説明

ペースト塗布装置及びペースト塗布方法

【課題】ペーストの塗布高さの測定精度を上げ、塗布製品の品質を向上させる。
【解決手段】ペースト塗布装置1は、塗布対象物Wの被塗布面にペーストを塗布する複数の塗布ヘッド3aと、それらの塗布ヘッド3aにそれぞれ一体的に設けられ被塗布面の変位を測定可能な複数のレーザ変位計3cと、制御を行う制御部とを備える。複数のレーザ変位計3cのうち少なくとも一つは光路面が塗布パターンにおける二直線のうち一方の直線に沿うように配置されており、少なくとも他の一つは光路面が二直線のうち他方の直線に沿うように配置されている。制御部は、被塗布面に描画された塗布パターンを形成するペーストの塗布高さを測定するとき、当該塗布パターンにおける直線状のペーストの延伸方向に光路面が沿った状態のレーザ変位計3cを直線状のペーストの延伸方向と交差する方向に移動させる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、塗布対象物にペーストを塗布するペースト塗布装置及びペースト塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペースト塗布装置は、液晶表示パネルなどの様々な装置を製造するために用いられている。このペースト塗布装置は、塗布対象物に対してペーストを塗布する塗布ヘッドを備えており、その塗布ヘッドを移動させながら塗布対象物の被塗布面にペーストを塗布し、塗布対象物上に所定のペーストパターンを形成する。例えば、液晶表示パネルの製造では、ペーストとしてシール性及び接着性を有すシール剤が基板などの塗布対象物の被塗布面に矩形枠状に塗布される。
【0003】
このようなペースト塗布装置では、塗布対象物の被塗布面に線状のパターンで塗布されたペーストの断面積が求められる(例えば、特許文献1参照)。この測定では、ペーストの塗布高さがレーザ変位計により測定される。レーザ変位計は三角測量法を利用した計測器であり、このレーザ変位計としては、ノズルの先端と基板の上面との間の距離を計測する計測器が兼用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−275770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前述のレーザ変位計は塗布ヘッドに対して所定の配置方向で固定されている。また、線状に塗布されたペーストの断面形状は半楕円であり、その表面は湾曲している。そのため、ペーストの塗布高さを測定する際、レーザ変位計の配置方向とペーストの延伸方向との関係によっては、ペーストの塗布高さを精度良く測定することができない場合がある。この場合には、正確なペーストの塗布高さを得ることが難しく、ペーストが所望の塗布量で塗布されていない不良品が良品と判断されて次工程の製造に用いられることになる。この結果として、塗布製品の品質が低下してしまう。
【0006】
本発明は上記を鑑みてなされたものであり、その目的は、ペーストの塗布高さの測定精度を上げ、塗布製品の品質を向上させることができるペースト塗布装置及びペースト塗布方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態に係るペースト塗布装置は、塗布対象物の被塗布面に向けてペーストを吐出するノズルをそれぞれ有する複数の塗布ヘッドと、複数の塗布ヘッドにそれぞれ一体的に設けられ、被塗布面の変位をレーザ光の投受光によって測定可能で、かつ、レーザ光の投光路と受光路とが異なる複数のレーザ変位計と、塗布対象物と複数の塗布ヘッドとを被塗布面に沿う方向及び被塗布面に交差する方向に相対移動させる移動駆動部と、塗布対象物と塗布ヘッドとを被塗布面に沿う方向に相対移動させ、ノズルから吐出されるペーストにより被塗布面に、交差する位置関係の二直線を有する形状の塗布パターンを描画するように塗布ヘッド及び移動駆動部を制御するとともに、塗布ヘッドに対応するレーザ変位計の測定値に基づいて当該塗布ヘッドのノズルの先端と被塗布面との離間距離を設定値に保つように移動駆動部を制御する制御部とを備え、複数のレーザ変位計のうち少なくとも一つは、投光路及び受光路を含む光路面が塗布パターンにおける二直線のうち一方の直線に沿うように配置されており、複数のレーザ変位計のうち少なくとも他の一つは、光路面が二直線のうち他方の直線に沿うように配置されており、制御部は、被塗布面に描画されたペーストの塗布高さを測定するとき、塗布パターンにおける直線状に塗布されたペーストの延伸方向に光路面が沿った状態のレーザ変位計を、直線状に塗布されたペーストの延伸方向と交差する方向に移動させるように移動駆動部を制御する。
【0008】
本実施形態に係るペースト塗布装置は、塗布対象物の被塗布面に向けてペーストを吐出するノズルを有する塗布ヘッドと、塗布ヘッドに一体的に設けられ、被塗布面の変位をレーザ光の投受光によって測定可能で、かつ、レーザ光の投光路と受光路とが異なるレーザ変位計と、塗布対象物と塗布ヘッドとを被塗布面に沿う方向及び被塗布面に交差する方向に相対移動させる移動駆動部と、レーザ変位計を被塗布面に沿う方向に回転させる回転駆動部と、塗布対象物と塗布ヘッドとを被塗布面に沿う方向に相対移動させ、ノズルから吐出されるペーストにより被塗布面に、交差する位置関係の二直線を有する形状の塗布パターンを描画するように塗布ヘッド及び移動駆動部を制御するとともに、レーザ変位計の測定値に基づいてノズルの先端と被塗布面との離間距離を設定値に保つように移動駆動部を制御する制御部とを備え、制御部は、被塗布面に描画されたペーストの塗布高さを測定するとき、塗布パターンの二直線のどちらに対しても、レーザ変位計の投光路及び受光路を含む光路面を当該塗布パターンにおける直線状に塗布されたペーストの延伸方向に沿わし、その状態のレーザ変位計を直線状に塗布されたペーストの延伸方向と交差する方向に移動させるように回転駆動部及び移動駆動部を制御する。
【0009】
本実施形態に係るペースト塗布方法は、塗布対象物と塗布ヘッドとを塗布対象物の被塗布面に沿う方向に相対移動させ、塗布ヘッドのノズルから吐出されるペーストにより被塗布面に、交差する位置関係の二直線を有する形状の塗布パターンを描画するとともに、描画の際、塗布ヘッドと一体的に設けられたレーザ変位計であり、被塗布面の変位をレーザ光の投受光によって測定可能で、かつ、レーザ光の投光路と受光路とが異なるレーザ変位計の測定値に基づいて、ノズルの先端と被塗布面との離間距離を設定値に保つペースト塗布方法であって、被塗布面に描画されたペーストの塗布高さを測定するとき、塗布パターンの二直線のどちらに対しても、レーザ変位計の投光路及び受光路を含む光路面を当該塗布パターンにおける直線状に塗布されたペーストの延伸方向に沿わし、その状態のレーザ変位計を直線状に塗布されたペーストの延伸方向と交差する方向に移動させ、ペーストの塗布高さを測定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ペーストの塗布高さの測定精度を上げ、塗布製品の品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態に係るペースト塗布装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1に示すペースト塗布装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】図1及び図2に示すペースト塗布装置が備えるレーザ変位計によるペーストの塗布高さの測定方法を説明するための説明図である。
【図4】図3に示す測定によるペーストの塗布高さの測定値を説明するための説明図である。
【図5】比較例のペーストの塗布高さの測定を説明するための説明図である。
【図6】図5に示す測定によるペーストの塗布高さの測定値を説明するための説明図である。
【図7】図1及び図2に示すペースト塗布装置が行うペースト塗布動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】図7に示すペースト塗布動作におけるペーストの塗布高さの測定位置を説明するための説明図である。
【図9】第2の実施形態に係るペースト塗布装置が備えるレーザ変位計の概略構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施形態)
第1の実施形態について図1ないし図8を参照して説明する。
【0013】
図1及び図2に示すように、第1の実施形態に係るペースト塗布装置1は、塗布対象物Wが載置されるステージ2と、そのステージ2上の塗布対象物Wにペーストを個別に塗布する複数の塗布ユニット3A〜3Dと、各塗布ユニット3A〜3DをX軸方向に移動させる複数のX軸移動装置4A及び4Bと、それらのX軸移動装置4A及び4Bを支持する複数の支持部5A及び5Bと、それらの支持部5A及び5BをY軸方向に移動させるY軸移動装置6A及び6Bと、ステージ2やY軸移動装置6A、6Bなどを支持する架台7と、各部を制御する制御部8とを備えている。
【0014】
ステージ2は、塗布対象物Wが載置される載置面を有しており、架台7の上面に固定されて設けられている。このステージ2には、液晶表示パネルの製造に用いられるガラス基板などの塗布対象物Wが自重により載置される。しかしながら、これに限るものではなく、例えば、その塗布対象物Wを保持するため、静電チャックや吸着チャックなどの機構が設けられても良い。
【0015】
各塗布ユニット3A〜3Dは、シール性及び接着性を有するシール剤などのペーストを吐出する塗布ヘッド3aと、その塗布ヘッド3aをZ軸方向に移動させるZ軸移動装置3bと、レーザ光の投受光により測定対象物である塗布対象物Wとの離間距離を測定するためのレーザ変位計3cと、塗布対象物Wの位置決め用の撮像部3dとを個別に備えている。
【0016】
塗布ヘッド3aは、ペーストを吐出するノズル3a1を有するシリンジなどの収容筒を備えて構成されるものである。この塗布ヘッド3aは気体供給チューブなどを介して気体供給部(いずれも図示せず)に接続されている。また、塗布ヘッド3aは、前述のシリンジの内部に供給される気体により、その内部に収容されたペーストをノズル3a1から吐出する。
【0017】
Z軸移動装置3bは、塗布ヘッド3a、レーザ変位計3c及び撮像部3dを支持し、X軸移動装置4A又は4Bに設けられている。このZ軸移動装置3bは、一つの塗布ヘッド3aを支持し、ステージ2上の塗布対象物Wの被塗布面に直交するZ軸方向、すなわちステージ2に対して塗布ヘッド3aを接離させる接離方向(Z軸方向)に移動させる移動装置である。このZ軸移動装置3bは制御部8に電気的に接続されており、その駆動が制御部8により制御される。なお、Z軸移動装置3bとしては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動装置やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動装置などが用いられる。
【0018】
レーザ変位計3cは、三角測量法を利用した距離測定器であり、レーザ光を投光する半導体レーザなどの投光部3c1と、レーザ光(反射光)を受光する半導体位置検出素子などの受光部3c2とを備えている(図2参照)。このレーザ変位計3cは制御部8に電気的に接続されており、測定した離間距離(測定値)を制御部8に入力する。
【0019】
投光部3c1と受光部3c2とは、図3に示すように、平面視において同一直線上に位置するように配置されている。レーザ光は投光部3c1からステージ2上の塗布対象物Wの被塗布面に向けて出射され、その被塗布面により反射されて受光部3c2に受光される。このレーザ光の投光路と受光路とが異なる、投受光の光路を含む平面を光路面と称する。また、投光部3c1と受光部3c2とが同一直線上に並ぶ並び方向、すなわち光路面に沿う方向が配置方向である。
【0020】
ここで、塗布ユニット3Aのレーザ変位計3cと塗布ユニット3Bのレーザ変位計3cは、投光部3c1と受光部3c2の配置方向、すなわちレーザ光の投受光の光路を含む光路面が互いに交差、例えば90度で交差(直交)するように配置されている。より具体的には、塗布ユニット3Aのレーザ変位計3cは前記の配置方向がY軸方向に沿うように取り付けられている。また、塗布ユニット3Bのレーザ変位計3cは前記の配置方向がX軸方向に沿うように取り付けられている。
【0021】
同様に、塗布ユニット3Cのレーザ変位計3cと塗布ユニット3Dのレーザ変位計3cも、投光部3c1と受光部3c2の配置方向、すなわちレーザ光の投受光の光路を含む光路面が互いに交差、例えば90度で交差(直交)するように配置されている。より具体的には、塗布ユニット3Cのレーザ変位計3cは前記の配置方向がY軸方向に沿うように取り付けられている。また、塗布ユニット3Dのレーザ変位計3cは前記の配置方向がX軸方向に沿うように取り付けられている。
【0022】
撮像部3dは、塗布対象物Wの位置決め用のカメラであり、塗布対象物Wの被塗布面に形成された位置決め用のマーク(アライメントマーク)を撮像する。さらに、撮像部3dは、塗布対象物Wの被塗布面に塗布されたペーストの幅を測定するためのカメラでもあり、塗布対象物Wの被塗布面に塗布されたペーストをその上方から撮像する。この撮像部3dは制御部8に電気的に接続されており、撮像した撮像画像を制御部8に入力する。
【0023】
X軸移動装置4Aは支持部5Aの側面(支持部5Bと対向する側面)に設けられており、X軸移動装置4Bは支持部5Bの側面(支持部5Aと対向する側面)に設けられている。X軸移動装置4Aは、二つの塗布ユニット3A及び3BをX軸方向に個別に移動可能に支持しており、それらの塗布ユニット3A及び3BをX軸方向に個別に移動させる移動駆動部である。同様に、X軸移動装置4Bも、二つの塗布ユニット3C及び3DをX軸方向に移動可能に支持しており、それらの塗布ユニット3C及び3DをX軸方向に個別に移動させる移動駆動部である。これらのX軸移動装置4A及び4Bは制御部8に電気的に接続されており、その駆動が制御部8により制御される。なお、各X軸移動装置4A及び4Bとしては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動装置やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動装置などが用いられる。
【0024】
支持部5Aは、コラムであり、X軸移動装置4Aを支持し、これによって二つの塗布ユニット3A及び3Bを支持する。同様に、支持部5Bも、コラムであり、X軸移動装置4Bを支持し、これによって二つの塗布ユニット3C及び3Dを支持する。これらの支持部5A及び5Bは横長の直方体形状にそれぞれ形成されており、その延伸方向がX軸方向に平行にされ、さらに、ステージ2の載置面に対して平行にされて一対のY軸移動装置6A及び6B上に設けられている。
【0025】
一対のY軸移動装置6A及び6Bは、架台7の上面に、ステージ2をX軸方向の両側から挟んで互いに対向し、Y軸方向に沿って設けられている。これらのY軸移動装置6A及び6Bは、それぞれ各支持部5A及び5BをY軸方向に移動可能に支持しており、それらの支持部5A及び5BをY軸方向に沿って個別に移動させる移動駆動部である。各Y軸移動装置6A及び6Bは制御部8に電気的に接続されており、その駆動が制御部8により制御される。なお、各Y軸移動装置6A及び6Bとしては、例えば、サーボモータを駆動源とする送りねじ式の移動装置やリニアモータを駆動源とするリニアモータ式の移動装置などが用いられる。
【0026】
架台7は、床面上に設置され、ステージ2やY軸移動装置6A、6Bなどを床面から所定の高さ位置に支持する架台である。架台7の上面は平面に形成されており、この架台7の上面には、ステージ2やY軸移動装置6A、6Bなどが載置されている。
【0027】
制御部8は、各部を集中的に制御するマイクロコンピュータと、各種情報や各種プログラムなどを記憶する記憶部と(いずれも図示せず)を備えており、架台7内に設けられている(図1参照)。各種情報は、ペースト塗布に関する塗布情報を含んでおり、その塗布情報は、所定の塗布パターンや描画速度(塗布対象物Wの被塗布面とノズル3a1の水平方向における相対移動速度)、ギャップの設定値(ノズル3a1の先端とステージ2上の塗布対象物Wの被塗布面との離間距離の設定値)、ペーストの吐出量などに関する情報である。この制御部8は各種情報や各種プログラムに基づいて各部を制御する。
【0028】
なおここで、塗布パターンとしては、X軸方向に平行な辺とY軸方向に平行な辺を備えた矩形状のパターンが設定されている。また、上述において、塗布ユニット3A、3Cのレーザ変位計3cの配置方向がY軸方向に沿うように塗布ユニット3A、3Cを取り付けたのは、塗布パターンにおけるY軸方向に平行な辺にレーザ変位計3cの光路面を沿わせるためである。また、塗布ユニット3B、3Dのレーザ変位計3cの配置方向がX軸方向に沿うように塗布ユニット3B、3Dを取り付けたのは、塗布パターンにおけるX軸方向に平行な辺にレーザ変位計3cの光路面を沿わせるためである。
【0029】
次に、レーザ変位計3cについて詳しく説明する。
【0030】
レーザ変位計3cは、測定対象物の変位を測定する測定器である。すなわち、レーザ変位計3cは、測定範囲内において測定対象物がもとあった位置から他の場所に移動したとき、その移動量を測定するものである。例えば、塗布対象物Wの被塗布面を測定範囲内に位置付けた状態で、レーザ変位計3cをX軸方向あるいはY軸方向に走査移動させれば、走査移動軌跡上における被塗布面のうねりや凹凸などの高さ変化を測定することができる。そのため、レーザ変位計3cをX軸方向あるいはY軸方向に走査移動させつつ、レーザ変位計3cの測定値が予め設定した値を維持するようにZ軸移動装置3bを制御すれば、ノズル3aの先端と被塗布面との間の間隔を一定に保つ、所謂、ギャップ制御を行うことができる。また、レーザ変位計3cをZ軸方向に固定した状態で、線塗布されたペーストを横切るようにレーザ変位計3cを走査移動させれば、ペーストによる高さ変化が測定値として現われるので、測定値の変化量からペーストの塗布高さを得ることができる。
【0031】
ところで、図3に示すように、レーザ変位計3cの投光部3c1と受光部3c2の配置方向、すなわち光路面に対して平行に線塗布されたペーストPの塗布高さを測定する場合には、レーザ変位計3cの光路面と線状のペーストPの延伸方向とが平行な状態で、レーザ変位計3cは線状のペーストPを横切るように走査される。
【0032】
これにより、図4に示すように、レーザ変位計3cの測定値(波形)A1が得られる。なお、図4では、上図がペーストPの断面図であり、下図がレーザ変位計3cの測定値A1である。この測定値A1は、ペーストPの幅方向の両端部で測定値が極端に低下するという異常な値を示している。これは、ペーストPの幅方向の両端部におけるペーストPの表面がほぼ垂直面であるため、投光部3c1からの照射光が上方向にはほとんど反射されず、その結果、反射光が受光部3c2に入射せず、測定不能となるためである。この両端部以外の測定値A1は、各位置でのペーストの高さに相当する値である。
【0033】
このような測定値A1の最大値がペーストPの塗布高さHとして得られる。この塗布高さHにペーストPの幅Lが乗算され、さらに、所定の定数Kが乗算されて、ペーストPの断面積S(S=H×L×K)が算出される。なお、定数Kは、塗布後のペーストPの予測断面形状(例えば、半楕円形状)に基づいて実験的にあるいは理論的に設定されている。また、ペーストPの塗布幅Lは撮像部3dにより撮像された画像から求められている。
【0034】
ここで、比較例として、図5に示すように、レーザ変位計3cの投光部3c1と受光部3c2の配置方向、すなわち光路面に対して直交に線塗布されたペーストPの塗布高さを測定する場合について説明する。この場合には、レーザ変位計3cの光路面と線状のペーストPの延伸方向とが直交した状態で、レーザ変位計3cは線状のペーストPを横切るように走査される。
【0035】
これにより、図6に示すように、レーザ変位計3cの測定値(波形)A2が得られる。なお、図6では、上図がペーストPの断面図であり、下図がレーザ変位計3cの測定値A2である。この測定値A2は、ペーストPの幅方向の両端部とその内側の近傍で異常な値を示している。両端部の内側近傍においては、得られるべき測定値よりも大きな値が出力されている。
【0036】
このような測定値A2の最大値がペーストPの塗布高さHとして得られるが、このとき、得られた塗布高さHは正確な塗布高さとならない。すなわち、ペーストPの幅方向の両端部の内側近傍の位置における異常値が最大値を示しており、この異常値が塗布高さHとされるため、塗布高さHは実際の塗布高さよりも大きな値になってしまう。
【0037】
そこで、ペーストPの塗布高さHを測定する場合には、図3に示すように、レーザ変位計3cの投光部3c1と受光部3c2の配置方向、すなわち光路面と線状のペーストPの延伸方向とを平行にして、レーザ変位計3cを線状のペーストPを横切るように走査させる。これにより、ペーストPの幅方向の両端部の内側近傍の位置における異常値が発生しないので、その異常値が塗布高さHとされることを防止し、正確な塗布高さHを得ることができる。
【0038】
次に、前述のペースト塗布装置1が行うペースト塗布動作について説明する。なお、ペースト塗布装置1の制御部8が各種情報及び各種プログラムに基づいてペースト塗布処理を実行する。
【0039】
図7に示すように、制御部8は、各部を制御し、ペースト塗布を行い(ステップS1)、次いで、塗布対象物Wの被塗布面に塗布されたペーストの断面積を求め(ステップS2)、最後に、良否判定を行う(ステップS3)。なおここで、断面積は一例であり、要は塗布されたペーストの塗布量が適正な範囲内であるか否かが判別できればよいので、塗布高さHのみを測定しその測定値に基づいて判定しても良く、また、塗布高さHと塗布幅Lを測定しそれぞれの値に基づいて判定しても良い。
【0040】
ステップS1で、制御部8は、各塗布ユニット3A〜3Dにおいて、まず、ペースト塗布に先立って撮像部3dによりステージ2上の塗布対象物Wの位置決め用のマーク(例えば、複数個存在する)を撮像する。その後、制御部8は、撮像部3dにより撮像した位置決め用のマークを画像認識により検出し、塗布対象物Wの被塗布面においてペーストを塗布する塗布位置を特定する。
【0041】
次に、制御部8は、各塗布ユニット3A〜3D、各X軸移動装置4A及び4Bさらに各Y軸移動装置6A及び6Bを制御し、各塗布ユニット3A〜3Dの各々の塗布ヘッド3aのノズル3a1とステージ2上の塗布対象物Wとをその被塗布面に沿って相対移動させながら、各塗布ヘッド3aのノズル3a1の先端からペーストを吐出させて、ステージ2上の塗布対象物Wの被塗布面に所定の塗布パターン(ペーストパターン)を複数(例えば四つ)同時に描画する。なお、制御部8は、この描画を繰り返し、ステージ2上の塗布対象物Wの被塗布面に所定数の塗布パターンを描画する。この所定数は塗布対象物Wのサイズや塗布パターンのサイズに応じて予め設定されている。
【0042】
この描画中、制御部8は、各塗布ユニット3A〜3Dにおいて、レーザ変位計3cから出力される塗布対象物Wの被塗布面の変位の測定値を受け取る。そして、制御部8は、受け取った測定値に基づいて、塗布ヘッド3aのノズル3a1の先端とステージ2上の塗布対象物Wの被塗布面との離間距離を記憶部に記憶されたギャップ情報の設定値に維持する。このようにして、ノズル3a1の先端と塗布対象物Wの被塗布面との離間距離が設定値に保たれる結果、塗布対象物Wの被塗布面に塗布されるペーストの塗布量を均一にすることが可能となる。
【0043】
次に、ステップS2において、制御部8は、塗布対象物Wの被塗布面に塗布された複数の塗布パターンそれぞれに対し、予め設定された測定位置で、ペーストの塗布高さHとペーストの塗布幅Lの検出を行う。ここで、ペーストの塗布高さHの検出は、各塗布ユニット3A及び3Bの各々のレーザ変位計3cを用いて行われる。また、ペーストの塗布幅Lの検出は、各塗布ユニット3A及び3Bの各々の撮像部3dを用いて、塗布対象物Wの被塗布面に塗布されたペーストを撮像することで行われる。このとき、他の塗布パターンに対しても、他の塗布ユニット3C及び3Dを用いて、前述と同様に、ペーストの塗布高さH及びペーストの塗布幅Lを求めることが可能である。なお、各塗布ユニット3A〜3Dは互いの動作を妨げることがなく動作するように制御部8により制御される。
【0044】
ここで、前述の測定位置は、例えば、図8に示すように、塗布パターンが矩形枠状である場合、一ラインに対して三箇所、四ラインで合計十二箇所(図8中の太線参照)に設定されている。なお、図8はあくまでも例示であり、測定位置及び測定数は図8に限られるものではない。また、矩形枠状の塗布パターンは、交差する位置関係の二直線を有する形状の塗布パターンの一種である。具体的には、対向する一組の辺がY軸方向に平行に設けられており、対向する他の一組の辺がX軸方向に平行に設けられている。なおこの例においては、Y軸方向に平行な辺(図8における第1ラインB1と第2ラインB2)が矩形状の塗布パターンにおける一方の直線に相当し、X軸方向に平行な辺(図8における第3ラインB3と第4ラインB4)が他方の直線に相当する。
【0045】
前述の矩形枠状の塗布パターンを測定する場合には、塗布ユニット3A及び3Bを一つの組とし、まず、塗布ユニット3Aのレーザ変位計3cにより塗布パターンの第1ラインB1を三箇所測定する。このとき、レーザ変位計3cの投光部3c1と受光部3c2の配置方向、すなわち光路面と第1ラインB1(線状のペーストP)の延伸方向とは図3と同様に平行である。制御部8は、その平行状態のレーザ変位計3cをX軸移動装置4AによりX軸方向に移動させ、第1ラインB1を直交方向に横切るように走査させる。この走査を三箇所の測定位置毎に行い、この三回の走査により得た三つの測定値から各々の最大値をそれぞれの塗布高さHとして求める。なお、ペーストの塗布高さHを求める場合には、ペーストの延伸方向に対して配置方向(光路面)が平行に設けられているレーザ変位計3cが選択されて用いられる。
【0046】
次に、制御部8は、第1ラインB1に対向して第1ラインB1と平行な第2ラインB2を塗布ユニット3Aのレーザ変位計3cにより三箇所測定する。このとき、制御部8は、前述と同様、レーザ変位計3cの配置方向、すなわち光路面と第2ラインB2(線状のペーストP)の延伸方向とが平行状態のレーザ変位計3cをX軸移動装置4AによりX軸方向に移動させ、第2ラインB2を横切るように走査させる。この走査を三箇所の測定位置毎に行い、この三回の走査により得た三つの測定値から各々の最大値をそれぞれの塗布高さHとして求める。
【0047】
その後、制御部8は、第1ラインB1に直交する第3ラインB3を塗布ユニット3Bのレーザ変位計3cにより三箇所測定する。このとき、レーザ変位計3cの配置方向、すなわち光路面と第3ラインB3(線状のペーストP)の延伸方向とは平行である。制御部8は、その平行状態のレーザ変位計3cをY軸移動装置6A及び6BによりY軸方向に移動させ、第3ラインB3を直交方向に横切るように走査させる。この走査を三箇所の測定位置毎に行い、この三回の走査により得た三つの測定値から各々の最大値をそれぞれの塗布高さHとして求める。
【0048】
最後に、制御部8は、第3ラインB3に対向する第4ラインB4を塗布ユニット3Bのレーザ変位計3cにより三箇所測定する。このとき、制御部8は、レーザ変位計3cの配置方向、すなわち光路面と第4ラインB4(線状のペーストP)の延伸方向とが平行状態のレーザ変位計3cをY軸移動装置6A及び6BによりY軸方向に移動させ、第4ラインB4を横切るように走査させる。この走査を三箇所の測定位置毎に行い、この三回の走査により得た三つの測定値から各々の最大値をそれぞれの塗布高さHとして求める。
【0049】
このようにして、制御部8は、ライン毎に三つの塗布高さH、合計十二個の塗布高さHを求める。さらに、制御部8は、測定位置毎に、そのペーストの塗布高さHと撮像画像から求めたペーストの塗布幅Lを乗算し、その値に所定の定数Kを乗算し、ペーストの断面積S(S=H×L×K)を算出する。なお、定数Kは、前述したように、塗布後のペーストの予測断面形状(例えば、半楕円形状)に基づいて実験的にあるいは理論的に設定されている。なおここで、塗布幅Lについては、各塗布ラインB1〜B4のそれぞれの測定位置でのレーザ変位計3cの走査の後に続いて撮像される、撮像部3dによる当該測定位置の撮像画像に基づいて算出される。制御部8は、撮像部3dの撮像画像から、公知の画像処理技術を用いて、線状に塗布されたペーストの幅方向の両端部を検出する。そして、検出した両端部間の距離をペーストの塗布幅Lとして求める。
【0050】
次に、ステップS3において、制御部8は前述のステップS2で求めた測定位置毎のペーストの断面積がそれぞれ所定の許容範囲内であるか否かの良否判定を行う。十二個全てのペーストの断面積が所定の許容範囲内であると判定した場合には、塗布済の塗布対象物Wは次の工程に搬送されて用いられる。一方、十二個のうち一つでもペーストの断面積が所定の許容範囲内でないと判定した場合には、塗布済の塗布対象物Wは次の工程に搬送されずに取り除かれる。
【0051】
このようなペースト塗布工程では、矩形枠状の塗布パターンの四つのラインB1〜B4のどれに対しても、四つの塗布ユニット3A〜3Dの何れかのレーザ変位計3cの配置方向、すなわち光路面が当該ラインB1〜B4を構成するペーストの延伸方向に平行になる。その平行状態のレーザ変位計3cをペーストの延伸方向に直交する方向に移動させ、ペーストの塗布高さを測定することが可能である。これにより、レーザ変位計3cの光路面と直線状のペーストの延伸方向との平行が維持されつつ、ペーストの塗布高さが測定される。したがって、図5に示したように、レーザ変位計3cの配置方向がペーストの延伸方向に直交する状態で測定したときのような、レーザ光がペーストの湾曲面により乱反射されることなどに起因し、得られるべき測定値よりも極端に大きな測定値が出力される測定異常が抑止され、ペーストの塗布高さの測定精度が上がり、正確な塗布高さを得ることが可能となる。このため、ペーストの断面積が許容範囲内であるか否かの良否判定を正確に行うことができる。
【0052】
なお、塗布パターンが矩形枠状の塗布パターンのように、直交する位置関係の二直線を有する塗布パターンである場合には、塗布ユニット3A〜3Dの少なくとも二つのレーザ変位計3cを、投光部3c1と受光部3c2の配置方向、すなわち光路面が前述の二直線の一方の直線に平行な状態と他方の直線に平行な状態となるように配置する。この配置により、前述の測定方法を行うことが可能となる。
【0053】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、塗布ユニット3A〜3Dの少なくとも二つのレーザ変位計3cが、投光部3c1と受光部3c2の配置方向、すなわちレーザ光の投受光の光路を含む光路面が互いに交差するように配置される。より具体的には、二つのうち一方のレーザ変位計3cが矩形状の塗布パターンにおける直交する二直線のうち一方の直線に光路面が平行となるように配置されており、他方のレーザ変位計3cが他方の直線に光路面が平行となるように配置されている。これにより、塗布対象物Wの被塗布面に、交差(直交)する位置関係の二直線を有する形状(矩形状)の塗布パターンにペーストを塗布した場合でも、その塗布パターンの二直線のどちらに対しても、光路面をペーストの延伸方向に沿わした状態(例えば、平行に沿わした状態)で、レーザ変位計3cをペーストの延伸方向に交差する方向(例えば、直交する方向)に移動させ、ペーストの塗布高さを測定することが可能となる。
【0054】
このことから、図5及び図6を用いて説明したような、レーザ変位計3cの光路面の配置方向がペーストの延伸方向に直交する状態であるがために生じる測定異常を防ぐことができる。これにより、矩形状の塗布パターンにおける直交する位置関係のいずれの方向に沿って塗布されたペーストであっても、ペーストの塗布高さを精度良く測定することができ、正確な塗布高さを得ることが可能となる。その結果、測定した塗布高さを用いて算出されるペーストの断面積を正確に得ることが可能となるため、ペーストの断面積が許容範囲内であるか否かの良否判定が正確になる。したがって、ペーストの断面積が許容範囲外となった不良品が次の工程の製造に用いられることが無くなり、結果として、塗布製品の品質を向上させることができる。
【0055】
また、ギャップ制御用のレーザ変位計3cがペーストの塗布高さを測定するために流用されている。これにより、ペーストの塗布高さを測定するために新たなレーザ変位計3cを設ける必要は無く、装置の複雑化や高価格化などを抑えることができる。同様に、位置決め用の撮像部3dがペーストの幅を検出するために流用されている。これにより、ペーストの幅を検出するために新たな撮像部3dを設ける必要は無く、装置の複雑化や高価格化などを抑えることができる。
【0056】
上述した理由から、ギャップ制御用のレーザ変位計3を用いながら、交差(直交)する位置関係の二直線を有する形状の塗布パターンにおけるいずれの方向に沿って塗布されたペーストについても、ペーストの塗布高さを精度良く測定することが可能となるので、ペーストによって形成された塗布パターンの良否判定を正確に行うことができる。
【0057】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について図9を参照して説明する。
【0058】
第2の実施形態は基本的に第1の実施形態と同様である。第2の実施形態では、第1の実施形態との相違点について説明し、第1の実施形態で説明した部分と同一部分は同一符号で示し、その説明も省略する。
【0059】
第2の実施形態に係るペースト塗布装置1では、各塗布ユニット3A〜3Dが、図9に示すように、レーザ変位計3cを塗布対象物Wの被塗布面に沿う方向、言い換えれば、被塗布面に直交する軸を中心に回転させる回転駆動部3eを個別に備えている。この回転駆動部3eは制御部8に電気的に接続されており、その駆動が制御部8により制御される。レーザ変位計3cは回転駆動部3eにより塗布対象物Wの被塗布面に沿う方向に回転可能に構成されている。
【0060】
第1の実施形態に係るステップS2において(図7参照)、制御部8は、一つの塗布パターンに対し、予め設定された測定位置で塗布ユニット3Aのレーザ変位計3cを用いて、塗布対象物Wの被塗布面に塗布されたペーストの塗布高さを測定する。またさらに、塗布ユニット3Aの撮像部3dを用いて、同じ測定位置において塗布対象物Wの被塗布面に塗布されたペーストを撮像し、その塗布幅を検出して求める。
【0061】
このとき、他の塗布パターンに対しても、他の塗布ユニット3B〜3Dを用いて、前述と同様に、ペーストの塗布高さ及びペーストの塗布幅を求めることが可能である。塗布ユニット3A及び塗布ユニット3Bもレーザ変位計3cを移動させる方向が同じであれば、同時に測定を行うことが可能であり、同様に、塗布ヘッド3C及び塗布ユニット3Dもレーザ変位計3cを移動させる方向が同じであれば、同時に測定を行うことが可能である。なお、各塗布ユニット3A〜3Dは互いの動作を妨げることがなく動作するように制御部8により制御される。
【0062】
ここで、前述の測定位置は、例えば、第1の実施形態と同様に、塗布パターンが矩形枠状である場合、一ラインに対して三箇所、四ラインで合計十二箇所(図8中の太線参照)に設定されている(図8参照)。なお、図8はあくまでも例示であり、測定位置及び測定数は図8に限られるものではない。また、矩形枠状の塗布パターンは、交差する位置関係の二直線を有する形状の塗布パターンの一種である。
【0063】
前述の矩形枠状の塗布パターンを測定する場合には、塗布ユニット3Aのレーザ変位計3cにより塗布パターンの第1ラインB1を三箇所の測定位置において測定する。このとき、制御部8は、回転駆動部3eによりレーザ変位計3cを投光部3c1と受光部3c2の配置方向、すなわちレーザ光の投受光の光路を含む光路面が第1ラインB1(線状のペーストP)の延伸方向と平行になるまで回転させる。より具体的には、制御部8は、記憶部に記憶された塗布パターンの情報と測定位置の情報とから今回の測定位置におけるペーストの延設方向(X軸方向かY軸方向か)を判別し、レーザ変位計3cの光路面が判別した方向(この場合は、Y軸方向)と平行になるように回転駆動部3eを制御する。そして、制御部8は、その平行状態のレーザ変位計3cをX軸移動装置4AによりX軸方向に移動させ、第1ラインB1を横切るように走査させる。この走査を三箇所の測定位置毎に行い、この三回の走査により得た三つの測定値から各々の最大値をそれぞれの塗布高さHとして求める。
【0064】
次に、制御部8は、第1ラインB1に対向する第2ラインB2を塗布ユニット3Aのレーザ変位計3cにより三箇所の測定位置において測定する。このとき、制御部8は、前述と同様、回転駆動部3eによりレーザ変位計3cを投光部3c1と受光部3c2の配置方向、すなわち光路面が第2ラインB2(線状のペーストP)の延伸方向と平行になるまで回転させる。ただし、この場合、第1ラインB1と第2ラインB2とは平行であるから、レーザ変位計3cの光路面の向きを変える必要はない。そして、制御部8は、その平行状態のレーザ変位計3cをX軸移動装置4AによりX軸方向に移動させ、第2ラインB2を横切るように走査させる。この走査を三箇所の測定位置毎に行い、この三回の走査により得た三つの測定値から各々の最大値をそれぞれの塗布高さHとして求める。
【0065】
その後、制御部8は、第2ラインB2に直交する第3ラインB3を塗布ユニット3Aのレーザ変位計3cにより三箇所の測定位置において測定する。このとき、制御部8は、回転駆動部3eによりレーザ変位計3cをその配置方向、すなわち光路面が第3ラインB3(線状のペーストP)の延伸方向と平行になるまで回転させる。この場合、第2ラインB2と第3ラインB3の延設方向は90°回転した位置関係にあるので、制御部8はレーザ変位計3cを右回り、あるいは左回りに90°回転させるように回転駆動部3eを制御する。そして、制御部8は、その平行状態のレーザ変位計3cをY軸移動装置6A及び6BによりY軸方向に移動させ、第3ラインB3を横切るように走査させる。この走査を三箇所の測定位置毎に行い、この三回の走査により得た三つの測定値から各々の最大値をそれぞれの塗布高さHとして求める。
【0066】
最後に、制御部8は、第3ラインB3に対向する第4ラインB4を塗布ユニット3Aのレーザ変位計3cにより三箇所の測定位置において測定する。このとき、制御部8は、回転駆動部3eによりレーザ変位計3cをその配置方向、すなわち光路面が第4ラインB4(線状のペーストP)の延伸方向と平行になるまで回転させる。ただし、この場合、第3ラインB3と第4ラインB4とは平行であるから、レーザ変位計3cの光路面の向きを変える必要はない。そして、制御部8は、その平行状態のレーザ変位計3cをY軸移動装置6A及び6BによりY軸方向に移動させ、第4ラインB4を横切るように走査させる。この走査を三箇所の測定位置毎に行い、この三回の走査により得た三つの測定値から各々の最大値をそれぞれの塗布高さHとして求める。
【0067】
このようにして、制御部8は、ライン毎に三つの塗布高さH、合計十二個の塗布高さHを求める。さらに、制御部8は、そのペースト塗布高さHと撮像画像から求めたペーストの塗布幅Lを乗算し、その値に所定の定数Kを乗算し、ペーストの断面積S(S=H×L×K)を算出する。なお、定数Kは、第1の実施形態と同様、塗布後のペーストの予測断面形状(例えば、半楕円形状)に基づいて実験的にあるいは理論的に設定されている。
【0068】
このような測定工程では、矩形枠状の塗布パターンの四つのラインB1〜B4のどれに対しても、レーザ変位計3cの配置方向、すなわち光路面を塗布対象物Wの被塗布面上の直線状のペーストPの延伸方向に平行にする。そして、その光路面が平行状態であるレーザ変位計3cをペーストPの延伸方向に直交する方向に移動させ、そのペーストPの塗布高さを測定することが可能である。これにより、レーザ変位計3cの光路面と直線状のペーストPの延伸方向との平行が維持されつつ、ペーストPの塗布高さが測定される。したがって、第1の実施形態と同様に、レーザ光がペーストの湾曲面により乱反射されることが抑止され、ペーストの塗布高さの測定精度が上がり、正確な塗布高さを得ることが可能となる。このため、ペーストの断面積が許容範囲内であるか否かの良否判定を正確に行うことができる。
【0069】
なお、塗布パターンが矩形枠状の塗布パターンのように、直交する位置関係の二直線を有する塗布パターンである場合には、塗布ユニット3A〜3Dの少なくとも一つのレーザ変位計3cを塗布対象物Wの被塗布面に沿う方向に回転可能に構成すれば良い。これにより、4つの塗布ユニット3A〜3Dのうちレーザ変位計3cを回転可能に設けられた塗布ユニットを用いて、4つの塗布ユニット3A〜3Dのそれぞれが塗布した塗布パターンについて、前述の測定方法を行うことが可能となる。
【0070】
以上説明したように、第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。詳しくは、塗布対象物Wの被塗布面に、交差する位置関係の二直線を有する形状の塗布パターンにペーストを塗布した場合でも、その塗布パターンの二直線のどちらに対しても、光路面をペーストの延伸方向に沿わし(例えば、平行に沿わし)、レーザ変位計3cをペーストの延伸方向に交差する方向(例えば、直交する方向)に移動させ、ペーストの塗布高さを測定する。これにより、ペーストの塗布高さの測定精度が上がり、正確な塗布高さを得ることが可能となるため、ペーストの断面積が許容範囲内であるか否かの良否判定が正確になる。したがって、ペーストの断面積が許容範囲外となった不良品が次の工程の製造に用いられることが無くなり、結果として、塗布製品の品質を向上させることができる。
【0071】
(他の実施形態)
本発明に係る前述の実施形態は例示であり、発明の範囲はそれらに限定されない。前述の実施形態は種々変更可能であり、例えば、前述の実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素が削除されても良く、さらに、異なる実施形態に係る構成要素が適宜組み合わされても良い。
【0072】
前述の実施形態においては、矩形枠状の塗布パターンのライン毎に、三箇所の測定位置での測定を行っているが、これに限るものではない。例えば、図8において、まず、第1ラインB1側から第2ラインB2側に向けてレーザ変位計3cを走査させる。この走査中、第1ラインB1の第1測定位置(第1ラインB1における最左部の太線)で測定を行い、次に、第2ラインB2の第1測定位置(第2ラインB2における最左部の太線)で測定を行う。次いで、走査方向を折り返し、第2ラインB2の第2測定位置(第2ラインB2における中央の太線)で測定を行い、その走査のまま第1ラインB1の第2測定位置(第1ラインB1における中央の太線)で測定を行う。その後、再び走査方向を折り返し、第1ラインB1の第3測定位置(第1ラインB1における最右部の太線)で測定を行い、その走査のまま第2ラインB2の第3測定位置(第2ラインB2における最右部の太線)で測定を行うようにしても良い。この場合には、塗布ユニット3Aのレーザ変位計3cは第1ラインB1及び第2ラインB2を連続して横切って往復することになる。この測定方法は塗布パターンのサイズが比較的小さい場合に有効である。なお、第3ラインB3及び第4ラインB4においても、塗布ユニット3Bのレーザ変位計3cが第3ラインB3及び第4ラインB4を連続して横切って往復する前述と同様な測定方法を用いることが可能である。
【0073】
また、前述の実施形態においては、第1ラインB1の測定完了後に第2ラインB2の測定を行っているが、これに限るものではなく、例えば、第1ラインB1の測定完了後に第3ラインB3の測定を行っても良く、あるいは、第4ラインB4の測定を行っても良い。また、測定開始ラインを第1ラインB1に限るものではなく、他のラインにしても良い。
【0074】
また、前述の実施形態においては、ペースト塗布又はペーストの塗布高さ測定を行う際、塗布ヘッド3aあるいはレーザ変位計3cをX軸方向又はY軸方向に移動させて、塗布ヘッド3aあるいはレーザ変位計3cと塗布対象物Wとを相対移動させているが、これに限るものではない。例えば、塗布対象物Wを搭載したステージ2をX軸方向又はY軸方向に移動させて、塗布ヘッド3aあるいはレーザ変位計3cと塗布対象物Wとを相対移動させるようにしても良く、あるいは、それらを組み合わせて塗布ヘッド3aあるいはレーザ変位計3cと塗布対象物Wとを相対移動させるようにしても良い。つまり、塗布ヘッド3aあるいはレーザ変位計3cと塗布対象物Wとを相対移動させるようにすれば良く、相対動作に関する駆動方法は限定されるものではない。
【0075】
また、前述の実施形態においては、交差する二直線を有する塗布パターンが矩形状の塗布パターンである例で説明を行ったが、これに限るものではなく、例えば、矩形状以外の四角形(ひし形や台形など)の塗布パターンや、三角形や五角形などの四角形以外の多角形の塗布パターンであっても良い。このような塗布パターンにおいて、三角形などのように、延伸方向(延設方向)の異なる三つ以上の直線部分がある場合には、それぞれの直線部分に対して光路面が平行となるレーザ変位計3cを少なくとも一つ存在させるように複数の塗布ヘッド3aに対してレーザ変位計3cを配置すると良い。
【0076】
また、前述の実施形態においては、一つの支持部に対して2つの塗布ユニットを設けているが、これに限るものではなく、1つまたは3つ以上の塗布ユニットを設けるようにしても良い。例えば、塗布対象物Wの被塗布面に交差する二直線を有する塗布パターンを描画する場合であって、一つの支持部に対して塗布ユニットを6つ設ける場合には、二直線のうち一方の直線に対して光路面が平行となるレーザ変位計3cと他の直線に対して光路面が平行となるレーザ変位計3cとを、6つの塗布ユニットに対して交互に配置するようにしても良い。または、6つの塗布ユニットに対して片側半分の3つと反対側半分の3つに分けて配置するようにしても良い。
【0077】
また、前述の実施形態においては、一つの支持部上の二つの塗布ユニット間でレーザ変位計3cの光路面の向きを90°異ならせて配置しているが、これに限るものではなく、二つの支持部間で塗布ユニットのレーザ変位計3cの光路面の向きを異ならせるようにしても良い。つまり、ペースト塗布装置1が備える複数の塗布ユニットの中に、塗布対象物Wの被塗布面に描画する塗布パターンが備える延設方向が異なる直線部のそれぞれに対して、光路面が平行となるレーザ変位計3cが、少なくとも1つずつ存在しさえすれば良い。
【0078】
また、前述の第2の実施形態において、レーザ変位計3cの光路面がペーストの延伸方向(延設方向)と平行になるようにレーザ変位計3cを回転させる制御を、測定箇所毎にレーザ変位計3cの回転角度を設定しておき、設定された回転角度に基づいて回転駆動部3eを制御することで行っても良い。
【符号の説明】
【0079】
1 ペースト塗布装置
3a 塗布ヘッド
3c レーザ変位計
3d 撮像部
3e 回転駆動部
4A X軸移動装置(移動駆動部)
4B X軸移動装置(移動駆動部)
5A 支持部
5B 支持部
6A Y軸移動装置(移動駆動部)
6B Y軸移動装置(移動駆動部)
8 制御部
W 塗布対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布対象物の被塗布面に向けてペーストを吐出するノズルをそれぞれ有する複数の塗布ヘッドと、
前記複数の塗布ヘッドにそれぞれ一体的に設けられ、前記被塗布面の変位をレーザ光の投受光によって測定可能で、かつ、前記レーザ光の投光路と受光路とが異なる複数のレーザ変位計と、
前記塗布対象物と前記複数の塗布ヘッドとを前記被塗布面に沿う方向及び前記被塗布面に交差する方向に相対移動させる移動駆動部と、
前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとを前記被塗布面に沿う方向に相対移動させ、前記ノズルから吐出される前記ペーストにより前記被塗布面に、交差する位置関係の二直線を有する形状の塗布パターンを描画するように前記塗布ヘッド及び前記移動駆動部を制御するとともに、前記塗布ヘッドに対応する前記レーザ変位計の測定値に基づいて当該塗布ヘッドの前記ノズルの先端と前記被塗布面との離間距離を設定値に保つように前記移動駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記複数のレーザ変位計のうち少なくとも一つは、前記投光路及び受光路を含む光路面が前記塗布パターンにおける前記二直線のうち一方の直線に沿うように配置されており、
前記複数のレーザ変位計のうち少なくとも他の一つは、前記光路面が前記二直線のうち他方の直線に沿うように配置されており、
前記制御部は、前記被塗布面に描画された前記ペーストの塗布高さを測定するとき、前記塗布パターンにおける直線状に塗布されたペーストの延伸方向に前記光路面が沿った状態の前記レーザ変位計を、前記直線状に塗布されたペーストの延伸方向と交差する方向に移動させるように前記移動駆動部を制御することを特徴とするペースト塗布装置。
【請求項2】
前記被塗布面に沿う第一の方向に延伸して設けられ、前記被塗布面に沿って前記第一の方向に直交する第2の方向に移動可能な複数の支持部を備え、
前記複数の塗布ヘッドは、前記支持部毎にそれぞれ複数個ずつ、前記第一の方向に沿って移動可能に設けられており、
前記複数のレーザ変位計は、一つの前記支持部上において、少なくとも一つが前記二直線のうち一方の直線に対して前記光路面が沿うように設けられ、少なくとも他の一つが前記二直線のうち他方の直線に対して前記光路面が沿うように設けられ、配置されていることを特徴とする請求項1記載のペースト塗布装置。
【請求項3】
前記複数のレーザ変位計は、一つの前記支持部上において、前記光路面の向きが、隣り合う前記塗布ヘッド間で異なるように配置されていることを特徴とする請求項2記載のペースト塗布装置。
【請求項4】
塗布対象物の被塗布面に向けてペーストを吐出するノズルを有する塗布ヘッドと、
前記塗布ヘッドに一体的に設けられ、前記被塗布面の変位をレーザ光の投受光によって測定可能で、かつ、前記レーザ光の投光路と受光路とが異なるレーザ変位計と、
前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとを前記被塗布面に沿う方向及び前記被塗布面に交差する方向に相対移動させる移動駆動部と、
前記レーザ変位計を前記被塗布面に沿う方向に回転させる回転駆動部と、
前記塗布対象物と前記塗布ヘッドとを前記被塗布面に沿う方向に相対移動させ、前記ノズルから吐出される前記ペーストにより前記被塗布面に、交差する位置関係の二直線を有する形状の塗布パターンを描画するように前記塗布ヘッド及び前記移動駆動部を制御するとともに、前記レーザ変位計の測定値に基づいて前記ノズルの先端と前記被塗布面との離間距離を設定値に保つように前記移動駆動部を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記被塗布面に描画された前記ペーストの塗布高さを測定するとき、前記塗布パターンの二直線のどちらに対しても、前記レーザ変位計の前記投光路及び受光路を含む光路面を当該塗布パターンにおける直線状に塗布されたペーストの延伸方向に沿わし、その状態の前記レーザ変位計を前記直線状に塗布されたペーストの延伸方向と交差する方向に移動させるように前記回転駆動部及び前記移動駆動部を制御することを特徴とするペースト塗布装置。
【請求項5】
前記被塗布面に沿う第一の方向に延伸して設けられ、前記被塗布面に沿って前記第一の方向に直交する第2の方向に移動可能な支持部を備え、
前記塗布ヘッドは、前記支持部に複数個、前記第一の方向に沿って移動可能に設けられており、
前記レーザ変位計は、前記複数の塗布ヘッドのうち少なくとも一つに前記回転駆動部によって回転可能に設けられていることを特徴とする請求項4記載のペースト塗布装置。
【請求項6】
前記被塗布面に描画されたペーストの幅を測定するための撮像部を備えることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一に記載のペースト塗布装置。
【請求項7】
前記撮像部は、前記塗布対象物の位置決め用のカメラであることを特徴とする請求項6記載のペースト塗布装置。
【請求項8】
塗布対象物と塗布ヘッドとを前記塗布対象物の被塗布面に沿う方向に相対移動させ、前記塗布ヘッドのノズルから吐出されるペーストにより前記被塗布面に、交差する位置関係の二直線を有する形状の塗布パターンを描画するとともに、前記描画の際、前記塗布ヘッドと一体的に設けられたレーザ変位計であり、前記被塗布面の変位をレーザ光の投受光によって測定可能で、かつ、前記レーザ光の投光路と受光路とが異なるレーザ変位計の測定値に基づいて、前記ノズルの先端と前記被塗布面との離間距離を設定値に保つペースト塗布方法であって、
前記被塗布面に描画された前記ペーストの塗布高さを測定するとき、前記塗布パターンの二直線のどちらに対しても、前記レーザ変位計の前記投光路及び受光路を含む光路面を当該塗布パターンにおける直線状に塗布されたペーストの延伸方向に沿わし、その状態の前記レーザ変位計を前記直線状に塗布されたペーストの延伸方向と交差する方向に移動させ、前記ペーストの塗布高さを測定することを特徴とするペースト塗布方法。
【請求項9】
測定した前記塗布高さに基づいて、前記被塗布面に描画された前記塗布パターンの良否を判定することを特徴とする請求項8記載のペースト塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−196665(P2012−196665A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−27471(P2012−27471)
【出願日】平成24年2月10日(2012.2.10)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】