説明

ポリアミド複合粒子、ポリアミド酸複合粒子及びポリイミド複合粒子並びにこれらの製造方法

【課題】ポリアミド、ポリアミド酸及びポリイミドが脱落しにくく、かつポリアミド、ポリアミド酸及びポリイミドの分子量が制御された複合粒子及びその製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の複合粒子の製造方法は、表面にSi含有官能基を有する無機粒子に1)ポリアミド酸、2)ポリアミド、3)ポリイミド又は4)これらを構成するモノマー若しくはそのオリゴマーが当該官能基を介して結合してなる複合粒子を製造する方法であって、前記無機粒子にポリアミド又はポリイミドを構成し得る成分を反応させる工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド複合粒子、ポリアミド酸複合粒子及びポリイミド複合粒子並びにこれらの製造方法に係る。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド、ポリアミド酸あるいはポリイミドの粒子を製造する方法としては、これまでいくつかの方法が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸のワニスを調製し、これを貧溶媒中に滴下し、沈殿法により粒子を製造する方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ポリアミド酸の溶液をポリマー不溶溶媒中に入れて加熱して閉環させることによりイミド化を行い、生成した粒子状重合体を回収する方法が提案されている。
【0005】
特許文献3には、芳香族テトラカルボン酸二無水物(I)、芳香族ジアミン(II)を、(I)及び(II)は溶解するが、生成するポリアミド酸は溶解しない有機溶媒(III)中で、(I)及び(II)の総量を(III)に対して10重量%以下として反応させることを特徴とするポリアミド酸微粒子の製造法が開示されている。
【0006】
特許文献4には、ジアミンとジカルボン酸からなる微粒状固体塩を得た後、該微粒状固体塩から多孔質固体塩を作成し、この多孔質固体塩を用いて常に固体状態で重縮合する方法が開示されている。
【特許文献1】特公昭38−5997号公報
【特許文献2】特公昭39−30060号公報
【特許文献3】特開平9−302089号公報
【特許文献4】特開平11−172006号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、いずれの方法によっても、所望の粒径や比表面積に制御されたポリアミド粒子、ポリアミド酸粒子又はポリイミド粒子を製造することは困難である。
【0008】
また、ポリアミド、ポリアミド酸又はポリイミドの粒子を種々の用途に用いる場合、その用途によってはいろいろな機能性(反応性等)が要求されるが、前記の従来技術では、ポリアミド粒子等に機能性基を導入できない又は、導入する機能性基の種類が非常に制限されるという問題がある。
従って、本発明の主な目的は、所望の粒径又は比表面積に制御でき、また、機能性基をも兼ね備えることができるポリアミド複合粒子、ポリアミド酸複合粒子又はポリイミド複合粒子を工業的規模で生産できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の方法により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記のポリアミド複合粒子、ポリアミド酸複合粒子及びポリイミド複合粒子並びにこれらの製造方法に係るものである。
【0011】
項1.表面にSi含有官能基を有する無機粒子に1)ポリアミド酸、2)ポリアミド、3)ポリイミド又は4)これらを構成するモノマー若しくはそのオリゴマーが当該官能基を介して結合してなる複合粒子を製造する方法であって、前記無機粒子にポリアミド又はポリイミドを構成し得る成分を反応させる工程を含む複合粒子の製造方法。
【0012】
項2.上記項1に記載の工程が、
(A)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物を交互に重合させることにより、ポリアミド複合粒子を得るA工程
である複合粒子の製造方法。
【0013】
項3.上記項1に記載の工程が、
(B)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物の重合体を結合させることにより、ポリアミド複合粒子を得るB工程
である複合粒子の製造方法。
【0014】
項4.上記項1に記載の工程が、
(C)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を交互に重合させることにより、ポリアミド酸複合粒子を得るC工程
である複合粒子の製造方法。
【0015】
項5.上記項1に記載の工程が、
(D)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の重合体を結合させることにより、ポリアミド酸複合粒子を得るD工程
である複合粒子の製造方法。
【0016】
項6.上記項1に記載の工程が、
(E)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を交互に重合させ、得られたポリアミド酸複合粒子をさらにイミド化することにより、ポリイミド複合粒子を得るE工程
である複合粒子の製造方法。
【0017】
項7.上記項1に記載の工程が、
(F)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の重合体を結合させ、得られたポリアミド酸複合粒子をさらにイミド化することにより、ポリイミド複合粒子を得るF工程
である複合粒子の製造方法。
【0018】
項8.前記Si含有官能基を有する無機粒子が、シランカップリング剤が溶解した溶液に無機粒子を接触することにより得られたものである、上記項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【0019】
項9.前記ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物の少なくとも1つが機能性基を有する、上記項2又は3に記載の製造方法。
【0020】
項10.前記無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1つが機能性基を有する、上記項4〜7のいずれかに記載の製造方法。
【0021】
項11.無機粒子が平均粒径10nm〜1mmの多孔質粒子である、上記項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【0022】
項12.上記項2又は3に記載の製造方法で得られる、ポリアミド複合粒子。
【0023】
項13.上記項4又は5に記載の製造方法で得られる、ポリアミド酸複合粒子。
【0024】
項14.上記項6又は7に記載の製造方法で得られる、ポリイミド複合粒子。
【0025】
1.ポリアミド、ポリアミド酸及びポリイミドの製造方法
本発明の製造方法は、
表面にSi含有官能基を有する無機粒子に1)ポリアミド酸、2)ポリアミド、3)ポリイミド又は4)これらを構成するモノマー若しくはそのオリゴマーが当該官能基を介して結合してなる複合粒子を製造する方法であって、前記無機粒子にポリアミド又はポリイミドを構成し得る成分を反応させる工程
を含むことを特徴とする。
【0026】
(1)無機粒子
本発明で用いる無機粒子の材質は限定されず、最終製品の用途等に応じて幅広く選択できる。例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、ジルコニア、チタニア、セリア、ゼオライト等が挙げられる。
【0027】
これらの中でも、後述するシランカップリング剤との化学結合が強固になされる観点からSi元素が含まれているもの、例えば、シリカ、ゼオライト等が好ましい。
【0028】
無機粒子の形状は限定的でなく、球状、板状、フィルム状、針状、繊維状、薄片状、鱗片状など最終製品の用途等に応じて適宜決定すればよい。例えば、球状である場合、平均粒径は、通常5nm〜1cm程度、好ましくは10nm〜1mm程度とすればよい。
【0029】
本発明では、無機粒子は、比表面積が大きい程、Si含有官能基を数多く導入できる観点から多孔質であることが好ましい。例えば、シリカゲル、アルミナ多孔体、ゼオライト等が挙げられる。例えばシリカゲルの場合、比表面積は、通常10〜4000m/g程度(好ましくは、20〜2000m/g程度)とすればよい。これら無機粒子の材質及び比表面積を適宜選択することにより、製造するポリアミド複合粒子、ポリアミド酸複合粒子及びポリイミドの比表面積を適宜調節することができる。
【0030】
(2)Si含有官能基
無機粒子の表面に有するSi含有官能基は、Siを含有している基である限り限定されない。本発明では、例えば、シランカップリング剤により付与されるものが好ましい。
【0031】
シランカップリング剤は限定的でなく、公知又は市販のものを使用できる。例えば、ビニル系、エポキシ系、スチリル系、メタクリロキシ系、アクリロキシ系、アミノ系、ウレイド系、クロロプロピル系、メルカプト系、スルフィド系、イソシアネート系等が挙げられる。
【0032】
これらの中でも、好ましくは、エポキシ系、アミノ系等である。具体例としては、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0033】
上記Si含有官能基を有する無機粒子は、例えば、シランカップリング剤が溶解した溶液に無機粒子を接触することにより得られる。
【0034】
接触させる方法は、特に限定されず、当該溶液を無機粒子に噴霧及び塗布する方法等が挙げられるが、本発明では、当該溶液に無機粒子を浸漬させる方法が好ましい。
【0035】
溶媒は、シランカップリング剤が溶解する限り、限定的でなく、例えば、水;メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、ブチロラクトン等のエステル類;ジオキサン、トリオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類;ポリエーテル類等が挙げられる。
【0036】
シランカップリング剤の濃度は、シランカップリング剤、無機粒子及び溶媒の種類等に応じて適宜定めることができるが、通常0.01〜5wt%程度、好ましくは0.05〜1wt%程度とすればよい。
【0037】
浸漬させた場合は、必要に応じて、遠心分離等の公知の方法により固液分離して無機粒子を回収し、必要に応じてエタノール、アセトン等の溶媒で洗浄して中性にすれば良い。
【0038】
ポリアミド、ポリアミド酸又はポリイミドを構成し得る成分とは、ポリアミド、ポリアミド酸又はポリイミドを構成し得るモノマー並びに当該モノマーが重合したオリゴマー及びポリマーをいう。構成し得るモノマーが2種以上ある場合、すなわち共重合体である場合は、2種以上のモノマーが少なくとも1回でも重合したものを本発明ではオリゴマー又はポリマーという。オリゴマーは通常、分子量が10000程度以下の重合体をいい、ポリマーは通常、10000程度以上の重合体をいう。
【0039】
本発明の好ましい態様として、以下に具体例を挙げる。
【0040】
第1発明は、ポリアミド複合粒子の製造方法であって、
(A)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物を交互に重合させることにより、ポリアミド複合粒子を得るA工程、を含むことを特徴とする。
【0041】
第2発明は、ポリアミド複合粒子の製造方法であって、
(B)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物の重合体を結合させることにより、ポリアミド複合粒子を得るB工程、を含むことを特徴とする。
【0042】
第3発明は、ポリアミド酸複合粒子の製造方法であって、
(C)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を交互に重合させることにより、ポリアミド酸複合粒子を得るC工程、を含むことを特徴とする。
【0043】
第4発明は、ポリアミド酸複合粒子の製造方法であって、
(D)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の重合体を結合させることにより、ポリアミド酸複合粒子を得るD工程、を含むことを特徴とする。
【0044】
第5発明は、ポリイミド複合粒子の製造方法であって、
(E)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を交互に重合させ、得られたポリアミド酸複合粒子をさらにイミド化することにより、ポリイミド複合粒子を得るE工程、を含むことを特徴とする。
【0045】
第6発明は、ポリイミド複合粒子を製造する方法であって、
(F)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の重合体を結合させ、得られたポリアミド酸複合粒子をさらにイミド化することにより、ポリイミド複合粒子を得るF工程、を含むことを特徴とする。
【0046】
以下、これらを詳述する。
【0047】
第1発明
第1発明は、ポリアミド複合粒子の製造方法であって、
(A)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物を交互に重合させることにより、ポリアミド複合粒子を得るA工程、を含むことを特徴とする。
【0048】
例えば、上記Si含有官能基を有する無機粒子を、ジカルボン酸クロライドが溶解した溶液に浸漬させることにより、Si含有官能基を介して無機粒子とジカルボン酸クロライドとを結合させる。次いで、得られたジカルボン酸クロライド結合無機粒子を、ジアミン化合物が溶解した溶液に浸漬させることにより、ジカルボン酸クロライド(Si含有官能基と結合した−COCl基とは他端)の−COCl基とジアミン化合物の−NH基とをアミド結合させる。この工程を繰り返す。このように、ジカルボン酸クロライド溶液とジアミン化合物溶液とに順次(交互に)浸漬させ反応させることにより、均一な分子量のポリアミド(オリゴマー)が付与された複合粒子を製造することができる。反応させる回数を調節することにより、ポリアミド(オリゴマー)の分子量を適宜調節することが可能である。なお、必要に応じて、ジカルボン酸クロライド溶液を浸漬した後、ジアミン化合物溶液を浸漬する前に、洗浄及び乾燥させてもよい。また、Si含有官能基に結合させる順番は限定的でなく、先にジアミン化合物の結合から行ってもよい。これらは、Si含有官能基の有する官能基によって適宜決定すればよい。
【0049】
本発明では、上記ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物の少なくとも一方が機能性基を有していてもよい。機能性基としては、得られる複合粒子表面上に所望の機能を付与できる限り特に限定されない。例えば、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH2)、アルケン類(−CH=CH−)、アルキン類(−C≡C−)、ビニルエーテル類(−CH=CH−O−)、アミド基(−CONH2)、ニトリル基(−C≡N)、イソシアネート基(−N=C=O)、ニトロ基(−NO2)、スルホン基(−SO3H)、チオール基(−SH)、クラウンエーテル基等の官能基のほか、−CF3基、−CCl3基、−CBr3等を挙げることができる。なお、原料として使用されるジアミン化合物及びジカルボン酸クロライドにあっては、それぞれ基−NH2及び基−COClを有しているが、最終的に得られる複合粒子表面上にそれらの基が存在する場合には、本発明の機能性基に包含される。
【0050】
本発明のA工程で用いるジカルボン酸クロライドは、特に制限されず、例えば従来のポリアミド合成で用いられているものと同様のものが使用できる。例えば、シュウ酸ジクロライド、マロン酸ジクロライド、コハク酸ジクロライド、フマル酸ジクロライド、グルタル酸ジクロライド、アジピン酸ジクロライド、ムコン酸ジクロライド、セバシン酸ジクロライド、ノナン酸ジクロライド、ウンデカン酸ジクロライド等の脂肪族ジカルボン酸ジクロライド;1,2−シクロプロパンジカルボン酸ジクロライド、1,3−シクロブタンジカルボン酸ジクロライド、1,3−シクロペンタンジカルボン酸ジクロライド、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジクロライド等の脂環族ジカルボン酸ジクロライド;フタル酸ジクロライド、イソフタル酸ジクロライド、テレフタル酸ジクロライド、1,4−ナフタレンジカルボン酸ジクロライド、1,5−(9−オキソフルオレン)ジカルボン酸ジクロライド、1,4−アントラセンジカルボン酸ジクロライド、1,4−アントラキノンジカルボン酸ジクロライド、2,5−ビフェニルジカルボン酸ジクロライド、1,5−ビフェニレンジカルボン酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド、4,4'−メチレン二安息香酸ジクロライド、4,4’−イソプロピリデン二安息香酸ジクロライド、4,4'−ビベンジルジカルボン酸ジクロライド、4,4’−スチルベンジカルボン酸ジクロライド、4,4’−トランジカルボン酸ジクロライド、4,4’−カルボニル二安息香酸ジクロライド、4,4’−オキシ二安息香酸ジクロライド、4,4’−スルホニル二安息香酸ジクロライド、4,4’−ジチオ二安息香酸ジクロライド、p−フェニレン二酢酸ジクロライド、3,3’−p−フェニレンジプロピオン酸ジクロライド等の芳香族ジカルボン酸ジクロライドを挙げることができる。これらジカルボン酸クロライドは、1種又は2種以上を用いることができる。
【0051】
機能性基を有するジカルボン酸クロライドを用いる場合には、上記ジカルボン酸クロライドであって、かつ、前記に掲げた機能性基を有するものを使用することができる。例えば、4,4’−(2,2−ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸ジクロライド)、4−ニトロフタル酸ジクロライド、3−ニトロフタル酸ジクロライド、4−メチルフタル酸ジクロライド、テトラクロロフタル酸ジクロライド等を挙げることができる。
【0052】
本発明では、機能性基を有するジカルボン酸クロライドと、機能性基を有しないジカルボン酸クロライドとを併用することも可能である。これにより、得られるポリアミド複合粒子の特性を任意に制御することができる。この場合の両者の割合は、機能性基の種類、機能性基の所望の付与量等に応じて適宜設定することができる。
【0053】
また、ジカルボン酸クロライドは、得られるポリアミド複合粒子の所望の特性等に応じて適宜選択することができる。例えば、ジカルボン酸クロライドとして芳香族ジカルボン酸ジクロライド(特にテレフタル酸ジクロライド、4,4’−ビフェニルジカルボニルクロライド及びイソフタル酸ジクロライドの少なくとも1種)を用いると、得られるポリアミド複合粒子の耐熱性を向上させることができる。
【0054】
また、トリカルボン酸クロライド、テトラカルボン酸クロライド及びこれらの無水物もジカルボン酸クロライドの代わりとして使用することができる。テトラカルボン酸クロライド等を用いると、後述する第3及び第4工程で得られるポリアミド酸複合粒子となるが、これも本第1工程で得られるポリアミド複合粒子に含まれる。
【0055】
トリカルボン酸クロライドとしては、例えば、トリメリット酸クロライド、1−カルボキシメチル−2,3−5シクロペンタントリカルボン酸クロライド、が挙げられる。トリカルボン酸無水物としては、トリメリット酸無水物、1−カルボキシメチル−2,3−5シクロペンタントリカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0056】
テトラカルボン酸クロライド及び無水テトラカルボン酸としては、本3発明で使用するものが挙げられる。
【0057】
ジカルボン酸クロライドを溶解させる溶媒は、実質的にジカルボン酸クロライドが溶解するものであれば特に限定されない。例えば、2−プロパノン、3−ペンタノン、テトラヒドロピレン、エピクロロヒドリン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、アセトアニリド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン等のほか、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の非プロトン極性溶媒;クレゾール系化合物等が挙げられ、これらの少なくとも1種を含む溶媒を使用することができる。
【0058】
上記溶液の濃度は、用いるジカルボン酸クロライドの種類等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は0.001〜2.0モル/リットル程度、好ましくは0.01〜1.0モル/リットルとする。
【0059】
A工程で用いるジアミン化合物は、特に制限されず、例えば従来のポリアミド酸又はポリイミド合成で用いられているものと同様のものも使用できる。例えば、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3,4−ジアミノジフェニルスルフォン、3,3'−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,6’−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、1,2−ジアミノアントラキノン、1,4−ジアミノアントラキノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノビベンジル、R(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン、S(+)−2,2’−ジアミノ−1,1’−ビナフタレン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン等の1,n−ビス(4−アミノフェノキシ)アルカン(nは、3〜10)、1,2−ビス[2−(4−アミノフェノキシ)エトキシ]エタン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;1,2−ジアミノメタン、1,4−ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノドデカン、1,11−ジアミノウンデカン等の脂肪族ジアミン;1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂環族ジアミンのほか、3,4−ジアミノピリジン、1,4−ジアミノ−2−ブタノン等を使用することができる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。特に、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等を用いると、耐熱性、耐薬品性等が向上するので好ましい。
【0060】
機能性基を有するジアミン化合物を用いる場合には、上記ジアミン化合物であって、前記で挙げた機能性基を有するものを使用することができる。例えば、1,3−ジアミノ−2−プロピルアルコール、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、2,4,6−トリアミノピリミジン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、2,4−ジアミノ−6−ヒドロキシピリミジン、4,5−ジアミノ−2,6−ジメルカプトピリミジン等を用いることができる。
【0061】
本発明では、機能性基を有するジアミン化合物と、機能性基を有しないジアミン化合物とを併用することもできる。これより、得られるポリアミド複合粒子の特性等を変えることができる。この場合の両者の割合は、機能性基の種類、機能性基の所望の付与量等に応じて適宜設定することができる。
【0062】
さらに、本発明では、ジアミン化合物のほかに、他のアミン系化合物(モノアミン化合物、多価アミン化合物等)も用いることができる。これらにより、得られるポリアミド(ポリアミド酸及びポリイミドの場合も同じ)の特性を変えることができる。特に、三価以上の多価アミン化合物等を用いることにより、直鎖のみならず、分岐状のポリアミドを有する複合粒子を製造できる。
【0063】
モノアミン化合物としては、例えば2−アミノチオフェノール、4−アミノチオフェノール等が挙げられる。
【0064】
ジアミン化合物を溶解させる溶媒は、実質的にジアミン化合物が溶解するものであれば特に制限されない。例えば、2−プロパノン、3−ペンタノン、テトラヒドロピレン、エピクロロヒドリン、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、アセトアニリド、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のほか、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の非プロトン極性溶媒;クレゾール系化合物等が挙げられ、これらの少なくとも1種を含む溶媒を使用することができる。
【0065】
上記溶液の濃度は、用いるジアミン化合物の種類等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は0.001〜2.0モル/リットル程度、好ましくは0.01〜1.0モル/リットルとする。
【0066】
第2発明
第2発明は、ポリアミド複合粒子の製造方法であって、
(B)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物の重合体を結合させることにより、ポリアミド複合粒子を得るB工程、を含むことを特徴とする。
【0067】
ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物の重合体とは、ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物が少なくとも各1分子以上重合したものであればよい。すなわち、各1分子が重合した重合体(ジカルボン酸−ジアミン化合物)であってもよく、一方が2分子、他方が1分子重合した重合体(ジカルボン酸−ジアミン化合物−ジカルボン酸)(ジアミン化合物−ジカルボン酸−ジアミン化合物)であってもよく、各2分子ずつ重合したもの(重合体の構成単位が2であるダイマー)、各3分子ずつ重合したもの(トリマー)等のオリゴマーであってもよく、多量に重合したポリマーであってもよい。
【0068】
なお、本発明では、ポリアミドオリゴマーは、ジカルボン酸クロライド及びジアミンが1分子ずつ重合したものも含まれる。ポリアミドオリゴマーは通常、分子量が10000程度以下の重合体をいい、ポリマーは通常、10000程度以上の重合体をいう。本発明では、他の物質との反応性が良好である点から、オリゴマーが好ましい。
【0069】
B工程で使用する原料、例えば、ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物、並びにこれらの機能性基を有する化合物等はA工程で上述したものと(好ましいものも併せて)同じである。
【0070】
B工程は、例えば、上記A工程で使用するジカルボン酸クロライド溶液とジアミン化合物溶液とを、無機粒子に浸漬させる前に予め混合させることにより、所望の分子量のポリアミドを重合させた溶液(又はエマルション)を調製する。次いで、得られたポリアミド溶液(又はエマルション)中に、無機粒子を浸漬(又は分散)させることにより、ポリアミドと無機粒子とをSi含有官能基を介して結合させればよい。
【0071】
ジカルボン酸クロライド溶液及びジアミン化合物溶液の濃度、混合割合、時間等を適宜調節することにより、ポリアミド(オリゴマー)の分子量(重合度)を調節できる。
【0072】
両溶液の混合比率は、ジカルボン酸クロライド・ジアミン化合物の種類、各溶液の濃度によって適宜変更できるが、通常はジカルボン酸クロライド:ジアミン化合物=1:0.5〜1.5程度(モル比)程度とすればよい。
【0073】
なお、混合する際に、適宜公知の方法で攪拌等を行っても良い。
【0074】
第3発明
第3発明は、ポリアミド酸複合粒子の製造方法であって、
(C)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を交互に重合させることにより、ポリアミド酸複合粒子を得るC工程、を含むことを特徴とする。
【0075】
本発明は、上記A工程において、ジカルボン酸クロライドの代わりに、無水テトラカルボン酸を使用する以外は、A工程と同様である.
無水テトラカルボン酸は、特に制限されず、例えば従来のポリイミド合成で用いられているものと同様のものも使用できる。例えば、3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3',4,4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3',4'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、1,3−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4−ビス(2,3−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,3,3',4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2',3,3'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2',6,6'−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、アントラセン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、フェナンスレン−1,8,9,10−テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸無水物;ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸無水物;シクロブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物等の脂環族テトラカルボン酸無水物;チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の複素環族テトラカルボン酸無水物等を使用することができる。これらは、1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、特にBTDA、ピロメリット酸二無水物等が好ましい。
【0076】
また、機能性基を有する無水テトラカルボン酸を用いる場合は、当該機能性基はA工程で掲げた機能性基が挙げられる。この機能性基を有するテトラカルボン酸等としては、例えば、ビシクロ(2.2.2)オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−無水ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等を用いることができる。本発明では、機能性基を有するテトラカルボン酸は、機能性基を有しないテトラカルボン酸と併用することも可能である。これにより、得られるポリアミド酸複合粒子の特性を任意に制御することができる。この場合の両者の割合は、機能性基の種類、機能性基の所望の付与量等に応じて適宜設定することができる。
【0077】
さらに、本発明では、無水テトラカルボン酸の一部を酸クロライドで置換したものを使用することができる。酸クロライドで置換すれば、条件によって反応速度を大きくできる等の効果が得られる。酸クロライドとしては、例えばジエチルピロメリテイトジアシルクロライド等を用いることができる。
【0078】
無水テトラカルボン酸を溶解させる溶媒は、実質的に無水テトラカルボン酸が溶解するものであれば特に限定されず、例えば、上記ジカルボン酸クロライドが溶解する溶媒と同様のものが挙げられる。
【0079】
上記溶液の濃度は、用いる無水テトラカルボン酸の種類等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は0.001〜2.0モル/リットル程度、好ましくは0.01〜1.0モル/リットルとする。
【0080】
ジアミン化合物及びその溶液は上記A工程で用いたものと同様のものが挙げられる。機能性基を有するジアミン化合物も同様である。
【0081】
第4発明
第4発明は、ポリアミド酸複合粒子の製造方法であって、
(D)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の重合体を結合させることにより、ポリアミド酸複合粒子を得るD工程、を含むことを特徴とする。
【0082】
本発明は、上記B工程において、ジカルボン酸クロライドの代わりに、無水テトラカルボン酸を使用する以外は、B工程と同様である。
【0083】
無水テトラカルボン酸の種類、用いる溶媒等はC工程で上述したものと(好ましいものも併せて)同様である。
【0084】
なお、本発明では、ポリアミド酸オリゴマー(ポリイミドオリゴマーも同様)は、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物が1分子ずつ重合したものも含まれる。ポリアミド酸オリゴマーは通常、分子量が10000程度以下の重合体をいい、ポリマーは通常、10000程度以上の重合体をいう。本発明では、他の物質との反応性が良好である点から、オリゴマーが好ましい。
【0085】
第5発明及び6発明
第5発明は、ポリイミド複合粒子の製造方法であって、
(E)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を交互に重合させ、得られたポリアミド酸複合粒子をさらにイミド化することにより、ポリイミド複合粒子を得るE工程、を含むことを特徴とする。
【0086】
すなわち、上記C工程で得られたポリアミド酸複合粒子に、さらにイミド化する工程を加えたものである。
【0087】
第6発明は、ポリイミド複合粒子の製造方法であって、
(F)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の重合体を結合させ、得られたポリアミド酸複合粒子をさらにイミド化することにより、ポリイミド複合粒子を得るF工程、を含むことを特徴とする。
【0088】
すなわち、上記D工程で得られたポリアミド酸複合粒子に、さらにイミド化する工程を加えたものである。
【0089】
上記イミド化する方法は,ポリアミド酸複合粒子からそのままポリイミド粒子が得られる限りは特に制限されないが、本発明では特に(i)有機溶媒中で加熱してイミド化する方法(湿式熱閉環)、(ii)有機溶媒中における化学反応によりイミド化する方法(化学閉環)、又は(iii)乾式(無溶媒下)で加熱することによりイミド化する方法(乾式熱閉環)を採用することが望ましい。この中でも、特に上記(iii)による方法がより望ましい。
【0090】
上記(i)の加熱による方法は、例えばポリアミド酸複合粒子を有機溶媒中に分散させ、通常130℃以上、好ましくは130〜250℃程度の温度で加熱すれば良い。有機溶媒としては、イミド化反応に必要な温度以上の沸点を有するものであれば制限されない。特に、本発明では、上記有機溶媒中に水と共沸混合物を構成し得る溶媒(以下「共沸溶媒」ともいう)を含むことが好ましい。すなわち、本発明では、共沸溶媒を上記有機溶媒の一部又は全部として用いることが好ましい。共沸溶媒としては、例えばキシレン、エチルベンゼン、オクタン、シクロヘキサン、ジフェニルエーテル、ノナン、ピリジン、ドデカン等を用いることができる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、共沸溶媒は上記有機溶媒中10容積%以上含むことが好ましい。共沸溶媒を使用することによって、特に副生する水(主に縮合水)を共沸させ、これを還流等により反応系外へ除去できることから、未反応のアミド結合の加水分解を抑制し、分子量の低下等を防止できる。
【0091】
有機溶媒中に分散させるポリアミド酸複合粒子の割合は、有機溶媒の種類等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は1〜50g/リットル程度、好ましくは5〜10g/リットルとすれば良い。
【0092】
上記(ii)の化学反応による方法では、公知の化学閉環方法を適用することができる。例えば、ポリアミド酸複合粒子をピリジン及び無水酢酸からなる有機溶媒中に分散させ、撹拌しながら通常15〜115℃程度の温度で24時間程度加熱すれば良い。両溶媒の配合割合は適宜設定すれば良い。
【0093】
上記(iii)による方法では、例えばポリアミド酸複合粒子を回収し、これを空気中、真空中、不活性ガス中等の雰囲気下で上記複合粒子を流動させながら加熱すれば良い。加熱温度は、一般的には130〜300℃程度とすれば良い。また、流動方法は、公知の攪拌流動装置等を用いることによって実施することができる。この方法によっても、粒子を凝集させることなくイミド化することが可能である。特に、この方法では、溶媒が実質的に存在しない条件下でイミド化を行うので、加熱効率が良く、また安全性等においても有利である。
【0094】
E工程及びF工程で生成したポリイミド複合粒子は、公知の方法により回収し、必要に応じて石油エーテル、メタノール、アセトン等の有機溶剤で洗浄すれば良い。
【0095】
2.ポリアミド複合粒子
本発明のポリアミド複合粒子は、上記A工程又はB工程等で得られる。具体的には、無機粒子表面にSi含有官能基を介してポリアミドオリゴマー又はポリアミドが結合されている。
【0096】
Si含有官能基一つ当たりに結合しているポリアミドオリゴマー及びポリアミドの分子量は、最終製品の用途等に応じて適宜設定することができるが、通常100〜10000程度、好ましくは300〜8000程度である。ポリアミドオリゴマー及びポリアミドは、直鎖又は分岐状であってもよい。
【0097】
本発明のポリアミド複合粒子の比表面積(BET法)は、通常、10〜4000m/g程度、好ましくは、20〜2000m/g程度である。
【0098】
また、ポリアミド複合粒子は、機能性基を有していもよく、機能性基の種類及び存在割合は、最終製品の用途等に応じて適宜設定すればよい。
【0099】
3.ポリアミド酸複合粒子
本発明のポリアミド酸複合粒子は、上記C工程又はD工程等で得られる。具体的には、無機粒子表面にSi含有官能基を介してポリアミドオリゴマー又はポリアミドが結合されている。
【0100】
Si含有官能基一つ当たりに結合しているポリアミド酸オリゴマー及びポリアミド酸の分子量は、最終製品の用途等に応じて適宜設定することができるが、通常100〜10000程度、好ましくは300〜8000程度である。ポリアミド酸オリゴマー及びポリアミド酸は、直鎖又は分岐状であってもよい。
【0101】
本発明のポリアミド酸複合粒子の比表面積(BET法)は、通常、10〜4000m/g程度、好ましくは、20〜2000m/g程度である。
また、ポリアミド酸複合粒子は、機能性基を有していもよく、機能性基の種類及び存在割合は、最終製品の用途等に応じて適宜設定すればよい。
【0102】
4.ポリイミド複合粒子
本発明のポリイミド複合粒子は、上記E工程又はF工程等で得られる。具体的には、無機粒子表面にSi含有官能基を介してポリイミドオリゴマー又はポリイミドが結合されている。
【0103】
Si含有官能基一つ当たりに結合しているポリイミドオリゴマー及びポリイミドの分子量は、最終製品の用途等に応じて適宜設定することができるが、通常100〜10000程度、好ましくは300〜8000程度である。ポリイミドオリゴマー及びポリイミドは、直鎖又は分岐状であってもよい。
【0104】
本発明のポリイミド複合粒子の比表面積(BET法)は、通常、10〜4000m/g程度、好ましくは、20〜2000m/g程度である。
【0105】
また、ポリイミド複合粒子は、機能性基を有していもよく、機能性基の種類及び存在割合は、最終製品の用途等に応じて適宜設定すればよい。
【発明の効果】
【0106】
本発明の製造方法によれば、所望の粒径又は比表面積に制御されたポリアミド複合粒子、ポリアミド酸複合粒子又はポリイミド複合粒子を工業的に生産することができる。
本発明の製造方法によれば、機能性をも兼ね備えることができるポリアミド複合粒子、ポリアミド酸複合粒子又はポリイミド複合粒子を提供することもできる。
本発明の製造方法によれば、結合させるポリアミド、ポリアミド酸及びポリイミドの分子量を自由に制御することができる。よって、反応性が高い低分子量(オリゴマー)の機能性ポリアミド複合粒子、機能性ポリアミド酸複合粒子及び機能性ポリイミド複合粒子等の製造も可能である。
本発明のポリアミド複合粒子、ポリアミド酸複合粒子又はポリイミド複合粒子は、無機粒子とポリアミド等の樹脂成分がSi含有官能基を介して化学結合しているため、無機粒子表面からポリアミド、ポリアミド酸及びポリイミドが脱落しにくい。
【0107】
よって、本発明の複合粒子は、クロマトグラフ(医薬品、金属イオン、有機化合物等の分離精製);診断薬;イオン交換(純水の製造、液体中のイオン除去、燃料電池のイオン交換膜);気体及び液体の浄化(脱臭、脱色、不純物除去);建材(断熱、防音、吸音、化学物質除去);プラスチック成形材及びフィルム(ガス分離性、絶縁性、光拡散性、強度、靭性、耐熱性、難燃性の向上);プラスチック、ゴム等への添加剤(強度、靭性、耐熱性、難燃性の向上);などの多種多様の用途に用いることができ得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0108】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0109】
シランカップリング処理1
シランカップリング剤KBE-903 (3−アミノプロピルトリメトキシシラン(CHO)3SiC3H6NH2、信越化学工業株式会社製)0.5gをイオン交換水625mlに溶解した溶液にシリカゲル(ワコーシルC-300、BET法による比表面積412m2/g、和光純薬工業株式会社製)50gを分散し、室温で24時間攪拌した後、ろ過して、シリカゲルを分離した。分離したシリカゲルを水洗した後、乾燥してから110℃で2時間加熱処理した。
【0110】
シランカップリング処理2
シランカップリング剤として、KBM-403(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製)を用いた以外は、上記処理1と同様に行った。
【0111】
溶液
実施例に用いる溶液としては、下記のものを使用した。
【0112】
溶液1:0.05mol/Lの3,3´,4,4´-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物のDMF溶液
溶液2:0.05mol/Lの4,5-ジアミノ-2,6-ジメルカプトピリミジンのDMF溶液
溶液3:0.05mol/Lの4-アミノチオフェノールのDMF溶液
溶液4:0.05mol/Lの2,4,6−トリアミノピリミジンのDMF溶液
溶液5:0.05mol/Lの4,4’-ジアミノジフェニルエーテルのDMF溶液
溶液6:0.05mol/Lの3,5-ジアミノ安息香酸のDMF溶液
溶液7:0.05mol/Lのテレフタル酸クロリドのDMF溶液
【0113】
実施例1
シランカップリング処理(処理1)したシリカゲル粒子20gを溶液1(100ml)に分散して24時間、室温で攪拌した後、シリカゲルをろ過してから、DMFで洗浄した。次に、DMFで洗浄したシリカゲルを溶液2(100ml)中に分散し、24時間、室温で攪拌した後、ろ過し、DMFで洗浄してから、再び溶液1(100ml)に分散して24時間、室温で攪拌してから、同様にろ過し洗浄した。更に、このシリカゲル粒子を溶液3(100ml)に分散し24時間、室温で攪拌した後、ろ過してから、DMFおよびアセトンで洗浄し、乾燥後、減圧下において160〜180℃で4時間加熱処理しイミド化した。これにより、下記式1のポリイミド複合粒子を得た(なお、式中の球状物質はシリカゲル粒子を示す)。BET法により測定した比表面積は400m2/gであった。
【0114】
得られた複合粒子とシリカゲル粒子との赤外吸収スペクトルの差スペクトルを測定したところイミド骨格にもとづく特性吸収が1780 cm-1付近と720 cm-1付近に認められた。TGA(熱重量装置)測定によるポリイミド層の熱分解温度は約450℃で樹脂含有率は約2wt%であった。SHの担持量を2,2'-dipyridyl disulfideを用いて定量したところ約0.005μmol/mgであった。
【0115】
【化1】

【0116】
実施例2
溶液1(100ml)、溶液2(50ml)及び溶液3(50ml)を混合し24時間攪拌してアミド酸のオリゴマーのワニスを得た。このオリゴマーワニスにシランカップリング処理(処理1)したシリカゲル粒子20gを分散させ24時間攪拌した後、ろ過してから、DMFで洗浄し、乾燥させてから減圧下において160〜180℃で4時間加熱処理しイミド化した。これにより、下記式2のポリイミド複合粒子を得た(なお、式中の球状物質はシリカゲル粒子を示す)。BET法により測定した比表面積は390m2/gであった。
【0117】
得られた複合粒子とシリカゲル粒子との赤外吸収スペクトルの差スペクトルを測定したところイミド骨格にもとづく特性吸収が1780 cm-1付近と720 cm-1付近に認められた。TGA測定によるポリイミド層の熱分解温度は約480℃で樹脂含有率は約3wt%であった。SHの担持量を2,2'-dipyridyl disulfideを用いて定量したところ0.006μmol/mgであった。
【0118】
【化2】

【0119】
実施例3
シランカップリング処理(処理1)したシリカゲル粒子20gを溶液1(100ml)に分散して24時間、室温で攪拌した後、シリカゲルをろ過してから、DMFで洗浄した。次に、DMFで洗浄したシリカゲルを溶液4に分散し、24時間、室温で攪拌した後、ろ過し、DMFで洗浄してから、再び溶液1(100ml)に分散して24時間、室温で攪拌してから、同様にろ過し洗浄した。更に、このシリカゲル粒子を溶液3(100ml)に分散し24時間、室温で攪拌した後、ろ過してから、DMFおよびアセトンで洗浄し、乾燥後、減圧下において160〜180℃で4時間加熱処理しイミド化した。これにより、下記式(3)で表されるポリイミド複合粒子を得た(なお、式中の球状物質はシリカゲル粒子を示す)。BET法により測定した比表面積は401m2/gであった。
【0120】
得られた複合粒子とシリカゲル粒子との赤外吸収スペクトルの差スペクトルを測定したところイミド骨格にもとづく特性吸収が1780 cm-1付近と720 cm-1付近に認められた。TGA測定によるポリイミド層の熱分解温度は約480℃で樹脂含有率は約3.5wt%であった。SHの担持量を2,2'-dipyridyl disulfideを用いて定量したところ約0.005μmol/mgであった。
【0121】
【化3】

【0122】
実施例4
溶液1(90ml)と溶液4(30ml)を混合し24時間攪拌した溶液に溶液3(60ml)を加え、更に24時間攪拌してアミド酸オリゴマーを得た。このオリゴマーワニスにシランカップリング処理(処理1)したシリカゲル粒子20gを分散させ24時間攪拌した後、ろ過してから、DMFで洗浄し、乾燥させてから減圧下において160〜180℃で4時間加熱処理しイミド化した。これにより、下記式(4)で表されるポリイミド複合粒子を得た(なお、式中の球状物質はシリカゲル粒子を示す)。BET法により測定した比表面積は392m2/gであった。
【0123】
得られた複合粒子とシリカゲル粒子との赤外吸収スペクトルの差スペクトルを測定したところイミド骨格にもとづく特性吸収が1780 cm-1付近と720 cm-1付近に認められた。TGA測定によるポリイミド層の熱分解温度は約480℃で樹脂含有率は約4wt%であった。SHの担持量を2,2'-dipyridyl disulfideを用いて定量したところ0.005μmol/mgであった。
【0124】
【化4】

【0125】
実施例5
シランカップリング処理(処理1)したシリカゲル粒子20gを溶液1(100ml)に分散して24時間、室温で攪拌した後、シリカゲルをろ過してから、DMFで洗浄した。DMFで洗浄したシリカゲルを溶液4(100ml)に分散し、24時間、室温で攪拌した後、ろ過し、DMFで洗浄してから、再び溶液1(100ml)に分散して24時間、室温で攪拌してから、同様にろ過し洗浄した。次に、溶液2中に分散し、24時間、室温で攪拌した後、ろ過し、DMFで洗浄してから、再び溶液1(100ml)に分散して24時間、室温で攪拌してから、同様にろ過し洗浄した。更に、このシリカゲル粒子を溶液3(100ml)に分散し24時間、室温で攪拌した後、ろ過してから、DMFおよびアセトンで洗浄し、乾燥後、減圧下において160〜180℃で4時間加熱処理しイミド化した。 これにより、下記式(5)のポリイミド複合粒子を得た(なお、式中の球状物質はシリカゲル粒子を示す)。BET法により測定した比表面積は390m2/gであった。
【0126】
得られた複合粒子とシリカゲル粒子との赤外吸収スペクトルの差スペクトルを測定したところイミド骨格にもとづく特性吸収が1780 cm-1付近と720 cm-1付近に認められた。TGA測定によるポリイミド層の熱分解温度は約450℃で樹脂含有率は約5wt%であった。SHの担持量を2,2'-dipyridyl disulfideを用いて定量したところ約0.007μmol/mgであった。
【0127】
【化5】

【0128】
実施例6
溶液1(90ml)と溶液4(30ml)を混合し24時間攪拌した溶液と、溶液1(60ml)と溶液2(60ml)、溶液3(60ml)を混合し24時間攪拌した溶液とを混合し、更に24時間攪拌してアミド酸オリゴマーのワニスを得た。このオリゴマーワニスにシランカップリング処理(処理1)したシリカゲル粒子20gを分散させ24時間攪拌した後、ろ過してから、DMFで洗浄し、乾燥させてから減圧下において160〜180℃で4時間加熱処理しイミド化した。これにより、下記式(6)のポリイミド複合粒子を得た(なお、式中の球状物質はシリカゲル粒子を示す)。BET法により測定した比表面積は387m2/gであった。
【0129】
得られた複合粒子とシリカゲル粒子との赤外吸収スペクトルの差スペクトルを測定したところイミド骨格にもとづく特性吸収が1780 cm-1付近と720 cm-1 付近に認められた。TGA測定によるポリイミド層の熱分解温度は約480℃で樹脂含有率は約5.5wt%であった。SHの担持量を2,2'-dipyridyl disulfideを用いて定量したところ0.007μmol/mgであった。
【0130】
【化6】

【0131】
実施例7
溶液1(100ml)と溶液5(90ml)を混合し24時間攪拌した溶液にシランカップリング処理(処理1)したシリカゲル粒子20gを分散させ24時間攪拌した後、ろ過してから、DMFで洗浄し、乾燥させてから減圧下において160〜180℃で4時間加熱処理しイミド化した。これにより、下記式(7)で表されるポリイミド複合粒子を得た(なお、式中の球状物質はシリカゲル粒子を示す)。BET法により測定した比表面積は396m2/gであった。
【0132】
得られた複合粒子とシリカゲル粒子との赤外吸収スペクトルの差スペクトルを測定したところイミド骨格にもとづく特性吸収が1780 cm-1付近と720 cm-1付近に認められた。TGA測定によるポリイミド層の熱分解温度は約500℃で樹脂含有率は約6wt%であった。
【0133】
【化7】

【0134】
実施例8
シランカップリング処理(処理2)したシリカゲル粒子20gを溶液2(100ml)に分散して24時間、室温で攪拌した後、シリカゲルをろ過してから、DMFで洗浄した。次に、DMFで洗浄したシリカゲルを溶液1(100ml)中に分散し、24時間、室温で攪拌した後、ろ過し、DMFで洗浄してから、再び溶液2(100ml)に分散して24時間、室温で攪拌してから、同様にろ過し洗浄し、もう一度、溶液1(100ml)中に分散し、24時間、室温で攪拌しろ過し、DMFで洗浄した。更に、このシリカゲル粒子を溶液3に分散し24時間、室温で攪拌した後、ろ過してから、DMFおよびアセトンで洗浄し、乾燥後、減圧下において160〜180℃で4時間加熱処理しイミド化した。これにより、下記式(8)で表されるポリイミド複合粒子を得た(なお、式中の球状物質はシリカゲル粒子を示す)。BET法により測定した比表面積は395m2/gであった。
【0135】
得られた複合粒子とシリカゲル粒子との赤外吸収スペクトルの差スペクトルを測定したところイミド骨格にもとづく特性吸収が1780 cm-1 付近と720 cm-1付近に認められた。TGA測定によるポリイミド層の熱分解温度は約450℃で樹脂含有率は約2wt%であった。SHの担持量を2,2'-dipyridyl disulfideを用いて定量したところ約0.006μmol/mgであった。
【0136】
【化8】

【0137】
実施例9
溶液1(100ml)と溶液6(90ml)を混合し24時間攪拌した溶液にシランカップリング処理(処理法1)したシリカゲル粒子20gを分散させ24時間攪拌した後、ろ過してから、DMFで洗浄し、乾燥させてから減圧下において160〜180℃で4時間加熱処理しイミド化した。これにより、下記式(9)で表されるポリイミド複合粒子を得た(なお、式中の球状物質はシリカゲル粒子を示す)。BET法により測定した比表面積は403m2/gであった。
【0138】
得られた複合粒子とシリカゲル粒子との赤外吸収スペクトルの差スペクトルを測定したところイミド骨格にもとづく特性吸収が1780cm-1付近と720 cm-1付近に認められた。TGA測定によるポリイミド層の熱分解温度は約480℃で樹脂含有率は約5wt%であった。
【0139】
【化9】

【0140】
実施例10
シランカップリング処理(処理1)したシリカゲル粒子20gを溶液7(100ml)に分散して24時間、室温で攪拌した後、シリカゲルをろ過してから、DMFで洗浄した。次に、DMFで洗浄したシリカゲルを溶液2(100ml)中に分散し、24時間、室温で攪拌した後、ろ過し、DMFで洗浄してから、再び溶液7(100ml)に分散して24時間、室温で攪拌してから、同様にろ過し洗浄した。更に、このシリカゲル粒子を溶液3(100ml)に分散し24時間、室温で攪拌した後、ろ過してから、DMFおよびアセトンで洗浄後、減圧で乾燥した。これにより、下記式(10)で表されるポリアミド複合粒子を得た(なお、式中の球状物質はシリカゲル粒子を示す)。BET法により測定した比表面積は401m2/gであった。
【0141】
得られた複合粒子とシリカゲル粒子との赤外吸収スペクトルの差スペクトルを測定したところアミド結合にもとづく特性吸収が3300cm-1周辺、2850 cm-1、1640 cm-1、1540 cm-1付近に認められた。TGA測定によるポリアミド層の熱分解温度は約380℃で樹脂含有率は約1.5wt%であった。SHの担持量を2,2'-dipyridyl disulfideを用いて定量したところ約0.005μmol/mgであった。
【0142】
【化10】

【0143】
実施例11
溶液7(100ml)、溶液2(50ml)、溶液3(50ml)を混合し24時間攪拌してアミドのオリゴマーのワニスを得た。このオリゴマーワニスにシランカップリング処理(処理法1)したシリカゲル粒子20gを分散させ24時間攪拌した後、ろ過してから、DMFおよびアセトンで洗浄し、減圧乾燥した。これにより、下記式(11)で表されるポリアミド複合粒子を得た(なお、式中の球状物質はシリカゲル粒子を示す)。BET法により測定した比表面積は395m2/gであった。
【0144】
得られた複合粒子とシリカゲル粒子との赤外吸収スペクトルの差スペクトルを測定したところアミド結合にもとづく特性吸収が3300 cm-1周辺、2850 cm-1、1640 cm-1、1540 cm-1付近に認められた。TGA測定によるポリアミド層の熱分解温度は約380℃で樹脂含有率は約2wt%であった。SHの担持量を2,2'-dipyridyl disulfideを用いて定量したところ0.006μmol/mgであった。
【0145】
【化11】

【0146】
評価
上記実施例1〜11の複合粒子に結合しているポリアミド及びポリイミドはいずれも低分子のオリゴマーであることから、本製造方法によれば複合粒子に結合させるポリアミド等の分子量を制御でき、均一な分子量にできることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にSi含有官能基を有する無機粒子に1)ポリアミド酸、2)ポリアミド、3)ポリイミド又は4)これらを構成するモノマー若しくはそのオリゴマーが当該官能基を介して結合してなる複合粒子を製造する方法であって、前記無機粒子にポリアミド又はポリイミドを構成し得る成分を反応させる工程を含む複合粒子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の工程が、
(A)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物を交互に重合させることにより、ポリアミド複合粒子を得るA工程
である複合粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の工程が、
(B)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物の重合体を結合させることにより、ポリアミド複合粒子を得るB工程
である複合粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の工程が、
(C)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を交互に重合させることにより、ポリアミド酸複合粒子を得るC工程
である複合粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の工程が、
(D)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の重合体を結合させることにより、ポリアミド酸複合粒子を得るD工程
である複合粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の工程が、
(E)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物を交互に重合させ、得られたポリアミド酸複合粒子をさらにイミド化することにより、ポリイミド複合粒子を得るE工程
である複合粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の工程が、
(F)Si含有官能基を有する無機粒子の当該官能基に、無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の重合体を結合させ、得られたポリアミド酸複合粒子をさらにイミド化することにより、ポリイミド複合粒子を得るF工程
である複合粒子の製造方法。
【請求項8】
前記Si含有官能基を有する無機粒子が、シランカップリング剤が溶解した溶液に無機粒子を接触することにより得られたものである、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記ジカルボン酸クロライド及びジアミン化合物の少なくとも1つが機能性基を有する、請求項2又は3に記載の製造方法。
【請求項10】
前記無水テトラカルボン酸及びジアミン化合物の少なくとも1つが機能性基を有する、請求項4〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
無機粒子が平均粒径10nm〜1mmの多孔質粒子である、請求項1〜10のいずれかに記載の製造方法。
【請求項12】
請求項2又は3に記載の製造方法で得られる、ポリアミド複合粒子。
【請求項13】
請求項4又は5に記載の製造方法で得られる、ポリアミド酸複合粒子。
【請求項14】
請求項6又は7に記載の製造方法で得られる、ポリイミド複合粒子。

【公開番号】特開2007−254523(P2007−254523A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78536(P2006−78536)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】