説明

ペースト組成物、セラミック成形体およびセラミック構造体の製造方法

【課題】熱分解性に優れたバインダーを有するとともに、所望の微細形状を形成することが可能で、かつ粘度経時安定性に優れたペースト組成物を提供すること。
【解決手段】本発明のペースト組成物は、無機粒子と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度Tg[h]がTg[h]≧100℃であるH成分と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度がTg[l]であるL成分とを、H成分およびL成分の合計モル分率が80mol%以上となるように共重合させた共重合体から成り、(Tg[h]−Tg[l])≧50を満たすバインダーとを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成により無機粒子を焼結させるために用いるペースト組成物およびそれを用いたセラミック成形体、ならびにセラミック構造体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、電子部品用のセラミック構造体として、LSI等の半導体素子、回路部品または圧電素子等の各種電子部品を搭載するためにセラミック配線基板が用いられている。このようなセラミック配線基板において、絶縁層を形成するために、絶縁性の無機粒子を含むペーストをシート状等の所望の形状にして焼成するか、あるいは導体層を形成するために、金属の無機粒子を含むペーストを所望の形状にして焼成していた。
【0003】
これらのペーストは、例えば無機粒子が導電性の材料からなる場合、スクリーン印刷法などの手法を用いることにより設計値に近い微細配線を形成することが可能である。よって、セラミック多層配線基板などの電子部品に対して、多機能化,高機能化,小型化,および低背化を行なうことができる。また、このようなペーストを用いることにより、表層および内部に凹凸形状等を形成した複雑な形状のセラミック構造体を製造することも可能である。例えば、各種流路を有するセラミック構造体の形成、多数の凹凸部が形成された各種ディスプレイ部品、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems;微小電子機械システム)等の分野に応用されつつある。
【0004】
セラミック構造体の製造方法としては、例えば、絶縁層が複数積層された絶縁体の表面または内部にメタライズ配線層が配設されたセラミック多層配線基板の場合、以下のような工程を行なう。まず、適当な金属粒子にバインダー、溶剤、および可塑剤を添加し、混合して金属ペーストを得る。次に、金属ペーストを、セラミックグリーンシート上に、周知のスクリーン印刷法により、所定形状のパターンに印刷し、塗布する。そして、セラミックグリーンシートにマイクロドリルやレーザで貫通孔(スルーホールともいう)を形成する。次に、この貫通孔内に金属ペーストを充填して貫通導体(ビア導体またはビアホールともいう)を形成し、未焼成シートを作製する。
【0005】
さらに、複数枚の未焼成シートを複数積層し、得られた未焼成シート積層体を所定条件で焼成することによって、表面または内部にメタライズ配線層が配設されたセラミック多層配線基板が得られる。
【0006】
このようなセラミック構造体に用いるペーストとしては、アクリル樹脂をバインダーとして用いることが提案されている。これは、アクリル樹脂は、焼成不良による炭素等の残渣物が発生し難く、熱分解性に優れるからである。しかしながら、アクリル樹脂をスクリーン印刷用のペースト組成物として用いた場合、少量のバインダー添加量では、スクリーン印刷に適した高粘度および高チキソ性を実現することが困難である。従って、アクリル樹脂の添加量を増やす必要があるが、セラミック充填密度の低下につながるため適切ではない。
【0007】
そこで、これらの課題を解決するため、特開2006−52368号公報では、アクリル樹脂の高分子量化を図る試みがなされている。しかし、高分子量化するとスクリーン印刷時の版離れ性(曳糸性)が悪化する傾向にあり、微細構造の形成には適していない。
【0008】
このため、特開2002−20570号公報では、低分子量タイプのアクリル樹脂にチキソ剤を添加する試みがなされている。また、特開2005−120196号公報では、アクリル酸等の極性官能基を導入する試みがなされている。また、特開2005−15273号公報では、アクリル樹脂に異種の樹脂を導入して相溶性をコントロールする試みがなされている。
【特許文献1】特開2006−52368号公報
【特許文献2】特開2002−20570号公報
【特許文献3】特開2005−120196号公報
【特許文献4】特開2005−15273号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、アクリル樹脂にチキソ剤をブレンドしたり、相溶性の低い異種樹脂をブレンドした場合、熱分解性の低下を招く恐れがある。また、ペーストを経時保管した場合、徐々に異種材料同士の層分離が進み、粘度経時安定性が低下する恐れがある。一方、アクリル酸等の強力な極性官能基を共重合した場合、少量の導入量でペーストの高粘度および高チキソ性を実現することが可能であるが、熱分解性が低下したり、カルボキシル基を有する高分子鎖同士の相互作用(絡み合い)が時間と共に増加して粘度経時安定性が低下したりする恐れがある。
【0010】
従って、本発明は上記問題点に鑑みて完成されたものであり、その目的は、熱分解性に優れたバインダーを有するとともに、所望の微細形状を形成することが可能で、かつ粘度経時安定性に優れたペースト組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のペースト組成物は、無機粒子と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度Tg[h]がTg[h]≧100℃であるH成分と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度がTg[l]であるL成分とを、H成分およびL成分の合計モル分率が80mol%以上となるように共重合させた共重合体から成り、(Tg[h]−Tg[l])≧50を満たすバインダーと、を具備することを特徴とする。
【0012】
本発明のペースト組成物において好ましくは、前記バインダーは、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルおよびポリアルキレンオキサイド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種以上の極性官能基含有(メタ)アクリル酸エステルが共重合されていることを特徴とする。
【0013】
本発明のペースト組成物において好ましくは、前記バインダーの重量平均分子量は、2万〜10万であることを特徴とする。
【0014】
本発明のペースト組成物において好ましくは、前記バインダー100重量部に対して、更に、ニトロセルロースを0.1〜10重量部添加したことを特徴とする。
【0015】
本発明のペースト組成物において好ましくは、前記バインダーは、窒素雰囲気中、500℃において99重量%以上が熱分解することを特徴とする。
【0016】
本発明のペースト組成物において好ましくは、前記無機粒子は、シリカを含むガラス粒子を含有することを特徴とする。
【0017】
本発明のペースト組成物において好ましくは、前記無機粒子が導電性粒子であることを特徴とする。
【0018】
本発明のペースト組成物において好ましくは、前記無機粒子が誘電体粒子であることを特徴とする。
【0019】
本発明のセラミック成形体は、焼成によりセラミック焼結体となる未焼成セラミック体と、該未焼成セラミック体に被着されたペースト組成物とを備えたセラミック成形体であって、前記ペースト組成物は、無機粒子と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度Tg[h]がTg[h]≧100℃であるH成分と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度がTg[l]であるL成分とを、H成分およびL成分の合計モル分率が80mol%以上となるように共重合させた共重合体から成り、(Tg[h]−Tg[l])≧50を満たすバインダーと、を具備することを特徴とする。
【0020】
本発明のセラミック成形体において好ましくは、前記未焼成セラミック体は、少なくとも前記ペースト組成物が被着された部位に、前記ガラス粒子と同じ組成のガラス粒子を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明のセラミック構造体の製造方法は、無機粒子と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度Tg[h]がTg[h]≧100℃であるH成分と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度がTg[l]であるL成分とを、H成分およびL成分の合計モル分率が80mol%以上となるように共重合させた共重合体から成り、(Tg[h]−Tg[l])≧50を満たすバインダーと、を具備するペースト組成物を準備する工程と、焼成によりセラミック焼結体となる未焼成セラミック体に、前記ペースト組成物を印刷してセラミック成形体を形成する工程と、該セラミック成形体を焼成する工程と、を具備することを特徴とする。
【0022】
本発明のセラミック構造体の製造方法は、無機粒子と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度Tg[h]がTg[h]≧100℃であるH成分と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度がTg[l]であるL成分とを、H成分およびL成分の合計モル分率が80mol%以上となるように共重合させた共重合体から成り、(Tg[h]−Tg[l])≧50を満たすバインダーと、を具備するペースト組成物を準備する工程と、第1のセラミックグリーンシートに、前記ペースト組成物を印刷してペースト層を形成する工程と、該ペースト層を前記共重合体のガラス転移温度Tgに対して(Tg+30±5)℃の温度範囲内で加圧して塑性変形させて表面を平坦化する工程と、前記第1のセラミックグリーンシートに第2のセラミックグリーンシートを前記ペースト層が前記第1および第2のセラミックグリーンシート間に挟まれるように積層する工程と、を具備することを特徴とする。
【0023】
本発明のセラミック構造体の製造方法において好ましくは、前記ペースト層は、塑性変形させて表面を平坦化した後の膜厚tが、それに接する前記第1のセラミックグリーンシートの厚みTに対して、t≦0.7Tを満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明のペースト組成物は、熱分解性に優れたバインダーを有するとともに、高粘度、高チキソ性を発現させるレオロジー特性を長期にわたり維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の一実施形態にかかるペースト組成物について、以下に詳細に説明する。
【0026】
本実施形態にかかるペースト組成物は、無機粒子と、バインダーとを備えたペースト組成物であって、焼成によりバインダーを除去して無機粒子を焼結させるためのものである。具体例としては、電子部品に用いられる誘電体としてのセラミック体の作製、例えば、配線基板の絶縁体や、コンデンサの高誘電体等の作製等に適用できる。また、電子部品に用いられるメタライズ被膜などの金属体の作製、例えば、配線基板の配線導体層やビア導体、金属部材をろう付けするための金属層の作製等に適用できる。また、本実施形態のペースト組成物は、電子部品の作製への適用に限らず、種々の構造体において、セラミック体の形成または金属体の形成に適用できる。
【0027】
本実施形態のペースト組成物に用いる無機粒子としては、例えば、金属、金属酸化物、セラミックまたはガラスを用いることができる。また、無機粒子は2種類以上の材料のものが用いられてもよい。例えば、無機粒子としては、異なる無機粒子の混合物、一方の無機粒子に別の無機材料をコーティングしたもの、または異なる金属の合金を用いることができる。
【0028】
本実施形態のペースト組成物に用いる無機粒子が金属粒子の場合、金属粒子としては、例えばAu,Cu,Ag,Pd,W,Mo,Ni,AlまたはPt等を用いることができる。また、これらの金属の合金を用いることもできる。
【0029】
本実施形態のペースト組成物に用いる無機粒子がセラミック粒子の場合、セラミック粒子としては、例えば、金属酸化物粒子、非金属酸化物粒子または非酸化物粒子を用いることができる。例えば、ペースト組成物が、配線基板等の電子部品における誘電体用として用いられる場合であれば、セラミック粒子としては、例えば、Li,K,Mg,B,Al,Si,Cu,Ca,Br,Ba,Zn,Cd,Ga,In,ランタノイド,アクチノイド,Ti,Zr,Hf,Bi,V,Nb,Ta,W,Mn,Fe,CoまたはNi等の元素の炭化物、上記元素の窒化物、上記元素のホウ化物、または上記元素の硫化物等を好適に用いることができる。
【0030】
さらにセラミック粒子としては、例えば、SiO2,Al23,ZrO2およびTiO2の中から選ばれる少なくとも一種とアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物を用いることができる。また、セラミック粒子の他の具体例としては、ZnO,MgO,MgAl24,ZnAl24,MgSiO3,Mg2SiO4,Zn2SiO4,Zn2TiO4,SrTiO3,CaTiO3,MgTiO3,BaTiO3,CaMgSi26,SrAl2Si28,BaAl2Si28,CaAl2Si28,Mg2Al4Si518,Zn2Al4Si518,AlN,Si34,SiC,Al23およびSiO2から選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライトまたはコージェライト)等を用途に合わせて選択することができる。
【0031】
本実施形態のペースト組成物に用いる無機粒子がガラス粒子の場合、ガラス粒子としては、SiO−B系ガラス,SiO−B−Al系ガラス,SiO−B−Al−MO系ガラス(但し、MはCa、Sr、Mg、BaまたはZnである),SiO−Al−MO−MO系ガラス(但し、MとMは同じかまたは異なるものであり、Ca、Sr、Mg、BaまたはZnである),SiO−B−Al−MO−MO系ガラス(但し、MとMは上記と同じ),SiO−B−MO系ガラス(但し、MはLi、NaまたはKである),SiO−B−Al−MO系ガラス(但し、Mは上記と同じ),Pb系ガラスまたはBi系ガラスを用いることができる。また、アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物および希土類酸化物の群から選ばれる少なくとも1種を含有するガラスを用いることもできる。これらのガラスは焼成処理することによって非晶質ガラスとなるものを含む。また、これらのガラスは焼成処理することによって、リチウムシリケート,クォーツ,クリストバライト,コージェライト,ムライト,アノーサイト,セルジアン,スピネル,ガーナイト,ウイレマイト,ドロマイト,またはペタライトの結晶を析出する結晶化ガラスを含んでもよく、これらの置換誘導体の結晶を析出する結晶化ガラスを含んでもよい。
【0032】
本実施形態のペースト組成物に用いる無機粒子がセラミック粒子とガラス粒子の混合物である場合、セラミック粒子とガラス粒子の割合は、用途に応じて適宜調整すればよい。例えば、ペースト組成物が電子部品等の誘電体として用いられる場合であれば、重量比でセラミック粒子:ガラス粒子が、60:40〜1:99であるのが好ましい。
【0033】
また、無機粒子は焼結助剤を含んでもよく、例えば、B23,ZnO,MnO2,アルカリ金属酸化物,アルカリ土類金属酸化物または希土類金属酸化物等を、用途に合わせて選択することができる。
【0034】
なお、無機粒子はペースト組成物の焼結体の用途に応じて選択すればよく、例えば、圧電素子等の電子部品に用いる圧電体用に用いる場合であれば、無機粒子として、チタン酸バリウムまたはジルコン酸鉛−チタン酸鉛系固溶体などの灰チタン石型構造の結晶などを用いることができる。この灰チタン石型構造の具体例としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)およびチタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)などを含むチタン酸ジルコン酸塩、またはチタン酸鉛などを用いることができる。
【0035】
本実施形態のペースト組成物に用いる無機粒子は、好ましくは、シリカを含むガラス粒子を含有するのがよい。これにより、本実施形態に用いる(メタ)アクリル酸エステルから成るバインダーの極性官能基とガラス粒子とが水素結合等で吸着することにより、ペースト組成物の増粘性を高めることが可能となる。
【0036】
シリカを含むガラス粒子は、ペースト組成物の増粘性またはチキソ性を高めるという観点からは、バインダーの固形分に対し5〜150重量%の範囲とするのがよい。更に好ましくは、ペースト組成物の増粘性およびチキソ性を安定して高めるという観点からは、バインダーの固形分に対し50〜120重量%の範囲とするのがよい。
【0037】
本実施形態のペースト組成物に用いるシリカ粒子としては、結晶シリカ、溶融シリカ、球状シリカまたはヒュームドシリカ等のシリカ粒子を用いることができる。これらのシリカ粒子は、増粘性またはチキソ性を高めるという観点からは、公知の乾式法によって製造されたものが望ましい。
【0038】
乾式法によって製造されたシリカ粒子の一例としては、四塩化ケイ素を水素及び酸素存在下、1000℃前後の高熱で熱分解処理して得たものを用いることができる。また、メソポーラスシリカも使用でき、アルミニウム,チタン,バナジウム,ホウ素またはマンガン等を導入したメソポーラスシリカでも良い。通常、乾式法で得られたシリカ粒子の粒子表面にはシラノール基が多数存在しているため、その粒子表面に化学吸着水または物理吸着水と呼ばれる吸着水分子層が形成されている。即ち、シリカ粒子の表面が親水性となっているため、用いるバインダーの親水性または疎水性の性質の組合せを調整することによって、ペースト組成物のチキソ性等のレオロジカルな性質を所望のものとすることができる。
【0039】
また、シリカ粒子の粒子径もペースト組成物のレオロジカルな性質に与える因子である。シリカ粒子の平均一次粒子径は細かいもの程、粒子間凝集力が増大するためペースト組成物の高粘度化および/または高チキソ化に有効である。特に、乾式法で製造された超微粒子シリカ(一次粒子(primary particle)の平均粒子径:5〜100nm程度)は、少量を添加しただけで高い増粘効果とチキソトロピー付与性を発揮するため、通常のガラス原料に使用するミクロンオーダーの粒子シリカと併用することが望ましい。超微粒子シリカの使用量としては、ペースト組成物の増粘性またはチキソ性を高めるという観点からは、バインダーの固形分に対し0.5〜5重量%の範囲とするのがよい。更に好ましくは、ペースト組成物の増粘性およびチキソ性を安定して高めるという観点からは、バインダーの固形分に対し1〜3重量%の範囲とするのがよい。
【0040】
また、シリカ粒子を含むガラス粒子の表面の水酸基を各種カップリング剤等で変性反応させることにより、シリカ粒子を含むガラス粒子の表面の親水性と疎水性のバランスをコントロールしてもよい。反応性官能基をガラス粒子の表面に結合させて、使用するバインダー類と反応性官能基とを化学結合させて使用しても構わない。これにより、シリカ粒子を含むガラス粒子の表面のバインダーに対する濡れ性または化学結合性を変化させることが可能となる。
【0041】
チキソ性を付与するという観点からは、一般的には、非極性バインダーに対しては親水性ガラス粒子を組み合わせ、逆に極性バインダーには疎水性ガラス粒子を組み合わせることが効果的である。よって、シリカを含むガラス粒子を用いることにより、用いるバインダーの極性に応じて、ガラス粒子の表面状態をカップリング剤で適宜変化させることができ、ペースト組成物のチキソ性の微調整が可能となる。
【0042】
また、本実施形態のペースト組成物においては、後述するペースト組成物に使用する溶剤と無機粒子との相性、または各種添加剤と無機粒子との相性を考慮した方が好ましい。シリカを含むガラス粒子の表面に付与するカップリング剤を適宜、選択または組み合わせることによって、得られるペースト組成物のレオロジー挙動を所望のものとすることができる。
【0043】
また、無機粒子として銅などの金属を用いた場合において、カップリング剤をペースト組成物に添加するのが好ましい。これにより、カップリング剤が金属と酸素との接触を低減し、金属の酸化を低減することができる。
【0044】
カップリング剤としては、シランカップリング剤,チタンカップリング剤,ジルコニアカップリング剤,およびアルミニウムカップリング剤から選ばれる、1種もしくは2種以上を使用することが出来る。
【0045】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルメトキシシラン,ビニルエトキシシラン,ビニルトリクロルシラン,クロロプロピルトリメトキシシラン,アミノプロピルトリメトキシシラン,アミノプロピルトリエトキシシラン,N−(アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン,N−(アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン,グリシドキシプロピルトリメトキシシラン,グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン,グリシドキシプロピルトリエトキシシラン,p−スチリルトリメトキシシラン,(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン,メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン,メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン,メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン,メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン,アクリロキシプロピルトリメトキシシラン,メルカプトプロピルトリメトキシシラン,メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン,ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド,イソシアネートプロピルトリエトキシシラン,テトラメトキシシラン,テトラエトキシシラン,メチルトリメトキシシラン,メチルトリエトキシシラン,ジメチルトリエトキシシラン,フェニルトリエトキシシラン,ヘキサメチルジシラザン,ヘキシルトリメトキシシラン,またはデシルトリメトキシシラン等を使用することができる。
【0046】
チタンカップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチタネート,イソプロピルトリイソステアロイルチタネート,イソプロピルトリオクタノイルチタネート,イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート,イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート,イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート,テトラノルマルブチルチタネート,ブチルチタネートダイマー,テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート,テトラメチルチタネート,チタンアセチルアセトネート,チタンテトラアセチルアセトネート,チタンエチルアセトアセテート,チタンオクタンジオレート,テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート,テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート,ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート,チタンラクテート,チタントリエタノールアミネート,またはポリヒドロキシチタンステアレート等を使用することができる。
【0047】
ジルコニウムカップリング剤としては、例えば、ジルコニウムノルマルプロピレート,ジルコニウムノルマルブチレート,ジルコニウムモノアセチルアセトネート,ジルコニウムビスアセチルアセトネート,ジルコニウムテトラアセチルアセトネート,ジルコニウムモノエチルアセトアセテート,ジルコニウムアセテート,ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセテート,またはジルコニウムモノステアレート等を使用することができる。
【0048】
アルミニウムカップリング剤としては、例えば、アルミニウムイソプロピレート,モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート,アルミニウムsec−ブチレート,アルミニウムエチレート,エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート,アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート),アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート,アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート),アルミニウムトリス(アセチルアセトネート),アルミニウムモノイソプロポキシモノオレオキシエチルアセトアセテート,環状アルミニウムオキサイドイソプロピレート,環状アルミニウムオキサイドオクチレート,または環状アルミニウムオキサイドステアレート等を使用することができる。
【0049】
これら各種カップリング剤は、単独で用いられてもよく、または、2種類以上を適宜組み合わせて用いて用いられてもよい。カップリング剤の好ましい添加量は、カップリング剤の種類によって変化する。また、カップリング剤の好ましい添加量は、用いるシリカを含むガラス粒子の平均粒径または形状等によっても変化する。
【0050】
ガラス粒子の表面を十分に保護することにより、ペースト組成物に対するレオロジー制御効果を高めるという観点からは、カップリング剤の添加量はシリカを含むガラス粒子の固形分に対して0.001重量%以上とするのがよい。また、ペースト組成物の粘度経時安定性をより良好にするという観点からは、カップリング剤の添加量は5.0重量%以下とするのがよい。より好ましくは、実用性と経済性の観点から、カップリング剤の添加量を0.01〜3.0重量%とするのがよく、さらに好ましくは0.05〜2.0重量%とするのがよい。
【0051】
シリカを含むガラス粒子の表面処理方法は、上述したカップリング剤等の表面改質剤を用いて公知の条件で処理すればよい。例えば、シリカを含むガラス粒子の表面積に対して十分な量のカップリング剤を、水または有機溶剤に溶解し、カップリング剤の分子を加水分解させる。そして、このカップリング剤の溶液に対してシリカを含むガラス粒子を添加し、撹拌する。さらに、濾過または遠心分離等の方法によりシリカを含むガラス粒子を溶液から分離する。そして、分離したガラス粒子を110℃程度で加熱乾燥する。
【0052】
本実施形態のペースト組成物は、セラミック焼結体となる未焼成セラミック体に被着されることによりセラミック成形体が構成される。そして、このセラミック成形体が焼成されることにより、ペースト組成物に含まれる無機粒子とセラミック焼結体とが一体化したセラミック構造体が作製される。
【0053】
この未焼成セラミック体は、少なくともペースト組成物が被着された部位に、ペースト組成物に含まれるガラス粒子と同じ組成の粒子を含むのがよい。これにより、ペースト組成物に含まれる無機粒子の焼結体とセラミック焼結体とがきわめて高い密着性を有するものとなる。
【0054】
このような未焼成セラミック体としては、例えば、セラミック多層配線基板等に用いるセラミックグリーンシートが挙げられる。ペースト組成物の無機粒子をガラス粒子と金属等の導電性粒子との混合物で構成し、セラミックグリーンシートの表面に、このペースト組成物を被着させて配線基板用のセラミック成形体とすることできる。このセラミックグリーンシートに、ペースト組成物に含まれるガラス粒子と同じ組成の粒子を含ませることにより、このセラミックグリーンシート中のガラス粒子とペースト組成物中のガラス粒子とが、焼成時に良好に一体化し、セラミックグリーンシートとペースト組成物との同時焼成を良好に行なうことができる。よって、密着強度に優れたセラミック多層配線部品を製造することが出来る。
【0055】
このような配線基板の配線導電体用として本実施形態のペースト組成物を用いる場合、ペースト組成物におけるガラス粒子の添加量は、導電性粒子100重量部に対して5重量部以下とすることが望ましい。このようなガラス粒子の添加量の範囲内であれば、ペースト組成物の粘度の経時安定性を良好にできる。また、このようなガラス粒子の添加量の範囲であれば、焼成後に形成される配線導体の導電性も高めることができる。
【0056】
本実施形態のペースト組成物に用いるバインダーは、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度Tg[h]がTg[h]≧100℃であるH成分と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度がTg[l]であるL成分とが共重合されて、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を構成している(以下、この(メタ)アクリル酸エステル共重合体共重合体Pという)。但し、共重合体PにおけるH成分およびL成分の合計モル分率が80mol%以上であり、H成分のガラス転移温度Tg[h]とL成分のガラス転移温度Tg[L]との差ΔTgが、ΔTg=(Tg[h]−Tg[l])≧50を満たす。なお、ペースト組成物のレオロジーを制御しやすくするという観点からは、Tg=(Tg[h]−Tg[l])≦250とするのがよく、より好ましくはTg=(Tg[h]−Tg[l])≦150、さらに好ましくはTg=(Tg[h]−Tg[l])≦100であるのがよい。
【0057】
なお、(メタ)アクリル酸エステルとは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを示す。(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、アクリル酸エステルの共重合体、メタアクリル酸エステルの共重合体、または、アクリル酸エステルとメタアクリル酸エステルの共重合体をいう。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステルであるH成分(ホモポリマーのガラス転移温度;Tg[h]≧100℃を満たす)の例としては、以下のようなアクリレート類およびメタクリレート類が挙げられる。このアクリレート類としては、例えば、アダマンチルアクリレート(Tg[h]=153℃),ジメチルアダマンチルアクリレート(Tg[h]=106℃),ビフェニルアクリレート(Tg[h]=110℃),シアノブチルアクリレート(Tg[h]=111〜123℃),シアノヘプチルアクリレート(Tg[h]=116℃)またはシアノメチルアクリレート(Tg[h]=160℃)等が挙げられる。このメタクリレート類としては、メチルメタクリレート(Tg[h]=105℃),アクリロニトリルメタクリレート(Tg[h]=110℃),アダマンチルメタクリレート(Tg[h]=141℃),ジメチルアダマンチルメタクリレート(Tg[h]=196℃),tert−ブチルメタクリレート(Tg[h]=118℃),シアノメチルフェニルメタクリレート(Tg[h]=128℃),シアノフェニルメタクリレート(Tg[h]=155℃),ジメチルブチルメタクリレート(Tg[h]=108℃),イソボニルメタクリレート(Tg[h]=110℃),メトキシカルボニルフェニルメタクリレート(Tg[h]=106℃),フェニルメタクリレート(Tg[h]=110℃),トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(Tg[h]=125℃)またはキシレニルメタクリレート(Tg[h]=125〜167℃)等を用いることができる。熱分解性の観点からは、アクリレートよりもメタクリレートを用いるのが好ましい。コスト面を考慮した場合、メチルメタクリレートが特に好ましい。
【0059】
(メタ)アクリル酸エステルであるL成分(ガラス転移温度;Tg[l])は、本実施形態の場合、次式;ΔTg=(Tg[h]−Tg[l])≧50を満たすものであれば、上記H成分で示した種々の(メタ)アクリル酸エステルから選ぶことが出来る。L成分に関しても、熱分解性の観点からアクリレートよりもメタクリレートが好ましく、コスト面を考慮した場合、汎用系のメタクリレートであるブチルメタクリレート(Tg[l]=20℃)またはイソブチルメタクリレート(Tg[h]=53℃)等が特に好ましい。
【0060】
これらのH成分およびL成分を、これらが共重合された(メタ)アクリル酸エステル共重合体Pに対して、H成分およびL成分の合計モル分率が80mol%以上となるようにする。すなわち、共重合体Pを構成するモノマー単位の全モル数をPm、共重合体Pを構成するH成分モノマー単位のモル数をHm、共重合体Pを構成するL成分モノマー単位のモル数をLmとしたときに、(Hm+Lm)/Pm≧0.8を満たすような共重合組成比率にする。
【0061】
なお、H成分とL成分の比率は特に限定されるものではなく、所望とするペースト組成物のレオロジーに合わせて、適宜選択すればよい。即ち、H成分が多い場合はペースト組成物のレオロジーは弾性的性質が支配的に、逆にL成分が多い場合は、粘性的性質が支配的に調整可能である。粘弾性バランスの観点から、本実施形態のペースト組成物に用いる(メタ)アクリル酸エステル共重合体Pの場合、HmとLmのモル比は、Hm/Lm=7/3〜3/7が好ましく、より好ましくはHm/Lm=6/4〜4/6である。
【0062】
また、本実施形態のペースト組成物は、熱分解性またはペースト組成物の粘度経時安定性を良好とするとともに、さらに高粘度または高チキソ性を発現させるという観点からは、(メタ)アクリル酸エステル共重合体Pに対して、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルおよびポリアルキレンオキサイド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種の極性官能基含有(メタ)アクリル酸エステルを共重合させるのが良い。また、共重合を構成する極性官能基含有(メタ)アクリル酸エステルの割合をPmに対して20mol%以下の割合とするのがさらによい。
【0063】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート,ヒドロキシエチルメタクリレート,ヒドロキシブチルアクリレート,ヒドロキシブチルメタクリレート,ヒドロキシプロピルアクリレート,ヒドロキシプロピルメタクリレート,ジヒドロキシエチルアクリレート,ジヒドロキシエチルメタクリレート,ジヒドロキシプロピルアクリレート,ジヒドロキシプロピルメタクリレート,ジヒドロキシブチルアクリレート,ジヒドロキシブチルメタクリレート,ジエチレングリコールモノアクリレート,ジエチレングリコールモノメタクリレート,グリセリンモノアクリレートまたはグリセリンモノメタクリレート等を用いることができる。
【0064】
ポリアルキレンオキサイド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、ポリメチレンオキサイドモノアクリレート,ポリメチレンオキサイドモノメタクリレート,ポリエチレンオキサイドモノアクリレート,ポリエチレンオキサイドモノメタクリレート,ポリプロピレンオキサイドモノアクリレートまたはポリプロピレンオキサイドモノメタクリレート等が挙げられる。これらの末端は水酸基にしたもの、または、メチル基もしくはエチル基等のアルキル基でアルコキシ基末端にしたものが好適に使用される。
【0065】
一方、本実施形態のペースト組成物に使用されるバインダーの重量平均分子量は、スクリーン印刷等の成形に適した高粘度、高チキソ性または曳糸性を良好にするという観点からは2万〜10万であることが望ましい。
【0066】
また、本実施形態のペースト組成物に使用されるバインダーには、所望とするペースト組成物のレオロジー特性または熱分解性を低下させない範囲内であれば、他の共重合可能なモノマー類を共重合させても良い。他の共重合可能なモノマー類としては、例えば、カルボン酸含有モノマー,グリシジル基含有モノマー,アミノ基またはアミド基含有モノマー,アクリロニトリル,スチレン,α−メチルスチレン,エチレン,酢酸ビニル,またはn−ビニルピロリドン等を用いることができる。上記カルボン酸含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,イタコン酸,またはフマル酸等を用いることができる。上記グリシジル基含有モノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート等を用いることができる。上記アミノ基またはアミド基含有モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート,ジメチルアミノエチルメタクリレート,ジエチルアミノエチルアクリレート,ジエチルアミノエチルメタクリレート,N−tert−ブチルアミノエチルアクリレート,N−tert−ブチルアミノエチルメタクリレート,アクリルアミド,シクロヘキシルアクリルアミド,シクロヘキシルメタクリルアミド,N−メチロールアクリルアミドまたはジアセトンアクリルアミド等を用いることができる。
【0067】
これらの(メタ)アクリル酸エステル共重合体は溶液重合、懸濁重合、または乳化重合等の公知技術により製造することが出来る。溶液重合では、溶剤中で重合するため重合終了時にバインダー溶液の形態で得ることができる。一方、懸濁重合では水中で重合し、得られたビーズ状樹脂を所望とする溶剤に溶解させてバインダー溶液を製造する。乳化重合では水に乳化させたモノマーをミセル中で重合し、乳化状態の樹脂を析出分離するかスプレードライヤー等で水分を除去して、得られた樹脂を所望とする溶剤に溶解させてバインダー溶液を製造する。これらの中でも、取扱が容易であるという観点からは、溶液重合を用いることが好ましい。
【0068】
一方、本実施形態のペースト組成物は、更に、ニトロセルロースを少量添加することで、スクリーン印刷等の成形に適した高粘度性または高チキソ性といったレオロジー特性を更に向上することが可能である。ニトロセルロースは、ペースト組成物の流動性を維持するとともにレオロジー特性を向上するという観点からは、バインダー100重量部に対して、0.1〜10重量部程度の添加量が好ましい。特に微細形状を精度良く形成できるという観点からは1〜10重量部とするのがよい。また、ペースト組成物をセラミックグリーンシート等の対象物に塗布した後、この塗布物の上面を組成変形して平坦化する場合には、0.1〜5重量部とするのがよい。
【0069】
また、一般的に、ニトロセルロースは天然セルロースの水酸基を硝酸エステル化して得られるが、その時の置換度(硝化度)または重合度によって、溶剤に対する溶解性、または粘度が変わるため、使用する溶剤に合わせてニトロセルロースの選定を行うことが望ましい。
【0070】
このように、本実施形態のペースト組成物に用いるバインダーおよび添加物は、熱分解性が良い設計となっているため、窒素雰囲気中であっても500℃において99重量%以上熱分解させることが可能であり、製品中に残炭素等の残渣物を低減でき、導電性の低下や機械的強度の低下等の不具合を低減することが可能である。
【0071】
ペースト組成物の溶剤としては、例えば、テルピネオール,ジヒドロテルピネオール,エチルカルビトール,ブチルカルビトール,カルビトールアセテート,ブチルカルビトールアセテート,ジイソプロピルケトン,メチルセルソルブアセテート,セルソルブアセテート,ブチルセルソルブ,ブチルセルソルブアセテート,シクロヘキサノン,シクロヘキサノール,イソホロン,シプロピレングリコール,プロピレングリコールモノメチルエーテル,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート,ブチルカルビトールメチル−3−ヒドロキシヘキサノエート,トリメチルペンタンジオールモノイソブチレート,パイン油,またはミネラルスピリット等の高沸点溶剤が好適に使用できる。これら溶剤の選択は重要であり、本実施形態のペースト組成物に用いるバインダーとの相性、即ち、相溶性によってペースト組成物のレオロジカルな性質が左右される。一般には、バインダーと溶剤のSP値(Solubility Parameter;溶解度パラメーター)の相違が大きいほど、高粘度化または高チキソ化に有効である。バインダーの溶剤に対する溶解性が高いと、取扱が容易であり、得られたペースト組成物の粘度経時安定性を高く維持しやすいので、適切に選択することが好ましい。
【0072】
また、本実施形態のペースト組成物には可塑剤または滑剤を添加しても良い。可塑剤または滑剤としては、例えば、フタル酸エステル系、脂肪族エステル系、エチレングリコール系、プロピレングリコール系、またはグリセリン系等を用いることができる。上記フタル酸エステル系としては、例えば、ジメチルフタレート,ジブチルフタレート,ジ−2−エチルヘキシルフタレート,ジヘプチルフタレート,ジ−n−オクチルフタレート,ジイソノニルフタレート,ジイソデシルフタレート,ブチルベンジルフタレート,エチルフタリルエチルグリコレート,またはブチルフタリルブチルグリコレート等を用いることができる。上記脂肪族エステル系としては、例えば、ジ−2−エチルヘキシルアジペート,またはジブチルジグリコールアジペート等を用いることができる。上記エチレングリコール系としては、例えば、ジエチレングリコール,トリエチレングリコール,ポリエチレングリコール,ジエチレングリコールメチルエーテル,トリエチレングリコールメチルエーテル,ジエチレングリコールエチルエーテル,ジエチレングリコール−n−ブチルエーテル,トリエチレングリコール−n−ブチルエーテル,エチレングリコールフェニルエーテル,エチレングリコール−n−アセテート,ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル,またはジエチレングリコールモノビニルエーテル等を用いることができる。上記プロピレングリコール系としては、例えば、ジプロピレングリコール,トリプロピレングリコール,ポリプロピレングリコール,ジプロピレングリコールメチルエーテル,トリプロピレングリコールメチルエーテル,ジプロピレングリコールモノエチルエーテル,ジプロピレングリコール−n−ブチルエーテル,トリプロピレングリコール−n−ブチルエーテル,プロピレングリコールフェニルエーテル,エチレングリコールベンジルエーテル,またはエチレングリコールイソアミルエーテル等を用いることができる。上記グリセリン系としては、例えば、グリセリン,ジグリセリン,またはポリグリセリン等を用いることができる。
【0073】
また、本実施形態のペースト組成物には分散剤を添加してもよく、例えば、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤または高分子型乳化分散剤が使用できる。
【0074】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレングリコール,ポリオキシプロピレングリコール,ポリオキシエチレンアルキルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,グリセリン脂肪酸部分エステル,ソルビタン脂肪酸部分エステル,ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル,ポリオキシエチレンソルビタン酸脂肪部分エステル,ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボキシレート,脂肪酸アルカノールアミド,ポリオキシアルキレンアルキルアミン,またはアルキルジアルキルアミンオキシド等を使用することができる。
【0075】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩,ジアルキルアミン塩,または第4級アンモニウム塩等を使用することができる。
【0076】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、エーテルカルボン酸塩,ジアルキルスルホこはく酸塩,アルカンスルホン酸塩,アルキルベンゼンスルホン酸塩,アルキルナフタレンスルホン酸塩,ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩,アルキル燐酸エステル塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩,脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩,アルキル硫酸エステル塩,ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩,脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩,またはアシル化アミノ酸塩等を使用することができる。
【0077】
両性界面活性剤としては、例えば、ベタイン型両性界面活性剤またはアミノ酸型両性界面活性剤等を使用することができる。
【0078】
高分子型乳化分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、デンプン、デンプン誘導体、セルロース誘導体、またはポリアクリル酸ソーダ等を使用することができる。なお、上記セルロース誘導体は、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、またはヒドロキシエチルセルロースなどを含む。
【0079】
本実施形態のペースト組成物において、バインダーは無機粒子100重量部に対して0.5〜15.0重量部の割合で混合されることが好ましい。また、有機溶剤はバインダーとその他の固形成分の合計100重量部に対して5〜100重量部の割合で混合されることが好ましい。
【0080】
このペースト組成物を、例えば、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法等の公知の印刷手法を用いて、所定のパターンに印刷することによりセラミックグリーンシート上に塗布する。このようにして得られたセラミックグリーンシートに、バインダー,溶剤および可塑剤より成る適当な接着剤を塗布もしくは転写する。次に、他のセラミックグリーンシートを積層して加圧することにより互いにセラミックグリーンシート同士を一体化し、ペースト組成物が所望の形状で設けられたセラミックグリーンシート積層体から成るセラミック成形体を作製する。得られたセラミック成形体を所定条件で焼成することにより、各種セラミック構造体が得られる。
【0081】
なお、本実施形態のペースト組成物におけるバインダーの組成および組成比については、例えばGC−MassまたはNMR等を用いることにより測定可能である。また、Tg[H]およびTg[L]については、それぞれの原料モノマーから重合したホモポリマーについて、DSC等を用いることにより測定可能である。また、得られた共重合体バインダーのTgは、上記DSC等の測定装置で実測する他に、Foxの式;1/Tg=w1/Tg1+w2/Tg2・・・(ここで、w1,Tg1及びw2,Tg2は各ホモポリマー成分1,2の重量分率及びガラス転移温度を示す)を利用して計算することによっても求めることが出来る。
【0082】
次に、本実施形態のペースト組成物を、セラミック構造体としてのセラミック配線基板に適用した例について、図1〜図3を基に以下に詳細に説明する。
【0083】
先ず、セラミック配線基板を作製するためのセラミックグリーンシート1〜3を以下のようにして作製する。セラミックグリーンシート1〜3の原料粒子に対し、所望により焼結助剤となるセラミック粒子を添加し、混合する。原料粒子としては、例えば、セラミック粒子、またはガラス粒子等を用いることができる。そして、この混合物に、樹脂バインダー、可塑剤等の添加剤、および有機溶剤等を加えてスラリーを調製する。その後、このスラリーを用いてドクターブレード法、圧延法またはプレス法等の成形法により所定の厚みのセラミックグリーンシート1〜3を成形する。
【0084】
次に、電気配線等を形成するため、上記のセラミックグリーンシート1〜3に打ち抜き加工を施すことにより、上下の配線導体層同士を接続するための貫通孔を形成する。そして、図1に示すように、セラミックグリーンシート1〜3の表面に本実施形態のペースト組成物を配線層5’として印刷し、貫通孔内に本実施形態のペースト組成物をビア導体4として充填する。そして、この配線層5’およびビア導体4用としてのペースト組成物を乾燥させる。
【0085】
次に図2に示すように、このペースト組成物に用いているバインダーであるアクリル酸エステル共重合体Pのガラス転移温度Tgに対して、(Tg+30±5)℃の温度範囲内でペースト層5’を4.9MPa程度の圧力で加圧して塑性変形させ、ペースト層5’の表面を平坦化させる。これにより、周囲のセラミックグリーンシートの変形を抑えながら、ペースト層5’を塑性変形させて表面を平坦化させることが可能である(ペースト層5)。加圧条件に対するペースト層5’の塑性変形性は、加圧圧力条件よりも加温温度条件の方がより支配的である。従って、用いるバインダーのTgに合わせて、適切に温度条件を定めることが好ましい。よって、上記のように(Tg+30±5)℃の温度範囲内でペースト層5’を加圧して塑性変形させることにより、セラミックグリーンシートの積層時に内部配線の厚みによる高低差によって空隙が生じるのを低減することができる。その結果、セラミックグリーンシートの層間密着不良、いわゆるデラミネーションが発生したり、セラミックグリーンシート積層体に変形が発生したりするのを低減することができる。
【0086】
好ましくは、内部配線を有するセラミックグリーンシート積層体の外表面を平坦化するという観点からは、塑性変形させて表面を平坦化した後のペースト層5の膜厚tを、それに接するセラミックグリーンシートの厚みTに対して、t≦0.7Tを満たすように製品設計するのがよい。
【0087】
次に、得られたセラミックグリーンシート1〜3に、バインダー,溶剤および可塑剤より成る接着剤を塗布もしくは転写する。
【0088】
そして、図3に示すように、これらのセラミックグリーンシート1〜3同士を加圧し積層することにより一体化し、ペースト組成物が所望の形状で設けられたセラミックグリーンシート積層体から成るセラミック成形体を作製する。得られたセラミック成形体を所定条件で焼成することにより、各種セラミック構造体が得られる。
【0089】
なお、セラミックグリーンシートに用いるセラミック粒子、ガラス粒子および焼結助剤としては、上記本実施形態のペースト組成物の無機粒子で挙げたセラミック粒子、ガラス粒子および焼結助剤と同様のものを用いることができる。
【0090】
一方、セラミックグリーンシートの樹脂バインダーとしては、例えば、アクリル系ポリマー、ポリビニルアセタール系、セルロース系、ポリビニルアルコール系、ポリ酢酸ビニル系、ポリ塩化ビニルまたはポリプロピレンカーボネート系等の重合体を用いることができる。これらの重合体は一種のモノマーの単独重合体であってもよく、異なる種類のモノマーの共重合体であってもよい。なお、上記アクリル系ポリマーは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの中から選ばれる一種または複数種の重合体を含む。
【0091】
アクリル系ポリマーを構成するモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート,メチルメタクリレート,エチルアクリレート,エチルメタクリレート,n−プロピルアクリレート,n−プロピルメタアクリレート,イソプロピルアクリレート,イソプロピルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,n−ブチルメタクリレート,イソブチルアクリレート,イソブチルメタクリレート,tert−ブチルアクリレート,tert−ブチルメタクリレート,シクロヘキシルアクリレート,シクロヘキシルメタクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,2−エチルヘキシルメタクリレート,イソノニルアクリレート,イソノニルメタクリレート,イソデシルアクリレート,またはイソデシルメタクリレート等を用いることができる。これらアクリル酸エステルまたはメタクリル酸アルキルエステルを主鎖とする共重合体には、カルボン酸基,アルキレンオキサイド基,水酸基,グリシジル基,アミノ基またはアミド基を含有するモノマーが共重合成分として含まれているものを好適に用いることができる。また、これらアクリル酸エステルやメタクリル酸アルキルエステルを主鎖とする共重合体には、他の共重合可能なアクリロニトリル,スチレン,エチレン,酢酸ビニル,n−ビニルピロリドン等を共重合させても良い。
【0092】
カルボン酸基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸,メタクリル酸,マレイン酸,イタコン酸,またはフマル酸等を用いることができる。また、アルキレンオキサイドを有するモノマーとしては、例えば、メチレンオキサイド,エチレンオキサイド,またはプロピレンオキサイド等を用いることができる。また、水酸基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシエチルメタクリレート,2−ヒドロキシブチルアクリレート,2−ヒドロキシブチルメタクリレート,ジエチレングリコールモノアクリレート,ジエチレングリコールモノメタクリレート,グリセリンモノアクリレート,グリセリンモノメタクリレート,トリメチロールプロパントリアクリレート,またはトリメチロールプロパントリメタクリレート等を用いることができる。また、グリシジル基を有するモノマーとしては、例えば、グリシジルアクリレート,またはグリシジルメタクリレート等を用いることができる。また、アミノ基またはアミド基を有するモノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチルアクリレート,ジメチルアミノエチルメタクリレート,ジエチルアミノエチルアクリレート,ジエチルアミノエチルメタクリレート,N−tert−ブチルアミノエチルアクリレート,N−tert−ブチルアミノエチルメタクリレート,アクリルアミド,シクロヘキシルアクリルアミド,シクロヘキシルメタクリルアミド,N−メチロールアクリルアミド,またはジアセトンアクリルアミド等を用いることができる。
【0093】
ポリビニルアセタール系の重合体としては、例えば、ポリビニルブチラール,ポリビニルエチラール,ポリビニルプロピラール,ポリビニルオクチラール,ポリビニルフェニラール、または、これらの誘導体を用いることができる。
【0094】
セルロース系の重合体としては、例えば、メチルセルロース,エチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,ニトロセルロース,または酢酸セルロース等を用いることができる。
【0095】
また、本実施形態のペースト組成物に用いる無機粒子として金属等の導電性粒子を用いた場合、ペースト組成物を導電ペーストとして用いることができ、焼成して配線導体などの導体を形成できる。例えば、セラミックグリーンシートに本実施形態のペースト組成物をパターン状に形成してセラミック成形体を作製した後、セラミックグリーンシートとペースト組成物とを同時焼成することとにより、導体を一体化したセラミック構造体を形成できる。あるいは、焼成済みのセラミック基板に本実施形態のペースト組成物をパターン状に形成した後、焼成することにより、導体を一体化したセラミック構造体を形成してもよい。
【0096】
また、本実施形態のペースト組成物に用いる無機粒子としてセラミックやガラス等の誘電体粒子を用いた場合、ペースト組成物を誘電体用ペーストとして用いることができ、焼成して誘電体を形成できる。例えば、セラミックグリーンシートの表面に本実施形態のペースト組成物を所望のパターン状に形成してセラミック成形体を作製した後、セラミックグリーンシートと同時焼成することにより、所望の形状を有する一体化したセラミック構造体を形成できる。あるいは、焼成済みのセラミック基板に本実施形態のペースト組成物をパターン状に形成した後、焼成することにより、誘電体同士を一体化したセラミック構造体を形成してもよい。また、本実施形態のペースト組成物をシート状に形成することによって、セラミックグリーンシートとすることも可能である。
【0097】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を行うことは何等差し支えない。例えば、本実施形態のペースト組成物を、セラミック構造体としてのセラミック配線基板に適用した例について、図1〜図3で示す例を説明したが、配線層としてのペースト層5’を平坦化する図2の工程を省略してもよい。
【実施例1】
【0098】
本発明のペースト組成物の実施例を以下に説明する。
【0099】
1.セラミックグリーンシートの準備
SiO2、Al23、CaO、ZnOおよびB23からなるガラスセラミック原料粉末100重量部に対して、アクリルバインダーを11重量部、および可塑剤としてフタル酸ジブチルを5重量部添加し、トルエンを有機溶剤としてボールミルにより36時間混合してスラリーを調製した。得られたスラリーを用いてドクターブレード法により成形して乾燥し、厚さ300μmのセラミックグリーンシートを作製した。次に、このセラミックグリーンシートに、直径が200μmのスルーホールをパンチングで形成した。
【0100】
続いて、スルーホール充填用導体ペーストとして下記に示す本発明のペースト組成物を、セラミックグリーンシートに形成されたスルーホールにスクリーン印刷法によって充填した(実施例1〜21)。なお、表1中、バインダー成分の構成比率はモル比を示す。
【0101】
次に、配線用導体ペーストとして下記に示すペースト組成物を用いてスクリーン印刷法によって、微細配線パターン(目標設計値:線幅55μm,膜厚16μm)を印刷塗布し、続いて温風乾燥炉を用いて80℃で1時間乾燥させてメタライズ配線を形成した。
【0102】
2.ペースト組成物の作製
2−1)スルーホール充填用導体ペースト組成物(ビア導体形成用)
Cu粉体100重量部に対し、上記セラミックグリーンシートに使用したガラスセラミック原料粉末2重量部、表1に示すバインダー2重量部、テルピネオールとブチルカルビトールアセテートの混合溶剤を4重量部、およびフタル酸ジブチルを2重量部添加し、これらを攪拌して混合した。その後、Cu粉体およびバインダー類の凝集体がなくなるまで3本ロールミルで混合してペースト組成物を調製した。
【0103】
なお、表1のバインダー成分において、MMAはメチルメタクリレート、BMAはブチルメタクリレート、IBMAはイソブチルメタクリレート、EMAはエチルメタクリレート、MPEGMAはメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、PEGMAはポリエチレングリコールモノメタクリレート、GLMAはグリセリンモノメタクリレート、2HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、MAAはメタクリル酸、2EHMAは2−エチルヘキシルメタクリレート、2EHAは2−エチルヘキシルアクリレート、およびNCはニトロセルロースを示す。
【0104】
2−2)配線用導体ペースト組成物
Cu粉体100重量部に対し、上記セラミックグリーンシートに使用したガラスセラミック原料粉末3重量部、表1に示すバインダー(ビア導体部と共通のものを使用)4重量部、テルピネオールとブチルカルビトールアセテートの混合溶剤を10重量部、およびフタル酸ジブチルを2重量部添加し、これらを攪拌して混合した。その後、Cu粉体およびバインダー類の凝集体がなくなるまで3本ロールミルで混合してペースト組成物を調製した。
【0105】
3.セラミック多層配線基板の作製
アクリル樹脂、溶剤およびフタル酸エステル系の可塑剤より成る接着剤を塗布したセラミックグリーンシート3枚を4.9MPaの圧力で加圧し積層することにより一体化し、表層および内部に微細配線を有するセラミックグリーンシート積層体を作製した。次に、この積層体を、Al23系セッターに載置して窒素−水素−水蒸気の混合雰囲気焼成炉内にて、所定の温度プロファイルにて脱バインダー工程を行った後、最高温度950〜1000℃にて焼成を行った。
【0106】
(比較例)
実施例1〜21におけるペースト組成物のバインダーを、表1に示す比較例1〜13のバインダーに変える以外は、実施例1〜21と同様にしてセラミック多層配線基板を作製した(比較例1〜13)。
【0107】
表1に実施例1〜21および比較例1〜13で使用したペースト組成物の各バインダー成分を示す。また、表1には、下記に示す方法で測定した各種測定結果も示す。また、表1には、スクリーン印刷特性評価として、ペースト曳糸性(版離れ性)を印刷作業時に目視で判断した結果(○:非常に良好、△:良好、×:劣る)と、ペースト組成物をセラミックグリーンシートに印刷して乾燥した後(焼成前)の配線の線幅と膜厚を超深度形状測定顕微鏡((株)キーエンス製「VK8510」)で計測した結果(10箇所測定した平均値であり、目標設計値は、線幅が55μm、膜厚が16μmである)を示す。
【0108】
ここで、表1の1週間後粘度変化率おいて、η1s-1およびη100s-1の変化率がともに−40%〜+40%の範囲にある場合を「良好」とした。その範囲内のうち、特に−30%〜+30%の範囲にある場合を「非常に良好」とした。一方、−40%未満、または+40%を超える場合を「劣る」とした。
【0109】
また、表1の線幅において、目標値である55μmに対して−15〜+15%の範囲にある場合を「良好」とした。その範囲内のうち、特に−5%〜+5%の範囲にある場合を「非常に良好」とした。一方、−15%未満、または+15%を超える場合を「劣る」とした。
【0110】
そして、表1の総合評価は、「1週間後粘度変化率」、「曳糸性」、および「線幅」の3つの結果がそれぞれ「良好」または「非常に良好」であれば、優れているという意味で「○」とした。特に、上記3つの結果がすべて「非常に良好」の場合は、極めて優れているという意味で「◎」とした。なお、上記3つの結果のうち、1つでも「劣る」があれば、良好でないという意味で「×」とした。
【0111】
バインダーの熱分解残渣率測定
使用したバインダー(2種以上の場合はバインダー混合物として)の熱重量示差熱分析は、N雰囲気中、昇温速度10℃/分で500℃まで熱重量示差熱分析(TG/DTA)を差動型高温熱天秤(理学電機(株)製「TG8120」)で行い、500℃での熱分解残渣率100×(500℃での残渣重量)/(測定前試料重量)を求めた。
【0112】
ペースト組成物のレオロジー測定
Physica社のrheometer MCR301を用いてコーンプレート法(25mmΦ,1°コーンを使用,25℃)で1s−1,100s−1での粘度を測定した。また、TI値(Thixotropy Index,1と100 s−1での粘度の比)を算出した。測定は、ペースト組成物調製直後および1週間後の2回行い、1週間後の粘度変化率100×{(1週間後の粘度)−(調製直後の粘度)}/(調製直後の粘度)を算出した。
【表1】

【0113】
表1に示したように、本発明のペースト組成物を用いた実施例1〜21では、良好なレオロジー特性を有し、曳糸性が小さくて良好であった。また、実施例1〜21では、優れた印刷特性を実現し、所望とする良好な印刷形状を形成することが出来た。また、実施例1〜21は、粘度経時安定性に優れている為、長期保存が可能であった。特に、本発明のバインダー組成、分子量の(メタ)アクリル酸エステル共重合体とニトロセルロース併用で実施した実施例1〜15では、トータル的に優れた結果となった。
【0114】
一方、実施例21では実施例16と組成および分子量ともにほぼ同等で、共重合形態をランダム方式からブロック方式に変えて比較した。結果、実施例21のブロック共重合体では、高分子量にもかかわらず、低粘度化および低チキソ化が見られて実施例16よりも曳糸性が改善した。
【0115】
それに対し、比較例1〜6では(メタ)アクリル酸エステル共重合体の分子量を上げることで印刷特性の向上を狙ったが、高分子量アクリル特有の現象である曳糸性が顕著に現れたため、印刷で得られた配線が変形している不具合が見られた。比較例1では、Tg[h]≧100℃であるH成分を使用したがΔTg<50℃であるため、ペーストが固化して流動性に乏しく、印刷が不可であった。比較例2〜5ではTg[h]<100℃であるH成分を使用し、ΔTgが50℃前後になるようにL成分を替えて検討したが、何れも得られたペースト粘度およびチキソ性が低く、印刷で得られた配線に滲みが見られる等、良好な印刷形状を得ることが出来なかった。比較例6では極性官能基である2HEMAを導入したため、若干、ペースト粘度およびチキソ性が改善したが、曳糸性は悪化した。比較例7では、分子量を下げて、極性官能基である2HEMAを増量したが、ペーストを作製した直後からペーストの増粘が進み、数日後にはゲル状に固化して印刷が不可であった。
【0116】
これらの結果から、本発明から外れる組成比、即ち、H成分とL成分が共重合されている(メタ)アクリル酸エステル共重合体Pに対し、(H+L)/P<0.8で共重合させた場合、換言すれば、極性官能基含有(メタ)アクリル酸エステルが20mol%を超える割合で共重合されたものでは、バインダー分子間相互作用が過剰であると考えられる。
【0117】
一方、比較例8では、低分子の2HEMA含有メタクリレートにニトロセルロースを併用することでペースト粘度とチキソ性の向上を試みたがΔTg<50℃であるため、ペーストの弾性的性質が強く、スクリーン印刷時の版抜け性および曳糸性が悪かった。また、1週間後にはペーストが大きく増粘していた。
【0118】
また、比較例9では比較例1と組成,分子量とも同等で、共重合形態をランダム方式からブロック方式に変えて比較した。結果、実施例21で見られた低粘度化および低チキソ化効果はなく、ペーストが固化した。
【0119】
更に、比較例10〜12では実施例16,比較例1および比較例5と、組成および分子量ともに同等のホモポリマーを混合したが、何れも粘度経時安定性が低く、数日後にはペーストが固化した。
【0120】
最後に高分子量BMAホモポリマーを用いた比較例13では、印刷した配線に滲みが生じた。
【実施例2】
【0121】
本発明のペースト組成物およびそれを用いたセラミック電子部品としてのセラミック構造体の製造方法の実施例を以下に説明する。
【0122】
1.セラミックグリーンシートの準備
SiO2、Al23、CaO、MgO、BaOおよびB23からなるガラスセラミック原料粉末100重量部に対して、アクリルバインダー(メチルメタクリレートとイソブチルメタクリレートの共重合体;モル比率6/4,ガラス転移温度80℃)を11重量部、および可塑剤としてフタル酸ジブチルを5重量部添加し、トルエンを有機溶剤としてボールミルにより36時間混合しスラリーを調製した。得られたスラリーを用いてドクターブレード法により成形して乾燥し、厚さ20μmのセラミックグリーンシートを作製した。次に、このセラミックグリーンシートに、直径が60μmのスルーホールをパンチングで形成した。
【0123】
続いて、スルーホール充填用導体ペーストとして下記に示す本発明のペースト組成物を、セラミックグリーンシートに形成されたスルーホールにスクリーン印刷法によって充填した(実施例31〜47)。なお、表2中、バインダー成分の構成比率はモル比を示す。
【0124】
次に、配線用導体ペーストとして下記に示すペースト組成物を用いてスクリーン印刷法によって、微細配線パターン(目標設計値:線幅60μm,膜厚16μm)を印刷塗布し、続いて温風乾燥炉を用いて80℃で1時間乾燥させてメタライズ配線を形成した。次に、この印刷塗布したペースト層を、表2に示す平坦化温度条件で加温しながら、4.9MPaの圧力で加圧して平坦化した。
【0125】
2.ペースト組成物の作製
2−1)スルーホール充填用導体ペースト組成物(ビア導体形成用)
Cu粉体100重量部に対し、上記セラミックグリーンシートに使用したシリカ粉末を含むガラス原料粉末2重量部、表2に示すバインダー2重量部、テルピネオールとブチルカルビトールアセテートの混合溶剤を4重量部、およびフタル酸ジブチルを2重量部添加し、これらを攪拌して混合した。その後、Cu粉体およびバインダー類の凝集体がなくなるまで3本ロールミルで混合してペースト組成物を調製した。
【0126】
なお、表2のバインダー成分において、MMAはメチルメタクリレート、BMAはブチルメタクリレート、IBMAはイソブチルメタクリレート、EMAはエチルメタクリレート、MPEGMAはメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、PEGMAはポリエチレングリコールモノメタクリレート、2HEMAは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、DMAEMAはジメチルアミノエチルメタクリレート、MAAはメタクリル酸、2EHMAは2−エチルヘキシルメタクリレート、および2EHAは2−エチルヘキシルアクリレートを示す。
【0127】
また、表2に記載している共重合体バインダーのTgは、Foxの式;1/Tg=w1/Tg1+w2/Tg2・・・(ここで、w1,Tg1及びw2,Tg2は各ホモポリマー成分1,2の重量分率及びガラス転移温度を示す)を利用して計算した値を示す。
【0128】
2−2)配線用導体ペースト組成物
Cu粉体100重量部に対し、上記セラミックグリーンシートに使用したシリカ粉末を含むガラス原料粉末5重量部、超微粒子シリカ(一次粒子の平均粒子径:15nm)0.1重量部、表2に示すバインダー(ビア導体部と共通のものを使用)6重量部、テルピネオールとブチルカルビトールアセテートの混合溶剤を10重量部、およびフタル酸ジブチルを2重量部添加し、これらを攪拌して混合した。その後、Cu粉体およびバインダー類の凝集体がなくなるまで3本ロールミルで混合してペースト組成物を調製した。
【0129】
3.セラミック多層配線基板の作製
アクリル樹脂、溶剤、およびフタル酸エステル系の可塑剤より成る接着剤を塗布したセラミックグリーンシート3枚を4.9MPaの圧力で加圧し積層することにより一体化し、表層および内部に微細配線を有するセラミックグリーンシート積層体を作製した。次に、この積層体を、Al23系セッターに載置して窒素−水素−水蒸気の混合雰囲気焼成炉内にて、所定の温度プロファイルにて脱バインダー工程を行った後、最高温度950〜1000℃にて焼成を行った。
【0130】
(比較例)
実施例31〜47におけるペースト組成物のバインダーを表2に示す比較例31〜43のバインダーに変える以外は、実施例31〜47と同様にしてセラミック多層配線基板を作製した(比較例31〜43)。
【0131】
表2に実施例31〜47および比較例31〜43で使用したペースト組成物の各バインダー成分を示す。また、下記に示す方法で測定した各種測定結果を示す。また、スクリーン印刷特性評価として、ペースト曳糸性(版離れ性)を印刷作業時に目視で判断した結果(○:非常に良好、△:良好、×:劣る)と、印刷して平坦化した後(焼成前)の配線の線幅と膜厚を超深度形状測定顕微鏡((株)キーエンス製「VK8510」)で計測した結果(印刷,乾燥後のペースト層[設計値:線幅60μm、膜厚16μm]を平坦化[平坦化後の線幅目標値:80μm]した後に、10箇所測定した平均値)を示す。また、焼成後のセラミック多層配線基板の断面観察を行い、内部配線付近に層間剥離が無いか観察した。
【0132】
ここで、表2の1週間後粘度変化率おいて、η0.1s-1およびη100s-1の変化率がともに−40%〜+40%の範囲にある場合を「良好」とした。その範囲内のうち、特に−30%〜+30%の範囲にある場合を「非常に良好」とした。一方、−40%未満、または+40%を超える場合を「劣る」とした。
【0133】
また、表2の線幅において、目標値である80μmに対して−25〜+25%の範囲にある場合を「良好」とした。その範囲内のうち、特に−10%〜+10%の範囲にある場合を「非常に良好」とした。一方、−25%未満、または+25%を超える場合を「劣る」とした。
【0134】
そして、表2の総合評価は、「1週間後粘度変化率」、「曳糸性」、および「線幅」の3つの結果がそれぞれ「良好」または「非常に良好」であり、かつ「層間剥離」が無ければ、優れているという意味で「○」とした。特に、上記3つの結果がすべて「非常に良好」であり、かつ「層間剥離」が無ければ、極めて優れているという意味で「◎」とした。なお、上記3つの結果のいずれか1つでも「劣る」がある場合、あるいは、「層間剥離」が有る場合を、良好でないという意味で「×」とした。
【0135】
バインダーの熱分解残渣率測定
使用したバインダー(2種以上の場合はセラミック焼結用バインダー混合物として)の熱重量示差熱分析は、N雰囲気中、昇温速度10℃/分で500℃まで熱重量示差熱分析(TG/DTA)を差動型高温熱天秤(理学電機(株)製「TG8120」)で行い、500℃での熱分解残渣率100×(500℃での残渣重量)/(測定前試料重量)を求めた。
【0136】
ペースト組成物のレオロジー測定
Physica社のrheometerMCR301を用いてコーンプレート法(25mmΦ,1°コーンを使用,25℃)で0.1s−1,100s−1での粘度を測定した。また、TI値(Thixotropy Index,0.1と100s−1での粘度の比)を算出した。測定は、ペースト組成物調製直後および1週間後の2回行い、1週間後の粘度変化率100×{(1週間後の粘度)−(調製直後の粘度)}/(調製直後の粘度)を算出した。
【表2】

【0137】
表2に示したように、本発明のペースト組成物を用いた実施例31〜47では、良好なレオロジー特性を有し、曳糸性が小さくて良好であった。また、実施例31〜47では、優れた印刷特性を実現し、所望とする良好な印刷形状を形成することが出来た。また、実施例31〜47は、粘度経時安定性に優れている為、長期保存が可能であった。特に、本発明のバインダー組成および分子量の(メタ)アクリル酸エステル共重合体にヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルもしくはポリアルキレンオキサイド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる極性官能基含有(メタ)アクリル酸エステルが共重合されている実施例31〜42では、トータル的に優れた結果となった。
【0138】
更には、用いたバインダーのTgに合わせて、適切に温度条件を定めて加圧平坦化したため、ペースト層のみ選択的に塑性変形させることで平坦化を行うことが出来た。即ち、ペースト層の膜厚tを、それに接するセラミックグリーンシートの厚みTに対して、t≦0.7Tを満たしたため、段差の無い内部配線を有するセラミック多層配線部品を製造できた。
【0139】
それに対し、比較例31では、Tg[h]≧100℃であるH成分を使用したがΔTg<50℃であるため、ペーストが固化して流動性に乏しく、印刷不可であった。比較例32〜35ではTg[h]<100℃であるH成分を使用し、ΔTgが50℃前後になるようにL成分を替えて検討したが、何れも得られたペースト粘度およびチキソ性が低く、印刷した配線に滲みが見られる等、良好な印刷形状を得ることが出来なかった。また、比較例34では、ペーストに使用した(メタ)アクリル酸エステル共重合体のTgが低いため(−32℃)粘着性が強く、曳糸性の悪化が顕著に見られた。また、印刷後の平坦化工程を加温無の室温条件(20℃)で実施したが、それでも(Tg+30±5)℃よりかなり高い温度条件であったため、ペースト層の過剰変形が発生した。
【0140】
一方、比較例36では極性官能基である2HEMAを導入したため、若干、ペースト粘度およびチキソ性が改善したが、曳糸性は悪化した。
【0141】
比較例37では、分子量を下げて、2HEMAを導入すると共にTg[h]≧100℃であるH成分を使用したがΔTg<50℃であるため、ペーストの弾性的性質が強く、スクリーン印刷時の版抜け性および曳糸性が悪かった。また、1週間後にはペーストがやや増粘していた。さらに、ペースト層の平坦化温度を110℃で行ったため、セラミックグリーンシートに用いたバインダーのTg(80℃)に対して、+30℃になったためか、平坦化後のセラミックグリーンシートがやや伸びて寸法精度が低下する不具合が一部で確認された。
【0142】
比較例38では、ヒドロキシル基含有メタクリレートの比率を上げたが、ペースト組成物を作製した直後から増粘が進み、数日後にはゲル固化して印刷が不可であった。この結果から、本発明から外れる組成比、即ち、H成分とL成分が共重合されている(メタ)アクリル酸エステル共重合体Pに対し、(H+L)/P<0.8で共重合させた場合、換言すれば、極性官能基含有(メタ)アクリル酸エステルが20mol%を超える割合で共重合されたものでは、バインダー分子間相互作用が過剰であると考えられる。
【0143】
一方、比較例39と40では、実施例34と同じペースト組成物を用いて印刷した後の、加温加圧平坦化工程における温度条件のみを変えたものである。比較例39では、(Tg+30±5)℃より高い温度条件に設定したため、ペースト層の過剰変形が発生した。比較例40では逆に、(Tg+30±5)℃より低い温度条件に設定したために、ペースト層の塑性変形性が乏しく、ペースト層の膜厚tが、それに接するセラミックグリーンシートの厚みTに対して、t>0.7Tとなったため、内部配線の厚みによる高低差によって生じる空隙を、積層時においてセラミックグリーンシートの塑性変形のみで解消することが出来ず、焼成後の製品に層間密着不良が発生した。
【0144】
更に、比較例41,42では実施例43,44と組成,分子量とも同等のホモポリマーを混合したが、何れも粘度経時安定性が低く、ペーストの増粘傾向が見られた。
【0145】
最後にBMAホモポリマーに水添ヒマシ油系増粘剤を添加した比較例43では、得られたペースト組成物は、ペーストを作製した直後は適度なレオロジー特性を有したが、粘度経時安定性が低く、一週間後には大きく増粘した。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明のペースト組成物を用いて作製したセラミック構造体の作製方法を説明するための図である。
【図2】本発明のペースト組成物を用いて作製したセラミック構造体の作製方法を説明するための図である。
【図3】本発明のペースト組成物を用いて作製したセラミック構造体の作製方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0147】
1,2,3:セラミックグリーンシート
4:ビア導体
5,5’:ペースト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機粒子と、
(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度Tg[h]がTg[h]≧100℃であるH成分と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度がTg[l]であるL成分とを、H成分およびL成分の合計モル分率が80mol%以上となるように共重合させた共重合体から成り、(Tg[h]−Tg[l])≧50を満たすバインダーと、
を具備することを特徴とするペースト組成物。
【請求項2】
前記バインダーは、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルおよびポリアルキレンオキサイド鎖含有(メタ)アクリル酸エステルから選ばれる少なくとも1種以上の極性官能基含有(メタ)アクリル酸エステルが共重合されていることを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
【請求項3】
前記バインダーの重量平均分子量は、2万〜10万であることを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
【請求項4】
前記バインダー100重量部に対して、更に、ニトロセルロースを0.1〜10重量部添加したことを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
【請求項5】
前記バインダーは、窒素雰囲気中、500℃において99重量%以上が熱分解することを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
【請求項6】
前記無機粒子は、シリカを含むガラス粒子を含有することを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
【請求項7】
前記無機粒子が導電性粒子であることを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
【請求項8】
前記無機粒子が誘電体粒子であることを特徴とする請求項1に記載のペースト組成物。
【請求項9】
焼成によりセラミック焼結体となる未焼成セラミック体と、該未焼成セラミック体に被着されたペースト組成物とを備えたセラミック成形体であって、
前記ペースト組成物は、
無機粒子と、
(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度Tg[h]がTg[h]≧100℃であるH成分と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度がTg[l]であるL成分とを、H成分およびL成分の合計モル分率が80mol%以上となるように共重合させた共重合体から成り、(Tg[h]−Tg[l])≧50を満たすバインダーと、
を具備することを特徴とするセラミック成形体。
【請求項10】
前記未焼成セラミック体は、少なくとも前記ペースト組成物が被着された部位に、前記ガラス粒子と同じ組成のガラス粒子を含むことを特徴とする請求項9記載のセラミック成形体。
【請求項11】
無機粒子と、
(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度Tg[h]がTg[h]≧100℃であるH成分と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度がTg[l]であるL成分とを、H成分およびL成分の合計モル分率が80mol%以上となるように共重合させた共重合体から成り、(Tg[h]−Tg[l])≧50を満たすバインダーと、
を具備するペースト組成物を準備する工程と、
焼成によりセラミック焼結体となる未焼成セラミック体に、前記ペースト組成物を印刷してセラミック成形体を形成する工程と、
該セラミック成形体を焼成する工程と、
を具備することを特徴とするセラミック構造体の製造方法
【請求項12】
無機粒子と、
(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度Tg[h]がTg[h]≧100℃であるH成分と、(メタ)アクリル酸エステルから成るとともにホモポリマーのガラス転移温度がTg[l]であるL成分とを、H成分およびL成分の合計モル分率が80mol%以上となるように共重合させた共重合体から成り、(Tg[h]−Tg[l])≧50を満たすバインダーと、
を具備するペースト組成物を準備する工程と、
第1のセラミックグリーンシートに、前記ペースト組成物を印刷してペースト層を形成する工程と、
該ペースト層を前記共重合体のガラス転移温度Tgに対して(Tg+30±5)℃の温度範囲内で加圧して塑性変形させて表面を平坦化する工程と、
前記第1のセラミックグリーンシートに第2のセラミックグリーンシートを前記ペースト層が前記第1および第2のセラミックグリーンシート間に挟まれるように積層する工程と、
を具備することを特徴とするセラミック構造体の製造方法。
【請求項13】
前記ペースト層は、塑性変形させて表面を平坦化した後の膜厚tが、それに接する前記第1のセラミックグリーンシートの厚みTに対して、t≦0.7Tを満たすことを特徴とする請求項12に記載のセラミック構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−202041(P2008−202041A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14963(P2008−14963)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】