説明

ホスファゼン骨格を有する酸無水物およびそれを用いた難燃性樹脂組成物ならびに難燃性樹脂成形品。

【課題】 混合した樹脂組成物からブリードせず、耐熱性が高く樹脂への残存性を有し、難燃性の高いホスファゼン化合物(ホスファゼン骨格を有する酸無水物)およびそれを用いた難燃性樹脂組成物ならびに難燃性樹脂成形品を提供することである。
【解決手段】
環状ホスファゼンとエステル結合により芳香族酸無水物と結合した酸無水物を提供するものである。また、酸無水物に加え熱可塑性樹脂及び/または熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物ならびに難燃性樹脂成形品も同時に提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホスファゼン骨格を有する酸無水物およびそれを用いた難燃性樹脂組成物ならびに難燃性樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
樹脂はその優れた成形加工性、機械的特性、電気的特性や外観等の特徴から、電気製品や自動車等各種の製品の材料として使用されている。しかし、樹脂は金属材料や無機材料に比べ燃焼しやすいという欠点がある。従って、樹脂の難燃性の向上が課題とされている。
【0003】
従来から、樹脂に難燃性を付与するために、ホスファゼン系化合物を配合することが知られている。例えば、(特許文献1)にはポリカーボネート樹脂等にホスファゼン系化合物を配合した難燃性樹脂組成物が開示されている。ホスファゼン系化合物は、ハロゲンフリーの難燃剤であることから環境に与える負荷が少ないという利点を有している。
【0004】
しかし、従来のホスファゼン系化合物を用いて樹脂組成物を製造した場合、初期の優れた難燃性能を長期間にわたり維持することができなかった。この主原因は樹脂組成物から従来のホスファゼン系化合物がブリードしてしまうことと、ホスファゼン系化合物の耐熱性が足りないことである。例えば、各種モニター又はプリンターのハウジングや機構部品に熱可塑性樹脂が使用されているが、近年薄肉成形による機能性向上や成形サイクル短縮による生産性向上のため、樹脂の成形加工温度を従来よりも高い温度、例えば300℃付近での樹脂の流動性を向上させることが行われている。また、プリント配線板や封止材等に用いられる熱硬化性樹脂、例えばエポキシ樹脂やフェノール樹脂においても、環境問題の観点から、鉛フリーハンダが実用化されており、それに伴ったリフロー温度の上昇(250℃ 〜260℃) により、電気・電子部品用途に使用される樹脂製部品には耐熱性が求められている。かかる高温域においては、従来のホスファゼン系化合物では揮散、消失を生じることがあり、一層優れた樹脂への残存性を有する難燃剤が求められるようになっている。
【特許文献1】特開平7−292233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
混合した樹脂組成物からブリードせず、耐熱性が高く樹脂への残存性を有し、難燃性の高いホスファゼン化合物(ホスファゼン骨格を有する酸無水物)およびそれを用いた難燃性樹脂組成物ならびに難燃性樹脂成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下のホスファゼン骨格を有する酸無水物およびそれを用いた難燃性樹脂組成物ならびに難燃性樹脂成形品を提供するものであり、これにより上記課題を解決しうる。
【0007】
本発明の第一は、ホスファゼン骨格を有することを特徴とする酸無水物である。この酸無水物を用いることにより混合した樹脂組成物からブリードせず、耐熱性が高く難燃性の高い樹脂組成物を得ることが出来る。
【0008】
本発明の第二は、下記式(3)の構造を有する請求項1記載の酸無水物である。導入された酸無水物が混合した樹脂組成物と反応する為ブリードせず、耐熱性が高く難燃性の高い樹脂組成物を得ることが出来る。
【0009】
【化3】

(式中mは3〜25の整数を示す。R1はフェニル基を示す。R2はフェニル基あるいは式(4)に示される酸無水物骨格を示し、式(3)の化合物中で式(4)に示される酸無水物骨格を1以上含む。)
【0010】
【化4】

本発明の第三は、請求項1または請求項2に記載の酸無水物に加え、熱可塑性樹脂及び/または熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする難燃性樹脂組成物である。本発明のホスファゼン骨格を有する酸無水物により、混合した熱可塑性樹脂及び/または熱硬化性樹脂に難燃性を付与することが出来る。
【0011】
本発明の第四は、請求項3記載の難燃性樹脂組成物を成形してなる、難燃性樹脂成形品である。本発明の難燃性樹脂組成物を成形することにより、難燃性樹脂成形品を作ることができる。
【発明の効果】
【0012】
混合した樹脂組成物からブリードせず、耐熱性が高く樹脂への残存性を有するホスファゼン化合物(ホスファゼン骨格を有する酸無水物)により混合した樹脂組成物ならびに難燃性樹脂成形品に高い難燃性を付与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に用いられるホスファゼン骨格を有する酸無水物について説明する。
【0014】
フェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物とトリメリット酸やトリメリット酸クロライドとを反応させて本発明のホスファゼン骨格を有する酸無水物を合成する。
【0015】
まず最初に、本発明に用いられるフェノール性水酸基(ヒドロキシル基)を有するホスファゼン化合物について説明する。
【0016】
ヒドロキシル基(水酸基)を有する環状及び/又は鎖状のホスファゼン化合物は、例えば、(非特許文献1)、(非特許文献2)、(特許文献2)、(非特許文献3)等に記載の方法に従って製造できる。例えば、2価フェノールの一方の水酸基がメチル基又はベンジル基で保護された4−メトキシフェノール、4−(ベンジルオキシ)フェノールのリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩と、塩化ホスホニトリル(特許文献3〜4)とを、反応させ、その後にピリジンハロゲン化水素酸塩又は三臭化ホウ素等との、反応によって、メチル基又はベンジル基を脱保護し、水酸基に変えることで製造できる。また、ヒドロキシアルキルフェノールのリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩と、塩化ホスホニトリルとを、反応させることによっても製造できる。また、部分的にヒドロキシ基置換フェノキシ基を有する環状及び/又は鎖状のホスファゼン化合物の製造は、2価フェノールの一方の水酸基がメチル基又はベンジル基で保護された4−メトキシフェノール、4−(ベンジルオキシ)フェノール及び/又はヒドロキシアルキルフェノールのリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩と、塩化ホスホニトリルとの、反応の際に、アルコール系又はフェノール系化合物のリチウム塩、ナトリウム塩又はカリウム塩を同時に使用することにより製造できる。
【非特許文献1】横山正明ら、工業化学雑誌,Vol.67,No.9,p.1378(1964)
【非特許文献2】奥橋朋也ら、工業化学雑誌,Vol.73,No.6,p.1164(1970)
【特許文献2】特開昭58−219190号公報
【非特許文献3】Alessandro Medici, et.al.,Macromolecules,Vol.25,No.10,p.2569(1992)
【特許文献3】特開昭54−145394号公報
【特許文献4】特開昭54−145395号公報 具体的な方法について説明する。
【0017】
式(5)で表される環状ジクロルホスファゼン化合物(式中mは3〜25の整数を示す。)に対して
【0018】
【化5】

式(6)で表されるアルカリ金属フェノラート(式中Mはアルカリ金属を示す。)と、
【0019】
【化6】

式(7)(式中Mはアルカリ金属を示す。)で表されるアルキルオキシ基を有するアルカリ金属フェノラートとを、
【0020】
【化7】

反応させることにより、
式(8)で表されるメトキシフェニル基を導入した環状ホスファゼン(式中mは3〜25の整数を示す。R3及びR4はフェニル基或いは基−C64OCH3を示す。)が生成する。
【0021】
【化8】

式(8)で表される化合物を、その後にピリジンハロゲン化水素酸塩又は三臭化ホウ素等との反応によって、メチル基又はベンジル基を脱保護し、水酸基に変えることで、
式(9)(式中mは3〜25の整数を示す。R5及びR6はフェニル基或いは基−C64OHを示す。)で示される、対応するフェノール性水酸基を有する環状ホスファゼン化合物
【0022】
【化9】

を製造することが出来る。
【0023】
次にフェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物と、トリメリット酸やトリメリット酸クロライドとを、反応させて本発明のホスファゼン骨格を有する酸無水物を合成法について説明する。
【0024】
フェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物と、トリメリット酸クロライドとの、反応は、有機溶媒中ピリジン等の3級アミンの存在下で反応させることにより容易に合成出来る。反応溶媒は、トルエン・キシレン等の芳香族系溶媒、アセトン・メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル・γブチロラクトン等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒など、非プロトン性溶媒であれば各種溶媒を使用することが出来る。反応温度は、−20℃〜120℃程度であり、反応は数時間で完結する。
【0025】
フェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物と、トリメリット酸との、反応は、ピリジン等の3級アミンの存在下で、p−トルエンスルフォン酸クロライドやジシクロヘキシルカルボジイミドやリン系縮合剤と反応することにより合成することが出来る。反応溶媒は、トルエン・キシレン等の芳香族系溶媒、アセトン・メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル・γブチロラクトン等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒など、非プロトン性溶媒であれば各種溶媒を使用することが出来る。反応温度は、0℃〜120℃程度であり、反応は数時間で完結する。
【0026】
このようにしてフェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物と、トリメリット酸やトリメリット酸クロライドとを、反応させて式(10)で表される本発明のホスファゼン骨格を有する酸無水物を得ることができる。(式中mは3〜25の整数を示す。R1はフェニル基をR2はフェニル基あるいは式(11)に示される酸無水物骨格を示し、式(10)の化合物中で式(11)に示される酸無水物骨格を1以上含む。)
【0027】
【化10】

【0028】
【化11】

本発明のホスファゼン骨格を有する酸無水物は、沸点が高いため各種樹脂と混合した場合においても、熱混合時に揮散しないため、高い難燃性が保持される。混合できる樹脂としては特に制限されず、公知の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂のいずれも使用できる。
【0029】
<酸無水物>
ホスファゼン骨格を有する酸無水物を達成出来る限りにおいて、酸無水物は特に限定を受ける物ではない。
【0030】
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂の具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリブタジエン、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、スチレン樹脂、耐衝撃性ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂(MBS樹脂)、メチルメタクリレート−アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(MABS樹脂)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン樹脂(AAS樹脂)、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアミド(脂肪族系及び/又は芳香族系)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリチオエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリベンズイミダゾール、ポリカルボジイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、複合プラスチック等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
<熱硬化性樹脂>
熱硬化性樹脂としては、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、シアン酸エステル、アクリルやメタクリルやビニル等のビニル基を有する化合物等を例示することが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0032】
エポキシ化合物としては例えば、エピコート828(ジャパンエポキシレジン株式会社製)等のビスフェノール樹脂、180S65(ジャパンエポキシレジン株式会社製)等のオルソクレゾールノボラック樹脂、157S70(ジャパンエポキシレジン株式会社製)等のビスフェノールAノボラック樹脂、1032H60(ジャパンエポキシレジン株式会社製)等のトリスヒドロキシフェニルメタンノボラック樹脂、ESN375等のナフタレンアラルキルノボラック樹脂、テトラフェニロールエタン1031S(ジャパンエポキシレジン株式会社製)、YGD414S(東都化成)、トリスヒドロキシフェニルメタンEPPN502H(日本化薬)、特殊ビスフェノールVG3101L(三井化学)、特殊ナフトールNC7000(日本化薬)、TETRAD−X、TETRAD−C(三菱瓦斯化学社製)等のグリシジルアミン型樹脂などがあげられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
またイソシアネート化合物として例えば、脂肪族、脂環族または芳香族のジイソシアネ−ト等があり、例えば1,4−テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,5−ペンタメチレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、2,2,4−トリメチル−1,6−へキサメチレンジイソシアネ−ト、リジンジイソシアネ−ト、3−イソシアネ−トメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネ−ト(イソホロンジイソシアネ−ト)、1,3−ビス(イソシアネ−トメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ−ト、トリレンジイソシアネ−ト、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、トリジンジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト等を挙げることが出来るが、これらに限定されるものではない。
【0034】
さらに、イソシアネ−ト化合物として、脂肪族、脂環族または芳香族のイソシアネ−トから誘導されるもの、例えばイソシアヌレ−ト変性イソシアネ−ト、ビュレット変性イソシアネ−ト、ウレタン変性イソシアネ−ト等であってもよい。また、本発明に用いるイソシアネ−ト化合物は、好適にはイソシアネ−ト化合物のイソシアネ−ト基をブロック剤でブロックしたブロックイソシアネ−トが好適に使用されるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
前記のブロック化剤としては例えば、アルコ−ル系、フェノ−ル系、活性メチレン系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾ−ル系、尿素系、オキシム系、アミン系、重亜硫酸塩、イミン系、イミド系化合物、ピリジン系化合物等があり、これらを単独あるいは、混合して使用してもよいが、これらに限定されるものではない。具体的なブロック化剤としては、アルコ−ル系としてメタノ−ル、エタノ−ル、プロパノ−ル、ブタノ−ル、2エチルヘキサノ−ル、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビト−ル、ベンジルアルコ−ル、シクロヘキサノ−ル等、フェノ−ル系として、フェノ−ル、クレゾ−ル、エチルフェノ−ル、ブチルフェノ−ル、ノニルフェノ−ル、ジノニルフェノ−ル、スチレン化フェノ−ル、ヒドロキシ安息香酸エステル等、活性メチレン系として、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン等、メルカプタン系として、ブチルメルカプタン、 ドデシルメルカプタン等、酸アミド系として、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等、酸イミド系として、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、イミダゾ−ル系として、イミダゾ−ル、2−メチルイミダゾ−ル、尿素系として、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等、オキシム系として、ホルムアルデヒドオキシム、アセトアルデヒドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等、アミン系として、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール等、イミン系として、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等、重亜硫酸塩として、重亜硫酸ソ−ダ等、ピリジン系として、2−ヒドロキシピリジン、2−ヒドロキシキノリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
特に、第一工業製薬社製のエラストロン[商品名BN−P17、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネ−ト ブロック化体]、同社のエラストロン[BN−04、BN−08、BN−44、BN−45:ウレタン変性イソシアネートブッロク化体1分子当たり3〜5官能。いずれも水エマルジョン品で乾燥単離後使用可能]などを好適に使用することができる。
【0037】
アクリルやメタクリルやビニル等のビニル基を有する化合物等としては、ビスフェノールF EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールA EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、ビスフェノールS EO変性(n=2〜50)ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、メトキシジエチレングリコールメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、β−メタクロイルオキシエチルハイドロジェンフタレート、β−メタクロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、ラウリルアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジメタクロキシプロパン、2,2−ビス[4−(メタクロキシエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(メタクロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2−ヒドロキシ−1−アクリロキシ3−メタクロキシプロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、メトキシジプロピレングリコールメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコールアクリレート、1−アクリロイルオキシプロピル−2−フタレート、イソステアリルアクリレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルアクリレート、ノニルフェノキシエチレングリコールアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,6−メキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールメタクリレート、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、2,2−水添ビス[4−(アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシ・ポリプロポキシ)フェニル]プロパン、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、イソシアヌル酸トリ(エタンアクリレート)、ペンタスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、イソシアヌル酸トリアリル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアリルエーテル、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−s−トリアジン、トリアリル−1,3,5−ベンゼンカルボキシレート、トリアリルアミン、トリアリルシトレート、トリアリルフォスフェート、アロバービタル(5,5−ジアリルバルビツル酸)、ジアリルアミン、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジスルフィド、ジアリルエーテル、ザリルシアルレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート、1,3−ジアリロキシ−2−プロパノール、ジアリルスルフィドジアリルマレエート、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジメタクリレート、4,4’−イソプロピリデンジフェノールジアクリレート等が好ましいが、これらに限定されない。架橋密度を向上するためには、特に2官能以上のモノマーを用いることが望ましい。
【0038】
シアン酸エステル化合物とは、シアン酸エステルを分子内にもっていれば特に限定されないが、以下のように例示することができる。
【0039】
具体的な化学式として、式(12)を例示することができる。
【0040】
【化12】

(R7 は同一でも異なってもよく、水素かアルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基、またはハロゲンであり、Aは単結合、未置換メチレン基、水素原子の1つまたは2つをアルキル基、パーフルオロアルキル基、および/またはアリール基で置換した置換メチレン基、5員もしくは6員の環状脂肪族基、スルホン基、2価の硫黄、酸素、2価のカルボニル基、メチレン基が置換又は未置換のキシリレン基、フェニル基である。wは4である。)
その他のシアン酸エステルの例としては、1,3−ジシアネートベンゼン、1,4−ジシアネートベンゼン、1,3,5−トリシアネートベンゼン、1,3−ジシアネートナフタレン、1,4−ジシアネートナフタレン、1,6−ジシアネートナフタレン、1,8−ジシアネートナフタレン、2,6−ジシアネートナフタレン、2,7−ジシアネートナフタレン、1,3,6−トリシアネートナフタレン、2,2−ビス(3,5−ジシクロ−4−シアネートフェニル)プロパン、トリス(4−シアネートフェニル)ホスファイト、トリス(4−シアネートフェニル)ホスフェート、およびフェノール樹脂とハロゲン化シアンとの反応により得られるベンゼン多核体のポリシアネート化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。例示したシアン酸エステルを加熱してオリゴマー化したものも同様に使用することができる。
【0041】
このシアン酸エステル化合物は、本発明の樹脂組成物100重量部に対し、1〜200重量部配合することが好ましく、3〜150重量部の範囲がさらに好ましい。なお、シアン酸エステル化合物として、1種類の化合物を用いても良いし、数種を混合して用いてもよい。
【0042】
<樹脂組成物>
本発明のホスファゼン骨格を有する酸無水物と熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の好ましい混合比としては、ホスファゼン骨格を有する酸無水物の含有率が、全体に対して0.1〜50重量%に範囲にあることが好ましい。0.1%未満の場合には難燃性付与の小さく、50%以上の場合には、接着性の低下や力学特性の低下が観察されるため、好ましくない。
【0043】
本発明のホスファゼン骨格を有する酸無水物は酸無水物骨格を有している為、各種反応基と反応しうる。各種反応基とは、エポキシ基・イソシアネート・アミノ基・アルコール性水酸基等である。これらの反応基が樹脂中に存在すれば、本発明のホスファゼン骨格を有する酸無水物と反応し、ホスファゼン骨格を有する酸無水物が樹脂中に取り込まれるため樹脂からのブリードは生じない。これらの反応基は、高分子の側鎖にぶら下がっていてもよく、また高分子の末端にあってもよく、先述のエポキシ化合物やイソシアネート化合物のように低分子化合物或いはオリゴマーであってもよい。
【0044】
また、本発明のホスファゼン骨格を有する酸無水物以外に、リン化合物を含んでもよい。本発明のホスファゼン骨格を有する酸無水物は、熱分解温度が高く耐熱性が高い。よって混合する熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の分解温度が、ホスファゼン骨格を有する酸無水物よりも低い場合、混合する熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂の分解温度よりも低いリン化合物を少量添加することにより、更に難燃効果が高くなるため好ましい。
【0045】
好ましいリン化合物として、ホスフィン、ホスフィンオキサイド、リン酸エステル(縮合リン酸エステルも含む)、亜リン酸エステル、ホスファゼン(酸無水物構造を含まない)などのリン化合物などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。このなかでもホスフィンオキサイド、またはリン酸エステル(縮合リン酸エステルも含む)、ホスファゼンが特に好ましい。難燃剤として用いるリン化合物のリン含量は5.0重量%、さらに好ましくは7.0重量%以上であることが好ましい。
【0046】
さらには、難燃性を付与でき、かつ耐加水分解性を持つという点から、例えば、SPE−100(大塚化学製 ホスファゼン化合物)、SPH−100(大塚化学製 ホスファゼン化合物)、TPP(トリフェニルホスフェート)、TCP(トリクレジルホスフェート)、TXP(トリキシレニルホスフェート)、CDP(クレジルジフェニルホスフェート)、PX−110(クレジル2,6−キシレニルホスフェート)(いずれも大八化学製)などのリン酸エステル、CR−733S(レゾシノ−ルジホスフェート)、CR−741、CR−747、PX−200)(いずれも大八化学製)などの非ハロゲン系縮合リン酸エステル、ビスコートV3PA(大阪有機化学工業製)、MR−260(大八化学製)などのリン酸(メタ)アクリレート、亜リン酸トリフェニルエステルなどの亜リン酸エステルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
これらのリン化合物は、本発明のホスファゼン骨格を有する酸無水物の添加量に対して、100〜10重量%使用することが好ましい。
【0048】
<成形品>
本発明でいうところの、成形品とは、当該樹脂組成物を、フィルム状、ペレット状、発泡体状、ブロック状等に成形したのものを言い、形状に特に制約を受ける物では無い。成形の方法は、押し出し成形、ブロー成形、真空成形、射出成形、ダイ押し出し、等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0049】
<難燃性>の評価等
UL−94の試験法に基づき、難燃性の評価を行う。難燃性高いのがV−0であり、V−1、V−2の順に、難燃性の程度が低くなる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0051】
<合成例1>(原料ホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計、撹拌機、三塩化リン滴下器及び塩素ガス吹き込み管を備えた5Lのフラスコにクロルベンゼン2.5L、塩化アンモニウム182.5g(3.4モル)及び塩化亜鉛2.5gを仕込んで混合分散液を得た。該分散液を温度130℃に加熱して還流下で三塩化リン425.5gを9g/分の速度で48分間にわたって滴下すると同時に塩素ガス227gを5g/分の速度で46分間にわたって供給した。三塩化リン及び塩素ガスを供給した後、更に150分間還流(131℃)を行って反応を完結した。次いで吸引濾過して未反応の塩化アンモニウムを除去し、濾液を1.0〜3.0hPaの減圧下にて30〜50℃でクロルベンゼンを留去して反応生成物352gを得た。該反応生成物の三塩化リンを基準とした収率は98.1%であった。クロルベンゼンに再溶解し、再結晶によってヘキサクロロシクロトリホスファゼン及びオクタクロロシクロテトラホスファゼンの混合物(226g,ヘキサクロロシクロトリホスファゼン:76%,オクタクロロシクロテトラホスファゼン:24%)を得た。また、先に得たヘキサクロロシクロトリホスファゼン及びオクタクロロシクロテトラホスファゼンの混合物を、ヘキサンを用い3回再結晶することで、純度99.9%のヘキサクロロシクロトリホスファゼン155gを得た。
【0052】
<合成例2>(ヒドロキシ基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計、撹拌機、滴下ロートを備えた2Lの4ツ口フラスコに合成例1で合成した純度99.9%のヘキサクロロシクロトリホスファゼン58g(0.5ユニットモル、NPCl2を1ユニットとする)、テトラヒドロフラン(THF)100mLを仕込んで溶液を得た。次に別に調製した 4−メトキシフェノールのナトリウム塩のTHF溶液(4−メトキシフェノール149.0g(1.2モル)、ナトリウム25.3g(1.1g−atom)、THF600mL)を撹拌しながら、2時間かけて上記ヘキサクロロシクロトリホスファゼンのTHF溶液に滴下した。ナトリウム塩の約1/3量を加えるまでは激しい発熱があり、冷却しながら滴下反応を行った。残り2/3量の添加時には激しい発熱反応にならないが、反応温度を30℃以下になるように適宜冷却して反応を行った。滴下終了後、引き続き12時間室温下での撹拌反応を行った。次に反応完結のために溶媒還流下で6時間反応を行った。反応終了後、溶媒のTHFを減圧下に留去し、次にトルエン500mLを加えて再溶解し、更に水500mLを加えて分液ロート中にて有機層の分液を行った。有機層を5%水酸化ナトリウム水溶液500mLで3回洗浄し、更に、5重量%塩酸水溶液500mLで1回、5%炭酸水素ナトリウム水500mLで1回、水500mLで2回洗浄した。この時の水層のpHは7〜8であった。有機層を分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水処理し、トルエンを留去して黄色固体状のヘキサ(4−メトキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン138.4g(収率95%)を得た。残存塩素量は0.02%で、融点は104℃(文献値103〜104℃)であった。上記の方法で得たヘキサ(4−メトキシフェノキシ)シクロトリホスファゼン130.6g(0.45ユニットモル)と、ピリジン塩酸塩1040g(9モル)とを、2Lの4ツ口フラスコに仕込み、徐々に昇温し、205〜210℃で1時間反応を行った。室温冷却後、水300mLを加えて反応生成物及び過剰のピリジン塩酸塩を溶解し、20%水酸化ナトリウム水溶液でpH6〜7に反応溶液を調製した。次に酢酸エチル500mLを用いて抽出を4回行った後に、抽出液を合わせて、飽和硫酸ナトリウム水500mLで4回洗浄し、有機層を分液し、無水硫酸マグネシウムにより脱水処理後、減圧下にて酢酸エチルを留去した。次に濃縮物をメタノール200mLに溶解し水1.5L中に投入し、結晶を析出させる工程を3回繰返して行い、得られた結晶を減圧乾燥し、淡黄色結晶94.8g(収率80%)を得た。生成物の残存塩素量は0.01%以下であり、分析化学便覧(日本分析化学会編)有機編、第316頁に記載されている無水酢酸及びピリジンによるアセチル化法により、水酸基(OH,%)を定量したところ、12.9%であった(理論値12.9%、組成式N33(OC64OH)6 水酸基当量131.8)。また、1H−及び31P−NMR分析を行い合成を確認した。
【0053】
<合成例3>水酸基当量363(部分的にヒドロキシル基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計、撹拌機、滴下ロートを備えた2Lの4ツ口フラスコに純度99.9%のヘキサクロロシクロトリホスファゼン58g(0.5ユニットモル、NPCl2を1ユニットとする)、THF100mLを仕込んで溶液を得た。次に別に調製した4−メトキシフェノールのNa塩のTHF溶液(4−メトキシフェノール43.4(0.35モル)、ナトリウム7.6g(0.33g−atom)、THF200mLを撹拌しながら、1時間かけて上記ヘキサクロロシクロトリホスファゼンのTHF溶液に滴下した。激しい発熱反応であるので、反応温度が30℃ を越えないように適宜冷却して反応を行った。滴下終了後、引き続き6時間60℃ で撹拌反応を行った。該反応にて得られた部分置換体の残存塩素量は27.11%であり、推定構造は、N33Cl4.0(OC64OCH32.0である。次に別に調製したナトリウムフェノラートのTHF溶液(フェノール79.1g(0.85モル)、ナトリウム18.4g(0.8g−atom)、THF200mLを、反応温度が30℃ 以下になるように冷却制御し1時間かけて滴下した。次いで室温下で5時間、還流温度で3時間反応を行い、反応を完結した。反応終了後、溶媒のTHFを減圧下に留去し、次にトルエン500mLを加えて生成物を再溶解し、更に水300mLを加えて水洗分液した。有機層を5%水酸化ナトリウム水溶液による洗浄及び2%水酸化ナトリウム水溶液による洗浄を各々1回行った後に、5重量%塩酸水溶液で1回洗浄、5%炭酸水素ナトリウム水で1回洗浄し、さらに水で2回洗浄し、水層を中性とした。次に有機層を分液し、無水硫酸マグネシウムで脱水し、トルエンを留去して淡黄色油状の生成物110.0g(収率91%)を得た。残存塩素量は0.01%以下であった。上記の方法で得た4−メトキシフェノキシ基とフェノキシ基が混合置換したシクロトリホスファゼン96.8g(0.40ユニットモル)とピリジン塩酸塩583.6g(5.05モル)を、2Lの4ツ口フラスコに仕込み、徐々に昇温し、205〜210℃で1時間反応を行った。その後の操作は合成例2と同様に行い、黄色固体75.0g(収率77.5%)を得た。残存塩素量は0.01%以下であり、水酸基含有量は4.7%であった。(理論値4.7%、組成式N33(OPh)4.0(OC64OH)2.0、水酸機当量363)
(実施例1)ホスファゼン骨格を有する酸無水物の合成
撹拌機と滴下ロートのついた反応容器に、トリメリット酸クロライド21.06g(100mmol)、メチルエチルケトン50gをとり、室温で撹拌する。合成例3で合成した部分的に水酸基を有するホスファゼン(組成式N33(OPh)4.0(OC64OH)2.0)36.3g(OH基準で100mmol)をメチルエチルケトン50g、ピリジン9.5gに溶解し、上記反応溶液に室温で滴下し、1時間室温で撹拌した。その後、2時間還流撹拌を行った。次いで、氷水で反応容器を30分冷却した。これまでの反応はすべて窒素気流下で行った。
【0054】
析出したピリジンの塩酸塩を濾別後、濾液を濃縮し、濃縮液にアセトン30gを加え、濃縮物を溶解した。この溶液を蒸留水200gに投入し、撹拌を1時間続けた。析出した粘調な液体をとりだし、真空オーブンで乾燥(120℃2時間)を行い46.5gの酸無水物を得た。この酸無水物を無水酢酸60gに溶かし、2時間140℃で加熱後、真空オーブンで乾燥(120℃2時間)を行い目的の酸無水物46.5gを得た。(収率86.6%)これを化合物Aとする。1H−NMR:測定条件Varian社製 Gemini300 操作周波数300Hz、溶媒DMSO−d6、(1)トリメリット酸由来芳香環δ7.8〜8.6、6H、(2)それ以外の芳香環δ6.9〜7.5、28H。
【0055】
(実施例2)ホスファゼン骨格を有する酸無水物の合成
実施例1とトリメリット酸クロライド31.6g(150mmol)、合成例2で合成したヒドロキシ基を有するホスファゼン(組成式N33(OC64OH)6 水酸基当量131.8)19.8g(OH基準で150mmol)、ピリジン14.2gにかえた他は、同様に反応を行って、酸無水物36.7gを得た。(収率80%)これを化合物Bとする。1H−NMR:測定条件Varian社製 Gemini300 操作周波数300Hz、溶媒DMSO−d6、(1)トリメリット酸由来芳香環環δ7.8〜8.6、18H、(2)それ以外の芳香環δ6.9〜7.5、24H。
【0056】
(実施例3)
芳香族ポリカーボネート樹脂75部(重量部)及びABS樹脂25部からなる樹脂に、実施例1で製造した化合物A 15部とPTFE 0.2部を添加してミキサーで混合後、ラボプラストミルを用いて溶融混練し、難燃性樹脂組成物を得た。
【0057】
この組成物を加熱プレスにより1/8インチの厚さの試験片を作製し、UL−94の試験法に基づく難燃性の評価とASTMのD−648に準じて熱変形温度の測定を行った。この結果、難燃性はV−0、熱変形温度は108℃であり、成型時にジューシングは認められなかった。このことは、本発明のホスファゼン骨格を有する化合物からなる樹脂組成物の、樹脂成形体への優れた残存性能を表す。成型時にジューシング無いため、金型等を汚すこと無いため、好ましい。
【0058】
(実施例4)
実施例2で製造した化合物Bを使用し、実施例3と同様に試料作製と評価を行った。この結果、難燃性はV−0、熱変形温度は111℃であり、成型時にジューシングは認められなかった。
【0059】
(実施例5)
実施例3の配合においてPTFEを添加せずに試料作製を行い、難燃性と熱変形温度の評価を行った。この結果、難燃性はV−0、熱変形温度109℃であり、成型時にジューシングは認められなかった。
【0060】
(比較例1)
実施例1で製造した化合物Aに代えてトリキシリルホスフェイトを使用し、実施例1と同様に試料作製と評価を行った。この結果、難燃性はV−2、熱変形温度は82℃であり、成型時にジューシングが認められた。
【0061】
(参考例1)
攪拌棒、コンデンサー、滴下ロート及び温度計付フラスコに、オキシ塩化リン460g(3モル)、レゾルシン110g(2モル)、フェノール94.1g(1モル)及び塩化アルミニウム9g(触媒)を同時に仕込み150℃まで反応させ、次いでフェノール564.6g(6モル)を加えて反応させた。反応混合物を水洗後、高温真空下でトリフェニルホスフェートを留去し、レゾルシノールで架橋した縮合リン酸ジフェニルエステル515gを得た。
【0062】
この縮合リン酸ジフェニルエステルの品質:黄色液体、平均分子量=540、%P=10.6、酸価2.2。
【0063】
(比較例2)
実施例1で製造した化合物Aに代えてレゾルシノールで架橋した縮合リン酸ジフェニルエステル(参考例1で得られたもの)を使用し、実施例1と同様に試料作製と評価を行った。この結果、難燃性はV−2、熱変形温度は89℃であり、成型時にジューシングが認められた。
【0064】
(比較例3)
難燃剤を添加せず実施例1と同様に試料作製と評価を行ったところ、試験片は燃焼してしまい、難燃性は全く示さなかった。熱変形温度は111℃であった。
【0065】
(実施例6)
ポリカーボネート 70部、エポキシ化合物 15部(エピコート1004、ジャパンエポキシレジン株式会社製)、実施例1で合成した化合物A 15部を塩化メチレンに溶解し、18μm厚みの銅箔(三井金属製3EC-VLP)に塗布後、40℃で5分、60℃で5分、80℃で5分乾燥後、160℃で1時間加熱し、銅箔をエッチングにより除去して、25μm厚みのフィルムを得た。このフィルムをUL−94の試験法に基づく難燃性の評価の結果、VTM−0であった。
【0066】
(比較例4)
得られたフィルムをUL−94の試験法に基づく難燃性の評価の結果、燃焼してしまった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスファゼン骨格を有することを特徴とする酸無水物。
【請求項2】
下記式(1)の構造を有する請求項1記載の酸無水物。
【化1】

(式中mは3〜25の整数を示す。R1はフェニル基を示す。R2はフェニル基あるいは式(2)に示される酸無水物骨格を示し、式(1)の化合物中で式(2)に示される酸無水物骨格を1以上含む。)
【化2】

【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の酸無水物に加え、熱可塑性樹脂及び/または熱硬化性樹脂を含有することを特徴とする、難燃性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項3記載の難燃性樹脂組成物を成形してなる、難燃性樹脂成形品。


【公開番号】特開2006−36736(P2006−36736A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223078(P2004−223078)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】