説明

ポリアルキレングリコール系化合物とその製造方法ならびにその用途

【課題】特に水系用途において高い性能を発揮できるポリアルキレングリコール系重合体の製造に用い得る、新規なポリアルキレングリコール系化合物を提供する。また、該化合物の効率的な製造方法、該化合物から得られるポリアルキレングリコール系重合体、該ポリアルキレングリコール系重合体を用いた分散剤、洗剤用ビルダー、および洗剤組成物を提供する。
【解決手段】ポリアルキレングリコール系化合物は、分子内に、末端二重結合と、繰り返し単位数1〜300のアルキレングリコール及び末端スルホン酸又はその塩を構造部分として有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルキレングリコール系化合物とその製造方法ならびにその用途に関する。詳細には、重合性の末端二重結合を有するポリアルキレングリコール系化合物、該化合物の効率的な製造方法、該化合物から得られるポリアルキレングリコール系重合体、該ポリアルキレングリコール系重合体を用いた分散剤、洗剤用ビルダー、および洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアルキレングリコール系化合物は、種々の工業分野において用いられている有用な工業原料である。例えば、ポリアルキレングリコール系化合物を不飽和カルボン酸系単量体等と共重合させて得られるポリアルキレングリコール系重合体は、分散剤、洗剤組成物、スケール防止剤、セメント添加剤、増粘剤等に有用である。
【0003】
ポリアルキレングリコール系重合体を上記のような水系用途に用いる場合、使用する水系の水質による影響、併用する他の成分との相互作用による影響などを考慮する必要がある。
【0004】
例えば、国や地域によって水系の硬度が異なる。このため、低硬度の水系において各種効果を発揮できるポリアルキレングリコール系重合体であっても、高硬度の水系においては十分な効果が発揮できない場合がある。
【0005】
また、洗剤組成物に界面活性剤が含まれる場合、ポリアルキレングリコール系重合体と界面活性剤との相互作用の程度によって、洗浄効果が十分に発揮できない場合がある。
【0006】
さらに、ポリアルキレングリコール系重合体を洗剤組成物に用いる場合、洗浄すべき汚れとポリアルキレングリコール系重合体との相互作用の程度が、洗浄効果に影響を及ぼす。
【0007】
最近、耐硬水性、汚れやクレイ(Clay)の分散性、界面活性剤との相互作用などが高いポリアルキレングリコール系重合体を提供し得るポリアルキレングリコール系単量体として、分子内の末端にスルホン酸基を有するポリアルキレングリコール系化合物が提案されている(特許文献1)。
【0008】
しかし、これまでに提案されている分子内の末端にスルホン酸基を有するポリアルキレングリコール系化合物は、それを重合して得られるポリアルキレングリコール系重合体の水系用途の性能としては、十分なものとは言えない。
【0009】
また、ポリアルキレングリコール鎖の末端にスルホン酸基を導入する方法としては、これまではスルトン(サルトン)類の付加反応が一般的である(特許文献2)。しかし、スルトン(サルトン)類は非常に高価であるとともに、毒性が非常に高いという問題がある。
【特許文献1】特開2003−313590号公報
【特許文献2】特開2005−281497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、特に水系用途において高い性能を発揮できるポリアルキレングリコール系重合体の製造に用い得る、新規なポリアルキレングリコール系化合物を提供することにある。また、該化合物の効率的な製造方法、該化合物から得られるポリアルキレングリコール系重合体、該ポリアルキレングリコール系重合体を用いた分散剤、洗剤用ビルダー、および洗剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のポリアルキレングリコール系化合物は、分子内に、末端二重結合と、式(1)で表される構造部分とを有する。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基であり、Xは−CH−または単結合であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦300である。)
【0012】
好ましい実施形態においては、本発明のポリアルキレングリコール系化合物は、式(2)で表される構造を有する。
【化2】

(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基であり、Xは−CH−または単結合であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦300である。)
【0013】
好ましい実施形態においては、本発明のポリアルキレングリコール系化合物は、式(3)で表される構造を有する。
【化3】

(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基であり、Xは−CH−または単結合であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦300である。)
【0014】
好ましい実施形態においては、本発明のポリアルキレングリコール系化合物は、式(4)で表される構造を有する。
【化4】

(式(4)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基であり、Xは−CH−または単結合であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦300である。)
【0015】
本発明の別の局面によれば、ポリアルキレングリコール系化合物の製造方法が提供される。この製造方法は、上記式(2)で表される構造を有するポリアルキレングリコール系化合物の製造方法であって、イソプレノールまたはメタリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物をアリルグリシジルエーテルに付加する工程(I)と、工程(I)で得られる化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する工程(II)とを有する。
【0016】
本発明の別の局面によれば、ポリアルキレングリコール系化合物の製造方法が提供される。この製造方法は、上記式(3)で表される構造を有するポリアルキレングリコール系化合物の製造方法であって、アリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物をメタリルクロライドに付加する工程(III)と、工程(III)で得られる化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する工程(IV)とを有する。
【0017】
本発明の別の局面によれば、ポリアルキレングリコール系化合物の製造方法が提供される。この製造方法は、上記式(2)から(4)までのいずれかで表される構造を有するポリアルキレングリコール系化合物の製造方法であって、式(5)で表される構造を有する化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する工程(V)と、工程(V)で得られる化合物に、エポキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基から選ばれる少なくとも1種と末端二重結合とを有する化合物を反応させる工程(VI)とを有する。
【化5】

(式(5)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Yは2価のアルキレン基または単結合であり、AOで表されるオキシアルキレン基はそれぞれ同一でも異なっていても良く、Aは炭素数2〜18のアルキレン基を表し、nはAOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦300である。)
【0018】
本発明の別の局面によれば、ポリアルキレングリコール系重合体が提供される。このポリアルキレングリコール系重合体は、本発明のポリアルキレングリコール系化合物と他の単量体を重合して得られる。
【0019】
好ましい実施形態においては、上記他の単量体が、不飽和カルボン酸系単量体を含む。
【0020】
本発明の別の局面によれば、ポリアルキレングリコール系重合体が提供される。このポリアルキレングリコール系重合体は、式(1)で表される構造部分を有する。
【化6】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基であり、Xは−CH−または単結合であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦300である。)
【0021】
好ましい実施形態においては、上記ポリアルキレングリコール系重合体は、カルボキシル基を有する。
【0022】
本発明の別の局面によれば、分散剤が提供される。この分散剤は、本発明のポリアルキレングリコール系重合体を含む。
【0023】
本発明の別の局面によれば、洗剤用ビルダーが提供される。この洗剤用ビルダーは、本発明のポリアルキレングリコール系重合体を含む。
【0024】
本発明の別の局面によれば、洗剤組成物が提供される。この洗剤組成物は、本発明のポリアルキレングリコール系重合体を含む。
【0025】
本発明の別の局面によれば、ポリアルキレングリコール系重合体の製造方法が提供される。この製造方法は、本発明のポリアルキレングリコール系重合体を製造する方法であって、過硫酸塩および亜硫酸塩の存在下で重合を行う。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、特に水系用途において高い性能を発揮できるポリアルキレングリコール系重合体の製造に用い得る、新規なポリアルキレングリコール系化合物を提供することができる。また、該化合物の効率的な製造方法、該化合物から得られるポリアルキレングリコール系重合体、該ポリアルキレングリコール系重合体を用いた分散剤、洗剤用ビルダー、および洗剤組成物を提供することができる。
【0027】
特に、本発明のポリアルキレングリコール系化合物から得られるポリアルキレングリコール系重合体は、耐硬水性、汚れやクレイ(Clay)の分散性、界面活性剤との相互作用などが高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
〔ポリアルキレングリコール系化合物〕
本発明のポリアルキレングリコール系化合物は、分子内に、末端二重結合と、式(1)で表される構造部分とを有する。
【化7】

【0029】
式(1)中、Rは水素原子またはメチル基である。
式(1)中、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。金属原子としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられ、上記ポリアルキレングリコール系化合物の製造上の取り扱い性等の点から、ナトリウム原子が特に好ましい。
式(1)中、Xは−CH−または単結合である。ここで、本明細書においてXが単結合の場合とは、C−X−Cと表される場合にC−Cとなることを意味する。
式(1)中、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。
上記nは、1≦n≦300であり、好ましくは、1≦n≦200であり、より好ましくは1≦n≦100であり、さらに好ましくは1≦n≦50である。
【0030】
本発明のポリアルキレングリコール系化合物は、分子内に、末端二重結合を有する。本明細書において末端二重結合とは、分子内の末端に位置する重合性の不飽和二重結合を意味する。
【0031】
本発明のポリアルキレングリコール系化合物は、上記の通り、分子内に、末端二重結合と、式(1)で表される構造部分とを有する限り、任意の適切な分子構造を採用することができ、本発明の効果が発現され得る。特に、式(1)で表される構造を有することにより、重合することで、水系用途において高い性能を発揮できるポリアルキレングリコール系重合体とすることができる。このようなポリアルキレングリコール系重合体は、耐硬水性、汚れやクレイ(Clay)の分散性、界面活性剤との相互作用などが高い。
【0032】
本発明のポリアルキレングリコール系化合物の好ましい分子構造の一つは、式(2)で表される構造を有する。
【化8】

【0033】
式(2)中、Rは水素原子またはメチル基である。
式(2)中、Rは水素原子またはメチル基である。
式(2)中、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。金属原子としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられ、上記ポリアルキレングリコール系化合物の製造上の取り扱い性等の点から、ナトリウム原子が特に好ましい。
式(2)中、Xは−CH−または単結合である。
式(2)中、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。
上記nは、1≦n≦300であり、好ましくは、1≦n≦200であり、より好ましくは1≦n≦100であり、さらに好ましくは1≦n≦50である。
【0034】
本発明のポリアルキレングリコール系化合物の好ましい分子構造の別の一つは、式(3)で表される構造を有する。
【化9】

【0035】
式(3)中、Rは水素原子またはメチル基である。
式(3)中、Rは水素原子またはメチル基である。
式(3)中、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。金属原子としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられ、上記ポリアルキレングリコール系化合物の製造上の取り扱い性等の点から、ナトリウム原子が特に好ましい。
式(3)中、Xは−CH−または単結合である。
式(3)中、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。
上記nは、1≦n≦300であり、好ましくは、1≦n≦200であり、より好ましくは1≦n≦100であり、さらに好ましくは1≦n≦50である。
【0036】
本発明のポリアルキレングリコール系化合物の好ましい分子構造のさらに別の一つは、式(4)で表される構造を有する。
【化10】

【0037】
式(4)中、Rは水素原子またはメチル基である。
式(4)中、Rは水素原子またはメチル基である。
式(4)中、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。金属原子としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられ、上記ポリアルキレングリコール系化合物の製造上の取り扱い性等の点から、ナトリウム原子が特に好ましい。
式(4)中、Xは−CH−または単結合である。
式(4)中、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。
上記nは、1≦n≦300であり、好ましくは、1≦n≦200であり、より好ましくは1≦n≦100であり、さらに好ましくは1≦n≦50である。
【0038】
〔ポリアルキレングリコール系化合物の製造方法〕
【0039】
(製造方法1)
本発明のポリアルキレングリコール系化合物の製造方法の一つは、イソプレノールまたはメタリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物をアリルグリシジルエーテルに付加する工程(I)と、工程(I)で得られる化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する工程(II)とを有する。この製造方法によって、上記式(2)で表される構造を有するポリアルキレングリコール系化合物を効率良く製造することができる。
【0040】
上記工程(I)においては、イソプレノールまたはメタリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物をアリルグリシジルエーテルに付加する。
【0041】
イソプレノールまたはメタリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物は、式(6)で表される。
【化11】

【0042】
式(6)中、Xは−CH−または単結合である。
式(6)中、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。
上記nは、1≦n≦300であり、好ましくは、1≦n≦200であり、より好ましくは1≦n≦100であり、さらに好ましくは1≦n≦50である。
【0043】
式(6)で表される化合物をアリルグリシジルエーテルに付加する方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、KOH等のアルカリ化合物、あるいは、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体等のルイス酸触媒の存在下、無溶媒における付加反応が挙げられる。加圧条件であればさらに好ましい。式(6)で表される化合物をアリルグリシジルエーテルに付加して得られる化合物は、式(7)で表される。
【化12】

【0044】
式(7)中、Xは−CH−または単結合である。
式(7)中、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。
上記nは、1≦n≦300であり、好ましくは、1≦n≦200であり、より好ましくは1≦n≦100であり、さらに好ましくは1≦n≦50である。
【0045】
上記工程(II)においては、工程(I)で得られる化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する。すなわち、式(7)で表される化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する。式(7)で表される化合物は、一方の末端にアリル基、もう一方の末端にメタリル基、イソプレニル基のような、メチル基を有する二重結合(以下、メタリル基等と略する)を備えるという特徴を有する。このような特徴的構造を備える化合物に対して亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する反応を行うと、アリル基よりもメタリル基等のほうがスルホン化反応を受け易い性質を利用できるためにメタリル基を選択的にスルホン化できる。この結果、上記式(2)で表される構造を有するポリアルキレングリコール系化合物を効率良く製造することができる。
【0046】
工程(I)で得られる化合物にスルホン化剤としての亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、工程(I)で得られる化合物を水溶液とした後、任意の適切なスルホン化剤を添加してスルホン化反応を行う。上記スルホン化剤は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。上記スルホン化剤としては、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩;亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩;二亜硫酸カリウム、二亜硫酸ナトリウム等の二亜硫酸塩;が好ましく挙げられる。より好ましくは、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムであり、さらに好ましくは、亜硫酸水素ナトリウムである。
【0047】
上記工程(II)の好ましい形態としては、ラジカル発生源若しくは酸素の存在下、亜硫酸水素塩および/または亜硫酸塩と反応させるものである。
【0048】
上記工程(II)を行う反応条件は、反応に用いる化合物、目的とするポリアルキレングリコール系化合物の末端構造等に応じて、適宜設定すれば良い。例えば、反応温度としては、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは5〜150℃であり、さらに好ましくは10〜100℃であり、特に好ましくは15〜80℃であり、最も好ましくは20〜50℃である。また、例えば、反応時間としては、好ましくは1〜100時間、より好ましくは1〜50時間、さらに好ましくは1〜30時間、特に好ましくは1〜20時間、最も好ましくは1〜10時間である。
【0049】
上記工程(II)において、反応に用いる二重結合とスルホン化剤とのモル比としては、(二重結合)/(スルホン化剤)=1/1〜1/30が好ましく、より好ましくは1/1〜1/20であり、さらに好ましくは1/1〜1/10であり、さらに好ましくは1/1〜1/5であり、特に好ましくは1/1〜1/2であり、もっとも好ましくは1/1〜1/1.5である。
【0050】
上記工程(II)は、空気雰囲気下で行っても良いし、不活性ガス雰囲気下で行っても良い。好ましくは空気雰囲気下である。
【0051】
上記工程(II)は、例えば、反応器に二重結合の末端構造を有するポリアルキレングリコールを仕込んでおいて、スルホン化剤を一括添加しても良いし、逐次添加しても良い。好ましくは逐次添加である。ラジカル発生源を用いる場合は、過硫酸塩をラジカル発生源として用いることが好ましい。スルホン化剤とラジカル発生源とのモル比としては、(スルホン化剤)/(ラジカル発生源)=1/0.01〜1/5が好ましく、より好ましくは1/0.1〜1/2であり、さらに好ましくは1/0.2〜1/1である。ラジカル発生源は一括添加しても良いし、逐次添加しても良い。好ましくは逐次添加である。酸素の存在下で反応させる場合は、空気または酸素をバブリングしても良いし、反応を空気雰囲気下で行うだけでも良い。溶媒は、例えば、水、アルコール、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の水性溶媒が好ましく、水が特に好ましい。溶媒は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。反応溶液の25℃におけるpHは、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜6である。pHが3未満では、有毒な亜硫酸ガスが発生し、さらに有効に付加させることができないおそれがある。pHが7を超えると、メタリル基等のスルホン化反応の選択性が低下するおそれがある。反応溶液の濃度は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%、さらに好ましくは35〜45重量%である。反応溶液の濃度が60重量%を超えると、溶存酸素濃度が低下して反応に時間がかかるおそれがある。反応溶液の濃度が10重量%未満の場合は、生産性が低下するおそれがある。
【0052】
上記製造方法によれば、安価で入手容易な原料を用い、少ない工程で、簡便な設備によって、上記式(2)で表される構造を有するポリアルキレングリコール系化合物を効率良く製造することができる。
【0053】
(製造方法2)
本発明のポリアルキレングリコール系化合物の製造方法の別の一つは、アリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物をメタリルクロライドに付加する工程(III)と、工程(III)で得られる化合物にスルホン化剤としての亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する工程(IV)とを有する。この製造方法によって、上記式(3)で表される構造を有するポリアルキレングリコール系化合物を効率良く製造することができる。
【0054】
上記工程(III)においては、アリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物をメタリルクロライドに付加する。
【0055】
アリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物は、式(8)で表される。
【化13】

【0056】
式(8)中、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。
上記nは、1≦n≦300であり、好ましくは、1≦n≦200であり、より好ましくは1≦n≦100であり、さらに好ましくは1≦n≦50である。
【0057】
式(8)で表される化合物をメタリルクロライドに付加する方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、水素化ナトリウムやKOH等のアルカリ化合物の存在下における付加反応が挙げられる。式(8)で表される化合物をメタリルクロライドに付加して得られる化合物は、式(9)で表される。
【化14】

【0058】
式(9)中、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。
上記nは、1≦n≦300であり、好ましくは、1≦n≦200であり、より好ましくは1≦n≦100であり、さらに好ましくは1≦n≦50である。
【0059】
上記工程(IV)においては、工程(III)で得られる化合物にスルホン化剤としての亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する。すなわち、式(9)で表される化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する。式(9)で表される化合物は、一方の末端にアリル基、もう一方の末端にメタリル基を備えるという特徴を有する。このような特徴的構造を備える化合物に対して亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する反応を行うと、アリル基よりもメタリル基のほうがスルホン化反応を受け易い性質を利用できるためにメタリル基を選択的にスルホン化できる。この結果、上記式(3)で表される構造を有するポリアルキレングリコール系化合物を効率良く製造することができる。
【0060】
工程(III)で得られる化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、工程(III)で得られる化合物を水溶液とした後、任意の適切なスルホン化剤を添加してスルホン化反応を行う。上記スルホン化剤は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。上記スルホン化剤としては、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩;亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩;二亜硫酸カリウム、二亜硫酸ナトリウム等の二亜硫酸塩;が好ましく挙げられる。より好ましくは、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムであり、さらに好ましくは、亜硫酸水素ナトリウムである。
【0061】
上記工程(IV)の好ましい形態としては、ラジカル発生源若しくは酸素の存在下、亜硫酸水素塩および/または亜硫酸塩と反応させるものである。
【0062】
上記工程(IV)を行う反応条件は、反応に用いる化合物、目的とするポリアルキレングリコール系化合物の末端構造等に応じて、適宜設定すれば良い。例えば、反応温度としては、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは5〜150℃であり、さらに好ましくは10〜100℃であり、特に好ましくは15〜80℃であり、最も好ましくは20〜50℃である。また、例えば、反応時間としては、好ましくは1〜100時間、より好ましくは1〜50時間、さらに好ましくは1〜30時間、特に好ましくは1〜20時間、最も好ましくは1〜10時間である。
【0063】
上記工程(IV)において、反応に用いる二重結合とスルホン化剤とのモル比としては、(二重結合)/(スルホン化剤)=1/1〜1/30が好ましく、より好ましくは1/1〜1/20であり、さらに好ましくは1/1〜1/10であり、さらに好ましくは1/1〜1/5であり、特に好ましくは1/1〜1/2であり、最も好ましくは1/1〜1/1.5である。
【0064】
上記工程(IV)は、空気雰囲気下で行っても良いし、不活性ガス雰囲気下で行っても良い。好ましくは空気雰囲気下である。
【0065】
上記工程(IV)は、例えば、反応器に二重結合の末端構造を有するポリアルキレングリコールを仕込んでおいて、スルホン化剤を一括添加しても良いし、逐次添加しても良い。好ましくは逐次添加である。ラジカル発生源を用いる場合は、過硫酸塩をラジカル発生源として用いることが好ましい。スルホン化剤とラジカル発生源とのモル比としては、(スルホン化剤)/(ラジカル発生源)=1/0.01〜1/5が好ましく、より好ましくは1/0.1〜1/2であり、さらに好ましくは1/0.2〜1/1である。ラジカル発生源は一括添加しても良いし、逐次添加しても良い。好ましくは逐次添加である。酸素の存在下で反応させる場合は、空気または酸素をバブリングしても良いし、反応を空気雰囲気下で行うだけでも良い。溶媒は、例えば、水、アルコール、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の水性溶媒が好ましく、水が特に好ましい。溶媒は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。反応溶液の25℃におけるpHは、好ましくは3〜7、より好ましくは4〜6である。pHが3未満では、有毒な亜硫酸ガスが発生し、さらに有効に付加させることができないおそれがある。pHが7を超えると、メタリル基のスルホン化反応の選択性が低下するおそれがある。反応溶液の濃度は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%、さらに好ましくは35〜45重量%である。反応溶液の濃度が60重量%を超えると、溶存酸素濃度が低下して反応に時間がかかるおそれがある。反応溶液の濃度が10重量%未満の場合は、生産性が低下するおそれがある。
【0066】
上記製造方法によれば、安価で入手容易な原料を用い、少ない工程で、簡便な設備によって、上記式(3)で表される構造を有するポリアルキレングリコール系化合物を効率良く製造することができる。
【0067】
(製造方法3)
本発明のポリアルキレングリコール系化合物の製造方法のさらに別の一つは、式(5)で表される構造を有する化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する工程(V)と、工程(V)で得られる化合物に、エポキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基から選ばれる少なくとも1種と末端二重結合とを有する化合物を反応させる工程(VI)とを有する。この製造方法によって、上記式(2)から(4)までのいずれかで表される構造を有するポリアルキレングリコール系化合物を効率良く製造することができる。
【化15】

【0068】
式(5)中、Rは水素原子またはメチル基である。
式(5)中、Yは2価のアルキレン基または単結合である。
式(5)中、AOで表されるオキシアルキレン基はそれぞれ同一でも異なっていても良く、Aは炭素数2〜18のアルキレン基を表す。
式(5)中、nはAOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。
上記nは、1≦n≦300であり、好ましくは、1≦n≦200であり、より好ましくは1≦n≦100であり、さらに好ましくは1≦n≦50である。
【0069】
上記工程(V)においては、式(5)で表される構造を有する化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する。
【0070】
式(5)で表される構造を有する化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加した化合物は、式(10)で表される。
【化16】

【0071】
式(10)中、Rは水素原子またはメチル基である。
式(10)中、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。金属原子としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられ、上記ポリアルキレングリコール系化合物の製造上の取り扱い性等の点から、ナトリウム原子が特に好ましい。
式(10)中、Yは2価のアルキレン基または単結合である。
式(10)中、AOで表されるオキシアルキレン基はそれぞれ同一でも異なっていても良く、Aは炭素数2〜18のアルキレン基を表す。
式(10)中、nはAOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。
上記nは、1≦n≦300であり、好ましくは、1≦n≦200であり、より好ましくは1≦n≦100であり、さらに好ましくは1≦n≦50である。
【0072】
式(5)で表される構造を有する化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する方法は、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、式(5)で表される構造を有する化合物を水溶液とした後、任意の適切なスルホン化剤を添加してスルホン化反応を行う。上記スルホン化剤は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。上記スルホン化剤としては、亜硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素カリウム、亜硫酸水素ナトリウム等の亜硫酸水素塩;亜硫酸アンモニウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩;二亜硫酸カリウム、二亜硫酸ナトリウム等の二亜硫酸塩;が好ましく挙げられる。より好ましくは、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムであり、さらに好ましくは、亜硫酸水素ナトリウムである。
【0073】
上記工程(V)の好ましい形態としては、ラジカル発生源若しくは酸素の存在下、亜硫酸水素塩および/または亜硫酸塩と反応させるものである。
【0074】
上記工程(V)を行う反応条件は、反応に用いる化合物、目的とするポリアルキレングリコール系化合物の末端構造等に応じて、適宜設定すれば良い。例えば、反応温度としては、好ましくは0〜200℃であり、より好ましくは5〜150℃であり、さらに好ましくは10〜100℃であり、特に好ましくは15〜80℃であり、最も好ましくは20〜50℃である。また、例えば、反応時間としては、好ましくは1〜100時間、より好ましくは1〜50時間、さらに好ましくは1〜30時間、特に好ましくは1〜20時間、最も好ましくは1〜10時間である。
【0075】
上記工程(V)において、反応に用いる二重結合とスルホン化剤とのモル比としては、(二重結合)/(スルホン化剤)=1/1〜1/30が好ましく、より好ましくは1/1〜1/20であり、さらに好ましくは1/1〜1/10であり、さらに好ましくは1/1〜1/5であり、特に好ましくは1/1〜1/2であり、最も好ましくは1/1〜1/1.5である。
【0076】
上記工程(V)は、空気雰囲気下で行っても良いし、不活性ガス雰囲気下で行っても良い。好ましくは空気雰囲気下である。
【0077】
上記工程(V)は、例えば、反応器に二重結合の末端構造を有するポリアルキレングリコールを仕込んでおいて、スルホン化剤を一括添加しても良いし、逐次添加しても良い。好ましくは逐次添加である。ラジカル発生源を用いる場合は、過硫酸塩をラジカル発生源として用いることが好ましい。スルホン化剤とラジカル発生源とのモル比としては、(スルホン化剤)/(ラジカル発生源)=1/0.01〜1/5が好ましく、より好ましくは1/0.1〜1/2であり、さらに好ましくは1/0.2〜1/1である。ラジカル発生源は一括添加しても良いし、逐次添加しても良い。好ましくは逐次添加である。酸素の存在下で反応させる場合は、空気または酸素をバブリングしても良いし、反応を空気雰囲気下で行うだけでも良い。溶媒は、例えば、水、アルコール、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等の水性溶媒が好ましく、水が特に好ましい。溶媒は1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。反応溶液の25℃におけるpHは、好ましくは6〜12、より好ましくは7〜10である。pHが6未満の場合やpHが12を超える場合には、反応速度が低下するおそれがある。反応溶液の濃度は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%、さらに好ましくは35〜45重量%である。反応溶液の濃度が60重量%を超えると、溶存酸素濃度が低下して反応に時間がかかるおそれがある。反応溶液の濃度が10重量%未満の場合は、生産性が低下するおそれがある。
【0078】
上記工程(VI)においては、工程(V)で得られる化合物に、エポキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基から選ばれる少なくとも1種と末端二重結合とを有する化合物を反応させる。すなわち、式(10)で表される化合物に、エポキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基から選ばれる少なくとも1種と末端二重結合とを有する化合物を反応させる。
【0079】
式(10)で表される化合物に、エポキシ基と末端二重結合とを有する化合物を反応させると、上記式(2)で表される構造を有するポリアルキレングリコール系化合物を効率良く製造することができる。上記反応は、エポキシ基と末端二重結合とを有する化合物が備えるエポキシ基と、式(10)で表される化合物が有する水酸基との反応であり、このようなエポキシ基と水酸基との反応であれば任意の適切な反応を採用し得る。例えば、KOH等のアルカリ化合物、あるいは、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体等のルイス酸触媒の存在下、無溶媒における付加反応が挙げられる。加圧条件であればさらに好ましい。
【0080】
式(10)で表される化合物に、ハロゲン基と末端二重結合とを有する化合物を反応させると、上記式(3)で表される構造を有するポリアルキレングリコール系化合物を効率良く製造することができる。上記反応は、ハロゲン基と末端二重結合とを有する化合物が備えるハロゲン基と、式(10)で表される化合物が有する水酸基との反応であり、このようなハロゲン基と水酸基との反応であれば任意の適切な反応を採用し得る。例えば、水素化ナトリウムやKOH等のアルカリ化合物の存在下における付加反応が挙げられる。
【0081】
式(10)で表される化合物に、カルボキシル基および/またはカルボン酸エステル基と末端二重結合とを有する化合物を反応させると、脱水エステル化あるいはエステル交換反応により、上記式(4)で表される構造を有するポリアルキレングリコール系化合物を効率良く製造することができる。上記反応は、カルボキシル基および/またはカルボン酸エステル基と末端二重結合とを有する化合物が備えるカルボキシル基および/またはカルボン酸エステル基と、式(10)で表される化合物が有する水酸基との反応であり、このようなカルボキシル基および/またはカルボン酸エステル基と水酸基との反応であれば任意の適切な反応を採用し得る。
【0082】
上記製造方法によれば、片末端スルホン化ポリアルキレングリコール系化合物(式(10))を予め高純度で製造しておくことができる。このため、工程(VI)により得られる最終生成物の純度を高めることができる。
【0083】
〔ポリアルキレングリコール系重合体〕
本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、本発明のポリアルキレングリコール系化合物と他の単量体を重合して得られる。本発明のポリアルキレングリコール系化合物は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。上記他の単量体は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0084】
全単量体(本発明のポリアルキレングリコール系化合物+他の単量体)中における本発明のポリアルキレングリコール系化合物の含有割合は、任意の適切な割合を採用し得る。好ましくは5〜90重量%、より好ましくは5〜70重量%、さらに好ましくは10〜60重量%、特に好ましくは10〜50重量%である。
【0085】
全単量体(本発明のポリアルキレングリコール系化合物+他の単量体)中における他の単量体としては、任意の適切な単量体を採用し得る。好ましくは、不飽和カルボン酸系単量体を含む。不飽和カルボン酸系単量体は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0086】
上記不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸系単量体、不飽和ジカルボン酸系単量体が挙げられる。
【0087】
上記不飽和モノカルボン酸系単量体としては、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸や、これらの一価金属塩(特にNa塩)、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。上記不飽和モノカルボン酸系単量体は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、分散性能等の向上の面から、アクリル酸、メタクリル酸、これらの一価金属塩(特にNa塩)、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩が好ましい。
【0088】
上記不飽和ジカルボン酸系単量体としては、分子内に不飽和基を1つとカルボン酸(またはその塩)基を2つとを有する単量体であれば、任意の適切な単量体を採用し得る。具体的には、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フマル酸や、これらの一価金属塩(特にNa塩)、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、またはそれらの無水物等が挙げられる。上記不飽和ジカルボン酸系単量体は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0089】
上記不飽和カルボン酸系単量体としては、不飽和モノカルボン酸系単量体や不飽和ジカルボン酸系単量体の他にも、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアルコールとのハーフエステル、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアミンとのハーフアミド、不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2〜4個のグリコールとのハーフエステル、マレアミド酸と炭素数2〜4のグリコールとのハーフアミド等が挙げられる。
【0090】
上記他の単量体としては、上記に挙げたものの他に、例えば、下記のものが挙げられる。
【0091】
例えば、スチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体;3−メチル−2−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノアリルエーテル、α−ヒドロキシアクリル酸、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和単量体;N−ビニルピロリドン等の窒素原子含有不飽和単量体;等が挙げられる。
【0092】
また、1,3−ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル等の(メタ)アクリル酸エステル類;ヘキセン、ヘプテン、デセン、イソブチレン等のα−オレフィン類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;酢酸ビニル等のビニルエステル類;酢酸アリル等のアリルエステル類;等が挙げられる。
【0093】
また、上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアルコールとのジエステル、上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数1〜22個のアミンとのジアミド、上記不飽和ジカルボン酸系単量体と炭素数2〜4個のグリコールとのジエステルが挙げられる。
【0094】
また、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホネート、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4−(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スルホエチルマレイミド、イソプレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、ならびに、それらの一価金属塩(特にNa塩)、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩;等が挙げられる。
【0095】
また、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;アリルアルコール等のアリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の不飽和アミノ化合物類;メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテル類またはアリルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体;(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸メチルエステル、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸等の含リン単量体;等が挙げられる。
【0096】
また、(メタ)アクリル酸のポリアルキレングリコールエステル、イソプレノール、(メタ)アリルアルコールのオキシアルキレン付加物等のポリアルキレングリコール系単量体が挙げられる。
【0097】
これら他の単量体は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
本発明のポリアルキレングリコール系重合体を得るための重合方法は、任意の適切な重合方法を採用し得る。
【0099】
本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、上記全単量体(本発明のポリアルキレングリコール系化合物+他の単量体)を溶媒中で重合反応させることが好ましい。上記重合反応においては、反応系内に、開始剤や、その他の添加剤を含んでいても良い。
【0100】
上記溶媒としては、任意の適切な溶媒を採用し得る。好ましくは、水、アルコール、グリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール類等の水性の溶媒が挙げられ、より好ましくは水が挙げられる。上記溶媒は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、上記単量体(本発明のポリアルキレングリコール系化合物および/または他の単量体)の溶媒への溶解性を向上させるため、重合反応に悪影響を及ぼさない範囲で、有機溶媒を適宜加えても良い。
【0101】
上記有機溶媒としては、任意の適切な有機溶媒を採用し得る。例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール;ジメチルホルムアルデヒド等のアミド類;ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;等が挙げられる。上記有機溶媒は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0102】
上記溶媒の使用量は、上記全単量体(本発明のポリアルキレングリコール系化合物+他の単量体)に対して、好ましくは40〜300重量%、より好ましくは45〜200重量%、さらに好ましくは50〜150重量%の範囲である。溶媒の使用量が上記全単量体に対して40重量%未満の場合には、得られる重合体の分子量が高くなりすぎるおそれがある。一方、溶媒の使用量が上記全単量体に対して300重量%を超える場合には、得られる重合体の濃度が低くなり、場合によっては溶媒除去が必要となるおそれがある。
【0103】
溶媒の少なくとも一部を、重合反応初期に反応系(反応容器)内に仕込んでおいても良い。また、溶媒の少なくとも一部を、重合反応中に反応系内に添加(滴下)しても良い。また、溶媒の少なくとも一部を、上記単量体(本発明のポリアルキレングリコール系化合物および/または他の単量体)や開始剤成分やその他の添加剤を予め溶媒に溶解させた形で、これらの成分と共に重合中に反応系内に適当に添加(滴下)しても良い。
【0104】
上記開始剤としては、任意の適切な開始剤を採用し得る。例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸アンモニウム等の重亜硫酸塩;亜硫酸塩やピロ亜硫酸塩、亜リン酸塩や次亜リン酸塩;等が挙げられる。これらは、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。好ましくは、開始剤として上記過硫酸塩及び過酸化水素の組み合わせ、過硫酸塩及び重亜硫酸塩の組み合わせである。より好ましくは、過硫酸塩及び重亜硫酸塩の組み合わせである。
【0105】
上記過硫酸塩及び重亜硫酸塩を両方添加する場合、その添加比率としては、任意の適切な比率を設定し得る。例えば、上記添加比率として、重量比で過硫酸塩1に対して重亜硫酸塩が0.1〜10であることが好ましく、0.5〜5であることがより好ましく、1〜3であることがさらに好ましい。重量比で過硫酸塩1に対して重亜硫酸塩が0.1未満であると、重亜硫酸塩による効果が充分ではなくなるおそれがある。また、重量比で過硫酸塩1に対して重亜硫酸塩が0.1未満であると、得られる重合体の重量平均分子量が高くなりすぎるおそれがある。一方、重量比で過硫酸塩1に対して重亜硫酸塩が10を超えると、重亜硫酸塩による効果が添加比率に伴うほど得られないおそれがある。
【0106】
上記過硫酸塩及び重亜硫酸塩の添加量は、使用される本発明のポリアルキレングリコール系化合物1モルに対して、0.1〜20gであることが好ましく、0.5〜15gであることがより好ましく、1〜10gであることがさらに好ましい。この範囲内で過硫酸塩および重亜硫酸塩を添加すると、得られる重合体の重量平均分子量が好ましい範囲となりやすい。過硫酸塩及び重亜硫酸塩の配合量が多すぎると、これらの化合物由来の不純物の生成量が増大するおそれがある。また、開始剤として配合される重亜硫酸塩が分解して発生する亜硫酸ガスは、重合反応時の作業員の安全性や周辺環境へ悪影響を及ぼすおそれがある。したがって、過硫酸塩及び重亜硫酸塩の配合量は多すぎないことが好ましい。
【0107】
上記重合反応においては、反応系内に、その他の添加剤(連鎖移動剤を含む)を含んでいても良い。上記その他の添加剤(連鎖移動剤を含む)としては、任意の適切な添加剤を採用し得る。例えば、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、4,4´−アゾビス−4−シアノバレリン酸、アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素;等が挙げられる。
【0108】
上記その他の添加剤として、例えば、重金属イオン、重金属濃度調整剤も挙げられる。
【0109】
上記重金属イオンを構成する重金属としては、例えば、鉄、コバルト、マンガン、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、鉛、白金、イリジウム、オスミウム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、および、これらの塩、等が挙げられる。上記重金属イオンは、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。好ましくは、上記重合反応の反応溶液は、鉄イオンを含む。重金属イオンのイオン価については、任意の適切なイオン価が採用され得る。例えば、重金属として鉄が用いられる場合には、重合反応の反応溶液中に溶解している鉄イオンは、Fe2+であっても良いし、Fe3+であっても良いし、これらが組み合わされていてもよい。重金属イオンが上記重合反応の反応溶液に含まれることにより、過硫酸塩及び亜硫酸塩の使用量を低減させることができる。
【0110】
上記重金属イオンは、重金属化合物を溶解してなる溶液を用いて添加することができる。その際に用いられる重金属化合物は、上記重合反応の反応溶液中に含有され得る重金属イオンに応じて決定される。溶媒として水が用いられる場合には、水溶性の重金属塩が好ましい。水溶性の重金属塩としては、例えば、モール塩(Fe(NH(SO・6HO)、硫酸第一鉄・7水和物、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化マンガン等が挙げられる。
【0111】
上記重金属イオンの添加方法としては、任意の適切な方法を採用し得る。例えば、初期添加、逐次添加が好ましく挙げられ、初期添加がより好ましく挙げられる。なお、初期添加とは、重金属イオンの全量を上記重合反応の反応溶液中に予め添加する方法をいい、逐次添加とは、重金属イオンを上記重合反応の進行と共に、反応溶液中に徐々に添加していく方法をいう。
【0112】
上記重金属イオンの含有量は、任意の適切な量を採用し得る。例えば、重合反応完結時における反応溶液の全重量に対して、好ましくは0.1〜20ppm、より好ましくは0.2〜10ppm、さらに好ましくは0.3〜7ppm、特に好ましくは0.4〜6ppm、最も好ましくは0.5〜5ppmである。重金属イオンの含有量が上記範囲にあれば、重金属イオン由来の不純物は殆ど発生しない。
【0113】
上記重合反応完結時とは、重合反応の反応溶液中において重合反応が実質的に完了した時点を意味する。例えば、重合反応の反応溶液中において重合反応が進行し、アルカリ成分を用いて重合させた重合体を中和し、その後、溶媒を除去して固体の重合体を得る場合には、中和した後の反応溶液の全重量を基準に、重金属イオンの含有量を算出する。2種以上の重金属イオンが含まれる場合には、重金属イオンの総量が上述の範囲であればよい。上記重金属イオンの含有量が0.1ppm未満であると、重金属イオンによる効果が十分に発現しないおそれがある。重金属イオンの含有量が20ppmを超えると、色調が悪化するおそれがある。また、洗浄剤ビルダーやスケール防止剤として本発明の重合体が用いられる場合には、汚れの増加やスケールの増加を招くおそれがある。
【0114】
上記重金属濃度調整剤としては、任意の適切な重金属濃度調整剤を採用し得る。例えば、多価金属化合物、金属単体が挙げられる。具体的には、オキシ三塩化バナジウム、三塩化バナジウム、シュウ酸バナジル、硫酸バナジル、無水バナジン酸、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸アンモニウムハイポバナダス[(NHSO・VSO・6HO]、硫酸アンモニウムバナダス[(NH)V(SO・12HO]、酢酸銅(II)、銅(II)、臭化銅(II)、銅(II)アセチルアセテート、塩化第二銅アンモニウム、塩化銅アンモニウム、炭酸銅、塩化銅(II)、クエン酸銅(II)、ギ酸銅(II)、水酸化銅(II)、硝酸銅、ナフテン酸銅、オレイン酸銅(II)、マレイン酸銅、リン酸銅、硫酸銅(II)、塩化第一銅、シアン化銅(I)、ヨウ化銅、酸化銅(I)、チオシアン酸銅、鉄アセチルアセナート、クエン酸鉄アンモニウム、シュウ酸第二鉄アンモニウム、硫酸鉄アンモニウム、硫酸第二鉄アンモニウム、クエン酸鉄、フマル酸鉄、マレイン酸鉄、乳酸第一鉄、硝酸第二鉄、鉄ペンタカルボニル、リン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄等の水溶性多価金属塩;五酸化バナジウム、酸化銅(II)、酸化第一鉄、酸化第二鉄等の多価金属酸化物;硫化鉄(III)、硫化鉄(II)、硫化銅等の多価金属硫化物;銅粉末;鉄粉末;などを挙げることができる。
【0115】
上記重合反応における重合方法については、任意の適切な方法を採用し得る。好ましい実施形態の一つは、重金属イオンが予め配合された水溶液中に、上記単量体を含む溶液と上記開始剤を含む溶液とを滴下する。各溶液の濃度については、任意の適切な濃度を採用し得る。
【0116】
上記滴下に要する時間(滴下時間)は、好ましくは60分〜420分、より好ましくは60分〜300分、特に好ましくは90分〜240分である。滴下時間は、滴下する単量体や開始剤の種類によって、それぞれ異なっていても良い。滴下時間が60分以下であると、開始剤として添加され得る過硫酸塩及び重亜硫酸塩によって生じる効果が減少するおそれがある。滴下時間が420分を超える場合には、得られる重合体の生産性の点で問題が生じるおそれがある。
【0117】
上記滴下の速度(滴下速度)としては、任意の適切な速度を採用し得る。例えば、滴下の開始から終了を通じて、滴下速度は一定であってもよく、必要に応じて、滴下速度を変化させてもよい。重合体の製造効率を高めるためには、滴下終了後の反応溶液における固形分の濃度、すなわち重合によって生じる固形分の濃度が40重量%以上になるように滴下させることが好ましい。
【0118】
上記重合反応における重合温度は、開始剤によって、任意の適切な温度を採用し得る。過酸化水素を使用する場合は、沸点が最も好ましい。重亜硫酸塩を使用する場合は、好ましくは25〜99℃、より好ましくは50〜95℃、さらに好ましくは70℃以上90℃未満である。重合温度が低すぎると、得られる重合体の重量平均分子量が上昇するおそれや、不純物の生成量が増加するおそれがある。重合温度が高すぎると、重亜硫酸塩の分解により発生する亜硫酸ガスの量が増加するおそれがある。なお、重合温度とは、重合反応の反応溶液の温度をいう。重合温度の測定方法や制御手段については、任意の適切な方法や手段を採用し得る。例えば、一般に使用される装置を用いて測定すれば良い。
【0119】
上記重合反応において、重合時の圧力は、任意の適切な圧力を採用し得る。例えば、常圧下、減圧下、加圧下の何れの圧力下であっても良い。反応系内の雰囲気は、空気雰囲気のままで行ってもよいが、不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。例えば、重合開始前に反応系内を窒素等の不活性ガスで置換することが好ましい。これにより、反応系内の雰囲気ガス(例えば、酸素ガス等)が液相内に溶解し、重合禁止剤として作用する。その結果、開始剤である過硫酸塩が失活して低減するのが防止され、より効率のよい重合が可能となる。
【0120】
上記重合反応において、効率よく重合体を得るためには、重合反応は酸性条件下で行われることが好ましい。具体的には、重合反応中の重合反応液の酸の中和度は、好ましくは40mol%未満、より好ましくは20mol%未満、さらに好ましくは10mol%未満である。中和度が高いと不純物が多量に生成するおそれがある。中和度の下限値は、任意の適切な値を採用し得る。例えば、中和度が低すぎると、重亜硫酸塩の分解により発生する亜硫酸ガスの量が増加するおそれがあるので、重合反応中の重合反応液の酸の中和度を5mol%程度に保つことが好ましい。
【0121】
上記酸性条件としては、重合中の反応溶液の25℃でのpHを1〜6とすることが好ましい。より好ましくは1〜5、さらに好ましくは1〜4である。上記pHが1未満の場合には、亜硫酸ガスの発生や、装置の腐食が生じるおそれがある。pHが6を超える場合には、重亜硫酸塩の効率が低下して分子量が増大するおそれがある。
【0122】
上記重合反応中の反応溶液のpHを調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物;アンモニア;モノエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミンやそれらの塩;等のアルカリ成分を用いても良い。これらは1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。これらの中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。
【0123】
本発明において、重合反応中の反応溶液中の酸の中和度は、反応溶液中に含まれる有機酸および無機酸の双方の酸の平均の中和度を意味する。酸成分の具体例としては、カルボキシル基等の官能基を有する単量体、過硫酸塩や重亜硫酸塩等の開始剤由来の無機酸、重合反応液中において生成した酸化合物等が挙げられる。ただし、過硫酸塩や重亜硫酸塩等の開始剤由来の無機酸や酸化合物は、通常は、30mol%以上の中和度を有している。このような場合には、単量体中に含まれる酸を30mol%以上中和するために必要なアルカリ成分があれば、少なくとも重合反応の反応溶液中の酸の中和度が30mol%を下回ることはない。中和度の測定方法については、一定の再現性を有する測定方法であれば、任意の適切な方法を採用し得る。また、重合反応の反応溶液中の酸の中和度は、反応溶液中にアルカリ成分または酸性分を適宜加えることによって、制御することができる。酸性条件下で反応が進行している反応溶液中の酸の中和度を上昇させるためには、水酸化ナトリウム等の上記アルカリ成分を添加するとよい。酸性条件下で重合を行う場合には、得られる重合体の中和度は、重合が終了した後に、上記アルカリ成分を適宜添加することによって制御することができる。
【0124】
上記滴下が終了し、反応系における重合反応が終了した時点での水溶液中の固形分濃度は、35重量%以上であることが好ましい。35重量%未満の場合には、得られる重合体の生産性を大幅に向上することができないおそれがある。より好ましくは40〜70重量%、さらに好ましくは45〜65重量%である。このように、重合反応終了時の固形分濃度が35重量%以上であれば、高濃度かつ一段で重合を行うことができる。そのため、効率よく重合体を得ることができる。例えば、濃縮工程を省略することができ、重合体の生産性が大幅に向上し、製造コストの上昇も抑制することが可能となる。なお、重合反応が終了した時点とは、全ての滴下成分の滴下が終了した時点を言う。
【0125】
上記固形分濃度は、130℃の熱風乾燥機で1時間処理した後の不揮発分を、固形分として算出すれば良い。
【0126】
上記反応系において固形分濃度を高くすると、従来は、重合反応の進行に伴う反応溶液の粘度の上昇が顕著となり、得られる重合体の重量平均分子量が大幅に高くなるという問題があった。しかしながら、重合反応が酸性側(25℃でのpHが1〜6であり、中和度が1〜25mol%の範囲)でなされていると、重合反応の進行に伴う反応溶液の粘度の上昇を抑制することができる。したがって、重合反応を高濃度の条件下で行っても低分子量の重合体を得ることができ、重合体の製造効率を大幅に上昇させることができる。ここで、重合反応が終了した時点とは、全ての滴下成分の滴下が終了した時点であってもよいが、好ましくは、その後、所定の熟成時間を経過した時点(重合が完結した時点)を言う。
【0127】
上記熟成時間は、好ましくは1〜120分間、より好ましくは5〜60分間、さらに好ましくは10〜30分間である。熟成時間が1分間未満の場合には、熟成が不十分なために単量体成分が残ることがあり、残存モノマーに起因する不純物が形成して性能低下等を招くおそれがある。熟成時間が120分間を超える場合には、重合体溶液の着色のおそれがある。
【0128】
上記熟成時間は、上記重合反応の反応時間内であり、重合中に含まれるため、上記重合温度が適用される。したがって、ここでの温度も一定温度(好ましくは、滴下終了時点での温度)で保持してもよいし、熟成中に経時的に温度を変化させてもよい。したがって、重合時間は、上記総滴下時間+熟成時間をいい、最初の滴定開始時点から熟成終了時点までに要した時間をいう。
【0129】
上記重合反応は、既存の鋼鉄(スチール)製や銅基合金製の反応容器内壁面に耐腐食性に優れるグラスライニング加工等された反応容器やSUS(ステンレス)製の容器や撹拌器等を用いることができる。上記容器を用いた場合、上記に規定する適量の重金属イオン、特に鉄イオンが、容器等の材質であるSUSから反応溶液中に溶出(供給)することがある。この溶出した重金属イオンは、上記重金属濃度調整剤を添加する場合と同様の作用効果を奏するため、重金属イオンの添加量の低減又は添加が不要となり、費用対効果の面から有利である。なお、既存の鋼鉄(スチール)製や銅基合金製の反応容器を用いた場合は、重金属イオン濃度が多く溶出されるおそれがある。この場合、重金属により着色するおそれがあるため、過剰の重金属イオンを除去する操作が必要となるおそれがある。上記重合体は、バッチ式で製造されてもよいし、連続式で製造されてもよい。
【0130】
上記のような方法で好ましく製造され得る本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、式(1)で表される構造部分を有する。
【化17】

【0131】
式(1)中、Rは水素原子またはメチル基である。
式(1)中、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基である。金属原子としては、好ましくは、アルカリ金属、アルカリ土類金属が挙げられ、上記ポリアルキレングリコール系化合物の製造上の取り扱い性等の点から、ナトリウム原子が特に好ましい。
式(1)中、Xは−CH−または単結合である。ここで、本明細書においてXが単結合の場合とは、C−X−Cと表される場合にC−Cとなることを意味する。
式(1)中、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表す。
上記nは、1≦n≦300であり、好ましくは、1≦n≦200であり、より好ましくは1≦n≦100であり、さらに好ましくは1≦n≦50である。
【0132】
本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、上記の通り、分子内に、式(1)で表される構造部分を有する限り、任意の適切な分子構造を採用することができ、本発明の効果が発現され得る。特に、式(1)で表される構造を有することにより、水系用途において高い性能を発揮できる。このようなポリアルキレングリコール系重合体は、耐硬水性、汚れやクレイ(Clay)の分散性、界面活性剤との相互作用などが高い。
【0133】
本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、本発明の効果をより一層発揮するために、好ましくは、カルボキシル基および/またはスルホン酸基を有する。
【0134】
本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、水系用途において高い性能を発揮でき、耐硬水性、汚れやクレイ(Clay)の分散性、界面活性剤との相互作用などが高いので、分散剤、洗剤用ビルダー、洗剤組成物、洗浄剤、水処理剤に用いた場合に特に優れた性能を発揮できる。
【0135】
本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、再汚染防止能(測定方法の詳細は後述)が、好ましくは50.0以上、より好ましくは55.0以上、さらに好ましくは60.0以上、さらに好ましくは60.5以上、特に好ましくは60.8以上、最も好ましくは61.0以上である。
【0136】
本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、クレイ分散能(JIS8種評価、硬度:炭酸カルシウム換算で200ppm、測定方法の詳細は後述)が、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.2以上、さらに好ましくは1.3以上、特に好ましくは1.35以上、最も好ましくは1.4以上である。
【0137】
本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、重量平均分子量が、好ましくは1000〜1000000、より好ましくは2000〜200000、特に好ましくは4000〜50000である。重量平均分子量が上記範囲を外れると、再汚染防止能、クレイ分散能が劣るおそれがある。
【0138】
〔洗剤用ビルダー〕
本発明の洗剤用ビルダーは、本発明のポリアルキレングリコール系重合体を含む。具体的には、本発明の洗剤用ビルダーは、本発明のポリアルキレングリコール系重合体のみからなっていてもよいし、他の任意の適切な洗剤用ビルダーとの混合物からなっていてもよい。
【0139】
本発明の洗剤用ビルダー中における本発明のポリアルキレングリコール系重合体の含有割合は、本発明の洗剤用ビルダー100重量%に対して、0.1〜80重量%であることが好ましく、より好ましくは1〜70重量%、さらに好ましくは5〜65重量%である。本発明のポリアルキレングリコール系重合体の含有割合が0.1重量%未満であると、洗剤組成物として用いた場合の洗浄力が不十分になるおそれがある。本発明のポリアルキレングリコール系重合体の含有割合が80重量%を超えると、不経済になるおそれがある。
【0140】
本発明の洗剤用ビルダーに用いる本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、必要に応じて、アルカリ性物質で中和したものであってもよい。アルカリ性物質で中和する場合は、pHを好ましくは6〜11、より好ましくは6.25〜10.5、特に好ましくは6.5〜10の範囲に調整することが好ましい。
【0141】
上記他の任意の適切な洗剤用ビルダーとしては、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ポウ硝、炭酸ナトリウム、ニトリロトリ酢酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウムやカリウム、ゼオライト、多糖類のカルボキシル誘導体、(メタ)アクリル酸(共)重合体塩、フマル酸(共)重合体塩などの水溶性重合体等が挙げられる。
【0142】
本発明の洗剤用ビルダーは、液体洗剤用であっても粉末洗剤用であってもよい。本発明の洗剤用ビルダーは界面活性剤との相溶性に優れる。このため、高濃縮の液体洗剤組成物 とすることができる点では液体洗剤用が好ましい。
【0143】
本発明の洗剤用ビルダーは、本発明のポリアルキレングリコール系重合体以外のその他の成分について、その種類や配合比率は、本発明の作用効果を損なわない範囲で、任意の適切な種類や配合比率を設定し得る。
【0144】
本発明の洗剤用ビルダーは、親水性や疎水性の汚れといった種々の汚れに対応することができ、再汚染防止能等の特性に優れる。
【0145】
〔洗剤組成物 〕
本発明の洗剤組成物は、本発明のポリアルキレングリコール系重合体を含む。好ましくは、本発明の洗剤用ビルダーを含む。
【0146】
本発明の洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であっても良いし、液体洗剤組成物であっても良い。本発明の洗剤組成物は、通常、洗剤に用い得る、任意の適切な添加剤を含んでいても良い。上記添加剤としては、例えば、アルカリビルダー、キレートビルダー、カルボキシメチルセルロースナトリウム等の汚染物質の再沈着を防止するための再付着防止剤、ベンゾトリアゾールやエチレン−チオ尿素等のよごれ抑制剤、ソイルリリース剤、色移り防止剤、柔軟剤、pH調節のためのアルカリ性物質、香料、可溶化剤、蛍光剤、着色剤、起泡剤、泡安定剤、つや出し剤、殺菌剤、漂白剤、漂白助剤、酵素、染料、溶媒等が好適に挙げられる。また、粉末洗剤組成物の場合には、ゼオライトを配合することが好ましい。
【0147】
本発明の洗剤組成物中の本発明の洗剤用ビルダーの含有割合は、本発明の洗剤組成物100重量%に対して、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜10重量%、特に好ましくは0.4〜8重量%、最も好ましくは0.5〜5重量%である。本発明の洗剤用ビルダーの含有割合が0.1重量%未満であると、十分な洗浄性能を発揮できないおそれがある。本発明の洗剤用ビルダーの含有割合が20重量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
【0148】
本発明の洗剤組成物における、本発明のポリアルキレングリコール系重合体あるいは本発明の洗剤用ビルダーの配合形態は、液状でも良いし、固形状でも良い。洗剤の販売時の形態(例えば、液状物または固形物)に応じて決定すれば良い。また、重合後の水溶液の形態で配合しても良いし、水溶液の水分をある程度減少させて濃縮した状態で配合しても良いし、乾燥固化した状態で配合しても良い。
【0149】
なお、本発明の洗剤組成物は、家庭用洗剤の合成洗剤、繊維工業その他の工業用洗剤、硬質表面洗浄剤のほか、その成分の1つの働きを高めた漂白洗剤等の特定の用途にのみ用いられる洗剤も含む。本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、キレート能に優れるため、微量金属を捕捉することにより、過酸化水素を安定でき、漂白剤の安定化能に優れることから、好適に用いることができる。
【0150】
本発明の洗剤組成物は、本発明のポリアルキレングリコール系重合体以外に、界面活性剤を含むことが好ましい。
【0151】
本発明の洗剤組成物中に好ましく含まれる界面活性剤は、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、および、両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種である。これらの界面活性剤は1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0152】
界面活性剤を2種以上併用する場合、アニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤とを合わせた使用量は、全界面活性剤100重量%に対して、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上である。
【0153】
上記アニオン系界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテル硫酸塩、アルキルまたはアルケニル硫酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸またはエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和または不飽和脂肪酸塩、アルキルまたはアルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルまたはアルケニルリン酸エステルまたはその塩等を挙げることができる。また、これらのアニオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していても良い。
【0154】
上記ノニオン系界面活性剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンアルキルまたはアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミドまたはそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等を挙げることができる。また、これらのノニオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していても良い。
【0155】
上記カチオン系界面活性剤の具体例としては、第4アンモニウム塩等を挙げることができる。カチオン系界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していても良い。
【0156】
上記両性界面活性剤の具体例としては、カルボキシル型またはスルホベタイン型両性界面活性剤等を挙げることができる。両性界面活性剤のアルキル基、アルケニル基の中間にメチル基等のアルキル基が分枝していても良い。
【0157】
本発明の洗剤組成物に含まれる界面活性剤の配合割合は、洗剤組成物中、好ましくは10〜60重量%であり、より好ましくは15〜50重量%であり、さらに好ましくは20〜45重量%であり、特に好ましくは25〜40重量%である。界面活性剤の配合割合が10重量%未満であると、十分な洗剤性能を発揮できなくなるおそれがある。他方、60重量%を超えると、経済性が低下するおそれがある。
【0158】
本発明の洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物に含まれる水分量は、通常、液体洗剤組成物100重量%に対して、好ましくは0.1〜75重量%、より好ましくは0.2〜70重量%、さらに好ましくは0.5〜65重量%、さらに好ましくは0.7〜60重量%、特に好ましくは1〜55重量%であり、最も好ましくは1.5〜50重量%である。
【0159】
本発明の洗剤組成物が液体洗剤組成物である場合、液体洗剤組成物は、カオリン濁度が、好ましくは200mg/L以下、より好ましくは150mg/L以下、さらに好ましくは120mg/L以下、特に好ましくは100mg/L以下、最も好ましくは50mg/L以下である。
【0160】
本発明のポリアルキレングリコール系重合体を洗剤用ビルダーとして液体洗剤組成物に添加する場合としない場合とでのカオリン濁度の変化(差)は、好ましくは500mg/L以下、より好ましくは400mg/L以下、さらに好ましくは300mg/L以下、特に好ましくは200mg/L以下、最も好ましくは100mg/L以下である。
【0161】
カオリン濁度は、例えば、厚さ10mmの50mm角セルに均一に撹拌した試料(液体洗剤)を仕込み、気泡を除いた後、日本電色株式会社製の濁度計(NDH2000)を用いて25℃でのTubidity(カオリン濁度:mg/L)を測定する。
【0162】
上記洗剤組成物に配合し得る酵素としては、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ等が好適である。中でも、アルカリ洗浄液中で活性が高いプロテアーゼ、アルカリリパーゼ、アルカリセルラーゼが好ましい。上記酵素の添加量は、洗剤組成物100重量%に対して、5重量%以下が好ましい。5重量%を超えると、洗浄力の向上が見られなくなるおそれや、経済性が低下するおそれがある。
【0163】
上記洗剤組成物に配合し得るアルカリビルダーとしては、珪酸塩、炭酸塩、硫酸塩等が好適である。
【0164】
上記洗剤組成物に配合し得るキレートビルダーとしては、ジグリコール酸、オキシカルボン酸塩、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)、DTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)、STPP(トリポリリン酸ナトリウム)、クエン酸等が好適である。本発明におけるポリアルキレングリコール系重合体以外のその他の成分を含むものを添加しても良い。
【0165】
本発明の洗剤組成物は、液体洗剤用であっても粉末洗剤用であってもよいが、界面活性剤との相溶性に優れ、高濃縮の液体洗剤組成物とすることができる点では液体洗剤用が好ましい。
【0166】
本発明の洗剤組成物は、本発明のポリアルキレングリコール系重合体あるいは本発明の洗剤用ビルダー以外のその他の成分について、その種類や配合比率は、本発明の作用効果を損なわない範囲で、任意の適切な種類や配合比率を設定し得る。
【0167】
本発明の洗剤組成物は、親水性や疎水性の汚れといった種々の汚れに対応することができ、再汚染防止能等の特性に優れる。
【0168】
〔その他の用途〕
本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、顔料分散剤やスケール防止剤に用いることもできる。また、繊維加工、建材加工、塗料、窯業等の分野においても幅広く応用できる。
【0169】
本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、水処理剤、繊維処理剤に用いることもできる。
【0170】
上記水処理剤は、冷却水系、ボイラー水系等の水系に添加されることにより、例えば、炭酸カルシウムやシリカ等のスケール防止性や金属の不初項防止性等にとって有利となる可能性がある。
【0171】
上記繊維処理剤は、各種繊維を処理することにより、例えば、吸水性、柔軟性、耐磨耗性、汚れの防止性、触感性等にとって有利となる可能性がある。
【0172】
上記水処理剤や上記繊維処理剤において、本発明のポリアルキレングリコール系重合体は、そのまま添加しても良いし、本発明のポリアルキレングリコール系重合体以外の他の成分とともに添加しても良い。
【0173】
上記水処理剤や上記繊維処理剤は、本発明のポリアルキレングリコール系重合体以外のその他の成分について、その種類や配合比率は、本発明の作用効果を損なわない範囲で、任意の適切な種類や配合比率を設定し得る。
【0174】
上記水処理剤や上記繊維処理剤は、親水性や疎水性の汚れといった種々の汚れに対応することができ、再汚染防止能等の特性に優れる。
【実施例】
【0175】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例には限定されない。なお、特に明記しない限り、実施例における部および%は重量基準である。
【0176】
〔実施例1〕:単量体(1)
(イソプレノールのエチレンオキサイド付加物へのアリルグリシジルエーテル付加)
温度計、攪拌機を備えたガラス製反応器に、イソプレノールのエチレンオキサイド50モル付加物(以下、IPN50と称す。)457.2g、および粉末状の水酸化カリウム(以下、KOHと称す。)2.3gを仕込み、乾燥した窒素ガスを流入しながら、120℃で120分間攪拌し、KOHの溶解、および脱水を行った。
内液を90℃に維持しながら、アリルグリシジルエーテル(以下、AGEと称す。)34.2gを60分間かけてゆっくりと滴下した。その後、90℃で240分間反応させた。
このようにして、IPN50のAGE付加物(中間体(1))を得た。
中間体(1)のDO中のH−NMRにおいては、2.4ppmと2.6ppm付近のエポキシ環由来のシグナルが消失していた。
(中間体(1)のスルホン化)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えたガラス製反応器に、中間体(1)122.9gと純水183.0gを仕込み、攪拌溶解させ、18N硫酸を用いてpH5に調整した。
攪拌下、亜硫酸水素ナトリウム(以下、SBSと称す。)8.6gを加え、pH5、20℃以下を維持しながら180分間反応させた。
このようにして、中間体(1)のスルホン化物(単量体(1))の40%水溶液を得た。
単量体(1)のDO中のH−NMRにおいては、1.4ppm付近のイソプレノールのメチル基由来のシグナルが0.8ppm付近へシフトしていた。
【0177】
〔実施例2〕:単量体(2)
(イソプレノールのエチレンオキサイド付加物へのアリルグリシジルエーテル付加)
温度計、攪拌機を備えたガラス製反応器に、50℃で、IPN50を457.2g、AGEを25.1g、を仕込み、均一になるまで撹拌した。その後、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体2.3gを加え、50℃で240分間反応させた。
このようにして、IPN50のAGE付加物(中間体(2))を得た。
中間体(2)のDO中のH−NMRにおいては、2.4ppmと2.6ppm付近のエポキシ環由来のシグナルが消失していた。
(中間体(2)のスルホン化)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えたガラス製反応器に、中間体(2)120.0gと純水189.0gを仕込み、攪拌溶解させ、18N硫酸を用いてpH5に調整した。
攪拌下、SBS6.2gを加え、pH5、20℃以下を維持しながら180分間反応させた。
このようにして、中間体(2)のスルホン化物(単量体(2))の40%水溶液を得た。
単量体(2)のDO中のH−NMRにおいては、1.4ppm付近のイソプレノールのメチル基由来のシグナルが0.8ppm付近へシフトしていた。
【0178】
〔実施例3〕:単量体(3)
(イソプレノールのエチレンオキサイド付加物へのアリルグリシジルエーテル付加)
温度計、攪拌機を備えたガラス製反応器に、イソプレノールのエチレンオキサイド10モル付加物(以下、IPN10と称す。)1052.0g、およびKOH5.3gを仕込み、乾燥した窒素ガスを流入しながら、120℃で120分間攪拌し、KOHの溶解、および脱水を行った。
内液を90℃に維持しながら、AGE250.8gを60分間かけてゆっくりと滴下した。その後、90℃で240分間反応させた。
このようにして、IPN10のAGE付加物(中間体(3))を得た。
中間体(3)のDO中のH−NMRにおいては、2.4ppmと2.6ppm付近のエポキシ環由来のシグナルが消失していた。
(中間体(3)のスルホン化)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えたガラス製反応器に、中間体(3)128.0gと純水226.0gを仕込み、攪拌溶解させ、18N硫酸を用いてpH5に調整した。
攪拌下、SBS22.9gを加え、pH5、20℃以下を維持しながら180分間反応させた。
このようにして、中間体(3)のスルホン化物(単量体(3))の40%水溶液を得た。
単量体(3)のDO中のH−NMRにおいては、1.4ppm付近のイソプレノールのメチル基由来のシグナルが0.8ppm付近へシフトしていた。
【0179】
〔実施例4〕:単量体(4)
(アリルアルコールのエチレンオキサイド付加物へのメタリルクロライド付加)
温度計、攪拌機を備えたガラス製反応器に、アリルアルコールのエチレンオキサイド50モル付加物(以下、PEA50と称す。)112.9g、およびKOH3.1gを仕込み、乾燥した窒素ガスを流入しながら、120℃で120分間攪拌し、KOHの溶解、および脱水を行った。
内液を70℃に維持しながら、メタリルクロライド(以下、MLCと称す。)5.0gを60分間かけてゆっくりと滴下した。その後、70℃で120分間、さらに90℃で120分間反応させた。
生成した塩化カリウムの沈殿を取り除き、未反応のMLC、および副生したメタリルアルコールを、ロータリーエバポレーターで減圧留去した。
このようにして、PEA50のMLC付加物(中間体(4))を得た。
中間体(4)のDO中のH−NMRにおいては、4.7ppm付近にメタリル基由来のシグナルが検出された。
(中間体(4)のスルホン化)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えたガラス製反応器に、中間体(4)115.7gと純水183.0gを仕込み、攪拌溶解させ、18N硫酸を用いてpH5に調整した。
攪拌下、SBS6.2gを加え、pH6、20℃以下を維持しながら180分間反応させた。
このようにして、中間体(4)のスルホン化物(単量体(4))の40%水溶液を得た。
単量体(4)のDO中のH−NMRにおいては、1.4ppm付近のメタリルのメチル基由来のシグナルが0.8ppm付近へシフトしていた。
【0180】
〔実施例5〕:単量体(5)
(イソプレノールのエチレンオキサイド付加物のスルホン化)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えたガラス製反応器に、IPN50の60%水溶液762.0gと純水176.0g、SBS22.9gを仕込み、攪拌、48%NaOHでpHを5〜7に調整し、20℃以下を維持しながら180分間反応させた。
これを、ロータリーエバポレーターで濃縮、脱水を行い、IPN50のスルホン化物(中間体(5))を得た。
中間体(5)のDO中のH−NMRにおいては、1.4ppm付近のイソプレノールのメチル基由来のシグナルが0.8ppm付近へシフトしていた。
(中間体(5)へのアリルグリシジルエーテル付加)
温度計、攪拌機を備えたガラス製反応器に、中間体(5)239.0g、およびKOH2.8gを仕込み、乾燥した窒素ガスを流入しながら、120℃で120分間攪拌し、KOHの溶解、および脱水を行った。
内液を90℃に維持しながら、AGE17.1gを60分間かけてゆっくりと滴下した。その後、90℃で240分間反応させた。
このようにして、中間体(5)のAGE付加物(単量体(5))を得た。
単量体(5)のDO中のH−NMRにおいては、2.4ppmと2.6ppm付近のエポキシ環由来のシグナルが消失していた。
【0181】
〔実施例6〕:単量体(6)
(アリルアルコールのエチレンオキサイド付加物のスルホン化)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えたガラス製反応器に、PEA50の60%水溶液752.7gと純水174.0g、SBS22.9gを仕込み、攪拌、48%NaOHでpHを7〜8に調整し、20℃以下を維持しながら180分間反応させた。
これを、ロータリーエバポレーターで濃縮、脱水を行い、PEA50のスルホン化物(中間体(6))を得た。
中間体(6)のDO中のH−NMRにおいては、5.2ppmと5.8ppm付近のアリルアルコールの二重結合部由来のシグナルが消失していた。
(中間体(6)へのアリルグリシジルエーテル付加)
温度計、攪拌機を備えたガラス製反応器に、中間体(6)237.2g、およびKOH2.8gを仕込み、乾燥した窒素ガスを流入しながら、120℃で120分間攪拌し、KOHの溶解、および脱水を行った。
内液を90℃に維持しながら、AGE12.5gを60分間かけてゆっくりと滴下した。その後、90℃で240分間反応させた。
このようにして、中間体(6)のAGE付加物(単量体(6))を得た。
単量体(6)のDO中のH−NMRにおいては、2.4ppmと2.6ppm付近のエポキシ環由来のシグナルが消失していた。
【0182】
〔実施例7〕:単量体(7)
(中間体(5)へのメタリルクロライド付加)
温度計、攪拌機を備えたガラス製反応器に、中間体(5)239.0g、およびKOH8.4gを仕込み、乾燥した窒素ガスを流入しながら、120℃で120分間攪拌し、KOHの溶解、および脱水を行った。
内液を70℃に維持しながら、MLC13.5gを60分間かけてゆっくりと滴下した。その後、70℃で120分間、さらに90℃で120分間反応させた。
生成した塩化カリウムの沈殿を取り除き、未反応のMLC、および副生したメタリルアルコールを、ロータリーエバポレーターで減圧留去した。
このようにして、中間体(5)のMLC付加物(単量体(7))を得た。
単量体(7)のDO中のH−NMRにおいては、4.7ppm付近にメタリル基由来のシグナルが検出された。
【0183】
〔実施例8〕:単量体(8)
(中間体(5)へのメタクリル酸付加)
温度計、還流冷却管、攪拌機、生成水分離器を備えたガラス製反応器に、中間体(5)239.0g、メタクリル酸367.1g、パラトルエンスルホン酸一水和物6.0g、フェノチアジン0.4g、およびシクロヘキサン32.0gを仕込み、窒素ガスを流入しながら、115℃で1200分間反応を行った。
得られた反応液に、48%水酸化ナトリウム(以下、48%NaOHと称す。)2.5gと純水723.0gを加えてパラトルエンスルホン酸を中和し、ハイドロキノン0.8gを加えて105℃まで昇温し、窒素ガスを導入しながらシクロヘキサンを水との共沸により留去した。
調整水を加え、中間体(5)のメタクリル酸エステルとメタクリル酸の混合物(単量体(8))の80%水溶液を得た。
単量体(8)のDO中のH−NMRにおいては、4.1ppm付近にエステル基の隣のメチレン基由来のシグナルが検出された。
【0184】
〔実施例9〕:単量体(1)/アクリル酸=40/60wt%重合体(1)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS316製セパラブルフラスコに純水118.0gと、モール塩0.0137gを仕込み、攪拌下90℃に昇温した後、単量体(1)の40%水溶液200.0g、80%アクリル酸(以下、80%AAと称す。)150.0g、48%NaOH6.9g、15%過硫酸ナトリウム(以下、15%NaPSと称す。)34.0g、35%亜硫酸水素ナトリウム(以下、35%SBSと称す。)29.1gをそれぞれ別の滴下口より滴下した。
それぞれの滴下時間は、単量体(1)が150分間、80%AAが180分間、48%NaOHが180分間、15%NaPSが190分間、そして35%SBSが170分間とした。なお、滴下開始はすべて同時とした。
80%AA滴下終了までの間、温度は90℃を維持した。さらに同温度を80%AA滴下終了後30分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。
重合の完結後、反応溶液を放冷してから、48%NaOH111.1gを加えて中和した。
このようにして、固形分濃度40重量%、最終中和度85mol%の重合体(1)を得た。
【0185】
〔実施例10〕:単量体(1)/アクリル酸=30/70wt%重合体(2)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS316製セパラブルフラスコに純水132.0gと、モール塩0.0141gを仕込み、攪拌下90℃に昇温した後、単量体(1)の40%水溶液150.0g、80%AA175.0g、48%NaOH8.1g、15%NaPS39.4g、35%SBS33.7gをそれぞれ別の滴下口より滴下した。
それぞれの滴下時間は、単量体(1)が150分間、80%AAが180分間、48%NaOHが180分間、15%NaPSが190分間、そして35%SBSが170分間とした。なお、滴下開始はすべて同時とした。
80%AA滴下終了までの間、温度は90℃を維持した。さらに同温度を80%AA滴下終了後30分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。
重合の完結後、反応溶液を放冷してから、48%NaOH129.6gを加えて中和した。
このようにして、固形分濃度40重量%、最終中和度85mol%の重合体(2)を得た。
【0186】
〔実施例11〕:単量体(3)/アクリル酸=40/60wt%重合体(3)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS316製セパラブルフラスコに純水116.0gと、モール塩0.0137gを仕込み、攪拌下90℃に昇温した後、単量体(3)の40%水溶液200.0g、80%AA150.0g、48%NaOH6.9g、15%NaPS35.5g、35%SBS30.4gをそれぞれ別の滴下口より滴下した。
それぞれの滴下時間は、単量体(3)が150分間、80%AAが180分間、48%NaOHが180分間、15%NaPSが190分間、そして35%SBSが170分間とした。なお、滴下開始はすべて同時とした。
80%AA滴下終了までの間、温度は90℃を維持した。さらに同温度を80%AA滴下終了後30分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。
重合の完結後、反応溶液を放冷してから、48%NaOH111.1gを加えて中和した。
このようにして、固形分濃度40重量%、最終中和度85mol%の重合体(3)を得た。
【0187】
〔実施例12〕:単量体(4)/アクリル酸=40/60wt%重合体(4)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS316製セパラブルフラスコに純水118.0gと、モール塩0.0137gを仕込み、攪拌下90℃に昇温した後、単量体(4)の40%水溶液200.0g、80%AA150.0g、48%NaOH6.9g、15%NaPS34.0g、35%SBS29.1gをそれぞれ別の滴下口より滴下した。
それぞれの滴下時間は、単量体(4)が150分間、80%AAが180分間、48%NaOHが180分間、15%NaPSが190分間、そして35%SBSが170分間とした。なお、滴下開始はすべて同時とした。
80%AA滴下終了までの間、温度は90℃を維持した。さらに同温度を80%AA滴下終了後30分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。
重合の完結後、反応溶液を放冷してから、48%NaOH111.1gを加えて中和した。
このようにして、固形分濃度40重量%、最終中和度85mol%の重合体(4)を得た。
【0188】
〔実施例13〕:単量体(5)/アクリル酸=40/60wt%重合体(5)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS316製セパラブルフラスコに純水118.0gと、モール塩0.0137gを仕込み、攪拌下90℃に昇温した後、単量体(5)の40%水溶液200.0g、80%AA150.0g、48%NaOH6.9g、15%NaPS34.0g、35%SBS29.1gをそれぞれ別の滴下口より滴下した。
それぞれの滴下時間は、単量体(5)が150分間、80%AAが180分間、48%NaOHが180分間、15%NaPSが190分間、そして35%SBSが170分間とした。なお、滴下開始はすべて同時とした。
80%AA滴下終了までの間、温度は90℃を維持した。さらに同温度を80%AA滴下終了後30分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。
重合の完結後、反応溶液を放冷してから、48%NaOH111.1gを加えて中和した。
このようにして、固形分濃度40重量%、最終中和度85mol%の重合体(5)を得た。
【0189】
〔実施例14〕:単量体(6)/アクリル酸=40/60wt%重合体(6)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS316製セパラブルフラスコに純水118.0gと、モール塩0.0137gを仕込み、攪拌下90℃に昇温した後、単量体(6)の40%水溶液200.0g、80%AA150.0g、48%NaOH6.9g、15%NaPS34.0g、35%SBS29.1gをそれぞれ別の滴下口より滴下した。
それぞれの滴下時間は、単量体(6)が150分間、80%AAが180分間、48%NaOHが180分間、15%NaPSが190分間、そして35%SBSが170分間とした。なお、滴下開始はすべて同時とした。
80%AA滴下終了までの間、温度は90℃を維持した。さらに同温度を80%AA滴下終了後30分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。
重合の完結後、反応溶液を放冷してから、48%NaOH111.1gを加えて中和した。
このようにして、固形分濃度40重量%、最終中和度85mol%の重合体(6)を得た。
【0190】
〔実施例15〕: 単量体(8)の重合体(7)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS316製セパラブルフラスコに純水122.0gと、モール塩0.0110gを仕込み、攪拌下90℃に昇温した後、単量体(8)の80%水溶液250.0g、48%NaOH5.8g、15%NaPS28.6g、35%SBS24.5gをそれぞれ別の滴下口より滴下した。
それぞれの滴下時間は、単量体(8)が180分間、48%NaOHが180分間、15%NaPSが190分間、そして35%SBSが170分間とした。なお、滴下開始はすべて同時とした。
80%AA滴下終了までの間、温度は90℃を維持した。さらに同温度を80%AA滴下終了後30分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。
重合の完結後、反応溶液を放冷してから、48%NaOH93.0gを加えて中和した。
このようにして、固形分濃度40重量%、最終中和度85mol%の重合体(7)を得た。
【0191】
〔比較例1〕:IPN50/アクリル酸=40/60wt%比較重合体(C1)
温度計、還流冷却管、攪拌機を備えた容量2.5LのSUS316製セパラブルフラスコに純水118.0gと、モール塩0.0137gを仕込み、攪拌下90℃に昇温した後、IPN50の40%水溶液200.0g、80%AA150.0g、48%NaOH6.9g、15%NaPS34.0g、35%SBS29.2gをそれぞれ別の滴下口より滴下した。
それぞれの滴下時間は、IPN50の40%水溶液が150分間、80%AAが180分間、48%NaOHが180分間、15%NaPSが190分間、そして35%SBSが170分間とした。なお、滴下開始はすべて同時とした。
80%AA滴下終了までの間、温度は90℃を維持した。さらに同温度を80%AA滴下終了後30分間にわたって維持して熟成を行い、重合を完結した。
重合の完結後、反応溶液を放冷してから、48%NaOH111.1gを加えて中和した。
このようにして、固形分濃度40重量%、最終中和度85mol%の比較重合体(C1)を得た。
【0192】
〔評価〕
得られた重合体(1)、(2)、(5)、(6)、比較重合体(C1)について、重量平均分子量、再汚染防止能、クレイ分散能の評価を行った。
【0193】
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定値である。
測定装置:昭和電工製「Shodex SYSTEM−21」

カラム:昭和電工製「Asahipak GF−710 HQ」および「Asahipak GF−310 HQ」をこの順で接続したもの
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=7/3(体積比)
流速:0.5mL/分
温度:40℃
検量線:ポリアクリル酸標準サンプル(創和科学株式会社製)を用いて作成
検出器:RI、UV(検出波長:210nm)
【0194】
<再汚染防止能>
(i)Test fabric社より入手したポリエステル布を5cm×5cmに切断し、白布を作製した。この白布を予め日本電色工業社製の測色色差計SE2000型を用いて、白色度を反射率にて測定した。
(ii)塩化カルシウム2水和物4.41gに純水を加えて15kgとし、硬水を調製した。
(iii)ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム3.2g、ポリオキシエチレン(7)ラウリルエーテル0.4g、ホウ酸ナトリウム0.4g、クエン酸1.0gに、純水を加えて、100.0gとし、界面活性剤水溶液を調製した。pHは、水酸化ナトリウムで8.5に調整した。
(iv)ターゴットメーターを25℃にセットし、硬水1Lと界面活性剤水溶液5g、固形分換算で2%の重合体水溶液1g、カーボンブラック0.25gをポットに入れ、100rpmで1分間撹拌した。その後、白布10枚を入れ、100rpmで10分間撹拌した。
(v)手で白布の水を切り、25℃にした水道水1Lをポットに入れ、100rpmで2分間撹拌した。これを2回行った。
(vi)白布に当て布をして、アイロンでしわを伸ばしながら乾燥させた後、上記測色色差計にて再度、白布の白度を反射率にて測定した。
(vii)以上の測定結果から、下式により再汚染防止能を求めた。
(viii)再汚染防止能(%)=〔(洗浄後の白色度)/(原白布の白色度)〕×100
【0195】
<クレイ分散能>
(i)グリシン67.56g、塩化ナトリウム52.60g、48%水酸化ナトリウム水溶液5.00gに、純水を加えて、600gとし、グリシン緩衝溶液を調製した。
(ii)塩化カルシウム2水和物0.3278g、(i)で調製したグリシン緩衝溶液60gに、純水を加えて、1000gとし、分散液を調製した。また、固形分換算で0.1%の重合体水溶液を調製した。
(iii)約30ccの一般的な実験用試験管に、JIS試験用粉体I、8種(関東ローム、微粒、日本粉体工業技術協会)のクレイ0.15gを入れ、(ii)で調製した分散液27gと、0.1%の重合体水溶液3gを添加した。このとき、試験管のカルシウム濃度は、炭酸カルシウム換算で200ppmとなる。
(iv)試験管をゴムキャップで密封した後、クレイが全体に分散するように軽く振り、さらに上下に20回反転させた。ゴムキャップを外してから試験管を直射日光の当たらない所に20時間静置した後、分散液の上澄みをホールピペットで5ml採取した。
(v)この採取液の1cmセルにおける吸光度(ABS)を、UV分光光度計(波長380nm)で測定し、この値をクレイ分散能とした。
【0196】
評価結果を表1に示した。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明のポリアルキレングリコール系化合物は、重合することで、水系用途において高い性能を発揮できるポリアルキレングリコール系重合体とすることができる。このようなポリアルキレングリコール系重合体は、耐硬水性、汚れやクレイ(Clay)の分散性、界面活性剤との相互作用などが高い。したがって、分散剤、洗剤用ビルダー、洗剤組成物、洗浄剤、水処理剤に用いた場合に特に優れた性能を発揮できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に、末端二重結合と、式(1)で表される構造部分とを有する、ポリアルキレングリコール系化合物。
【化1】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基であり、Xは−CH−または単結合であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦300である。)
【請求項2】
式(2)で表される構造を有する、請求項1に記載のポリアルキレングリコール系化合物。
【化2】

(式(2)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基であり、Xは−CH−または単結合であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦300である。)
【請求項3】
式(3)で表される構造を有する、請求項1に記載のポリアルキレングリコール系化合物。
【化3】

(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基であり、Xは−CH−または単結合であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦300である。)
【請求項4】
式(4)で表される構造を有する、請求項1に記載のポリアルキレングリコール系化合物。
【化4】

(式(4)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子またはメチル基であり、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基であり、Xは−CH−または単結合であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦300である。)
【請求項5】
イソプレノールまたはメタリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物をアリルグリシジルエーテルに付加する工程(I)と、工程(I)で得られる化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する工程(II)とを有する、請求項2に記載のポリアルキレングリコール系化合物の製造方法。
【請求項6】
アリルアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物をメタリルクロライドに付加する工程(III)と、工程(III)で得られる化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する工程(IV)とを有する、請求項3に記載のポリアルキレングリコール系化合物の製造方法。
【請求項7】
式(5)で表される構造を有する化合物に亜硫酸水素塩、亜硫酸塩、および二亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を付加する工程(V)と、工程(V)で得られる化合物に、エポキシ基、ハロゲン基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基から選ばれる少なくとも1種と末端二重結合とを有する化合物を反応させる工程(VI)とを有する、請求項2から4までのいずれかに記載のポリアルキレングリコール系化合物の製造方法。
【化5】

(式(5)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Yは2価のアルキレン基または単結合であり、AOで表されるオキシアルキレン基はそれぞれ同一でも異なっていても良く、Aは炭素数2〜18のアルキレン基を表し、nはAOで表されるオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦300である。)
【請求項8】
請求項1に記載のポリアルキレングリコール系化合物と他の単量体を重合して得られる、ポリアルキレングリコール系重合体。
【請求項9】
前記他の単量体が、不飽和カルボン酸系単量体を含む、請求項8に記載のポリアルキレングリコール系重合体。
【請求項10】
式(1)で表される構造部分を有する、ポリアルキレングリコール系重合体。
【化6】

(式(1)中、Rは水素原子またはメチル基であり、Mは水素原子、金属原子、アンモニウム基、または有機アンモニウム基であり、Xは−CH−または単結合であり、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1≦n≦300である。)
【請求項11】
カルボキシル基を有する、請求項10に記載のポリアルキレングリコール系重合体。
【請求項12】
請求項8から11までのいずれかに記載のポリアルキレングリコール系重合体を含む、分散剤。
【請求項13】
請求項8から11までのいずれかに記載のポリアルキレングリコール系重合体を含む、洗剤用ビルダー。
【請求項14】
請求項8から11までのいずれかに記載のポリアルキレングリコール系重合体を含む、洗剤組成物。
【請求項15】
請求項8から11までのいずれかに記載のポリアルキレングリコール系重合体を製造する方法であって、過硫酸塩および亜硫酸塩の存在下で重合を行う、ポリアルキレングリコール系重合体の製造方法。

【公開番号】特開2008−303347(P2008−303347A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153693(P2007−153693)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】