説明

ホイール式作業機械の油圧駆動装置

【課題】走行中の作業機械が走行以外の動作を行うことに伴う走行の飛び出し現象を軽減または防止することができるホイール式作業機械の油圧駆動装置を提供すること。
【解決手段】走行用方向制御弁22、バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24、第1アーム用方向制御弁25は第1センタバイパスライン21上に設けられて第1油圧ポンプ20にパラレル接続されている。走行用方向制御弁22は別の方向制御弁23〜25よりも上流に配置されている。コントローラ71は走行用方向制御弁22が操作された状態であるか否かを走行パイロット圧センサ73A,73Bの検出値に基づき判定し、走行用方向制御弁22が操作された状態であると判定した場合に比例電磁弁72を制御して制御弁60〜65にパイロット圧を与え、制御弁60〜65に方向切換弁23〜25の操作量を制限させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホイール式作業機械の走行の駆動源である油圧モータと、作業機械の走行以外の動作の駆動源である油圧シリンダとに対して同じ油圧ポンプから吐出された吐出油を供給するホイール式作業機械の油圧駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイール式作業機械としてはホイール式油圧ショベルがある。このホイール式油圧ショベルは、4輪のホイール式走行体と、この走行体上に旋回可能に設けられた旋回体と、この旋回体の前部の略中央に設けられ、ブーム、アームおよびバケットを有する作業装置とを備えている。
【0003】
従来、ホイール式油圧ショベルの油圧駆動装置は、ホイール式作業機械の走行の駆動源である油圧モータ、すなわち走行体を駆動するための油圧モータである走行モータと、ホイール式油圧ショベルに走行以外の動作を行わせるための複数の油圧アクチュエータ、すなわち旋回モータ、ブームシリンダ、アームシリンダおよびバケットシリンダとを有する。旋回モータは、旋回体を駆動するための油圧モータである。ブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダはそれぞれ作業装置のブーム、アーム、バケットを駆動するための油圧シリンダである。
【0004】
油圧駆動装置はさらに、第1,第2油圧ポンプを有する。第1油圧ポンプは走行モータ、バケットシリンダ、ブームシリンダおよびアームシリンダに供給される圧油を吐出するものである。第2油圧ポンプは旋回モータ、アームシリンダ、ブームシリンダおよび走行モータに供給される圧油を吐出するものである。
【0005】
第1油圧ポンプと、走行モータ、バケットシリンダ、ブームシリンダおよびアームシリンダのそれぞれの間には、第1走行用方向制御弁、バケット用方向制御弁、第1ブーム用方向制御弁および第1アーム用方向制御弁が第1油圧ポンプに対しパラレル接続されて設けられている。第1油圧ポンプと作動油タンクとは第1センタバイパスラインで接続されている。この第1センタバイパスライン上に、第1走行用方向制御弁、バケット用方向制御弁、第1ブーム用方向制御弁および第1アーム用方向制御弁がこの順番で上流側から配置されている。これら第1走行用方向制御弁、バケット用方向制御弁、第1ブーム用方向制御弁および第1アーム用方向制御弁のそれぞれの弁位置はすべてオープンセンタ形の弁であり、ノーマル位置が中立位置に設定されていてこの中立位置のときに第1センタバイパスラインを開放し、中立位置から第1センタバイパスラインを遮断する第1,第2切替位置方向に選択的に切替可能である。第1走行用方向制御弁、バケット用方向制御弁、第1ブーム用方向制御弁および第1アーム用方向制御弁のそれぞれの弁位置を中立位置から第1切替位置方向または第2切替位置方向に操作することによって、第1油圧ポンプから走行モータ、バケットシリンダ、ブームシリンダおよびアームシリンダのそれぞれに供給される圧油の流れの方向と流量とが制御される。
【0006】
第2油圧ポンプと、旋回モータ、アームシリンダ、ブームシリンダおよび走行モータのそれぞれの間には、旋回用方向制御弁、第2アーム用方向制御弁、第2ブーム用方向制御弁および第2走行用方向制御弁が第2油圧ポンプに対しパラレル接続されて設けられている。第2油圧ポンプと作動油タンクとは第2センタバイパスラインで接続されている。この第2センタバイパスライン上に、旋回用方向制御弁、第2アーム用方向制御弁、第2ブーム用方向制御弁および第2走行用方向制御弁がこの順番で上流側から配置されている。旋回用方向制御弁、第2アーム用方向制御弁、第2ブーム用方向制御弁および第2走行用方向制御弁のそれぞれの弁位置はすべて、オープンセンタ形弁であり、ノーマル位置が中立位置に設定されていて、この中立位置のときに第2センタバイパスラインを開放し、中立位置から第2センタバイパスラインを遮断する第1,第2切替位置方向に選択的に切替可能である。旋回用方向制御弁、第2アーム用方向制御弁、第2ブーム用方向制御弁および第2走行用方向制御弁のそれぞれの弁位置を中立位置から第1切替位置方向または第2切替位置方向に操作することによって、第2油圧ポンプから旋回モータ、アームシリンダ、ブームシリンダおよび走行モータのそれぞれに供給される圧油の流れの方向と流量とが制御される。
【0007】
ここで説明した種類の従来の油圧駆動装置としては、例えば特許文献1に開示されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−130003号公報(段落0008,段落0016、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ホイール式油圧ショベルにおいては、走行モータの負荷圧は、作業のための動作の駆動源である油圧アクチュエータ、特にブームシリンダの負荷圧よりも低い。このため、前述の従来の油圧駆動装置のように走行用方向制御弁とブーム用方向制御弁とがセンタバイパスライン上に設けられて油圧ポンプに対しパラレル接続されたものにおいては、走行負荷が比較的低い微速または低速走行中にブーム上げが行われた場合に、油圧ポンプの吐出圧が高負荷圧側のブームシリンダよりも低負荷圧側の走行モータに作用する。この結果、走行用方向制御弁の弁位置とは関係なく、走行モータに流入する圧油が急増し、すなわち走行速度が急上昇し、ホイール式油圧ショベルが飛び出すように走行する現象(以下「飛び出し現象」という)が起こる。この飛び出し現象は、オペレータにとって不快な現象である。
【0010】
本発明は前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、走行中の作業機械が走行以外の動作を行うことに伴う走行の飛び出し現象を軽減または防止することができるホイール式作業機械の油圧駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するために本発明は次のように構成されている。
【0012】
〔1〕 本発明に係るホイール式作業機械の油圧駆動装置は、ホイール式の走行体を駆動するための走行モータと、作業機械に走行以外の動作を行わせるための作業アクチュエータと、これら走行モータと作業アクチュエータとの両方に供給される圧油を吐出する油圧ポンプと、この油圧ポンプと前記走行モータの間に介在している走行用方向制御弁と、前記油圧ポンプと前記作業アクチュエータの間に介在している作業用方向制御弁と、前記油圧ポンプの吐出油を作動油タンクに導くセンタバイパスラインとを有し、前記走行用方向制御弁は前記センタバイパスラインを開放する中立位置から、前記センタバイパスラインを遮断する第1,第2切替位置方向に選択的に弁位置を切り替えられることによって前記油圧ポンプから前記走行モータに供給される圧油の流れの方向および流量を制御する弁であり、作業用方向制御弁は前記センタバイパスラインを開放する中立位置から、前記センタバイパスラインを遮断する第1,第2切替位置方向に選択的に弁位置を切り替えられることによって前記油圧ポンプから前記作業アクチュエータに供給される圧油の流れの方向および流量を制御する弁であり、前記走行用方向制御弁は前記作業用方向制御弁よりも上流に設けられているホイール式作業機械の油圧駆動装置において、前記作業用方向制御弁の操作量を制限する作業制限手段と、この作業制限手段を制御する制御手段とをさらに有し、前記制御手段は、前記走行用方向制御弁が操作された状態であるか否かを検知する検知手段を有し、前記走行用方向制御弁が操作されていないことを検知した場合に、前記作業制限手段を作動させず、前記走行用方向制御弁が操作されたことを検知した場合に、前記作業制限手段を作動させることを特徴とする。
【0013】
この「〔1〕」に記載のホイール式作業機械の油圧駆動装置において、制御手段は走行用方向制御弁が操作されていないことを検知手段により検知した場合に、作業制限手段を作動させない。この場合、作業用方向制御弁の操作量は制限されないので、作業機械の走行以外の動作は制限されない。一方、制御手段は走行用方向制御弁が操作されたことを検知手段により検知した場合に、作業制限手段を作動させて作業用方向制御弁の操作量を制限する。これにより、作業アクチュエータの負荷圧は、走行中は、走行中でない場合よりも低く抑えられる。したがって、比較的走行負荷の低い微速、低速走行中の作業機械が、さらに走行以外の他の動作を行っても走行モータへの圧油の流量の増加を抑えることができる。つまり、走行中の作業機械が走行以外の動作を行うことに伴う走行の飛び出し現象を軽減または防止することができる。
【0014】
〔2〕 本発明に係るホイール式作業機械の油圧駆動装置は、「〔1〕」に記載のホイール式作業機械の油圧駆動装置において、前記油圧ポンプとしての第1油圧ポンプと、前記センタバイパスラインとしての第1センタバイパスラインとに加えて、前記作業アクチュエータに供給される圧油を吐出する第2油圧ポンプと、この第2油圧ポンプの吐出油を前記作動油タンクに導く第2センタバイパスラインとを有し、前記作業用方向制御弁は前記第1,第2センタバイパスライン上のそれぞれに互いに同期して作動するよう対を成して設けられており、前記作業制限手段は前記第1,第2センタバイパスラインのうち前記第1センタバイパスライン上の作業用方向制御弁のみに対して設けられていることを特徴とする。
【0015】
この「〔2〕」に記載のホイール式作業機械の油圧駆動装置において、走行用方向制御弁は第1,第2センタバイパスラインのうち第1センタバイパスライン上のみに設けられており、作業用方向制御弁は第1,第2センタバイパスライン上のそれぞれに互いに同期して作動するよう対を成して設けられており、作業制限手段は第1,第2センタバイパスラインのうち第1センタバイパスライン上の作業用方向制御弁のみに対して設けられている。つまり、作業機械の走行中、第1センタバイパスライン上の作業用方向制御弁の操作量は作業制限手段により制限されるため、第1油圧ポンプから作業アクチュエータに供給される圧油の流量は制限されるが、第2センタバイパスライン上の作業用方向制御弁の操作量は制限されないので、第2油圧ポンプから作業アクチュエータに供給される圧油は制限されない。これにより、作業機械の走行中に作業アクチュエータに供給される圧油の流量を確保しやすくすることができる。したがって、走行中の作業機械が走行以外の動作を行うことに伴う走行の飛び出し現象を軽減または防止することができるとともに、走行中の作業機械の走行以外の動作が鈍くなることを抑えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、前述したように、走行中の作業機械が走行以外の動作を行うことに伴う走行の飛び出し現象を軽減または防止することができる。これにより、ホイール式作業機械のオペレータに対して快適な乗り心地を提供することに貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置が備えられたホイール式作業機械であるホイール式油圧ショベルの左側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る油圧駆動装置を示す油圧回路図である。
【図3】図2に示したコントローラの機能ブロック図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る油圧駆動装置を示す油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態〕
第1実施形態について図1〜図3を用いて説明する。
【0019】
図1に示すホイール式油圧ショベル1は、4輪のホイール式の走行体2を備えている。この走行体2上には、運転室3a等を有する旋回体3が旋回可能に設けられている。運転室3aの右側方の位置であって旋回体3の前部の略中央には、ブーム4a、アーム4bおよびバケット4cを有する作業装置4が設けられている。
【0020】
ホイール式油圧ショベル1は、図2に示す油圧駆動装置10を備えている。この油圧駆動装置10は、走行体2を駆動するための走行モータ11(油圧モータ)と、ホイール式油圧ショベル1に走行以外の動作を行わせるための複数の作業アクチュエータ(油圧アクチュエータ)、すなわち旋回モータ12、ブームシリンダ13A,13B、アームシリンダ14およびバケットシリンダ15とを有する。旋回モータ12は、旋回体3を駆動するための油圧モータである。ブームシリンダ13A,13B、アームシリンダ14、バケットシリンダ15はそれぞれ作業装置4のブーム4a、アーム4b、バケット4cを駆動するための油圧シリンダである。
【0021】
油圧駆動装置10はさらに、不図示のエンジンにより駆動される第1油圧ポンプ20および第2油圧ポンプ30を有する。第1油圧ポンプ20は走行モータ11、バケットシリンダ15、ブームシリンダ13A,13Bおよびアームシリンダ14に供給される圧油を吐出するものである。第2油圧ポンプ30は旋回モータ12、アームシリンダ14、ブームシリンダ13A,13Bに供給される圧油を吐出するものである。走行モータ11には第2油圧ポンプ30の吐出油が供給されない。
【0022】
第1油圧ポンプ20と、走行モータ11、バケットシリンダ15、ブームシリンダ13A,13Bおよびアームシリンダ14のそれぞれとの間には、走行用方向制御弁22、バケット用方向制御弁23(作業用方向制御弁)、第1ブーム用方向制御弁24(作業用方向制御弁)および第1アーム用方向制御弁25(作業用方向制御弁)が介在している。これらの方向切換弁22〜25は、第1油圧ポンプ20に対しパラレル接続されて設けられている。
【0023】
第1油圧ポンプ20と作動油タンク26とは第1センタバイパスライン21で接続されている。この第1センタバイパスライン21上に、走行用方向制御弁22、バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24および第1アーム用方向制御弁25がこの順番で上流側から配置されている。
【0024】
走行用方向制御弁22、バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24および第1アーム用方向制御弁25はすべてスプリングリターン式でオープンセンタ形の3位置弁であり、弁位置のノーマル位置は中立位置に設定されていて、この中立位置のときに第1センタバイパスライン21を開放し、中立位置から第1,第2切替位置方向に選択的に切替可能である。走行用方向制御弁22、バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24および第1アーム用方向制御弁25のそれぞれの弁位置を中立位置から第1切替位置方向または第2切替位置方向に操作することによって、第1油圧ポンプ20から走行モータ11、バケットシリンダ15、ブームシリンダ13A,13Bおよびアームシリンダ14のそれぞれに供給される圧油の流れの方向と流量とが制御される。
【0025】
図2中のa1,a2およびa3がそれぞれ走行用方向制御弁22の中立位置、第1切替位置および第2切替位置であり、b1,b2およびb3がそれぞれバケット用方向制御弁23の中立位置、第1切替位置および第2切替位置であり、c1,c2およびc3がそれぞれ第1ブーム用方向制御弁24の中立位置、第1切替位置および第2切替位置であり、d1,d2およびd3がそれぞれ第1アーム用方向制御弁25の中立位置、第1切替位置および第2切替位置である。
【0026】
第2油圧ポンプ30と、旋回モータ12、アームシリンダ14およびブームシリンダ13A,13Bのそれぞれとの間には、旋回用方向制御弁32(作業用方向制御弁)、第2アーム用方向制御弁33(作業用方向制御弁)および第2ブーム用方向制御弁34(作業用方向制御弁)が介在している。これらの方向切換弁32〜34は、第2油圧ポンプに対しパラレル接続されて設けられている。
【0027】
第2油圧ポンプ30と作動油タンク26とは第2センタバイパスライン31で接続されている。この第2センタバイパスライン31上に、旋回用方向制御弁32、第2アーム用方向制御弁33および第2ブーム用方向制御弁34がこの順番で上流側から配置されている。
【0028】
旋回用方向制御弁32、第2アーム用方向制御弁33および第2ブーム用方向制御弁34はすべてスプリングリターン式でオープンセンタ形の3位置弁であり、弁位置のノーマル位置が中立位置に設定されていて、この中立位置のときに第2センタバイパスライン31を開放し、中立位置から第1,第2切替位置に選択的に切替可能である。旋回用方向制御弁32、第2アーム用方向制御弁33および第2ブーム用方向制御弁34のそれぞれの弁位置を中立位置から第1切替位置方向または第2切替位置方向に操作することによって、第2油圧ポンプ30から旋回モータ12、アームシリンダ14およびブームシリンダ13A,13Bのそれぞれに供給される圧油の流れの方向と流量とが制御される。
【0029】
図2中のe1,e2およびe3がそれぞれ旋回用方向制御弁32の中立位置、第1切替位置および第2切替位置であり、f1,f2およびf3がそれぞれ第2アーム用方向制御弁33の中立位置、第1切替位置および第2切替位置であり、g1,g2およびg3がそれぞれ第2ブーム用方向制御弁34の中立位置、第1切替位置および第2切替位置である。
【0030】
なお、ここまでの第1実施形態の説明から分かるように、油圧駆動装置10において、走行用方向制御弁22は第1センタバイパスライン21および第2センタバイパスライン31のうち第1センタバイパスライン21上のみに設けられている。
【0031】
走行用方向制御弁22、バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24、第1アーム用方向制御弁25、旋回用方向制御弁32、第2アーム用方向制御弁33および第2ブーム用方向制御弁34はすべて油圧パイロット式の弁である。これらの方向制御弁22〜25,32〜34はそれぞれ、弁位置を中立位置から第1切替位置に切り替えるパイロット圧を導入する第1油圧パイロット部と、弁位置を中立位置から第2切替位置に切り替えるパイロット圧を導入する第2油圧パイロット部を有する。図2中の22a,22bがそれぞれ走行用方向制御弁22の第1油圧パイロット部、第2油圧パイロット部であり、23a,23bがそれぞれバケット用方向制御弁23の第1油圧パイロット部、第2油圧パイロット部であり、24a,24bがそれぞれ第1ブーム用方向制御弁24の第1油圧パイロット部、第2油圧パイロット部であり、25a,25bがそれぞれ第1アーム用方向制御弁25の第1油圧パイロット部、第2油圧パイロット部であり、32a,32bがそれぞれ旋回用方向制御弁32の第1油圧パイロット部、第2油圧パイロット部であり、33a,33bがそれぞれ第2アーム用方向制御弁33の第1油圧パイロット部、第2油圧パイロット部であり、34a,34bがそれぞれ第2ブーム用方向制御弁34の第1油圧パイロット部、第2油圧パイロット部である。
【0032】
走行用方向制御弁22の弁位置が第1切替位置a2方向に切り替わると、第1油圧ポンプ20から走行モータ11に供給される圧油の流れの方向は、走行体2を前進させる方向になる。走行用方向制御弁22の弁位置が第2切替位置a3方向に切り替わると、第1油圧ポンプ20から走行モータ11に供給される圧油の流れの方向は、走行体2を後進させる方向になる。
【0033】
バケット用方向制御弁23の弁位置が第1切替位置b2方向に切り替わると、第1油圧ポンプ20からバケットシリンダ15に供給される圧油の流れの方向はバケットダンプが行われる方向になる。バケット用方向制御弁23の弁位置が第2切替位置b3方向に切り替わると、第1油圧ポンプ20からバケットシリンダ15に供給される圧油の流れの方向はバケットクラウドが行われる方向になる。
【0034】
第1ブーム用方向制御弁24の弁位置が第1切替位置c2方向に切り替わると、第1油圧ポンプ20からブームシリンダ13A,13Bに供給される圧油の流れの方向は、ブーム下げが行われる方向になる。第1ブーム用方向制御弁24の弁位置が第2切替位置c3方向に切り替わると、第1油圧ポンプ20からブームシリンダ13A,13Bに供給される圧油の流れの方向は、ブーム上げが行われる方向になる。
【0035】
第1アーム用方向制御弁25の弁位置が第1切替位置d2方向に切り替わると、第1油圧ポンプ20からアームシリンダ14に供給される圧油の流れの方向は、アームクラウドが行われる方向になる。第1アーム用方向制御弁25の弁位置が第2切替位置d3方向に切り替わると、第1油圧ポンプ20からアームシリンダ14に供給される圧油の流れの方向は、アームダンプが行われる方向になる。
【0036】
旋回用方向制御弁32の弁位置が第1切替位置e2方向に切り替わると、第2油圧ポンプ30から旋回モータ12に供給される圧油の流れの方向は、旋回体3を左旋回させる方向になる。旋回用方向制御弁32の弁位置が第2切替位置e3方向に切り替わると、第2油圧ポンプ30から旋回モータ12に供給される圧油の流れの方向は、旋回体3を右旋回させる方向になる。
【0037】
第2アーム用方向制御弁33の弁位置が第1切替位置f2方向に切り替わると、第2油圧ポンプ30からアームシリンダ14に供給される圧油の流れの方向は、アームクラウドが行われる方向になる。第2アーム用方向制御弁33の弁位置が第2切替位置f3方向に切り替わると、第2油圧ポンプ30からアームシリンダ14に供給される圧油の流れの方向は、アームダンプが行われる方向になる。
【0038】
第2ブーム用方向制御弁34の弁位置が第1切替位置g2方向に切り替わると、第2油圧ポンプ30からブームシリンダ13A,13Bに供給される圧油の流れの方向は、ブーム下げが行われる方向になる。第2ブーム用方向制御弁34の弁位置が第2切替位置g3方向に切り替わると、第2油圧ポンプ30からブームシリンダ13A,13Bに供給される圧油の流れの方向は、ブーム上げが行われる方向になる。
【0039】
前出のエンジンは第1,第2油圧ポンプ30とともに、不図示のパイロットポンプも駆動する。運転室3a内には、走行用方向制御弁22、バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24、第1アーム用方向制御弁25、旋回用方向制御弁32、第2アーム用方向制御弁33および第2ブーム用方向制御弁34のそれぞれに与えるパイロット圧をパイロットポンプの吐出圧から生成する走行ペダル装置40、旋回操作レバー装置41、アーム操作レバー装置42、ブーム操作レバー装置43およびバケット操作レバー装置44が設けられている。
【0040】
走行ペダル装置40は、中立位置からホイール式油圧ショベル1の前後方向に傾倒操作可能なペダル40aと、このペダル40aの中立位置から前方向の傾倒操作量に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁(不図示)と、ペダル40aの中立位置から後方向の傾倒操作量に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁(不図示)とを有する。一方のパイロット弁により生成されたパイロット圧は、パイロットライン50を通じて走行用方向制御弁22の第1油圧パイロット部22aに導入される。他方のパイロット弁により生成されたパイロット圧は、パイロットライン51を通じて走行用方向制御弁22の第2油圧パイロット部22bに導入される。
【0041】
旋回操作レバー装置41とアーム操作レバー装置42は、中立位置からホイール式油圧ショベル1の前後左右方向に傾倒操作可能な旋回・アーム操作レバー41aを共有して、一体化されたものであるが、図2中では分けて描いてある。
【0042】
旋回操作レバー装置41は、旋回・アーム操作レバー41aの中立位置から前方向の傾倒操作量に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁と、旋回・アーム操作レバー41aの中立位置から後方向への傾倒操作量に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁とをさらに有する。一方のパイロット弁により生成されたパイロット圧は、パイロットライン58を通じて旋回用方向制御弁32の第1油圧パイロット部32aに導入される。他方のパイロット弁により生成されたパイロット圧は、パイロットライン59を通じて旋回用方向制御弁32の第2油圧パイロット部32bに導入される。
【0043】
アーム操作レバー装置42は、旋回・アーム操作レバー41aの中立位置から左方向の傾倒操作量に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁と、旋回・アーム操作レバー41aの中立位置から右方向への傾倒操作量に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁とをさらに有する。一方のパイロット弁により生成されたパイロット圧は、パイロットライン56A,56Bを通じて第1アーム用方向制御弁25の第1油圧パイロット部25aに導入されるとともに、パイロットライン56A,56Cを通じて第2アーム用方向制御弁33の第1油圧パイロット部33aに導入される。他方のパイロット弁により生成されたパイロット圧は、パイロットライン57A,57Bを通じて第1アーム用方向制御弁25の第2油圧パイロット部25bに導入されるとともに、パイロットライン57A,57Bを通じて第2アーム用方向制御弁33の第2油圧パイロット部33bに導入される。アーム操作レバー装置42により生成されたパイロット圧が第1アーム用方向制御弁25および第2アーム用方向制御弁33のそれぞれに対し、パイロットライン56Aから分岐したパイロットライン56B,56Cのそれぞれ、または、パイロットライン57Aから分岐したパイロットライン57B,57Cのそれぞれを通じて与えられることによって、第1アーム用方向制御弁25と第2アーム用方向制御弁33は互いに同期して作動するようになっている。
【0044】
ブーム操作レバー装置43とバケット操作レバー装置44は、中立位置からホイール式油圧ショベル1の前後左右方向に傾倒操作可能なブーム・バケット操作レバー43aを共有して、一体化されたものであるが、図2中では分けて描いてある。
【0045】
ブーム操作レバー装置43は、ブーム・バケット操作レバー43aの中立位置から前方向の傾倒操作量に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁と、ブーム・バケット操作レバー43aの中立位置から後方向への傾倒操作量に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁とをさらに有する。一方のパイロット弁により生成されたパイロット圧は、パイロットライン54A,54Bを通じて第1ブーム用方向制御弁24の第1油圧パイロット部24aに導入されるとともに、パイロットライン54A,54Cを通じて第2ブーム用方向制御弁34の第1油圧パイロット部34aに導入される。他方のパイロット弁により生成されたパイロット圧は、パイロットライン55A,55Bを通じて第1ブーム用方向制御弁24の第2油圧パイロット部24bに導入されるとともに、パイロットライン55A,55Cを通じて第2ブーム用方向制御弁34の第2油圧パイロット部34bに導入される。ブーム操作レバー装置43により生成されたパイロット圧が第1ブーム用方向制御弁24と第2ブーム用方向制御弁34のそれぞれに対し、パイロットライン54Aから分岐したパイロットライン54B,54Cのそれぞれ、または、パイロットライン54Aから分岐したパイロットライン54B,54Cのそれぞれを通じて与えられることによって、第1ブーム用方向制御弁24と第2ブーム用方向制御弁34は互いに同期して作動するようになっている。
【0046】
バケット操作レバー装置44は、ブーム・バケット操作レバー43aの中立位置から左方向の傾倒操作量に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁と、ブーム・バケット操作レバー43aの中立位置から右方向への傾倒操作量に応じてパイロット圧を生成するパイロット弁とをさらに有する。一方のパイロット弁により生成されたパイロット圧は、パイロットライン52を通じてバケット用方向制御弁23の第1油圧パイロット部23aに導入される。他方のパイロット弁により生成されたパイロット圧は、パイロットライン53を通じてバケット用方向制御弁23の第2油圧パイロット部23bに導入される。
【0047】
第1センタバイパスライン21および第2センタバイパスライン31のうち第1センタバイパスライン21上の作業用方向制御弁、すなわち、第1バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24および第1アーム用方向制御弁25のみに対しては、一対の制御弁60,61、一対の制御弁62,63、一対の制御弁64,65がそれぞれ設けられている。制御弁60,61は、バケット用方向制御弁23にパイロット圧を導くパイロットライン52,53上にそれぞれ設けられ、バケット用方向制御弁23の操作量を制限する作業制限手段である。制御弁62,63は、第1ブーム用方向制御弁24にパイロット圧を導くパイロットライン54B,55B上にそれぞれ設けられ、第1ブーム用方向制御弁24の操作量を制限する作業制限手段である。制御弁64,65は、第1アーム用方向制御弁25にパイロット圧を導くパイロットライン56B,57B上にそれぞれ設けられ、第1アーム用方向制御弁25の操作量を制限する作業制限手段である。
【0048】
制御弁60〜65はいずれも、油圧パイロット式でスプリングリターン式の弁であり、対応するパイロットラインを全開する開位置が初期位置に設定され、与えられたパイロット圧の高さに応じてそのパイロットラインの開度を開位置と閉位置との間の範囲で変化させる。図2中のh1,h2はそれぞれ制御弁60の開位置と閉位置であり、i1,i2はそれぞれ制御弁61の開位置と閉位置であり、j1,j2はそれぞれ制御弁62の開位置と閉位置であり、k1,k2はそれぞれ制御弁63の開位置と閉位置であり、l1,l2はそれぞれ制御弁64の開位置と閉位置であり、m1,m2はそれぞれ制御弁65の開位置と閉位置である。
【0049】
それらの制御弁60〜65を制御する制御手段70は、コントローラ71と、このコントローラ71により制御されて前出のパイロットポンプの吐出圧からパイロット圧を生成する比例電磁弁72と、この比例電磁弁72により生成されたパイロット圧を制御弁60〜65のすべてに導く管路である作業制限用パイロットライン74と、走行ペダル装置40から導出されたパイロットライン50の圧力を検出し、検出された圧力に相応する検出信号(電気信号)をコントローラ71に出力する走行パイロット圧センサ73Aと、走行ペダル装置40から導出されたパイロットライン51の圧力を検出し、検出された圧力に相応する検出信号(電気信号)をコントローラ71に出力する走行パイロット圧センサ73Bとを有する。
【0050】
作業制限用パイロットライン74は、比例電磁弁72の出口から導出された幹管路74aと、この幹管路74aから延びて制御弁60〜65のそれぞれの油圧パイロット部60a〜65aに接続された枝管路74b〜74dとを有する。
【0051】
コントローラ71は、図示してないが、CPU(Central Processing Unit)と、予め定められた制御プログラムおよびデータを記憶したROM(Read Only Memory)と、生成された処理情報の一時記憶及び記憶した情報の削除を行うRAM(Random Access Memory)等を備え、比例電磁弁72の制御に関する処理を行うものである。
【0052】
このコントローラ71は、ROMに記憶された制御プログラムおよびデータにより設定された機能の構成としては、図3に示すように、走行パイロット圧センサ73A,73Bからの検出信号に示された検出圧力が、走行用方向制御弁22を作動させる最低圧力以上かどうかを、すなわち、走行用方向制御弁22が操作された状態であるか否かを判定する走行パイロット圧判定手段71aを有する。走行パイロット圧センサ73A,73Bと走行パイロット圧判定手段71aは、走行用方向制御弁22が操作された状態であるか否かを検知する検知手段を構成している。
【0053】
コントローラ71はさらに、走行パイロット圧判定手段71aにより検出圧力が最低圧力以上と判定された場合に、予め設定された電力を比例電磁弁72のソレノイド部72aに供給する弁制御手段71bを有する。ソレノイド部72aに与えられる電力は、比例電磁弁72から制御弁60〜65に、予め設定されたパイロット圧が与えられるよう設定されている。そのパイロット圧により作動した制御弁60〜65は、パイロットライン52,53,54B,55B,56B,57Bのそれぞれを遮断するのではなく、開度を小さくするよう作動する。
【0054】
このよう構成された第1実施形態に係る油圧駆動装置10は次のように動作する。
【0055】
走行ペダル装置40は、ペダル40aが中立位置にある状態ではパイロット圧を生成しない。このとき、コントローラ71の走行パイロット圧判定手段71aは、パイロット圧が最低圧力よりも小さい、すなわち走行用方向制御弁22が操作された状態ではない、と判定する。この場合、コントローラ71の弁制御手段71bは比例電磁弁72に電力を供給せず、比例電磁弁72はパイロット圧を生成しない状態に保持される。
【0056】
比例電磁弁72から制御弁60〜65にパイロット圧が与えられなければ、制御弁60〜65は作動せず、パイロットライン52,53,54B,55B,56B,57Bは全開した状態に保持される。この状態では、バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24および第1アーム用方向制御弁25のそれぞれの操作量はすべて制限されていないので、ホイール式油圧ショベル1の走行以外の動作は制限されない。
【0057】
一方、走行ペダル装置40は、ペダル40aが中立位置から前方向または後方向に操作されると、パイロット圧を生成する。そのパイロット圧は走行パイロット圧センサ73Aまたは73Bにより検出されて、検出された圧力を示す検出信号がコントローラ71に出力される。このとき、コントローラ71の走行パイロット圧判定手段71aは、パイロット圧が最低圧力以上である、すなわち走行用方向制御弁22が操作された状態である、と判定する。この場合、コントローラ71の弁制御手段71bは比例電磁弁72に電力を供給し、これにより比例電磁弁72はパイロット圧を生成する。
【0058】
比例電磁弁72により生成されたパイロット圧力は、作業制限用パイロットライン74を通じて制御弁60〜65に与えられる。これにより、制御弁60〜65が作動し、パイロットライン52,53,54B,55B,56B,57Bの開度が小さくなる。この状態では、バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24および第1アーム用方向制御弁25のそれぞれの操作量はすべて制限される。これにより、バケットシリンダ15、ブームシリンダ13A,13B、アームシリンダ14の負荷圧は、走行中の場合に走行中でない場合よりも低く抑えられる。したがって、走行中のホイール式油圧ショベル1が走行以外の動作を行うこと、すなわちブーム4a、アーム4bおよびバケット4cの少なくとも1つを動作させること、に伴う走行モータ11への圧油の流量の増加が抑えることができる。つまり、走行中のホイール式油圧ショベル1が走行以外の動作を行うことに伴う走行の飛び出し現象を軽減または防止することができる。
【0059】
なお、走行中であっても、第2センタバイパスライン31上の旋回用方向制御弁32、第2アーム用方向制御弁33、第2ブーム用方向制御弁34のそれぞれの操作量はすべて制限されない。したがって、第2油圧ポンプ30から旋回モータ12、アームシリンダ14、ブームシリンダ13A,13Bに供給される圧油は制限されない。
【0060】
第1実施形態に係る油圧駆動装置10よれば次の効果を得られる。
【0061】
油圧駆動装置10においては、制御弁60〜65によりパイロットライン52,53,54B,55B,56B,57Bの開度を小さくすることによって、バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24および第1アーム用方向制御弁25の操作量を制限する。これにより、走行中のホイール式油圧ショベル1が走行以外の動作を行うこと、すなわちブーム4a、アーム4bおよびバケット4cの少なくとも1つを動作させること、に伴う走行の飛び出し現象を軽減できる。したがって、ホイール式油圧ショベルのオペレータに対して快適な乗り心地を提供することに貢献できる。
【0062】
油圧駆動装置10においては、ホイール式油圧ショベル1の走行中、第1センタバイパスライン21上の第1ブーム用方向制御弁24および第1アーム用方向制御弁25の操作量は制御弁60〜65により制限されるため、第1油圧ポンプ20からブームシリンダ13A,13B、アームシリンダ14に供給される圧油の流量は制限されるが、第2センタバイパスライン31上の第2ブーム用方向制御弁34および第2アーム用方向制御弁33のそれぞれの操作量はすべて制限されず、したがって第2油圧ポンプ30からブームシリンダ13A,13Bおよびアームシリンダ14に供給される圧油は制限されない。これにより、ホイール式油圧ショベル1の走行中にブームシリンダ13A,13Bおよびアームシリンダ14に供給される圧油の流量を確保しやすくすることができる。したがって、走行中のホイール式油圧ショベル1がブームおよびアームの少なくとも一方が動作したことに伴う走行の飛び出し現象を軽減することができるとともに、走行中のブーム4aおよびアーム4bの動作が鈍くなることを抑えることができる。
【0063】
なお、前述の第1実施形態に係る油圧駆動装置10においては、制御弁60〜65により開度を小さくしていたが、本発明は開度を小さくするものに限定されるものではなく、遮断するようにしてもよい。遮断することによって、飛び出し現象を完全に防止することができる。この場合でも、ブームシリンダ13A,13Bおよびアームシリンダ14には第2油圧ポンプ30の吐出油が供給されるので、ブーム4aおよびアーム4bは動作可能である。
【0064】
前述の第1実施形態に係る油圧駆動装置10においては、バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24および第1アーム用方向制御弁25のすべてについて、走行中の操作量を制限するように設定されていたが、本発明はそれに限定されるものではなく、特にブームシリンダの負荷圧が走行モータの負荷圧よりも高いので、パイロットライン52,53,54B,55B,56B,57Bのうち、第1ブーム用方向制御弁24にパイロット圧を導くパイロットライン54B,55Bのみ制御弁62,63により遮断して第1ブーム用方向切換弁24のみ操作されない状態にしてもよい。
【0065】
前述の第1実施形態に係る油圧駆動装置10において、制御弁60〜65はスプリングリターン式で油圧パイロット式の弁であり、これらを比例電磁弁72を介して間接的に制御するコントローラ71が設けられていたが、本発明はそれに限定されるものではなく、制御弁60〜65が比例電磁弁であって、これらを直接制御するコントローラが設けられたものであってもよい。
【0066】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る油圧駆動装置80について図4を用いて説明する。
【0067】
第2実施形態に係る油圧駆動装置80は、第1実施形態に係る油圧駆動装置10に備えられた制御弁60〜65および制御手段70の代わりに、開閉弁81〜86および制御手段90を備えている。これら以外の第2実施形態に係る油圧駆動装置80の構成は、第1実施形態に係る油圧駆動装置10と同様なので、その構成の説明を省略する。
【0068】
開閉弁81〜86は、パイロットライン52,53,54B,55B,56B,57B上にそれぞれ設けられ、対応するパイロットラインを全開させる開位置と、遮断する閉位置とに選択的に弁位置が切り替えられる弁である。これらの開閉弁81〜86はいずれもスプリングリターン式で油圧パイロット式の弁であり、それぞれの初期位置はすべて開位置、作動位置は閉位置に設定されている。図4中のn1,n2はそれぞれ開閉弁81の開位置と閉位置であり、o1,o2はそれぞれ開閉弁82の開位置と閉位置であり、p1,p2はそれぞれ開閉弁83の開位置と閉位置であり、q1,q2はそれぞれ開閉弁84の開位置と閉位置であり、r1,r2はそれぞれ開閉弁85の開位置と閉位置であり、s1,s2はそれぞれ開閉弁86の開位置と閉位置である。
【0069】
制御手段90は、走行用方向制御弁22に対するパイロット圧を開閉弁81〜86のそれぞれの油圧パイロット部81a〜86aのすべてに導くことが可能な管路である作業制限用パイロットライン91を有する。この作業制限用パイロットライン91は、走行ペダル装置40から導出されたパイロットライン50,51間に架け渡された導入管路91aと、この導入管路91aから延びた幹管路91bと、この幹管路91bから延びて開閉弁81〜86のそれぞれの油圧パイロット部81a〜86aに接続された枝管路91d〜91fとを有する。
【0070】
制御手段90はさらに、作業制限用パイロットライン91の導入管路91aに設けられたシャトル弁92を有する。このシャトル弁92は、走行用方向制御弁22に対するパイロット圧により作業制限用パイロットライン91の幹管路91bと導入管路91aの接続部91cを開放し、すなわち、パイロットライン50,51を幹管路91bに選択的に連通させ、そのパイロット圧を開閉弁81〜86に導く。
【0071】
シャトル弁92が接続部91cを開放するのに要する圧力は、走行用方向制御弁22を作動させる最低圧力に設定されている。つまり、シャトル弁92は、走行用方向制御弁22が操作された状態であるか否かを検知する検知手段としての機能を含む。
【0072】
このように構成された第2実施形態に係る油圧駆動装置80は次のように動作する。
【0073】
走行ペダル装置40は、ペダル40aが中立位置にある状態ではパイロット圧を生成しない。このとき、シャトル弁92は作動せず、接続部91cは閉じられた状態である。したがって、開閉弁81〜86は作動せず、パイロットライン52,53,54B,55B,56B,57Bが全開した状態に保持される。この状態では、バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24および第1アーム用方向制御弁25のそれぞれの操作量はすべて制限されていないので、ホイール式油圧ショベル1の走行以外の動作は制限されない。
【0074】
一方、走行ペダル装置40は、ペダル40aが中立位置から前方向または後方向に操作されると、パイロット圧を生成する。そのパイロット圧はシャトル弁92を作動させて接続部91cを開放させ、開閉弁81〜86を作動させる。これにより、パイロットライン52,53,54B,55B,56B,57Bは遮断される。この状態では、バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24および第1アーム用方向制御弁25は中立位置に保持されて操作されない状態である。したがって、第1油圧ポンプ20の吐出油は走行モータ11、バケットシリンダ15、ブームシリンダ13A,13Bおよびアームシリンダ14のうち、走行モータ11のみに供給される。ただし第2油圧ポンプ30の吐出油は旋回モータ12、ブームシリンダ13A,13Bおよびアームシリンダ14に供給可能である。つまり、ホイール式油圧ショベル1の走行中に第2油圧ポンプ30からブームシリンダ13A,13Bおよびアームシリンダ14に圧油を供給してブーム4aおよびアーム4bの少なくとも一方を動作させることができるとともに、第1油圧ポンプ20から走行モータ11に供給される圧油の流量が変化しないようにすることができる。したがって、走行中のホイール式油圧ショベル1がブーム4aおよびアーム4bの少なくとも一方を動作させたことに伴う走行の飛び出し現象を完全に防止することができる。
【0075】
第2実施形態に係る油圧駆動装置80によれば次の効果を得られる。
【0076】
油圧駆動装置80においては、開閉弁81〜86によりパイロットライン52,53,54B,55B,56B,57Bを遮断することによって、バケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24および第1アーム用方向制御弁25を中立位置のまま操作されない状態にし、第1油圧ポンプ20の吐出油を走行モータ11のみに供給する。この一方で、第2油圧ポンプ30の吐出油はブームシリンダ13A,13Bおよびアームシリンダ14に供給可能であり、走行中であってもブーム4aおよびアーム4bの少なくとも一方を動作させることができる。これにより、走行中のホイール式油圧ショベル1がブーム4aおよびアーム4bの少なくとも一方を動作させることに伴う走行の飛び出し現象を完全に防止することができる。したがって、ホイール式油圧ショベルのオペレータに対して快適な乗り心地を提供することに貢献できる。
【0077】
油圧駆動装置80においては、シャトル弁92によって、走行用方向制御弁22に対してパイロット圧が与えられた状態であること、すなわち走行用方向制御弁22が操作された状態であることの検知と、開閉弁81〜86の弁位置を開位置に制御することとを並行させることができ、第1センタバイパスライン21上のバケット用方向制御弁23、第1ブーム用方向制御弁24および第1アーム用方向切換弁25の作動を、走行開始時に迅速に禁止することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 ホイール式油圧ショベル
2 走行体
10 油圧駆動装置
11 走行モータ
12 旋回モータ(作業アクチュエータ)
13A,13B ブームシリンダ(作業アクチュエータ)
14 アームシリンダ(作業アクチュエータ)
15 バケットシリンダ(作業アクチュエータ)
20 第1油圧ポンプ
21 第1センタバイパスライン
22 走行用方向制御弁
22a 第1油圧パイロット部
22b 第2油圧パイロット部
23 バケット用方向制御弁(作業用方向制御弁)
23a 第1油圧パイロット部
23b 第2油圧パイロット部
24 第1ブーム用方向制御弁(作業用方向制御弁)
24a 第1油圧パイロット部
24b 第2油圧パイロット部
25 第1アーム用方向制御弁(作業用方向制御弁)
25a 第1油圧パイロット部
25b 第2油圧パイロット部
26 作動油タンク
30 第2油圧ポンプ
31 第2センタバイパスライン
32 旋回用方向制御弁(作業用方向制御弁)
32a 第1油圧パイロット部
32b 第2油圧パイロット部
33 第2アーム用方向制御弁(作業用方向制御弁)
33a 第1油圧パイロット部
33b 第2油圧パイロット部
34 第2ブーム用方向制御弁(作業用方向制御弁)
34a 第1油圧パイロット部
34b 第2油圧パイロット部
50〜53 パイロットライン
54A,54B,54C パイロットライン
55A,55B,55C パイロットライン
56A,56B,56C パイロットライン
57A,57B,57C パイロットライン
58 パイロットライン
59 パイロットライン
60〜65 制御弁
60a〜65a 油圧パイロット部
70 制御手段
71 コントローラ
71a 走行パイロット圧判定手段
71b 弁制御手段
72 比例電磁弁
72a ソレノイド部
73A,73B 走行パイロット圧センサ
74 作業制限用パイロットライン
74a 幹管路
74b〜74d 枝管路

80 油圧駆動装置
81〜86 開閉弁
81a〜86a 油圧パイロット部
90 制御手段
91 作業制限用パイロットライン
91a 導入管路
91b 幹管路
91c 接続部
91d〜91f 枝管路
92 シャトル弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイール式の走行体を駆動するための走行モータと、作業機械に走行以外の動作を行わせるための作業アクチュエータと、これら走行モータと作業アクチュエータとの両方に供給される圧油を吐出する油圧ポンプと、この油圧ポンプと前記走行モータの間に介在している走行用方向制御弁と、前記油圧ポンプと前記作業アクチュエータの間に介在している作業用方向制御弁と、前記油圧ポンプの吐出油を作動油タンクに導くセンタバイパスラインとを有し、
前記走行用方向制御弁は前記センタバイパスラインを開放する中立位置から、前記センタバイパスラインを遮断する第1,第2切替位置方向に選択的に弁位置を切り替えられることによって前記油圧ポンプから前記走行モータに供給される圧油の流れの方向および流量を制御する弁であり、
作業用方向制御弁は前記センタバイパスラインを開放する中立位置から、前記センタバイパスラインを遮断する第1,第2切替位置方向に選択的に弁位置を切り替えられることによって前記油圧ポンプから前記作業アクチュエータに供給される圧油の流れの方向および流量を制御する弁であり、
前記走行用方向制御弁は前記作業用方向制御弁よりも上流に設けられているホイール式作業機械の油圧駆動装置において、
前記作業用方向制御弁の操作量を制限する作業制限手段と、この作業制限手段を制御する制御手段とをさらに有し、
前記制御手段は、前記走行用方向制御弁が操作された状態であるか否かを検知する検知手段を有し、前記走行用方向制御弁が操作されていないことを検知した場合に、前記作業制限手段を作動させず、前記走行用方向制御弁が操作されたことを検知した場合に、前記作業制限手段を作動させる
ことを特徴とするホイール式作業機械の油圧駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載のホイール式作業機械の油圧駆動装置において、
前記油圧ポンプとしての第1油圧ポンプと、前記センタバイパスラインとしての第1センタバイパスラインとに加えて、前記作業アクチュエータに供給される圧油を吐出する第2油圧ポンプと、この第2油圧ポンプの吐出油を前記作動油タンクに導く第2センタバイパスラインとを有し、
前記作業用方向制御弁は前記第1,第2センタバイパスライン上のそれぞれに互いに同期して作動するよう対を成して設けられており、
前記作業制限手段は前記第1,第2センタバイパスラインのうち前記第1センタバイパスライン上の作業用方向制御弁のみに対して設けられている
ことを特徴とするホイール式作業機械の油圧駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−247282(P2011−247282A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117664(P2010−117664)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】