説明

ポジ型感光性樹脂組成物

【課題】硬化後の熱処理による変色が少ないポジ型感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(a)ノボラック樹脂、(b)一般式(1)で表される構造単位を主成分とする樹脂、(c)酸化防止剤、オキセタン基含有化合物またはイソシアネート基含有化合物、(d)キノンジアジド化合物および(e)溶剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】


(上記一般式(1)中、RおよびRは炭素数2以上の2価〜8価の有機基を示す。RおよびRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。fおよびmは0〜2の整数、pおよびqは0〜4の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物に関する。より詳しくは、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などに適した、紫外線で露光した部分がアルカリ現像液に溶解するポジ型感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドやポリベンゾオキサゾールなどの耐熱性樹脂は、優れた耐熱性、電気絶縁性を有することから、LSI(Large Scale Integration)などの半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜や有機電界発光素子の絶縁層などに用いられている。近年、半導体素子の微細化に伴い、表面保護膜、層間絶縁膜などにも数μmの解像度が要求されている。このため、このような用途において、微細加工可能なポジ型の感光性ポリイミドやポリベンゾオキサゾールが用いられている。
【0003】
高感度で高解像度のポジ型感光性樹脂組成物として、ノボラック樹脂とポリイミド前駆体またはポリベンゾオキサゾール前駆体、キノンジアジド化合物を含有するポジ型感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。しかし、ノボラック樹脂は酸化されると着色するため、これらの樹脂組成物を硬化して得られる膜は、従来の感光性ポリイミドや感光性ポリベンゾオキサゾールから得られる硬化膜と比べると、熱処理によって変色しやすいという課題があった。表面保護膜や層間絶縁膜が変色すると、ワイヤーボンディング時に認識不良が発生する。このため、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜などの用途において、これらの樹脂組成物を感光性ポリイミドや感光性ポリベンゾオキサゾールに代えて使用することは困難であった。
【特許文献1】特開2005−062764号公報
【特許文献2】特開2005−250160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、硬化後の熱処理による変色が少ないポジ型感光性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)ノボラック樹脂、(b)一般式(1)で表される構造単位を主成分とする樹脂、(c)酸化防止剤、オキセタン基含有化合物またはイソシアネート基含有化合物、(d)キノンジアジド化合物および(e)溶剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物である。
【0006】
【化1】

【0007】
(上記一般式(1)中、RおよびRは炭素数2以上の2価〜8価の有機基を示す。RおよびRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。fおよびmは0〜2の整数、pおよびqは0〜4の整数を示す。)
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬化後の熱処理による変色が少ないポジ型感光性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(a)ノボラック樹脂、(b)前記一般式(1)で表される構造単位を主成分とする樹脂、(c)酸化防止剤、オキセタン基含有化合物またはイソシアネート基含有化合物、(d)キノンジアジド化合物および(e)溶剤を含有する。
【0010】
(a)ノボラック樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを公知の方法で重縮合することによって得られる。2種以上のノボラック樹脂を含有してもよい。
【0011】
上記フェノール類の好ましい例としては、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール等を挙げることができる。これらのフェノール類を2種以上用いてもよい。
【0012】
また、上記アルデヒド類の好ましい例としては、ホルマリン、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロロアセトアルデヒド等を挙げることができる。これらのアルデヒド類を2種以上用いてもよい。このアルデヒド類の使用量は、フェノール類1モルに対し、0.6モル以上が好ましく、0.7モル以上がより好ましい。
【0013】
本発明において、(a)ノボラック樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、1,000以上が好ましく、2,000以上がより好ましい。また、20,000以下が好ましく、10,000以下がより好ましい。この範囲であれば、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を基材へ塗布する際の作業性、アルカリ現像液への溶解性に優れる。
【0014】
(b)一般式(1)で表される構造単位を主成分とする樹脂は、加熱あるいは適当な触媒により、イミド環、オキサゾール環、その他の環状構造を有する樹脂となり得るものである。ポリイミド前駆体のポリアミド酸、またはポリアミド酸エステル、ポリベンゾオキサゾール前駆体のポリヒドロキシアミドが好ましい。環状構造となることで、耐熱性、耐溶剤性が飛躍的に向上する。これらの樹脂を2種以上含有してもよい。ここで、主成分とは、一般式(1)で表される構造単位を、樹脂の構造単位の50モル%以上有することを意味する。70モル%以上が好ましく、90モル%以上がより好ましい。
【0015】
【化2】

【0016】
上記一般式(1)中、Rは同じでも異なっていてもよく、炭素数2以上の2価〜8価の有機基を示し、酸の構造成分を表している。Rが2価となる酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸などを挙げることができる。Rが3価となる酸としては、トリメリット酸、トリメシン酸などのトリカルボン酸、Rが4価となる酸としてはピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸などのテトラカルボン酸や、そのカルボキシル基2個をメチル基やエチル基にしたジエステル化合物、ブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族テトラカルボン酸や、そのカルボキシル基2個をメチル基やエチル基にしたジエステル化合物を挙げることができる。また、ヒドロキシフタル酸、ヒドロキシトリメリット酸などの水酸基を有する酸も挙げることができる。これら酸成分は単独でも2種以上併用しても構わないが、テトラカルボン酸を1〜40モル%含むことが好ましい。また、アルカリ現像液に対する溶解性や感光性の観点から、水酸基を有する酸成分を50モル%以上用いることが好ましく、70モル%以上がより好ましい。
【0017】
は耐熱性の面から芳香族環を含有することが好ましく、炭素数6〜30の3価または4価の有機基がさらに好ましい。具体的には、一般式(1)のR(COOR(OH)として、下記に示す構造が好ましい。
【0018】
【化3】

【0019】
【化4】

【0020】
一般式(1)中、Rは同じでも異なっていてもよく、炭素数2個以上の2価〜8価の有機基を示し、ジアミンの構造成分を表している。得られる樹脂の耐熱性の点より、芳香族環を有するものが好ましい。ジアミン成分を2種以上併用しても構わない。ジアミンの具体的な例としては、フッ素原子を有した、ビス(アミノ−ヒドロキシ−フェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(トリフルオロメチル)ベンチジン、フッ素原子を有さない、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルエーテル、アミノフェノキシベンゼン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ビス(アミノフェノキシフェニル)プロパン、ビス(アミノフェノキシフェニル)スルホンあるいはこれらの芳香族環にアルキル基やハロゲン原子で置換した化合物、ジアミノジヒドロキシピリミジン、ジアミノジヒドロキシピリジン、ヒドロキシ−ジアミノ−ピリミジン、ジアミノフェノール、ジヒドロキシベンチジン、ジアミノ安息香酸、ジアミノテレフタル酸などの化合物や、シクロヘキシルジアミン、メチレンビスシクロヘキシルアミン、ヘキサメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、一般式(1)のR(COOR(OH)が下記に示す構造を有するものを挙げることができる。
【0021】
【化5】

【0022】
【化6】

【0023】
一般式(1)のRおよびRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜20の1価の有機基を示している。得られる感光性樹脂組成物の溶液安定性の観点からは、RおよびRは有機基が好ましいが、アルカリ水溶液に対する溶解性の観点からは、水素が好ましい。本発明においては、水素と有機基を混在させることができる。RおよびRは、炭素数1〜16の炭化水素基を少なくとも1つ以上含有し、その他は水素原子であることが好ましい。
【0024】
また、一般式(1)のmおよびfはカルボキシル基またはエステルの数を示しており、0〜2の整数である。好ましくは1または2である。一般式(1)のpおよびqは0〜4の整数を示す。一般式(1)で表される構造単位の数は、10〜100,000の範囲が好ましい。樹脂のアルカリ現像液への溶解性の面から、構造単位数は1,000以下がより好ましく、100以下がより好ましい。また、伸度向上の面から、構造単位数は20以上がより好ましい。構造単位数は、構造単位の分子量をM、樹脂の重量平均分子量をMwとすると、Mw/Mである。本発明における構造単位数は、ポリスチレン換算によるGPC測定を用いて算出する値をいう。
【0025】
さらに、基板との接着性を向上させるために、耐熱性を低下させない範囲で一般式(1)のRおよび/またはRにシロキサン構造を有する脂肪族の基を用いてもよい。具体的には、ジアミン成分として、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノ−フェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどを1〜10モル%共重合したものなどが挙げられる。
【0026】
また、一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂の末端に末端封止剤を反応させることができる。末端封止剤としては、水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、チオール基、ビニル基、エチニル基およびアリル基からなる群より選ばれた少なくとも一種の官能基を有するものが好ましい。前記官能基を有するモノアミンまたは酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸により封止することで、樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解速度を好ましい範囲に調整することができる。モノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸などの末端封止剤の含有量は、全アミン成分に対して0.1〜60モル%の範囲が好ましく、特に好ましくは5〜50モル%である。このような範囲とすることで、樹脂組成物を塗布する際の溶液の粘性が適度で、かつ優れた膜物性を有した樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
上記末端封止剤の末端基の例としては、o−ビニルフェニル基、m−ビニルフェニル基、p−ビニルフェニル基、o−エチニルフェニル基、m−エチニルフェニル基、p−エチニルフェニル基、o−プロピニルフェニル基、m−プロピニルフェニル基、p−プロピニルフェニル基、o−アリルフェニル基、m−アリルフェニル基、p−アリルフェニル基、o−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニル)フェニル基、m−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニル)フェニル基、p−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチニル)フェニル基、o−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ペンチニル)フェニル基、m−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ペンチニル)フェニル基、p−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ペンチニル)フェニル基、o−(3−ヒドロキシ−3−エチル−1−ペンチニル)フェニル基、m−(3−ヒドロキシ−3−エチル−1−ペンチニル)フェニル基、p−(3−ヒドロキシ−3−エチル−1−ペンチニル)フェニル基、o−ニトロフェニル基、m−ニトロフェニル基、p−ニトロフェニル基、o−メチロールフェニル基、m−メチロールフェニル基、p−メチロールフェニル基、o−メチルベンゾエート基、m−メチルベンゾエート基、p−メチルベンゾエート基が挙げられる。芳香環を有しない置換基の例としては、3−ビニルシクロヘキシル基、4−ビニルシクロヘキシル基、3−エチニルシクロヘキシル基、4−エチニルシクロヘキシル基、3−プロピニルシクロヘキシル基、4−プロピニルシクロヘキシル基が挙げられる。耐熱性の点からはm−エチニルフェニル基、p−エチニルフェニル基、m−プロピニルフェニル基、p−プロピニルフェニル基、m−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ペンチニル)フェニル基、p−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ペンチニル)フェニル基等の不飽和三重結合を有する基が好ましい。また、末端基は不飽和結合を2以上有してもよい。
【0028】
上記樹脂末端成分の導入割合は、ジアミン成分に対して1〜30モル%が好ましい。
【0029】
樹脂中に導入された末端基は、以下の方法で容易に検出できる。例えば、末端成分が導入された樹脂を酸性溶液に溶解し、樹脂の構成単位であるアミン成分と酸無水成分に分解し、これをガスクロマトグラフィー(GC)や、NMR測定することにより、末端成分を容易に検出できる。これとは別に、末端基が導入された樹脂を直接、熱分解ガスクロマトグラフ(PGC)や赤外スペクトル及び13CNMRスペクトル測定で検出することが可能である。
【0030】
(b)一般式(1)で表される構造単位を主成分とする樹脂は、次の方法により合成される。ポリアミド酸またはポリアミド酸エステルの場合、例えば、低温中でテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物、末端封止に用いるモノアミノ化合物を反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後ジアミン化合物、モノアミノ化合物と縮合剤の存在下で反応させる方法、テトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りのジカルボン酸を酸クロリド化し、ジアミン化合物、モノアミノ化合物と反応させる方法などがある。ポリヒドロキシアミドの場合、ビスアミノフェノール化合物とジカルボン酸、モノアミノ化合物を縮合反応させる方法によって得ることができる。具体的には、ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)のような脱水縮合剤と酸を反応させ、ここにビスアミノフェノール化合物、モノアミノ化合物を加える方法や、ピリジンなどの3級アミンを加えたビスアミノフェノール化合物、モノアミノ化合物の溶液にジカルボン酸ジクロリドの溶液を滴下する方法などがある。
【0031】
(b)一般式(1)で表される構造単位を主成分とする樹脂は、上記の方法で重合させた後、多量の水やメタノール/水の混合液などに投入し、沈殿させて濾別乾燥し、単離することが望ましい。この沈殿操作によって未反応のモノマーや、2量体や3量体などのオリゴマー成分が除去され、熱硬化後の膜特性が向上する。
【0032】
(b)一般式(1)で表される構造単位を主成分とする樹脂の含有量は、(a)ノボラック樹脂100重量部に対し、30重量部以上が好ましく、40重量部以上がより好ましい。この範囲であれば、熱硬化後の機械特性が向上する。また、感度を向上させるためには、100重量部以下が好ましく、80重量部以下がより好ましい。
【0033】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は(c)酸化防止剤、オキセタン基含有化合物またはイソシアネート基含有化合物を含有する。酸化防止剤、オキセタン基含有化合物またはイソシアネート基含有化合物を含有することにより、(a)ノボラック樹脂の酸化を抑制し、熱処理による変色の少ない硬化膜を得ることができる。これらを2種以上含有してもよい。
【0034】
上記酸化防止剤は特に限定されず、具体例としては、ジブチルヒドロキシトルエン、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0035】
上記オキセタン基含有化合物は特に限定されず、具体例としては、2−ヒドロキシメチルオキセタン、3−メチル−3−オキセタンメタノール、3−エチル−3−オキセタンメタノール、下記に示す化合物等が挙げられる。ただし、nは1〜10の整数を示す。
【0036】
【化7】

【0037】
上記イソシアネート基含有化合物は特に限定されず、具体例としては、下記に示す化合物等が挙げられる。
【0038】
【化8】

【0039】
上記の(c)酸化防止剤、オキセタン基含有化合物、イソシアネート基含有化合物の総含有量は、(a)ノボラック樹脂と(b)成分の樹脂の総量100重量部に対して0.001重量部以上が好ましく、より好ましくは0.005重量部以上、さらに好ましくは0.01重量部以上である。また、50重量部以下が好ましく、より好ましくは40重量部以下、より好ましくは30重量部以下、さらに好ましくは25重量部以下である。この範囲内であれば、ポジ型感光性樹脂組成物の耐熱性を保ったまま、酸化による変色のより少ない硬化膜を得ることができる。
【0040】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(d)キノンジアジド化合物を含有する。キノンジアジド化合物を2種以上含有してもよい。キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。キノンジアジド化合物は、例えば、5−ナフトキノンジアジドスルホニルクロライドとポリヒドロキシ化合物をトリエチルアミン存在下で反応させることにより得ることができる。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の全ての官能基がキノンジアジドで置換されていなくてもよいが、露光部と未露光部のコントラストの観点からは、官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このようなキノンジアジド化合物を用いることで、一般的な紫外線である水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)に感光するポジ型の感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0041】
本発明において、キノンジアジド化合物は、露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましい。また、同一分子中に4−ナフトキノンジアジドスルホニル基、5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を併用した、ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を用いてもよいし、4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を併用することもできる。
【0042】
(d)キノンジアジド化合物の分子量は、350以上1500以下が好ましい。
【0043】
(d)キノンジアジド化合物の含有量は、(a)ノボラック樹脂と(b)成分の樹脂の総量100重量部に対し、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上であり、また、好ましくは50重量部以下、より好ましくは40重量部以下である。
【0044】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(e)溶剤を含有する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0045】
(e)溶剤の含有量は、(a)ノボラック樹脂と(b)成分の樹脂の総量100重量部に対して、好ましくは50重量部以上、より好ましくは100重量部以上であり、また、好ましくは2000重量部以下、より好ましくは1500重量部以下である。
【0046】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(f)アルコキシメチル基またはメチロール基含有化合物を含有することが好ましい。アルコキシメチル基またはメチロール基は150℃以上の温度領域で架橋反応を生じるため、該化合物を含有することで、(b)一般式(1)で表される構造単位を主成分とする樹脂を熱により閉環させ硬化させる熱処理により、主に(a)ノボラック樹脂または(b)一般式(1)で表される構造単位を主成分とする樹脂のフェノール性水酸基のオルト位に付加して架橋する。このため、優れた機械特性を得ることができる。(f)成分は架橋密度を上げるためにアルコキシメチル基またはメチロール基を2個以上有する化合物が好ましい。さらに、架橋密度を上げ、機械特性をより向上させる点から、アルコキシメチル基またはメチロール基を4個以上有する化合物がより好ましい。また、これらを2種以上含有してもよい。
【0047】
アルコキシメチル基含有化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
【化9】

【0049】
メチロール基含有化合物の具体例としては、以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
【化10】

【0051】
(f)アルコキシメチル基またはメチロール基含有化合物の総含有量は、機械特性の観点から、(a)ノボラック樹脂と(b)成分の樹脂の総量100重量部に対して、5重量部以上が好ましく、10重量部以上がより好ましい。また、機械特性の点から、50重量部以下が好ましく、40重量部以下がより好ましく、30重量部以下がさらに好ましい。
【0052】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、必要に応じてフェノール性水酸基を有する化合物を含有することができる。フェノール性水酸基を有する化合物を含有することにより、得られるポジ型感光性樹脂組成物の感度が向上する。好ましいフェノール性水酸基を有する化合物は、例えば、Bis−Z、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、BisRS−2P、BisRS−3P(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−BIPC−F(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)である。
【0053】
このようなフェノール性水酸基を有する化合物の含有量は、(a)ノボラック樹脂と(b)成分の樹脂の総量100重量部に対して、好ましくは1重量部以上、より好ましくは3重量部以上であり、また、好ましくは50重量部以下、より好ましくは40重量部以下である。なお、本発明においては、フェノール性水酸基を有する化合物であってもキノンジアジドを有する場合は(d)キノンジアジド化合物に分類するものとする。
【0054】
また、必要に応じて基板との塗れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を含有してもよい。また、二酸化ケイ素、二酸化チタンなどの無機粒子、あるいはポリイミドの粉末などを含有することもできる。
【0055】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物の製造方法を例示する。例えば、(a)〜(e)成分、および必要によりその他成分をガラス製のフラスコやステンレス製の容器に入れてメカニカルスターラーなどによって撹拌溶解させる方法、超音波で溶解させる方法、遊星式撹拌脱泡装置で撹拌溶解させる方法などが挙げられる。組成物の粘度は1〜10000mPa・sが好ましい。また、異物を除去するために0.1μm〜5μmのポアサイズのフィルターで濾過してもよい。
【0056】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いて耐熱性樹脂パターンを形成する方法について説明する。
【0057】
感光性樹脂組成物を基板上に塗布する。基板はSi、セラミックス類、ガリウムヒ素、金属、ガラス、金属酸化絶縁膜、窒化ケイ素、ITOなどが一般的に用いられるが、これらに限定されない。塗布方法はスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スリットダイコーティングなどの方法が挙げられる。また、塗布膜厚は、塗布手法、組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、通常、乾燥後の膜厚が0.1〜150μmになるように塗布される。
【0058】
次に、感光性樹脂組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性樹脂膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50℃〜150℃の範囲で1分〜数時間行うことが好ましい。
【0059】
次に、この感光性樹脂膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などがあるが、本発明では水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)を用いることが好ましい。
【0060】
感光性樹脂膜にパターンを形成するには、露光後、現像液を用いて露光部を除去すればよい。現像液は、テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。また場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを組み合わせてもよい。現像後は水にてリンス処理をすることが一般的である。ここでもエタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類などを水に加えてリンス処理をしてもよい。
【0061】
現像後、200℃〜500℃の温度を加えて感光性樹脂膜から耐熱性樹脂膜に変換する。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分〜5時間実施する。一例としては、130℃、200℃、350℃で各30分ずつ熱処理する。あるいは室温より320℃まで2時間かけて直線的に昇温するなどの方法が挙げられる。
【0062】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物により形成した耐熱性樹脂膜は、半導体素子のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などの用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0063】
以下実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の酸化による変色性の評価は以下の方法で行った。
【0064】
膜厚の測定方法
大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM−602を使用し、プリベーク後および現像後の膜は、屈折率1.629で測定し、キュア膜は屈折率1.773で測定した。
【0065】
測定サンプルの作製
ガラス基板上に、ワニスをプリベーク後の膜厚が10μmとなるように塗布し、ついでホットプレートを用いて、120℃で3分プリベークすることにより、感光性樹脂膜を得た。作製された感光性樹脂膜を、光洋サーモシステム(株)製イナートオーブンINH−21CDを用いて、窒素気流下(酸素濃度20ppm以下)、170℃で30分間、その後320℃まで1時間で昇温して320℃で1時間熱処理をし、耐熱性樹脂膜(キュア膜)を作製した。
【0066】
透過率の測定
作製したキュア膜の透過率(波長;500nm)を酸化処理前後で測定し、酸化による変色性を評価した。酸化処理後の透過率が40%以上ならば良好、40%以下ならば不良とした。酸化処理は200℃の空気中で5分間行った。透過率は島津製作所(株)製紫外可視分光光度計Multispec−1500を用いて測定した。
【0067】
合成例1 ヒドロキシル基含有酸無水物(a)の合成
乾燥窒素気流下、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(BAHF)18.3g(0.05モル)とアリルグリシジルエーテル34.2g(0.3モル)をガンマブチロラクトン(GBL)100gに溶解させ、−15℃に冷却した。ここにGBL50gに溶解させた無水トリメリット酸クロリド22.1g(0.11モル)を反応液の温度が0℃を越えないように滴下した。滴下終了後、0℃で4時間反応させた。この溶液をロータリーエバポレーターで濃縮して、トルエン1Lに投入して、下記式で表されるヒドロキシル基含有酸無水物(a)を得た。
【0068】
【化11】

【0069】
合成例2 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(b)の合成
BAHF18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに3−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0070】
固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセルソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム−炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物(b)を得た。
【0071】
【化12】

【0072】
合成例3 ヒドロキシル基含有ジアミン(c)の合成
2−アミノ−4−ニトロフェノール15.4g(0.1モル)をアセトン50mL、プロピレンオキシド30g(0.34モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここにイソフタル酸クロリド11.2g(0.055モル)をアセトン60mLに溶解させた溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させた。その後、室温に戻して生成している沈殿をろ過で集めた。
【0073】
この沈殿をGBL200mLに溶解させて、5%パラジウム−炭素3gを加えて、激しく攪拌した。ここに水素ガスを入れた風船を取り付け、室温で水素ガスの風船がこれ以上縮まない状態になるまで攪拌を続け、さらに2時間水素ガスの風船を取り付けた状態で攪拌した。攪拌終了後、ろ過でパラジウム化合物を除き、溶液をロータリーエバポレーターで半量になるまで濃縮した。ここにエタノールを加えて、再結晶を行い、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン(c)の結晶を得た。
【0074】
【化13】

【0075】
合成例4 ヒドロキシル基含有ジアミン(d)の合成
2−アミノ−4−ニトロフェノール15.4g(0.1モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに4−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を徐々に滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させた。その後、室温に戻して生成している沈殿をろ過で集めた。この後、合成例2と同様にして下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン(d)の結晶を得た。
【0076】
【化14】

【0077】
合成例5 キノンジアジド化合物(e)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−HAP(商品名、本州化学工業(株)製)、15.31g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド40.28g(0.15モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン15.18gを系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間攪拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入させた。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表されるキノンジアジド化合物(e)を得た。
【0078】
【化15】

【0079】
合成例6 キノンジアジド化合物(f)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)、21.22g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド26.86g(0.10モル)、4−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド13.43g(0.05モル)を1,4−ジオキサン450gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合させたトリエチルアミン12.65gを用い、合成例5と同様にして下記式で表されるキノンジアジド化合物(f)を得た。
【0080】
【化16】

【0081】
合成例7 ノボラック樹脂Aの合成
乾燥窒素気流下、m−クレゾール70.2g(0.65モル)、p−クレゾール37.8g(0.35モル)、37重量%ホルムアルデヒド水溶液75.5g(ホルムアルデヒド0.93モル)、シュウ酸二水和物0.63g(0.005モル)、メチルイソブチルケトン264gを仕込んだ後、油浴中に浸し、反応液を還流させながら、4時間重縮合反応を行った。その後、油浴の温度を3時間かけて昇温し、その後に、フラスコ内の圧力を4.0kPa〜6.7kPaまで減圧し、揮発分を除去し、溶解している樹脂を室温まで冷却して、ノボラック樹脂Aのポリマー固体を得た。GPCから重量平均分子量は3,500であった。
【0082】
合成例8 ノボラック樹脂Bの合成
m−クレゾール70.2g(0.65モル)、p−クレゾール37.8g(0.35モル)の代わりに、m−クレゾール108g(1.00モル)を用いた他は合成例7と同様にして、ノボラック樹脂Bのポリマー固体を得た。GPCから重量平均分子量は4,000であった。
【0083】
合成例9 ノボラック樹脂Cの合成
m−クレゾール70.2g(0.65モル)、p−クレゾール37.8g(0.35モル)の代わりに、m−クレゾール86.4g(0.80モル)、p−クレゾール21.6g(0.20モル)を用いた他は合成例7と同様にして、ノボラック樹脂Cのポリマー固体を得た。GPCから重量平均分子量は5,000であった。
【0084】
合成例10 ノボラック樹脂Dの合成
m−クレゾール70.2g(0.65モル)、p−クレゾール37.8g(0.35モル)の代わりに、m−クレゾール54g(0.50モル)、p−クレゾール54g(0.50モル)を用いた他は合成例7と同様にして、ノボラック樹脂Dのポリマー固体を得た。GPCから重量平均分子量は3,500であった。
【0085】
合成例11 ポリマーAの合成
乾燥窒素気流下、4,4’−ジアミノフェニルエーテル(DAE)4.40g(0.022モル)、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン(SiDA)1.24g(0.005モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)50gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシル基含有酸無水物(a)21.4g(0.030モル)をNMP14gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで40℃で2時間反応させた。その後、末端封止剤として、4−エチニルアニリン0.71g(0.006モル)を加え、さらに40℃で1時間反応させた。その後、N、N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール7.14g(0.06モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で3時間攪拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミド前駆体のポリマーAを得た。
【0086】
合成例12 ポリマーBの合成
乾燥窒素気流下、合成例2で得られたヒドロキシル基含有ジアミン(b)13.6g(0.0225モル)をNMP50gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシル基含有酸無水物(a)17.5g(0.025モル)をピリジン30gとともに加えて、40℃で2時間反応させた。その後、末端封止剤として、3−エチニルアニリン0.58g(0.005モル)を加え、さらに40℃で1時間反応させた。その後、N、N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール7.35g(0.05モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で2時間攪拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミド前駆体のポリマーBを得た。
【0087】
合成例13 ポリマーCの合成
乾燥窒素気流下、合成例3で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物(c)15.13g(0.040モル)、SiDA1.24g(0.005モル)をNMP50gに溶解させた。ここに3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物(ODPA)15.51g(0.05モル)をNMP21gとともに加えて、20℃で1時間反応させ、次いで50℃で1時間反応させた。その後、末端封止剤として、4−アリルアニリン0.95g(0.008モル)を加え、さらに50℃で1時間反応させた。その後、N,N−ジメチルホルムアミドジエチルアセタール13.2g(0.09モル)をNMP15gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で3時間攪拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミド前駆体のポリマーCを得た。
【0088】
合成例14 ポリマーDの合成
乾燥窒素気流下、合成例4で得られたヒドロキシル基含有ジアミン化合物(d)6.08g(0.025モル)とDAE4.51g(0.0225モル)とSiDA0.62g(0.0025モル)をNMP70gに溶解させた。ここに合成例1で得られたヒドロキシル基含有酸無水物(a)24.99g(0.035モル)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)4.41g(0.010モル)を室温でNMP25gとともに加え、そのまま室温で1時間、その後40℃で1時間攪拌した。その後、末端封止剤として、3−エチニルベンゼンジカルボン酸無水物1.72g(0.010モル)を加え、さらに40℃で1時間反応させた。その後、N、N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール13.09g(0.11モル)をNMP5gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で3時間攪拌した。反応終了後、溶液を水2Lに投入して、ポリマー固体の沈殿をろ過で集めた。ポリマー固体を80℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミド前駆体のポリマーDを得た。
【0089】
合成例15 ポリマーEの合成
乾燥窒素気流下、1lの4つ口フラスコに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル19.0g(0.095モル)と1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン1.2g(0.005モル)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gに入れ溶解させた。ここに、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物30.1g(0.097モル)を加え、室温で6時間反応を行いポリアミド酸を得た。この溶液を40℃に加熱し、N、N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール23.8g(0.20モル)を加えて2時間攪拌し、その後室温に降温した。降温後に酢酸60g(1モル)加えて1時間攪拌し、その後純水中に投入して再沈させ、沈殿物を濾別した。濾別した沈殿物を70℃で120時間乾燥しポリイミド前駆体のポリマーEを得た。
【0090】
実施例1
ノボラック樹脂A7g、ポリマーAの固体3g、キノンジアジド化合物としてMG−300(商品名、東洋合成工業(株)製)2g、“ニカラック(登録商標)”MX−290(商品名、(株)三和ケミカル製)1.5g、ジブチルヒドロキシトルエン1gをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0091】
実施例2
ノボラック樹脂B7g、ポリマーBの固体3g、キノンジアジド化合物(e)2g、“ニカラック(登録商標)”MX−270(商品名、(株)三和ケミカル製)1.5g、オキセタン基含有化合物OXT−211(商品名、東亜合成(株)製)1gをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0092】
実施例3
ノボラック樹脂C7g、ポリマーCの固体3g、キノンジアジド化合物(f)2g、 HMOM−TPPA(商品名、本州化学工業(株)製)1.5g、イソシアネート基含有化合物“デスモジュール(登録商標)”RE(製品名、住友バイエルウレタン(株)製)1gをNMP30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0093】
実施例4
ノボラック樹脂D7g、ポリマーDの固体3g、キノンジアジド化合物(f)2g、 HMOM−TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)1.5g、フェニルイソシアネート1gをEL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0094】
実施例5
ノボラック樹脂D7g、ポリマーEの固体3g、キノンジアジド化合物としてMG−300(商品名、東洋合成工業(株)製)2g、“ニカラック(登録商標)”MX−290(商品名、(株)三和ケミカル製)1.5g、2−ヒドロキシメチルオキセタン1gをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0095】
実施例6
ノボラック樹脂A7g、ポリマーAの固体3g、キノンジアジド化合物としてMG−300(商品名、東洋合成工業(株)製)2g、“ニカラック(登録商標)”MX−290(商品名、(株)三和ケミカル製)1.5g、ジブチルヒドロキシトルエン0.5g、フェニルイソシアネート0.5gをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0096】
実施例7
ノボラック樹脂A7g、ポリマーAの固体3g、キノンジアジド化合物としてMG−300(商品名、東洋合成工業(株)製)2g、“ニカラック(登録商標)”MX−290(商品名、(株)三和ケミカル製)1.5g、ジブチルヒドロキシトルエン0.5g、2−ヒドロキシメチルオキセタン0.5gをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0097】
実施例8
ノボラック樹脂A7g、ポリマーAの固体3g、キノンジアジド化合物としてMG−300(商品名、東洋合成工業(株)製)2g、“ニカラック(登録商標)”MX−290(商品名、(株)三和ケミカル製)1.5g、フェニルイソシアネート0.5g、2−ヒドロキシメチルオキセタン0.5gをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0098】
実施例9
ノボラック樹脂A7g、ポリマーAの固体3g、キノンジアジド化合物としてMG−300(商品名、東洋合成工業(株)製)2g、“AVライト(登録商標)”TM−BIP−A(商品名、旭有機材工業(株)製)1.5g、オキセタン基含有化合物PNOX―1009(商品名、東亜合成(株)製)1gをGBL30gに溶解させて感光性樹脂組成物のワニスを得た。得られたワニスを用いて前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0099】
比較例1
ジブチルヒドロキシトルエンを除いた他は実施例1と同様にしてワニスを得、前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0100】
比較例2
OXT−211を除いた他は実施例2と同様にしてワニスを得、前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0101】
比較例3
“デスモジュール(登録商標)”REを除いた他は実施例3と同様にしてワニスを得、前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0102】
比較例4
フェニルイソシアネートを除いた他は実施例4と同様にしてワニスを得、前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0103】
比較例5
2−ヒドロキシメチルオキセタンを除いた他は実施例5と同様にしてワニスを得、前記のように、酸化による変色性の評価を行った。
【0104】
各実施例、比較例に商品名で示した化合物を下記に示す。
【0105】
【化17】

【0106】
実施例1〜8および比較例1〜5の組成を表1に、評価結果を表2に示す。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ノボラック樹脂、(b)一般式(1)で表される構造単位を主成分とする樹脂、(c)酸化防止剤、オキセタン基含有化合物またはイソシアネート基含有化合物、(d)キノンジアジド化合物および(e)溶剤を含有することを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】

(上記一般式(1)中、RおよびRは炭素数2以上の2価〜8価の有機基を示す。RおよびRはそれぞれ同じでも異なっていてもよく、水素または炭素数1〜20の1価の有機基を示す。fおよびmは0〜2の整数、pおよびqは0〜4の整数を示す。)

【公開番号】特開2010−26359(P2010−26359A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189490(P2008−189490)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】