厚さにより端部の縫い目の位置が変わってしまうことを示す説明図であり、図15(C)はベルトループや生地が薄い場合に引っ張りによりベルトループの折り返し端部位置がずれてベルトループの端部に縫い目が形成できない場合を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(縫製装置の概要)
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本実施の形態に係るベルトループ付けミシン10の全体を示す斜視図、図2は制御系を示すブロック図、図3は縫い針周辺の斜視図である。
ベルトループ付けミシン10は、縫い針11を上下動させる図示しない針上下動機構と、所定方向に向けられたベルトループBを挟持するループクランプ31を備えるクランプ機構30と、ベルトループBをクランプ機構30に供給するループ供給機構60と、ベルトループBの縫着が行われる布地Cが載置される載置台51と当該載置台51への下降動作によりベルトループBを押さえつけるループ押さえ52とを備えるループ押さえ機構50と、ベルトループBのループを緩める緩め部材66を備える緩め機構65と、布地Cを保持する布押さえ71を備える布押さえ機構70と、ミシンフレーム2と、図示しない釜機構と、上記各構成を制御する制御手段80とを備えている。
【0020】
(ミシンフレーム)
ミシンフレーム2は、釜機構を内蔵したミシンベッド部2aと、ミシンベッド部2aの一端部から立設した縦胴部2bと、針上下動機構を内蔵したミシンアーム部2cとを備えている。そして、ミシンアーム部2cはミシンベッド部2aと同じ方向に延出されている。
以下の説明において、水平であってミシンベッド部2a及びミシンアーム部2cの長手方向に平行な方向をY軸方向、水平であってY軸方向に直交する方向をX軸方向、鉛直上下方向をZ軸方向とし、説明の必要に応じて、Y軸方向における一端部側であってミシンアーム部2cの面部側を「手前側」、Y軸方向における他端部側であって縦胴部2b側を「奥側」いうものとする。
【0021】
(針上下動機構及び釜機構)
針上下動機構は、ミシンアーム部2cの手前側端部の内部で上下動可能に支持されると共に縫い針を下端部に保持する針棒と、針棒の上下動の駆動源となるミシンモータ13と、ミシンモータ13により回転駆動を行う主軸と、主軸の回転駆動を上下動に変換して針棒に伝えるクランク機構とから構成されており、周知のものと同様である。
釜機構は、いわゆる半回転釜を用いた釜機構であり、ミシンベッド部2aの手前側端部の内側であって針落ち位置下部において回転可能に支持された半回転釜と、主軸に設けられた偏心カムと、偏心カムを一端部で支持するクランクロッドと、クランクロッドの他端部に連結されたアーム部により往復回動が付与される釜軸と、釜軸に支持されたドライバとを備え、周知のものと同様である。
【0022】
(ループ供給機構)
ループ供給機構60は、クランプ機構30の手前側に配置されており、当該ループ供給機構60の手前側端部には、無端ベルト状の未切断ベルトループが取り込み口(図示略)を備えており、当該取り込み口から取り込まれた無端のベルトループを奥側に設けられた繰り出し口まで搬送する搬送ローラ61を回転駆動する繰り出しモータ62と、所定の長さで無端のベルトループを切断するカッタ63を駆動する切断用エアシリンダ64とを備えている。無端のベルトループが切り分けられてなる個々のベルトループBの長さは、繰り出しモータ61の駆動量を制御手段80が制御するにより決定される。
なお、クランプ機構30は、その手前側にベルトループBの図示しない受け取り口とX、Y軸方向への移動を行うための構成が設けられており、ループ供給機構60の繰り出し口に対して受け取り口が近接するよう移動を行い、ベルトループBの受け取りが行われる。
【0023】
(クランプ機構)
クランプ機構30は、ミシンフレーム2に対して手前側(面部側)から奥側を向いた状態で見て右側に配置されている。以下の説明において、「右」というときには、X軸方向に平行な方向であって手前側(面部側)から奥側を向いた状態で見て右となる方向を示すものとし、単に「左」というときには、X軸方向に平行な方向であって手前側(面部側)から奥側を向いた状態で見て左となる方向を示すものとする。
クランプ機構30は、ベルトループBを挟持する上側クランプ31a及び下側クランプ31bからなるループクランプ31と、ループクランプ31を保持する保持ブロック32と、上側クランプに昇降動作を付与してベルトループBの挟持状態と解放状態とを切り換えるクランプ用エアシリンダ33と、保持ブロック32をX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向について移動可能に支持する支持台34と、保持ブロック32にX軸方向に沿った移動動作を付与するクランプ用X軸モータ35と、保持ブロック32にY軸方向に沿った移動動作を付与するクランプ用Y軸モータ36と、保持ブロック32にZ軸方向に沿った移動動作を付与するクランプ用Z軸エアシリンダ37とを備えている。
【0024】
図3に示すように、ループクランプ31は、保持ブロック32の左端に設けられ、下側クランプ31bは保持ブロック32に固定装備され、上側クランプ31aは下側クランプ31bの真上において上下動可能に支持されている。また、上側クランプ31aはその先端部下面に凹状の保持部が形成されており、この保持部に嵌合するようにベルトループBの保持が行われる。ベルトループBは、保持部に嵌合保持されることにより、その長手方向をY軸方向に沿わせた状態で保持が行われる。
クランプ用エアシリンダ33は、保持ブロック32上に装備されており、そのプランジャの進退動作により上側クランプ31aの上昇解放動作と下降保持動作とを切り換えることを可能としている。なお、クランプ用エアシリンダ33によりベルトループBの保持圧は、ベルトループBがY軸方向に沿ったある程度の張力を受けると引き抜くことが可能な程度に調節されている。
【0025】
保持ブロック32は、例えば、X、Y、Z軸方向の各方向に沿った滑動を可能とするスライドガイドを組み合わせて支持台34に支持されており、これらの方向への移動を可能としている。そして、クランプ用X、Y軸モータ35,36及びクランプ用Z軸シリンダ37の協働により、X−Y平面に沿った任意の位置にループクランプ31を移動させることができ、例えば、ベルトループBの受け取り位置から縫製の実行位置への搬送や、ベルトループBの複数箇所に縫着縫製が行われる場合に各縫製間でのベルトループBのY軸方向に沿った移動動作の付与等が行われる。即ち、クランプ機構30は、「クランプ移動機構」として機能することとなる。
【0026】
また、保持ブロック32には、ループクランプ31に対してY軸方向に沿って隣接してフォーク部材38(図3では図示略)が併設されている。
フォーク部材38は、X軸方向に沿って延出された基部の先端部(左端部)からさらに二本の棒状体が左方に延出されて二叉状に形成されており、当該二本の棒状体の間にベルトループBを通して基部をY軸回りに回転させることにより、ベルトループBの端部を折り返すことを可能としている。かかるフォーク部材38は、X軸方向に沿って進退移動可能に保持ブロック32に支持されており、前進時にループクランプ31と並ぶ位置となり、後退時にはループクランプ31より右方に退避するようにフォーク用エアシリンダ40によって進退動作が付与される。また、フォーク部材38のY軸回りの回転動作はロータリーアクチュエータ41により付与される。これらフォーク部材38、フォーク用エアシリンダ40、ロータリーアクチュエータ41は「折曲機構」を構成している。
【0027】
(緩め機構)
緩め機構65は、ミシンベッド部2a上で載置台51の近傍に設置されており、X軸方向に沿って延出された断面楕円形の棒状体である緩め部材66と、緩め部材66をX軸方向に沿って進退移動させる緩め部材用エアシリンダ67と、緩め部材66をY軸方向に移動させる緩めモータ68とを備えている。
緩め部材66は、緩め部材用エアシリンダ67による前進移動により、ベルトループBの縫製位置内に進入し、ループの緩め作業やベルトループの端部を係止して折り返し作業を補助したりする作業位置となり、後退移動により、縫製作業にかかわらず、他の機構との干渉も生じない退避位置となるように配置されている。
また、緩めモータ68によりY軸方向への移動動作を付与されると、ベルトループの長手方向への緩め量が制御されるようになっている。
【0028】
(ループ押さえ機構)
ループ押さえ機構50の載置台51は、ミシンベッド部2aの上部にX軸方向及びY軸方向に移動可能に支持されている。そして、載置台51の上面はX−Y平面に平行な水平面であり、縫製時には生地Cが載置される。また、載置台51は、針棒12の真下に位置し、針落ち位置には縫い針11が挿入される針穴が形成されている。
そして、ループ押さえ機構50は、載置台51をX軸方向に任意に移動させる生地用X軸モータ53と、載置台51をY軸方向に任意に移動させる生地用Y軸モータ54とを備えており、これら各モータ53,54はいずれもパルスモータであり、各々の出力軸にはエンコーダ55,56が装備されている。生地用X軸モータ53及びY軸モータ54は、毎針の針落ちに同期して、縫製パターンに定められた所定の針落ち位置に針落ちが行われるようにベルトループB及び生地Cの位置決めを行うために、各エンコーダ55,56の出力に基づくフィードバック制御が行われる。
【0029】
また、載置台51の奥側の端部には、ループ押さえ52を上下動可能に支持する昇降フレーム58が立設されており、載置台51とループ押さえ52とは、X軸及びY軸方向について、一体的に移動を行うこととなる。また、ループ押さえ52の昇降は、ループ押さえ用エアシリンダ57により行われ、下降によりベルトループB及び生地Cを上方から下方に押圧保持し、上昇によりベルトループB及び生地Cを解放する。
ループ押さえ52は、その下部には一般的なベルトループBの幅より若干幅の広い略矩形状の枠体52aを備えている。ベルトループ付けミシン10では、ベルトループBの縫着縫製において、ベルトループBの幅方向に沿った縫いが一乃至複数回実施されるので、ループ押さえ52の枠体52aは、ベルトループBの幅方向に沿った一回分の縫いが網羅できる大きさに設定されている。
ループ押さえ機構50は、上記構成により、載置台51上でループ押さえ52が保持したベルトループB及び生地CをX−Y平面に沿った任意の位置に移動位置決めすることができ、「第一の移動機構」として機能することとなる。
【0030】
(布押さえ機構)
布押さえ機構70の布押さえ71は、平面視略C字状の枠体であり、載置台51より小さく、ループ押さえ52の枠体52aよりも大きく設定されている。この布押さえ71は、載置台51の上面においてループ押さえ52の枠体52aの周囲を囲むように配置されているが、載置台51とは別に支持体72によってミシンベッド部2aにY軸方向に沿って移動可能且つ昇降可能に支持されている。布押さえ71の昇降動作は、布押さえ用エアシリンダ73により行われ、下降により生地Cを上方から下方に押圧保持し、上昇により生地Cを解放する。
また、布押さえ71のY軸方向移動は、第二の生地用Y軸モータ74を駆動源として行われる。この第二の生地用Y軸モータ74は、パルスモータであり、布押さえ71による生地CのY軸方向移動量は任意に制御することが可能である。
布押さえ機構70は、上記構成により、載置台51上で布押さえ71が保持した生地CをベルトループBの向けられた方向(Y軸方向)に沿った任意の位置に移動位置決めすることができ、「第二の移動機構」として機能することとなる。また、前述した第二の生地用Y軸モータ74は「布送りモータ」として機能することとなる。
【0031】
(ベルトループ付けミシンの制御系)
制御手段80は、各種の処理及び制御を行うCPU81と、ベルトループ付けミシン10の動作制御を実行する動作制御プログラム及び設定情報が書き込まれているROM82と、CPU81の処理において各種データを格納するワークエリアとしてのRAM83と、各種の設定データを記録するEEPROM84とを備えている。
また、制御手段80は、各種の制御対象及びエンコーダ55,56とCPU81とを接続するためのI/Oインターフェイス85を備えている。即ち、かかるI/Oインターフェイス85を介してミシンモータ13,クランプ用エアシリンダ33,クランプ用X軸モータ35,クランプ用Y軸モータ36,クランプ用Z軸エアシリンダ37,ロータリーアクチュエータ41,フォーク用エアシリンダ40,緩めエアシリンダ67,緩めモータ68,布押さえ用エアシリンダ73,第二の生地用Y軸モータ74,切断用エアシリンダ64,繰り出しモータ62,生地用X軸モータ53,生地用Y軸モータ54,ループ押さえ用エアシリンダ57,エンコーダ55及び56がCPU81に接続される。なお、各エアシリンダ33,37,40,42,57,64,73は、いずれも当該各エアシリンダに対する吸排気を行う図示しない電磁バルブを介してその作動が制御されている。
【0032】
また、上述したように、制御手段80には、各種の設定を入力するためのタッチパネル87と設定情報の表示を行う表示パネル88を備える操作手段86と、縫製の開始を入力するスタートスイッチ89とがI/Oインターフェイス85を介して接続されている。
ベルトループ付けミシン10では、ベルトループの縫着の形状として、両端部を互いに内側に折り返す最も基本形状の他に、ベルトループの一端部を略Z字状に折りたたんで縫いつける縫着形状がある。
かかる縫着形状(以下、Z形状とする)の縫い付けを行う場合には、図4に示すように、複数のパラメータの設定が必要であり、操作手段86のタッチパネル87によりその入力が行われる。ここでパラメータについて説明する。
Z形状の縫いは、縫い目L1,L2,L3,L4の順番で形成される。これに対してパラメータとして、縫い目L1−L2の距離m1、縫い目L2−L3の距離m2、縫い目L3−L4の距離m3の値が操作手段86により設定される。
また、この他に、Z形状の縫い付けを行うためのパラメータとして、各縫い目L1〜L4について、いずれの縫いパターン(縫いの種類のこと、例えば、縫い目ごとに、閂止め縫い、しつけ縫い等のいずれで行うかを選択して設定する)で縫いを行うかの設定、ベルトループBの長さ、幅等の設定も操作手段86により行われる。
これらのパラメータの設定内容は、EEPROM84に記録され、縫製制御の際に参照される。なお、選択された各縫い目の縫いパターンを形成するために必要となる制御パラメータ(閂止め縫いやしつけ縫いを行うために必要となる一針ごと動作量や動作の順番等)は規定のパラメータが予めROM82又はEEPROM84に設定されており、その値が参照されることとなる。
【0033】
なお、設定パラメータである距離m2はベルトループ長手方向における前記折り目縫い目の位置に対する前記重ね縫い目の位置の距離であり、本願発明における「重ね縫い目位置補正制御(後述)」における「設定補正量」に相当する。従って、操作手段86は、「補正量設定手段」として機能することとなる。
また、上記縫い目L2は、ベルトループBを折り返すための縫い目であり、「折り目縫い目」に相当する。従って、縫い目L2について縫いパターンの設定を行う操作手段86は、「パターン設定手段」として機能することとなる。
【0034】
なお、上述した各種のパラメータは一例に過ぎず、距離m2及び縫い目L2の縫いパターン以外のパラメータの設定については必須ではない。これらについては、例えば、固定値が予め定められており、それが参照されるものとしても良い。また、距離m2の数値そのものを設定するのはなく、加減乗除の演算により距離m2を算出することが可能となる他の距離を設定することにより実質的に距離m2の取得を可能としても良い(例えば、縫い目L1−L2の距離と縫い目L1−L3の距離とを設定するようにすれば、これらの値の減算処理により距離m2を求めることができる)。
【0035】
ここで、上述したZ形状の縫い付けの縫製を例に、制御手段80のCPU81が実行する特筆すべきいくつかの制御について説明する。
【0036】
[1]重ね縫い目形成制御
CPU81は、所定のプログラムの実行により、ループクランプ31が挟持するベルトループBの幅方向に折り目となる折り目縫いとしての縫い目L2を形成し(図7(C)参照)、当該縫い目L2から折り返される方向にクランプ機構30のクランプ用Y軸モータ36によりループクランプ31を移動させ(図8(A)参照)、折り返されたベルトループBにより隠れた状態となる縫い目L2の上から重ね縫い目としての縫い目L3を形成する(図9(A)参照)。
かかる制御は、ベルトループ付けミシン10がフォーク部材38を一つのみ搭載する構成としているため、ベルトループBの一端については当該端部をフォークで折り返してその上から縫い目を形成することが可能だが、他端についてはフォーク部材38で折り返すことが困難であるという問題を解決するために、他端についてはループクランプ31を利用して折り返しを実現するというものである。
つまり、縫い目L2を折り目としてベルトループBを折り返すようにループクランプ31が引っ張ることでベルトループBを折り返し、折り返しにより二重となった折り返し端部をさらに上から縫い目L3により縫い付けることで、フォーク部材38で折り返すことができないベルトループBの他端部の折り返しも実現している。
【0037】
[2]重ね縫い目位置補正制御
重ね縫い目位置補正制御は、上述した重ね縫い目形成制御の実行に伴って実行される制御である。CPU81は、所定のプログラムの実行により、重ね縫い目形成制御における重ね縫い目としての縫い目L3の形成の際に、布押さえ機構70の第二の生地用Y軸モータ74を制御して設定補正量としての距離m2だけ縫い目L2に対して縫い目L3の形成位置を補正する制御を行う。
従前は、縫い目位置の切り替えをエアシリンダを駆動源としていたために、定位置での位置切り換えによる縫製しか行うことができなかったが、ベルトループ付けミシン10は、布押さえ71を介してY軸方向について第二の生地用Y軸モータ74により任意に生地Cを移動させることができるので、折り目縫い目L2に重ねて縫いを行う重ね縫い目L3の縫い位置を、設定距離m2(設定補正量)に応じてY軸方向についてずらすことを可能としている。
なお、縫い目L3は縫い目L2よりも内側(縫い目L1寄り)に形成しているが、これに限らず、縫い目L3は縫い目L2よりも外側に形成するように補正値を設定しても良い。
【0038】
[3]ベルトループ戻し制御
ベルトループ戻し制御は、上述した重ね縫い目形成制御の実行に伴って実行される制御である。CPU81は、所定のプログラムの実行により、重ね縫い目形成制御における折り目縫い目L2を形成後、ベルトループBが折り返される方向にループクランプ31を移動させ、停止する際に、引っ張られて伸びた状態のベルトループBが弛むように幾分逆方向にループクランプ31を戻すようにクランプ機構30のクランプ用Y軸モータ36の制御を行う。
これにより、ベルトループBを介して生地Cがループクランプ31に引っ張られた状態を解消し、生地Cが引きつった状態でベルトループBが縫着されたり、各縫い目位置が引っ張りによって狂いを生じたりする不都合の解消を図っている。
【0039】
(ベルトループ付けミシン)
ベルトループ付けミシン10の縫製動作を、前述したZ形状の縫い付けを行う場合を例に、図5に示すフローチャートと図6から図の動作説明図とに基づいて詳細に説明することとする。以下の動作制御は、全て制御手段80のCPU81の制御により実行される。
まず、縫製の前提として、クランプ供給機構60において、繰り出しモータ62がベルトループB一つ分の長さで無端のベルトループを繰り出すと共に切断用エアシリンダ64を作動させてベルトループB一つ分の切断が行われ、受け取り位置で待機しているクランプ機構30がベルトループを受け取り、クランプ用エアシリンダ33の作動によりループクランプ31においてベルトループBを挟持する。
【0040】
そして、クランプ用X軸モータ35を駆動させて、ベルトループBの第一縫製位置である縫い目L1の形成位置が針落ち位置の下となるように位置決めを行う(ステップS1:図6(A))。
そして、ループ押さえ用エアシリンダ57の作動によりループ押さえ52を下降させ、ベルトループBの一端部を押圧保持し、ループクランプ31はクランプ用Y軸モータ36の駆動により手前側に移動する(ステップS2:図6(B))。これにより、ベルトループBはループクランプ31に対して所定長さだけ奥側に引き出されることとなる。
そして、ミシンモータ13が駆動されて縫製が実行され、縫い目L1が形成される(ステップS3)。この時、縫い目L1について予め選択されていた縫い目パターンで縫い目が形成されるように、生地用X軸モータ53及びY軸モータ54が制御され、一針ごとに縫いパターンに応じた針落ち位置となるように載置台51及びループ押さえ52が位置決めされる。なお、ここの動作例では、縫い目L1,L3,L4は閂止め縫いで形成され、縫い目L2はしつけ縫いで形成されるものとする。
【0041】
縫い目L1が形成されると、ループ押さえ用エアシリンダ57の作動によりループ押さえ52が上昇し(図6(C))、その下をくぐるように、ループクランプ31はクランプ用Y軸モータ36の駆動により奥側に移動する。これにより、ベルトループBは縫い目L1を折り目として上側に折り返された状態となる(ステップS4:図7(A))。また、クランプ用Y軸モータ36の駆動に伴い、第二の生地用Y軸モータ74が駆動されて、載置台51に対して生地C及び布押さえ71が前述した設定値である距離m1だけ手前側に移動する。これにより、縫い目L2の形成位置が針落ち位置となるようにベルトループBが位置決めされる。
【0042】
そして、ループ押さえ用エアシリンダ57の作動によりループ押さえ52を下降させてベルトループBを押圧保持し(ステップS5)、ミシンモータ13が駆動されて縫製が実行され、縫い目L2が形成される(ステップS6:図7(B))。この時には、縫い目L2に選択されていたしつけ縫いで縫い目が形成されるように、生地用X軸モータ53及びY軸モータ54が制御される。
【0043】
縫い目L2が形成されると、ループ押さえ用エアシリンダ57の作動によりループ押さえ52が上昇し(図7(C))、その下をくぐるように、ループクランプ31はクランプ用Y軸モータ36の駆動により手前側に移動する。これにより、ベルトループBは縫い目L2を折り目として上側に折り返された状態となる(ステップS7:図8(A))。
そして、ベルトループ戻し制御が実行され、手前側に移動したループクランプ31はクランプ用Y軸モータ36の駆動により奥側に僅かに戻り移動動作を行い、これにより、ベルトループBが手前側に引っ張られた状態から幾分弛んだ状態とされる。
【0044】
次いで、第二の生地用Y軸モータ74が駆動されて、載置台51に対して生地C及び布押さえ71が前述した設定補正量である距離m2だけ奥側に移動する。これにより、縫い目L3の形成位置が針落ち位置となるようにベルトループBが位置決めされる(ステップS8:図8(B))。
そして、ループ押さえ用エアシリンダ57の作動によりループ押さえ52を下降させてベルトループBを押圧保持し(ステップS9)、ミシンモータ13が駆動されて縫製が実行され、重ね縫い目としての縫い目L3が形成される(ステップS10:図8(C))。この時には、設定により閂止め縫いで縫い目L3が形成されるように、生地用X軸モータ53及びY軸モータ54が制御される。
なお、ステップS5から上記ステップS10までの処理が、前述した重ね縫い目形成制御に基づく処理に相当し、この中で行われるステップS8の処理が重ね縫い目位置補正制御に相当する。
【0045】
縫い目L3が形成されると、ループ押さえ用エアシリンダ57の作動によりループ押さえ52が上昇し(図9(A))、第二の生地用Y軸モータ74が駆動されて、載置台51に対して生地C及び布押さえ71が前述した距離m3だけ奥側に移動する。このとき、同時にループクランプ31も生地Cに追従するようにクランプ用Y軸モータ36の駆動により奥側に移動される。但し、ループクランプ31の移動量は生地Cの移動量よりも少なく、その結果、ベルトループBがループクランプ31から奥側に引き出され、手前側の端部が僅かに挟持された状態となる。さらに、フォーク用エアシリンダ40の作動によりフォーク部材38が前進し、ループクランプ31の奥側においてフォーク部材38はその先端の二叉部にベルトループBを挿通させた状態で待機する(ステップS11:図9(B))。
そして、ロータリーアクチュエータ41の駆動によりフォーク部材38の回転動作が行われ、ループクランプ31に挟持されていたベルトループBの端部が引き抜かれると共にフォーク部材38に巻き付けられるようにベルトループBの端部が所定方向の折り返される(ステップS12:図9(C))。
そして、ループ押さえ用エアシリンダ57の作動によりループ押さえ52を下降させてベルトループBを押圧保持し(ステップS13:図10(A))、フォーク用エアシリンダ40の作動によりフォーク部材38が後退し、クランプ用X軸モータ35の駆動によりループクランプ31も退避位置に後退する(ステップS14:図10(B))。
かかる状態で、ミシンモータ13が駆動されて縫製が実行され、縫い目L4が形成される。そして、縫い目L4が形成されると、ループ押さえ用エアシリンダ57の作動によりループ押さえ52が上昇し、ベルトループBのZ形状の縫着が完了する(ステップS15:図10(C))。
【0046】
(実施形態の効果)
ベルトループ付けミシン10は、第二の生地用Y軸モータ74により、縫い目ごとにY軸方向について任意の位置に形成することができるので、重ね縫い目形成制御の際に、第二の生地用Y軸モータ74により、設定補正量(距離m2)に応じて隠し縫い目L2に対して重ね縫い目L3の形成位置を補正する制御を行うことができる。従って、図11(A)と(B)及び図11(C)と(D)を比較すると分かるように、ベルトループBの折り返し端部から縫い目L3までの幅Mを任意に変えて縫製することが可能となり、ベルトループBの縫い目についてデザイン上の要求に応えることができ、デザイン性の高い縫製の可能なベルトループ付けミシンを提供することが可能となる。
【0047】
さらに、第二の生地用Y軸モータ74により、設定補正量に応じて重ね縫い目L3の形成位置を補正することができるので、図12に示すように、ベルトループBの厚さが異なる場合でも、薄手の場合には、重ね縫い目L3を内側(ベルトループの長手方向中間寄り)に位置補正し、厚手の場合には、重ね縫い目L3を外側(ベルトループの長手方向端部寄り)に位置補正することで、折り返し端部から縫い目L3までの幅Mの均一化を図ることが可能となる。
【0048】
また、薄手の生地C又はベルトループBに対して、折り目縫い目L2に重ねて重ね縫い目L3を形成する場合に、折り返しの引っ張りにより、ベルトループBの折り返し端部の位置がずれて重ね縫い目L3がベルトループBに乗らなくなるような場合でも、図13に示すように、ベルトループBの内側に重ね縫い目L3が形成されるように設定補正量を設定することにより、ベルトループBの上に正確に重ね縫い目を形成することが可能となる。
また、薄手の生地C又はベルトループBに対して、折り目縫い目L2に重ねて重ね縫い目L3を形成すると、重ねて多くの針落ちが行われることにより、生地C又はベルトループBが痛んでしまう場合があるが、そのような場合には、重ね縫い目L3を折り目縫い目L2からずらして形成することができるので、生地CやベルトループBの保護を図ることが可能となる。
さらに、同じ位置に縫い目が重ねて形成されることで縫い目部分の盛り上がりが大きくなったり硬くなったりする場合があるが、これも上記と同様に、重ね縫い目L3を折り目縫い目L2からずらして形成することができるので、盛り上がりの発生や硬くなる部分の発生を抑止することが可能となる。
【0049】
また、ベルトループ付けミシン10は、操作手段86が、設定補正量を含む各縫い目間距離の値を任意に設定することができるので、必要に応じて縫い目位置の任意の補正が容易に実行することが可能となる。
さらに、操作手段86により、折り目縫い目L2を含む各縫い目について、縫いパターンを選択設定することができるので、例えば、折り目縫い目などのように折り返しのためにのみ縫い目を形成する場合には、縫いの時間短縮のためにすぐに縫うことが可能なしつけ縫いを選択し、その他のベルトループの縫着のための縫い目は縫着強度に優れる閂止め縫いを選択するなど、縫い目の種類に応じて適切な縫いパターンを選択することが可能となる。
【0050】
また、ベルトループ付けミシン10は、制御手段80がベルトループ戻し制御を行うので、ループクランプ31によるベルトループBの引っ張りにより、生地Cが引きつった状態のまま縫いが行われたり、ループクランプ31によるベルトループBの引っ張りにより、縫い目形位置がずれたりする事態を回避でき、縫い品質の向上を図ることが可能となる。
【0051】
(その他)
上記ベルトループ付けミシン10では、Z形状のベルトループBの縫着のみを例示したが、図14(A)に示すような両端部を内側に折り返す一般的なベルトループの縫着や図14(B)に示すようなベルトループBの一端部を縫着した上で、長めの折り返し端部を確保した上で折り目縫い目で折り返し、その上から重ね縫い目を形成する、いわゆるセミクラッシック仕様の縫着も行うことが可能である。これらの縫いの種類は、操作手段86で縫いの種類の選択を行うことで、各種の縫いの種類に応じた工程で縫製が実行される。
また、図14(A)及びや図14(B)に示す縫いの場合にも、その一端部の折り返しの際には、前述した重ね縫い目形成制御を実行しても良い。また、その際には、重ね縫い目位置補正制御も実行しても良い。
また、図14(A)及びや図14(B)に示す縫いの場合にも、折り目縫い目の形成後にループクランプ31でベルトループの端部を折り返し方向に引っ張る際には、ベルトループ戻し制御を実行しても良い。
【符号の説明】
【0052】
10 ベルトループ付けミシン
11 縫い針
30 クランプ機構(クランプ移動機構)
31 ループクランプ
38 フォーク部材
50 第一の移動機構
51 載置台
52 ループ押さえ
70 布押さえ機構(第二の移動機構)
71 布押さえ
74 第二の生地用Y軸モータ(布送りモータ)
B ベルトループ
C 生地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫い針を上下動させる針上下動機構と、
長手方向が所定方向に向けられた状態の前記ベルトループを挟持し且つ解放可能なループクランプと、
下降動作により前記ベルトループを押さえつけるループ押さえと、
前記ベルトループの縫着が行われる布地が載置される載置台と、
前記布地を保持する布押さえと、
前記縫い針に対して前記載置台の載置面に沿った任意の位置に前記ループ押さえ及び載置台を移動させる第一の移動機構と、
前記布押さえを介して前記ベルトループの長手方向に沿って前記布地を移動させる第二の移動機構と、
前記ループクランプを前記載置台の載置面に沿った任意の位置に移動させるクランプ移動機構と、
先端に形成された二叉部の間に前記ベルトループを介挿させる単一のフォーク部材を回転させて前記ベルトループを折曲させる折曲機構と、
を備えたベルトループを布地に縫着するベルトループ付けミシンにおいて、
前記第二の移動機構の駆動源を、任意の動作量に制御可能な布送りモータとし、
前記ループクランプが挟持するベルトループの幅方向に折り目となる折り目縫い目を形成し、当該折り目縫い目から折り返される方向に前記クランプ移動機構により前記ループクランプを移動させ、折り返されたベルトループにより隠れた状態となる折り目縫い目の上から重ね縫い目を形成する重ね縫い目形成制御と、
前記重ね縫い目形成制御の実行の際に、ベルトループ長手方向における前記折り目縫い目の位置に対する前記重ね縫い目の位置の距離である補正量に応じて、前記第二の移動機構の布送りモータを制御して、前記重ね縫い目の形成位置を補正する制御を行う重ね縫い目位置補正制御とを行うことを特徴とするベルトループ付けミシン。
【請求項2】
前記設定補正量の値を設定する補正量設定手段を備えることを特徴とする請求項1記載のベルトループ付けミシン。
【請求項3】
前記折り目縫い目の縫いパターンを設定するパターン設定手段を備えることを特徴とする請求項1又は2記載のベルトループ付けミシン。
【請求項4】
前記制御手段は、前記重ね縫い目形成制御において、前記折り目縫い目から折り返される方向に前記クランプ移動機構により前記ループクランプを移動させた後に、逆方向への移動により布地の引っ張りを戻す動作を行わせることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のベルトループ付けミシン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−246742(P2010−246742A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99665(P2009−99665)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】