説明

ポリアミドブロックとエラストマーとがグラフトされたコポリマーに架橋系または加硫系が配合された混合物

下記の(A)と(B)から成る混合物(全体で100重量部):
(A) ポリアミドブロックを有する少なくとも一種のグラフト共重合体の10〜90重量部[この共重合体はポリオレフィンの主鎖とこの主鎖にグラフトした平均して少なくとも1.3個のポリアミドグラフト鎖とを有し、ナノメートル構造の組織を有し、上記ポリアミドグラフト鎖はアミノ末端のポリアミドと化学反応可能な官能基を有する不飽和モノマー(X)の残基を介して主鎖に付いており、上記不飽和モノマー(X)の残基はグラフトするか、二重結合からの共重合で主鎖に付いており、この成分(A)は少なくとも一種のグラフトされていないポリオレフィンを、この成分(A)の上記のナノメートル構造の組織が失なわれないようにする比率で、含むことができる]、(B)不飽和二結合を有し且つ架橋剤または加硫剤と化学反応可能な少なくとも一種のエラストマー配合物の90〜10重量部[このエラストマー配合物はこのエラストマーを加硫または架橋するための系と、少なくとも一種の可塑剤と、エラストマー配合物で一般に使用されている添加剤とを含む]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミドブロックと不飽和エラストマーとがグラフトされたコポリマー混合物に関するものである。この混合物は架橋系または加硫系と配合され、一般には可塑剤、充填材、その他の添加剤と一緒に配合される。
本発明はさらに、ポリアミドブロックを有する上記グラフト共重合体中に配合したエラストマーを動的加硫または架橋した対応熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関するものである。
本発明はさらに、上記方法によって得られる熱可塑性エラストマー組成物と、最終製品の製造での使用、特に押出成形、射出成形および圧縮成形での使用と、最終製品とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム(rubbery)特性を有する公知の熱可塑性エラストマーの中で、マトリックス、一般にはポリオレフィンタイプ、特にポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)のマトリックス中に例えばエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)エラストマーを動的加硫法で配合した製品は良く知られている。この方法では加硫系が配合された例えばEPDMのようなエラストマーとPPまたはPEのような熱可塑性樹脂とを混合し、混合中にエラストマーを架橋する。得られた製品は熱可塑性加硫物(vulcanisates、TPV)とよばれ、数ミクロンのゴム粒子を被覆した熱可塑性マトリックスから成り、ゴム相を主要相(85重量%以下)にすることができる。この製品ゴム相の特性すなわち低圧縮性または永久伸びを有するは熱可塑性プラスチックとして押出成形または射出成形で使用できる。
【0003】
しかし、このアロイはマトリックスとして使用する熱可塑性高分子に固有な熱力学的な限界を有し、PPマトリックスとEPDMエラストマーとから成る熱可塑性加硫物(TPV)の場合、使用温度の限界はPPの存在のために130℃である。さらに、PPの曲げモジュラスと高い硬度のためにアロイの硬度はかなり高くなる。
【0004】
特許文献1(国際特許第WO02/28959A1)にはポリアミドブロックを有するグラフト共重合体と、それと曲げ弾性係数が150 MPa以下である可撓性ポリオレフィンとの混合物とが記載されている。しかし、混合物中のポリオレフィンは半結晶で、60℃〜100℃の融点を有するため、この低モジュラス可撓性混合物は70℃以上ではゴム弾性を示さない。
【0005】
ポリアミドブロックを有するこれらのコポリマーはナノメートルスケールの構造に組織化されているということは分かっており、それが例外的な熱機械的強度特性を与えている。この熱機械的特性は100〜180℃の一定の温度範囲内での実質的に一定の弾性係数で表される。
【0006】
モノアミンポリアミドをエチレン/アクリル酸ブチル/無水マレイン酸ターポリマーの無水マレイン酸にグラフトして得られるポリアミドブロックを有するグラフトポリオレフィンは高い熱機械的強度を有する可撓性の熱プラスチックである。これは比較的高い曲げ弾性係数、特に200MPa以下かつ50MPa以上の曲げ弾性係数を示し、150℃で測定した動的弾性係数が大きく、0.5MPa〜10MPaの間である。このモジュラスは100〜180℃すなわちエチレン/アクリル酸ブチル/無水マレイン酸ターポリマーの融点(80〜100℃)と実施例に示したポリアミドの融点(180〜220℃)との間の広い温度範囲で比較的一定である。
【0007】
しかし、ポリアミドブロックを有するこれらのコポリマーはエラストマーでない。すなわち、これらは80℃以上での圧縮に低い永久(remanent)弾性を示す。これは圧縮永久歪(compression set、CS)の百分比で表されるゴム弾性を有しない。熱可塑性エラストマーは一般に50%以下、さらには30%以下のCSを有するが、ポリアミドブロックがグラフトされたポリオレフィンは一般に60%〜80%のCSを有する。
【0008】
特許文献2(米国特許第US 4,130,535号明細書)には25%〜75%の熱可塑性高分子と75%〜25%の可塑剤が配合されたオレフィンゴムとの完全に架橋したアロイが記載されている。熱可塑性高分子はポリプロピレンである。
【0009】
特許文献3(欧州特許第EP 384 822号公報)にはポリノルボルネンの可塑化能力を利用し且つ熱可塑性高分子を融点が130℃を越えないエチレン・コポリマーから選択することによって得られる、エチレン/α−オレフィンコポリマーと、ショーアA硬度が65以下である可塑化された架橋ポリノルボルネンをベースにしたゴムとをベースにした組成物が記載されている。このアロイの70℃で測定した圧縮永久歪は45%以下である。
【0010】
特許文献4(欧州特許出願第EP 1672027号公報)にはポリアミドおよび/またはポリエステルベースにしたポリマー中に30重量%以上のゲルを一様に分散させ、ゴムを動的に架橋して得られる熱可塑性高分子組成物が記載されている。ポリアミドまたはポリエステルをベースにしたこの種の熱可塑性高分子は耐加水分解性または耐塩性が悪く、ショーアA硬度が低いという不利な点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際特許第WO02/28959A1公報
【特許文献2】米国特許第US 4,130,535号明細書
【特許文献3】欧州特許第EP 384 822号公報
【特許文献4】欧州特許出願第EP 1672027号公
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、公知の系の良い特性を犠牲にせずに公知の系より特性が改良されたは熱可塑性加硫物(vulcanisates、TPV)アロイを提供することにある。
すなわち、ポリプロピレンをベースにした公知の系に対しては、ポリプロピレンが約130〜140℃でその特性を失うという事実を考慮して、温度挙動を良くし、硬度をより低くし、他の材料、特にポリアミドに対して接着性できるようにするのが本発明の目的である。また、ポリアミドをベースにした公知の系に対しては、耐加水分解性および塩化亜鉛のような塩に対する耐久性を良くし、硬度を下げることができるようにするのが本発明の目的である
【0013】
この目的は耐熱性が高い可撓性熱可塑性材料を使用する本発明によって達成できる。この耐熱性が高い可撓性熱可塑性材料は遊離した無水マレイン酸基のような遊離した官能基を含み、従って、ポリアミドや金属のような材料に対する接着性をTPVに与える連続相を形成し、その特性が失われるは約170〜180℃になってからである
本発明のTPVは−40℃〜160℃の広範囲の温度で優れた弾性特性を有する物品を製造するのに有用である。
ポリアミドブロックがグラフトされたマトリックスコポリマーを含む本発明のTPVアロイを用いることで、使用温度がポリオレフィンマトリックスを有するTPVより高い、硬度が低く、可撓性のある弾性物体を製造することができる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、下記の(A)と(B)から成る混合物(全体で100重量部)を提供する:
(A)ポリアミドブロックを有する少なくとも一種のグラフト共重合体の10〜90重量部[この共重合体はポリオレフィンの主鎖とこの主鎖にグラフトした平均して少なくとも1.3個のポリアミドグラフト鎖とを有し、ナノメートル構造(nanostructured)の組織を有し、上記ポリアミドグラフト鎖はアミノ末端のポリアミドと化学反応可能な官能基を有する不飽和モノマー(X)の残基を介して主鎖に付いており、上記不飽和モノマー(X)の残基はグラフトするか、二重結合からの共重合で主鎖に付いており、この成分(A)は少なくとも一種のグラフトされていないポリオレフィンを、この成分(A)の上記のナノメートル構造(nanostructured)の組織が失われないようにする比率で、含むことができる]
(B)不飽和二結合を有し且つ架橋剤または加硫剤と化学反応可能な少なくとも一種のエラストマー配合物の90〜10重量部[このエラストマー配合物はこのエラストマーを加硫または架橋するための系と、少なくとも一種の可塑剤と、エラストマー配合物で一般に使用されている添加剤とを含む]
【0015】
成分(A)の比率は15〜75重量部、成分(B)の比率は85〜25重量部である。さらに、 成分(A)の比率は20〜50重量部、成分(B)の比率は80〜50重量部であるのが有利である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
成分(A)
成分(A)は特許文献1(国際特許第WO02/28959A1公報)に記載のように、ポリオレフィン主鎖へグラフトまたは共重合して付けた不飽和のモノマーX残基へ末端アミノを有するポリアミドを反応させて得られるポリアミドブロックを有する少なくとも一種のグラフト共重合体から成る。このグラフト共重合体は高い熱機械強度を有する可撓性のある熱可塑性材料である。
【0017】
モノマーXは例えば不飽和エポキシドまたは不飽和カルボン酸無水物にすることができる。
不飽和エポキシドの例は下記である:
(1)脂肪族グリシジルエステルおよびエーテル、例えばアリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、グリシジルマレアート、グリシジルイタコネート、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレート、
(2)脂環式グリシジルエステルおよびエーテル、例えば、2-シクロヘキセン-1-グリシジルエーテル、シクロヘキセン−4,5−ジグリシジルカルボキシレート、シクロヘキセン−4−グリシジルカルボキシレート、5−ノルボルネン−2−メチル−2−グリシジルカルボキシレート、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン-2,3-ジグリシジルジカルボキシレート。
【0018】
不飽和カルボキシル無水物の例はマレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリルコハク酸、シクロヘキシ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、4−メチレンシクロヘキシ−4−エン−1,2−ジカルボン酸、ビシクロ[2.2.1] ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸およびメチルビシクロ [2.2.1]ヘプト−5−エン−2,2−ジカルボン酸無水物である。
無水マレイン酸を使用するのが有利である。無水物のいくつかまたは全部を不飽和カルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸に代えても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0019】
ポリオレフィン主鎖のポリオレフィンはα−オレフィンまたはジオレフィンのホモポリマーまたはコポリマーと定義でき、例えばエチレン、プロピレン、ブテン−1、オクテン−1またはブタジエンにすることができる。例としては下記を挙げることができる:
(1)エチレンのホモポリマーおよびコポリマー、特に低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、例えば上記国際特許に記載のメタロセン触媒を用いて得られるポリエチレン、エチレンと少なくとも一種のαオレフィンー、例えばC3〜C8αオレフィンとのコポリマ、例えばエチレン/プロピレンコポリマー、エチレン/プロピレンエラストマー(EPR)、エチレン/プロピレン/ジエンエラストマー(EPDM)、エチレンと不飽和カルボン酸の塩またはエステル、例えば(メタ)アクリル酸とC1〜C8アルコールとのエステル、例えばアクリル酸メチル、飽和カルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニールの中から選択される少なくとも一種の化合物とのコポリマー。コモノマの配合比率は最大で40重量%にすることができる。
(2)プロピレンのホモポリマーまたはコポリマー
(3)ブロックスチレン/エチレン−ブテン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/エチレン−プロピレン/スチレン(SEPS)コポリマー。
【0020】
Xの残基が付いているポリオレフィン主鎖はXがグラフトしたポリエチレンか、例えばフリーラジカル重合で得られるエチレンとXとのコポリマーであるのが有利である。
Xがグラフトされたポリエチレンのポリエチレンはホモポリマーまたはコポリマーである。このコポリマーを構成するコモノマーとしては下記が挙げられる:
【0021】
(1)α−オレフィン、有利には3〜30個の炭素原子を有するα−オレフィン、そうしたαオレフィンの例としてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセンおよび1−トリアタンテンが挙げられる。これらのα−オレフィンは単独または2種以上の混合物として使用できる。
(2)不飽和カルボン酸のエステル、例えば(アルキル)(メタ)アクリレート(アルキルは24個以下の炭素原子を有することができる)、例えばアルキルアクリレートまたはメタクリレート、特に、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、n−ブチルアクリル酸、イソブチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレート、
(3)飽和カルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニールまたはプロピオン酸ビニル、
(4)ジエン類、例えば1,4−ヘキサジエン。
【0022】
ポリエチレンは前記コモノマーの少なくとも2つを含むことができる。少なくとも2つのポリマーの混合物であるポリマーはエチレンを少なくとも50%、好ましくは75%以上含み(モル基準)のが有利である。その密度は0.86〜0.98g/cm3の間にあり、MFI(2.16kg、190℃での粘性指数)は5〜100g/10分であるのが有利である。
【0023】
ポリエチレンの例としては下記を挙げることができる:
(1)低密度ポリエチレン(LDPE)
(2)高密度ポリエチレン(HDPE)
(3)直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)
(4)超低密度ポリエチレン(VLDPE)、
(5)メタロセン触媒で得られるポリエチレン、
(6)EPR(エチレン−プロピレン−ゴム)エラストマー、
(7)EPDM(エチレン−プロピレン−ジエン)エラストマー、
(8)ポリエチレンとEPRまたはEPDMとの混合物、
(9)エチレン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマー((メタ)アクリレートを60重量%以下、好ましくは2重量%〜40重量含む)
【0024】
グラフト操作自体は基本的に公知である。
エチレンとXとのコポリマーでXがグラフトされないものはエチレンとXとのコポリマーであり、任意成分として、グラフトされたエチレンコポリマー用として上記で示したコモノマーの中から選択される他のモノマーをさらに含むことができる。
エチレン−無水マレイン酸、エチレン−アルキル(メタ)アクリレート−マレイン酸無水物コポリマーを使用するのが有利である。これらのコポリマーは、0.2〜10重量%の無水マレイン酸、0〜40重量%、好ましくは5〜40重量%のアルキル(メタ)アクリレートを含むのが有利である。そのMFlは5〜100(190℃、2.16 kg)である。アルキル(メタ)アクリレートは上記のものである。融点は60〜100℃である。
【0025】
ポリオレフィン主鎖に付くX鎖は一つの鎖当り平均して少なくとも1.3モル、好ましくは1.3〜10モル、さらに好ましくは1.3〜7モルであるのが有利である。このXのモル数はFTIR分析で当業者が簡単に決定することができる。
【0026】
末端アミノを有するポリアミドのポリアミドは下記の縮合物にすることができる:
(1)一種または複数のアミノ酸、例えばアミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、
(2)一種または複数のラクタム、例えばカプロラクタム、エナントラクタム、ラウリルラクタム、
(3)一種または複数のジアミンの塩または混合物、例えばヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、ビス−p−アミノシクロヘキシルメタン、トリメチルヘキサメチレンジアミンと、二酸、例えばイソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、コルク酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、または
(4)コポリアミドとなる少なくとも2つのモノマーの混合物。
【0027】
ポリアミドまたはコポリアミドの混合物を使用することができる。PA6、PA11、PA12、6単位と11単位(PA6/11)を有するコポリアミド、6単位と12単位を有するコポリアミド(PA6/12)、カプロラクタム、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸(PA6/6−6)をベースにしたコポリアミドを使用するのが有利である。コポリアミドはグラフト鎖の融点を選択できるという利点がある。
【0028】
グラフト鎖はカプロラクタム、11-アミノウンデカン酸またはドデカラクタムの残基から成るホモポリマーか、上記モノマーの少なくとも2つまたは3つのから選択される残基を有するコポリアミドであるのが有利である。
【0029】
重合度は広範囲に変えることができ、その重合度値に従って製品はポリアミドまたはポリアミドオリゴマーになる。これらの表現はグラフト鎖のために使用する。
【0030】
モノアミン末端を有するポリアミドの場合には下記式の連鎖停止剤を使用すれば十分である:

【0031】
(ここで、R1は水素または22個以下の炭素原子を有する直鎖または分枝したアルキル基であり、R2は22個以下の炭素原子を有する直鎖または分枝したアルキルまたはアルケニル基、飽和または不飽和の脂環式基、芳香族基またはこれらの組合せを表す)
この連鎖停止剤の例はラウリルアミン、ステアリルアミンまたはオレイルアミンである。
【0032】
グラフト鎖(アミノ末端ポリアミド)の重量平均モル質量は5000グラム/モル以下、例えば1000〜5000グラム/モル、好ましくは2000〜4000グラム/モルであるのが有利である。グラフト鎖(アミノ末端ポリアミド)の重量平均モル質量は5000グラム/モル以下、例えば1000〜5000グラム/モル、好ましくは2000〜4000グラム/モルであるのが極めて好ましい。
【0033】
本発明のモノアミンオリゴマの合成に好ましく使用されるアミノ酸またはラクタムのモノマーはカプロラクタム、11−アミノウンデカン酸またはドデカラクタムから選択する。好ましい一官能性連鎖停止剤はラウリルアミン、ステアリルアミンおよびオレイルアミンである。上記の縮合重合は公知の一般的な方法で行なう。例えば減圧下または不活性雰囲気下で、200〜300℃の一般的温度で反応液を撹拌しながら行なう。オリゴマーの平均鎖長は重縮合するモノマーまたはラクタムと一官能性連鎖停止剤との初期モル比で決まる。この平均鎖長の計算では一般に一つのオリゴマー鎖に対して連鎖停止剤の一つの分子を数える。
【0034】
Xを有するポリオレフィン主鎖へのモノアミンポリアミドオリゴマーの付加はXとオリゴマーのアミン官能基との反応で行なう。Xは無水物基または酸基を有し、アミド結合またはイミド結合ができるのが有利である。
【0035】
アミン末端オリゴマーのXを有するポリオレフィン主鎖への付加は溶融状態で行なうのが好ましい。すなわち、押出機中でオリゴマーと主鎖とを一般に230〜250℃の温度で混連することができる。押出機中での溶融材料の平均滞在時間は1〜3分間にすることができる。この付加の収率はフリーなポリアミドオリゴマー、換言すれば、ポリアミドブロックを有する最終グラフト共重合体を形成しなかった未反応のポリアミドオリゴマーの選択抽出によって評価できる。
【0036】
この種のアミノ末端ポリアミドの製造方法とXを有するポリオレフィン主鎖へのその付加反応は下記文献に記載されている。
【特許文献5】米国特許第US 3,976,720号明細書
【特許文献6】米国特許第US 3,963,799号明細書
【特許文献7】米国特許第US 5,342,886号明細書
【特許文献8】フランス国特許第FR 2291225号公報
【0037】
本発明のポリアミドブロックを有するグラフト共重合体の特徴はナノ構造化(nanostructured)された組織にある。このナノ構造化されたコポリマーは10〜50ナノメートルの厚さを有するポリアミドシートによって定義されるか、レオメトリック(Rheometrics)な動的レオメータでの1Hzの振動数での熱力学分析で測定した弾性係数で定義され、ポリオレフィン主鎖の融点がポリアミドの融点より少なくとも40℃だけ低いときにポリオレフィン主鎖の融点とポリアミドグラフト鎖の融点との間の範囲の中央での弾性係数が0.5 MPa以上であることで定義される。
【0038】
上記のポリアミドシートの厚さは当業者に公知のTransmission Electron Microscopy法と標準的な画像加工ソフトウェアとを用いて測定するのが有利である。 ここでは熱可塑性マトリックス相(成分(A))の部分のみが上記ポリオレフィンから選択されたグラフトしてないポリオレフィンから成るという事実を挙げておく。
【0039】
グラフトしてないポリオレフィンとしては下記を挙げることができる:
(1)エチレンのホモポリマーおよびコポリマー、特に低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、上記国際特許文献に記載のようなメタロセン触媒を用いて作ったポリエチレン、エチレンと少なくとも一種のα−オレフィン、例えばC3〜C8α−オレフィンとのコポリマー、例えばエチレン/プロピレンコポリマー、エチレン−プロピレンエラストマー(EPR)、エチレン/プロピレン/ジエンエラストマー(EPDM)、エチレンと、例えば(メタ)アクリル酸とC1〜C8アルコールとのエステル、例えばアクリル酸メチルや飽和カルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニールのような不飽和カルボン酸の塩またはエステルの中から選択した少なくとも一種の化合物とのコポリマー。コモノマーの比率は40重量%以下にすることができる。
【0040】
(2)プロピレンのホモポリマーおよびコポリマー、
(3)スチレン/エチレン−ブテン/スチレン(SEBS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/エチレン−プロピレン/スチレン(SEPS)ブロックコポリマー、
(4)反応性モノマー、例えば無水マレイン酸と共重合するか、官能化されたエチレンとプロピレンのポリマーのような、オレフィンポリマー。
【0041】
上記の熱プラスチック混合物が厚さが10〜50ナノメートルのポリアミドシートを有するナノ構造化された組織を保持するためにはポリアミドブロックを有するグラフト共重合体は成分(A)の50重量%以上存在するのが有利である。
【0042】
従って、成分(A)または成分(A)の組成の一部を形成するグラフト共重合体の主鎖のポリオレフィンはエチレンのホモポリマー、プロピレンのホモポリマー、エチレンとC3〜C8αオレフィン、(メタ)アクリル酸とC1〜C8アルコールとのエステルおよび酢酸ビニールとのコポリマーの中から選択できる。
【0043】
本発明の一つの特定実施例では、ポリアミドブロックを有するグラフト共重合体が、ポリオレフィン主鎖+アミノ末端ポリアミドグラフト鎖の混合物で形成されるその先駆物質の形で存在してもよい。この場合には、グラフト共重合体(A)は、ポリオレフィン主鎖をアミノ末端ポリアミドグラフト鎖とをインサイチュー(in situ、その場)で混合することで製造できる。その最終混合物は当然ナノ構造のマトリックスを有するTPVになる。
【0044】
成分(B)
成分(B)は100重量部の架橋可能なエラストマーと、一定数の添加剤とから成る。その量はエラストマーの100部に対する部(phr)で表される。この添加剤はゴム業界で周知の混合機、例えばバンバリーミキサやローラー混合機中で、エラストマーが架橋しない十分に低い温度、一般には100℃以下の温度でエラストマー中に混合される。
【0045】
不飽和エラストマーは下記の中から選択できる:
(1)エチレン、プロピレンおよびジエンのターポリマー(EPDM)、
(2)ブタジエン、天然(NR)または合成物をベースにしたエラストマーおよびスチレン−ブタジエンコポリマー(SBR)、
(3)ブタジエンとアクリロニトリル(NBR)とのコポリマー、
(4)ブタジエンとアクリロニトリル(HNBR)との部分的に水素化されたコポリマー
(5)イソプレンをベースにしたエラストマー(IR)、
(6)アクリルエラストマー、例えば反応性酸またはエポキシ基を有するアクリル酸エステルのコポリマー、例えばアクリル酸メチルアクリル酸ブチルとアクリル酸またはメタクリル酸グリシジルとのコポリマー(ACR)
【0046】
架橋系または加硫系は使用するエラストマーのタイプに合わせるが、ジエンエラストマーの場合には特に硫黄、過酸化物、フェノール樹脂、アゾ基、マレイミド、キノイドおよびウレタン化合物をベースにした加硫剤から選択され、酸基を有するアクリルエラストマーの場合には多官能性アミン、例えばヘキサメチレンジアミンカルバメート、ジイソシアネートをベースにした試薬から、エポキシド基を有するアクリルエラストマーの場合にはアンモニウム塩、2−メチルイミダゾールまたは多官能性酸分子をベースにした試薬を使用する。
【0047】
架橋系または加硫系の比率はエラストマー相が実質的に完全架橋または加硫する当業者に公知の通例の比率である。特に、架橋系または加硫系は成分(B)の1〜20phrで存在する。
【0048】
可塑剤は一般に成分(B)の5〜200phrで存在し、不飽和二結合を有するジエンエラストマーの場合には脂肪族、ナフテン系または芳香族炭化水素の混合物から成るオイル、アクリルエラストマーの場合にはフタール酸のエステルをベースにした極性オイルから選択される。
【0049】
通常の添加剤は一般に粉末の無機充填剤、例えば亜鉛酸化物、酸化チタン、カーボンブラック、カオリン、シリカ、顔料、カップリング剤、劣化防止剤(antidegradants)、ステアラートのような加工助剤、ワックスの中から選択され、成分(B)の10〜150phrで存在する。
【0050】
本発明はさらに、成分(A)との混合中に成分(B)のエラストマーが架橋または加硫されることを特徴とする、上記定義の混合物で形成される架橋または加硫された熱可塑性組成物を提供する。
【0051】
本発明はさらに、上記定義の組成物の製造方法を提供する。本発明方法の特徴は成分(B)の成分(A)との配合物が成分(B)のエラストマーが架橋または加硫するのに十分な温度かつ十分な時間ミリング(mill)される点にある。この方法は「動的加硫または架橋方法」とよばれる。このミリング(milling)は通常の装置、例えば例えばバンバリー(Banbury)ミル、ブラベンダー(Brabender)ミル、レオコード(Rheocord)ミルまたは押出機を用いて約150℃〜約240℃の温度で約3〜15分間の時間で実行でき。時間は温度と反比例して減少する。
【0052】
本発明はさらに、上記定義または上記定義の方法で得られる組成物からプラスチックの通常の加工方法を用いて得られる最終物品を提供する。この加工方法としては押出成形、共押出、押出被覆、射出成形、圧縮成形、カレンダー加工、ケーブル被覆、静電塗装法、流動床浸漬法、レーザープロトタイプ、回転成形、中空成形、スラッシュ成形が挙げられるが、これらに限定さるものではない。後者の成形法は加熱した金型中で粉末を自由流動させる成形方法で、特にダッシュボード、ドアパネル、コンソール用の「スキン」を作るのに用いられる。
【0053】
本発明の物品は単一材料の物品でも、複数材料の物品でも、例えば接着剤やバインダーで結合した物品でもよく、単層または多層のコーテング、フィルム、プレート、可撓管や、建設産業や自動車産業用のシール、自動車産業用の保護ベロー、単一材料または複数材料の射出成形物品等にすることができる。
【0054】
本発明の組成物は上記物品において他の重合物質、例えばポリアミドまたはポリオレフィンまたは他の金属またはガラスと組合せることもできる。本発明物品は種々の用途で使用でき、燃料輸送管、冷却液輸送ライン、電気ケーブル、ケーブル輸送シース、接着剤、熱保護層または被覆、建設産業および自動車産業用シール、自動車産業用保護ベロー等が例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。以下の実施例では特にことわらない限り部および百分比は重量部および重量%である。
【実施例】
【0056】
実施例1(比較例)
この参照例は35%のMFIが2g/10分(2.16kg荷重下、230℃)であるポリプロピレンと、65%のEPDM(B1)とから成る熱可塑性エラストマーで、150phrの脂肪族オイルを含むフェノール樹脂をベースにした系で架橋されている。
(B1)の組成
EPDM 100phr
重合度が4〜5のポリフェノール系架橋剤 12phr
酸化亜鉛促進剤 12phr
脂肪族可塑剤 150phr
カオリン 40phr
酸化チタン顔料 10phr
この熱可塑性エラストマーのショーアA硬度は65、80℃で測定した圧縮永久歪(compression set)は35%である。
この材料の試験片は直ぐに破断するため、射出成形でつくった棒を4.9×104Pa(0.5kg/cm2)の応力を加えて150℃で測定する耐クリープ性は測定できない。
レオメトリック(Rheometrics)な動的レオメータで1Hzの振動数で測定した150℃での弾性モジュラスは0.1MPa以下である。
【0057】
実施例2
65重量%のポリアミドブロックを有するグラフト共重合体(A2)と、35重量%の実施例1(比較例)のEPDMエラストマー(B1)と、150phrの脂肪族オイルを含むフェノール樹脂ベースの架橋系とから、温度を180℃に制御し、回転数を80回転数/分にしたベラベンダー混合機で8分間かけて混合してアロイを作った。
得られた熱可塑性エラストマーのショーアA硬度は55で、80℃での圧縮永久歪は38%であった。
射出成形でつくった棒を4.9×104Pa(0.5kg/cm2)の応力を加えて150℃で測定した耐クリープ性は15分後で25%であった。
レオメトリック(Rheometrics)な動的レオメータで1Hzの振動数で測定した150℃での弾性モジュラスは1MPa以上であった。
【0058】
(A2)の組成:PAブロックを有するグラフト重合体
PAブロックを有するコポリマー(A2)を特許文献1(国際特許第WO02/28959A1公報)に記載の方法で作った。これは80重量%のエチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸ターポリマー(重量比80/17/3)と、20重量%のポリアミド6のグラフト鎖(平均モル質量=3000グラム/モル)とから成る。
【0059】
実施例3(比較例)
ペレタイジング押出機(温度プロフィル=160℃〜250℃)を備えた直径40mmのバス(Buss)の共混連機で60重量%の押出成形用高粘性ポリアミド6(A3)と40重量%のアクリルエラストマー(B3)とから成るアロイを製造した。
アクリルエラストマー(B3)は5phrのヘキサメチレンジアミンカルバメートと一緒に80℃に制御されたベラベンダー混合機で架橋用酸官能基を含むアクリル酸ブチルのコポリマーから成る。
この熱可塑性エラストマーのショーアD硬度は60である。
次いで、直径が18/20mmのチューブの形に押出し、このチューブに自動車産業で要求される下記の攻撃的な媒体中での耐久テストを実行した:
ペルFIAT法9.0213701で180度に曲げ(この曲げる半径はチューブ外径の約5倍に等しい)、次いで、23℃で50重量%の塩化亜鉛水溶液中に部分的に浸す。この組成物中のPA6はこの媒体中での応力亀裂に対する抵抗性がないため試験した材料は200時間後に破壊された。
【0060】
実施例4
ペレタイジング押出機(温度プロフィル=160℃〜250℃)を備えた直径40mmのバス(Buss)の共混連機で60重量%の実施例2のポリアミドブロックを有するグラフト共重合体(A2)と、40重量%の実施例3の配合のアクリルエラストマー(B3)とのアロイを作った。
この熱可塑性エラストマーのショーアD硬度は25であった。
次いで、直径18/20mmのチューブの形に押出し、実施例3のテストを実施したが、このチューブはこのテストでは破壊されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)と(B)から成る混合物(全体で100重量部):
(A) ポリアミドブロックを有する少なくとも一種のグラフト共重合体の10〜90重量部[この共重合体はポリオレフィンの主鎖とこの主鎖にグラフトした平均して少なくとも1.3個のポリアミドグラフト鎖とを有し、ナノメートル構造(nanostructured)の組織を有し、上記ポリアミドグラフト鎖はアミノ末端のポリアミドと化学反応可能な官能基を有する不飽和モノマー(X)の残基を介して主鎖に付いており、上記不飽和モノマー(X)の残基はグラフトするか、二重結合からの共重合で主鎖に付いており、この成分(A)は少なくとも一種のグラフトされていないポリオレフィンを、この成分(A)の上記のナノメートル構造(nanostructured)の組織が失われないようにする比率で、含むことができる]
(B)不飽和二結合を有し且つ架橋剤または加硫剤と化学反応可能な少なくとも一種のエラストマー配合物の90〜10重量部[このエラストマー配合物はこのエラストマーを加硫または架橋するための系と、少なくとも一種の可塑剤と、エラストマー配合物で一般に使用されている添加剤とを含む]
【請求項2】
成分(A)の配合量が15〜75重量部で、成分(B)の配合量が85〜25重量部である請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
基Xが不飽和カルボン酸無水物である請求項1または2に記載の混合物。
【請求項4】
基Xを有するポリオレフィンの主鎖がエチレン−無水マレイン酸コポリマーおよびエチレン−アルキル(メタ)アクリレート−無水マレイン酸コポリマーの中から選択される請求項3に記載の混合物。
【請求項5】
成分(A)のポリオレフィン主鎖に平均して1.3〜10モルのX、特に1.3〜7モルのXが付いている請求項1〜4のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
グラフト鎖がカプロラクタム、11−アミノ−ウンデカン酸またはドデカラクタムの残基を有するホモポリマーまたはこれら3つのモノマーの少なくとも2つから選択される残基から成るコポリアミドである請求項1〜5のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項7】
グラフト鎖の重量平均値モル質量が5000グラム/モル以下である請求項1〜6のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項8】
成分(A)のグラフト共重合体の主鎖または成分(A)の組成物の一部を形成するのポリオレフィンがエチレンのホモポリマー、プロピレンのホモポリマー、エチレンとC3〜C8α−オレフィン、(メタ)アクリル酸のエステル、C1〜C8アルコールおよび酢酸ビニールとのコポリマーの中から選択される請求項1〜7のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項9】
ポリアミドブロックを有するコポリマーがポリアミドの薄層(ラメラ)を有するナノメートル構造の組織を示し、上記ポリアミドの薄層(ラメラ)は10〜50ナノメートルの厚さを有するか、ポリオレフィン主鎖の融点がポリアミドの融点より少なくとも40℃だけ低い時にポリオレフィン主鎖の融点とポリアミドグラフト鎖の融点との間の範囲の中央でレオメトリックな(Rheometrics)動的レオメータで1Hzの周波数で熱力学分析で測定した弾性係数が0.5MPa以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項10】
ポリアミドブロックを有するグラフト共重合体が成分(A)を50重量%以上有する請求項1〜9のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項11】
成分(B)の不飽和のエラストマーを下記(1)〜(6)の中から選択する請求項1〜10のいずれか一項に記載の混合物:
(1)エチレンとプロピレンとジエンとのターポリマー(EPDM)、
(2)ブタジエン、天然物(NR)または合成物をベースにしたエラストマーおよびスチレン−ブタジエンコポリマー(SBR)、
(3)ブタジエンとアクリロニトリルとのコポリマー(NBR)、
(4)部分的に水素化されたアクリロニトリルとブタジエンとのコポリマー(HNBR)、
(5)イソプレン(IR)をベースにしたエラストマー、
(6)反応性酸基またはエポキシ基を有するアクリル酸エステルコポリマー等のアクリルエラストマー、例えばメチルまたはブチルアクリレートとアクリル酸とのコポリマーまたはグリシジルメタクリレート(ACR)。
【請求項12】
架橋系または加硫系が下記の中から選択される請求項1〜11のいずれか一項に記載の混合物:
(1)ジエンエラストマー用の硫黄、過酸化物、フェノール樹脂、アゾ、マレイミド、キノイドおよびウレタン化合物をベースにした加硫剤、
(2)酸基を有するアクリルエラストマー用のヘキサメチレンジアミンカルバメートのような多官能性アミンまたはジイソシアネートをベースにした試薬、または、
(3)エポキシド基を有するアクリルエラストマー用のアンモニウム塩、2−メチルイミダゾールまたは多官能性酸分子をベースにした試薬。
【請求項13】
架橋系または加硫系が成分(B)に1〜20phr存在する請求項1〜12のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項14】
不飽和二重結合を有するエラストマー用の脂肪族、ナフテン系または芳香族炭化水素の混合物から成るオイルおよびアクリルエラストマー用のフタール酸エステルをベースにした極性オイルの中から選択される可塑剤を成分(B)の5〜200phr存在する請求項1〜13のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項15】
通常の添加剤が粉末状無機充填剤、例えば亜鉛酸化物および酸化チタン、カーボンブラック、カオリン、シリカ、顔料、カップリング剤、劣化防止剤(antidegradants)、加工添加剤、例えばステアラートおよびワックスの中から選択され、成分(B)の10〜150phr存在する請求項1〜14のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項16】
ポリアミドブロックを有するグラフト共重合体が、ポリオレフィン主鎖+アミノ末端ポリアミドグラフト鎖の混合物で形成される先駆体の形で存在する請求項1〜15のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項17】
グラフト鎖の数平均モル質量が5000グラム/モル以下である請求項1〜16のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項18】
成分(A)との混合時に、成分(B)のエラストマーが架橋または加硫されて得られる請求項1〜17のいずれか一項に記載の混合物から成ることを特徴とする架橋または加硫された熱可塑性組成物。
【請求項19】
成分(B)のエラストマーを架橋または加硫するのに充分な温度かつ十分な時間、成分(B)の配合物を成分(A)とミリングすることを特徴とする請求項18に記載の組成物の製造方法。
【請求項20】
ミリングを150〜240℃の温度で3〜15分間行なう請求項19に記載の方法。
【請求項21】
押出成形法、共押出法、押出し被覆法、射出成形法、圧縮成形法、カレンダー加工法、ケーブル被覆法、静電塗装、流動床浸漬法、レーザープロトタイピング法を含む研摩後の粉末被覆法、ローター形成法または中空成形法、特にダッシュボード、ドアパネルまたはコンソール用「スキン」を製造するための方法を用いて、請求項18に記載の組成物または請求項19または請求項20の方法で、少なくともその一部が得られる最終物品。
【請求項22】
接着剤、接着結合剤、被覆材、フィルム、プレート、可撓管、単層または多層のフォーム、建設および自動車用シール、自動車用保護ベロー、単層または多層材料の射出成形物品から成る請求項21に記載の物品。

【公表番号】特表2010−531754(P2010−531754A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514073(P2010−514073)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【国際出願番号】PCT/FR2008/051212
【国際公開番号】WO2009/007633
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【Fターム(参考)】