説明

ベルト式無段変速機の潤滑装置

【課題】 安定した潤滑油供給を達成可能なベルト式無段変速機の潤滑装置を提供すること。
【解決手段】 溝幅を変更可能なプライマリプーリ及びセカンダリプーリと、前記各プーリに掛け渡されたベルトとを有し、潤滑油を噴射位置から噴射して前記プーリと前記ベルトとの間に供給するベルト式無段変速機の潤滑装置であって、軸方向に沿って配策され前記噴射位置の周方向に開口するパイプ側開口が形成されたパイプ端部を有し、潤滑油を前記パイプ側開口まで供給可能なパイプと、前記パイプ端部に取り付けられ、軸方向に対して斜めに開口するスリットが形成されると共に、前記プーリの軸方向移動に応じて軸方向に移動するキャップ部材と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト式無段変速機のベルト部分を潤滑する潤滑装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト式無段変速機では、一般に、プライマリプーリとセカンダリプーリの間にあるベルトが移動し、各プーリと接触を開始する位置である噛み込み位置や、各プーリに巻きついていたベルトがプーリから離れる位置である噛み出し位置での発熱量が大きい。よって、ベルトを冷却する場合、上記噛み込み位置もしくは噛み出し位置等に油を噴射すると冷却効率が高い。しかし、これら噛み込み位置もしくは噛み出し位置は変速比が変更されると、その位置も変化することから、特許文献1に記載の技術では、常時、ベルトの噛み込み位置に向けて潤滑油が供給されるように、潤滑油ノズルの方向を変更し、冷却効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−95155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、プーリの軸方向移動を利用して回動部材を回動させるため、以下に示す問題があった。すなわち、特許文献1では、プーリの軸方向直進運動を回転運動に変換する溝を有するため、潤滑油ノズルに潤滑油を供給するためのパイプ延在方向に対してスラスト力とラジアル力が発生する。パイプは、ノズルの位置まで配策する過程で屈曲部等を有する場合は、ノズル側からパイプにスラスト力が作用すると、パイプの倒れ等によってノズル接続位置がずれてしまい、ラジアル力の作用によってもノズル接続位置がずれるため、ノズルの位置も一緒にずれてしまう。よって、適切な位置に潤滑油を噴射できず、冷却効率が低下するという問題があった。
本発明は、上記課題に着目してなされたもので、安定した潤滑油供給を達成可能なベルト式無段変速機の潤滑装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、溝幅を変更可能なプライマリプーリ及びセカンダリプーリと、前記各プーリに掛け渡されたベルトとを有し、潤滑油を噴射位置から噴射して前記プーリと前記ベルトとの間に供給するベルト式無段変速機の潤滑装置であって、軸方向に沿って配策され前記噴射位置の周方向に開口するパイプ側開口が形成されたパイプ端部を有し、潤滑油を前記パイプ側開口まで供給可能なパイプと、前記パイプ端部に取り付けられ、軸方向に対して斜めに開口するスリットが形成されると共に、前記プーリの軸方向移動に応じて軸方向に移動するキャップ部材と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
よって、変速に伴ってプーリが軸方向に移動すると、キャップ部材も軸方向に移動する。このとき、スリットが軸方向に対して斜めに開口しているため、軸方向に移動するだけでパイプ側開口とスリットとが径方向から見て重なる領域である噴射口を周方向に移動できる。すなわち、パイプとキャップ部材とが軸方向に相対移動するだけで潤滑油の周方向への噴射方向を変更することができ、スラスト力やラジアル力の発生を回避して安定した潤滑油の供給を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1のベルト式無段変速機の潤滑装置の径方向から見た構成を表す概略図である。
【図2】実施例1のベルト式無段変速機の潤滑装置の軸方向から見た構成を表す概略図である。
【図3】ベルトとプーリとの間の発熱量を表す特性図である。
【図4】実施例1の潤滑ユニットにおけるパイプ端部を表す側面図である。
【図5】実施例1の潤滑ユニットにおけるキャップ部材を表す部分断面図である。
【図6】実施例1の潤滑ユニットにおけるキャップ部材のストローク量と開口幅との関係を表す図である。
【図7】実施例1の潤滑ユニットにおける潤滑油噴射状態を表す概略図である。
【図8】図8は実施例1の潤滑ユニットにおける潤滑油噴射状態の推移を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】
図1は実施例1のベルト式無段変速機の潤滑装置の径方向から見た構成を表す概略図である。ベルト式無段変速機は、図外のエンジンから出力されたトルクをプライマリプーリ1に伝達し、ベルト4を介してセカンダリプーリ2に伝達する。セカンダリプーリ2は図外のデファレンシャルギア等を介して駆動輪にトルクを伝達する。プライマリプーリ1は、シャフトと一体の固定プーリ11と、軸方向に移動してプーリ溝幅を変更する可動プーリ12とを有する。同様に、セカンダリプーリ2は、シャフトと一体の固定プーリ21と、軸方向に移動してプーリ溝幅を変更する可動プーリ22とを有する。ベルト4は複数の板状エレメント41をその板厚方向に多数重ね無端バンドにより束ねた構成であり、プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2との間に掛け渡され、圧縮コマ送り方式によってトルク伝達を行う。
【0009】
潤滑ユニット3は、図外のコントロールバルブから送出された潤滑油を供給するパイプ31と、パイプ31の先端に接続されたパイプ端部32と、パイプ端部32を覆うように取り付けられたキャップ部材33とを有する。パイプ31は可動プーリ12と対向する側、すなわち固定プーリ11側からプーリ溝内に向けて延在され、キャップ部材33は可動プーリ12側から固定プーリ11側に向けて挿入されている。可動プーリ12には、プーリ溝幅を検出するストロークセンサ34が取り付けられており、キャップ部材33は、このストロークセンサ34に接続されている。尚、ストロークセンサ34はプーリ溝幅を検出することで実変速比を検出するものであるが、キャップ部材33と可動プーリ12とを接続する部材を別途装着してもよく特に限定しない。
【0010】
図2は実施例1のベルト式無段変速機の潤滑装置の軸方向から見た構成を表す概略図である。潤滑ユニット3は、プライマリプーリ1とセカンダリプーリ2の間であって、ベルト4の内周側に配置されている。ここで、ベルト4は変速比によってベルトが通過する軌道(以下、ベルト軌道)が変化する。具体的には、変速比がLow側のときは、プライマリプーリ1の溝幅が広く、セカンダリプーリ2の溝幅が狭いため、プライマリプーリ1のベルト巻きつき径は小さく(図2中、11,12(Low)参照)、セカンダリプーリ2のベルト巻きつき径は大きい(図2中、21,22(Low)参照)。一方、変速比がHigh側のときは、プライマリプーリ1の溝幅が狭く、セカンダリプーリ2の溝幅が広いため、プライマリプーリ1のベルト巻きつき径は大きく(図2中、11,12(High)参照)、セカンダリプーリ2のベルト巻きつき径は小さい(図2中、21,22(High)参照)。このとき、いずれの変速比においてもベルト軌道と干渉しない位置に潤滑ユニット3が取り付けられており、この位置を噴射位置としている。
【0011】
図3はベルトとプーリとの間の発熱量を表す特性図である。この例は、変速比がHigh側のときのベルト軌道上の発熱量を表しており、プライマリプーリ1は大径側プーリであり、セカンダリプーリ2は小径側プーリである。ベルト4がセカンダリプーリ2からプライマリプーリ1に送出されベルト4とプーリとが非接触状態にある位置を位置(1)とし、ベルト4がプライマリプーリ1と接触を開始する位置である噛み込み位置を位置(2)とし、ベルト4がプライマリプーリ1に巻きついている領域の略中間地点を位置(3)とし、ベルト4がプライマリプーリ1から離れる位置である噛み出し位置を位置(4)とし、ベルト4がプライマリプーリ1からセカンダリプーリ2に送出されベルト4とプーリとが非接触状態にある位置を位置(5)とし、ベルト4がセカンダリプーリ2と接触を開始する位置である噛み込み位置を位置(6)とし、ベルト4がセカンダリプーリ2に巻きついている領域の略中間地点を位置(7)とし、ベルト4がセカンダリプーリ2から離れる位置である噛み出し位置を位置(8)とする。
【0012】
このとき、位置(2)や位置(6)の噛み込み位置、及び位置(4)や位置(8)の噛み出し位置の発熱量が大きい。そして、この場合、特に発熱量が大きいのは位置(6)であることが分かる。言い換えると、小径側プーリに対する噛み込み位置の発熱量が全体の中で最も発熱量が高い。この関係は、変速比がLow側のとき、すなわちプライマリプーリ1が小径側プーリとなり、セカンダリプーリ2が大径側プーリとなる場合には、位置(2)が最も発熱量が大きくなることを意味している。
【0013】
そこで、実施例1では、あらゆる変速比の場合において効率的に冷却するために、位置(2)及び位置(6)に対し、常時、潤滑油を供給することとした。すなわち、図2に示すように、潤滑ユニット3から位置(2)と位置(6)の両方に潤滑油を噴射するものである。尚、変速比がLow側のときは図2の太い点線矢印Bで示す位置が噛み込み位置となり、変速比がHigh側のときは図2の太い実線矢印Aで示す位置が噛み込み位置に変化するため、変速比に応じて噴射方向を変更することとした。尚、発熱量は位置(4)や位置(8)の噛み出し位置においても大きいことから、これらの箇所にも噴射するように構成してもよい。
【0014】
図4は実施例1の潤滑ユニットにおけるパイプ端部を表す側面図である。パイプ端部32は、パイプ31に接続され、噴射位置において軸方向に沿って配策される円筒部32dと、円筒部32dの端部を閉塞する閉塞部32cと、円筒部32dの外周に全周に亘って等間隔で形成されたパイプ側開口32aと、円筒部32dと閉塞部32cとを繋ぐ接続部32bとを有する。実施例1では8本の接続部32bが周方向に均等に配置された構成を示すが、必要な強度を確保できれば更に少ない本数でもよいし、均等に配置しなくても構わない。また、更に細い接続部32bを更に多く備えていてもよく、特に限定しない。パイプ31から送られた潤滑油は、パイプ端部32の延在方向に沿って流れた後、閉塞部32cにぶつかり、パイプ側開口32aから径方向に噴射する。尚、パイプ側開口部32aを上下に挟むようにしてシール部材を設けてもよい。これにより、パイプ端部32の外周面とキャップ部材33の内周面との隙間から潤滑油が漏れるのを抑制することができる。
【0015】
図5は実施例1の潤滑ユニットにおけるキャップ部材を表す部分断面図である。キャップ部材33は、パイプ端部32の円筒部32d外周によって支持されつつ軸方向に摺動する円筒状のガイド部33cと、ガイド部33cと同径円筒状の噴射方向規定部33aと、噴射方向規定部33aの端部を閉塞する閉塞部33bとを有する。噴射方向規定部33aの外周面には、パイプ側開口32aの軸方向長さよりも長く、かつ、軸方向に対して斜めに開口するプライマリ側スリット33a1及びセカンダリ側スリット33a2が形成されている。各スリット33a1,33a2の傾斜状態は、変速比に応じて変化する噛み込み位置に応じた開口位置となるように設定されている。
【0016】
プライマリ側スリット33a1は、噴射方向規定部33aの周方向における開口幅が閉塞部33b側の端部において最も広く、ガイド部33c側に移動するに連れて徐々に狭くなるように形成されている。同様に、セカンダリ側スリット33a2は、噴射方向規定部33aの周方向における開口幅が閉塞部33b側の端部において最も狭く、ガイド部33c側に移動するに連れて徐々に広くなるように形成されている。
【0017】
図6は実施例1の潤滑ユニットにおけるキャップ部材のストローク量と開口幅との関係を表す図である。ストローク量はプーリ溝幅の変更に伴って生じる値であることから変速比を意味している。プライマリプーリ1の溝幅最大位置を基準位置とし、この基準位置からのキャップ部材33の軸方向移動量をストローク量と定義する。ストローク量が小さいとき、すなわち、変速比がLow側のときは、プライマリ側スリット33a1の開口幅が大きく、セカンダリ側スリット33a2の開口幅が小さい。一方、ストローク量が大きいとき、すなわち、変速比がHigh側のときは、プライマリ側スリット33a1の開口幅が小さく、セカンダリ側スリット33a2の開口幅が大きい。このとき、それぞれの変速比における開口幅の合計は、常時一定となるように形成されている。
【0018】
図7は実施例1の潤滑ユニットにおける潤滑油噴射状態を表す概略図である。パイプ31から供給された潤滑油は、プライマリ側スリット33a1とパイプ側開口32aとが径方向から見て重なる領域と、セカンダリ側スリット33a2とパイプ側開口32aとが径方向から見て重なる領域とを噴射口として径方向に噴射される。
図8は実施例1の潤滑ユニットにおける潤滑油噴射状態の推移を表す概略図である。すなわち、変速に伴って可動プーリ12が軸方向に移動すると、キャップ部材33も軸方向に移動する。このとき、各スリット33a1,33a2が軸方向に対して斜めに開口しており、その傾斜状態は、変速比に応じて変化する噛み込み位置に応じた開口位置となるように設定されている。
よって、軸方向に移動するだけでパイプ側開口32aと各スリット33a1,33a2とが径方向から見て重なる領域である噴射口を周方向に移動し、常時、噛み込み位置に向けることができる。これにより、パイプ31とキャップ部材33とが軸方向に相対移動するだけで潤滑油の周方向への噴射方向を変更することができ、スラスト力やラジアル力の発生を回避して安定した潤滑油の供給を達成する。
【0019】
また、パイプ側開口32aの軸方向長さは一定であることから、パイプ側開口32aと各スリット33a1,33a2とが径方向から見て重なる領域である噴射口の面積は各スリット33a1,33a2の開口幅に比例する。ここで、図6に示すように、それぞれの変速比における開口幅の合計は、常時一定となるように形成されていることから、噴射口の面積の合計は、常時一定となるように形成されているのである。これにより、パイプ31から供給される潤滑油が径方向に噴射されるときの噴射圧力を安定化させることができ、噴射口の面積に応じて潤滑油の噴射量を設定することができる。
【0020】
また、ベルト4のプライマリプーリ1への巻きつき半径が、セカンダリプーリ2への巻きつき半径より小さいとき、すなわちLow側のときは、プライマリ側スリット33a1とパイプ側開口32aとが径方向から見て重なる面積(すなわち、プライマリ用の噴射口面積)が、セカンダリ側スリット33a2とパイプ側開口32aとが径方向から見て重なる面積(すなわち、セカンダリ用の噴射口面積)よりも大きい。
同様に、ベルト4のプライマリプーリ1への巻きつき半径が、セカンダリプーリ2への巻きつき半径より大きいとき、すなわちHigh側のときは、プライマリ側スリット33a1とパイプ側開口32aとが径方向から見て重なる面積(プライマリ用の噴射口面積)が、セカンダリ側スリット33a2とパイプ側開口32aとが径方向から見て重なる面積(セカンダリ用の噴射口面積)よりも小さい。
【0021】
すなわち、変速比がLow側のときには位置(2)における発熱量が最大となることから、この部分に多くの潤滑油を噴射することができ、一方、変速比がHigh側のときには位置(6)における発熱量が最大となることから、この部分に多くの潤滑油を噴射することができるため、発熱量の大きな場所により多くの潤滑油を供給することができる。
【0022】
以上説明したように、実施例1にあっては、下記に列挙する作用効果を得ることができる。
(1)溝幅を変更可能なプライマリプーリ1及びセカンダリプーリ2と、各プーリ1,2に掛け渡されたベルト4とを有し、潤滑油を噴射位置から噴射してプーリ1,2とベルト4との間に供給する潤滑ユニット3(ベルト式無段変速機の潤滑装置)であって、軸方向に沿って配策され噴射位置の周方向に開口するパイプ側開口32aが形成されたパイプ端部32を有し、潤滑油をパイプ側開口32aまで供給可能なパイプ31と、パイプ端部32に取り付けられ、軸方向に対して斜めに開口するプライマリ側及びセカンダリ側スリット33a1,33a2が形成されると共に、可動プーリ12(プーリ)の軸方向移動に応じて軸方向に移動するキャップ部材33と、を備えた。
よって、変速に伴って可動プーリ12が軸方向に移動すると、キャップ部材33も軸方向に移動する。このとき、プライマリ側及びセカンダリ側スリット33a1,33aが軸方向に対して斜めに開口しているため、軸方向に移動するだけでパイプ側開口32aとプライマリ側及びセカンダリ側スリット33a1,33aとが径方向から見て重なる領域である噴射口を周方向に移動できる。すなわち、パイプ31とキャップ部材33とが軸方向に相対移動するだけで潤滑油の周方向への噴射方向を変更することができ、スラスト力やラジアル力の発生を回避して安定した潤滑油の供給を達成することができる。
【0023】
(2)スリットは、プライマリプーリ側に潤滑油を供給するプライマリ側スリット33a1と、セカンダリプーリ側に潤滑油を供給するセカンダリ側スリット33a2とから構成され、ベルト4のプライマリプーリ1への巻きつき半径が、セカンダリプーリ2への巻きつき半径より小さいときは、プライマリ側スリット33a1とパイプ側開口32aとが径方向から見て重なる面積が、セカンダリ側スリット33a2とパイプ側開口32aとが径方向から見て重なる面積よりも大きく、ベルト4のプライマリプーリ1への巻きつき半径が、セカンダリプーリ2への巻きつき半径より大きいときは、プライマリ側スリット33a1とパイプ側開口32aとが径方向から見て重なる面積が、セカンダリ側スリット33a2とパイプ側開口32aとが径方向から見て重なる面積よりも小さい。
すなわち、変速比がLow側のときには位置(2)における発熱量が最大となることから、この部分に多くの潤滑油を噴射することができ、一方、変速比がHigh側のときには位置(6)における発熱量が最大となることから、この部分に多くの潤滑油を噴射することができるため、発熱量の大きな場所により多くの潤滑油を供給することができる。
【0024】
(3)プライマリ側スリット33a1とパイプ側開口32aとが径方向から見て重なる面積と、セカンダリ側スリット33a2とパイプ側開口32aとが径方向から見て重なる面積との和は、変速比によらず一定である。
これにより、パイプ31から供給される潤滑油が径方向に噴射されるときの噴射圧力を安定化させることができ、噴射口の面積に応じて潤滑油の噴射量を設定することができる。
【0025】
以上、実施例1について説明したが、本発明は上記構成に限らず、他の構成をとっても本発明に含まれる。例えば、実施例1ではキャップ部材33を可動プーリ12に接続したが、可動プーリ22に接続してもよい。また、パイプ31とパイプ端部32とを別体で構成した例を示したが、パイプ31とパイプ端部32は一体で構成してもよい。
【0026】
また、キャップ部材33の外周径よりもガイド部33cと噴射方向規定部33aの外周径のほうが大きくなるように構成したが、スリットに必要とされる傾斜が確保できる限り外周径は同径であっても構わない。また、キャップ部材において、スリットの角度や開口面積を変更したものを別途用意するようにしてもよい。この場合、キャップ部材を変更するだけで、潤滑油量や噴射角度を変更することができ、レシオカバレッジやレイアウトの関係で潤滑油の必要な噴射角度が異なる変速機であっても適用することができる。
【符号の説明】
【0027】
1 プライマリプーリ
2 セカンダリプーリ
3 潤滑ユニット
4 ベルト
12 可動プーリ
21 固定プーリ
22 可動プーリ
31 パイプ
32 パイプ端部
32a パイプ側開口
33 キャップ部材
33a 噴射方向規定部
33a1 プライマリ側スリット
33a2 セカンダリ側スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝幅を変更可能なプライマリプーリ及びセカンダリプーリと、前記各プーリに掛け渡されたベルトとを有し、潤滑油を噴射位置から噴射して前記プーリと前記ベルトとの間に供給するベルト式無段変速機の潤滑装置であって、
軸方向に沿って配策され前記噴射位置の周方向に開口するパイプ側開口が形成されたパイプ端部を有し、潤滑油を前記パイプ側開口まで供給可能なパイプと、
前記パイプ端部に取り付けられ、軸方向に対して斜めに開口するスリットが形成されると共に、前記プーリの軸方向移動に応じて軸方向に移動するキャップ部材と、
を備えたことを特徴とするベルト式無段変速機の潤滑装置。
【請求項2】
請求項1に記載のベルト式無段変速機の潤滑装置において、
前記スリットは、前記プライマリプーリ側に潤滑油を供給するプライマリ側スリットと、前記セカンダリプーリ側に潤滑油を供給するセカンダリ側スリットとから構成され、
前記ベルトの前記プライマリプーリへの巻きつき半径が、前記セカンダリプーリへの巻きつき半径より小さいときは、前記プライマリ側スリットと前記パイプ側開口とが径方向から見て重なる面積が、前記セカンダリ側スリットと前記パイプ側開口とが径方向から見て重なる面積よりも大きく、
前記ベルトの前記プライマリプーリへの巻きつき半径が、前記セカンダリプーリへの巻きつき半径より大きいときは、前記プライマリ側スリットと前記パイプ側開口とが径方向から見て重なる面積が、前記セカンダリ側スリットと前記パイプ側開口とが径方向から見て重なる面積よりも小さいことを特徴とするベルト式無段変速機の潤滑装置。
【請求項3】
請求項2に記載のベルト式無段変速機の潤滑装置において、
前記プライマリ側スリットと前記パイプ側開口とが径方向から見て重なる面積と、前記セカンダリ側スリットと前記パイプ側開口とが径方向から見て重なる面積との和は、変速比によらず一定であることを特徴とするベルト式無段変速機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−202511(P2012−202511A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69354(P2011−69354)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】