説明

ペレットの製造法

【課題】 ポリ乳酸系樹脂の結晶性に優れた樹脂組成物から、耐ブロッキング性に優れたペレットを製造する方法の提供。
【解決手段】 ポリ乳酸系樹脂、可塑剤及び結晶核剤を含有する樹脂組成物からペレットを製造する方法であって、樹脂組成物を混練機で溶融混練し、混練機のダイスからストランドを押出する工程(1)、混練機のダイスから押出されたストランドを40℃以下の液体媒体で0.5〜5秒間冷却する工程(2)、工程(2)で冷却したストランドを40℃以下の雰囲気中で少なくとも10秒間保持する工程(3a)及び/又は70〜90℃の雰囲気中又は液体媒体中に少なくとも3秒間保持する工程(3b)を有するペレットの製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐ブロッキング性に優れた樹脂組成物のペレットを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの石油を原料とする汎用樹脂は、良好な加工性及び耐久性等の性質から、日用雑貨、家電製品、自動車部品、建築材料あるいは食品包装などの様々な分野に使用されている。しかしながらこれらの樹脂製品は、役目を終えて廃棄する段階で良好な耐久性が欠点となり、自然界における分解性に劣るため、生態系に影響を及ぼす可能性がある。
【0003】
このような問題を解決するために、熱可塑性樹脂で生分解性を有する樹脂として、ポリ乳酸及び乳酸と他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸とのコポリマー、脂肪族多価アルコールと脂肪族多価カルボン酸から誘導される脂肪族ポリエステル等の生分解性樹脂組成物が開発されている。
【0004】
これらの生分解性樹脂組成物の中でもポリ乳酸系樹脂は、トウモロコシ、芋などからとれる糖分から、発酵法によりL−乳酸が大量に作られ安価になってきたこと、原料が自然農作物なので総酸化炭素排出量が極めて少ないことから、石油を原料とする汎用樹脂の代替として期待されている。
【0005】
またポリ乳酸系樹脂の性能として剛性が強く透明性が良いという特徴があるため硬質成形品分野で利用されてきたが、脆く、硬く、可撓性に欠ける特性のためにフィルムなどに成形した場合は、柔軟性の不足や、折り曲げたときに白化などの問題があった。また、タルク等(特許文献1)の結晶核剤を添加することによって、ポリ乳酸を結晶化させ、耐熱性等を改善する方法が提案されている。しかしながら射出により成形する場合は、ポリ乳酸を短時間で結晶化させるためにタルク等の結晶核剤を多量に添加し、100℃以上の金型温度で熱処理を行う必要があった。
【0006】
また、軟質、半硬質成形品分野に適応させるため、可塑剤を添加する方法が種々提案されている。例えばアセチルクエン酸トリブチル、ジグリセリンテトラアセテート等の可塑剤を添加する技術が開示されている。これら可塑剤をポリ乳酸に添加し、押出成形等でフィルム又はシートを成形した場合、良好な柔軟性が得られるが、その樹脂が非晶状態であるためにガラス転移点付近の温度変化による柔軟性の変化が著しく(感温性)、また高温時の耐熱性が不足しているため、季節によって物性が著しく変化し、高温環境下での使用が困難となる問題があった。
【0007】
一方、上記成形品を得るためのコンパウンドペレットを製造する場合、ポリ乳酸系樹脂においては溶融混練後、混練機のダイスからストランド状の溶融物を押出し、水にて冷却後、カッター装置によりペレット化し、攪拌機能を有する乾燥機にて乾燥後使用する方法が取られている。しかしながら、攪拌機能を持たない乾燥機(ホッパドライヤー)で約80℃にて乾燥を行った場合、ポリ乳酸系樹脂は非結晶であるためペレットが装置内でブロッキングし、乾燥機から取り出せないという問題が発生する。また、ポリ乳酸系樹脂に滑剤または滑剤と炭酸カルシウム等の充填剤を添加した組成物をホットカットによりペレット化する方法(特許文献2)が提案されている。しかしながら、得られたペレットを射出により成形する場合は、ポリ乳酸を短時間で結晶化させるためにタルク等の結晶核剤を多量に添加し、100℃以上の金型温度で熱処理を行う必要があった。また、これらの組成物では、混練機のダイスからストランド状の溶融物を押出し、水にて冷却後、カッター装置によりペレット化する方法は、ポリ乳酸系樹脂のみと同様の問題が発生した。
【特許文献1】特許第3410075号公報
【特許文献2】特開2004−352844号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、ポリ乳酸系樹脂の結晶性に優れた樹脂組成物から、耐ブロッキング性に優れたペレットを製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリ乳酸系樹脂、可塑剤及び結晶核剤を含有する樹脂組成物からペレットを製造する方法であって、下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)を有するペレットの製造法を提供する。
工程(1):樹脂組成物を混練機で溶融混練し、混練機のダイスからストランドを押出する工程
工程(2):混練機のダイスから押出されたストランドを40℃以下の液体媒体で0.5〜5秒間冷却する工程
工程(3):工程(2)で冷却したストランドを40℃以下の雰囲気中で少なくとも10秒間保持する工程(3a)及び/又は70〜90℃の雰囲気中又は液体媒体中に少なくとも3秒間保持する工程(3b)
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造法によると、結晶化した樹脂組成物のペレットを短時間に効率よく得ることができる。また、本発明の製造法により得られるペレットは耐ブロッキング性に優れ、乾燥の際は攪拌機能を有しない乾燥機でも効率的に乾燥することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[ポリ乳酸系樹脂]
本発明で使用されるポリ乳酸系樹脂としては、JIS K6953(ISO14855)「制御された好気的コンポスト条件の好気的かつ究極的な生分解度及び崩壊度試験」に基づいた生分解性を有するポリエステル樹脂が好ましい。
【0012】
ここで、ポリ乳酸系樹脂とは、ポリ乳酸、又は乳酸とヒドロキシカルボン酸とのコポリマーである。ヒドロキシカルボン酸として、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシペンタン酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシヘプタン酸等が挙げられ、グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸が好ましい。好ましいポリ乳酸の分子構造は、L−乳酸又はD−乳酸いずれかの単位20〜100モル%とそれぞれの対掌体の乳酸単位0〜20モル%からなるものである。また、乳酸とヒドロキシカルボン酸とのコポリマーは、L−乳酸又はD−乳酸いずれかの単位85〜100モル%とヒドロキシカルボン酸単位0〜15モル%からなるものである。これらのポリ乳酸系樹脂は、L−乳酸、D−乳酸及びヒドロキシカルボン酸の中から必要とする構造のものを選んで原料とし、脱水重縮合することにより得ることができる。好ましくは、乳酸の環状二量体であるラクチド、グリコール酸の環状二量体であるグリコリド及びカプロラクトン等から必要とする構造のものを選んで開環重合することにより得ることができる。ラクチドにはL−乳酸の環状二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の環状二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸とが環状二量化したメソ−ラクチド及びD−ラクチドとL−ラクチドとのラセミ混合物であるDL−ラクチドがある。本発明ではいずれのラクチドも用いることができる。但し、主原料は、D−ラクチド又はL−ラクチドが好ましい。
【0013】
市販されているポリ乳酸系樹脂としては、例えば、カーギル・ダウ・ポリマーズ社製、商品名Nature works;三井化学(株)製、商品名レイシア;カネボウ合繊(株)製、商品名ラクトロン;大日本インキ化学工業(株)製、商品名プラメート;東洋紡績(株)製、商品名バイロエコール;トヨタ自動車(株)製、エコプラスチック等が挙げられる。
【0014】
[可塑剤]
本発明に用いられる可塑剤としては、特に限定されず、一般の生分解性樹脂に用いられる可塑剤が挙げられるが、ポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進する観点から、分子中に2個以上のエステル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜9、特に3〜9の化合物が好ましい。このような化合物としては、多価カルボン酸とポリエチレングリコールモノアルキルエーテルとのエステル、多価アルコールのアルキルエーテルエステル等が挙げられる。
【0015】
本発明に用いられる可塑剤の平均分子量は耐ブリード性及び耐揮発性の観点から、好ましくは250〜700であり、より好ましくは300〜600であり、更に好ましくは350〜550であり、特に好ましくは400〜500である。尚、平均分子量は、JIS K0070に記載の方法で鹸化価を求め、次式より計算で求めることができる。
【0016】
平均分子量=56108×(エステル基の数)/鹸化価
【0017】
このような可塑剤の中では、樹脂組成物の成形性、耐衝撃性に優れる観点から、コハク酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜4のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、アジピン酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル等の多価カルボン酸とポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル;酢酸とグリセリンのエチレンオキサイド平均3〜9モル付加物とのエステル、酢酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が4〜9のポリエチレングリコールとのエステル等の多価アルコールのアルキルエーテルエステルがより好ましい。樹脂組成物の成形性、耐衝撃性及び可塑剤の耐ブリード性に優れる観点から、コハク酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜3のポリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、アジピン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、1,3,6−ヘキサントリカルボン酸とジエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、酢酸とグリセリンのエチレンオキサイド平均3〜6モル付加物とのエステル、酢酸とエチレンオキサイドの平均付加モル数が4〜6のポリエチレングリコールとのエステルがさらに好ましい。樹脂組成物の成形性、耐衝撃性及び可塑剤の耐ブリード性、耐揮発性及び耐刺激臭の観点から、コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、酢酸とグリセリンのエチレンオキサイド平均3〜6モル付加物とのエステルが特に好ましい。これらの可塑剤は単独又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
尚、本発明のエステルは、可塑剤としての機能を十分発揮させる観点から、全てエステル化された飽和エステルであることが好ましい。
【0019】
可塑剤によって、本発明の効果が向上する理由は定かではないが、可塑剤が、分子中に2個以上のエステル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜9の化合物(更にメチル基を有していることが好ましく、2個以上有していることが好ましい。)であると、その耐熱性及びポリ乳酸系樹脂に対する相溶性が良好となる。そのため耐ブリード性が向上するととともに、ポリ乳酸系樹脂の軟質化効果も向上する。このポリ乳酸系樹脂の軟質化向上により、ポリ乳酸系樹脂が結晶化するときはその成長速度も向上すると考えられる。その結果、本発明に係わる工程(2)及び工程(3)を行うことで、混練機のダイスから押出されたストランドの結晶化が60秒以内に進み耐ブロッキング性に優れたペレットが得られるものと考えられる。
【0020】
[結晶核剤]
本発明において、結晶核剤として、有機核剤及び無機核剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
本発明に用いられる有機核剤は、ポリ乳酸系樹脂の結晶化促進、有機核剤の耐ブルーム性の観点から、有機核剤分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物が好ましく、水酸基を2つ以上有し、アミド基を2つ以上有する脂肪族化合物であることがより好ましい。有機核剤の融点は、65℃以上が好ましく、70℃〜220℃がより好ましく、80〜190℃が更に好ましい。
【0021】
有機核剤によって、本発明の効果が向上する理由は定かではないが、上記の官能基を2つ以上有すると、ポリ乳酸系樹脂との相互作用が良好となり、相溶性が向上する結果、樹脂中で微分散することによるものと考えられ、恐らく、水酸基を1つ以上、好ましくは2つ以上有することによりポリ乳酸系樹脂への分散性が良好となり、アミド基を1つ以上、好ましくは2つ以上有することによりポリ乳酸系樹脂への相溶性が良好となるものと考えられる。結晶核剤の融点はストランドの熱処理温度より高く、樹脂組成物の混練温度以下であると、混練時に結晶核剤が溶解することによってその分散性が向上し、熱処理温度より高いと結晶核生成の安定化や熱処理温度が上げられるため、ポリ乳酸系樹脂の結晶化速度向上の観点でも好ましい。また、上記好ましい結晶核剤は、樹脂溶融状態から冷却過程で速やかに微細な結晶を多数析出するものと考えられ、透明性、結晶化速度向上の観点でも好ましい。
【0022】
本発明に用いられる有機核剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸モノエタノールアミド等のヒドロキシ脂肪酸モノアミド、メチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド等のヒドロキシ脂肪酸ビスアミド等が挙げられる。ポリ乳酸系樹脂の結晶化促進及び有機核剤の耐ブルーム性の観点から、エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドが好ましい。
【0023】
本発明に用いられる無機核剤としては、タルク、スメクタイト、カオリン、マイカ、モンモリロナイト等のケイ酸塩、シリカ、酸化マグネシウム等の無機化合物が挙げられ、分散性の観点から平均粒径が0.1〜20μmの無機化合物が好ましく、0.1〜10μmがより好ましい。無機化合物の中でも、ポリ乳酸系樹脂の結晶化促進の観点からケイ酸塩が好ましく、タルクがより好ましい。
【0024】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂、可塑剤、結晶核剤を含有するものである。本発明の樹脂組成物におけるポリ乳酸系樹脂、可塑剤、結晶核剤(有機核剤及び/又は無機核剤)の特に好ましい組合せとしては、ポリ乳酸系樹脂がポリ乳酸、可塑剤がコハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのエステル、有機核剤がエチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド及びヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミドから選ばれる少なくとも1種、無機核剤がタルクである。
【0025】
上記の通り、樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂、可塑剤、結晶核剤を含有することにより本発明の効果を有するものである。従って、ポリ乳酸系樹脂、特にポリ乳酸に上記可塑剤、又は結晶核剤を単独で添加しても、本発明の効果が得られない。
【0026】
本発明の樹脂組成物中の、ポリ乳酸系樹脂の含有量は、本発明の目的を達成する観点から、好ましくは50重量%以上であり、より好ましくは60重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%以上である。
本発明の樹脂組成物における可塑剤の含有量は、耐ブリード性及び十分な結晶化速度を得る観点から、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し、5〜60重量部が好ましく、7〜50重量部がより好ましく、10〜40重量部がさらに好ましい。
結晶核剤として有機核剤を用いる場合、本発明の樹脂組成物における有機核剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し、0.1〜5重量部が好ましく、0.3〜3重量部が更に好ましく、0.5〜2重量部が特に好ましい。
結晶核剤として無機核剤を用いる場合、本発明の樹脂組成物における無機核剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し、0.1〜150重量部が好ましく、0.1〜100重量部がより好ましく、0.3〜50重量部が更に好ましく、0.5〜20重量部が特に好ましい。
【0027】
樹脂組成物は、上記の結晶核剤、可塑剤以外に、更に、加水分解抑制剤を含有することができる。加水分解抑制剤としては、ポリカルボジイミド化合物やモノカルボジイミド化合物等のカルボジイミド化合物が挙げられ、樹脂組成物の成形性の観点からポリカルボジイミド化合物が好ましく、樹脂組成物の耐熱性、耐衝撃性及び有機核剤の耐ブルーム性の観点から、モノカルボジイミド化合物が好ましい。
【0028】
ポリカルボジイミド化合物としてはポリ(4,4’−ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド等が挙げられ、モノカルボジイミド化合物としては、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミド等が挙げられる。
【0029】
上記カルボジイミド化合物は、樹脂組成物の成形性、耐熱性、耐衝撃性及び有機核剤の耐ブルーム性を満たすために、単独または2種以上組み合わせて用いてもよい。また、ポリ(4,4’−ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)はカルボジライトLA−1(日清紡績(株)製)を、ポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミド及びポリ(1,3,5−トリイソプロピルベンゼン及び1,5−ジイソプロピルベンゼン)ポリカルボジイミドはスタバクゾールP及びスタバクゾールP−100(Rhein Chemie社製)を、N,N’−ジ−2,6−ジイソプロピルフェニルカルボジイミドはスタバクゾール1(Rhein Chemie社製)をそれぞれ購入して使用することができる。
樹脂組成物における加水分解抑制剤の含有量は、ポリ乳酸系樹脂の結晶化促進の観点から、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し、0.05〜7重量部が好ましく、0.1〜6重量部が更に好ましく、0.5〜4重量部が特に好ましい。
【0030】
樹脂組成物は、ポリ乳酸以外の他の樹脂成分として、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート/アジペート又はポリエチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル;ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート又はポリテトラメチレンアジペート/テレフタレート等の脂肪族芳香族コポリエステルを本発明の目的達成を妨げない範囲で含有することができる。
【0031】
樹脂組成物は、上記以外に、更にヒンダードフェノール又はフォスファイト系の酸化防止剤、又は炭化水素系ワックス類やアニオン型界面活性剤である滑剤等の他の成分を含有することができる。酸化防止剤、滑剤のそれぞれの含有量は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し、0.05〜3重量部が好ましく、0.1〜2重量部が更に好ましい。
【0032】
樹脂組成物は、上記以外の他の成分として、帯電防止剤、防曇剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、無機充填剤、防カビ剤、抗菌剤、発泡剤、難燃剤等を、本発明の目的達成を妨げない範囲で含有することができる。
【0033】
[樹脂組成物のペレットの製造法]
本発明の樹脂組成物のペレットの製造法は、上記工程(1)、工程(2)及び工程(3)を有する方法である。
【0034】
工程(1)において、樹脂組成物の溶融混練は、ポリ乳酸系樹脂の融点(Tm)以上で行うことが好ましい。溶融混練の具体例としては、通常の方法によって行う事ができ、例えば、2軸押出機等を用いてポリ乳酸系樹脂を溶融させながら、上記の可塑剤、有機核剤及び/又は無機核剤を計量ポンプを用いて混練する方法等が挙げられる。また、製造量が少ない場合は、ポリ乳酸系樹脂と有機核剤及び/又は無機核剤をドライブレンドした後、同時に溶融させてもよい。均一にドライブレンドする方法としては、リボンブレンダー、ヘンシルミキサー、タンブラーミキサーまたはエアーブレンダーを使用することができる。溶融混練温度は、上記の可塑剤、有機核剤及び/又は無機核剤の分散性の観点から、ポリ乳酸系樹脂の融点(Tm)以上が好ましく、より好ましくはTm〜Tm+100℃の範囲であり、更に好ましくはTm〜Tm+50℃の範囲である。例えば、ポリ乳酸系樹脂がポリ乳酸の場合は、好ましくは170〜240℃であり、より好ましくは170〜220℃である。また、2軸押出機等を用いて溶融混練する場合、ダイスの温度は押出されるストランドの安定性の観点から、140〜170℃の範囲が好ましい。
【0035】
尚、ポリ乳酸系樹脂の融点(Tm)は、JIS−K7121に基づく示差走査熱量測定(DSC)の昇温法による結晶融解吸熱ピーク温度より求められる値である。
【0036】
本発明の工程(2)、工程(3)の具体例としては、2軸押出機等のダイスより押出されたストランドを水槽等に溜めた40℃以下の液体媒体で急冷〔工程(2)〕し、直ちに40℃以下の雰囲気中で余熱によってストランドを結晶化〔工程(3a)〕させた後、カットしてペレットを得る方法や、2軸押出機等のダイスより押出されたストランドを水槽等に溜めた40℃以下の液体媒体で急冷〔工程(2)〕し、直ちに70〜90℃(好ましくは70〜80℃)の雰囲気中又は液体媒体中で保持してストランドを結晶化〔工程(3b)〕させた後、カットしてペレットを得る方法や、2軸押出機等のダイスより押出されたストランドを水槽等に溜めた40℃以下の液体媒体で急冷〔工程(2)〕し、直ちに40℃以下の雰囲気中で余熱によってストランドを結晶化〔工程(3a)〕させ、及び70〜90℃(好ましくは70〜80℃)の雰囲気中又は液体媒体中で保持して結晶化〔工程(3b)〕させた後にカットしてペレットを得る方法(尚、工程(3a)と工程(3b)とを同時に行う場合は、順序はどちらでもかまわない。)等が挙げられる。
【0037】
工程(2)及び工程(3b)の液体媒体の温度は、極端にダイスから押出されたストランドの熱の影響を受けない場所の液体媒体をアルコール温度計等で測定することによって求めることができる。例えばストランドから5cm以上離れた場所の液体媒体の温度をアルコール温度計等で測定することが好ましい。
工程(3a)の雰囲気中の温度は、当該装置が置かれた室内の温度をアルコール温度計等で測定することによって求めることができる。例えばストランドから1〜5cm程度離れた温度をアルコール温度計等によって測定することが好ましい。
工程(3b)の雰囲気中の温度は、例えば熱風装置や赤外線ヒーターが内部に装着されたトンネル内の温度をアルコール温度計等で測定することによって求めることができ、ストランドから1〜2cm程度離れた温度をアルコール温度計等によって測定することが好ましい。
【0038】
ポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進し、耐ブロッキング性に優れたペレットを得る観点から、工程(2)におけるストランドの冷却時間は0.5〜5秒であり、1〜3秒が好ましい。
工程(3)において、工程(3a)のみの場合は、工程(3a)の保持時間は少なくとも10秒間であり、ポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進し、耐ブロッキング性に優れたペレットを得る観点及び生産性の観点から10〜30秒が好ましく、15〜30秒がより好ましい。
工程(3)において、工程(3b)のみの場合は、工程(3b)の保持時間は少なくとも3秒間であり、ポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進し、耐ブロッキング性に優れたペレットを得る観点及び生産性の観点から3〜20秒が好ましく、10〜20秒がより好ましい。
工程(3)において、工程(3a)及び工程(3b)を行う場合は、工程(3a)の保持時間は少なくとも10秒間であり、工程(3b)の保持時間は少なくとも3秒間である。ポリ乳酸系樹脂の結晶化を促進し、耐ブロッキング性に優れたペレットを得る観点及び生産性の観点から、工程(3a)の保持時間は10〜30秒が好ましく、15〜30秒がより好ましく、工程(3b)の保持時間は3〜10秒が好ましく、5〜10秒がより好ましい。
尚、ストランド径は生産性の観点から2mm〜5mmが好ましい。
【0039】
また、工程(2)におけるストランドを液体媒体で冷却する温度は、ストランドの引取易さ及びポリ乳酸系樹脂の結晶化促進の観点から、40℃以下であり、5〜30℃が好ましく、10〜25℃がより好ましく、15〜25℃がさらに好ましい。工程(3)において、工程(3a)における雰囲気中の温度はポリ乳酸系樹脂の結晶化促進の観点から、40℃以下であり、5〜40℃が好ましく、10〜40℃がより好ましく、15〜40℃がさらに好ましい。工程(3b)における雰囲気中又は液体媒体中で保持する温度はポリ乳酸系樹脂の結晶化促進の観点から70〜90℃であり、70〜80℃が好ましい。
【0040】
尚、工程(3b)の雰囲気中で保持する手段としては、例えば熱風装置や赤外線ヒーターが内部に装着されたトンネルにストランドを通過させることによって行うことができる。工程(3b)における保持する手段としては、熱効率の観点から液体媒体中で行うことが好ましい。
尚、工程(2)および工程(3b)で使用される液体媒体としては、例えば水、エチレングリコールまたはシリコンオイル等の沸点が100℃以上の低粘度液体が好ましく、安全性および取り扱い性の観点から水がより好ましい。液体媒体の温度は、例えば液体媒体を温調機器で循環させる等によって安定的に保持することが好ましい。
【0041】
本発明の製造法において、ペレットの結晶化の有無は示差走査熱量測定(DSC)装置を使用して確認できる。ペレットを細かく切断してアルミニウムパンに15mg秤取り、室温から8℃/分の昇温速度で200℃まで測定する。その際、冷結晶化の発熱ピークが観測されればペレットは非結晶であり、観測されなければペレットは結晶化されている。尚、さらに、200℃から5℃/分の降温速度で室温まで測定し、その際、溶融結晶化の発熱ピークが観測され、ペレットが結晶性のあることを確認しておく。
【実施例】
【0042】
以下の実施例及び比較例で用いる樹脂組成物をまとめて表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
*1 ポリ乳酸系樹脂;三井化学(株)製、LACEA H−400
*2 可塑剤;コハク酸とトリエチレングリコールモノメチルエーテルとのジエステル
*3 有機核剤;エチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド(日本化成(株)製、スリパックス H)
*4 無機核剤;日本タルク(株)製、Micro Ace P-6
*5 加水分解抑制剤;日清紡積(株)製、カルボジライトLA−1
*6 有機核剤;ヘキサメチレンビス12−ヒドロキシステアリン酸アミド(日本化成(株)製、スリパックス ZHH)
*7 可塑剤;グリセリンのエチレンオキサイド6モル付加物の酢酸エステル
*8 無機核剤;水澤化学(株)製、ミズカシルP-526
【0045】
実施例1〜7、比較例1〜7
二軸押出機〔ベルストルフ製ZE40A×40D(スクリュー径:Ф43mm L/D=37.2)〕を用いて、表1に示す樹脂組成物(A〜G)中のポリ乳酸系樹脂と有機核剤、無機核剤、加水分解抑制剤等の粉末は予めヘンシルミキサーでドライブレンドしてホッパー投入し、可塑剤は液添加することによって、シリンダー温度160〜170℃で溶融混練を行い、ダイスから押出された直径4mmのストランド〔工程(1)〕を表2及び表3に示す各種条件で処理した後、カットしてペレットを得た。尚、工程(2)及び(3b)において、液体媒体としては水を用いた。
【0046】
次に、このようにして得られたペレットの結晶化の有無、カット直後の耐ブロッキング性、80℃×5時間後の耐ブロッキング性及び耐ブリード性を下記の方法で評価した。これらの結果を表2及び表3に示す。
【0047】
<ペレットの結晶化>
ペレットを細かく切断してアルミニウムパンに15mg秤取り、室温から8℃/分の昇温速度で200℃まで測定する。その際、冷結晶化の発熱ピークが観測されればペレットは非結晶であり、観測されなければペレットは結晶化されている。尚、その際、さらに、200℃から5℃/分の降温速度で室温まで測定し、溶融結晶化の発熱ピークが観測され、ペレットが結晶性のあることを確認しておいく。
上記の方法でペレットの結晶化の有無を確認し、結晶化していれば○、非結晶であれば×とした。
【0048】
<耐ブロッキング性(カット直後)>
ストランドをカットした直後のペレットを網のカゴ(30cm×30cm×30cm)に約5kg分溜め、その余熱でブロッキングするかどうかを確認した。
耐ブロッキング性が良好であれば○、不良であれば×とした。
【0049】
<耐ブロッキング性(80℃×5時間後)>
得られたペレットを網のカゴ(30cm×30cm×30cm)に約5kg分溜め、それを温風乾燥機を用いて、80℃で5時間乾燥した。
乾燥後、耐ブロッキング性が良好であれば○、不良であれば×とした。
【0050】
<耐ブリード性(80℃×5時間後)>
得られたペレットを網のカゴ(30cm×30cm×30cm)に約5kg分溜め、それを温風乾燥機を用いて、80℃で5時間乾燥した。
乾燥後、可塑剤に由来する耐ブリード性が良好であれば○、不良であれば×とした。
【0051】
【表2】

【0052】
【表3】

【0053】
表2の結果から、樹脂組成物(A〜G)を溶融混練後、混練機のダイスから押出されたストランドを、本発明の工程(2)及び工程(3)の処理を行い製造したペレットは結晶化し、耐ブロッキング性及び耐ブリードに優れたものであった。一方、表3の結果から、樹脂組成物(A〜G)を溶融混練後、混練機のダイスから押出されたストランドを、従来からの水冷のみで処理したペレットは非結晶状態であり、耐ブロッキング性に劣るものであった。
【0054】
実施例8〜11、比較例8〜10
二軸押出機〔ベルストルフ製ZE40A×40D(スクリュー径:Ф43mm L/D=37.2)〕を用いて、表1に示す樹脂組成物(H〜N)中のポリ乳酸系樹脂と有機核剤、無機核剤、加水分解抑制剤等の粉末は予めヘンシルミキサーでドライブレンドしてホッパー投入し、可塑剤は液添加することによって、シリンダー温度160〜170℃で溶融混練を行い、ダイスから押出された直径4mmのストランド〔工程(1)〕を表4に示す各種条件で処理した後、カットしてペレットを得た。尚、工程(2)及び(3b)において、液体媒体としては水を用いた。
【0055】
次に、このようにして得られたペレットの結晶化の有無、カット直後の耐ブロッキング性、80℃×5時間後の耐ブロッキング性及び耐ブリード性を、実施例1〜7と同様に評価した。これらの結果を表4に示す。
【0056】
【表4】

【0057】
表4の結果から、本発明の樹脂組成物(H〜K)から、本発明の工程(1)〜(3)を経て製造したペレットは、結晶化し、耐ブロッキング性及び耐ブリードに優れたものであった。一方、可塑剤または結晶核剤を含有しない比較の樹脂組成物(L〜N)から、本発明の工程(1)〜(3)を経て製造したペレットは非結晶状態であり、耐ブロッキング性に劣るものであった。
【0058】
以上の結果から、ポリ乳酸系樹脂、可塑剤及び結晶核剤を含有する樹脂組成物から、本発明の方法でペレットを製造すると、結晶化したペレットを効率よく得ることができるため、ペレットは耐ブロッキング性に優れ、乾燥の際は攪拌機能を有する特殊な乾燥機を使用する必要がないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂、可塑剤及び結晶核剤を含有する樹脂組成物からペレットを製造する方法であって、下記工程(1)、工程(2)及び工程(3)を有するペレットの製造法。
工程(1):樹脂組成物を混練機で溶融混練し、混練機のダイスからストランドを押出する工程
工程(2):混練機のダイスから押出されたストランドを40℃以下の液体媒体で0.5〜5秒間冷却する工程
工程(3):工程(2)で冷却したストランドを40℃以下の雰囲気中で少なくとも10秒間保持する工程(3a)及び/又は70〜90℃の雰囲気中又は液体媒体中に少なくとも3秒間保持する工程(3b)
【請求項2】
ストランドの直径が2〜5mmである請求項1記載の製造法。
【請求項3】
可塑剤が、分子中に2個以上のエステル基を有し、エチレンオキサイドの平均付加モル数が2〜9の化合物である請求項1又は2記載の製造法。
【請求項4】
結晶核剤が、有機核剤及び無機核剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3いずれかに記載の製造法。
【請求項5】
有機核剤が、分子中に水酸基とアミド基とを有する化合物である請求項4記載の製造法。
【請求項6】
ポリ乳酸系樹脂100重量部に対し、可塑剤の含有量が5〜60重量部、有機核剤の含有量が0.1〜5重量部及び/又は無機核剤の含有量が0.1〜150重量部である、請求項1〜5いずれかに記載の製造法。

【公開番号】特開2007−152760(P2007−152760A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351569(P2005−351569)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】