説明

ホースとその製造方法

【課題】外周に螺旋状にワイヤ(線状体)が巻回された構造を持ち、内面が平滑で、製造工程が簡易なホースを提供する。
【解決手段】内面が平滑な管状の本体82と、この本体82を螺旋状に巻回する突条81とが一体成形された内チューブ8を用いることによって、ホースを組み立てた後で全体を加熱するなどの面倒な製造工程を設けることなく、内面が平滑であるとともに、螺旋状の外ワイヤ1により強度の向上が図られた構造とすることができる。また、内チューブ8の材質を流体の種類に応じて適宜に選択すれば、内チューブ8作成後の工程を変更することなく、流体の種類や性質に適合したホース100を容易に製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の流体を送るホースとその製造方法に係り、特に、補強のためのワイヤを外周に螺旋状に巻回したホースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
可撓性を保ちつつ耐久性の向上を図るため、中間の積層体を挟んで外周側と内周側に螺旋状のワイヤを備えるホースが知られている。特許文献1には、このような構造のホースに関する発明が記載されている。従来、外周と内周に2重のワイヤを備える構造のホースでは、ホースの内面に突出している内側のワイヤによって乱流が発生するため、ホースを流れる流体の圧力損失が大きくなるという不利益があった。特許文献1に記載されるホースでは、内側のワイヤ(内螺旋輪)の接液面を平坦化することによって、ホース内面の平坦化を図り、流体の圧力損失の低減を図っている。
【0003】
しかし、内側のワイヤの接液面を平坦化する上記の構造では、確かに平坦化を施さない場合よりも乱流の影響を低減できるが、内側のワイヤと中間の積層体との隙間に残液が溜まり易くなるという不利益がある。すなわち、ホースの内側に液体が残り易くなるため、異種の流体を通す用途には適さない。
【0004】
そこで、特許文献2に記載されるホースでは、内側ワイヤの更に内側に熱可塑性エラストマーの中空筒を形成し、その内側ワイヤを挟むようにして中空筒の外周にも熱可塑性エラストマーの内布を巻きつけている。そして、熱可塑性エラストマーよりなる中空筒と内布とを加熱接着して、凹凸や隙間のない内面平滑なホースを実現している。
【特許文献1】特許第3556278号明細書
【特許文献2】特開2005−42780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されるホースでは、特許文献1に記載されるホースと比較して、加熱接着の工程が余分に必要になるため、製造に時間がかかるという不利益がある。また、ホースに流れる流体の種類に応じて、中空筒の内側に更に中空筒を設ける必要があり、その中空筒の材質も種々に変更しなくてはならないことから、製造工程が複雑化するという不利益がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、外周に螺旋状にワイヤ(線状体)が巻回された構造を持ち、内面が平滑で、製造工程が簡易なホースとその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係るホースは、内面が平滑な管状の本体と当該本体を螺旋状に巻回する突条とが一体成形された内チューブと、前記内チューブを被覆する被覆部材と、前記被覆部材の外側から前記突条に沿って前記内チューブを巻回する外側線状体とを有する。
【0008】
本発明に係るホースによれば、内面が平滑な管状の本体と当該本体を螺旋状に巻回する突条とが一体成形された内チューブを用いることにより、ホースを組み立てた後で全体を加熱するなどの面倒な製造工程が不要になる。また、種類の異なる流体を通すホースを製造する場合には、前記内チューブの材質を流体の種類に応じて適宜に選択すればよく、前記内チューブを製造した後の工程に大きな変更が生じない。
【0009】
前記内チューブは、例えば、樹脂を含んだ基材によって一体成形されてよい。この場合、樹脂の種類は、流体の種類に応じて適宜に選択可能である。
【0010】
また、前記ホースは、前記突状の内部を貫通し、前記内チューブの前記本体を螺旋状に巻回する内側線状体を更に有してよい。
例えば、前記内チューブが樹脂を含んだ基材によって一体成形される場合、前記内側線状体を、前記内チューブの前記基材に含まれる樹脂より硬質の樹脂によって形成すれば、前記ホースの強度を向上することができる。
【0011】
また、前記内チューブを導電性樹脂によって形成すれば、静電気に対する除電効果が得られ、引火点の低い流体、例えばトルエンやキシレン等の有機溶剤を通すことができる。
【0012】
本発明の第2の観点に係るホース製造方法は、内面が平滑な管状の本体と当該本体を螺旋状に巻回する突条とが一体成形された内チューブを作成する第1工程と、前記内チューブを被覆部材により被覆する第2工程と、前記被覆部材の外側から前記突条に沿って前記内チューブに外側線状体を巻回する第3工程とを有する。
【0013】
本発明に係るホース製造方法によれば、内面が平滑な管状の本体と当該本体を螺旋状に巻回する突条とが一体成形された内チューブを作成することにより、ホースを組み立てた後で全体を加熱するなどの面倒な製造工程が不要になる。また、種類の異なる流体を通すホースを製造する場合には、前記内チューブの材質を流体の種類に応じて適宜に選択すればよく、前記第2工程,前記第3工程に大きな変更が生じない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外周に螺旋状にワイヤ(線状体)が巻回された構造を持ち、内面が平滑で、製造工程が簡易なホースを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るホース100の構造の一例を示す図であり、鎖線で示した領域はホースの径方向の断面を示す。
図2は、図1に示すホース100の断面を拡大して示した図である。
図3は、図1に示すホース100に用いられる内チューブ8の外観の一例を示す図である。
【0016】
本実施形態に係るホース100は、外ワイヤ1と、外被2と、補強布3,4と、フィルム5,7と、チューブ6と、内チューブ8と、内チューブ芯9とを有する。
外ワイヤ1は、本発明の外側線状体の一例である。
外被2、補強布3,4、フィルム5,7、チューブ6を含む構成部材は、本発明の被覆部材の一例である。
内チューブ8は、本発明の内チューブの一例である。
内チューブ芯9は、本発明の内側線状体の一例である。
【0017】
内チューブ8は、図3に示すように蛇腹状のホースであり、内面が平滑な管状の本体82と、この本体82を螺旋状に巻回する突条81とが一体成形されたものである。内チューブ8の材質は、ある程度の可撓性を有する一体成形可能な材質であれば、流体の種類や性質に応じて適宜に選択可能である。例えばポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ塩化ビニルなどの樹脂が用いられる。
【0018】
内チューブ芯9は、突状81の内部を貫通し、内チューブ8の本体82を螺旋状に巻回する線状体であり、後述する外ワイヤ1とともにホース100の強度を高める役割を有する。内チューブ芯9の材質は、ある程度の可撓性を有するとともにホース100の強度向上に貢献する材質であれば任意である。例えば内チューブ8が樹脂により形成される場合、内チューブ芯9はこの樹脂より硬質の樹脂(硬質プラスチックなど)によって形成可能である。また、亜鉛メッキ銅線やステンレス線などの金属性のワイヤや、アラミド繊維などでもよい。
【0019】
フィルム7は、例えばポリプロピレン製のフィルムであり、内チューブ8の周囲に巻着される。
チューブ6は、例えばポリプロピレンやナイロン等の樹脂で形成された管状の被覆部材であり、フィルム7の外側を被覆する。
フィルム5は、例えばポリプロピレン製の布であり、チューブ6の外側に巻着される。
補強布3,4は、例えばポリエステルやポリプロピレン、ポリアミド系繊維のフィルムであり、チューブ6の外側に重ねて巻着される。
外被2は、例えばポリエステルやポリプロピレンに樹脂コートした被覆部材であり、補強布3,4の外側を被覆する。
【0020】
上述した外被2、補強布3,4、フィルム5,7、チューブ6よりなる被覆部材が内チューブ8の周囲を被覆すると、その外側の表面は突条81に沿った螺旋状の溝を有する。外ワイヤ1は、この螺旋状の溝に沿って、被覆部材(2〜7)の外側から内チューブ8を螺旋状に巻回する。外ワイヤ1には、例えば亜鉛メッキ銅線やステンレス線などの金属製のワイヤや、樹脂製(プラスチック等)のワイヤを用いることができる。
【0021】
次に、上述した構成を有するホース100の製造方法について説明する。
【0022】
まず、第1工程として、上述した構造を有する内チューブ8を作成する。内チューブ8の製法は、内面平滑な蛇腹状のホースを樹脂等によって一体形成する一般的な製法を用いることができる。その際、突条81を貫通するように内チューブ芯9を内チューブ8に埋め込む。
【0023】
次に、第2工程として、内チューブ8を被覆部材(2〜7)によって被覆する。すなわち、内チューブ8の周囲にフィルム7を巻回し、その外側にチューブ6を被せ、その外側にフィルム5を巻回し、更にその外側に補強布3,4を重ねて巻き、最後に外被2によって全体を覆う。
【0024】
そして次に、第3の工程として、被覆部材(2〜7)の外側から突条81に沿って内チューブ8に外ワイヤ1を巻回する。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係るホース100によれば、内面が平滑な管状の本体82と、この本体82を螺旋状に巻回する突条81とが一体成形された内チューブ8を用いることによって、ホースを組み立てた後で全体を加熱するなどの面倒な製造工程を設けることなく、内面が平滑であるとともに、螺旋状の外ワイヤ1により強度の向上が図られた構造とすることができる。
また、内チューブ8の材質を流体の種類に応じて適宜に選択すれば、内チューブ8製造後の工程(第2工程,第3工程)を変更することなく、流体の種類や性質に適合したホース100を容易に製造することができる。
【0026】
また、内面が平滑であるため、流体の圧力損失を低減できるとともに、流体の残留を最小限に抑えることができる。
【0027】
更に、内チューブ芯9として硬質プラスチックや金属ワイヤなど、適度の強度と可撓性を有した線状体を用いることによって、強度と耐久性の向上を図ることができる。
【0028】
また、内チューブ8を導電性を持つ材料、例えば導電性樹脂などによって形成すれば、静電気に対する除電効果が得られ、引火点の低い流体、例えばトルエンやキシレン等の有機溶剤を通すことができる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の形態のみに限定されるものではなく、種々のバリエーションを含んでいる。
【0030】
例えば、内チューブ8と外ワイヤ1との間に挟まれる被覆部材(2〜7)の構造は任意であり、積層するフィルムやチューブの種類、数等はホースの用途に応じて任意に変更可能である。
【0031】
内チューブ8に形成される突条81の断面構造も任意であり、図1,図2に示すように先端の丸い棒状の形の他、先端が丸く根元がくびれた形状や、頂点を外側に向けた三角形の形状、その三角形の先端に丸みを持たせた形状、半円の形状など、種々の形状を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係るホースの構造の一例を示す図である。
【図2】図1に示すホースの断面を拡大して示した図である。
【図3】図1に示すホースに用いられる内チューブの外観の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
1…外ワイヤ、2…外被、3,4…補強布、5,7…フィルム、6…チューブ、8…内チューブ、81…突条、82…内チューブの本体、9…内チューブ芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面が平滑な管状の本体と当該本体を螺旋状に巻回する突条とが一体成形された内チューブと、
前記内チューブを被覆する被覆部材と、
前記被覆部材の外側から前記突条に沿って前記内チューブを巻回する外側線状体と
を有するホース。
【請求項2】
前記内チューブは、樹脂を含んだ基材によって一体成形される、
請求項1に記載のホース。
【請求項3】
前記突状の内部を貫通し、前記内チューブの前記本体を螺旋状に巻回する内側線状体を更に有する、
請求項1又は2に記載のホース。
【請求項4】
前記内チューブは、樹脂を含んだ基材によって一体成形され、
前記内側線状体は、前記内チューブの前記基材に含まれる樹脂より硬質の樹脂によって形成される、
請求項3に記載のホース。
【請求項5】
前記内チューブは、導電性樹脂により形成される
請求項3に記載のホース。
【請求項6】
内面が平滑な管状の本体と当該本体を螺旋状に巻回する突条とが一体成形された内チューブを作成する第1工程と、
前記内チューブを被覆部材により被覆する第2工程と、
前記被覆部材の外側から前記突条に沿って前記内チューブに外側線状体を巻回する第3工程と
を有するホース製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−101634(P2008−101634A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−282281(P2006−282281)
【出願日】平成18年10月17日(2006.10.17)
【出願人】(591067417)株式会社明治フレックス (5)
【Fターム(参考)】