説明

ベルト駆動装置及び画像形成装置

【課題】簡素な機構で安定的に無端ベルトの蛇行を補正できるようにする。
【解決手段】中間転写ユニット50は、伸縮性を有しない中間転写ベルト51、中間転写ベルトテンションローラ54、軸部材21、片寄り伝達部材25A,25B、及び付勢部材26A,26Bを備える。片寄り伝達部材25A,25Bは、中間転写ベルトテンションローラ54の軸方向101における両端部にそれぞれ隣接するように軸部材21に挿通される。片寄り伝達部材25A,25Bのうち軸方向101に沿った片寄り方向の少なくとも下流側に配置された片寄り伝達部材は、中間転写ベルト51とともに軸部材21に沿って移動する。付勢部材26A,26Bは、作用端部を片寄り伝達部材25A,25Bに軸支されて、基端部を作用端部よりも軸方向101における端部側の所定位置で装置フレーム22A,22Bに軸支される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の張架ローラに張架された無端ベルトを回転させるベルト駆動装置、及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子写真方式の画像形成装置の中には、中間転写ベルト、二次転写ベルト、及び定着ベルト等の無端ベルトを備えるものがある。このような無端ベルトを回転させるベルト駆動装置として、無端ベルトを張架する互いに平行に配置された複数の張架ローラを備え、張架ローラのうちの駆動ローラが駆動することで無端ベルトを回転させるものが知られている。ベルト駆動装置には、製作誤差による張架ローラの外径のばらつきや、取付誤差による張架ローラ間の平行度の狂い等によって、無端ベルトが蛇行するという問題がある。特に画像形成装置では、無端ベルトの蛇行は画質に悪影響を与えるので、無端ベルトの蛇行をなるべく抑制することが重要である。
【0003】
無端ベルトの蛇行を抑制する技術として、無端ベルトの片寄り量をセンサで検出し、検出信号に応じて蛇行補正ローラを移動する電気制御方式のものが知られている。ところが、電気制御方式では、センサ、電気回路、及び駆動モータ等を備えることで、部品点数が多く、構成が複雑化し、コストが高騰するという問題がある。
【0004】
そこで、センサを用いずに機械的機構によって無端ベルトの張力を調整することで、無端ベルトの蛇行を抑制しようとする技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載の従来技術では、テンションローラがアーム部材に軸支される。アーム部材は、無端ベルトの走行方向に沿って回動自在であり、スプリングによって無端ベルトの走行方向下流側へ付勢される。テンションローラの両端側にはベルト当接部が設けられる。無端ベルトは蛇行するとベルト当接部と当接する。無端ベルトとベルト当接部との当接幅が増加するほどベルト当接部が受ける摩擦力が増加するので、この摩擦力とスプリングの付勢力とによってテンションローラが回動し、無端ベルトの張力が増大することが意図されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−162466公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の従来技術では、無端ベルトの張力を増大させるためのアーム部材の回動方向が、無端ベルトの走行方向と同方向なので、無端ベルトの片寄り量が大きくなってベルト当接部が受ける摩擦力が増加すると、無端ベルトの走行力によってアーム部材が頂上を越えて無端ベルトの走行方向の下流側へ倒れてしまい、テンションローラが無端ベルトに与える張力が極端に弱くなり、無端ベルトの張力を調整できなくなる虞がある。アーム部材が頂上を越えないようにするためには、スプリングの強さ、アーム部材の長さ及び質量等、各種の設定が難しく、無端ベルトの蛇行を安定的に補正することが困難である。
【0007】
この発明の目的は、簡素な機構で安定的に無端ベルトの蛇行を補正できるベルト駆動装置、及びこれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のベルト駆動装置は、伸縮性を有しない無端ベルト、複数の張架ローラ、軸部材、片寄り伝達部材、及び付勢部材を備える。張架ローラは、無端ベルトを張架する。張架ローラは、無端ベルトを回転させる駆動ローラ及び無端ベルトの張力を変更自在なテンションローラを含む。軸部材は、テンションローラを回転自在に支持し、無端ベルトの張力を変更する方向に両端部が独立して移動自在である。片寄り伝達部材は、テンションローラの軸方向における両端部にそれぞれ隣接するように軸部材に挿通される。片寄り伝達部材のうち無端ベルトの軸方向に沿った片寄り方向の少なくとも下流側に配置された片寄り伝達部材は、無端ベルトの片寄りにともなって片寄り方向へ移動する。付勢部材は、軸部材を無端ベルトの張力が強くなる方向へ付勢する弾性力を有する。付勢部材は、作用端部を片寄り伝達部材に軸支されて、基端部を作用端部よりも軸方向における端部側の所定位置で装置フレームに軸支される。
【0009】
この構成では、付勢部材は、テンションローラの軸方向において端部側から中央部側へいくほど片寄り伝達部材に近付く方向へ傾斜配置される。無端ベルトが蛇行して軸方向の一方側へ片寄ると、これにともなって、片寄り方向の下流側の片寄り伝達部材が軸方向に沿って移動する。これによって、テンションローラの軸方向に対して片寄り方向の下流側の付勢部材の傾斜角度が垂直に近付き、付勢部材の縮み度合いが大きくなる。このため、テンションローラの軸方向における無端ベルトの片寄り方向下流側において、片寄り伝達部材に対する付勢部材の押圧力が大きくなり、無端ベルトの張力が強くなる。伸縮性を有しない無端ベルトは張力が強い方から弱い方へ移動する性質を有するので、無端ベルトの蛇行が補正される。
【0010】
また、無端ベルトの片寄り量を検出するセンサや電気回路を必要とせず、簡素な機構で無端ベルトの蛇行が補正される。
【0011】
さらに、付勢部材の基端部を中心とした回転方向が、無端ベルトの走行方向と異なるので、無端ベルトの片寄り量が大きくなっても、無端ベルトの走行力によって付勢部材が回転することがない。よって、テンションローラが無端ベルトに与える張力が、意に反して極端に弱くなることがない。このため、安定的に無端ベルトの蛇行を補正することができる。
【0012】
上述の構成において、片寄り方向の上流側に配置された片寄り伝達部材は、無端ベルトの片寄りにともなって片寄り方向へ移動することが好ましい。これによって、片寄り方向の上流側の付勢部材の傾斜角度がテンションローラの軸方向に近付き、付勢部材の縮み度合いが小さくなる。このため、テンションローラの軸方向における無端ベルトの片寄り方向上流側において、片寄り伝達部材に対する付勢部材の押圧力が小さくなり、無端ベルトの張力が弱くなる。伸縮性を有しない無端ベルトは張力が強い方から弱い方へ移動する性質を有するので、無端ベルトの蛇行の補正効果がより大きくなる。
【0013】
また、片寄り伝達部材は、テンションローラよりも拡径された拡径部材を含み、拡径部材は軸部材に回転自在に支持されることが好ましい。拡径部材が回転自在であることで、無端ベルトの拡径部材との摩擦が低減し、無端ベルトの両端部の摩耗が低減する。
【0014】
さらに、片寄り伝達部材は、軸方向における拡径部材の端部側に軸部材を中心とする回転を規制された摺動部材をさらに含み、付勢部材の作用端部は、それぞれの摺動部材に軸支されるように構成することができる。回転を規制された摺動部材に作用端部が軸支されることで、無端ベルトの片寄り量がある値である場合における、付勢部材の配置や縮み度合いが安定し、無端ベルトの張力が安定する。
【0015】
また、付勢部材の基端部を中心とした回転の軌跡を含む面と、テンションローラに圧接する部分の無端ベルトの走行方向とは、直交していることが好ましい。これによって、無端ベルトの片寄り量が大きくなっても、無端ベルトの走行力によって付勢部材が回転することが、より確実に防止される。よって、テンションローラが無端ベルトに与える張力が、意に反して極端に弱くなることがない。このため、安定的に無端ベルトの蛇行を補正することができる。
【0016】
さらに、付勢部材は、片寄り伝達部材に軸支された第1ブラケット、装置フレームに軸支された第2ブラケット、第1ブラケット及び第2ブラケットのうち一方のブラケットに一端部を固定されて他方のブラケットに変位自在に挿通された心棒、第1ブラケットと第2ブラケットとの間に配置された弾性部材を有することが好ましい。弾性部材が心棒に沿って縮むので、縮み度合いが大きくなっても弾性力の方向が歪むことがない。このため、安定的に無端ベルトの蛇行を補正することができる。
【0017】
この発明の画像形成装置は、上述のいずれかの構成のベルト駆動装置を備える。テンションローラの軸方向における無端ベルトの片寄り方向下流側において、片寄り伝達部材に対する付勢部材の押圧力が大きくなり、無端ベルトの張力が強くなるので、無端ベルトの蛇行が補正される。また、無端ベルトの片寄り量を検出するセンサや電気回路を必要とせず、簡素な機構で無端ベルトの蛇行が補正される。さらに、付勢部材の基端部を中心とした回転方向が、無端ベルトの走行方向と異なるので、無端ベルトの片寄り量が大きくなっても、無端ベルトの走行力によって付勢部材が回転することがない。このため、安定的に無端ベルトの蛇行を補正することができる。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、簡素な機構で安定的にベルト駆動装置における無端ベルトの蛇行を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明のベルト駆動装置の実施形態に係る中間転写ユニットを備えた画像形成装置の概略の構成を示す図である。
【図2】画像形成装置の一部の拡大図である。
【図3】中間転写ユニットの側面断面図である。
【図4】中間転写ベルトが背面側へ片寄った状態を示す図である。
【図5】中間転写ベルトが前面側へ片寄った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、この発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図1に示すように、画像形成装置100は、原稿から生成した画像データ又は外部から入力した画像データに基づいて、用紙に単色又は多色の画像を形成する。用紙として、普通紙、印画紙、OHPフィルム等の記録媒体が挙げられる。
【0021】
画像形成装置100は、画像読取部120、画像形成部110、給紙部80、及び排紙部90を備えている。
【0022】
画像読取部120は、原稿の画像を読み取って画像データを生成し、画像形成部110へ供給する。
【0023】
画像形成部110は、露光ユニット3、4個の画像形成ステーション31,32,33,34、中間転写ユニット50、二次転写ユニット60、及び定着装置70を備え、用紙に画像形成処理を行う。
【0024】
中間転写ユニット50は、中間転写ベルト51、中間転写ベルト駆動ローラ52、中間転写ベルト従動ローラ53、及び中間転写ベルトテンションローラ54を有している。中間転写ベルト駆動ローラ52、中間転写ベルト従動ローラ53、及び中間転写ベルトテンションローラ54は、互いに平行に配置されている。中間転写ベルト51として、ポリイミド等の伸縮性を有しない樹脂製のフィルムが用いられている。中間転写ベルト51は、無端ベルトであり、中間転写ベルト駆動ローラ52と中間転写ベルト従動ローラ53との間に張架されてループ状の移動経路を形成している。中間転写ベルト51の張力は、中間転写ベルトテンションローラ54によって変更自在である。中間転写ベルト駆動ローラ52、中間転写ベルト従動ローラ53、及び中間転写ベルトテンションローラ54のそれぞれは、中間転写ベルト51を張架する張架ローラである。
【0025】
画像形成部110は、画像データに基づいて、ブラック、並びに、カラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン、マゼンタ及びイエローの4色の各色相のトナー像を、画像形成ステーション31〜34において形成する。画像形成ステーション31〜34は、中間転写ベルト51の移動経路に沿って一列に配置されている。画像形成ステーション32〜34は、画像形成ステーション31と実質的に同様に構成されている。
【0026】
ブラックの画像形成ステーション31は、感光体ドラム1、帯電器2、現像器4、中間転写ローラ5、及びクリーナユニット6を備えている。
【0027】
感光体ドラム1は、静電潜像担持体であり、図示しない駆動源から駆動力を伝達されることで所定方向に回転する。帯電器2は、感光体ドラム1の周面を所定の電位に帯電させる。
【0028】
露光ユニット3は、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データによって変調されたレーザビームを、画像形成ステーション31〜34のそれぞれの感光体ドラム1にそれぞれ照射する。4個の感光体ドラム1の周面には、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの各色相の画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0029】
現像器4は、感光体ドラム1の周面に、画像形成ステーション31の色相であるブラックのトナーを供給し、静電潜像をトナー像に顕像化する。
【0030】
中間転写ベルト51の外周面は、4個の感光体ドラム1に順に対向する。中間転写ベルト51を挟んで感光体ドラム1に対向する位置に、中間転写ローラ5が配置されている。中間転写ベルト51と感光体ドラム1とが互いに対向する位置のそれぞれが、一次転写位置である。
【0031】
中間転写ローラ5には、トナーの帯電極性(例えば、マイナス)と逆極性(例えば、プラス)の一次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。画像形成ステーション32〜34においても同様である。これによって、感光体ドラム1のそれぞれに形成された各色相のトナー像が中間転写ベルト51の外周面に順次重ねて一次転写され、中間転写ベルト51の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。
【0032】
但し、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの色相の一部のみの画像データが入力された場合は、4個の感光体ドラム1のうち、入力された画像データの色相に対応する一部のみにおいて静電潜像及びトナー像の形成が行われ、一部の色相のトナー像のみが中間転写ベルト51の外周面に一次転写される。
【0033】
クリーナユニット6は、一次転写の後に感光体ドラム1の周面に残留したトナーを回収する。
【0034】
一次転写位置のそれぞれにおいて中間転写ベルト51の外周面に一次転写されたトナー像は、中間転写ベルト51の回転によって、中間転写ベルト51と、二次転写ユニット60に備えられた二次転写ベルト61との対向位置である二次転写位置へ搬送される。
【0035】
給紙部80は、給紙カセット81、手差しトレイ82、第1用紙搬送路83、及び第2用紙搬送路84を備えている。給紙カセット81及び手差しトレイ82のそれぞれには、用紙が収容される。第1用紙搬送路83は、給紙カセット81及び手差しトレイ82のそれぞれから二次転写位置及び定着装置70を経由して排紙部90へ至るように形成されている。第2用紙搬送路84は、両面印刷用の用紙搬送路であり、一方の面に画像を形成された用紙が表裏を反転された状態で再び二次転写位置へ搬送されるように形成されている。
【0036】
二次転写ユニット60は、二次転写ベルト61の他に、二次転写ローラ62を備えている。二次転写ローラ62は、二次転写ベルト61及び中間転写ベルト51を挟んで中間転写ベルト駆動ローラ52に所定のニップ圧で圧接している。二次転写ローラ62と中間転写ベルト51とのニップ圧を所定値に維持するために、二次転写ローラ62又は中間転写ベルト駆動ローラ52のいずれか一方が硬質材料(例えば、金属又は樹脂)で構成され、他方が軟質材料(例えば、弾性ゴム又は発泡性樹脂)で構成されている。
【0037】
用紙が二次転写位置を経由する際に、二次転写ローラ62に、トナーの帯電極性(例えば、マイナス)と逆極性(例えば、プラス)の二次転写バイアスが定電圧制御によって印加され、これによって、中間転写ベルト51の外周面に担持されたトナー像が、用紙に二次転写される。
【0038】
トナー像が用紙に転写された後の中間転写ベルト51上に残留したトナーは、中間転写ベルトクリーニングユニット55によって回収される。
【0039】
トナー像が転写された用紙は、定着装置70へ送られる。定着装置70は、定着ローラ71、及び加圧ローラ72を備えている。定着装置70は、定着ローラ71と加圧ローラ72との間に用紙を挟んで回転することで、用紙を加熱及び加圧してトナー像を用紙に堅牢に定着させる定着処理を行う。
【0040】
排紙部90は、排紙トレイ91及び排紙ローラ92を備えている。トナー像が定着した用紙は、排紙ローラ92によって排紙トレイ91へ排出される。用紙は、トナー像が定着した面を下にして、排紙トレイ91に収容される。
【0041】
図2に示すように、中間転写ベルト51の走行方向において、画像形成ステーション31〜34のうち最も下流側に配置されたブラック用の画像形成ステーション31と中間転写ベルト駆動ローラ52との間に、転写前帯電器(PTC:Pre Tranfer Charger)56が配置されている。転写前帯電器56は、中間転写ベルト51の外周面に対向している。中間転写ベルト51を挟んで転写前帯電器56に対向するように、対向ローラ57が配置されている。転写前帯電器56は、中間転写ベルト51の外周面に担持されたトナー像を構成するトナーの帯電量を二次転写前に調整する。これによって、用紙に転写されたトナー像の画質が向上する。
【0042】
二次転写ユニット60は、二次転写ベルト61及び二次転写ローラ62の他に、二次転写ベルト駆動ローラ63、二次転写ベルト従動ローラ64、二次転写ベルトテンションローラ65を備えている。二次転写ベルト61は、無端ベルトである。二次転写ベルト61として、伸縮性を有するゴム系材料が用いられている。
【0043】
二次転写ローラ62、二次転写ベルト駆動ローラ63、二次転写ベルト従動ローラ64、及び二次転写ベルトテンションローラ65のそれぞれは、二次転写ベルト61を張架する張架ローラである。二次転写ベルト61の張力は、二次転写ベルトテンションローラ65によって変更自在である。
【0044】
図3に示すように、中間転写ベルト51を張架する中間転写ベルトテンションローラ54は、軸部材21を中心として回転自在、かつ軸部材21に沿って摺動自在に、軸部材21に支持されている。軸部材21は、中間転写ベルト51の張力を変更する方向即ち図3における上下方向に、両端部が独立して移動自在なように、装置フレーム22A,22Bに支持されている。軸部材21は、回転を規制されている。一例として、図3において、左側が画像形成装置100の前面F側であり、右側が画像形成装置100の背面R側である。
【0045】
中間転写ベルトテンションローラ54の軸方向101において、中間転写ベルトテンションローラ54の両端部にそれぞれ隣接するように、拡径部材23A,23Bが配置されている。軸方向101において、拡径部材23A,23Bのぞれぞれの中間転写ベルトテンションローラ54から遠い方の端部は、中間転写ベルトテンションローラ54よりも拡径されており、他の部分は、中間転写ベルトテンションローラ54と同じ径に形成されている。拡径部材23A,23Bは、軸部材21に挿通されて軸方向101に摺動自在であり、かつ軸部材21に回転自在に支持されている。
【0046】
軸方向101における拡径部材23A,23Bのそれぞれの端部側に、摺動部材24A,24Bが配置されている。摺動部材24A,24Bは、拡径部材23A,23Bにそれぞれ隣接するように軸部材21に挿通され、軸方向101に摺動自在である。摺動部材24A,24Bは、軸部材21を中心とする回転を規制されている。拡径部材23A及び摺動部材24Aは、1つの片寄り伝達部材25Aを構成し、拡径部材23B及び摺動部材24Bは、他の1つの片寄り伝達部材25Bを構成している。
【0047】
中間転写ユニット50は、さらに付勢部材26A,26Bを備えている。付勢部材26Aは、第1ブラケット261A、第2ブラケット262A、心棒263A、及び弾性部材264Aを有している。第1ブラケット261Aは、摺動部材24Aに軸支されている。第2ブラケット262Aは、第1ブラケット261Aの軸支点よりも軸方向101における端部側の所定位置で装置フレーム22Aに軸支されている。即ち、付勢部材26Aの基端部は、作用端部よりも軸方向101における端部側の所定位置で装置フレーム22Aに軸支されている。
【0048】
心棒263Aは、第1ブラケット261A及び第2ブラケット262Aのうち一方のブラケットに一端部を固定され、他方のブラケットに変位自在に挿通されている。一例として、心棒263Aは、第2ブラケット262Aに一端部を固定され、第1ブラケット261Aに変位自在に挿通されている。弾性部材264Aは、第1ブラケット261Aと第2ブラケット262Aとの間に配置されている。弾性部材264Aが心棒263Aに沿って伸縮するので、縮み度合いが大きくなっても弾性力の方向が歪むことがない。
【0049】
付勢部材26Bは、第1ブラケット261B、第2ブラケット262B、心棒263B、及び弾性部材264Bを有し、付勢部材26Aと同様に構成されている。第1ブラケット261Bは、摺動部材24Bに軸支されている。第2ブラケット262Bは、第1ブラケット261Bの軸支点よりも軸方向101における端部側の所定位置で装置フレーム22Bに軸支されている。
【0050】
このように、付勢部材26Aは、中間転写ベルトテンションローラ54の軸方向101において端部側から中央部側へいくほど摺動部材24Aに近付く方向へ傾斜配置されている。付勢部材26Bは、中間転写ベルトテンションローラ54の軸方向101において端部側から中央部側へいくほど摺動部材24Bに近付く方向へ傾斜配置されている。付勢部材26A,26Bは、軸部材21を中間転写ベルト51の張力が強くなる方向へ付勢している。
【0051】
図4は、中間転写ベルト51が、走行すべき幅方向の理想位置からの位置ずれ、即ち蛇行を起こした状態を示している。中間転写ベルト51が蛇行して軸方向101の一方側、例えば背面R側へ片寄ると、中間転写ベルト51の幅方向の端部が拡径部材23Bの拡径部を押し、これにともなって、片寄り方向の下流側の片寄り伝達部材25Bが軸部材21に沿って背面R側へ移動する。
【0052】
これによって、軸方向101に対して片寄り方向の下流側の付勢部材26Bの傾斜角度が垂直に近付き、付勢部材26Bの縮み度合いが大きくなる。このため、中間転写ベルトテンションローラ54の軸方向101における中間転写ベルト51の片寄り方向下流側即ち背面R側において、軸部材21に対する付勢部材26Bの押圧力が大きくなり、中間転写ベルト51の張力が強くなる。
【0053】
また、片寄り方向の上流側に配置された片寄り伝達部材25Aは、中間転写ベルト51の片寄りにともなって付勢部材26Aの弾性力によって片寄り方向下流側へ移動する。これによって、軸方向101に対して片寄り方向の上流側の付勢部材26Aの傾斜角度が軸方向101に近付き、付勢部材26Aの縮み度合いが小さくなる。このため、軸方向101における中間転写ベルト51の片寄り方向上流側において、片寄り伝達部材25Aに対する付勢部材26Aの押圧力が小さくなり、中間転写ベルト51の張力が弱くなる。
【0054】
伸縮性を有しない無端ベルトは張力が強い方から弱い方へ移動する性質を有するので、中間転写ベルト51は前面F側へ移動する。これによって、中間転写ベルト51の背面R側への蛇行が補正される。
【0055】
図5は、中間転写ベルト51が前面F側へ蛇行した状態を示している。この場合も図4に示す場合と同様に、中間転写ベルト51が蛇行して前面F側へ片寄ると、中間転写ベルト51の幅方向の端部が拡径部材23Aの拡径部を押し、これにともなって、片寄り方向下流側即ち前面F側の片寄り伝達部材25Aが軸部材21に沿って前面F側へ移動する。これによって、片寄り方向下流側の付勢部材26Aの縮み度合いが大きくなり、前面F側における中間転写ベルト51の張力が強くなる。また、片寄り方向上流側即ち背面R側においては、中間転写ベルト51の張力が弱くなる。よって、中間転写ベルト51は背面R側へ移動する。これによって、中間転写ベルト51の前面F側への蛇行が補正される。
【0056】
このようにして、中間転写ベルト51が蛇行して拡径部材23A,23Bの拡径部を押すことで、片寄り方向下流側における中間転写ベルト51の張力が強くなり、上流側の張力が弱くなるので、中間転写ベルト51の前面F側へ移動しようとする力と背面R側へ移動しようとする力とのバランスの取れた位置で中間転写ベルト51の幅方向の位置が維持される。
【0057】
また、中間転写ベルト51の片寄り量を検出するセンサや電気回路を必要とせず、簡素な機構で中間転写ベルト51の蛇行が補正される。
【0058】
さらに、付勢部材26Aの第2ブラケット262Aの軸支点を中心とした回転方向及び付勢部材26Bの第2ブラケット262Bの軸支点を中心とした回転方向と、中間転写ベルトテンションローラ54に圧接する部分の中間転写ベルト51の走行方向とが異なるので、中間転写ベルト51の片寄り量が大きくなっても、中間転写ベルト51の走行力によって付勢部材26A,26Bが回転することがない。よって、中間転写ベルトテンションローラ54が中間転写ベルト51に与える張力が、意に反して極端に弱くなることがない。このため、安定的に中間転写ベルト51の蛇行を補正することができる。
【0059】
付勢部材26A,26Bのそれぞれの基端部を中心とした回転の軌跡を含む面と、中間転写ベルトテンションローラ54に圧接する部分の中間転写ベルト51の走行方向とは、直交していることが好ましい。これによって、中間転写ベルト51の片寄り量が大きくなっても、中間転写ベルト51の走行力によって付勢部材26A,26Bが回転することが、より確実に防止される。このため、より安定的に中間転写ベルト51の蛇行を補正することができる。
【0060】
また、拡径部材23A,23Bが回転自在であることで、中間転写ベルト51の拡径部材23A,23Bとの摩擦が低減し、中間転写ベルト51の両端部の摩耗が低減する。
【0061】
なお、片寄り伝達部材25A,25Bのうち中間転写ベルト51の軸方向101に沿った片寄り方向の少なくとも下流側に配置された片寄り伝達部材が中間転写ベルト51とともに軸方向101に沿って移動すれば、中間転写ベルト51の蛇行補正効果が奏される。片寄り方向の上流側に配置された片寄り伝達部材も中間転写ベルト51とともに軸方向101に沿って移動することで、中間転写ベルト51の蛇行補正効果がより大きくなる。
【0062】
また、拡径部材23A,23Bは、中間転写ベルトテンションローラ54と一体的に構成することもできる。
【0063】
さらに、この発明は、伸縮性を有しない無端ベルトのベルト駆動装置であれば、中間転写ユニット50以外の装置にも適用することができ、無端ベルトの蛇行を補正することができる。
【0064】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0065】
21 軸部材
22A,22B 装置フレーム
23A,23B 拡径部材
24A,24B 摺動部材
25A,25B 片寄り伝達部材
26A,26B 付勢部材
261A,261B 第1ブラケット
262A,262B 第2ブラケット
263A,263B 心棒
264A,264B 弾性部材
50 中間転写ユニット
51 中間転写ベルト
54 テンションローラ
60 二次転写ユニット
61 二次転写ベルト
62 二次転写ローラ
65 二次転写ベルトテンションローラ
100 画像形成装置
101 軸方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有しない無端ベルトと、
前記無端ベルトを張架する張架ローラであって前記無端ベルトを回転させる駆動ローラ及び前記無端ベルトの張力を変更自在なテンションローラを含む複数の張架ローラと、
前記テンションローラを回転自在に支持し、前記無端ベルトの張力を変更する方向に両端部が独立して移動自在な軸部材と、
前記テンションローラの軸方向における両端部にそれぞれ隣接するように前記軸部材に挿通された片寄り伝達部材であって前記無端ベルトの前記軸方向に沿った片寄り方向の少なくとも下流側に配置された片寄り伝達部材は前記無端ベルトの片寄りにともなって前記片寄り方向へ移動する片寄り伝達部材と、
前記軸部材を前記無端ベルトの張力が強くなる方向へ付勢する弾性力を有する付勢部材であって作用端部を前記片寄り伝達部材に軸支されて基端部を前記作用端部よりも前記軸方向における端部側の所定位置で装置フレームに軸支された付勢部材と、を備えるベルト駆動装置。
【請求項2】
前記片寄り方向の上流側に配置された片寄り伝達部材は、前記無端ベルトの片寄りにともなって前記片寄り方向へ移動する、請求項1に記載のベルト駆動装置。
【請求項3】
前記片寄り伝達部材は、前記テンションローラよりも拡径された拡径部材を含み、前記拡径部材は前記軸部材に回転自在に支持される、請求項1又は2に記載のベルト駆動装置。
【請求項4】
前記片寄り伝達部材は、前記軸方向における前記拡径部材の端部側に前記軸部材を中心とする回転を規制された摺動部材をさらに含み、
前記作用端部は、それぞれの前記摺動部材に軸支される、請求項3に記載のベルト駆動装置。
【請求項5】
前記付勢部材の前記基端部を中心とした回転の軌跡を含む面と、前記テンションローラに圧接する部分の前記無端ベルトの走行方向とは、直交している、請求項1から4のいずれかに記載のベルト駆動装置。
【請求項6】
前記付勢部材は、前記片寄り伝達部材に軸支された第1ブラケット、前記装置フレームに軸支された第2ブラケット、前記第1ブラケット及び前記第2ブラケットのうち一方のブラケットに一端部を固定されて他方のブラケットに変位自在に挿通された心棒、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットとの間に配置された弾性部材を有する、請求項1から5のいずれかに記載のベルト駆動装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のベルト駆動装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−61532(P2013−61532A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200600(P2011−200600)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】