説明

ポリウレタンフォームローラ、トナー供給ローラ及び電子写真装置

【課題】製造に際し反応性が良好で、ローラ物性も良好な、アミン系触媒の汚染が低減されたポリウレタンローラを提供する。
【解決手段】芯金上にポリウレタンフォームをローラ状に形成したポリウレタンフォームローラにおいて、該ポリウレタンフォーム原料が少なくともポリオール、ポリイソシアネート、アミン系触媒、整泡剤及び水酸基を有する塩基性化合物水溶液からなり、該アミン系触媒の使用量が、全原料組成に対し、0.005質量%以上0.4質量%以下であることを特徴とするポリウレタンフォームローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタンフォームローラ、特に、複写装置、プリンター、ファクシミリ等の画像形成装置(含む電子写真装置)において使用されるポリウレタンフォームローラに関し、さらに、該ポリウレタンローラからなるトナー供給ローラおよび該トナー供給ローラが組み込まれた電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術の進歩に伴い、乾式電子写真装置等の画像形成装置には、帯電用、現像用、転写用、トナー供給用などに供される部品の部材として、ポリウレタンフォーム製の部材が注目されており、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、トナー供給ローラなどの弾性ローラ等の形態で用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、ポリウレタンフォームを弾性層とする部材、例えば、ローラ等において、該ポリウレタンフォーム部分は、通常、ポリオールおよびポリイソシアナートを必要により各種添加剤、発泡助剤等と共に混合して発泡硬化することにより製造される。
【0004】
ポリウレタンフォーム製造に際して使用される発泡剤は、従来、フロン類が使用されていたが、地球温暖化等の問題からその使用が規制されるようになり、フロン類を使用しないポリウレタンフォームの製造に移っている。
【0005】
そのような製造方法として、ポリオール、ポリイソシアネートと共に水を使用することが提唱され、実用化されるに至っている。
【0006】
このようなポリウレタンフォーム製造に際し使用する触媒として、トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン等のアミン系触媒やオクチル酸錫、オレイン酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−N−ブトキシチタン、テトラキス(2−エチルヘキシルオキシ)チタン等の有機金属系触媒が知られている。
【0007】
これら触媒の中で、アミン系触媒は水との相性が良い、有機金属系触媒に比べてアミン系触媒は毒性やプレミックス時のライフタイムが長いといった長所を有する。その反面、アミン系触媒は、使用量が多く必要であり、ウレタンフォーム中に残存する量が多い。そのため、ウレタンフォーム中に残存するアミン系触媒は徐々に揮発する。したがって、従来の発泡剤として水を使用したウレタンフォームを、電子写真用部材として用いた場合、他部品やトナーなどを汚染し、画像を悪化させる原因物質となる。
【0008】
また、導電性のポリウレタン層が表面に形成された電子写真装置用導電性ローラにおいて、該ポリウレタン層に金属水酸化物を添加したものが知られている(特許文献2参照)。
【0009】
しかしながら、該金属水酸化物は難燃剤として用いられており、該金属水酸化物は水酸化マグネシウムまたは水酸化アルミニウムが好ましく、水酸化マグネシウムを使用するのが最も好ましいとされている。水酸化マグネシウムは5phrないし50phr、特に10phrないし30phrの配合が物性、難燃性の点で好ましく、金属水酸化物の配合量がこの範囲よりも少ない場合は十分な難燃性が得られないと述べられている。
【0010】
更に、金属水酸化物は、水を発泡剤とする化学発泡のポリウレタンフォームでの触媒としての効果は記載されておらず、不明である。また、化学発泡において、金属水酸化物として水酸化ナトリウムや水酸化カリウムのような強塩基を用いた場合、発泡反応が急速に起き5phr以上添加することは困難である。
【0011】
水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムは水に難溶であることが知られている(非特許文献1)。
【0012】
更に、弾性層と、該弾性層の外側に形成された被覆層とを具備し、上記被覆層が、(A)ウレタン樹脂と、(B)アルミニウム、亜鉛、マグネシウム、及びカルシウムから選ばれた金属の酸化物或いは水酸化物とを含有してなることを特徴とする中間転写部材が知られている(特許文献3参照)。特許文献3ではアルミニウム、亜鉛、マグネシウム及びカルシウムから選ばれた金属の酸化物或いは水酸化物を含有させることによりオゾンや窒素酸化物に対する耐久性が効果的に向上するとされている。アルミニウム、亜鉛の酸化物、水酸化物は水に難溶であるが、酸性、塩基性の両方を示す両性である。その他の金属酸化物または水酸化物は水への溶解性は低い(非特許文献1)。さらに、特許文献2同様、特許文献3に挙げられている金属水酸化物も、水を発泡剤とする化学発泡によるポリウレタンフォーム形成に対する作用、効果は検討されておらず、不明である。
【0013】
金属水酸化物をポリウレタン樹脂に添加することは特許文献2および3に記載されている。しかし、トナー供給ローラなどの用途では、均一な反応による均一な物性のローラであることが求められており、上記水酸化物を固体での添加では十分な均一性を達成できず、更なる検討が求められている。
【特許文献1】特開2003−20318号公報
【特許文献2】特許第03296901号公報
【特許文献3】特開2000−019855号公報
【非特許文献1】岩波理化学辞典 第4版 岩波書店
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明は、製造に際し反応性が良好で、ローラ物性も良好な、アミン系触媒の汚染が低減されたポリウレタンローラを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討し、水酸基を有する塩基性化合物を水溶液として用いれば、アミン系触媒の使用量を削減しても、反応性や物性が悪化すること無しに、良好な性能のポリウレタンフォームローラが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明は、芯金上にポリウレタンフォームをローラ状に形成したポリウレタンフォームローラにおいて、該ポリウレタンフォーム原料が少なくともポリオール、ポリイソシアネート、アミン系触媒、整泡剤及び水酸基を有する塩基性化合物水溶液からなり、該アミン系触媒の使用量が、全原料組成に対し、0.005質量%以上0.4質量%以下であることを特徴とするポリウレタンフォームローラである。
【0017】
水酸基を有する塩基性化合物が、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物であることが好ましい。
【0018】
水酸基を有する塩基性化合物が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムまたは水酸化バリウムであることが好ましい。
【0019】
さらに、水酸基を有する塩基性化合物の使用量が、全原料組成に対し、0.005質量%以上0.5質量%以下であることが好ましい。
【0020】
また、本発明は、電子写真装置に用いるトナー供給ローラが、上記ポリウレタンフォームローラであることを特徴とするトナー供給ローラである。
【0021】
さらに、本発明は、トナー供給ローラが、上記トナー供給ローラであることを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明のポリウレタンフォームローラは、少ないアミン系触媒を用いているので、アミン触媒がもたらす物性の悪化が無く、ローラ形状の画像形成装置用部材として良好であり、例えば、帯電用部材、現像用部材、転写用部材、トナー供給用部材あるいはクリーニング用部材として、特に、トナー供給ローラとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のポリウレタンフォームローラは、芯金上にポリウレタンフォームの層が形成されたものであり、さらに、必要により、ポリウレタンフォーム上に各種機能を有する被覆層が設けられたものである。そして、このポリウレタンフォームローラは、帯電用部材、現像用部材、転写用部材、トナー供給用部材、クリーニング用部材等のローラ形状の画像形成装置用部材として用いうるものである。
【0024】
芯金上へのポリウレタンフォーム層の形成は、例えば、次のようにして行われる。
【0025】
まず、ポリオールとポリイソシアネートを主成分とし、少なくとも、水酸基を有する塩基性化合物、水等の発泡剤、ウレタン化反応をコントロールするためのアミン系触媒および発泡セルを安定化させる整泡剤を加えた組成物を混合・撹拌して原料組成物が調製される。
【0026】
次いで、該原料組成物を発泡成形し、得られたポリウレタンフォームをローラ形状に切出し、中心に芯金を圧入して、芯金の周りにポリウレタンフォーム層が形成する。あるいは、予め芯金を配した円筒状成形型内に該原料組成物を注入し、金型内で加熱発泡させて芯金上にポリウレタンフォーム層を形成する。
【0027】
本発明においては、アミン系触媒と併用して、水酸基を有する塩基性化合物を用いることが重要である。これにより、アミン系触媒の使用量を削減しても、ウレタン化反応を十分に促進できるからである。
【0028】
水酸基を有する塩基性化合物は、原料組成物中に均一に分散され、ウレタン化触媒作用を発揮させるには、水溶液として用いられることが必要である。そのような水酸基を有する塩基性化合物として強塩基性化合物は少量の使用で効果があるので好ましい。例えば、強塩基性化合物として、水酸基を有するアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物を上げることができる。なお、弱塩基性化合物でも使用量を増やすことで同様の効果が得られるが、物性が悪化しやすいといった問題が発生する。
【0029】
該塩基性化合物はポリウレタン材料中に均一に分散できるよう予め水溶液として調整して用いる。そして、該塩基性化合物は、上記したように、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物であることが好ましく、容易に水に溶ける水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムまたは水酸化バリウムが好ましい。該塩基性化合物は単独で、また、任意に組み合わせて用いても良い。
【0030】
該塩基性化合物は、全原料組成中0.005質量%以上0.5質量%以下で、好ましくは0.01質量%以上0.3質量%以下で用いる。なお、0.5質量%を超えて用いると圧縮残留歪率などの物性が悪化し、0.005質量%未満であるとアミン系触媒の使用量を十分に低減させることが困難となる。
【0031】
本発明ではアミン系触媒として、ウレタン化触媒として用いられるものであれば特に制限が無く使用できる。例えば、トリエチレンジアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、N−エチルモルホリン、N,N−ジメチルアミノヘキサノール等が好ましいものとして挙げられる。これらアミン系触媒は、単独で、また、任意に組み合わせて用いられても良い。アミン系触媒の使用量は、0.005質量%以上0.4質量%以下であることが好ましい。その使用量が0.4質量%を超えるとポリウレタンフォーム層からのアミン系触媒がブリードし、画像不良の原因となり、0.005質量%未満であるとアミン系触媒としての機能が果たすことが困難となる。
【0032】
本発明で使用するポリオールとして、特に制限は無く、従来公知の各種ポリオールの中から、適宜選択して使用することができる。すなわち、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキシレンアジペート、エチレンアジペートとブチレンアジペートとの共重合体、ダイマー酸系ポリオール、ヒマシ油系ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール等のポリエステルポリオール、ポリオキシアルキレングリコール等のポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール(商品名:三井化学ポリウレタン株式会社製)等が使用可能である。なお、分子量が2000〜10000であるポリオールを単独で、または、混合して用いることが好ましい。すなわち、分子量が2000未満であると架橋密度が高くなりすぎて、得られるポリウレタンフォームの物性が低下する傾向がみられる。また、10000を越えるとポリオール自体の粘度が高く、反応性、作業性が悪くなる傾向がみられる。なお、これらポリオールの内、耐湿熱耐久性に優れたポリウレタンフォームを得ることができるので、ポリエーテルポリオールを用いることが好適である。更に、エチレンオキサイド(EO)を末端に5モル%以上グラフトさせたポリエーテルポリオールは、反応性に優れるので好ましい。また、ポリオールに予めポリイソシアネートを反応させた端末が水酸基であるプレポリマーを用いても差し支えない。
【0033】
ポリマーポリオール(商品名)とは、ポリエーテルポリオール中でエチレン性不飽和単量体(アクリロニトリル、スチレン、メタクリル酸メチル、塩化ビニリデン等)を重合させて変性したものである。このポリマーポリオールをポリオールの一部として使用すると、ポリウレタンフォームの湿熱耐久性を低下させることなく、通気性向上等を図ることができるので好ましい。
【0034】
また、ポリイソシアネートとしても、特に制限は無く、従来公知の各種ポリイソシアネートの中から、適宜選択して使用することができる。ポリイソシアネートとして、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルエンジイソシアネート(TDI)等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート及びその誘導体を併用することもできる。さらに予めポリオールとポリイソシアネートを反応させた端末がイソシアネート基であるプレポリマーを使用しても良い。
【0035】
これらポリイソシアネートとポリオールの配合割合は、特に制限はないが、通常、NCOインデックスで60〜120、好ましくは70〜105になるようにすることが好ましい。
【0036】
本発明では、通常、水を発泡剤として使用する。水はポリイソシアネートと反応してポリウレアを形成すると共に炭酸ガスを発生し、この炭酸ガスが発泡剤となる。水の使用量は、全ポリオール100質量部に対して、0.1〜10質量部が好ましく、さらに好ましくは、0.1〜5質量部である。なお、水と共に、炭化水素(シクロペンタン等)、炭酸ガス、その他の発泡剤を使用しても構わない。
【0037】
本発明では、ポリウレタンフォーム形成において、発泡セルを安定化させるために、整泡剤を使用する。整泡剤として、ポリジメチルシロキサンとEO/PO共重合物からの水溶性ポリエーテルシロキサン、スルホン化リシノール酸のナトリウム塩やこれらとポリシロキサン・ポリオキシアルキレンコポリマーとの混合物等が挙げられる。これらの中で、ポリジメチルシロキサンとEO/PO共重合物からの水溶性ポリエーテルシロキサンが好適である。使用量は全ポリオール100質量部に対して、0.01質量部以上5質量部以下が適当である。0.01質量部未満であると、発泡セルが不均一になりやすく、外観不良が発生しやすい。また、5質量部超であると、染み出しなどの不具合が生じやすくなる。
【0038】
その他助剤として、架橋剤、難燃剤、着色剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、酸化防止剤、導電性付与剤等を必要により使用する。
【0039】
ポリウレタンフォームの製造方法については、特に制限は無く常法によれば良い。その一例を示せば次の通りである。まず、前記のポリオール、ポリイソシアネート、アミン系触媒、整泡剤、水、水酸基を有する塩基性化合物、その他助剤などを均質に混合した後、加熱して反応硬化させることにより、ポリウレタンフォームが得られる。原料を混合する際の温度や時間については特に制限は無いが、混合温度は、通常10〜90℃、好ましくは20〜60℃の範囲であり、混合時間は、通常1秒〜10分間、好ましくは3秒〜1分間程度である。また、加熱して反応硬化させる際、従来公知の方法により、発泡させることにより、ポリウレタンフォームからなる各種部材を作製することができる。
【0040】
本発明のポリウレタンフォームローラは、このようにして得られたポリウレタンフォームをロール形状に切り出し、通常、鉄にメッキを施したものやステンレス鋼などからなる芯金を、挿入することにより製造される。または、芯金を供えた金型内で、上記発泡を行うことよって製造される。
【0041】
なお、用途によっては、原料組成物に導電性付与剤を添加してもよいし、導電性や半導電性、あるいは絶縁性の塗料により、その外側を塗装してもよい。
【0042】
本発明のポリウレタンフォームローラは、その用途については特に制限は無いが、ローラ形状の画像形成装置用部材、例えば、帯電用部材、現像用部材、転写用部材、トナー供給用部材、クリーニング用部材等に使用可能である。特に、トナー供給ローラとして好適である。
【0043】
本発明のポリウレタンフォームローラをトナー供給ローラとする電子写真方式の画像形成装置(電子写真装置)の一例の説明図を図1に示す。
【0044】
露光により静電潜像を表面に形成する感光体1に近接して、該静電潜像をトナー像として現像するトナーを保持した現像ローラ2が設けられている。該現像ローラ2上に感光体1を現像した残りのトナーを掻き取ると共に新規なトナーを供給するトナー供給ローラ3が設けられている。さらに、現像ローラ2にはトナー供給ローラ3により供給されたトナーを均一な厚みとするトナー規制ブレード4が当接している。感光体1上のトナー像は感光体1に対置して設けられた転写ローラ5と感光体1の間に挿入される記録媒体8に転写され、該トナー像が転写された記録媒体8は定着装置(不図示)に送られ、記録媒体8上に画像が固定される。一方、トナー像が転写されたのちの感光体1に微量に残るトナーを掻き取り除去するためのクリーニングブレード6が感光体1に当接している。さらに、その後には感光体1に均一な電荷を与えるための帯電器7(本図では停電ローラ)が当接している。これらは、図1に示す順に配置されており、感光体1、現像ローラ2、トナー供給ローラ3はそれぞれ図1に示す方向で回転し、それぞれの機能を達成している。
【0045】
なお、ここでは、トナー供給ローラが本発明のポリウレタンフォームローラである例を示した。しかし、ポリウレタンフォーム層、その表面等を適宜修飾することにより、現像ローラ、転写ローラ、帯電ローラ、あるいはクリーニングローラ等としても、本発明のポリウレタンフォームローラは使用可能である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明する。しかし、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0047】
以下の実施例、比較例で使用したポリウレタンフォーム原料を示す。
【0048】
1)ポリオール
・アクトコールEP−950(商品名)、三井化学ポリウレタン株式会社製のポリエーテルポリオール、OH価34。
【0049】
2)ポリイソシアネート
・コスモネートTM50(商品名)、三井化学ポリウレタン株式会社製のポリイソシアネート、NCO=39.8%。
【0050】
3)整泡剤
・SRX−274C(商品名)、東レダウコーニング株式会社製のシリコーン整泡剤。
【0051】
4)アミン系触媒
・触媒1:TOYOCAT−ET(商品名)、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、東ソー株式会社製
・触媒2:TOYOCAT−MR(商品名)、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、東ソー株式会社製
【0052】
5)水酸基を有する塩基性化合物
・水酸化ナトリウム:キシダ化学株式会社製、試薬特級
【0053】
実施例1〜4、比較例1〜2
(ポリウレタンフォーム層用原料組成物の調製)
ポリオール100質量部に、水酸基を有する塩基性化合物として水酸化ナトリウムを表1に示す量を水2.5質量部に溶解した水溶液、アミン系触媒を表1に示す量および整泡剤1.0質量部を加え、撹拌混合して、ポリオール成分液を得た。このポリオール成分液およびポリイソシアネート30.4質量部をそれぞれ25℃に調温した。
【0054】
一方、ポリウレタンフォーム層用原料組成物の反応速度の目安であるクリームタイム及びライズタイムを、次のようにして測定した。すなわち、室温(25±3℃)で、内容積500mlのカップにポリオール50gに相当する上記ポリオール成分液を量り採り、これにポリイソシアネートを加え(NCOインデックス85)、5秒間2000〜3500rpmで攪拌した後、混合・撹拌開始から反応混合液がクリーム状に白濁して立ち上がる時間(クリームタイム)および発泡によりフォームが最大高さになるまでの時間(ライズタイム)を測定した。これらの測定値を表1に示した。
【0055】
(ポリウレタンフォームローラの製造)
径6mm、長さ30cmのニッケル化学メッキをした鉄製芯金を配したSUS製円筒状金型内を用意し、50℃に温度調節した。この中に、上記25℃に調温してあるポリオール成分およびポリイソシアネートをそれぞれ秤量して採取し、5秒間混合して注入した。その後、50℃に温めた恒温槽中で20分間発泡硬化させて、外径16mmであるポリウレタンフォームローラを製造した。なお、ポリウレタンフォーム層の長さは22cmで、ポリウレタンフォーム層の密度は0.1g/cm3であった。
【0056】
金型から発泡硬化終了後にポリウレタンフォームローラを取り出す際に、ポリウレタンフォーム層の変形あるいは復元状況を観察し、硬化状態を下記にて評価した。
○:硬化が十分に進み、問題なし。
△:硬化が進んではいるが、やや不足している。
×:十分に硬化していず、取り出す際にポリウレタンフォーム層に歪みが観察された。
【0057】
次いで、得られたポリウレタンフォームローラのポリウレタンフォーム層の圧縮残留歪率(Cs)を、図2に示すようにして測定した。その結果を硬化状態とともに表1に示した。
【0058】
ポリウレタンフォームローラ17のポリウレタンフォーム層11に径16mmの金属製スリーブ14を当接させる。次いで、ポリウレタンフォームローラ17の芯金10の露出部と金属性スリーブ14を両端において、ポリウレタンフォーム層11が1.5mm変位(圧縮)する状態で、固定具15にて保持する。その状態で、40℃、95%RHの下に72時間置いた後、取り出して固定具を取り外し、その30分後にポリウレタンフォーム層の変位の復元度合いを測定し、下記式により圧縮残留歪率(Cs)(%)を算出する。
Cs={(t0−t1)/1.5}×100
式中、t0、t1は、それぞれ、初めの成形品の半径(mm)および試験後の成形品の半径(mm)である。
【0059】
なお、図2(b)の右が金属スリーブ14を当接させた状態の側面図を示し、左が開放後のポリウレタンフォームローラ17の歪の状況を示す側面図であり、歪残存部が16である。
【0060】
得られたポリウレタンフォームローラを、キヤノン株式会社製の電子写真方式の画像形成装置「レーザーショットLBP−1310」(商品名)のプロセスカートリッジのトナー供給ローラとして組み込み、温度40℃、湿度95%の環境下に30日間置き、その後温度25℃、湿度55%の環境下で12時間置いた後、10枚連続でベタ黒画像を出力した。得られたベタ黒画像に表れたアミン系触媒のブリードから来る画像ムラを目視により観察し、下記の基準で評価し、その結果を表1に示した。
○:問題なし
△:最初は画像ムラが見られたが、すぐに画像ムラはなくなり、問題なし。
×:10枚目でも画像ムラが見られた。
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1〜3は、水酸基を有する塩基性化合物を含まない比較例1と同様の良好な反応性及び物性のポリウレタンフォームローラであった。また、実施例4は硬化がやや不十分であった。実施例3は湿熱圧縮永久変形がやや劣るものであった。一方、比較例2は十分に硬化しておらず脱型後形状の変形が見られた。
【0063】
なお、水酸基を有する塩基性化合物は水溶性であればよく、上記実施例1〜4では、水酸化ナトリウムを用いたが、これは一例に過ぎないことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の電子写真装置の一例を示す説明図である。
【図2】圧縮残留歪率を測定する方法の説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 感光体
2 現像ローラ
3 トナー供給ローラ
4 規制ブレード
5 転写ローラ
6 クリーニングブレード
7 帯電ローラ
8 記録媒体
10 芯金
11 ポリウレタンフォーム層
14 金属スリーブ(φ16mm)
15 固定具
16 歪残存部
17 ポリウレタンフォームローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金上にポリウレタンフォームをローラ状に形成したポリウレタンフォームローラにおいて、
該ポリウレタンフォーム原料が少なくともポリオール、ポリイソシアネート、アミン系触媒、整泡剤及び水酸基を有する塩基性化合物水溶液からなり、
該アミン系触媒の使用量が、全原料組成に対し、0.005質量%以上0.4質量%以下であることを特徴とするポリウレタンフォームローラ。
【請求項2】
水酸基を有する塩基性化合物が、アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物であることを特徴とする請求項1記載のポリウレタンフォームローラ。
【請求項3】
水酸基を有する塩基性化合物が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウムまたは水酸化バリウムであることを特徴とする請求項2記載のポリウレタンフォームローラ。
【請求項4】
水酸基を有する塩基性化合物の使用量が、全原料組成に対し、0.005質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のウレタンフォームローラ。
【請求項5】
電子写真装置に用いるトナー供給ローラが、請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリウレタンフォームローラであることを特徴とするトナー供給ローラ。
【請求項6】
トナー供給ローラが、請求項5に記載のトナー供給ローラであることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−20639(P2008−20639A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191971(P2006−191971)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】