説明

ベンダムスチンの経口投与剤

本発明では、活性成分としてのベンダムスチン又はその医薬的に許容できるエステル、塩若しくは溶媒和物と、ポリエトキシル化ヒマシ油又はその誘導体及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーから成る群より選択される医薬的に許容できる非イオン性界面活性剤である医薬的に許容できる賦形剤とを含む、経口医薬組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンダムスチン又はその医薬的に許容できるエステル、塩若しくは溶媒和物を含む経口投与剤に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
ベンダムスチン(4-[5-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]-1-メチルベンズイミダゾ-2-イル]ブタン酸、ナイトロジェンマスタード)は、二官能性アルキル化活性のあるアルキル化薬である。それは下記式(I)に相当する。
【0003】
【化1】

【0004】
ベンダムスチンは、他のアルキル化薬と如何なる交差耐性もないようであり、このことはアルキル化薬による治療を既に受けたことのある患者の化学療法の観点から利点を提供する。
ベンダムスチンは最初にドイツ民主共和国(GDR)で合成された。ベンダムスチンの塩酸は、1971〜1992年に商標名Cytostasan(登録商標)で入手可能な市販製品の活性成分だった。その時以来、それは独国で商標名Ribomustin(登録商標)にて市販され、慢性リンパ性白血病、非ホジキンリンパ腫及び多発性骨髄腫を治療するために広く使用されてきた。
市販製品は、ベンダムスチン塩酸塩の凍結乾燥粉末を含み、これを注射用水で再構成して濃縮物を得る。これを引き続き0.9%の塩化ナトリウム水溶液で希釈すると、注入用の最終溶液となる。この最終溶液を約30〜60分の時間をかけて静脈内注入で患者に投与する。
水中におけるベンダムスチンのビス-2-クロロエチルアミノ基の加水分解が効力の低下及び不純物形成をもたらす(B. Maas et al. (1994), Pharmazie 49: 775-777)。従って普通は病院内又は少なくとも医学的管理下で、凍結乾燥粉末の再構成後即座に投与を行なわなければならない。さらに、再構成は難しいと報告されている。再構成は30分より長い時間を要することがある。さらに、それは製品を2工程プロセスで再構成する責任がある医療専門家にとって厄介であり、時間がかかる。
【0005】
Preissら(1985)(Pharmazie 40:782-784)は、それぞれ4.2〜5.5mg/kgの範囲の用量で静脈内及び経口投与した後の7名の患者の血漿中のベンダムスチン塩酸塩の薬物動態を比較した。商業的に入手可能なCytostasan(登録商標)製品から調製した静脈内注射を3分かけて行ない、一方で等価用量の経口薬物は25mgのベンダムスチン塩酸塩を含むカプセル剤の形を取った。患者が摂取すべきカプセル剤の数は10〜14で変動し、250〜350mgの絶対経口用量を表す。経口投与後1時間以内で最大血漿レベルが検出できた。平均経口バイオアベイラビリティーを計算すると57%だったが、25%〜94%まで変動し、個体間の大きい可変性を示唆している(%CV=44%)。
Weber(1991)(Pharmazie 46(8): 589-591)は、B6D2F1マウスにおけるベンダムスチン塩酸塩のバイオアベイラビリティーを調査し、胃腸管からの該薬物の吸収が不完全であり、たった約40%のバイオアベイラビリティーしかもたらさないことを見い出した。
US2006/0128777A1は、一般に死抵抗性細胞及びベンダムスチン含有組成物によって特徴づけられる癌の治療方法を記載している。これらの中で組成物は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤又は顆粒剤である経口剤形で、その中で活性化合物が少なくとも1種の不活性な賦形剤、例えばスクロース、ラクトース又はデンプンと混合され得る。しかしながら、具体的な組成物は例示されなかった。
ベンダムスチン塩酸塩は2.0のpHでほんのわずかしか水に溶解せず、いろいろな有機溶媒にわずか又は非常にわずかに可溶性である。しかし、エタノール及びメタノールでは良い溶解度が観察されている。従って、Preissら及びWeberが調査したように、経口ベンダムスチン組成物がかなり良くないバイオアベイラビリティー及び個体間の大きい可変性をもたらしたことは驚くべきことではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一度水で再構成した市販の静脈内製剤の安定性の問題を考慮して、かつ患者のコンプライアンスを改善するため、患者に投与しやすく、かつ個体間及び個体内に大きい可変性がなく、良いバイオアベイラビリティーを与える、ベンダムスチンを含む安定な剤形が長年にわたって要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の概要)
上記課題を解決するため、本発明者らは詳細な調査を行なった。本発明者らは、最終的に本発明の安定医薬組成物を得ることに成功した。これらの組成物は、経口投与に適しており、かつ活性成分としてのベンダムスチン又はその医薬的に許容できるエステル、塩若しくは溶媒和物と、少なくとも1種の医薬的に許容できる賦形剤とを含み、本組成物は、良い安定性を有することとは別に改善された溶解プロファイルをも有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】従来技術のカプセル剤(参考例1)及び実施例2の液体充填硬ゼラチンカプセル製剤の形態でベンダムスチン塩酸塩をイヌに投与した後に得られた平均血漿濃度対時間曲線を示す。図1から、従来技術の参考カプセル製剤と比較すると、液体充填硬ゼラチンカプセル製剤がベンダムスチンのより高い最大濃度を提供することが明らかである。
【図2】独国で商標Ribomustin(登録商標)で市販されている静脈内製剤、及び実施例2の液体充填硬ゼラチンカプセル製剤の形態でベンダムスチン塩酸塩を癌患者に投与した後に得られた平均血漿濃度対時間プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本発明は、活性成分としてのベンダムスチン又はその医薬的に許容できるエステル、塩若しくは溶媒和物と、ポリエトキシル化ヒマシ油又はその誘導体及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーから成る群より選択される非イオン性界面活性剤である医薬的に許容できる賦形剤とを含む、経口投与用医薬組成物に関する。
一実施形態は、ベンダムスチン又はその医薬的に許容できるエステル、塩若しくは溶媒和物と、ポリエトキシル化ヒマシ油又はその誘導体及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーから成る群より選択される非イオン性界面活性剤である医薬的に許容できる賦形剤とを含む医薬組成物であって、前記組成物が、それを硬ゼラチンカプセル中に含めることによって経口投与に適している、医薬組成物である。
さらなる実施形態は、硬ゼラチンカプセル剤である固体剤形の経口投与用医薬組成物であり、該組成物は、ベンダムスチン又はその医薬的に許容できるエステル、塩若しくは溶媒和物と、ポリエトキシル化ヒマシ油又はその誘導体及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーから成る群より選択され、好ましくはマクロゴールグリセロールヒドロキシステアラート、ポリオキシル-35-ヒマシ油及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(Pluronic(登録商標)L44 NF又はPoloxamer(登録商標)124)から成る群より選択される医薬的に許容できる賦形剤とを含み、特有の非イオン性界面活性剤の使用が、欧州薬局方(European Pharmacopoeia)に準拠して50rpmでパドル装置を用いて500mlの溶解媒体中1.5のpHで測定した場合、20分後に少なくとも60%のベンダムスチンが溶解し、40分後に70%溶解し、かつ60分後に80%溶解する溶解プロファイルをもたらし、好ましくは該使用が10分後に少なくとも60%のベンダムスチンが溶解し、20分後に70%、かつ30分後に80%溶解することとなる。
好ましい実施形態は、硬ゼラチンカプセル剤である固体剤形の経口投与用医薬組成物であり、該組成物は、ベンダムスチン塩酸塩と、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラートである医薬的に許容できる賦形剤とを含み、特有の非イオン性界面活性剤の使用が、欧州薬局方に準拠して50rpmでパドル装置を用いて500mlの溶解媒体中1.5のpHで測定した場合、10分後に少なくとも60%のベンダムスチンが溶解し、20分後に70%及び30分後に80%溶解することとなる。
【0010】
本発明は、医薬組成物に特定の非イオン性界面活性剤を組み入れることによって、特有の望ましい溶解プロファイルを有するベンダムスチンの安定組成物が得られるという驚くべき知見に基づいている。活性成分としてベンダムスチン又はその医薬的に許容できるエステル、塩若しくは溶媒和物を含む医薬組成物中の賦形剤として、ポリエトキシル化ヒマシ油又はその誘導体及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーから成る群より選択され、好ましくはマクロゴールグリセロールヒドロキシステアラート、ポリオキシル-35-ヒマシ油及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(Pluronic(登録商標)L44 NF又はPoloxamer(登録商標)124)から成る群より選択される医薬的に許容できる非イオン性界面活性剤を使用すると、安定性及び分解生成物、溶解、バイオアベイラビリティー並びにバイオアベイラビリティーの可変性低減に関して特に好ましいプロファイルが達成される。上記非イオン性界面活性剤をベンダムスチン含有組成物に組み入れると、欧州薬局方に準拠して50rpmでパドル装置を用いて500mlの溶解媒体中1.5のpHで測定した場合、20分後に少なくとも60%のベンダムスチンが溶解し、40分後に70%溶解し、60分後に80%溶解する溶解プロファイルをもたらし、好ましくはその組み入れが10分後に少なくとも60%のベンダムスチンが溶解し、20分後に70%及び30分後に80%溶解することとなる。
【0011】
以下に本発明のさらなる詳細を示す。
「その医薬的に許容できるエステル」という表現は、ベンダムスチンのいずれの医薬的に許容できるエステル、例えばアルキルアルコール及び糖アルコールとのエステルをも表す。アルキルアルコールの例は、C1-6-アルキルアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール及びtert-ブタノールである。糖アルコールの例は、マンニトール、マルチトール、ソルビトール、エリスリトール、グリコール、グリセロール、アラビトール、キシリトール及びラクチトールである。ベンダムスチンエステルの好ましい例は、エチルエステル、イソプロピルエステル、マンニトールエステル及びソルビトールエステルであり、ベンダムスチンのエチルエステルが最も好ましい。
「その医薬的に許容できる塩」という表現は、患者に(直接又は間接的に)投与されるとベンダムスチンを与える、ベンダムスチンのいずれの医薬的に許容できる塩をも表す。この用語は、ベンダムスチンエステルの医薬的に許容できる塩をさらに含む。それにもかかわらず、医薬的に許容できない塩も、これらの化合物が医薬的に許容できる塩の調製に役立つことがあるので、本発明の範囲内に含まれる。例えば、ベンダムスチンの医薬的に許容できる塩は、従来の化学的方法によって、酸性又は塩基性基を含む対応化合物から合成される。一般的に、これらの塩は、例えば、水若しくは有機溶媒又は両者の混合物中における化学量論のこれらの化合物の遊離酸性形又は塩基性形と対応する塩基又は酸との反応を利用して調製される。一般的にエーテル、酢酸エチル、イソプロパノール又はアセトニトリル等の非水性媒体が好ましい。ベンダムスチンの医薬的に許容できる塩の塩形成に使用できる酸の例としては、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、及びリン酸など、並びに有機酸、例えば酢酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、メチルスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸などが挙げられる。ベンダムスチンの医薬的に許容できる塩を無機又は有機塩基から誘導してアンモニウム塩;アルカリ金属塩(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、カルシウム若しくはマグネシウム等のアルカリ土類金属の塩、アルミニウム塩、低級アルキルアミン塩、例えばメチルアミン若しくはエチルアミン塩、低級アルキルジアミン塩、例えばエチレンジアミン塩、エタノールアミン、N,N-ジアルキレンエタノールアミン、トリエタノールアミン、及びグルカミン塩、並びにアミノ酸の塩基性塩を得ることができる。塩酸、臭化水素酸、及びヨウ化水素酸から調製された酸性塩が特に好ましいが、塩酸塩がベンダムスチンの最も好まし医薬的に許容できる塩である。医薬的に許容できる塩は、技術上周知の従来法によって作られる。
【0012】
「その医薬的に許容できる溶媒和物」という表現は、患者に投与されると(直接又は間接的に)ベンダムスチンを与える、医薬的に許容できるいずれの溶媒和物をも表す。この用語は、ベンダムスチンエステルの医薬的に許容できる溶媒和物をさらに含む。好ましくは溶媒和物は水和物、メタノール、エタノール、プロパノール、若しくはイソプロパノール等のアルコールとの溶媒和物、酢酸エチル等のエステルとの溶媒和物、メチルエーテル、エチルエーテル若しくはTHF(テトラヒドロフラン)等のエーテルとの溶媒和物又はDMF(ジメチルホルムアミド)との溶媒和物であり、水和物又はエタノール等のアルコールとの溶媒和物がさらに好ましい。溶媒和物を構成するための溶媒は、好ましくは医薬的に許容できる溶媒である。
本発明の組成物中の活性成分がベンダムスチン又はその医薬的に許容できる塩であることが特に好ましい。活性成分がベンダムスチン塩酸塩であることが最も好ましい。
【0013】
医薬組成物中の活性成分の用量は、患者の状態、性別、体重、体表面積、又は年齢に応じて、特に患者の体重及び体表面積に応じて、当業者によって容易に決定され得る。1日の投薬量が約50〜約1000mg、好ましくは約100〜約500mgの活性成分の範囲であることが好ましい。1日の投薬量を単回用量又は1日に2回若しくは3回などの複数回用量として摂取してよく、最も好ましくは単回1日用量として摂取する。1日用量を1週間に1回又は1週間に数回摂取してよい。剤形は、単回1日用量又はその一部の量を含有し得る。本発明の剤形が約10〜約1000mg、好ましくは約25〜約600mg、さらに好ましくは約50〜約200mg、最も好ましくは約100mgの活性成分を含むことが好ましい。
本明細書で使用する場合、用語「非イオン性界面活性剤」は、極性の親水性基と、無極性の親油性基若しくは鎖とを有し、かつ該化合物の親水性及び親油性特性がいわゆる親水性親油性バランス(Hydrophilic-Lipophilic Balance)(HLB)値によって特徴づけられる両親媒性化合物を表す。本発明の組成物を調製するために用いられる非イオン性界面活性剤は、好ましくは10〜20、好ましくは12〜18のHLB値を有する。非イオン性界面活性剤はさらに、5℃〜体温(37℃)、好ましくは室温直下(20℃)〜体温の融点、流動点又は融解範囲を有する。この物質は室温で液体又は半固体状態であってよい。この両親媒性物質はベンダムスチン活性成分の担体であり、溶解形態、懸濁形態又は部分的に溶解した形態及び部分的に懸濁した形態で存在し得る。
【0014】
本発明の組成物の調製に有利に用いられる非イオン性界面活性剤は、該物質が上記HLB値及び融点、流動点又は融解範囲を有するという条件で、ポリエトキシル化ヒマシ油又はその誘導体及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドのブロックコポリマーから成る群より選択される。
一実施形態では、非イオン性界面活性剤がポリエトキシル化ヒマシ油である。ポリエトキシル化ヒマシ油の一例は、商標名Cremophor(登録商標)で販売されている。種々の純度及び粘度のCremophor(登録商標)製品が製造されており、本発明で使用し得る。特にマクロゴールグリセロールヒドロキシステアラート(Cremophor(登録商標)RH 40)及びポリオキシル-35-ヒマシ油(Cremophor(登録商標)EL又はCremophor(登録商標)ELP)を使用できる。Cremophor(登録商標)ELP及びCremophor(登録商標)ELは、ヒマシ油をエチレンオキシドと1対35のモル比で反応させて製造される非イオン性可溶化剤及び乳化剤として知られている。それらは12〜14のHLB値及び26℃の融点を有する。周囲温度に応じて、これらの製品は半固体又は中間粘度液体として特徴づけられる。マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラート(Cremophor(登録商標)RH 40として商業的に入手可能)は、25℃で半固体物質であり、同温度で20〜40cpsの粘度範囲を有する(30%水溶液として)。それは、ヒマシ油をエチレンオキシドと1対45のモル比で反応させることによって製造される。そのHLB値は14〜16の範囲であり、融解範囲は20〜28℃である。実験では、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラートをそのまま有利に本発明の組成物の調製のために使用することができる。
Pluronic(登録商標)ブロックコポリマーはエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックから成る。エチレンオキシド単位が親水性を有し、プロピレンオキシド単位が親油性を有する。親水性エチレンオキシド単位と親油性プロピレンオキシド単位の数の変化が異なる分子量と異なる親水性親油性バランス(HLB)を有するコポリマーをもたらす。本発明の組成物を作るためのHLB値と融点又は流動点又は融解範囲の要件を満たすプロピレンオキシド(「PEO」)-ポリプロピレンオキシド(「PPO」)のブロックコポリマーの例としては商業的に入手可能なタイプPluronic(登録商標)L35、Pluronic(登録商標)L44、Pluronic(登録商標)L64、Pluronic(登録商標)P85及びPluronic(登録商標)P105が挙げられる。Pluronic(登録商標)L44又はPoloxamer(登録商標)124はよいが、Pluronic(登録商標)68又はPoloxamer(登録商標)188及びPluronic(登録商標)127又はPoloxamer(登録商標)407はそうでない。Pluronic(登録商標)L44が好ましい非イオン性界面活性剤である。
【0015】
マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラートを除けば、上記非イオン性界面活性剤は全て、ベンダムスチン塩酸塩の沈降を回避するには低すぎるかもしれない粘度値を有する液体である。解決すべきさらなる課題は、混合物に添加したときにベンダムスチン塩酸塩の分離を回避するのに十分高い、混合物の粘度の全体値を可能にするであろう賦形剤又は賦形剤の組合せを見い出すことだった。
従って、液体非イオン性界面活性剤を含む本発明の組成物は、粘度改良剤をさらに含むと有利である。適切な粘度改良剤としては、コロイド状二酸化ケイ素(商標Aerosil(登録商標)で商業的に入手可能)等の散剤又は半固体蝋様物質、例えばラウロイルマクロゴールグリセリド(商標Gelucire(登録商標)44/14で商業的に入手可能)が挙げられる。液体非イオン性界面活性剤に添加すべき散剤又は半固体物質の量は、液体非イオン性界面活性剤の粘度によって決まる。視覚的に活性成分の分離を回避するために添加すべき粘度改良剤の適切な最小量を見い出すため種々の濃度を試験した。添加すべきコロイド状二酸化ケイ素の典型的な相対濃度は約1%〜約8%であるが、活性成分の溶解特性に悪影響を及ぼさないように、1.7%又は2.0%ほどの低さであることが好ましい。ラウロイルマクロゴールグリセリドの典型的な相対濃度は、5〜50%、好ましくは約10%〜約45%の範囲である。
本発明の好ましい組成物は実施例4に開示してあり、下記成分:
−マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラート;
−エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(Pluronic(登録商標)L44 NF又はPoloxamer(登録商標)124)(必要に応じてコロイド状二酸化ケイ素又はラウロイルマクロゴールグリセリド(Gelucire(登録商標)44/14)と組み合わせて);及び
−ポリオキシル-35-ヒマシ油(必要に応じてラウロイルマクロゴールグリセリド(Gelucire(登録商標)44/14と組み合わせて)
と組み合わせてベンダムスチン塩酸塩を含む。
さらに、本発明の組成物は、実施例1〜3で示すように、追加の賦形剤、特に保護剤、例えば抗酸化剤及び抗菌性保存剤、例えばメチルパラベン、エチルパラベン及びプロピルパラベン等を含むことができる。抗酸化剤は、d-αトコフェロールアセタート、dl-αトコフェロール、アスコルビルパルミタート、ブチル化ヒドロキシアニソール(anidole)、アスコルビン酸、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ヒドロキシクマリン、ブチル化ヒドロキシトルエン、エチルガラート、プロピルガラート、オクチルガラート、ラウリルガラート、又はその混合物であってよい。抗酸化剤は、好ましくはマクロゴールグリセロールヒドロキシステアラート又はポリオキシル-35-ヒマシ油を含む組成物に添加される。
【0016】
本発明の医薬組成物をカプセルに詰めると有利であり、すると、患者が容易に摂取することができる。
2タイプのカプセルが一般的に使用され、カプセルシェルの性質及び可撓性に従って軟カプセル剤と硬カプセル剤に分類される。
軟カプセル剤は、液体フィル又は半固体フィルを含む単回単位固体剤形である。それらは、ロータリーダイプロセスを利用して一操作で形成、充填及び封止される。それらは、長年にわたって液体用の単位用量容器として使用され、一方で硬カプセル剤は粉末、顆粒及び丸剤の形態の固体の送達用に便利に使用されている。硬カプセル剤は、別々に製造され、充填するため空にして供給されるキャップとボディから成る単回単位剤形である。
軟カプセルは、最も一般的には、水に加えて、可塑剤、普通はグリセリン又はソルビトールが添加されたゼラチンから製造される。硬カプセルのためにも、最も一般的に用いられるポリマーはゼラチンである。追加成分は、可塑剤として作用する水である。しかしながら、この成分は、ベンダムスチン塩酸塩のような活性成分の分解に関与し得る。従って、ヒドロキシプロピルメチルセルロースから代替硬カプセルを製造することができる。軟カプセルも硬カプセルもさらに着色剤及び乳白剤を含むことができる。
本発明の組成物に好ましいタイプのカプセルは硬カプセルであり、さらに特に硬ゼラチンカプセルである。
理想的には、カプセルに充填すべき物質は室温で流体であり、これは充填操作中の加熱を回避するであろう。通常、加熱すると、活性成分が容易に分解してしまうであろう。
原則として、硬カプセルに充填するために多くの賦形剤が利用可能であるが、バイオ医薬的考慮事項に加えて、最終剤形の化学的及び物理的安定性を考慮することのみならず、安全な効率的かつ安定した剤形をもたらすための溶解プロファイルを考慮することも重要である。
【0017】
一般的に、硬カプセル用のフィル製剤は、高温で充填され、かつ活性成分が中で微細な分散系として溶解又は懸濁するニュートン液体、例えば油、チキソトロピー若しくはずり減粘ゲル又は半固体マトリックス生成物であってよい。フィル物質の粘度が充填プロセスの要件を確証することを条件に、原則的としていずれの賦形剤又は賦形剤の混合物をも使用することができる。カプセルフィル質量の均一性が重要である。さらにフィル製剤は、ストリンギング(stringing)を示すべきでなく、かつ投与ノズルからのクリーンブレイク(clean break)を可能にすべきである。
驚くべきことに、本発明の組成物を硬ゼラチンカプセル内で有利に投与できることを見い出した。ポリエトキシル化ヒマシ油又はその誘導体及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドのブロックコポリマーから成る群より選択され、特にマクロゴールグリセロールヒドロキシステアラート、ポリオキシル-35-ヒマシ油及びPluronic(登録商標)L44又はPoloxamer(登録商標)124から成る群より選択される特定の非イオン性界面活性剤は、ベンダムスチン又はその医薬的に許容できるエステル、塩、若しくは溶媒和物を組み入れると、かつ硬ゼラチンカプセルへの組入れ後、良い安定性、良い溶解プロファイル及び良いバイオアベイラビリティーを達成することとなる。対照的に、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラートを液体物質、例えばビス-ジグリセリルポリアシルアジパート-1(Softisan(登録商標)645として商業的に入手可能)及びエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(名称Pluronic(登録商標)L44 NF又はPoloxamer 124で商業的に入手可能)等と併用すると、マクロゴールグリセロールヒドロキシステアラートのみを含む組成物に比べてベンダムスチンの溶解プロファイルが低下する。さらに、Cremophor(登録商標)A25(セテアレス-25又はマクロゴール(25)セトステアリルエーテル)及びCremophor(登録商標)A6(セテアレス-6及びステアリルアルコール又はマクロゴール(6) セトステアリルエーテル)は非イオン性界面活性剤として使用できないことに留意されたい。液体充填カプセル製剤の調製のため他の一般的に使用されている賦形剤も満足のいく結果をもたらさないことが分かった。
ベンダムスチンの水溶液の安定性は、pHによって強く影響を受ける。約5より高いpH値では、加水分解によるこの化合物の有意な分解が観察される。pH>5では、分解が急速に進行し、このpH範囲では結果として生じる副生物の含量が多い。主な加水分解生成物は、下記4-[5-[(2-クロロエチル)-(2-ヒドロキシ-エチル)アミノ]-1-メチル-ベンズイミダゾ-2-イル]-ブタン酸(HP1)、4-[5-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-1-メチル-ベンズイミダゾ-2-イル]-ブタン酸(HP2)及び4-(5-モルフォリノ-1-メチルベンズイミダゾール-2-イル)-ブタン酸(HP3)である。
【0018】
【化2】

【0019】
経口投与された薬物の吸収は、普通は胃、小腸及び/又は大腸から起こる。胃内のpHは約1〜3.5であり、小腸内では約6.5〜7.6、大腸内では約7.5〜8.0である。従って、5より高いpHの水性環境内で分解しやすいベンダムスチンのような化合物では、分解を回避するため、それが胃内で吸収され、小腸或いは大腸をも通過しないことが非常に好ましい。従って、ベンダムスチンが胃内で完全に又は少なくとも高程度まで吸収され、それによって小腸又は大腸内でのベンダムスチンの分解を回避するか又は低減させる医薬組成物が要望されている。
驚くべきことに本発明の医薬組成物を用いてこの問題を解決できることが分かった。ポリエトキシル化ヒマシ油又はその誘導体及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーから成る群より選択される非イオン性界面活性剤である医薬的に許容できる賦形剤中にベンダムスチン塩酸塩を含むこれらの組成物は、驚くべきことに速い溶解、特に欧州薬局方に準拠して50rpmでパドル装置を用いて人工胃液中で測定した場合、20分で少なくとも60%、40分で70%及び60分で80%、好ましくは10分で少なくとも60%、20分で70%、30分で80%のベンダムスチンの溶解を示す。本明細書で使用する場合、人工胃液は、1000mlの水に2gの塩化ナトリウムを溶解させてから5N塩酸でpHを1.5±0.05に調整することによって調製された溶液を表す。
【0020】
さらに、本組成物は、加速安定性試験に置いた場合に安定であることが分かった。
このことは、以下のことが分かったので驚くべきことである:
−硬ゼラチンカプセル中にベンダムスチン塩酸塩のみを含む参考カプセル製剤では(参考例1参照)、40℃/75%RH(開いたガラスバイアル)及び50℃で貯蔵した場合、1カ月以内の貯蔵で分解生成物が形成された。40℃及び75%RH(相対湿度)で開いたバイアルの場合、加水分解生成物HP1の量は1カ月の貯蔵後に4倍に増加した。閉じたバイアルではHP1含量がさらに高い。
−参考例2、3及び4のカプセル製剤では、40℃/75%RH(閉じたガラスバイアル)で貯蔵した場合、1カ月以内の貯蔵で分解生成物が形成され、さらに貯蔵すると分解生成物が増加した。
薬物が胃を通って小腸に至るまでの全時間は約20分〜5時間、普通は約30分〜3時間である。従って、この発明の医薬組成物は、胃内にある間にベンダムスチンが大部分の程度まで放出かつ溶解されるので、患者内でのベンダムスチンの分解を有利に低減させるであろう。従って本発明のベンダムスチン含有組成物のバイオアベイラビリティーの改善さえ期待することができる。
【0021】
この発明のさらなる態様では、経口医薬組成物をヒト又は動物、好ましくはヒトの医学的状態の治療又はその再発の予防のために使用することができ、この医学的状態は、慢性リンパ性白血病(CLLと略記)、急性リンパ性白血病(ALLと略記)、慢性骨髄性白血病(CMLと略記)、急性骨髄性白血病(AMLと略記)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(NHLと略記)、多発性骨髄腫、乳癌、卵巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、及び自己免疫疾患から選択される。
本発明は、人体又は動物体における慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、乳癌、卵巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、及び自己免疫疾患から選択される医学的状態の治療又はその再発の予防の方法であって、有効量のこの発明の医薬製剤を、治療又は予防が必要な人体又は動物体に投与する工程を含む方法をも含む。好ましくは医学的状態が非ホジキンリンパ腫である。
この発明の別の態様では、医薬組成物を少なくとも1種のさらなる活性薬と併用投与することができる。ここで、前記さらなる活性薬は、本医薬組成物の投与前、投与と同時、又は投与後に与えられる。この少なくとも1種のさらなる活性薬は、好ましくはCD20に特異的な抗体(例はリツキシマブ又はオファツムマブである)、アントラサイクリン誘導体(例はドキソルビシン又はダウノルビシンである)、ビンカアルカロイド(例はビンクリスチンである)、プラチン誘導体(例はシスプラチン又はカルボプラチンである)、ダポリナド(daporinad)(FK866)、YM155、サリドマイド及びその類似体(例はレナリドマイドである)、又はプロテアソーム阻害薬(例はボルテズミブ(bortezumib)である)である。
【0022】
この発明の医薬組成物を少なくとも1種のコルチコステロイドと併用投与してもよく、前記コルチコステロイドは、本医薬組成物の投与前、投与と同時、又は投与後に与えられる。コルチコステロイド例はプレドニゾン、プレドニゾロン及びデキサメタゾンである。
本発明の組成物の利点はさらに、必要に応じて1種以上の賦形剤との混合物中の活性成分が、該成分の味をさらに隠すため並びに/或いは該成分を光及び/又は湿気によって起こり得る有害な影響、例えば酸化、分解などに対して保護するため、或いは対象が該活性成分との相互作用によって口腔粘膜の損傷を経験し得ることを予防するためにコーティングを備える必要がないことである。
以下の実施例は、本発明をさらに説明する。当業者には当然のことながら、これらの実施例は単に説明の目的のためであり、本発明を限定するものと考えるべきでない。
【実施例】
【0023】
1. カプセル製剤
参考例1:ベンダムスチンカプセル製剤(従来技術)
20.0±1mgのベンダムスチン塩酸塩を空の硬ゼラチンカプセルのボディに量り入れ、それをAgilentのクリアガラスHPLCバイアル(6ml)に入れた。ボディの上部にキャップを置いてわずかに押すことによってカプセルを閉じた。
カプセルを40℃/75%RH(開いたガラスバイアル)又は50℃(閉じたガラスバイアル)で貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩及び関連物質の量をHPLC(カラム:Zorbax Bonus-RP、5μm;カラムオーブンの温度:30℃;オートサンプラーの温度:5℃;検出器:254nm)で測定した。結果を下表1に示す。
【0024】

*1:NP1:4-[6-(2-クロロエチル)-3,6,7,8-テトラ-ヒドロ-3-メチル-イミダゾ[4,5-h]-[1,4]ベンゾチアジン-2-イル]ブタン酸
BM1Dimer:4-{5-[N-(2-クロロエチル)-N-(2-{4-[5-ビス(2-クロロエチル)アミノ-1-メチルベンズイミダゾール-2-イル]ブタノイルオキシ}エチル)アミノ]-1-メチルベンズイミダゾール-2-イル}ブタン酸
BM1EE:4-[5-[ビス(2-クロロエチル)アミノ]-1-メチル-ベンズイミダゾ-2-イル]部炭酸エチルエステル
*2:n.d.:検出不能、すなわち検出限界超え(0.05%未満の面積パーセンテージ)
【0025】
参考例2

【0026】
1000カプセル剤のバッチサイズでは、コロイド状二酸化ケイ素とステアリン酸以外の全ての賦形剤をSomakon容器(5L)に装填した。ベンダムスチンを添加し、1000rpm(ワイパー10rpm)で4分間ブレンディングを行なった。結果として生じたブレンドを0.5mmの篩いを通して選別した。容器にブレンドを再装填し、コロイド状二酸化ケイ素を加えた。上記条件で2分間ブレンディングを行なった。その後ステアリン酸を添加し、ブレンディングを1分間続けた。引き続きブレンドを0.5mmの篩いを通して選別し、容器に再装填し、全て同一条件でさらに30秒間ブレンドした。
ブレンドをカプセル充填機(Zanassi AZ 5)に移し、硬ゼラチンカプセル(サイズ2)(平均質量:259.5mg(初め)〜255.3mg(終わり))及びヒプロメロースカプセル(サイズ2)(平均質量:255.8(初め)〜253.4mg(終わり))にそれぞれ充填した。カプセル剤を閉じたgラスバイアル内で40℃/75%RHにて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩並びに分解生成物、合成の副生物のような関連物質の量をHPLCで測定した(カラム:Zorbax Bonus-RP、5μm;カラムオーブンの温度:30℃;オートサンプラーの温度:5℃;検出器:254nm)。結果を下表2b(ヒプロメロースカプセルに充填)及び2c(ゼラチンカプセルに充填)に示す。
【0027】

*3:主ピークに比べて0.65の相対保持時間の未同定化合物ピーク
【0028】

【0029】
参考例3

【0030】
1000カプセル剤のため、コロイド状二酸化ケイ素及びステアリン酸以外の全ての賦形剤をSomakon容器(5L)に装填した。ベンダムスチンを添加して1000rpm(ワイパー10rpm)で4分間ブレンディングを行なった。結果として生じたブレンドを0.5mmの篩いを通して選別した。容器にブレンドを再装填し、コロイド状二酸化ケイ素を加えた。上記条件でブレンディングを2分間行なった。その後ステアリン酸を添加し、ブレンディングを1分間続けた。引き続きブレンドを0.5mmの篩いを通して選別し、容器に再装填して全て同一条件でさらに30秒間ブレンドした。
ブレンドをカプセル充填機(Zanassi AZ 5)に移し、硬ゼラチンカプセル(サイズ2)(平均質量:257.9mg(初め)〜255.2mg(終わり))及びヒプロメロースカプセル(サイズ2)(平均質量:261.1(初め)〜257.8mg(終わり))にそれぞれ充填した。
カプセル剤を閉じたガラスバイアル内で40℃/75%RHにて貯蔵した。上述したように、ベンダムスチン塩酸塩及び関連物質の量をHPLCで測定した。結果を下表3b(ヒプロメロースカプセルに充填)及び3c(ゼラチンカプセルに充填)に示す。
【0031】

【0032】

【0033】
参考例4

【0034】
1000カプセル剤のため、コロイド状二酸化ケイ素とステアリン酸マグネシウム以外の全ての賦形剤をSomakon容器(2.5L)に装填した。ベンダムスチンを添加し、1000rpm(ワイパー10rpm)で4分間ブレンディングを行なった。結果として生じたブレンドを0.5mmの篩いを通して選別した。容器にブレンドを再装填し、コロイド状二酸化ケイ素を加えた。上記条件でブレンディングを2分間行なった。その後ステアリン酸マグネシウムを添加し、ブレンディングを1分間続けた。引き続きブレンドを0.5mmの篩いを通して選別し、容器に再装填して全て同一条件でさらに30秒間ブレンドした。
ブレンドをカプセル充填機(Zanassi AZ 5)に移し、硬ゼラチンカプセル(サイズ2)(平均質量:241.3mg(初め)〜244. mg(終わり))及びヒプロメロースカプセル(サイズ2)(平均質量:243.5(初め)〜243. mg(終わり))にそれぞれ充填した。
カプセル剤を閉じたガラスバイアル内で40℃/75%RHにて貯蔵した。上述したように、ベンダムスチン塩酸塩及び関連物質の量をHPLCで測定した。結果を下表4b(ヒプロメロースカプセルに充填)及び4c(ゼラチンカプセルに充填)に示す。
【0035】

【0036】

【0037】
実施例1

【0038】
0.68gのメチルパラベン、0.068gのプロピルパラベン及び0.068gのブチルヒドロキシトルエンを秤量して6.14gのエタノールに溶解させた。Cremophor(登録商標)RH 40を十分な量で40℃にて融かした。得られた5.56gのエタノール溶液、融けた36.83gのCremophor(登録商標)RH 40及び202.82gのPluronic(登録商標)L44 NFを秤量し、混合物が透明になるまで機械的撹拌機を用いて800rpmで混合した。混合物を10℃に置くことによって凝固させた。その後、凝固したブレンドに、手で撹拌することによって24.80gのベンダムスチン塩酸塩を加えてからUltraturrax T18高速ホモジナイザーを用いて15500rpmで10分間均質化してベンダムスチン塩酸塩をブレンド全体に分布させた。CFS 1200カプセル充填及び密封機を用いて25℃で操作して均質化懸濁液を硬ゼラチンカプセルに充填した。カプセルを閉じて密封した。
ねじ込みプラグ付きの閉じた琥珀色ガラス瓶内で液体充填カプセル剤を40℃/75%RH、30℃/65%RH、25℃/60%RH及び5℃にて貯蔵した。ベンダムスチン塩酸塩並びに分解生成物、合成の副生物のような関連物質の量をHPLCで測定した(カラム:Zorbax Bonus-RP、5μm;カラムオーブンの温度:30℃;オートサンプラーの温度:5℃;検出器:254nm)。結果を下表5bに示す。
【0039】

【0040】
実施例2

【0041】
0.68gのメチルパラベン、0.068gのプロピルパラベン及び0.068gのブチルヒドロキシトルエンを秤量し、6.14gのエタノールに溶解させた。Cremophor(登録商標)RH 40を十分な量で40℃にて融かした。得られた5.56gのエタノール溶液及び融けた239.65gのCremophor(登録商標)RH 40を秤量し、混合物が透明になるまで機械的撹拌機を用いて800rpmで混合した。混合物を凝固させ、室温に冷ました。その後、凝固したブレンドに、手で撹拌することによって24.80gのベンダムスチン塩酸塩を添加してからUltraturrax T18高速ホモジナイザーを用いて15500rpmで10分間均質化してベンダムスチン塩酸塩をブレンド全体に分布させた。CFS 1200カプセル充填及び密封機を用いて40℃で操作して均質化懸濁液を硬ゼラチンカプセルに充填した。カプセルを閉じて密封した。
そのようにして得た液体充填カプセル剤を、ねじ込みプラグ付きの閉じた琥珀色ガラス瓶内で40℃/75%RH、30℃/65%RH、25℃/60%RH及び5℃にて貯蔵した。上述したように、ベンダムスチン塩酸塩並びに分解生成物、合成の副生物のような関連物質の量をHPLCで測定した。結果を下表6bに示す。
【0042】

【0043】
実施例3

【0044】
0.68gのメチルパラベン、0.068gのプロピルパラベン及び0.068gのブチルヒドロキシトルエンを秤量して6.14gのエタノールに溶解させた。Cremophor(登録商標)RH 40を十分な量で40℃にて融かした。得られた5.56gのエタノール溶液、融けた36.83gのCremophor(登録商標)RH 40及び202.82gのSoftisan(登録商標)645を秤量し、混合物が透明になるまで機械的撹拌機を用いて800rpmで混合した。混合物を10℃に置くことによって凝固させた。その後、凝固したブレンドに、手で撹拌することによって24.80gのベンダムスチン塩酸塩を添加してからUltraturrax T18高速ホモジナイザーを用いて15500rpmで10分間均質化してベンダムスチン塩酸塩をブレンド全体に分布させた。CFS 1200カプセル充填及び密封機を用いて30℃で操作して均質化懸濁液を硬ゼラチンカプセルに充填した。カプセルを閉じて密封した。
ねじ込みプラグ付きの閉じた琥珀色ガラス瓶内で液体充填カプセルを40℃/75%RH、30℃/65%RH、25℃/60%RH及び5℃にて貯蔵した。上述したように、ベンダムスチン塩酸塩並びに分解生成物、合成の副生物のような関連物質の量をHPLCで測定した。結果を下表7bに示す。
【0045】

【0046】
実施例4

【0047】
2. 崩壊及び溶解試験
実施例5
実施例1、2及び3の液体充填カプセル製剤について、崩壊Apparatus Aを用いて37.0℃±0.5℃で操作してpH=1.0±0.05の1000.0mlの緩衝溶液中で崩壊試験を行なった。結果を表8a、8b及び8cに掲載する。
【0048】
実施例6
実施例1、2及び3の液体充填カプセル製剤についてpH1.5の人工胃酸溶液中で溶解試験を行なった(Ph Eur: 2.9.3: Dissolution test for solid dosage forms in Recommended Dissolution Media参照)。
HPLC(カラム:Zorbax Bonus-RP、5μm;カラムオーブンの温度:30℃;オートサンプラーの温度:5℃;検出器:254nm)によるアッセイのため溶解サンプルを試験した。250.0mLの0.2M塩化カリウム0.2Mを1000mL容量フラスコに入れ、207.0mLの0.2M塩酸を添加してからMilli-Q水で1000mLに希釈することによって、pH1.5の人工胃液を調製した。pHを測定し、必要ならば、2N塩酸又は2N水酸化カリウムでpHを1.5±0.05に調整した。
欧州薬局方6.0の2.9.3章に準拠してApparatus 2(パドル装置)を用いて溶解試験を行なった。パドルの回転速度は50rpm、温度は37±0.5℃、溶解媒体の量は500mlだった。
実施例1、2及び3の液体充填硬カプセル剤の結果を下表9a、9b及び9cに示す。
【0049】

【0050】

【0051】

【0052】
表9a、9b及び9cから分かるように、本発明に従う実施例2の液体充填硬カプセル製剤だけが、ベンダムスチンの好ましい速い溶解プロファイル(欧州薬局方に準拠してパドル装置を用いて50rpmで500mlの人工胃液中で測定した場合に10分で少なくとも60%、20分で70%及び30分で80%のベンダムスチンの溶解である)を示す。
【0053】
実施例7
表10:実施例4の製剤についての分析試験の結果

【0054】
3. in vivo試験
実施例8
50mgのベンダムスチンを含む実施例2の液体充填硬カプセル剤をオスとメスのビーグル犬に経口投与し、参考例1のカプセル剤と比較して、1用量(すなわち50mg)のベンダムスチンのバイオアベイラビリティー(AUC及びCmax)を決定し、かつこれらのカプセル製剤のバイオアベイラビリティーにおける可変性レベル(すなわちAUC及びCmaxについての %CV)を決定した。さらなる製剤(製剤X)も試験に含まれたが、この製剤は本発明の範囲外であるため、詳細は提供されない。必要とされる動物の総数は16だった。基本的な研究デザインは、治療群(arm)毎に8匹の動物によるクロスオーバーデザインだった。
【0055】
期間1(単回用量のカプセル剤、日1):

【0056】
1週間の休薬期間があった。
【0057】
期間2(期間1の1週間後、単回用量の下記製剤のいずれか、日8):

【0058】
カプセル製剤(参考例1)と実施例2の液体充填カプセル製剤の両方についての平均血漿プロファイル対時間を図1に示す。
【0059】
実施例9
癌患者における経口ベンダムスチンの絶対バイオアベイラビリティーを評価するためのオープンラベルランダム化二元クロスオーバー研究を行なって、経口製剤(実施例2)として投与されたベンダムスチンの絶対バイオアベイラビリティーを評価した。経口及びi.v.投与後の血漿中のベンダムスチンの薬物動態を評価することに加えて、さらなる目的は、実施例2の製剤のi.v.投与後、特に経口投与後のベンダムスチンの安全性と耐容性を評価することだった。
6名の患者は2期間:日-1〜2(期間1)及び日7〜9(期間2)病院に滞在した。患者は、日1及び8に以下の2つの治療の1つを順不同に受けるように登録された:
−単回経口用量の110.2mg(2×55.1mg)のベンダムスチン塩酸塩(HCl)(約100mgのベンダムスチン遊離塩基と等価である)及び
−単回のi.v.用量の100mgのベンダムスチンHCl(90.7mgのベンダムスチン遊離塩基と等価である)。
前臨床研究における経口製剤の安全性に基づき、かつ登録されたi.v.製剤の安全性に基づいてベンダムスチンHClの用量(静脈内では100mg、経口では1 10.2mg)を選択した。
日1及び2と日8及び9に血液サンプルを採取して、ベンダムスチンの経口及びi.v.投与後の血漿中のベンダムスチン及びその代謝物の薬物動態を決定した。ベンダムスチンのi.v.投与後の文献データ(Preiss 1985)に基づいて時点を選択した。Preiss及び共同研究者らは、癌患者に250〜350mgの用量のカプセルとしてベンダムスチンを経口投与した後の57%(範囲:25〜94%;%CV=44%)のベンダムスチンの平均バイオアベイラビリティーを報告した。日1及び8の朝に単回用量としてベンダムスチンを経口又は静脈内投与した(ベンダムスチン塩酸塩としてi.v.では100mg又は経口では110.2mg)。
2個の液体充填硬シェルカプセル剤として250mLの水と共に又は30分間のi.v.注入としてベンダムスチンを投与した。
患者は、試験薬物の投与2時間前まで許される水を飲むこと以外は、朝ベンダムスチンの経口及びi.v.投与前少なくとも8時間一晩じゅう絶食しなければならなかった。患者は、各投与の2時間後に軽い朝食を取ることが許される。
スクリーニング及び試験後来診を除き、入院期間の総期間は6日だった(日-1〜2及び日7〜9)。
最初の試験薬物の最初の投与の2週間前から一定の投薬を禁止した。
6名の患者を評価した後に得られた血中濃度-時間曲線を図2に示す。AUC経口/用量/AUCiv/用量*100%として計算される絶対バイオアベイラビリティーの平均値は58.5%、標準偏差は9.3及び個体間変動(%CVとして表される)は15.9だった。
従って、実施例2の経口製剤からベンダムスチン塩酸塩のバイオアベイラビリティーは以前に文献でベンダムスチン含有カプセル剤について報告されたものと一致することが分かったが、患者間の可変性はずっと低い。
【0060】
(産業上の利用可能性)
本発明の組成物は多くの利点を示す。管理医療スタッフの援助なしで患者が容易に本組成物を使用することができる。従って、時間のかかる通院は時代遅れになり、それによって患者のコンプライアンスを向上させ得る。さらに病院スタッフが細胞毒性物質との接触にさらされることが少ないので、職業上の危険が減少するという利点がある。細胞毒性化合物を含むバイアルを処分する必要がないので、環境ハザードも減少する。
本剤形をそのまま嚥下することができ、活性成分の溶解が達成されるまで患者が待つ必要がないことを意味する。その上、薬物を嚥下することは、活性成分と口腔粘膜の如何なる接触をも回避するため、薬物を摂取する好ましい方法である。さらに本剤形の良い安定性のため、室温で、かつ如何なる特殊な貯蔵条件も必要とせずに本組成物を容易に貯蔵することができる。
本発明の剤形を利用することによって、剤形の体積のかなりの減少を果たすことができる。サイズの減少は、製造及び取扱いの観点からも患者のコンプライアンスの観点からも望ましい。
医薬組成物はin vitroで高い溶解を示し、これはin vivoでのベンダムスチンの分解を減少させるであろう。従って、本発明の組成物は、従来技術の経口製剤に比べて、in vivoでのベンダムスチンの改良されたバイオアベイラビリティープロファイルを示し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性成分としてのベンダムスチン又はその医薬的に許容できるエステル、塩若しくは溶媒和物と、ポリエトキシル化ヒマシ油又はその誘導体及びエチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーから成る群より選択される医薬的に許容できる非イオン性界面活性剤である医薬的に許容できる賦形剤とを含む、経口投与用医薬組成物。
【請求項2】
前記活性成分がベンダムスチン塩酸塩であることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
10〜1000mg、好ましくは25〜600mg、さらに好ましくは50〜200mg、最も好ましくは約100mgの前記活性成分を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記ポリオキシエチル化ヒマシ油又はその誘導体がマクロゴールグリセロールヒドロキシステアラートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシエチル化ヒマシ油又はその誘導体がポリオキシル-35-ヒマシ油であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーがエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー(Pluronic(登録商標)L44 NF又はPoloxamer(登録商標)124)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
さらにコロイド状二酸化ケイ素を含むことを特徴とする請求項1、2、3、5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
さらにラウロイルマクロゴールグリセリド(Gelucire(登録商標)44/14)を含むことを特徴とする請求項1、2、3、5又は6に記載の医薬組成物。
【請求項9】
該組成物が硬ゼラチンカプセル内にあることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
該組成物が、欧州薬局方に準拠して50rpmでパドル装置を用いて500mlの溶解媒体中1.5のpHで測定した場合、20分で少なくとも60%、40分で70%及び60分で80%のベンダムスチンの溶解を示すことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
該組成物が、10分で少なくとも60%、20分で70%及び30分で80%の溶解を示すことを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、乳癌、卵巣癌、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、及び自己免疫疾患から選択される医学的状態の治療のために使用することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が少なくとも1種のさらなる活性薬と併用投与されるものであり、前記さらなる活性薬が、前記医薬組成物の投与前、投与と同時、又は投与後に与えられ、かつCD20に特異的な抗体、アントラサイクリン誘導体、ビンカアルカロイド又はプラチン誘導体本から成る群より選択されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記CD20に特異的な抗体がリツキシマブであり;前記アントラサイクリン誘導体がドキソルビシン又はダウノルビシンであり;前記ビンカアルカロイドがビンクリスチンであり、かつ前記プラチン誘導体本がシスプラチン又はカルボプラチンであることを特徴とする請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物が少なくとも1種のコルチコステロイドと併用投与されるものであり、前記コルチコステロイドが前記医薬組成物の投与前、投与と同時、又は投与後に与えられる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記コルチコステロイドがプレドニゾン又はプレドニゾロンであることを特徴とする請求項15に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−510484(P2012−510484A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538906(P2011−538906)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008857
【国際公開番号】WO2010/063493
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511134609)アステラス ドイチュランド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】