説明

ホログラム、及びホログラムを用いた光学素子の製造方法

光学素子(5)の製造方法は、光学素子の光学面(3)に測定光(23a)を導く干渉計1aを用いて、光学面を検査する工程を含む。測定光は、光学面の上流にある測定光のビーム経路に配置された2つのホログラム(44、48)を順次に横切る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子の製造方法に関する。特に、本発明は、非球面形状を有する光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学面を有する光学素子は、例えば、天文学において用いられる望遠鏡などの光学系、及び、リソグラフ法において、マスクやレチクル上に形成された構造体などの構造体を、レジストなどの放射線感応基板上に結像するために用いられる光学系において使用される、光学レンズや光学ミラーなどの光学部品である。このような光学系の合否は、光学系の設計者によって決定された目標とする形状となるように、光学面をいかに精度良く機械加工又は製造できるかによって実質的に決まる。このような製造においては、機械加工された光学面の形状を目標とする形状と比較し、機械加工された面と目標とする面との差を決定する必要がある。そして、光学面は、機械加工された面と目標とする面との差が、例えば、所定の閾値を超える部分において、さらに機械加工されてもよい。
【0003】
光学面の高精度測定においては、一般的に干渉計装置が用いられる。このような装置は、例えば、米国特許第4,732,483号明細書(特許文献1)、米国特許第4,340,306号明細書(特許文献2)、米国特許第5,473,434号明細書(特許文献3)、米国特許第5,777,741号明細書(特許文献4)、米国特許第5,488,477号明細書(特許文献5)に開示されている。これらの文献の全内容を本願に引用して援用する。
【0004】
球面状の光学面を測定する従来の干渉計装置は、一般に、測定光の波面が、検査される表面の位置において、検査中の表面の目標とする形状と同一の形状となるように、可干渉性を有する光の光源と、検査される表面に入射する測定光のビームを発生させる干渉計光学系とを含む。このような状況において、測定光のビームは、検査中の表面に直角に入射し、その表面で反射して干渉計光学系へと戻る。その後、検査中の表面で反射した測定ビームの光は、基準面で反射した光と重ね合わされ、その結果生じる干渉縞(パターン)から、検査中の表面の形状と目標とする形状とのずれが決定される。
【0005】
球面状の光学面を検査するための球面状の波面は、従来の干渉計光学系によって比較的高精度で生成することができるが、光が検査中の非球面の各位置に直角に入射するように非球面形状の波面を有する測定光のビームを発生させるためには、補償器、ヌルレンズ配置、又はK−システムとも称される、より改良された光学系が必要とされる。ヌルレンズ配置又は補償器に関する背景情報は、例えば、ダニエル マラカラ(Daniel Malacara)のテキストブック「光学工場試験(Optical Shop Testing)」、第2版、ジョン ワイリー アンド サンズ(John Wiley &Sons)株式会社、1992年、第12章(非特許文献1)から入手可能である。
【0006】
非球面形状の波面(非球面波面)を生成するための補償器は、1つ以上のレンズなどの屈折光学素子を含み得る。非球面波面を生成するための補償器において、ホログラムなどの回折素子を用いることも知られている。干渉測定におけるホログラムの使用に関する背景情報及び例は、上記ダニエル マラカラのテキストブックの第15.1章、第15.2章、第15.3章に記載されている。ホログラムは、写真乾板などの適切な材料を干渉光ビームに曝すことによって生成される実(real)ホログラムであってもよく、又は、光線追跡などの適切な計算法(computational method)によって設定された干渉計をシミュレートし、ペンプロッタ及び光学式縮小法(optical reduction)、リソグラフ工程、レーザビームレコーダー、電子ビームレコーダーなどを用いた製造工程でホログラムを生成することによって得られるコンピュータ生成ホログラム(CGH)などの合成ホログラムであってもよい。
【0007】
従来の、ホログラムを用いた光学非球面の検査方法及び製造方法は、用途によっては精度が不十分であることが分かった。
【特許文献1】米国特許第4,732,483号明細書
【特許文献2】米国特許第4,340,306号明細書
【特許文献3】米国特許第5,473,434号明細書
【特許文献4】米国特許第5,777,741号明細書
【特許文献5】米国特許第5,488,477号明細書
【非特許文献1】ダニエル マラカラ(Daniel Malacara)のテキストブック「光学工場試験(Optical Shop Testing)」、第2版、ジョン ワイリー アンド サンズ(John Wiley &Sons)株式会社、1992年、第12章
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。
【0009】
従って、本発明の目的は、比較的高精度の非球面を有する光学素子を、検査し、製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、製造される光学素子の光学面を検査するのに適切な波面を有する測定光のビームを生成するための回折性光学素子、すなわち、ホログラムを少なくとも1つ有する干渉計光学系を用いることによって光学素子を検査する工程を含む方法を提供することにより達成される。
【0011】
本発明の一態様によれば、非球面の検査方法には、検査対象となる表面と相互作用する測定光のビーム経路に互いに離間して配置された少なくとも2つのホログラムが用いられる。
【0012】
本発明者らは、光ビーム経路にたった1つのホログラムを用いる従来の干渉計システムにおいては、当該干渉計システムの検出器上に形成される光学面の画像にかなりの歪曲が発生することを見出した。そして、このような歪曲により、画像の局所スケール、すなわち、倍率が検出器上で変化かることとなる。検出器の解像度は限られているため、画像において、結像倍率及び画像の解像度が、検出器の他の領域と比較して大幅に小さくなる部分が起こる。その結果、光学素子の表面全体において、所望する高い解像度で、光学素子の表面形状を求めることができなくなるおそれがある。
【0013】
測定光のビームの光ビーム経路に互いに離間して配置される少なくとも2つのホログラムを用いることにより、このような歪曲を補正することができる。これにより、局所結像倍率が検査中の光学素子の表面全体において実質的に均一となる。また、例えば、検査中の光学素子の高い精度が求められる特定の部分に対して倍率(scale)を上げるなど、局所結像倍率を特定のニーズに合わせて調整することができる。
【0014】
本発明の典型的な実施の形態は、ビーム経路上の、第1のホログラム及び/又は第2のホログラムの上流又は下流に、少なくとも1つの屈折素子を配置することを含む。レンズなどの屈折素子は、検査対象となる光学素子に入射する測定光のビームの波面の生成に寄与することができ、屈折素子は、ホログラムによっては供給されない付加的な屈折力を供給する。これにより、ホログラムの線密度をより均一にすることができる。
【0015】
本発明の典型的な一実施の形態によれば、光学面の干渉測定は、検査対象となる光学面で反射する測定光を用いて行われる。別の典型的な一実施の形態によれば、干渉測定は、検査対象となる光学面を横切る光を用いて行われる。
【0016】
本発明の典型的な一実施の形態によれば、少なくとも2つのホログラムの少なくとも1つは、回折格子形成構造体が不要な回折次数の強度(intensity)を低減するためのブレーズド回折格子を形成する部分を少なくとも有するブレーズドホログラムである。このような不要な回折次数は、ホログラムの所望の回折次数からなる測定光と参照光との重ね合わせにより、干渉計装置の検出器上に生成される干渉縞の質を低下させてしまう。干渉測定に用いられる少なくとも2つのホログラムは高い回折次数を生成するおそれがあるため、不要な回折次数の強度を低減することは、特に有用である。
【0017】
明細書中の一実施の形態によれば、ホログラムは、回折格子形成構造体のピッチが高い高品質のブレーズド回折格子形成構造体を含み、さらに、ホログラムは、回折格子形成構造体のピッチが比較的小さい低品質のブレーズド又は非ブレーズド回折格子形成構造体を含む。
【0018】
回折格子形成構造体のピッチが高い領域は、所望の回折次数と不要な回折次数との分離が容易に起こらないか又は全く起こらないように、小さい偏向角の測定光のビームを生成する。しかし、これらの領域に設けられる高品質のブレーズは、少なくとも、不要な回折次数の強度を低減するのに有利である。回折格子形成構造体のピッチが小さい、ホログラムのその他の領域には、低品質のブレーズド回折格子形成構造体を用いることができる。なぜなら、測定光の光線に与えられる高い回折角により、所望の回折次数と不要な回折次数とを分離し易くなるからである。
【0019】
さらなる典型的な一実施の形態によれば、検査対象となる光学面は、球状から実質的にずれている非球面である。本願明細書においては、非球面とその最も球面に近い形状との差が所定の基準よりも大きい場合に、光学面を非球面とみなすことができる。このような基準の1つは、非球面とその最も球面に近い形状との差の勾配に基づき、このような勾配が、6(mを光学面の有効径で割った値を超える場合に、光学面は非球面とみなされる。
【0020】
本発明の実施の形態によれば、高い表面品質を有する非球面性の高い表面の検査及び製造が可能である。非球面性の量を決定するための尺度、すなわち、球面形状とのずれ量は、光学面の幾何学的媒介変数(geometrical parameters)から計算することができる。このためには、例えば、光学面の最小曲率cminと光学面の最大曲率cmaxを用いることができる。例えば、式(cmax−cmin)を非球面性の量を決定するための適切な尺度として用いることができる。本願明細書において、(cmax−cmin)>1m-1を満たす光学面は、非球面性の高い表面であるとする。
【0021】
光学面の実際の形状とその目標とする形状との差が所与の許容値の範囲内である場合に、高品質な光学面であるとする。許容値は、光学面の設計用途に依存し、当業者であれば所望の用途に基づいて選択することができる。通常、撮像用途に用いられる短波長光を利用する用途の場合、許容値は低い。また、表面のばらつきが発生する空間的な長さスケ−ル(spatial length scales)ごとに異なる許容値を定めることができる。このような空間的な長さスケ−ルは、「空間周波数の周期」とも呼ばれる。例えば、異なる空間周波数ごとに、表面の横方向における表面形状とその目標とする形状との差の分布の平方2乗平均(RMS)値として、異なる許容値を定めることができる。例えば、通常、光学面の直径の約10分の1〜光学面の全直径程度の大きさに対応する、約ミリメートル〜数十センチメートル程度の長さスケール範囲の低空間周波数領域(LSFR)での差のために第1の許容値を定めることができる。一般的に、このような許容値は、光学面の形状誤差を表わす。光学面の形状誤差は、光学面が用いられる光学系の収差に影響を及ぼす。
【0022】
低空間周波数領域でのずれを低減するための加工方法としては、ミリング、研削、ルース・アブラシブ研削などの精密研削、研磨などが一般的である。この空間周波数領域でのずれ、すなわち、表面誤差を測定する方法としては、光学面の各部分の測定結果をつなぎ合わせて表面全体の表面形状を示す測定結果を得るステッチング法(stitching method)を用いた場合、光学面の直径と同じかそれよりも小さい直径を有する測定光のビームを用いた干渉測定法が一般的である。
【0023】
一般に、研磨工具は、約ミリメートル〜約マイクロメートル程度の長さスケール範囲の中間空間周波数領域(MSFR)及び約マイクロメートル〜本願で用いられる光の波長程度の長さスケール範囲の高空間周波数領域(HSFR)でのずれを低減させる場合に用いられる。一般に、中間空間周波数領域及び高空間周波数領域で定められる許容値は、光学面の表面粗さを表わす。中間空間周波数領域での表面のずれは、光学面が用いられる光学系の光学場において迷光やフレアをもたらすおそれがある。中間空間周波数領域MSFRでのずれを求める測定方法としては、例えば、主面の選択した部分だけを一度に測定するマイクロ干渉法がある。高空間周波数領域の表面のずれは、光学面を光学系においてミラーとして用いた場合に、光学面の反射率を低減させるおそれがある。高空間周波数領域HSFRでのずれを求める測定方法としては、例えば、原子間力顕微鏡(AFM)を用いた方法がある。
【0024】
一般的に、表面のずれ、すなわち、実際の表面形状とその目標とする形状との差の平方2乗平均(RMS)値が、各空間周波数領域LSFR、MSFR、HSFRの適切な低閾値を下回る場合に、光学面は高品質であるとされる。
【0025】
低空間周波数領域LSFRにおける光学面の品質を決定するには、通常、実際の表面形状とその目標とする形状とを比較する必要がある。このようなずれの絶対的決定は、ナノメートル(nm)などの単位で行われなければならないため、通常、この光学面が低空間周波数領域LSFRにおいて一定の品質を有するかどうかを決定するには、その光学面の目標とする形状を知る必要がある。しかし、その光学面の目標とする形状が回転対称であることが分かっている場合には、その回転対称な光学面の半径面の形状(radial surface profile)を正確に把握しなくても、その表面の絶対非回転対称表面誤差を求めることができる。例えば、光学面を、光軸を有する光学系の光学素子として用いる場合、光学系の最適な性能を得るためには、その光学面が回転対称となることは明白である。
【0026】
回転対称な表面形状を有する光学面の回転非対称表面誤差は、以下のようにして求めることができる。光学面の回転対称を規定する光軸を中心とした複数の回転位置で複数の干渉測定を行うことにより、光学面を検査する。得られた複数の干渉測定の結果を平均化し、平均化された干渉測定値と、複数の干渉測定値のうちの1つとの差を計算する。この結果により、その回転対称特性だけでなく光学面の目標とする形状に関するさらなる情報を正確に把握しなくても、ナノメートルなどの単位で光学面の絶対非回転対称表面誤差を得ることができる。回転対称表面誤差の絶対値の算出に関する背景情報は、米国特許第6,839,143 B2号明細書、及びロルフ・フライマンら(Rolf Freimann et al.)による「ノンコマティック非球面誤差の絶対測定(Absolute measurement of noncomatic aspheric surface errors)」と題する論文(Optics Communications 161(1999)、106〜114頁に掲載)から得ることができる。
【0027】
上述した説明に基づけば、本発明の一実施の形態は、(cmax−cmin)>1m-1及びσRMSa<1.0nm(式中、σRMSaは、光学面の絶対非回転対称表面誤差の平方2乗平均値を表す)を満たす非球面性の高い回転対称な光学面を提供する。
【0028】
また、中間空間周波数領域及び高空間周波数領域でのずれは、光学面の局所特性として求めることができるので、光学面の目標とする形状全体を正確に把握しなくても、中間空間周波数領域MSFRでの表面のずれを求めることができる。従って、中間空間周波数領域及び高空間周波数領域でのずれは、表面データから、例えば、表面データとその平均との差の分布を計算することによって求めることができる。平均は、補整(smoothing)を含む数学的方法やその他の適切な方法によって求めることができる。
【0029】
上記に基づけば、本発明の実施の形態は、必ずしも回転対称ではなく、(cmax−cmin)1m-1及びσRMS<1.0nm(式中、σRMSは、0.3mm〜10.0mmの範囲の空間周波数スケールのために求められる表面粗さのRMS値を表わす)を満たす非球面性の高い光学面を有する光学素子を提供する。
【0030】
既に述べたように、本発明の実施の形態によれば、検出器上に形成される光学面の画像における局所結像倍率のばらつきを低減することにより、非球面性の高い表面の検査及び製造が可能となる。
【0031】
結像光学系の詳細を把握していなくても、従来の方法で発生していたこのような局所結像倍率のばらつきは、光学面のみの特性から求めることができる。
【0032】
以下の関係式は、光学面自体の特性に由来する局所結像倍率の尺度を表わすと考えることができる。
【0033】
【数14】

【0034】
上記関係式中、xとyは光学面の横座標であり、z(x,y)は、点(location)(x,y)での表面高さである。z=0は、少なくとも1つの点(x0,y0)で満たされる。α(x,y)は、点(x,y)における光学面の表面法線と検出器上に結像される光学面の一部の平均表面法線とのなす角度である。c(φ,x,y)は、点(x,y)での光学面の曲率であり、点(x,y)で光学面と接触する対応接触球面は、xy平面における角度φの方向にある。パラメータdは、d= max(z(x,y))+50mmによって定義できる適切な定数である。ここで、max(z(x,y))は、すべての点(x,y)のzの最大値である。
【0035】
このようなβ(φ,x,y)の定義を用いれば、Δβ=max(β(φ,x,y))/min(β(φ,x,y))により、従来の干渉法において局所結像倍率のばらつきを発生させるための光学面の特性Δβを定義することができる。ここで、max(β(φ,x,y))は、すべての点(x,y)及びすべての向きφでのβの最大値である。同様に、min(β(φ,x,y))は、すべての点(x,y) 及びすべての向きφでのβ最小値である。
【0036】
上述した説明に基づけば、本発明の実施の形態は、0.3mm〜10.0mmの範囲の空間周波数スケールのために求められるσRMSが、σRMS<1.0nmであり、局所結像倍率変動特性がΔβ>1.2である高い表面品質を有する光学面を少なくとも1つ含む光学素子を提供する。
【0037】
さらに、本発明の実施の形態は、σRMSa<1.0nmであり、局所結像倍率変動特性がΔβ>1.2である高い表面品質を有する回転対称な光学面を少なくとも1つ含む光学素子を提供する。
【0038】
本発明の実施の形態によっては、光学面の加工方法は、光学素子の光学面のミリング、研削、ルース・アブラシブ研削、研磨、イオンビーム面出し、磁気レオロジー面出しなどの機械加工及び仕上げ加工であり得る。
【0039】
一実施の形態によれば、仕上げ加工は、光学面にコーティングを塗布することを含む。コーティングは、反射コーティング、反射防止コーティング及び保護コーティングなどのコーティングを含むことができる。
【0040】
本発明の他の実施の形態は、基板と、前記基板上に設けられた回折格子とを備えたホログラムを提供し、回折格子は、格子ピッチの低い第1の領域と、格子ピッチの高い第2の領域とを含む。すなわち、第2の領域の回折格子形成構造体が、第1の領域におけるよりも大きい長さスケールで繰り返されている。第2の領域の回折格子形成構造体は、第1の領域の回折格子形成構造体よりも高い品質のブレーズを提供する。これは、第2の領域の回折格子形成構造体に、第1の領域よりも多い数の経路長供給素子(path length providing element)を含めることによって達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、添付図面を参照しながら本発明の典型的な実施の形態を詳細に説明することにより、上記及び本発明の有利な特徴を明らかにするが、本発明のすべての実施の形態が必ずしも本明細書に記載されている個々の利点を示すとは限らない。
【0042】
図1は、1つのホログラムを用いた比較例における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【0043】
図2は、図1に示された干渉計システムの検出器上の規則的な点配列に結像される光学素子上の歪んだ点配列を示したものである。
【0044】
図3は、2つのホログラムを用いた本発明の第1の実施の形態における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【0045】
図4は、図3に示された干渉計システムの一部を拡大して詳細に示したものである。
【0046】
図5は、図3に示された干渉計システムの検出器上の規則的な点配列に結像される光学素子上の点配列を示したものである。
【0047】
図6は、図3の干渉計システムを用いた光学素子の製造方法のフローチャートである。
【0048】
図7は、1つのホログラムを用いたさらなる比較例における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【0049】
図8は、図7に示された干渉計システムの検出器上の規則的な点配列に結像される光学素子上の歪んだ点配列を示したものである。
【0050】
図9は、2つのホログラムを用いた本発明の第2の実施の形態における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【0051】
図10は、図9に示された干渉計システムの検出器上の規則的な点配列に結像される光学素子上の点配列を示したものである。
【0052】
図11は、本発明の第3の実施の形態における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【0053】
図12は、本発明の第4の実施の形態における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【0054】
図13は、本発明の第5の実施の形態における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【0055】
図14は、本発明の第6の実施の形態における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【0056】
図15は、図3、図9及び図11〜図14に示された干渉計システムに用いることができるホログラムの概略図である。
【0057】
図16は、本明細書において用いられる非球面の特性の一部を示すグラフである。
【0058】
以下に示す典型的な実施の形態において、機能及び構造が等しい構成要素は、可能な限り同じ参照符号で示す。従って、特定の実施の形態の個々の構成要素の特徴を理解するために、他の実施の形態の説明及び課題を解決するための手段を参照されたい。
【0059】
以下に記載する方法の典型的な実施の形態には、干渉計装置により与えられる測定光の入射ビームと測定される表面との相互作用によって生成される波面を、干渉計を用いて測定する工程が含まれる。このような測定の基礎として、複数の従来の干渉法が使用される。このような干渉法は、例えば、米国特許第5,361,312号明細書、米国特許第5,982,490号明細書及び米国特許出願公開第2002/0063867号明細書に開示されている。これらの全開示を参照により本明細書に援用する。
【0060】
本発明の実施の形態の特殊性が分かるように、まず、1つのホログラムを用いた従来型の干渉計システムについて、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0061】
図1に示す従来型の干渉計システム1は、ミラー5の非球面形状のミラー面3を検査するために用いられる。この例のミラー面3は、対称軸7に対して回転対称な形状を有している。
【0062】
干渉計システム1は、測定光のビーム13を生成するための光源11を備えている。光源11は、レーザビーム16を出射するヘリウムネオンレーザ15を備えている。レーザビーム16は、コヒーレント光の発散ビーム18がピンホール絞りから発生するように、集束レンズ19によって、空間フィルタ20の前記ピンホール絞り上に集束される。発散ビーム18の波面は、実質的に球状の波面である。発散ビーム18は、実質的に平坦な波面を有する測定光の平行ビーム13を形成するために、光軸9を有するレンズ群21によって平行にされる。干渉計光学系15によって供給され光学面(ミラー面)3に入射するビーム23が、それぞれの位置において光学面3の目標とする形状に対応する形状の波面を有するように、測定光のビーム13は、当該測定光のビーム13を変形し成形する干渉計光学系15を横切る。従って、光学面3が、その表面形状が目標とする形状に対応するように機械加工される場合、ビーム23の光は、それぞれの位置において、光学面3上に直角に入射する。その後、光学面3で反射された光は、光学面3に入射した際と全く同一の経路を逆向きに進み、干渉計光学系15を横切って、その一部分が、測定光のビーム13の前記部分内に配置されたビームスプリッタ31で反射される。ここで、ビーム13は、平坦な波面を有する平行ビームである。ビームスプリッタ31で反射されたビーム29は、カメラ34の対物レンズ系35を通って、カメラチップ39の感光面37上に結像され、その結果、光学面3がカメラ34に結像される。
【0063】
干渉計光学系15は、基板17を横切った測定光の平行ビーム13に対して直角に向けられた、平面19を有するくさび形基板17を備えている。平面19は、測定光のビーム13の一部が反射する、干渉計システム1のフィゾー面を形成する。測定光のビーム13の反射された部分は、干渉法のための参照光を形成する。平面(フィゾー面)19で逆方向に反射された参照光は、平面19に入射した際と同一の経路を逆向きに進むため、光学面3で反射された測定光と重ね合わされる。また、参照光は、ビームスプリッタ31によって偏向され、カメラチップ39の感光面37上に結像され、その結果、光学面3で反射された波面と、フィゾー面19で逆方向に反射された波面とが重ね合わされることによって発生した干渉縞が、カメラ34によって検出されてもよい。
【0064】
上記のとおり、干渉計光学系15は、光学面3の位置において、平行な波面を有する測定光の入射ビーム13を、非球面の波面を有する測定光のビーム23に変形するように、設計されている。このために、干渉計光学系15は、光学面3の向かい側の1つの面がホログラム25を備えた、2つの平行な平面を有する基板24を含んでいる。ホログラム25は、平坦な波面を有するビーム13を正確に偏向し、光学面3の位置におけるビーム23の波面が、光学面3の目標とする形状に略対応する形状を有するように設計された、コンピュータ生成ホログラム(CGH)である。ホログラム25は、光線追跡などの方法を含む、コンピュータを用いて対応する格子を計算し、かつ、計算された格子を基板24の面上にプロットすることによって得ることができる。格子は、例えば、リソグラフ法によって形成することができる。干渉法において用いられるホログラムに関する背景情報は、上記したダニエル マラカラのテキストブックの第15章により入手可能であろう。
【0065】
図2は、検出器34の感光面37上の規則的な点領域に結像される光学面3上の歪んだ点配列を示している。光学面3上の歪んだ配列と検出面37上の規則的な配列との間には結像関係が存在する。
【0066】
図1はまた、ホログラム25を横切るビーム13の光線が互いに均一な間隔で離間していることを示している。これら光学面3に入射する光線の間隔は、対称軸7から離れるほど大きくなる。
【0067】
検出器チップ39の画素は、一定ピッチの規則的な矩形領域に配列されている。 しかし、干渉計光学系15の歪曲により、検出器の対応する画素に結像される光学面3上の点は、一定ピッチの規則的な矩形領域に配列されない。光学面3上の隣接する点の間隔は、対称軸7から離れるほど大きくなる。従って、検出器上の画像の解像度は、光学面3の中心から離れるほど小さくなる。光学面3の干渉測定の精度は、光学面の中心よりもその外周部で小さくなる。
【0068】
光学面の、結像倍率のばらつきを引き起こす能力は、以下に図16を参照しながら説明するように、光学面自体に由来する。
【0069】
図16は、座標系x、y、zに配置された任意の形状を有する非球面3を示しており、x及びyは光学面3の横座標である。光学面の点(x0,y0)において、座標値z、すなわち、光学面の高さは、(x0,y0)で0となるように、すなわち、z(x0,y0)=0となるように選択される。図示された例において、z=0はまた、すべての点(x,y)のzの最大値である。すなわち、max(z(x,y))=0である。ホログラム25は、z=0からd=50mmの距離に配置されている。すなわち、ホログラム25は、z=50mmに配置されている。φはxy平面における角度を表し、φ=0の場合、x方向を示す。
【0070】
図16はさらに、任意の点(x1,y1)で光学面3に接触する2つの円を示している。第1の円は、半径Rφ=0°を有し、φ=0°は、x方向が、第1の円が延びる平面に一致することを示している。第2の円は、半径Rφ=90°を有し、φ=90°は、y方向が、第2の円の平面に延びることを示している。点(x1,y1)において、光学面3は、向きがφ=0°及びφ=90°の場合に、それぞれc(0,x1,y1)=1/Rφ=0°及びc(90°,x1,y1)=1/Rφ=90°の曲率を有する。曲率がc(φ,x,y)>0の場合、点(x,y)及び向きφで光学面は凹面となり、曲率がc(φ,x,y)<0の場合、点(x,y)及び向きφで光学面は凸面となる。
【0071】
Rφ=90°はRφ=0°よりも大きい。このことから、光学面3が点(x1,y1)で非球面形状を有することは明らかである。これは、光学面3の曲率半径が、接触している円の向きごとに異なるからである。
【0072】
αは、点(x1,y1)での光学面3の表面法線と、光学面3の平均表面法線とがなす角度を示している。図16に示された例においては、平均表面法線はz方向と一致することとする。しかし、図1に示すような干渉測定装置で検査される任意の非球面が必ずしもこれを満たす必要はない。
【0073】
1/kφ=0°は、半径がRφ=0°の円の中心と点(x1,y1)との間のz方向において測定した距離を表わしている。同様に、1/kφ=90°は、半径がRφ=90°の円の中心と点(x1,y1)との間の突出した(projected)距離を表わしている。実際には、1/kは、点(x1,y1)のまわりの光学面3の領域に直角に入射する光のビームから生成される火面(caustic)の距離を表わしている。
【0074】
kは、以下の関係式によって計算することができ、dは、d=max(z(x,y))+50mm(ここで、d>0)と記述することができる。
【0075】
【数15】

【0076】
局所スケールβは、以下の関係式によって定義することができる。
【0077】
【数16】

【0078】
また、非球面3によって生成される最大局所スケールずれΔβは、以下の関係式によって定義することができる。
【0079】
【数17】

【0080】
上記関係式中、max(β(φ,x,y))は、光学面のすべての点(x,y)及びすべての向きφでのβの最大値である。同様に、min(β(φ,x,y))は、光学面のすべての点(x,y)及びすべての向きφでのβの最小値である。
【0081】
図3は、図1に示された光学素子5の光学面3を検査するための、本発明の一実施の形態における干渉計システム1aを示している。干渉計システム1aは、光学面3に垂直に入射するビーム23aを発生させる干渉計光学系の構成を除いて、図1に示したものと同様である。
【0082】
干渉計光学系15aは、干渉計システム1aのフィゾー面19aを形成するややくさび形状のプレート17aと、2つの対向する表面42、43を有し、表面43に第1のホログラム44が設けられた基板41と、基板41から離間して配置され、2つの対向する表面46、47を有し、表面47にホログラム48が設けられた基板45とを備えている。2つのホログラム44、48は、実質的に平坦な波面を有する測定光のビーム13aが、光学面3の目標とする形状に対応する非球面の波面を有するビーム23aに変換され、ビーム23aが光学面3の各点に垂直に入射するように設計された、コンピュータ生成ホログラムである。
【0083】
図3及び図4は、第1のホログラム44が設けられた表面43上で互いに均一な間隔で離間した光線49を示している。光線49は、ホログラム44により、ホログラム48が設けられた表面47上において軸7aから離れるほど光線間隔が連続的に小さくなる光線50に回折される。ホログラム48は、光線50を回折し、光学面3上において、互いに均一な間隔で離間された光線51を形成する。検出器35aの感光面37a上に形成される光学面3の画像は、実質的に歪曲を有しないと考えられる。このことは、検出器34aの感光面37aの矩形状の規則的な点配列に結像される光学素子5上の点の配列を示す図5からも明らかである。図5に示す配列は、1つのホログラムを有する従来型の干渉計光学系で得られた図2の配列と比較して、実質的に規則的な配列となっている。従って、互いに離間して配置された2つのホログラム44、48を用いた干渉計システム1aは、非球面形状の光学面3を測定するための干渉計光学系15aの画像歪曲を大幅に低減することができる。このため、光学面3の表面全体において実質的に同じ精度で、光学素子5の表面形状を求めることができる。
【0084】
以下、干渉計光学系15a及び光学面3の詳細について説明する。非球面形状の光学面3は、以下の関係式によって表わすことができる。
【0085】
【数18】

【0086】
上記関係式中、
zはz軸に平行な表面のサグ、
cは面の極点(pole)での曲率(CUY)、
kは円錐係数(K)、
A、B、C、D、E、F、G、H、Jはそれぞれ4次、6次、8次、10次、12次、14次、16次、18次、20次の歪み係数(deformation coefficient)を表わし、完全な円錐面の場合、A=B=C=D=E=F=G=H=J=0である。
【0087】
また、h2=x2+y2である。
【0088】
図3に示した例での、この式における光学面3のパラメータは、次の通りである。
【0089】
K:0.000000 A:0.000000E+00
B:−.350000E−12 C:0.000000E+00
D:0.000000E+00
測定光のビーム経路における光学素子の光学データを、下記(表1)に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
mmでのホログラム44、48の位相関数は、次の多項式によって表わすことができる。
【0092】
12+C24+・・・ 式(2)
ここで、r2=x2+y2である。
【0093】
第1のホログラム44の、この多項式の係数は、次の通りである。
【0094】
C1: 3.9662E−04 C2: 1.9126E−08
C3:−9.2030E−12 C4:−6.0838E−16
C5: 1.1364E−19 C6: 8.3906E−23
C7:−1.1693E−26 C8: 1.8023E−30
C9:−9.7394E−33 C10: 6.6872E−36
C11:−2.2301E−39 C12: 4.3823E−43
C13:−5.1965E−47 C14: 3.4539E−51
C15:−9.9096E−56
第2のホログラム48の、この多項式の係数は、次の通りである。
【0095】
C1: 1.2106E−03 C2:−1.7518E−08
C3: 1.0986E−11 C4: 9.5008E−17
C5:−1.7982E−19 C6: 2.4314E−22
C7:−2.1111E−25 C8: 1.2363E−28
C9:−5.0422E−32 C10: 1.4751E−35
C11:−3.0774E−39 C12: 4.4588E−43
C13:−4.2390E−47 C14: 2.3581E−51
C15:−5.7239E−56
以下、コンピュータ生成ホログラム44、48の設計及び作製方法について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0096】
第1のステップ101において、軸7a上でのホログラム44、48の位置及び光学面3の位置が決定される。ステップ103において、光学面3上の規則的な点配列が選択される。ステップ105において、対応する第1のホログラム44の表面43上の規則的な点配列が選択される。ステップ107において、光線追跡プログラムを用いて、光学面3の選択された各点から90°の角度で出射する光線51が計算される。ステップ109において、これらの光線が第2のホログラム48の表面47と交差する点が計算される。その後、ステップ111において、表面47と交差する点と、対応する第1のホログラム44の表面43上の規則的な点配列とをつなぐ光線50が計算される。ステップ113において、第1のホログラム44の表面43上での光線49と光線50との間の偏向角、及び第2のホログラム48の表面47での光線50と光線51との間の偏向角が計算される。ステップ115において、得られた偏向角に基づいて、第1及び第2のホログラム44、48の表面43、47の各点ごとに、格子ピッチが決定される。ステップ117において、ステップ115で決定された格子ピッチを積分することにより、各ホログラム44、48の位相関数が計算される。
【0097】
ステップ119において、得られた位相関数に基づいて、第1及び第2のホログラム44、48が作製される。
【0098】
その後、ステップ121において、第1及び第2のホログラム44、48が、干渉計システム1aのビーム経路に配置される。
【0099】
干渉計システム1aを用いて光学面3を高精度に製造する方法について、図6に示すフローチャートを参照しながらさらに説明する。ステップ125において、光学素子5が測定光のビーム23aのビーム経路に配置され、ステップ127において、干渉測定が行われる。干渉測定終了後、ステップ129において、光学面3の干渉測定に基づいて、光学面の表面マップが求められる。
【0100】
ステップ131において、ステップ129で得られた表面マップに基づいて、測定された光学面の形状とその目標とする形状との差が計算される。ステップ133において、検査された非球面がその目標とする形状、すなわち、完成光学面(finished optical surface)の仕様と一致しているかどうかが決定される。その差が適切に選択された閾値よりも小さい場合、光学面に対して仕上げステップ135が行われる。この仕上げは、光学面の仕上げ研磨や、スパッタリングのような適切な方法によって光学面に塗布される、反射コーティング、反射防止コーティング及び保護コーティング等の、適切なコーティングを蒸着する工程を含んでいてもよい。反射コーティングは、例えば、複数層(例えば、酸化モリブデンや酸化シリコンといった誘電体材料が交互に並んだ10層)を含んでいてもよい。このような層の厚みは、約5nmとすることができ、反射率が実質的に高くなるように、光学面で反射される波長に適合される。最後に、反射コーティングを皮膜で保護するための保護キャップ層によって当該反射コーティングを被覆してもよい。保護キャップ層は、ルテニウムのような材料を蒸着することによって形成される層を含んでいてもよい。レンズ素子などの光学素子の光学面における放射線の反射を低減させることを目的とする反射防止コーティングは、フッ化マグネシウム、酸化ランタン及び他の適切な材料などの材料を含んでいてもよい。また、反射防止コーティングは、保護キャップ層によって保護されていてもよい。
【0101】
ステップ133において、決定された差が閾値未満である場合には、光学面3を加工するステップ139において処理手順が継続される。このために、光学素子は、干渉計光学系15aのビーム経路から取り外され、決定された表面形状と目標とする形状との差が閾値を超える光学面の表面部分を取り除くために適切な機械工具(machine tool)に搭載される。その後、ステップ125において処理手順が継続され、光学素子3が再び干渉計システム1aにおける測定光のビーム23a中に搭載され、光学面の表面形状の測定と、目標とする形状との差を決定する工程と、機械加工工程とが、その差が前記閾値よりも小さくなるまで繰り返される。
【0102】
機械加工は、ミリング、研削、ルース・アブラシブ研削、研磨、イオンビーム面出し及び磁気レオロジー面出しなどの動作を含み得る。
【0103】
ステップ135において光学面が仕上げられた後、ステップ137において、光学素子が送出されて光学系に組み込まれる。その後、ステップ125において、次の検査される光学素子が干渉計ビーム経路内に搭載され、この次の表面が仕様を満たすまで、この次の表面を測定する工程と機械加工工程とが繰り返し行われる。
【0104】
上記閾値は、光学系に合わせて設計された光学面の用途に依存する。例えば、光学面が、波長λ=193nmの放射線によってレチクル構造をレジスト上に結像するための対物レンズにおけるレンズ面である場合、このような閾値は、約1nm〜10nmの範囲とすることができ、光学面が、波長λ=13.5nmのEUV(超紫外線)を用いた結像対物レンズにおけるミラー面として使用される場合、閾値は、約0.1nm〜1.0nmの範囲となるであろう。尚、上記閾値は、光学面の全体にわたって一定である必要はない。閾値は、例えば、光学面の中心からの距離や他のいくつかのパラメータに依存することもあり得る。特に、測定された表面とその目標とする形状との差の、異なる範囲の空間周波数のそれぞれに対して複数の閾値を定義してもよい。
【0105】
図7は、1つのホログラムを用いた従来型の干渉計システム1bの一部を示している。この干渉計システム1bの干渉計光学系15bには、実質的に平坦な波面を有する測定光のビーム13bが供給され、干渉計光学系15bは、干渉計システム1bのフィゾー面19bを形成するくさび形状の基板17bと、ホログラム25bが設けられた基板24bと、製造される光学素子5bの表面3bに実質的に垂直に入射する測定光のビーム23bを生成するレンズ51とを備えている。ホログラム25bは、ビーム13bを回折して、ビーム23b’を形成する。ビーム23b’は、レンズ51によってビーム23bに変換される。
【0106】
検出器上の規則的な点領域に結像される光学素子3b上の歪んだ点配列を示す図8から分かるように、干渉計光学系15bは、干渉計システム1bの検出器上に形成される光学面3bの画像にかなりの歪曲を与える。
【0107】
図9は、本発明の一実施の形態における、測定光のビームのビーム経路に沿って互いに離間して設けられた2つのホログラムを用いた干渉計システム1cの一部を示している。干渉計システム1cの干渉計光学系15cには、実質的に平坦な波面を有する測定光のビーム13cが供給され、干渉計光学系15cは、干渉計システム1cのフィゾー面19cを形成する基板17cと、表面43c、47cにそれぞれコンピュータ生成ホログラム44c、48cが設けられた2つの基板41c、45cと、レンズ面52c、53cを有するレンズ51cとを備えている。この2つのホログラム44c、48c及びレンズ51cは、測定光のビーム13cが、光学面3bの各点に対して垂直に入射するビーム23cに変換され、干渉計システム1cの検出器上に形成される光学面3bの画像が実質的に歪曲を有しないように設計されている。検出器上に形成される光学面3bの実質的に歪曲を有しない画像は、検出器上の規則的な点配列に結像される光学素子上の点配列を示す図10から明らかである。
【0108】
既に図6を参照しながら説明したように、ホログラム43c、48cは計算法によって計算され、光学面3bから第2のホログラム48cへの光線追跡には、レンズ51cを通る光線追跡が含まれる。
【0109】
非球面3bのパラメータは、次の通りである。
【0110】
K:0.000000 A:0.000000E+00
B:0.400000E−12 C:0.000000E+00
D:0.000000E+00
干渉計光学系15cの光学データを、下記(表2)に示す。
【0111】
【表2】

【0112】
表面43c上の第1のホログラム44cの、上記式(2)の係数は、次の通りである。
【0113】
C1:−4.1854E−04 C2:−1.8315E−07
C3: 3.6789E−11 C4:−1.9723E−15
C5: 1.7749E−19 C6:−2.5103E−24
C7: 7.2263E−28 C8: 4.3473E−31
C9:−1.3488E−34 C10: 7.3772E−39
表面47c上の第2のホログラム48cの、上記式(2)の係数は、次の通りである。
【0114】
C1: 1.4447E−03 C2: 2.4396E−07
C3:−3.6174E−11 C4:−5.3029E−15
C5:−1.8327E−19 C6: 6.0028E−22
C7:−1.4299E−25 C8: 1.6857E−29
C9:−1.0887E−33 C10: 3.1637E−38
図11は、非球面を測定するためのホログラムを2つ用いた干渉計システム1dのさらなる実施の形態を示している。干渉計システム1dの干渉計光学系15dは、測定光のビーム経路に互いに離間して配置された、第1の基板41dと第2の基板45dとを備えている。基板41dには、その表面43dに、実質的に平坦な波面を有するビーム13dを回折してビーム23d’を形成するホログラム44dが設けられている。基板45dには、その表面46dに、ビーム23d’を回折し、検査対象となる光学面3dに実質的に垂直に入射する測定光のビーム23dを形成するホログラム48dが設けられている。ホログラム44d、48dは、干渉計システム1dの検出器上に形成される光学面3dの画像が実質的に歪曲を有しないように計算される。ホログラム43d、48dはどちらも、それぞれ同じ方向においてかなりの角度でビーム13d、23d’の光線を回折する。
【0115】
既に説明した実施の形態において、検査対象となる光学面と相互作用した測定光は、光学面で反射した光である。図12は、検査対象となる光学面と相互作用する測定光が当該光学面を横切る、2つのホログラムを用いた干渉計システム1eを示している。干渉計システム1eの干渉計光学系15eは、第1及び第2のホログラム44e、48eがそれぞれ設けられた2つの基板41e、45eと、ミラー63の球状のミラー面61とを備えている。球状のミラー面61は、高精度に加工されており、従来の方法により単独で検査される。製造される光学素子5eは、既に高精度で加工された凹面4eと、干渉計システム1eで、その目標とする形状と比較される検査対象となる、非球面の目標とする形状を有する凸面3eとを有するレンズである。レンズ5eは、第2のホログラム48eと球状のミラー面61との間の測定光のビーム経路において、対称軸7e上の所定の位置に配置される。光学素子を横切る測定光を用いた光学素子の検査を伴う方法は、2004年5月14日に本出願人により出願された出願番号第10/845,259号に開示されている。この全内容を本願に引用して援用する。
【0116】
ホログラム44e、48eの位相関数は、既に図6を参照しながら説明した方法と同様の計算法(computation method)によって計算される。ホログラム44e、48eは、加工される光学面3e上の点と干渉計システム1eの検出器上の点とが実質的に歪曲なく一致するように設計されている。これは、以下のようにして達成される。まず、凸面3e上の規則的な点配列を選択し、ミラー面61から90°の角度で出射する光線が光学面3eの選択された各点に入射するように、ミラー面61上の対応する点を計算する。その後、既に図6を参照しながら説明した方法にしたがって、これらミラー面61上の点から出射し、光学素子5eと、第2のホログラム48eと、第1のホログラム44eとを横切る光線を用いた光線追跡を行い、対応する規則的な点配列と一致させる。
【0117】
既に説明した実施の形態において、検査対象となる光学面は、回転対称な形状を有する面であり、光学素子も回転軸に対して回転対称である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。検査対象となる光学素子は、軸外光学素子であり、それは、光学面が回転対称な形状の一部にすぎず、その形状の回転軸が、光学素子の対称軸と一致しないことを意味している。特に、その形状の回転対称軸は、光学面の外側に配置されていてもよい。
【0118】
さらに、検査対象となる光学面は、対称軸を全く有しない非球面であってもよい。
【0119】
図13は、2つのホログラム44f、48fを用いた、光学素子5fの非球面3fを検査するための干渉計システム1eの一実施の形態を示しており、非球面3fの回転対称軸7fは、光学素子5fから離間して配置されている。
【0120】
上述した先の実施の形態とは異なり、2つのホログラム44f、48fが、同一の基板65の向かい合った面に設けられている。
【0121】
図14は、本発明のさらなる実施の形態における、干渉計システム1gの一部を示している。干渉計システム1gの干渉計光学系15gには、実質的に平坦な波面を有する測定光のビーム13gが供給される。干渉計光学系15gは、表面43g、47gにそれぞれコンピュータ生成ホログラム44g、48gが設けられた2つの基板41g、45gを備えている。この2つの基板41g、45gは、互いに離間して配置されており、レンズ面52g、53gを有するレンズ51gは、基板41gと基板45gとの間に配置されている。この2つのホログラム44g、48g及びレンズ51gは、測定光のビーム13gが、検査対象となる光学面3gの各点に対して垂直に入射するビーム23gに変換され、干渉計システム1gの検出器上に形成される光学面3gの画像が実質的に歪曲を有しないように構成されている。
【0122】
非球面3gのパラメータは、次の通りである。
【0123】
K:0.000000 A:−.405970E−07
B:−.783010E−14 C:0.715740E−16
D:−.217810E−20
干渉計光学系15gの光学データを、下記(表3)に示す。
【0124】
【表3】

【0125】
表面43g上の第1のホログラム44gの、上記式(2)の係数は、次の通りである。
【0126】
C1: 2.1076E−03 C2:−6.8604E−08
C3: 2.0794E−11 C4:−4.3810E−15
C5:−1.9065E−18 C6: 1.5072E−21
C7:−4.2056E−25 C8: 6.0195E−29
C9:−4.4088E−33 C10: 1.3192E−37
表面47g上の第2のホログラム48gの、上記式(2)の係数は、次の通りである。
【0127】
C1:−8.1705E−04 C2: 4.8852E−08
C3:−9.6561E−13 C4: 4.6487E−17
C5: 3.4312E−20 C6:−6.7765E−24
C7: 1.8848E−28 C8: 4.8934E−32
C9:−4.5768E−36 C10: 1.1921E−40
既に説明した実施の形態の干渉計光学系に用いられる第1及び第2のホログラムは、適しているものであればどのようなホログラムでもよい。実施の形態によっては、ホログラムは、基板上に互いに隣接して繰り返し配置された回折格子形成構造体を有する適切に設計された回折格子で形成される。各回折格子形成構造体は、回折格子形成構造体を繰り返し配置することにより、測定光を回折する回折格子の機能が得られるように、測定光のビームに異なる影響を及ぼす少なくとも2つの長尺の素子を有している。
【0128】
好ましい実施の形態によれば、回折されたビームの高い光強度の観点から、回折格子は、各回折格子形成構造体を形成する長尺な素子が測定光に対して異なる光路長を与える位相格子である。
【0129】
さらに好ましい実施の形態によれば、ホログラムは、回折格子がブレーズド回折格子である部分を少なくとも1つ含んでいる。ブレーズド回折格子の製造に関する背景情報は、M.A.ゴルブ(M.A.Golub)による「位相関数から回折光学素子のブレーズド表面レリーフ形状への一般的変換(Generalized conversion from the phase function to the blazed surface-relief profile of diffractive optical elements)」と題する論文(J.Opt.Soc.Am.A、Vol.16、No.5、1999年5月、1194〜1201頁に掲載)から入手可能である。
【0130】
本発明の実施の形態に用いることのできるブレーズド回折格子の例は、国際公開WO2004/025335号パンフレットや、S.アスティランら(S.Astilean et al)による「633nmで高い屈折率を有する材料にパターン形成される高効率なサブ波長回折素子(High efficiency subwavelength diffractive element patterned in a high‐refractive‐index material for 633nm)」と題する論文(OPTICS LETTERS、Vol.23、No.7、1998年4月1日、552〜554頁に掲載)や、P.ラランヌら(P.Lalanne et al)による「従来のエシェレット回折格子よりも高い効率を有するブレーズドバイナリーサブ波長回折格子(Blazed binary subwavelength gratings with efficiencies larges than those of conventional echelette gratings)」と題する論文(OPTICS LETTERS、Vol.23、No.14、1998年7月15日、1081〜1083頁に掲載)に記載されている。
【0131】
ブレーズド回折格子の典型的な実施の形態において、各回折格子形成構造体は、互いに隣接して配置された少なくとも3つの異なる長尺な経路長供給素子(path length providing element)で構成され、回折格子形成構造体の経路長供給素子によって与えられる光路長は、回折格子形成構造体の長尺方向を横切る方向において連続的に増加する。
【0132】
図15は、図3に示された干渉計光学系15aの基板45の半径方向断面を示している。
【0133】
図3から、光線50と光線51とがなす回折角は、軸7aから離れるほど大きくなり、ホログラム49の外周部で最も大きくなっていることが分かる。約1μmよりも小さい低ピッチp1は、外周領域Iにおいて軸7aから距離r1離れて位置している。回折格子形成構造体71は、ピッチp1で互いに隣接して配置され、光線50を1次の回折次数を有する光線51に偏向する回折格子を形成する。各回折格子形成構造体71は、基板41の階段状の表面形状によって形成されており、その表面形状は、2つの異なる素子731、732で構成されている。そして、これら素子は、素子732を横切る光線が、素子731を横切る光線に対して半波長の位相遅延を受けるように設計されている。領域Iにおいて、各経路長供給素子73は、約0.5μm〜約5μmの範囲の半径方向幅f1を有している。
【0134】
軸7aを中心とする環状領域Iにおいて、すべての回折格子形成構造体は、2つの異なる経路長供給素子731、732を有するタイプであり、ピッチp1と対応する素子幅f1は、ホログラムが計算された位相関数に一致するように設定されている。
【0135】
軸7aを中心とする環状領域IIにおいて、必要な回折角は領域Iでの回折角よりも小さく、領域IIの回折格子形成構造体71のピッチp2は、約1μm〜約10μmの範囲にある。回折格子形成構造体71によって形成される回折格子は、3つの異なる経路長供給素子731、732、733がこの順番で繰り返し配置されて各回折格子形成構造体71を形成するブレーズド回折格子である。素子733は、素子731と比べて半波長の位相遅延を発生させ、素子732は、素子731と比べて4分の1波長の位相遅延を発生させる。領域IIにおける経路長供給素子73の幅f2は、約0.5μm〜約5μmの範囲の範囲にある。
【0136】
領域IIよりも軸7aに近い環状領域IIIにおいて、必要な回折角は領域IIでの回折角よりもさらに小さく、領域IIIの回折格子形成構造体71のピッチp3は、約10μmよりも大きい範囲にある。領域IIIの回折格子形成構造体71は、4つの異なる経路長供給素子731、732、733、734で構成され、これらの経路長供給素子は半径方向にこの順番で繰り返し配置されることによりブレーズド回折格子を形成している。
【0137】
素子734、733及び732はそれぞれ、素子731と比べて、測定光の波長の2分の1、3分の2、3分の1の位相遅延を発生させる。領域IIIの素子73の幅f3は、約0.5μm〜約5μmの範囲にある。
【0138】
上記の実施の形態において、干渉計光学系は2つのホログラムを備えているが、これよりも多い数のホログラムを用いることもできる。
【0139】
上記した実施の形態において、干渉計システムは、フィゾー型のものである。しかし、本発明は、このような型の干渉計に限定されるものではない。他の型の干渉計、例えば、トワイマン−グリーン型の干渉計(その例は、ダニエル マラカラにより編集されたテキストブック、光学工場試験、第2版、ワイリー インターサイエンス パブリケーション(Wiley Interscience Publication)(1992)の第2.1章に説明されている)、マイケルソン型の干渉計(その例は、ダニエル マラカラにより編集されたテキストブックの第2.1章に説明されている)、マッハ−ツェンダー型の干渉計(その例は、ダニエル マラカラにより編集されたテキストブックの第2.6章に説明されている)、点回折型の干渉計(その例は、米国特許第5,548,403号明細書、及びパトリック P. ナウレアウ(Patrick P. Naulleau)らによる記事「超紫外線位相シフト点回折干渉計:サブオングストロームの参照波精度を有する波面計測器具」、応用光学‐IP、第38巻、第35項、7252〜7263頁、1999年12月に説明されている)、及び他の適切な型の干渉計を用いてもよい。
【0140】
また、上記干渉法に関係する光学部品は、測定中、重力の影響を受ける。そして、これにより、干渉計のビーム経路内に光学部品を配置するために適切なマウントに固定された、これらの光学部品の表面が変形する。図1〜図8及び図10において、光軸が水平方向を向いている場合であっても、光軸が重力場において垂直方向を向いている場合における測定と同様の測定を行うことが可能である。いずれにしても、重力場における光学部品の変形をシミュレートするための数学的方法を用いることが可能である。このような方法の1つとして、FEM(有限要素法)が知られている。上記された全ての光学的特徴及びずれは、決定された結果を修正及び/又は改善するための、このような数学的方法の結果を考慮に入れて決定される。
【0141】
本発明についてその典型的な実施の形態を参照して説明してきたが、様々な変更や変形が可能なことは当業者に明らかである。従って、本明細書に記載した本発明の典型的な実施の形態は、本発明を説明するものであって、限定するものではない。添付した特許請求の範囲において定義されている本発明の要旨及び範囲を逸脱しない範囲内において種々な変更を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、1つのホログラムを用いた比較例における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【図2】図2は、図1に示された干渉計システムの検出器上の規則的な点配列に結像される光学素子上の歪んだ点配列を示したものである。
【図3】図3は、2つのホログラムを用いた本発明の第1の実施の形態における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【図4】図4は、図3に示された干渉計システムの一部を拡大して詳細に示したものである。
【図5】図5は、図3に示された干渉計システムの検出器上の規則的な点配列に結像される光学素子上の点配列を示したものである。
【図6】図6は、図3の干渉計システムを用いた光学素子の製造方法のフローチャートである。
【図7】図7は、1つのホログラムを用いたさらなる比較例における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【図8】図8は、図7に示された干渉計システムの検出器上の規則的な点配列に結像される光学素子上の歪んだ点配列を示したものである。
【図9】図9は、2つのホログラムを用いた本発明の第2の実施の形態における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【図10】図10は、図9に示された干渉計システムの検出器上の規則的な点配列に結像される光学素子上の点配列を示したものである。
【図11】図11は、本発明の第3の実施の形態における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【図12】図12は、本発明の第4の実施の形態における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【図13】図13は、本発明の第5の実施の形態における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【図14】図14は、本発明の第6の実施の形態における、光学素子を検査するための干渉計システムを示したものである。
【図15】図15は、図3、図9及び図11〜図14に示された干渉計システムに用いることができるホログラムの概略図である。
【図16】図16は、本明細書において用いられる非球面の特性の一部を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標とする非球面形状の光学面を有する光学素子の製造方法であって、
測定光のビームを生成する工程と、
前記測定光が反射面に対して実質的に垂直に入射するように前記測定光のビームを前記反射面上へ導く工程であって、前記光学面と第1のホログラムとが前記測定光のビーム経路に互いに離間して配置され、第2のホログラムが前記光学面と前記第1のホログラムとの間の前記測定光の前記ビーム経路に配置される工程と、
参照光と、前記反射面で反射され、前記光学面と相互作用し、前記第1のホログラムによって回折され、前記第2のホログラムによって回折された前記測定光とを重ね合わせることにより、少なくとも1つの干渉測定を行う工程と、
前記少なくとも1つの干渉測定に基づいて、前記光学面の、その目標とする形状からのずれを決定する工程と、
前記決定されたずれに基づいて、前記光学素子の前記光学面を加工する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記測定光のビームは、前記第1のホログラムの位置において第1の直径を有し、前記第2のホログラムの位置において第2の直径を有し、前記第1及び第2のホログラム間の距離が、前記第1及び第2の直径の大きい方の直径の0.01倍よりも大きい請求項1に記載の方法。
【請求項3】
互いに第1の横方向距離だけ離れて前記第1のホログラムを横切る前記測定光のビームの光線対が、互いに第2の横方向距離だけ離れて前記光学面に入射し、
以下の関係式を満たす請求項1又は2に記載の方法。
【数1】

上記関係式中、
1は、第1の光線対の、前記第2の横方向距離に対する前記第1の横方向距離の比であり、
2は、前記第1の光線対以外の各光線対の、前記第2の横方向距離に対する前記第1の横方向距離の比である。
【請求項4】
前記ホログラムは、ブレーズド回折格子で形成された領域を含む請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記光学面は前記反射面を形成し、前記光学面と相互作用した前記測定光が前記反射面で反射する請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記光学面は前記反射面と別個に設けられ、前記光学面と相互作用した前記測定光が前記光学面を横切る請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのレンズが前記測定光のビームによって横切られ、
前記少なくとも1つのレンズが、前記第1のホログラムと前記光学面との間の前記測定光のビームの前記ビーム経路に配置される請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つのレンズが、前記第2のホログラムと前記光学面との間に配置される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのレンズが、前記第1のホログラムと前記第2のホログラムとの間に配置される請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記参照光が、前記測定光のビームによって横切られるフィゾー面で反射し、前記第1のホログラムが、前記フィゾー面と前記光学面との間の前記測定光のビームの前記ビーム経路に配置される請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1のホログラムは、第1の透明基板の表面に設けられ、前記第2のホログラムは、前記第1の透明基板とは異なる第2の透明基板の表面に設けられる請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1のホログラムは、透明基板の第1の表面に設けられ、前記第2のホログラムは、前記透明基板の第2の表面に設けられる請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記光学素子の前記光学面の前記加工工程が、前記光学素子の前記光学面のミリング、研削、ルース・アブラシブ研削、研磨、イオンビーム面出し、磁気レオロジー面出し及び仕上げ加工のうちの、少なくとも1つを含む請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記仕上げ加工は、前記光学面にコーティングを塗布することを含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記コーティングは、反射コーティング、反射防止コーティング及び保護コーティングのうちの、少なくとも1つを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
基板と、前記基板上に設けられた回折格子とを備えたホログラムであって、
前記回折格子は、その長尺方向を横切る方向に互いに隣接して繰り返し配置された複数の長尺な回折格子形成構造体によって形成され、
各回折格子形成構造体は、前記回折格子形成構造体の長尺方向を横切る方向に互いに隣接して配置された複数の異なる長尺な経路長供給素子で構成され、
各経路長供給素子は、前記経路長供給素子と相互作用する光ビームに所定の光路長を与え、
前記回折格子形成構造体の前記経路長供給素子によって与えられる前記光路長は、前記回折格子形成構造体の長尺方向を横切る方向において連続的に増加し、
前記回折格子は、前記回折格子形成構造体が第1のピッチで配置され、前記回折格子形成構造体が第1の数の異なる経路長供給素子で構成された第1の領域を備え、
前記回折格子は、前記回折格子形成構造体が第2のピッチで配置され、前記回折格子形成構造体が第2の数の異なる経路長供給素子で構成された第2の領域を備え、
前記第1のピッチが前記第2のピッチよりも小さく、前記第1の数が前記第2の数よりも小さいことを特徴とするホログラム。
【請求項17】
以下の関係式を満たす請求項16に記載のホログラム。
【数2】

【数3】

【数4】

上記関係式中、
1は前記第1のピッチであり、
2は前記第2のピッチであり、
1は前記第1の数であり、
2は前記第2の数である。
【請求項18】
1≧1及びN2≦32である請求項17に記載のホログラム。
【請求項19】
前記第1の数が2であり、前記第2の数が3である請求項16〜18のいずれかに記載のホログラム。
【請求項20】
前記第1の数が2であり、前記第2の数が4である請求項16〜18のいずれかに記載のホログラム。
【請求項21】
前記第1の数が2であり、前記第2の数が8である請求項16〜18のいずれかに記載のホログラム。
【請求項22】
前記第1及び第2のホログラムの少なくとも1つが、請求項16〜21のいずれかに記載のホログラムを含む請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
目標とする非球面形状の光学面を有する光学素子の製造方法であって、
測定光のビームを生成する工程と、
前記測定光が反射面に対して実質的に垂直に入射するように前記測定光のビームを前記反射面上へ導く工程であって、前記光学面とホログラムとが前記測定光のビーム経路において互いに離間して配置される工程と、
参照光と、前記反射面で反射され、前記光学面と相互作用し、前記ホログラムによって回折された前記測定光とを重ね合わせることにより、少なくとも1つの干渉測定を行う工程とを含み、
前記測定光のビームの回折は、前記ホログラムの回折格子形成構造体が第1のピッチで配置された第1領域を用いて、前記測定光のビームの第1の部分を第1の角度で回折することと、前記ホログラムの前記回折格子形成構造体が第2のピッチで配置された第2領域を用いて、前記測定光のビームの第2の部分を第2の角度で回折することとを含み、
前記第1の領域の前記回折格子形成構造体は、第1の数の異なる経路長供給素子で構成され、前記第2の領域の前記回折格子形成構造体は、第2の数の異なる経路長供給素子で構成され、
前記第1のピッチは前記第2のピッチよりも小さく、前記第1の角度は前記第2の角度よりも大きく、前記第1の数は前記第2の数よりも小さく、
前記方法はさらに、
前記少なくとも1つの干渉測定に基づいて、前記光学面の、その目標とする形状からのずれを決定する工程と、
前記決定されたずれに基づいて、前記光学素子の前記光学面を加工する工程とを含むことを特徴とする方法。
【請求項24】
以下の関係式を満たす光学面を少なくとも1つ含むことを特徴とする光学素子。
max−cmin>1m-1 及び
σRMS<1.0nm
上記関係式中、
maxは、前記光学面の最大曲率であり、
minは、前記光学面の最小曲率であり、
σRMSは、0.3mm〜10.0mmの範囲の空間的な長さスケ−ルのために求められる平方2乗平均表面粗さである。
【請求項25】
max−cmin>5m-1である請求項24に記載の光学素子。
【請求項26】
σRMS<0.2nmである請求項24又は25に記載の光学素子。
【請求項27】
σRMSは、0.3mm〜3.0mmの範囲の空間的な長さスケ−ルのために求められる請求項24〜26のいずれかに記載の光学素子。
【請求項28】
σRMSは、1.0mm〜10.0mmの範囲の空間的な長さスケ−ルのために求められる請求項24〜26のいずれかに記載の光学素子。
【請求項29】
以下の関係式を満たす光学面を少なくとも1つ含むことを特徴とする光学素子。
σRMS<1.0nm 及び
【数5】

【数6】

上記関係式中、
σRMSは、0.3mm〜10.0mmの範囲の空間的な長さスケ−ルのために求められる前記光学面の表面粗さの平方2乗平均値であり、
max(β(φ,x,y))は、前記光学面上のすべての点(x,y)及びすべての向きφでのβの最大値であり、
min(β(φ,x,y))は、前記光学面上のすべての点(x,y)及びすべての向きφでのβの最小値であり、
α(x,y)は、点(x,y)での前記光学面の表面法線と、前記光学面のすべての点での表面法線の平均とがなす角度であり、
c(φ,x,y)は、向きφで求められた点(x,y)での前記光学面の曲率であり、
z(x,y)は、点(x,y)での前記光学面の表面高さであり、少なくとも1つの点(x0,y0)において、z(x0,y0)=0が満たされ、
dは、d=max(z(x,y))+50mmで表わされる定数であり、max(z(x,y))は前記光学面上のすべての点(x,y)のzの最大値である。
【請求項30】
以下の関係式を満たす請求項29に記載の光学素子。
【数7】

【請求項31】
σRMS<0.2nmである請求項29又は30に記載の光学素子。
【請求項32】
σRMSは、0.3mm〜3.0mmの範囲の空間的な長さスケ−ルのために求められる請求項29〜31のいずれかに記載の光学素子。
【請求項33】
σRMSは、1.0mm〜10.0mmの範囲の空間的な長さスケ−ルのために求められる請求項29〜32のいずれかに記載の光学素子。
【請求項34】
以下の関係式を満たす回転対称な光学面を少なくとも1つ含むことを特徴とする光学素子。
max−cmin>1m-1 及び
σRMSa<1.0nm
上記関係式中、
maxは、前記光学面の最大曲率であり、
minは、前記光学面の最小曲率であり、
σRMSaは、前記光学面の絶対非回転対称表面誤差の平方2乗平均値である。
【請求項35】
max−cmin>5m-1である請求項34に記載の光学素子。
【請求項36】
σRMSa<0.2nmである請求項34又は35に記載の光学素子。
【請求項37】
σRMSaは、0.3mm〜3.0mmの範囲の空間的な長さスケ−ルのために求められる請求項34〜36のいずれかに記載の光学素子。
【請求項38】
σRMSaは、1.0mm〜10.0mmの範囲の空間的な長さスケ−ルのために求められる請求項34〜36のいずれかに記載の光学素子。
【請求項39】
以下の関係式を満たす回転対称な光学面を少なくとも1つ含むことを特徴とする光学素子。
σRMSa<1.0nm 及び
【数8】

【数9】

上記関係式中、
σRMSaは、前記光学面の絶対非回転対称表面誤差の平方2乗平均値であり、
max(β(φ,x,y))は、前記光学面上のすべての点(x,y)及びすべての向きφでのβの最大値であり、
min(β(φ,x,y))は、前記光学面上のすべての点(x,y)及びすべての向きφでのβの最小値であり、
α(x,y)は、点(x,y)での前記光学面の表面法線と、前記光学面のすべての点での表面法線の平均とがなす角度であり、
R(x,y)は、点(x,y)での前記光学面の曲率半径であり、
c(φ,x,y)は、向きφで求められた点(x,y)での前記光学面の曲率であり、
dは、d=max(z(x,y))+50mmで表わされる定数であり、max(z(x,y))は前記光学面上のすべての点(x,y)のzの最大値である。
【請求項40】
以下の関係式を満たす請求項39に記載の光学素子。
【数10】

【請求項41】
σRMSa<0.2nmである請求項39又は40に記載の光学素子。
【請求項42】
目標とする非球面形状の光学面を有する光学素子の検査方法であって、
測定光のビームを生成する工程と、
前記測定光が前記光学面に対して実質的に垂直に入射するように前記測定光のビームを前記光学面上へ導く工程と、
前記光学面で反射した前記測定光を用いて検出器上に前記光学面を結像し、参照光を前記検出器上へ導く工程と、
前記検出器によって生成された画像情報を分析することにより、少なくとも1つの干渉測定を行う工程とを含み、
前記光学面が以下の関係式を満たし、
【数11】

【数12】

上記関係式中、
max(β(φ,x,y))は、前記光学面上のすべての点(x,y)及びすべての向きφでのβの最大値であり、
min(β(φ,x,y))は、前記光学面上のすべての点(x,y)及びすべての向きφでのβの最小値であり、
α(x,y)は、点(x,y)での前記光学面の表面法線と、前記光学面のすべての点での表面法線の平均とがなす角度であり、
c(φ,x,y)は、向きφで求められた点(x,y)での前記光学面の曲率であり、
z(x,y)は、点(x,y)での前記光学面の表面高さであり、少なくとも1つの点(x0,y0)において、z(x0,y0)=0が満たされ、
dは、d=max(z(x,y))+50mmで表わされる定数であり、max(z(x,y))は前記光学面上のすべての点(x,y)のzの最大値であり、
前記結像工程が、以下の関係式を満たすように行われることを特徴とする方法。
【数13】

上記関係式中、
μ(φ,x,y)は、前記光学面上の点(x,y)での結像の方向φにおける結像倍率の値であり、
max(μ(x,y))は、前記光学面上のすべての点(x,y)でのμの最大値であり、
min(μ(x,y))は、前記光学面上のすべての点(x,y)でのμの最小値である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2008−528955(P2008−528955A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551625(P2007−551625)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【国際出願番号】PCT/EP2006/000518
【国際公開番号】WO2006/077145
【国際公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(503263355)カール・ツァイス・エスエムティー・アーゲー (435)
【Fターム(参考)】