説明

ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】クローズドモールド成形法によってポリウレタンフォームを製造する際に、ポリウレタンフォームの厚みを薄くしてもセル荒れの無い良好なフォーム状態を得ることができるポリウレタンフォームの製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】閉型したモールド11内に、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤、発泡剤、触媒及び整泡剤を含むポリウレタンフォーム原料Pを注入し、発泡させた後にモールド11を開いてポリウレタンフォームを脱型するポリウレタンフォームの製造方法において、鎖延長剤がトリレンジアミンと第3級アミノアルコールの両方からなり、触媒が3級アミン触媒からなり、ポリイソシアネートが変性MDIからなり、ポリウレタンフォーム原料Pの注入後、脱型前に閉型状態のモールド11を0.5〜5秒間開く途中開放を行ない、その後は脱型まで閉型するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールド成形法によりポリウレタンフォームを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォーム原料をモールド(成形型)に注入し、閉型状態のモールド内で発泡させた後にモールドを開いて成形品を脱型するモールド成形法は、モールドの内面形状に賦形されたポリウレタンフォームが得られるため、種々の分野で用いられている。
【0003】
モールド成形法には、クローズドモールド成形法とオープンモールド成形法がある。クローズドモールド成形法は、モールドに原料注入ヘッドを固定し、モールドを閉じた状態でモールド内にポリウレタンフォーム原料を注入して発泡させる成形法である。一方、オープンモールド成形法は、開いた状態のモールド内にポリウレタンフォーム原料を注入し、その後モールドを閉じて発泡させる方法である。オープンドモールド成形法では、モールド内に注入したポリウレタンフォーム原料の発泡が速く始まると、モールドを閉じる作業が間に合わなくなるため、ポリウレタンフォームの反応速度が比較的遅くなるように、ポリウレタンフォーム原料の配合やモールド温度等を調整する必要があり、成形サイクルに劣っている。それに対し、クローズドモールド成形法では、モールドを閉じた状態でポリウレタンフォーム原料をモールド内に注入し、ポリウレタンフォーム原料注入後にモールドを閉じる必要がないため、ポリウレタンフォーム原料の反応速度をオープンモールド成形法よりも速くすることができ、成形サイクルを高めることができる利点があることなどから、自動車部品等に用いられるポリウレタンフォームの製造方法として多用されている。
【0004】
また、モールド成形法においては、ポリウレタンフォームの用途等に応じて、予めモールドに表皮やインサートをセットし、ポリウレタンフォーム原料の発泡によって形成されるポリウレタンフォームを表皮及びインサートと一体に成形することが行われている。
【0005】
ところで、自動車部品は自動車の燃費向上等のために軽量化が求められ、さらに車両用内装部品においては車内空間の拡大が求められている。そのため、自動車部品に用いられるポリウレタンフォームにおいては薄肉化によって軽量化や車内空間の拡大を実現させようとしている。
【0006】
しかし、クローズドモールド成形法において、ポリウレタンフォームを薄肉にすると、ポリウレタンフォームにセル荒れが発生して硬度にバラツキを生じやすくなる問題が発生する。セル荒れは、ポリウレタンフォーム原料の発泡中にセル(気孔)が正しく形成されず、発泡方向(発泡時の上下方向)に対してセルが横長にずれたりして、セル形状が不均一になる状態をいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−162866号公報
【特許文献2】特開2001−354746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、クローズドモールド成形法によって薄肉のポリウレタンフォームを製造する際に、セル荒れの無い良好なフォーム状態のポリウレタンフォームを得ることができる製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、閉型したモールド内に、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤、発泡剤、触媒及び整泡剤を含むポリウレタンフォーム原料を注入し、発泡させた後に前記モールドを開いてポリウレタンフォームを脱型するポリウレタンフォームの製造方法において、前記鎖延長剤がトリレンジアミンと第3級アミノアルコールの両方からなり、前記触媒が3級アミン触媒からなり、前記ポリイソシアネートが変性MDIからなり、前記ポリウレタンフォーム原料の注入後、前記脱型前に、かつ前記ポリウレタンフォーム原料のライズタイムを基準として−5秒〜+20秒の時点で閉型状態のモールドを0.5〜5秒間開く途中開放を行なってその後は前記脱型まで閉型することを特徴とする。本発明において「ライズタイム」とは、ポリウレタンフォーム原料を、モールド注入時の液温にして混合撹拌した時(すなわち注入装置から吐出した時)から、ポリウレタンフォーム原料が発泡開始して最高の高さに達した時(すなわち発泡が終了した時)までの時間をいう。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリウレタンフォーム原料の鎖延長剤をトリレンジアミンと第3級アミノアルコール両方とし、触媒を3級アミン触媒とし、ポリイソシアネートを変性MDIとし、ポリウレタンフォーム原料の注入後、脱型前に、かつ前記ポリウレタンフォーム原料のライズタイムを基準として−5秒〜+20秒の時点で閉型状態のモールドを0.5〜5秒間開く途中開放を行なってその後は脱型まで閉型することにより、ポリウレタンフォームの厚みを薄くしても、セル荒れが無く、良好なフォーム状態のポリウレタンフォームを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係るポリウレタンフォームの製造工程における途中開放終了までを示す図である。
【図2】同実施例におけるポリウレタンフォームの製造工程をおける途中開放以降を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のポリウレタンフォームの製造方法について説明する。本発明のポリウレタンフォームの製造方法は、クローズドモールド成形法を用いるものであり、原料注入工程と、途中開放工程と、再閉型工程と、脱型工程とにより行われる。
【0013】
原料注入工程では、図1の(A)図のように、閉型したモールド11内に原料注入装置のヘッド51からポリウレタンフォーム原料Pを注入する。図示の例では、前記モールド11は自動車のインストルメントパネル用のものであり、下型13と上型15とよりなり、閉型時における下型13の型面(内面)と前記上型15の型面(内面)間がキャビティ(成形空間)19を構成する。前記キャビティ19は成形品(図示の例ではインストルメントパネル)に合わせた形状となっている。また、前記上型15には、原料注入装置のヘッド51が装入されるヘッド装入孔16が形成されている。前記ヘッド装入孔16は、前記キャビティ19内に通じている。
【0014】
前記下型13の型面には、成形品の外面を構成する表皮21が必要に応じて予め配置される。前記表皮21は、ポリウレタンフォームが含浸しない材質、例えばプラスチックシート、あるいはファブリックの裏面にプラスチックフィルム等が積層されたもの等からなる。なお、前記表皮21は成形品によっては型面に配置されず、ポリウレタンフォームの製造後にポリウレタンフォームの表面に設けられる場合などがある。ポリウレタンフォームの厚みは、適宜の値に設定される。本発明ではポリウレタンフォームは、最薄部の厚みが4mmであっても、セル荒れを防ぐことができる。
【0015】
前記上型15の型面には、金属又はプラスチックからなるインサート23が必要に応じて予めセットされる。前記インサート23は、成形品の形状保持あるいは強度増大等のために、成形品の裏面側に設けられる。前記上型15の型面へのインサート23の保持は、クリップ(図示せず)等の係止部品によって行われる。なお、前記インサート23は成形品によっては不要となる場合がある。
【0016】
前記モールド11において前記表皮21と前記インサート23の間隔、すなわちポリウレタンフォームの厚みは、適宜に設定されるが、一例として最大(最も厚い)部位で7mm、最小(最も薄い)部位で4mmの場合を挙げる。
【0017】
前記原料注入装置はポリウレタンフォーム原料の注入装置として公知のものが用いられ、前記原料注入装置によりポリウレタンフォーム原料Pが前記表皮21とインサート23間に注入される。また、ポリウレタンフォーム原料Pの注入量は、成形品の大きさ等によって異なり、発泡によってモールド11のキャビティ19内に充満可能な量に設定される。
【0018】
ポリウレタンフォーム原料Pは、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤、発泡剤、触媒及び整泡剤を含むものである。
ポリオールとしては、ポリウレタンフォームに用いられる公知のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールの何れか一つが単独で又は二以上混合して用いられる。
【0019】
ポリエーテルポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、シュークロース等の多価アルコール、またはその多価アルコールにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したポリエーテルポリオールを挙げることができる。また、ポリエステルポリオールとしては、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等の脂肪族カルボン酸やフタル酸等の芳香族カルボン酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等の脂肪族グリコール等とから重縮合して得られたポリエステルポリオールを挙げることできる。ポリエーテルエステルポリオールとしては、前記ポリエーテルポリオールと多塩基酸を反応させてポリエステル化したもの、あるいは1分子内にポリーエーテルとポリエステルの両セグメントを有するものを挙げることができる。
【0020】
ポリイソシアネートとしては、変性MDIが用いられる。変性MDIには、モノメリックMDIの変性体とポリメリックMDIの変性体とがあり、何れか一方を単独で用いてもよく、また両方を併用してもよい。モノメリックMDIはジフェニルメタンジイソシアネートであり、ピュアMDIとも称される。一方、ポリメリックMDIは、ジフェニルメタンジイソシアネート(モノクリックMDI)とポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの混合物であり、クルードMDIとも称される。また、モノメリックMDIの変性体及びポリメリックMDIの変性体としては、ウレタン変性物、カルボジイミド変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物、アロファネート変性物等が挙げられるが、特にウレタン変性したMDIとカルボジイミド変性したMDIが好ましい。ポリイソシアネートとして、変性MDI、特にはウレタン変性したMDI、カルボジイミド変性したMDIを用いることにより、ポリウレタンフォームの分子鎖が回転し易い分子構造となり、ポリウレタンフォームの脆さを改善することができ、柔軟性を付与することができるため、ポリウレタンフォームを薄肉化した場合に、脆くなるのを防いで脱型を容易にすると共に、表面のソフト感を向上させることができる。ポリウレタンフォーム原料におけるポリイソシアネートの含有量は、イソシアネートインデックスが100〜110となるように調整される。イソシアネートインデックスが100より低い場合には低硬度となり、一方、110より高い場合には高硬度となる。
【0021】
鎖延長剤としては、トリレンジアミン(TDA)と第3級アミノアルコールの両方が用いられる。トリレンジアミンと第3級アミノアルコールの両方を鎖延長剤として用いることにより、薄肉のポリウレタンフォームをクローズドモールド成形法によって製造しても、セル荒れを防ぐことができ、フォーム状態を良好にすることができる。ポリウレタンフォーム原料における鎖延長剤の含有量は、ポリオールを100質量部とした場合に、0.5〜4.0質量部が好ましく、より好ましくは2.0〜3.0質量部である。鎖延長剤を前記範囲とすることにより、効果的にポリウレタンフォームのセル荒れを防ぐことができる。なお、鎖延長剤がトリレンジアミンのみの場合には高硬度となり、一方第3級アミノアルコールのみの場合には低硬度となる。
【0022】
発泡剤としては、水、炭化水素、ハロゲン系化合物等が用いられ、これらの中から1種類でもよく、又2種類以上を用いてもよい。前記炭化水素としては、シクロペンタン、イソペンタン、ノルマルペンタン等を挙げることができる。また、前記ハロゲン系化合物としては、塩化メチレン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ノナフルオロブチルメチルエーテル、ノナフルオロブチルエチルエーテル、ペンタフルオロエチルメチルエーテル、ヘプタフルオロイソプロピルメチルエーテル等を挙げることができる。これらの中でも発泡剤としては水が特に好適である。水は、イオン交換水、水道水、蒸留水等の何れでもよい。ポリウレタンフォーム原料中における発泡剤の含有量は、ポリオールを100質量部とした場合、1.5〜3.0質量部が好ましく、より好ましくは2.5〜3.0質量部である。発泡剤の量を前記範囲とすることにより、良好なセルを形成することができる。
【0023】
触媒としては、3級アミン触媒のみが用いられる。通常、ポリウレタンフォームには、アミン系触媒、金属触媒(有機金属化合物系触媒)が用いられるが、本発明ではアミン系触媒の中でも3級アミン触媒のみが用いられる。3級アミン触媒としては、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルジプロパノールアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン等を挙げることができ、それらが単独で用いられ、あるいは2種類以上併用される。ポリウレタンフォーム原料における触媒の含有量は、ポリオールを100質量部とした場合に、0.1〜1.0質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜0.5質量部である。触媒を前記範囲とすることにより、効果的にセル荒れを防ぐことができる。
【0024】
整泡剤としては、ジメチルシロキサン系化合物、ポリエーテルジメチルシロキサン系化合物、フェニルメチルシロキサン系化合物等が用いられる。ポリウレタンフォーム原料における整泡剤の含有量は、ポリオールを100質量部とした場合に、0.1〜1.0質量部が好ましく、より好ましくは0.2〜0.5質量部である。整泡剤を前記範囲とすることにより、効果的にセル荒れを防ぐことができる。
【0025】
前記ポリウレタンフォーム原料には、その他、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、難燃剤、安定剤、着色剤等を含有させてもよい。
【0026】
途中開放工程では、図1の(B)及び(C)に示すように、前記ポリウレタンフォーム原料Pをモールド11内へ注入後、脱型前に閉型状態の前記モールド11を開く、途中開放を行なう。途中開放は、開放状態を維持する時間(途中開放維持時間)が0.5〜5秒の間で設定される。前記途中開放によって、それまでポリウレタンフォーム原料の発泡によりモールド11内に蓄積されてきた発泡圧力が大気圧下に開放され、ポリウレタンフォームのセル荒れを抑えることができる。前記途中開放維持時間は、短すぎると途中開放による効果が少なく、一方、前記途中開放維持時間が長すぎると、キャビティ形状のポリウレタンフォームを得られなくなる場合がある。前記途中開放は、図示の例では前記上型15を下型13の上方へ所定量離して前記下型13と上型15間の密封を解除することにより行われる。なお、前記途中開放は、前記モールド11内の密封が解除されて、前記モールド内の発泡圧力が大気圧下に開放できればよいため、少なくとも前記下型13と上型15間にモールド11の内外を通じる隙間を生じる程度の開放でよく、必ずしも前記下型13の上方を完全に開放する必要はない。
【0027】
前記途中開放時点は、前記ポリウレタンフォーム原料Pのライズタイムを基準として−5秒〜+20秒の間で、より好ましくは−3秒〜+20秒の間で、設定される。前記途中開放時点とすることにより、モールド11内の発泡圧力が充分高くなった時点でモールド内の発泡圧力を開放することができ、途中開放の終了から脱型までの閉型状態の間にモールド内の発泡圧力が極端に高くなるのを抑えることができると共に、ポリウレタンフォームの硬化が充分に進行していない時点でモールド内の発泡圧力開放を行うことができるため、セル荒れ防止効果を一層高めることができる。
【0028】
再閉型工程では、図2の(D)に示すように、前記途中開放工程の終了後脱型工程まで、前記モールド11が閉型される。この再閉型によって前記ポリウレタンフォーム原料Pから形成されたポリウレタンフォーム25がモールド11内で充分硬化し、前記モールド11のキャビティ形状に正しく賦形される。なお、図示の例では、前記ポリウレタンフォーム25は、ポリウレタンフォームの発泡時に生じる接着性により前記表皮21及びインサート23と接着一体化し、前記表皮21及びインサート23と共にポリウレタンフォーム積層体30を構成している。
【0029】
脱型工程では、図2の(E)及び(F)に示すように、前記モールド11を開き、ポリウレタンフォーム25(すなわちポリウレタンフォーム成形体30)をモールド11から取り出す。このようにして製造されたポリウレタンフォーム25は、厚みを薄く(例えば4mm程度に薄く)しても、セル荒れの無い良好なフォーム状態になっている。また、図示の例のポリウレタンフォーム積層体30は自動車のインストルメントパネルに用いられるものである。
【実施例】
【0030】
以下の原料から、表1に示すポリウレタンフォーム原料A〜Eを調製した。なお、表1の各原料における数字は質量部を表す。ポリウレタンフォーム原料A及びBは、鎖延長剤としてトリレンジアミン(TDA)と第3級アルコールを併用し、触媒には3級アミン触媒を用い、ポリイソシアネートとして変性MDIを用いた例である。一方、ポリウレタンフォーム原料C〜Eは、鎖延長剤としてジエタノールアミンとエチレンジアミン(EDA)を用い、触媒としてトリエチレンジアミン33%、ジプロピレングリコール66%溶液を用い、ポリイソシアネートとしてポリメリックMDIを用いた例である。
【0031】
・ポリオールA
プロピレングリコールを出発物質とする分子量3850、水酸基価29mgKOH/g、PO/EO含量=82/18のポリエーテルポリオール
・ポリオールB
グリセリンを出発物質とする分子量4800、水酸基価35mgKOH/g、PO/EO含量=85/15のポリエーテルポリオール、
・ポリオールC
アクリルニトリルを重合させた重合体ポリオールであり、重合体含量21wt%、水酸基価28mgKOH/gからなるポリマーポリオール
・鎖延長剤D
ジエタノールアミン
・鎖延長剤E
エチレンジアミン(EDA)、分子量295、水酸基価770mgKOH/g、PO/EO含量=100/0。
・鎖延長剤F
トリレンジアミン(TDA)、分子量530、水酸基価400mgKOH/g、PO/EO含量=72/28。
・鎖延長剤G
第3級アミノアルコール、水酸基価220mgKOH/g。
・触媒H
トリエチレンジアミン33%、ジプロピレングリコール66%溶液、商品名「ダプコ33LV」、三共エアープロダクト社製。
・触媒I
ビス−(ジメチルアミノエチル)エーテル、商品名「カオーライザーNo.12P」、花王社製。
・発泡剤J

・ポリイソシアネートK
ポリメリックMDI、商品名:ルプラネートM−20S、BASF社製。
・ポリイソシアネートL
ポリメリックMDIを平均官能基数4で平均分子量550のポリオールとウレタン変成したポリイソシアネート、NCO%=28.5%
・ポリイソシアネートM
カルボジイミド変成イソシアネート、NCO%=29.5%、商品名:ルプラネートMM−103、BASF社製。
【0032】
【表1】

【0033】
ポリウレタンフォーム原料A〜Eを高圧式のポリウレタンフォーム原料注入装置(機種名PU−30、ポリマーエンジニアリング社製)を用いて吐出し、クリームタイム、ライズタイムを測定した。クリームタイムは、ポリウレタンフォーム原料を、モールド注入時の液温にして混合撹拌した時(すなわち注入装置から吐出した時)から、ポリウレタンフォーム原料がクリーム状に白濁し、立ち上がってくるまでの時間である。ポリウレタンフォーム原料の液温は30℃、吐出量100〜300g/秒、混合圧力12〜15MPaに設定した。クリームタイム及びライズタイムの測定結果を表1の下部に示す。
【0034】
また、ポリウレタンフォーム原料A〜Eを用いて薄肉のポリウレタンフォームを製造した場合のセル荒れ等を判断するために、高圧式のポリウレタンフォーム原料注入装置(機種名PU−30、ポリマーエンジニアリング社製)によりポリウレタンフォーム原料A〜Eをモールド内に注入し、実施例及び比較例のポリウレタンフォーム(表皮及びインサートの無い平板状のもの)を製造した。
【0035】
モールドはクローズドタイプであり、上型の下面に下型内に突出した段部を有し、ポリウレタンフォームの発泡圧で上型が上昇した際に上型の上昇上限位置を調整するストッパーがモールドに設けられ、上型の上昇がストッパーで阻止された際における上型の段部下面と下型のキャビティ底面間の距離がキャビティの高さ(ポリウレタンフォームの厚み)となるように構成されている。モールドの原料注入位置は、キャビティ長さ方向の一端に設定されている。モールドのキャビティ(成形空間)形状は、300mm×1000mm×高さ4〜10mmであって高さが可変の直方体形状からなる。
【0036】
実施例及び比較例では、モールドのキャビティの高さ(深さ)を7mmと4mmに設定して、各高さについて途中開放時点及び途中開放維持時間を変化させて、高さ7mmと4mmの2種類のポリウレタンフォームを製造し、その際の発泡圧力を測定した。ポリウレタンフォーム原料A〜Eは、液温30℃、混合圧力15MPa、吐出量150g/秒とし、キャビティの高さが7cmの場合には2.5秒間モールドに注入し、一方、キャビティの高さが4cmの場合には1.5秒間モールドに注入した。また、モールドの途中開放は、完全に閉型した状態から上型を1.5−2.0cm上昇させて、下型と上型のシール面を離すことにより行った。途中開放終了後は、直ちに上型を下降させて上型と下型を完全に閉型した。
【0037】
測定する発泡圧力はポリウレタンフォーム成形時における最大モールド内圧力であり、圧力センサーにより測定した。また、実施例B2とB4については、ポリウレタンフォーム成形時に発生するガス量を測定した。ガス量の測定は、モールドの原料注入側とは反対側にガス流量センサーを設置し、ポリウレタンフォーム原料のモールド内への注入と同時に測定を開始し、脱型までのガス量を測定することにより行った。ガス量は、厚み7mmの実施例B2では1.45L(リッター)であり、厚み4mmの実施例B4では1.26L(リッター)であった。なお、途中開放時にモールドの上型と下型間からモールド外へ漏れるガス量については測定していない。
【0038】
このようにして製造されたポリウレタンフォームに対して密度(JIS K 7222準拠)、アスカーC硬度、ボイドの有無、セル荒れ有無を測定及び判断すると共に、50%圧縮硬度(JIS K 6400-2)についても測定し、さらに顕微鏡撮影によりポリウレタンフォームのセルを撮影して平均セル径を測定した。ボイドの有無は、ポリウレタンフォームの表面に対してボイド(不規則な穴)の有無を目視で判断し、ボイドが無い場合を○、ボイドが有る場合を×、小さいボイドが少々有る場合を△とした。セル荒れ有無は、ポリウレタンフォームを原料の流れ方向と平行に切断して、その断面に対してセル荒れの有無を目視で判断し、モールドの原料注入側端部から反対の端部までセル荒れが無い場合は○、セル荒れが有る場合は×、小さなセル荒れが少々有る場合または原料注入側端部の反対の端部のみに小さなセル荒れがある場合を△とした。顕微鏡撮影は、ポリウレタンフォームの上面(上型の型面と当接して形成された面)と、中央面(上下中間位置を上下面と平行に切断した面)と、下面(下型のキャビティ底面と当接して形成された面)についてそれぞれ撮影し、各面ごとに1辺2mmの正方形部分に含まれるセルの径を測定して平均した値を各面のセル径とし、得られた各面のセル径を用いて全体の平均セル径を算出した。測定結果及びセル荒れの判断等は表2〜表6に示す通りである。
【0039】
【表2】

【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】
【表6】

【0044】
表2〜表6の測定結果及び判断結果から明らかなように、実施例のポリウレタンフォームは厚みが4mmの薄いものであってもセル荒れの無い、良好なフォーム状態であったのに対し、比較例のポリウレタンフォームは厚みが7mmと4mmの何れについてもセル荒れがあり、フォーム状態が不良であった。
【0045】
なお、本発明によって製造されるポリウレタンフォームはインストルメントパネル用のものに限られず、他の用途のものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
11 モールド
13 下型
15 上型
25 ポリウレタンフォーム
51 原料注入装置のヘッド
P ポリウレタンフォーム原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉型したモールド内に、ポリオール、ポリイソシアネート、鎖延長剤、発泡剤、触媒及び整泡剤を含むポリウレタンフォーム原料を注入し、発泡させた後に前記モールドを開いてポリウレタンフォームを脱型するポリウレタンフォームの製造方法において、
前記鎖延長剤がトリレンジアミンと第3級アミノアルコールの両方からなり、前記触媒が3級アミン触媒からなり、前記ポリイソシアネートが変性MDIからなり、
前記ポリウレタンフォーム原料の注入後、前記脱型前に、かつ前記ポリウレタンフォーム原料のライズタイムを基準として−5秒〜+20秒の時点で閉型状態のモールドを0.5〜5秒間開く途中開放を行なってその後は前記脱型まで閉型することを特徴とするポリウレタンフォームの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−46038(P2011−46038A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195081(P2009−195081)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000113517)BASF INOACポリウレタン株式会社 (9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】