説明

ペンダントシリル基を有するフルオロケミカルウレタン化合物

フルオロケミカルウレタン化合物及びそれから誘導されるコーティング組成物について記載する。本化合物及び組成物は、防水、防油、防染み、防汚性を与えるように、基材、特に、セラミックス又はガラス等の硬表面を有する基材の処理に使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水、防油、防染み、防汚性を与えるように、基材、特に、セラミックス又はガラス等の硬表面を有する基材の処理に使用され得る、フルオロケミカルウレタン化合物及びそれから誘導されるコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
防油及び防水性を与えるように基材を処理するための、多くのフッ素化物が当該技術分野において既知であるが、防水性、防油性を与え、洗浄し易くするように、基材、特に、セラミックス、ガラス、及び石等の硬表面を有する基材を処理するための、更に改善された組成物を提供する要望が、依然として存在している。特に光学分野において、染み、泥、及び塵耐性を与えるために、ガラス及びプラスチックを硬表面として処理する必要性もまた存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような組成物及びそれらを用いる方法が、改善された性質を有するコーティングを生み出し得ることが望ましい。特に、コーティングの摩耗耐性の改善を含み、コーティングの耐久性を改善することが好ましい。更に、より少量の洗剤、水、又はより少ない手作業でありながら、このような基材の洗浄の容易さを向上することは、最終消費者の要望であるだけでなく、環境に対してもプラスの効果を有する。また、コーティングが、特に良好な耐化学性及び耐溶媒性を示すことが望ましい。該組成物は、容易かつ安全な方法で簡便に適用され得、また既存の製造方法と相性が良い。好ましくは、該組成物は、要処理基材を作製するために実施される製造プロセスに容易に適合する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、式
【0005】
【化1】

【0006】
のフルオロケミカルウレタン化合物であって、式中、Rが、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロオキシアルキル基、ペルフルオロアルキレン基、及び/又はペルフルオロオキシアルキレン基を含む、フッ素含有基であり、
が、x+yの価数を有する、ポリイソシアネートの残基であり、
が、アクリロイル基とアミノシランとのマイケル反応から誘導されるシラン含有部分であり、
x及びyが、それぞれ独立して、少なくとも1であり、zが、1又は2である、化合物を提供する。
【0007】
一態様において、本発明は、求核性アクリロイル化合物(少なくとも1つのイソシアネート反応性ヒドロキシ基を有するアクリレート化ポリオール等)と、アミノシランとのマイケル反応から誘導される、少なくとも1つのフッ素含有基及び少なくとも1つのシラン含有部分を含有する、1つ以上の化合物(zが1である)又はオリゴマー(zが2である)及びこれらの混合物を含有する、化学組成物に関する。
【0008】
本明細書で使用される、用語「オリゴマー」は、ほんの僅か、つまり、平均10まで、しかし好ましくは平均5まで、の反復(重合)又は反復可能単位からなる高分子を意味する。それぞれの反復単位は、少なくとも1つの求核性、フッ素含有化合物、アミノシラン、及びポリイソシアネートの反応から誘導される、ポリイソシアネートの残基を含み、該フッ素含有部分は、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロオキシアルキル、及びペルフルオロオキシアルキレンからなる群から選択される。オリゴマーは、1つ以上のペルフルオロアルキル基、1つ以上のペルフルオロオキシアルキル基、及び/又は1つ以上のシリル基で終結されてもよい。
【0009】
これらの化合物又はオリゴマーは、アミノシランとペンダントアクリロイル基を有するフッ素含有ウレタン化合物とのマイケル反応生成物を含有してもよく、該ウレタン化合物は、ポリイソシアネート、1つ又は2つの、求核性のイソシアネート反応性官能基を有する、求核性フルオロケミカル化合物、及び求核性アクリロイル化合物の反応生成物を含有する。別の実施形態において、本化合物は、アミノシランと求核性アクリロイル化合物とのマイケル反応生成物、及びポリイソシアネートとフッ素含有求核性化合物との後続反応生成物を含有してもよい。
【0010】
特に記述しない限り、本明細書及び特許請求の範囲に使用される次の用語は以下に与えられる意味を有する。
【0011】
「アルキル」は、1〜約12個の炭素原子を有する、例えばメチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、ペンチル等の線状又は分枝状、環式又は非環式の、飽和一価炭化水素ラジカルを意味する。
【0012】
「アクリロイル」は、アクリレート、チオアクリレート、又はアクリルアミドを意味する。
【0013】
「アルキレン」とは、1〜約12個の炭素原子を有する線状飽和二価炭化水素ラジカル又は3〜約12個の炭素原子を有する分枝状飽和二価炭化水素ラジカル、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレン等を意味する。
【0014】
「アルコキシ」は、例えばCH−O−、C−O−等の、末端酸素原子を有するアルキルを意味する。
【0015】
「アラルキレン」は、例えばベンジル、1−ナフチルエチル等の、アルキレンラジカルに付着する芳香族基を有する、上記に定義されるアルキレンラジカルを意味する。
【0016】
「硬化化学組成物」は、化学組成物が乾燥されること、又は溶媒が、化学組成物から、周辺温度以上より乾燥まで、蒸発したことを意味する。本組成物は、更に、ウレタン化合物間に形成されるシロキサン結合の結果、架橋されてもよい。
【0017】
「求核性フッ素含有化合物」は、ヒドロキシル基又はアミン基等の、1個又は2個の、求核性のイソシアネート反応性官能基と、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロオキシアルキル、又はペルフルオロオキシアルキレン基を有する化合物を意味し、例えば、CFSON(CH)CHCHOH、CCHCHOH、CO(CO)CFCONHCOH、c−C11CHOH等である。
【0018】
「フルオロケミカルウレタン化合物」は、式Iの化合物を指し、それ自体がウレタン連結を有する、あるいは、尿素及び/又はチオ尿素連結を有するものを含む。
【0019】
「硬質基材」は、その形状を維持する、例えばガラス、セラミックス、コンクリート、天然石、木、金属、プラスチック等の、任意の剛体材料を意味する。
【0020】
「オキシアルコキシ」は、1個以上の酸素原子がアルキル鎖に存在していてもよく、存在する炭素原子の総数が50個まででもよいことを除いて、アルコキシとして上記で与えられた意味を本質的に有し、例えば、CHCHOCHCHO−、COCHCHOCHCHO−、CHO(CHCHO)1〜100H等である。
【0021】
「オキシアルキル」は、1個以上の酸素へテロ原子がアルキル鎖に存在していてもよいことを除いて、アルキルとして上記で与えられた意味を本質的に有し、これらのへテロ原子は、少なくとも1個の炭素により互いに分離されており、例えば、CHCHOCHCH−、CHCHOCHCHOCH(CH)CH−、CCHOCHCH−等である。
【0022】
「オキシアルキレン」は、1個以上の酸素へテロ原子がアルキレン鎖に存在していてもよいことを除いて、アルキレンとして上記で与えられた意味を本質的に有し、これらのへテロ原子は、少なくとも1個の炭素により互いに分離されており、例えば、−CHOCHO−、−CHCHOCHCH−、−CHCHOCHCHCH−等である。
【0023】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード、好ましくはフルオロ及びクロロを意味する。
【0024】
「ペルフルオロアルキル」は、アルキルラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が1〜約12個であることを除いて「アルキル」として上記で与えられた意味を本質的に有し、例えば、ペルフルオロプロピル、ペルフルオロブチル、ペルフルオロオクチル等である。
【0025】
「ペルフルオロアルキレン」は、アルキレンラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられていることを除いて「アルキレン」として上記で与えられた意味を本質的に有し、例えばペルフルオロプロピレン、ペルフルオロブチレン、ペルフルオロオクチレン等である。
【0026】
「ペルフルオロオキシアルキル」は、オキシアルキルラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が3〜約100個であることを除いて、「オキシアルキル」として上記で与えられた意味を本質的に有し、例えば、CFCFOCFCF−、CFCFO(CFCFO)CFCF−、CO(CF(CF)CFO)CF(CF)CF−(式中sは、(例えば)約1〜約50である)等である。
【0027】
「ペルフルオロオキシアルキレン」は、オキシアルキレンラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が3〜約100個であることを除いて、「オキシアルキレン」として上記で与えられた意味を本質的に有し、例えば、−CFOCF−、又は−[CF−CF−O]−[CF(CF)−CF−O]−であり、式中、r及びsは、(例えば)1〜50の整数である。
【0028】
「ペルフルオロ化基」とは、炭素に結合した水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられている有機基、例えばペルフルオロアルキル、ペルフルオロオキシアルキル等を意味する。
【0029】
「多官能イソシアネート化合物」又は「ポリイソシアネート」は、多価の有機基に付着する、平均1を超える、好ましくは2つ以上のイソシアネート基、−−NCOを含有する化合物を意味し、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット及びイソシアヌレート等である。
【0030】
「求核性アクリロイル化合物」は、分子当たり、少なくとも1つの、一級又は二級の、求核性のイソシアネート反応性基、及びアクリレート及びアクリルアミド基を含む、少なくとも1つのアクリロイル基を有する、有機化合物を意味する。
【0031】
「マイケル付加」は、アミノシランがアクリロイル基への1,4付加を受ける、付加反応を指す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、上記の式のフルオロケミカルウレタン化合物を提供する。
【0033】
【化2】

【0034】
式中
が、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロオキシアルキル基、ペルフルオロアルキレン基、及び/又はペルフルオロオキシアルキレン基を含む、フッ素含有基であり、
が、x+yの価数を有する、ポリイソシアネートの残基であり、
が、アクリロイル基とアミノシランとのマイケル反応から誘導されるシラン含有部分であり、
x及びyが、それぞれ独立して、少なくとも1であり、zが、1又は2である。
【0035】
式Iについて、Rは、次式の通り、アミノシランのアクリロイル基へのマイケル付加により誘導され、
【0036】
【化3】

【0037】
式中、
が、−O−又は−S−であり、
が、−O、−S−、又は−NR−であり、式中、Rが、H又はC〜Cアルキルであり、
が、多(ポリ)価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、該アルキレン基は1個以上のカテナリー酸素原子を任意に含有し、
が、C〜Cのアルキル、又は−R−Si(Y)(R3−pであり、
が、二価のアルキレン基であり、該アルキレン基が、1個以上のカテナリー酸素原子を任意に含有し、
Yが、加水分解性基であり、
が、一価のアルキル若しくはアリール基であり、
pが、1、2、又は3、好ましくは、3であり、
qが、1〜5、好ましくは2〜5である。
【0038】
発明者らは、理論に束縛されるものではないが、上記式Iの化合物は、基材表面との縮合反応を受け、加水分解又は式IIの加水分解可能な「Y」基の置換を介し、シロキサン層を形成すると考えられる。このような状況において、「シロキサン」は、式Iの化合物に付着される、−Si−O−Si−結合を指す。水の存在下で、「Y」基は、「Si−OH」基への加水分解、更にシロキサンへの縮合を受ける。
【0039】
式Iの化合物を含むコーティング組成物から調製されるコーティング材は、それ自体、該化合物を含み、加えて、予め選択された基材の表面への結合、及びシロキサン形成による分子間架橋から生じたシロキサン誘導体を含む。コーティング材はまた、未反応又は未縮合の「Si−Y」基も含むことができる。該組成物は、オリゴマーペルフルオロオキシアルキルモノハイドライド、出発原料、並びにペルフルオロオキシアルキルアルコール及びエステル等の、非シラン系材料を更に含有してもよい。
【0040】
一実施形態において、本発明は、式Iの化合物、溶媒、並びに任意に水及び酸を含有する、コーティング組成物を提供する。別の実施形態において、コーティング組成物は、該化合物の水性懸濁液又は分散液を含有する。多くの基材、例えばセラミックスに対して、良好な耐久性を得るためには、本発明の組成物は、好ましくは水を含む。したがって、本発明は、基材を、式Iの化合物を含有するコーティング組成物及び溶媒と接触させる工程を含むコーティング法を提供する。コーティング組成物は、水及び酸を更に含んでよい。一実施形態では、本方法は、基材を式Iのシランを含むコーティング組成物及び溶媒と接触させることと、続いて該基材を水性酸と接触させることと、を含む。
【0041】
本発明のフルオロケミカル化合物の調製において有用であるポリイソシアネート化合物は、多価の脂肪族、脂環式、又は芳香族部分;又はビウレット、イソシアヌレート、若しくはウレトジオン、又はこれらの混合物に付着される多価の脂肪族、脂環式、又は芳香族部分を含み得る、多価の有機基(R)に付着される、イソシアネートラジカルを含有する。好ましい多官能性イソシアネート化合物は、平均少なくとも2つのイソシアネート(−NCO)ラジカルを含有する。少なくとも2つの−NCOラジカルを含有する化合物は、好ましくは、−NCOラジカルが付着される、二価又は三価の脂肪族、脂環式、アルアリファチック(araliphatic)、又は芳香族基を含む。脂肪族の二価又は三価の基が好ましい。
【0042】
適したポリイソシアネート化合物の代表的な例としては、本明細書で定義したポリイソシアネート化合物の、イソシアネート官能性誘導体が挙げられる。誘導体の例としては、イソシアネート化合物類の、尿素類、ビウレット類、アロファネート類、2量体及び3量体(ウレトジオン類及びイソシアヌレート類など)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、又は芳香族ポリイソシアネートのようなあらゆる好適な有機ポリイソシアネートを、単独であるいは2つ以上の混合物として用いてよい。
【0043】
脂肪族のポリイソシアネート化合物が、概して、芳香族化合物よりも、良好な光安定性を提供する。一方、芳香族のポリイソシアネート化合物は、脂肪族のポリイソシアネート化合物よりも、求核剤に対して、概してより経済的であり、かつ反応し易い。好適な芳香族のポリイソシアネート化合物としては、2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)、2,6−トルエンジイソシアネート、TDIとトリメチロールプロパンとの付加体(バイエル社(Bayer Corporation)(ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh))からのデスモジュール(Desmodur)(商標)CBとして入手可能)、TDIのイソシアヌレートトリマー(バイエル社(Bayer Corporation)(ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh))からのデスモジュール(Desmodur)(商標)ILとして入手可能)、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、1,5−ジイソシアナト−ナフタレン、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1−メトキシ−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−クロロフェニル−2,4−ジイソシアネート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
有用な脂環式ポリイソシアネート化合物の例としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI、バイエル社(Bayer Corporation)(ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh))から入手可能なデスモジュール(Desmodur)(商標)として市販)、4,4’−イソプロピル−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート(CHDI)、1,4−シクロヘキサンビス(メチレンイソシアネート)(BDI)、ダイマー酸ジイソシアネート(バイエル(Bayer)から入手可能)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
有用な脂肪族ポリイソシアネート化合物の例としては、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、オクタメチレン1,8−ジイソシアネート、1,12−ジイソシアネートドデカン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、二量体ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートの尿素、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)のビウレット(デスモデュア(Desmodur)(商標)N−100及びN−3200としてバイエル社(Bayer Corporation)(ペンシルバニア州、ピッツバーグ(Pittsburgh))から入手可能)、HDIのイソシアヌレート(デスモデュア(Desmodur)(商標)N−3300及びデスモデュア(Desmodur)(商標)N−3600としてバイエル社(Bayer Corporation)(ペンシルバニア州、ピッツバーグ(Pittsburgh))から入手可能)、HDIのイソシアヌレートとHDIのウレトジオンのブレンド(デスモデュア(Desmodur)(商標)N−3400としてバイエル社(Bayer Crporation)(ペンシルバニア州、ピッツバーグ(Pittsburgh))から入手可能)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
有用なアルアリファチックポリイソシアネートの例としては、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m−TMXDI)、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(p−TMXDI)、1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−(1−イソシアナトエチル)フェニルイソシアネート、m−(3−イソシアナトブチル)フェニルイソシアネート、4−(2−イソシアナトシクロヘキシル−メチル)フェニルイソシアネート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
好ましいポリイソシアネートは、概して、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、オクタメチレン1,8−ジイソシアネート、1,12−ジイソシアネートドデカン等、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。好ましいポリイソシアネートで作製される化合物又はオリゴマーを含有する、本発明のフルオロケミカル組成物は、高い水及びヘキサデカン後退動的接触角の両方を付与する。典型的には、高い水後退動的接触角は、高いヘキサデカン後退動的接触角と共に、良好な防水性及び防油性を予測するものである。
【0048】
フルオロケミカルウレタンは、一部分において、一官能性又は二官能性のペルフルオロ化基と、少なくとも1個の求核性のイソシアネート反応性官能基とを有する、フルオロケミカル化合物の反応生成物を含む。このような化合物には、次式のものが挙げられる:
−[Q(XH) (III)
式中、
が、一価のペルフルオロアルキル若しくはペルフルオロオキシアルキル基(zは1である)、又は二価のペルフルオロアルキレン若しくはペルフルオロオキシアルキレン基(zは2である)であり、
Qが、共有結合、又は価数zの多価(ポリ)のアルキレン基であり、該アルキレンが、1個以上のカテナリー(鎖中)窒素又は酸素原子を任意に含有し、1つ以上のスルホンアミド、カルボキシアミド、又はカルボキシ官能基を任意に含有し、
が、−O−、−NR−、又は−S−、であり、式中、Rが、H又はC〜Cのアルキルであり、
yが1又は2であり、
zが1又は2である。
【0049】
式I及びIIIについて、求核性フルオロケミカル化合物(III)と、ポリイソシアネートのイソシアネート基との反応により、尿素連結又はウレタン連結フッ素含有基が生成される。したがって、式IのRは、式IVのものである:
【0050】
【化4】

【0051】
式中、
が、一価のペルフルオロアルキル若しくはペルフルオロオキシアルキル基(zは1である)、又は二価のペルフルオロアルキレン若しくはペルフルオロオキシアルキレン基(zは2である)であり、
Qが、共有結合、又は価数zの多価(ポリ)のアルキレン基であり、該アルキレンが、1個以上のカテナリー(鎖中)窒素又は酸素原子を任意に含有し、1つ以上のスルホンアミド、カルボキシアミド、又はカルボキシ官能基を任意に含有し、
が、−O−、−NR−、又は−S−、であり、式中、Rが、H又はC〜Cのアルキルであり、
yが1又は2であり、
zが1又は2である。
【0052】
式III及びIVのR基は、直鎖、分枝鎖、又は環式フルオロケミカル基、又は任意のそれらの組み合わせを含有することができる。R基は、一価又は二価であってもよく、炭素−酸素−炭素鎖(つまり、ペルフルオロオキシアルキレン基)を形成するように、炭素−炭素鎖中に1個以上のカテナリー酸素原子を任意に含有してもよい。完全にフッ素化された基が一般に好ましいが、2個の炭素原子毎に1個以下のいずれかの原子が存在するならば、置換基として水素又は他のハロ原子も存在できる。
【0053】
いずれかのR基が、少なくとも約40重量%のフッ素、より好ましくは少なくとも約50重量%のフッ素を含有するのが更に好ましい。一価のR基の末端部分は、一般に完全にフッ素化されており、好ましくは、少なくとも3個のフッ素原子を含有する、例えば、CF−、CFCF−、CFCFCF−、(CFN−、(CFCF−、SFCF−である。特定の実施形態において、nが2〜12を含む、一価のペルフルオロアルキル基(つまり、式C2n+1−のもの)、又は二価のペルフルオロアルキレン基(つまり、式−C2n−のもの)が、好ましいR基であり、n=3〜5がより好ましく、n=4が最も好ましい。
【0054】
有用なペルフルオロオキシアルキル及びペルフルオロオキシアルキレンR基は、次式に相当し、
W−R−O−R−(R− (V)
式中、
Wが、一価のペルフルオロオキシアルキルについてはFであり、二価のペルフルオロオキシアルキレンについては開放原子価(「−」)であり、
が、ペルフルオロアルキレン基を表し、Rが、1、2、3、又は4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンオキシ基、又はそのようなペルフルオロアルキレンオキシ基の混合物からなるペルフルオロアルキレンオキシ基を表し、Rが、ペルフルオロアルキレン基を表し、qが0又は1である。式(IV)のペルフルオロアルキレン基R及びRは、線状又は分枝状であってもよく、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を含んでもよい。典型的な一価のペルフルオロアルキル基は、CF−CF−CF−であり、典型的な二価のペルフルオロアルキレンは、−CF−CF−CF−、−CF−、又は−CF(CF)CF−である。ペルフルオロアルキレンオキシ基Rの例としては、−CF−CF−O−、−CF(CF)−CF−O−、−CF−CF(CF)−O−、−CF−CF−CF−O−、−CF−O−、−CF(CF)−O−、及び−CF−CF−CF−CF−Oが挙げられる。
【0055】
ペルフルオロアルキレンオキシ基Rは、同一のペルフルオロオキシアルキレン単位、又は異なるペルフルオロオキシアルキレン単位の混合物から構成されてもよい。ペルフルオロオキシアルキレン基が、異なるペルフルオロアルキレンオキシ単位からなる場合、それらは、ランダム構成、交互構成で存在することができ、又はブロックとして存在することができる。ペルフルオロ化ポリ(オキシアルキレン)基の典型的な例としては、
−[CF−CF−O]−;−[CF(CF)−CF−O]−;−[CFCF−O]−[CFO]−、−[CFCFCFCF−O]、及び−[CF−CF−O]−[CF(CF)−CF−O]−;(式中、r、s、t、及びuのそれぞれが、1〜50、好ましくは2〜25の整数である)が挙げられる。式(V)に相当する好ましいペルフルオロオキシアルキル基は、CF−CF−CF−O−[CF(CF)−CFO]−CF(CF)CF−(式中、sは、2〜25の整数である)である。
【0056】
ペルフルオロオキシアルキル及びペルフルオロオキシアルキレン化合物は、末端フッ化カルボニル基をもたらす、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化により、得ることができる。このフッ化カルボニルを、当業者に周知の反応によって、酸、エテスル、又はアルコールに変換させてもよい。次に、フッ化カルボニル若しくは酸、エステル又はそれから誘導されたアルコールを更に反応させ、既知の手順に従って、所望のイソシアネート反応性基を導入してもよい。
【0057】
y又はzが1である、式Iについて、フルオロケミカル一官能性化合物、好ましくはモノアルコール及びモノアミンが企図される。有用なフルオロケミカル一官能性化合物の代表的な例としては、次のものが挙げられる:
CF(CFSON(CH)CHCHOH、CF(CFSON(CH)CH(CH)CHOH、
CF(CFSON(CH)CHCH(CH)NH、CF(CFSON(CHCH)CHCHSH、
CF(CFSON(CH)CHCHSCHCHOH、C13SON(CH)(CHOH、
CF(CFSON(H)(CHOH、CSON(CH)CHCHOH、
CF(CFSON(CH)(CHNH、CSON(CH)(CH11OH、
CF(CFSON(CHCH)CHCHOH、CF(CFSON(C)(CHOH、
CF(CFSON(C)(CHOH、CF(CFSON(C)CHOCHCHCHOH、
CF(CFSON(CHCHCH)CHCHOH、
CF(CFSON(CHCHCH)CHCHNHCH
CF(CFSON(C)CHCHNH、CF(CFSON(C)(CHSH、
CF(CFCHCHOH、COCOCFCHOCHCHOH;
n−C13CF(CF)CON(H)CHCHOH;C13CF(CF)COCH(CH)OH;
CON(H)CHCHOH;CO(CF(CF)CFO)1〜36CF(CF)CHOH;及び
O(CF(CF)CFO)1〜36CF(CF)C(O)N(H)CHCHOH等、並びにこれらの混合物。所望により、その他のイソシアネート反応性官能基が、記載されたものの代わりに使用されてもよい。
【0058】
y又はzが2である、式Iについて、フッ素化ポリオールが好ましい。好適なフッ素化ポリオールの代表的な例としては、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド等のRfSON(CHCHOH);RfOCSON(CHCHOH);C13SON(C)CHCH(OH)CHOH等のRSON(R)CHCH(OH)CHOH;RCHCON(CHCHOH);CFCF(OCFCFOCFCON(CH)CHCH(OH)CHOH;COCHCH(OH)CHOH等のROCHCH(OH)CHOH;RCHCHSCOCHCH(OH)CHOH;RCHCHSCCH(CHOH);RCHCHSCHCH(OH)CHOH;RCHCHSCH(CHOH)CHCHOH;C11(CHSCHCH(OH)CHOH等のRCHCHCHSCHCH(OH)CHOH;C11(CHOCHCH(OH)CHOH等のRCHCHCHOCHCH(OH)CHOH;RCHCHCHOCOCHCH(OH)CHOH;RCHCH(CH)OCHCH(OH)CHOH;R(CHSCCH(CHOH)CHOH;R(CHSCHCH(CHOH);R(CHSCOCHCH(OH)CHOH;RCHCH(C)SCHCH(OH)CHOH;RCHOCHCH(OH)CHOH;RCH2CH(OH)CHSCHCHOH;RCHCH(OH)CHSCHCHOH;RCHCH(OH)CHOCHCHOH;RCHCH(OH)CHOH;R’’SCH(R’’’OH)CH(R’’’OH)SR’’;(RCHCHSCHCHSCHC(CHOH);((CFCFO(CF(CHSCHC(CHOH);(R’’SCHC(CHOH);1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFOCO(CFOCOCFCHOH);1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFCFO(CFOCFCFCHOH);ポリ−3−Fox(Poly-3-Fox)(商標)(オムノバ・ソリューションズ社(Omnova Solutions, Inc.)(オハイオ州アクロン(Akron))から入手可能)等のフッ素化オキセタンの開環重合により作製されるフッ素化オキセタンポリオール;米国特許第4,508,916号(ニューウェル(Newell)ら)に記載される、少なくとも2個のヒドロキシル基を含有する化合物を有する、フッ素化有機基置換エポキシドの開環付加重合により調製される、ポリエーテルアルコール;並びにフォンブリン(Fomblin)(商標)ZDOL(HOCHCFO(CFO)8〜12(CFCFO)8〜12CFCHOH、アウジモント(Ausimont)から入手可能)等のペルフルオロポリエーテルジオール;(式中、Rは、存在する全てのペルフルオロ炭素鎖が6個以下の炭素原子を有する、1〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、又は3〜約50個の炭素原子を有するペルフルオロオキシアルキル基、又はこれらの混合物であり;R’は、1〜4個の炭素原子のアルキルであり;R’’は、1〜12個の炭素原子の分岐鎖若しくは直鎖アルキレン、2〜12個の炭素原子のアルキレンチオ−アルキレン、2〜12個の炭素原子のアルキレン−オキシアルキレン、又は2〜12個の炭素原子のアルキレンイミノアルキレンであり、ここで、窒素原子は、第3の置換基として水素又は1〜6個の炭素原子のアルキルを含有し;R’’’は、1〜12個の炭素原子の直鎖又は分枝鎖アルキレン、又はrが1〜12であり、sが2〜6であり、tが1〜40である、式C2r(OC2Sのアルキレン−ポリオキシアルキレンである)が挙げられる。
【0059】
好ましいフッ素化ポリオールには、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;ポリ−3−Fox(Poly-3-Fox)(商標)(オムノバ・ソリューションズ社(Omnova Solutions, Inc.)(オハイオ州アクロン(Akron))から入手可能)等のフッ素化オキセタンの開環重合により作製されるフッ素化オキセタンポリオール;米国特許第4,508,916号(ニューウェル(Newell)ら)に記載される、少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する化合物を有する、フッ素化有機基置換エポキシドの開環付加重合により調製される、ポリエーテルアルコール;フォンブリン(Fomblin)(商標)ZDOL(HOCHCFO(CFO)8〜12(CFCFO)8〜12CFCHOH、アウジモント(Ausimont)から入手可能)等のペルフルオロポリエーテルジオール;1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFOCO(CFOCOCFCHOH);並びに1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFCFO(CFOCFCFCHOH)が挙げられる。
【0060】
少なくとも1つのフッ素含有基を含むより好ましいポリオールには、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCHCFCFO(CFOCFCFCHOH)、及びCFCFCF−O−[CF(CF)CFO]−CF(CF)−(式中、nは3〜25の整数である)が挙げられる。このペルフルオロ化ポリエーテル基は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化から誘導され得る。そのようなペルフルオロ化ポリエーテル基は、特にそれらの良性の環境的性質により、好ましい。
【0061】
フルオロケミカルウレタンは、一部分において、イソシアネート反応性の求核性官能基と、少なくとも1個のアクリロイル基を有する、求核性アクリロイル化合物の反応生成物を含む(以下、「求核性アクリロイル化合物」)。アクリロイル部分は、アクリレート又はアクリルアミドであり得、求核性官能基は、アミノ又はヒドロキシ基であり得る。好ましくは、求核性アクリロイル化合物は、ヒドロキシル基及び少なくとも2つのアクリロイル基を有するポリアクリル化合物である。
【0062】
このような化合物には、次式のものが挙げられる:
【0063】
【化5】

【0064】
式中、
が、−O−又は−S−、好ましくは−O−であり、
が、−O、−S−、又は−NR−、好ましくは−O−であり、式中、Rは、H、又はC〜Cのアルキルであり、
が、多価(ポリ)アルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、該アルキレン基が、1個以上のカテナリー酸素原子を任意に含有し、qが、1〜5である。
【0065】
好ましくは、qは1を超える。得られる複数のアクリロイル基により、複数のシラン基のウレタン化合物への付加が可能になる。シラン基と、−NH−C(O)−X−基とのモル比が、1:1を超える、又は2:1を超える。好ましくは、HX−は、フェノール化合物と共に等、直接芳香環には接続されない。
【0066】
有用な求核性アクリロイル化合物には、例えば、(a)ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノアクリレート1,3−ブチレングリコールモノアクリレート、1,4−ブタンジオールモノアクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノアクリレート、アルコキシル化脂肪族モノアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールモノアクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールモノアクリレート、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートアクリレート、カプロラクトン修飾ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートモノアクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジプロピレングリコールモノアクリレート、エトキシル化ビスフェノール−Aモノアクリレート、ヒドロキシピバラルデヒド修飾トリメチロールプロパンモノアクリレート、ネオペンチルグリコールモノアクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールモノアクリレート、テトラエチレングリコールモノアクリレート、トリシクロデカンジメタノールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレート、トリプロピレングリコールモノアクリレート等の化合物を含有するモノアクリロイル;(b)グリセロールジアクリレート、エトキシル化トリアクリレート(例えば、エトキシル化トリメチロールプロパンジアクリレート)、ペンタエリスリトールトリアクリレート、プロポキシル化ジアクリレート(例えば、プロポキシル化(3)グリセリルジアクリレート、プロポキシル化(5.5)グリセリルジアクリレート、プロポキシル化(3)トリメチロールプロパンジアクリレート、プロポキシル化(6)トリメチロールプロパンジアクリレート)、トリメチロールプロパンジアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート等の高官能性(メタ)アクリル含有化合物、並びにジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の多価アクリロイル含有化合物からなる群から選択されるアクリレート化合物が挙げられる。
【0067】
このような化合物は、例えば、ペンシルバニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Company)、ジョージア州スミルナ(Smyrna)のUCBケミカルズ社(UCB Chemicals Corporation)、及びウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)のアルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)等の供給業者から広く入手可能である。更に有用なアクリレート材料としては、ジヒドロキシヒダントイン部分含有ポリアクリレート、例えば米国特許第4,262,072号(ウェンドリング(Wendling)ら)に記載のものが挙げられる。
【0068】
例示的な求核性アクリロイル化合物について、相当するアクリルアミドが使用され得ることが理解される。更に、指示されたヒドロキシル基は、相当するチオール基により置換されてもよい。
【0069】
フルオロケミカルウレタン化合物は、一部分において、アミノシランとアクリロイル基とのマイケル反応生成物を含有する。アミノシランは、求核性アクリロイル化合物と反応させて、マイケル付加体を形成してもよく、その後、(求核性フルオロケミカル化合物の官能化前又は後のいずれか)ポリイソシアネートと反応させてもよい。好ましくは、求核性アクリロイル化合物をまずポリイソシアネートと反応させ、(再び、求核性フルオロケミカル化合物との反応の前又は後、ペンダントアクリロイル基を有するウレタン化合物を形成し、それにマイケル付加によりアミノシランを付加する。
【0070】
好ましいアミノシランは、一般式
【0071】
【化6】

【0072】
により表すことができ、式中、
が、H、C〜Cのアルキル、又は−R−Si(Y)(R3−pであり、
が、二価のアルキレン基であり、該アルキレン基が、1個以上のカテナリー酸素原子を任意に含有し、
Yが、加水分解性基であり、
が、一価のアルキル若しくはアリール基であり、
pが、1、2、又は3、好ましくは、3である。
【0073】
水の存在下で、Y基は−OH基に加水分解されてもよく、シロキサン連結結合を形成する基材表面との反応に至り、したがって、形成された、特にSi−O−Si結合は、耐水性があり、本発明の化学組成により付与される、染み剥離特性の強化された耐久性を提供し得ることが理解されるであろう。
【0074】
式VIIのアミノシランについて、RがHである一級アミンは、マイケル付加により、2個のアクリロイル基と反応することが可能であり、それにより、式Iのフルオロケミカルウレタン化合物の架橋に至ってもよいことに留意されたい。更に、一級アミンは、アミノシランのアクリロイル基へのマイケル付加と競合することもできる。このため、20モルパーセントのそのような一級アミノシランを使用することができるが、R=Hは好ましくない。
【0075】
本発明の実施において有用ないくつかのアミノシランが米国特許第4,378,250号に記載され、アミノエチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、β−アミノエチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリブトキシシラン、β−アミノエチルトリプロポキシシラン、α−アミノ−エチルトリメトキシシラン、α−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、β−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−アミノプロピルトリプロポキシシラン、β−アミノプロピルトリブトキシシラン、α−アミノプロピルトリメトキシシラン、α−アミノプロピルトリエトキシシラン、α−アミノプロピルトリブトキシシラン、α−アミノプロピルトリプロポキシシランを含む。
【0076】
米国特許第4,378,250号に記載されるものを含む、少量(<20モルパーセント)のカテナリー窒素含有アミノシランもまた使用され得る。N−(β−アミノエチル)−β−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(β−アミノエチル)−α−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−α−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−α−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(γ−アミノプロピル)−β−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(γ−アミノプロピル)−β−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(γ−アミノプロピル)−β−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、β−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、及びγ−ジエチレントリアミンプロピルトリエトキシシラン。
【0077】
フルオロケミカル化合物を、求核性アクリロイル化合物、フッ素含有求核性化合物、及びポリイソシアネート化合物の単純ブレンドにより作製し、次式のウレタン化合物を生成することができ、
【0078】
【化7】

【0079】
式中、
が、一価のペルフルオロアルキル若しくはペルフルオロオキシアルキル基、又は二価のペルフルオロアルキレン若しくはペルフルオロオキシアルキレン基を含む、フッ素含有基であり、
が、ポリイソシアネートの残基であり、
が、−O−又は−S−であり、
が、−O、−S−、又は−NR−であり、式中、Rが、H又はC〜Cのアルキルであり、
が、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであって、該アルキレン基は1個以上のカテナリー酸素原子を任意に含有し、
xが1又は2であり、
zが1又は2であり、
qが1から5である。
【0080】
この後に、アミノシラン(VII)のアクリロイル基へのマイケル付加を行う。当業者には理解されるように、ブレンドの順序又は工程の順序は非限定的なものであり、所望のフルオロケミカルウレタン化合物を生成するように、修正され得る。好ましい実施形態において、ポリイソシアネート化合物、フッ素含有求核性化合物(III)が、まずイソシアネート基の一部分と反応し、それにより、ペンダントフッ素含有基がイソシアネート官能性ウレタン化合物に結合される。この後に、求核性アクリロイル化合物の、残りのイソシアネート基の一部分との反応を行い、アミノシランのペンダントアクリロイル基へのマイケル付加を行う。求核性フルオロケミカル化合物がアミンである場合、アミン官能基がアミノシランによるマイケル付加と競合するため、これは概して、求核性アクリロイル化合物による更なる官能化に先行する。
【0081】
概して、反応成分及び溶媒は、間断なく、連続して、又は予め作製された混合物として、乾燥反応槽に充填される。均質な混合物又は溶液が得られると、触媒が任意に追加され、反応混合物が、ある温度で、反応が発生するのに十分な間、加熱される。反応の経過は、IRにおけるイソシアネートピークの消失を監視することにより、決定され得る。
【0082】
5〜50モルパーセントの利用可能なイソシアネート官能基と反応するのに十分な量の求核性化合物R−Q(XH)(III)を使用する。好ましくは、化合物IIIを使用して、10〜30モルパーセントのイソシアネート基と反応させる。残りのイソシアネート基、約50〜95モルパーセント、好ましくは70〜90モルパーセントを求核性アクリロイル化合物(VI)により官能化し、その後、アミノシラン(VII)のマイケル反応が続き、結果、ペンダントフルオロケミカル基及びペンダントアクリロイル基の両方を有するウレタン化合物が得られる。
【0083】
別の方法としては、アミノシラン(VII)及び求核性アクリロイル化合物(VI)を予備反応させてもよく、次いで、式IXのマイケル付加体を、残りのイソシアネート基と反応させる。式Iに相当するフルオロケミカルウレタンは、概して、実質的に、IRにより残りのイソシアネート基を有しない。
【0084】
【化8】

【0085】
反応条件(例えば、反応温度及び/又は使用されるイソシアネート)によって、反応混合物の約0.5重量%までの触媒濃度を使用して、イソシアネートとの縮合反応を生じさせることができるが、典型的には、約0.00005〜約0.5重量%を使用してもよく、0.02〜0.1重量%が好ましい。概して、求核性基がアミン基である場合、触媒は必要ではない。
【0086】
適した触媒としては、三級アミン及びスズ化合物類が挙げられるがこれらに限定されない。有用なスズ化合物の例としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジ−2−エチルヘキサノエート、及びジブチルスズオキシドなどの、スズII及びスズIV塩類が挙げられる。有用な三級アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、トリプロピルアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、エチルモルホリン、及び2,2’−ジモルホリノジエチルエーテルなどのモルホリン化合物、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0.]ウンデカ−7−エン(DBU、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))が挙げられる。スズ化合物類が好ましい。酸触媒が使用される場合、反応後に生成物から除去されるか、中和されることが好ましい。触媒の存在が、接触角の結果に有害な影響を及ぼし得ることが見出された。
【0087】
アミノシランのアクリロイル基へのマイケル付加には触媒は必要ではないが、マイケル反応に好適な触媒は、その共役酸が、好ましくは12〜14のpKaを有する塩基である。使用される最も好ましい塩基は、有機のものである。そのような塩基の例は、1,4−ジヒドロピリジン、メチルジフェニルホスファン、メチルジ−p−トリルホスファン、2−アリル−N−アルキルイミダゾリン、水酸化テトラ−t−ブチルアンモニウム、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス−7−エン)及びDBN(1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノン−5−エン)、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、水酸化ナトリウム等である。本発明に関連する好ましい触媒は、DBU及びテトラメチルグアニジンである。マイケル付加反応において使用される触媒の量は、固体に対して、好ましくは0.05重量%〜2重量%、より好ましくは0.1重量%〜1.0重量%である。
【0088】
本発明による組成物を基材上にコーティングし、少なくとも部分的に硬化させ、コーティングされた物品を提供してもよい。いくつかの実施形態において、重合コーティングが、傷抵抗性、落書抵抗性、染み抵抗性、接着剤剥離、低屈折率、及び防水性のうちの少なくとも1つを提供する、保護コーティングを形成することができる。本発明によるコーティングされた物品には、例えば、眼鏡レンズ、鏡、窓、接着剤剥離ライナー、及び落書防止フィルムが挙げられる。
【0089】
好適な基材には、例えば、ガラス(例:例えばレンズや鏡等の窓及び光学素子)、セラミック(例えばセラミックタイル)、セメント、石、塗面(例えば自動車の車体、ボートの表面)、金属(例えば建築用の柱)、紙(例えば接着剤剥離ライナー)、厚紙(例えば食品容器)、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(例えばポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン、及びスチレン−アクリロニトリル共重合体)、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。基材は、フィルム、シートであってもよく、あるいは何らかの他の形態であってもよい。基材は、任意にセラマーハードコートをその上に有する、透明又は半透明の表示素子を含んでもよい。
【0090】
いくつかの実施形態において、フルオロケミカルウレタン化合物と溶媒との混合物を含有するコーティング組成物が提供される。本発明のコーティング組成物は、本発明のフルオロケミカル化合物の溶媒懸濁液、分散液、又は溶液を含有する。コーティングとして適用されると、コーティング組成物は、防油性及び防水性、並びに/又は染み剥離及び染み抵抗性を、広範囲の基材のうちのいずれかに付与する。
【0091】
フルオロケミカル化合物を様々な溶媒に溶解、懸濁、又は分散して、基材上へのコーティングに使用するのに好適なコーティング組成物を形成することができる。概して、溶媒溶液は、(固体構成成分の総重量に基づき)約0.1〜約50重量%、又は更に約90重量%までの、不揮発性固体を含有することができる。コーティング組成物は、好ましくは、固体全体に基づき、約0.1〜約10重量%のフルオロケミカルウレタン化合物を含有する。好ましくは、コーティングに使用されるフルオロケミカルウレタン化合物の量は、固体全体の約0.1〜約5重量%、最も好ましくは約0.2〜約1重量%である。適した溶媒としては、アルコール類、エステル類、グリコールエーテル類、アミド類、ケトン類、炭化水素類、ハイドロフルオロカーボン類、ハイドロフルオロエーテル類、塩化炭化水素類、クロロカーボン類、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0092】
製造の容易さ及び費用上の理由から、本発明の組成物は、式Iの化合物のうちの1つ以上の濃縮物を希釈することにより、使用の少し前に調製することができる。濃縮物は、概して、有機溶媒中にフルオロケミカルウレタンの濃縮液を含む。該濃縮物は、数週間、好ましくは少なくとも1ヶ月間、より好ましくは少なくとも3ヶ月間、安定していなければならない。該化合物は、高濃度の有機溶媒中で容易に溶解され得ることが見出された。
【0093】
本発明のコーティング組成物は、任意にシルセスキオキサンを含有する。シルセスキオキサンをコーティング組成物とブレンドしてもよく、又は別の方法としては、式Iの化合物のコーティングを、既に適用されたシルセスキオキサンのコーティング上に適用してもよい。有用なシルセスキオキサンとしては、式R10Si(OR11のジオルガノオキシシラン(又はそのヒドロシレート(hydrosylate))の、式R10SiO3/2のオルガノシラン(又はそのヒドロシレート)との共縮合物が挙げられ、式中、R10のそれぞれは、1〜6個の炭素原子のアルキル基又はアリール基であり、R11は、1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルを表す。好ましいシルセスキオキサンは、該組成物への添加前には、中性又はアニオン性のシルセスキオキサンである。有用なシルセスキオキサンは、米国特許第3,493,424号(モーロック(Mohrlok)ら)、同第4,351,736号(スタインバーガー(Steinberger)ら)、同第5,073,442号(ノールトン(Knowlton)ら)、同第4,781,844号(コートマン(Kortmann)ら)、及び同第4,781,844号に記載される技術により作製され得る。シルセスキオキサンは、固体全体に対して90〜99.9重量%の量で、添加することができる。
【0094】
シルセスキオキサンは、酸性又は塩基性条件下でかき混ぜながら、水、緩衝液、界面活性剤、及び任意に有機溶媒の混合物にシランを添加することにより調製されてもよい。200〜500オングストロームの小さな粒径を達成するために、分量のシランを均一かつゆっくりと添加することが好ましい。添加され得るシランの正確な量は、置換基R、及び使用される界面活性剤がアニオン性であるかカチオン性であるかに依存する。単位がブロック又はランダム分布で存在する、シルセスキオキサンの共縮合物は、シランの同時加水分解により形成される。テトラオルガノシランの量は、存在するテトラアルコキシシラン及びそのヒドロシレート(例えば式Si(OH)の)を含み、シルセスキオキサンの重量に対して10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満である。
【0095】
以下のシランが本発明のシルセスキオキサンの調製において有用である:メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、2−エチルブチルトリエトキシシラン、及び2−エチルブトキシトリエトキシシラン。
【0096】
該組成物は、例えば、噴霧、ナイフコーティング、切欠きコーティング、リバースロールコーティング、グラビアコーティング、ディップコーティング、バーコーティング、フラッドコーティング、ディップコーティング、又はスピンコーティング等の従来の技術により、基材に適用することができる。該組成物を任意の厚さに適用し、所望のレベルの防水、防油、防染み、防汚性を提供することができる。典型的には、該組成物は比較的薄層として基材に適用され、約40nm〜約60nmの範囲の厚さを有する、乾燥した硬化層が得られるが、より薄い又は厚い(例えば100マイクロメートル以上までの厚さを有する)層もまた使用され得る。典型的には、次に、いずれかの任意の溶媒が少なくとも部分的に除去され(例えば強制空気オーブンを使用して)、そして該組成物を少なくとも部分的に硬化し、耐久性コーティングを形成する。
【0097】
本発明のフルオロケミカルウレタンシランの適用のための好ましいコーティング方法としては、ディップコーティングが挙げられる。典型的には、コーティングされる基材は、室温(典型的に、約20℃〜約25℃)で処理組成物に接触させることができる。別の方法としては、混合物を、例えば60℃〜150℃の温度に予熱した基材に適用することができる。これは、例えば、セラミックタイルを生産ラインの終わりにてベーキングオーブン直後に処理できる工業生産にとって、特別な関心事である。適用後、処理された基材を、乾燥させるのに十分な時間にわたり室温又は高温、例えば40℃〜300℃で乾燥させ硬化させることができる。また、プロセスは過剰の材料を除去するための研磨工程を必要とする可能性もまたある。
【0098】
本発明は、比較的耐久性があり、より汚染に抵抗性があり、基材表面自体よりも洗浄し易い保護コーティングを、基材に提供する。本発明は、一実施形態において、基材、好ましくは硬質基材と、単層を超える(典型的には、厚さ約15オングストロームを超える)その上に付着される防汚コーティングとを含む、コーティングされた物品の調製に使用するための方法及び組成物を提供する。好ましくは、本発明の防汚コーティングは、少なくとも厚さ約20オングストロームであり、より好ましくは少なくとも厚さ約30オングストロームである。概して、コーティングの厚さは、10マイクロメートル未満、好ましくは5マイクロメートル未満である。コーティング材は、典型的には、物品の外観及び光学特性を実質的に変えない量で存在する。
【実施例】
【0099】
本発明の目的及び利点は、以下の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に、本発明を不当に制限するものと解釈すべきではない。これらの実施例は単に、あくまで例示を目的としたものであり、添付の請求項の範囲を制限することを意味するものではない。
【0100】
特に記載のない限り、実施例及びこれ以降の明細書に記載される部、百分率、比率等は全て、重量による。使用される溶媒及びその他の試薬は、特に記載のない限り、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Company)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))より入手した。
【0101】
試験方法
核磁気共鳴(NMR)
H及び19F NMRスペクトルを、バリアン社製ユニティプラス(UNITYplus)400・フーリエ変換NMRスペクトロメーター(バリアンNMRインスツルメンツ社(Varian NMR Instruments)(カルフォルニア州パロアルト(Palo Alto))から入手可能)にて測定した。
【0102】
赤外線分光分析(IR)
IRスペクトルを、サーモ・ニコレー社(Thermo-Nicolet)製、アバター(Avatar)370FTIR(サーモ・エレクトロン社(マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham))から入手可能)にて測定した。
【0103】
ポリカーボネートプラーク上のコーティング形成方法
ポリカーボネートプラーク(10cm×10cm)を、ディップコーティングプロセスを使用し、本発明によるフルオロケミカルウレタン組成物を含有するコーティング組成物でコーティングした。コーティングを形成するために、まず、それぞれのポリカーボネートプラークをSHP401プライマーに、1分当たり90cmの速度で浸した。プラーク全体をプライマーに浸してすぐ、1分当たり90cmの速度でプライマーからプラークを除去し、室温で10分間、風乾させた。次いで、乾燥されたプラークを、SHC−1200の溶液又は本発明に従い調製された、0.3重量%のフルオロケミカルウレタンシランを含有する、SHC−1200の溶液に浸した。プラークをコーティング溶液に1分当たり90cmの速度で浸し、1分当たり19cmで引き出し、室温で20分間、風乾させ、最後に130℃で30分間、オーブンで加熱した。
【0104】
撥インク性試験
本試験を使用して、ポリカーボネートプラーク上のコーティングの撥インク性を測定した。コーティングされたポリカーボネートプラークを、上述の通り調製した。シャーピー(Sharpie)(商標)ファインポイント(Fine Point)、シリーズ30000(Series 30000)油性マーカー(ニューウェル・ラバーメイド(Newell Rubbermaid)の一部門、サンフォード(Sanford)より入手可能)を使用して、コーティングされたポリカーボネートプラークの表面全体に線を引いた。外観及び黒色シャーピー(Sharpie)マーカーをはじく能力について、試料を評価した。
【0105】
【表1】

【0106】
撥インク性耐久性試験
コーティングされたポリカーボネートプラークの撥インク性の耐久性を測定するために、改善された振動砂試験(Oscillating Sand Method)(ASTM F 735−94)を使用した。コーティングされたポリカーボネートプラーク(つまり、上述の通り調製された試験試料)を、ビニールテープ及び輪ゴムを使用して、50グラムの未使用の20〜30メッシュのオタワ砂(Ottawa sand)(VWRより得た)(コネチカット州ブリストル(Bristol))を含む、内径87mmを有する瓶(VWR 36318−860、VWRより市販)(コネチカット州ブリストル(Bristol))に固定した。試験試料を含有する側を底にして、瓶を振とう器(VWR DS−500E、VWRより得た)(コネチカット州ブリストル(Bristol))に定置し、振とう器を225rpmの速度で10分間振動して作動させた。10分後、ポリカーボネートプラークを除去し、シャーピー(Sharpie)油性マーカーを使用して、該砂と接触していたその表面全体に線を引いた。ビード状にならなかった87mmのインク線の正規化された(%)長さを測定し、撥インク性消失割合として報告した。報告されたデータは、3つの独立した試験の平均である。数字が低いほど、よい成績を示す。
【0107】
テーバーヘイズ(Taber Haze)試験
本試験を、上述の通り、ポリカーボネートプラーク上に行った。試験手順は、国立労働安全保健研究所(National Institute of Occupational Safety and Health)による、手順番号CET−APRS−STP−0316、2005年10月24日付け改定1.1のものであった。4未満の数字が望ましい。
【0108】
スチールウール耐久性試験
コーティングされて硬化されたポリカーボネートプラーク(上述の通り調製された)の摩耗耐性を、フィルムの表面に渡って、スタイラスに接着されたスチールウールシートを振動させることのできる機械装置を使用して、ウェブを交差してコーティング方向に試験した。スタイラスを315mm/秒の速度で幅90mmの掃引幅で振動させ(3.5拭取り/秒)、ここで「拭取り」は、90mmの単一行程として定義される。スタイラスは、平坦な、3.2cmの直径を有する円筒形の基部形状を有した。スタイラスは、追加のおもりの固定を可能にするように設計されており、フィルム表面に対して垂直なスチールウールから加わる力を増大させる。試料は、25拭取りの間、4.90N(500g)の負荷で試験した。スチールウールシート#0000は、ミズーリ州フルトン(Fulton)のハットプロダクツ(Hut Products)から入手可能な「マジックサンド−サンドシート(Magic Sand-Sanding Sheets)」であった。#0000の規定グリット同等物は600〜1200グリットのサンドペーパーである。3.2cmのスチールウールディスクを前記サンドシートからダイカットし、3Mブランドのスコッチパーマネントアドヒーシブトランスファー(Scotch Permanent Adhesive Transfer)というテープで3.2cmのスタイラス基部に固定した。スチールウールの摩耗後の摩耗痕跡上、及びスチールウール痕跡に影響されなかった(つまり、スチールウール試験前の)摩耗痕跡に隣接したプラーク部分の接触角を測定した。接触角測定は、後述の「接触角を測定する方法」を使用して行われた。報告されたデータは、3つのプラーク上で行われた測定値の平均を表す。3滴をそれぞれのプラークに載せ、滴のそれぞれの右側と左側で接触角を測定した。
【0109】
接触角を測定する方法
水の接触角の測定にさらす前に、コーティングされたポリカーボネートプラーク(上述の通り調製された)をIPAで処理し、蒸発させた。濾過システム(マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica)のミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation)から得た)を通して濾過した、購入したままの試薬グレードのヘキサデカン及び脱イオン水を用い、ビデオ接触角分析計(マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica)のAST・プロダクツ(AST Products)製商品番号VCA−2500XEとして入手可能)により、測定を行った。報告される値は、滴の右側と左側で測定された少なくとも3滴の測定値の平均である。水滴容量は、静的測定の場合5μLであった。
【0110】
耐溶媒性試験
4つのチャンバを異なる溶媒のエタノール、イソプロパノール、トルエン、及びMEKで満たした。上述の通り調製されたそれぞれのプラークを、60秒間、4つの全てのチャンバに定置した。コーティングにおける層間剥離、亀裂、変色、及び他のあらゆる変化等の観測結果を記録した。そして、それぞれのプラークを、更に300秒間、溶媒チャンバに定置した。同様に、全ての観測結果を記録した。
【0111】
材料
ヘキサメチレンジイソシアネート(デスモジュラー(Desmodur)(商標)N100)を、ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)のバイエルポリマーズ社(Bayer Polymers LLC)より得た。
【0112】
HFPO−C(O)N(H)CHCHOHを、米国特許公開第2004−0077775号、発明の名称「フルオロケミカルポリマーを含有するフルオロケミカル組成物及びそれを用いた繊維状基材の処理(Fluorochemical Composition Comprising a Fluorochemical Polymer and Treatment of a Fibrous Substrate Therewith)」に記載されるものと類似の手順で調整した。
【0113】
商標名SR444Cのペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を、ペンシルベニア州ウォリントン(Warrington)のサートマー社(Sartomer Company)より得た。
【0114】
ポリ(メチルメタクリレート)プライマー(SHP(商標)401)を、ニューヨーク州ウォーターフォード(Waterford)のGEシリコーンズ(GE Silicones)より得た。
【0115】
メチルシルセスキオキサン溶液(SHC(商標)1200)を、ニューヨーク州ウォーターフォード(Waterford)のGEシリコーンズ(GE Silicones)より得た。
【0116】
N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン(MAPTMS)を、コネチカット州ダンベリー(Danbury)のユニオン・カーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスチックス社(Union Carbide Chemicals and Plastics Co.)より得た。
【0117】
ビス(プロピル−3−トリメトキシシラン)アミンを、ゲレスト(Gelest)(ペンシルベニア州モーリスビル(Morrisville))より得た。
【0118】
アミノプロピルトリメトキシシラン、(APTMS)、を、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))より得た。
【0119】
ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))より得た。
【0120】
ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)を、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)(ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee))より得た。
【0121】
ポリカーボネートプラークは、ミネソタ・モールド・アンド・エンジニアリング(Minnesota Mold & Engineering)(ミネソタ州バドナイスハイツ(Vadnais Heights))により成形された(GEレキサン(GE Lexan)(商標)101、インディアナ州マウントバーノン(Mount Vernon)より)。
【0122】
(実施例1)
a)[DESN100/0.15 HFPOC(O)N(H)CHCHOH/0.90 HEA]中間体の調製
攪拌子を備えた200mL丸底フラスコに、12.5g(0.0654eq、1.0モル分数、191.0イソシアネート当量)のDESN100、1.6mg(固体に対して50ppm)のDBTDL、0.05gのBHT、及び32.24gのTHFを充填し、混合物を形成した。フラスコを55℃の槽に定置し、12.90g(0.0098eq、0.15モル分数、1314分子量)のHFPOC(O)N(H)CHCHOHを、均圧滴下漏斗を介して10分間かけて、混合物に添加した。添加の終了2時間後、6.84g(0.0589eq、0.85モル分数)のヒドロキシエチルアクリレートを添加し、混合物を終夜反応させた。終夜の反応後、試料のIRスペクトルには、2265cm−1のNCO基に相当するピークはなかった。5.48gのTHFの添加により反応生成物を希釈し、その組成を50%固体に調製した。
【0123】
b)ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
上記a)で調製された5g(0.004565モルのアクリレート官能性)の中間体を、磁気攪拌子を備えた25mL丸底フラスコに充填した。フラスコを油浴に定置し、フラスコの内容物を、窒素雰囲気下に定置した。1.56g(0.004565モル)のビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを、室温で滴下してフラスコに添加した。反応混合物を室温で15分間攪拌し、次いで4時間55℃に加熱した。反応の終了は、H NMRスペクトルにおけるアクリレートピークの消失により決定した。生成物は、窒素雰囲気下で、コーティング前まで冷蔵庫内で琥珀色のボトルにて保管した。
【0124】
(実施例2)
a)[DESN100/0.30 HFPOC(O)N(H)CHCHOH/0.75 HEA]中間体の調製
攪拌子を備えた200mL丸底フラスコに、12.5g(0.0654eq、1.0モル分数)のDESN100、1.6mgのDBTDL、0.05gのBHT、及び44.0gのTHFを充填し、混合物を形成した。フラスコを55℃の槽に定置し、25.80g(0.0196eq、0.30モル分数、1314分子量)のHFPOC((O)N(H)CHCHOHを、均圧滴下漏斗を介して10分間かけて、混合物に添加した。添加の終了2時間後、5.70g(0.0491eq、0.75モル分数)のヒドロキシエチルアクリレートを添加し、混合物を終夜反応させた。終夜の反応後、試料のIRスペクトルには、2265cm−1のNCO基に相当するピークはなかった。11.44gのTHFの添加により反応生成物を希釈し、その組成を50%固体に調製した。
【0125】
b)ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
上記a)で調製された5g(0.00278モルのアクリレート官能性)の中間体を、磁気攪拌子を備えた25mL丸底フラスコに充填した。フラスコを油浴に定置し、フラスコの内容物を、窒素雰囲気下に定置した。0.9493g(0.00278モル)のビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを、室温で滴下してフラスコに添加した。反応混合物を室温で15分間攪拌し、4時間55℃に加熱した。反応の終了は、H NMRスペクトルにおけるアクリレートピークの消失により決定した。生成物は、窒素雰囲気下で、コーティング前まで冷蔵庫内で琥珀色のボトルにて保管した。
【0126】
(実施例3)
a)[DESN100/0.50 HFPOC(O)N(H)CHCHOH/0.55 HEA]中間体の調製
攪拌子を備えた200mL丸底フラスコに、12.5g(0.0654eq、1.0モル分数)のDESN100、1.6mgのDBTDL、0.05gのBHT、及び59.88gのTHFを充填し、混合物を形成した。フラスコを55℃の槽に定置し、43.0g(0.0327eq、0.50モル分数、1314分子量)のHFPOC(O)N(H)CHCHOHを、均圧滴下漏斗を介して10分間かけて、混合物に添加した。添加の終了2時間後、4.18g(0.0360eq、0.55モル分数)のヒドロキシエチルアクリレートを添加し、混合物を終夜反応させた。終夜の反応後、試料のIRスペクトルには、2265cm−1のNCO基に相当するピークはなかった。29.62のTHFの添加により反応生成物を希釈し、その組成を50%固体に調製した。
【0127】
b)ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
上記a)で調製された5g(0.0015モルのアクリレート官能性)の中間体を、磁気攪拌子を備えた25mL丸底フラスコに充填した。フラスコを油浴に定置し、フラスコの内容物を、窒素雰囲気下に定置した。0.5138g(0.0015モル)のビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを、室温で滴下してフラスコに添加した。反応混合物を室温で15分間攪拌し、4時間55℃に加熱した。反応の終了は、H NMRスペクトルにおけるアクリレートピークの消失により決定した。生成物は、窒素雰囲気下で、コーティング前まで冷蔵庫内で琥珀色のボトルにて保管した。
【0128】
(実施例4)
a)[DESN100/75% HEA/15% PETA/15% HFPOC(O)NHCHCHOH]中間体の調製
攪拌子を備えた200mL丸底フラスコに、12.5g(0.0654eq、1.0モル分数)のDESN100、1.6mgのDBTDL、0.05gのBHT、及び35.24gのTHFを充填し、混合物を形成した。フラスコを55℃の槽に定置し、12.9g(0.0098eq、0.15モル分数、1314分子量)のHFPOC(O)N(H)CHCHOHを、均圧滴下漏斗を介して10分間かけて、混合物に添加した。添加の終了2時間後、4.13g(0.0098eq、0.15モル分数)のPETAを混合物に添加した。添加の終了2時間後、5.70g(0.0491eq、0.75モル分数)のヒドロキシエチルアクリレートを添加し、混合物を終夜反応させた。終夜の反応後、試料のIRスペクトルには、2265cm−1のNCO基に相当するピークはなかった。5.48gのTHFの添加により反応生成物を希釈し、その組成を50%固体に調製した。
【0129】
b)ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
上記a)で調製された35.24g(0.046モルのアクリレート官能性)の中間体を、磁気攪拌子を備えた100mL丸底フラスコに充填した。フラスコを油浴に定置し、フラスコの内容物を、窒素雰囲気下に定置した。15.77g(1.417eq、0.046モル分数)のビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを、室温で滴下してフラスコに添加した。反応混合物を室温で15分間攪拌し、4時間55℃に加熱した。反応の終了は、H NMRスペクトルにおけるアクリレートピークの消失により決定した。生成物は、窒素雰囲気下で、コーティング前まで冷蔵庫内で琥珀色のボトルにて保管した。
【0130】
使用されるビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンの当量数は、まず、使用される420.94 OH当量のPETAは、70%のペンタエリスリトールトリアクリレート(298/421.4)及び30%のペンタエリスリトールテトラアクリレートであると見なして決定した。次に、OH当量の1モル当たりに存在するアクリレート部分の数を、以下の等式[(構成成分中に存在するアクリレート部分の数)(種全体のヒドロキシル当量)(種全体の構成成分の分数)の全ての構成成分の合計]/構成成分の分子量、を計算することにより決定した。例えば、等式中のペンタエリスリトールトリアクリレートの値は、[(3)(420.94)(0.7)/(298)]+[(4)(420.94)(0.3)/352]=4.40である。したがって、調製5a)における、PETA及びHEAからのアクリレートの当量数は、(0.00984.40)+(0.0491)=0.0922であった。調製5b)には溶液の半分を使用したため、反応中のアクリレートのモル数は、0.046である。例えば6、7、及び8についても、同様の計算が行われた。
【0131】
(実施例5)
ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
上記実施例4a)に記載の通り調製された35.24g(0.046モルのアクリレート官能性)の中間体を、磁気攪拌子を備えた100mL丸底フラスコに充填した。フラスコを油浴に定置し、フラスコの内容物を、窒素雰囲気下に定置した。8.92g(0.046eq、1.417分数)のMAPTMSを、室温で滴下してフラスコに添加した。反応混合物を室温で15分間攪拌し、4時間55℃に加熱した。反応の終了は、H NMRスペクトルにおけるアクリレートピークの消失により決定した。生成物は、窒素雰囲気下で、コーティング前まで冷蔵庫内で琥珀色のボトルにて保管した。
【0132】
(実施例6)
a)[DESN100/60% HEA/30% PETA/15% HFPOC(O)NHCHCHOH]中間体の調製
攪拌子を備えた200mL丸底フラスコに、12.5g(0.0654eq、1.0モル分数)のDESN100、1.6mgのDBTDL、0.05gのBHT、及び35.24gのTHFを充填し、混合物を形成した。フラスコを55℃の槽に定置し、12.9g(0.0098eq、0.15モル分数、1314分子量)のHFPOC(O)N(H)CHCHOHを、均圧滴下漏斗を介して10分間かけて、混合物に添加した。添加の終了2時間後、8.26(0.0196eq、0.30モル分数)のPETAを混合物に添加した。添加の終了2時間後、4.56g(0.0393eq、0.6モル分数)のヒドロキシエチルアクリレートを添加し、混合物を終夜反応させた。終夜の反応後、試料のIRスペクトルには、2265cm−1のNCO基に相当するピークはなかった。5.48gのTHFの添加により反応生成物を希釈し、その組成を50%固体に調製した。
【0133】
b)ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
上記a)で調製された38.23g(0.063モルのアクリレート官能性)の中間体を、磁気攪拌子を備えた100mL丸底フラスコに充填した。フラスコを油浴に定置し、フラスコの内容物を、窒素雰囲気下に定置した。21.49g(0.063eq、1.927モル分数)のビス(トリメトキシシリルプロピル)アミンを、室温で滴下してフラスコに添加した。反応混合物を室温で15分間攪拌し、4時間55℃に加熱した。反応の終了は、H NMRスペクトルにおけるアクリレートピークの消失により決定した。生成物は、窒素雰囲気下で、コーティング前まで冷蔵庫内で琥珀色のボトルにて保管した。
【0134】
(実施例7)
ペルフルオロポリエーテルウレタンシランの調製
上記実施例6a)に記載の通り調製された38.23g(0.063モルのアクリレート官能性)の中間体を、磁気攪拌子を備えた100mL丸底フラスコに充填した。フラスコを油浴に定置し、フラスコの内容物を、窒素雰囲気下に定置した。12.16g(0.63eq、1.927モル分数)のMAPTMSを、室温で滴下してフラスコに添加した。反応混合物を室温で15分間攪拌し、4時間55℃に加熱した。反応の終了は、H NMRスペクトルにおけるアクリレートピークの消失により決定した。生成物は、窒素雰囲気下で、コーティング前まで冷蔵庫内で琥珀色のボトルにて保管した。
【0135】
実施例1〜7の材料を使用して、上述の「ポリカーボネートプラーク上のコーティング形成方法」に従い、ポリカーボネートプラーク上のコーティングを調製した。そして、上述のテーバーヘイズ(Taber Haze)変化、撥インク性試験、撥インク性耐久性試験、スチールウール試験、及び溶媒試験を使用して、得られたコーティングの性能を評価した。
【0136】
以下の表1は、フルオロケミカルウレタンシラン及び実施例1〜7の材料を添加せずに、SHC−1200を使用して作製されたコーティングに関する、テーバーヘイズ(Taber Haze)試験、撥インク性試験、及び撥インク性耐久性試験の結果を要約する。
【0137】
【表2】

【0138】
以下の表2は、フルオロケミカルウレタンシラン及び実施例1〜7の材料を添加せずに、SHC−1200を使用して作製されたコーティングに関する、スチールウール試験の結果を要約する。
【0139】
【表3】

【0140】
以下の表3は、フルオロケミカルウレタンシラン及び実施例1〜3の材料を添加せずに、SHC−1200を使用して作製されたコーティングに関する、溶媒試験の結果を要約する。
【0141】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、
が、フッ素含有基であり、
が、ポリイソシアネートの残基であり、
が、求核性アクリロイル化合物とアミノシランとのマイケル反応から誘導されるシラン含有部分であり、
x及びyが、それぞれ独立して、少なくとも1であり、zが、1又は2である。)の化合物。
【請求項2】
が、式
【化2】

(式中、
が、−O−又は−S−であり、
が、−O、−S−、又は−NR−であり、式中、Rが、H又はC〜Cのアルキルであり、
が、多価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、前記アルキレン基が、1個以上のカテナリー酸素原子を任意に含有し、
が、C〜Cのアルキル、又は−R−Si(Y)(R3−pであり、
が、二価のアルキレン基であり、前記アルキレン基が、1個以上のカテナリー酸素原子を任意に含有し、
Yが、加水分解性基であり、
が、一価のアルキル若しくはアリール基であり、
pが、1、2、又は3、好ましくは、3であり、
qが、1〜5である。)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
が、一価のペルフルオロアルキル及びペルフルオロオキシアルキル基、並びに二価のペルフルオロアルキレン及びペルフルオロオキシアルキレン基から選択されるフッ素含有基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、式
【化3】

(式中、
が、一価のペルフルオロアルキル若しくはぺルフルオロオキシアルキル基、又は二価のペルフルオロアルキレン若しくはぺルフルオロオキシアルキレン基であり、
Qが、共有結合、又は価数zの多価のアルキレン基であり、前記アルキレンが、1個以上のカテナリー酸素原子を任意に含有し、
が、−O−、−NR−、又は−S−であり、式中、Rが、H又はC〜Cのアルキルであり、
zが、1又は2である。)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
が、一価のペルフルオロオキシアルキル基、又は
−(C2nO)−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)C2nO)−、−(C2nCF(Z)O)−、−(CFCF(Z)O)−、(式中、nが1〜4であり、Zが、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、又はペルフルオロオキシアルキル基である。)及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のペルフルオロ化反復単位を含む、二価のペルフルオロオキシアルキレン基である、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
が、式
W−R−O−R−(R
(式中、
Wが、一価のペルフルオロオキシアルキルについてはFであり、二価のペルフルオロオキシアルキレンについては開放原子価(「−」)であり、
が、ペルフルオロアルキレン基を表し、
が、1、2、3、又は4個の炭素原子を有するペルフルオロオキシアルキレン基、又はそのようなペルフルオロオキシアルキレン基の混合物からなるペルフルオロアルキレンオキシ基を表し、
が、ペルフルオロアルキレン基を表し、
qが、0又は1である。)の基を含む、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
前記ペルフルオロオキシアルキレン基が、−[CF−CF−O]−;−[CF(CF)−CF−O]−;−[CFCF−O]−[CFO]−、−[CFCFCFCF−O]、及び−[CF−CF−O]−[CF(CF)−CF−O]−(式中、r、s、t、及びuのそれぞれが、1〜50の整数である。)のうちの1つ以上から選択される、請求項3に記載の化合物。
【請求項8】
が、一価のペルフルオロオキシアルキレン基を含み、zが1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
が、フッ素化ポリオールから誘導される、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Yが、ハロゲン、C〜Cのアルコキシ基、又はC〜Cのアシルオキシ基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項11】
が、一価のペルフルオロオキシアルキル基であり、zが1である、請求項4に記載の化合物。
【請求項12】
シラン基と、
−NH−C(O)−X−基とのモル比が、1:1を超える、請求項2に記載の化合物。
【請求項13】
【化4】

(式中、
が、−O−又は−S−であり、
が、−O、−S−、又は−NR−であり、式中、Rが、H又はC〜Cのアルキルであり、
が、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、前記アルキレン基が、1個以上のカテナリー酸素原子を任意に含有し、qが、1〜5である。)の求核性アクリロイル化合物から誘導される、請求項2に記載の化合物。
【請求項14】

【化5】

(式中、
が、H、C〜Cのアルキル、又は−R−Si(Y)(R3−pであり、
が、二価のアルキレン基であり、前記アルキレン基が、1個以上のカテナリー酸素原子を任意に含有し、
Yが、加水分解性基であり、
が、一価のアルキル若しくはアリール基であり、
pが、1、2、又は3、好ましくは、3である。)のアミノシランから誘導される、請求項2に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の少なくとも1つの化合物と、溶媒とを含む、コーティング組成物。
【請求項16】
シルセスキオキサンを更に含む、請求項15に記載のコーティング組成物。
【請求項17】
アミノシランとペンダントアクリレート基を有するフッ素含有ウレタン化合物とのマイケル付加反応生成物を含む化合物であって、前記フッ素含有ウレタン化合物が、ポリイソシアネート、求核性フルオロケミカル化合物、及び求核性アクリロイル化合物の反応生成物を含む、化合物。
【請求項18】
ペンダントアクリレート基を有する前記フッ素含有ウレタン化合物が、式
【化6】

(式中、
が、フッ素含有基であり、
が、ポリイソシアネートの残基であり、
が、−O−又は−S−であり、
が、−O、−S−、又は−NR−であり、式中、Rが、H又はC〜Cのアルキルであり、
が、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、前記アルキレン基は、1個以上のカテナリー酸素原子を任意に含み、
zが、1又は2であり、
qが、1〜5である。)である、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
前記アミノシランが、式
【化7】

(式中、
が、C〜Cのアルキル、又は−R−Si(Y)(R3−pであり、
が、二価のアルキレン基であり、前記アルキレン基が、1個以上のカテナリー酸素原子を任意に含み、
Yが、加水分解性基であり、
が、一価のアルキル若しくはアリール基であり、
pが、1、2、又は3、好ましくは、3であり、
qが、1から5である。)である、請求項17に記載の化合物。

【公表番号】特表2010−513547(P2010−513547A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543033(P2009−543033)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/086446
【国際公開番号】WO2008/076639
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】