説明

ポリウレタンフォーム積層体の製造方法

【課題】フィルム内のシワの発生やエアーの混入を有効に抑制し得るシール性の高いポリウレタンフォーム積層体の製造方法を提供する。
【解決手段】ポリウレタンフォーム積層体の製造方法は、熱可塑性樹脂フィルム7とポリウレタンフォーム6との接合面において、前記熱可塑性樹脂フィルム7の収縮温度から接着温度までを平均昇温速度12℃/秒以下で昇温することによって、前記熱可塑性樹脂フィルム7とポリウレタンフォーム6とを熱融着させる工程を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にトナーシール材として好適なポリウレタンフォーム積層体が得られる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザプリンタや複写機等には、トナーを充填した専用のケースであるトナーカートリッジが具えられており、トナーカートリッジ単体そのものだけでなく、これと感光ドラム・帯電機・クリーナー等の消耗部材とを一体化させたプロセスカートリッジも多く利用されている。これらレーザプリンタや複写機等を用いると、必要に応じてトナーカートリッジやプロセスカートリッジ内の各部材が稼動して、感光ドラム上に静電潜像を形成し、この静電潜像に現像装置によりトナーを付着させ、これを紙等の記録媒体に転写することによって所望の転写体が現像される。
【0003】
ところで、これらトナーカートリッジ等の部材における一連の現像の動作中にトナーが漏出すると、周囲が汚染されたり、印刷品質の劣化を招いたりするおそれがあるため、従来より、トナーのケース本体と蓋体との嵌合部や、ケース本体と現像ローラ等の部材との間等にトナーシール材を介在させることによって、トナー漏出の防止を図っている。
【0004】
このようなトナーシール材に用いられるシール材には、基材としてポリウレタンフォームが好適に用いられるが、ポリウレタンフォーム自体の表面抵抗が比較的大きいためにシール材の剥がれや破壊を引き起こすおそれがある。そのため、ポリウレタンフォームを用いたトナーシール材としては、各部材の回転運動や往復運動、繰り返される着脱等の動作を阻害しないよう、良好な摺動性を兼ね備えることも要求される。摺動性を付与するにはフィルム等をポリウレタンフォームに貼着させるのが望ましいが、フィルム等とポリウレタンフォームとの良好な接着性を確保するために両面テープや接着剤等を介した貼着を余儀なくされているのが現状である。
【0005】
一方、ポリウレタンフォームのような発泡体との接着性を高めるため、例えば、特許文献1には、シート材の表面に予めプラズマ加工を施した後、真空成形することにより発泡ウレタンに貼着させた成形品が開示されており、特許文献2には、プラズマ処理を施したシートまたはフィルムをともに押出成形することにより樹脂発泡体と接着させた発泡積層体が開示されており、いずれもシートやフィルムに予め特定の処理を施すことで発泡体との接着性の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−323889号公報
【特許文献2】特開2000−108250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述のようにポリウレタンフォームとフィルムとを貼合するに際し、両面テープや接着剤等を介すると、フィルム内にシワが発生したりエアーが混入したりしやすいため、シール性が大きく低下するおそれがあり、依然として改善の余地がある。また、上述のような成形品をトナーシール材として用いた場合、シール材の剥がれや破壊を有効に防止しつつ、非常に微小な粉体であるトナーの漏出を充分に抑制し得る程度の高いシール性を確保し得るか否かに関しては、何ら検討されていない。
【0008】
そこで、本発明は、フィルム内のシワの発生やエアーの混入を有効に抑制し得るシール性の高いポリウレタンフォーム積層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく、フィルムとポリウレタンフォームとを熱融着させる際に、昇温速度を制御するポリウレタンフォーム積層体の製造方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明のポリウレタンフォーム積層体の製造方法は、
熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとの接合面において、前記熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度から接着温度までを平均昇温速度12℃/秒以下で昇温することによって、前記熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとを熱融着させる工程を含むことを特徴とする。
【0011】
前記熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度から接着温度までを昇温する時間が、2.5秒以上であるのが望ましい。
また、前記熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとの接合面に、接着層を介在させないのが望ましい。
さらに、前記熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度が、100〜140℃であってもよく、前記熱可塑性樹脂フィルムの接着温度が、120〜160℃であってもよい。ただし、接着温度>収縮温度の関係を満たす。
【0012】
前記熱融着させる工程を経る前に、熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとの間に収縮緩衝板を載置して前記熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度まで昇温する工程を含むのが望ましい。
また、前記熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエチレン樹脂またはフッ素樹脂からなるものであってもよく、前記ポリウレタンフォーム積層体が、トナーシール材用であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとを熱融着させる際、適切に昇温速度を制御するだけで、簡易な工程を実現しつつ、双方間の接着性を良好に保持しながらフィルム内に発生するシワやエアー混入を有効に防止したポリウレタンフォーム積層体を得ることができる。かかるポリウレタンフォーム積層体は、その表面に優れた摺動性が付与されてなるとともに、シール性も高く、剥がれや破壊をも有効に防止し得るため、特にトナーシール材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明で用いる熱圧着機を示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について、必要に応じて図面を参照しつつ具体的に説明する。
本発明のポリウレタンフォーム積層体の製造方法は、
熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとの接合面において、前記熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度から接着温度までを平均昇温速度12℃/秒以下で昇温することによって、前記熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとを熱融着させる工程を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明で用いるポリウレタンフォームは、通常、金型にイソシアネート成分とポリオール成分配合液とを混合して調製したウレタン原液を注入し、型締めを行った後、加熱発泡させて脱型することにより得られる。かかるウレタン原液としては、特に制限されず、一般的に採用されているものを用いることができる。例えば、イソシアネート成分としては、一分子中に2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネートであって、脂肪族系及び芳香族ポリイソシアネート化合物、さらにこれらの変性物が挙げられる。脂肪族系ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられ、芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また、これらの変性物としては、カルボジイミド変性物、プレポリマー変性物が挙げられる。
【0017】
ポリオール成分配合液はポリオール、触媒、整泡剤、必要に応じて添加されるその他の添加成分を配合して混合することにより調製される。
【0018】
上記ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールなどの低分子ポリオール;エチレンジアミン、4,4’−メチレン−ビス−2−クロロアニリン、4,4’−メチレン−ビス−2−エチルアニリンなどのアミン化合物又は低分子ポリオール若しくはアミン化合物にエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加重合して得られる、ビスフェノールのプロピレンオキシド付加物などのポリエーテルポリオール;さらに、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの多価アルコールとフタル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、テレフタル酸などの多塩基酸との縮合重合物であって末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ヒマシ油、トール油などを用いることができる。
【0019】
また、上記発泡剤としては、例えば、低沸点不活性溶剤としてトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のフロン系化合物等、メチレンクロライド、液化炭酸ガス反応によってガスを発生するものとして水、酸アミド、ニトロアルカン等、熱分解してガスを発生するものとして重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等を用いることができる。整泡剤としては、シリコーンオイル等を用いることができる。
【0020】
上記触媒としては、例えば、ジブチルチンジウラレート、スタナスオクトエート等の錫系触媒、トリエチルアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン等の3級アミン類等が挙げられる。
【0021】
上記ポリオール成分配合液には、必要に応じて、さらに難燃剤、その他の添加成分を配合してもよい。難燃剤としては、トリス(2−クロロエチル)フォスフェート、トリス(2,3−ジブロモプロピル)フォスフェート等のような従来公知の難燃剤の他、尿素、チオ尿素のような有機質粉末或いは金属水酸化物、三酸化アンチモン等の無機質粉末を用いることができる。また、その他の助剤としては、顔料、染料などの着色粉末、タルク、グラファイトなどの粉末、ガラス短繊維、その他の無機増量剤や有機溶媒などが挙げられる。
【0022】
なお、ポリウレタンフォームの密度は、特に制限されないが、通常100〜400kg/m3であるのが望ましく、200〜300kg/m3であるのがより好ましい。上記範囲内の密度を有していると、後述する熱可塑性樹脂フィルムと相まって、トナーシール材として用いた場合にも良好なシール性を発揮しつつ、剥がれや破壊にも充分に耐え得る強度を有することができる。またその厚さは、特に制限されないが、トナーシール材として好適に用いる観点から、通常0.1〜6.0mm、好ましくは0.5〜3.0mmである。
【0023】
本発明で用いる熱可塑性樹脂フィルムとは、熱可塑性樹脂からなるフィルムであり、これがポリウレタンフォーム表面に存在することにより、得られるポリウレタンフォーム積層体に良好な摺動性を付与することができる。熱可塑性樹脂フィルムとしては、具体的には、例えば、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ乳酸樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポシキ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びメタクリル樹脂並びにこれらの誘導体よりなる群から選択される1種又は2種以上よりなるフィルムが挙げられ、なかでも、優れた自己潤滑性により良好な摺動性を付与し得るとともに、熱寸法安定性や耐熱性、耐薬品性にも優れる観点から、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂が好ましい。ポリエチレン樹脂としては、より高分子量のものが好適であり、上市のものとしてウルトラポリマー(UHMW−PE、淀川ヒューテック(株)製)が挙げられる。上市のフッ素樹脂としては、テフロン(登録商標)(デュポン社製)が挙げられる。
【0024】
上記熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度は、その材質により変動し得るものであるが、トナーシール材として好適に用いる観点から、通常100〜140℃、好ましくは110〜130℃である。またその接着温度は、通常120〜160℃、好ましくは130〜150℃である。ただし、上記収縮温度および接着温度とは、接着温度>収縮温度の関係を満たす。
【0025】
上記熱可塑性樹脂フィルムの厚さは、特に制限されないが、トナーシール材として好適に用いる観点から、通常30〜100μm、好ましくは30〜60μmである。
【0026】
本発明では、上記熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとを熱融着させるにあたり、熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとの接合面において、熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度から接着温度までを平均昇温速度12℃/秒以下、好ましくは4〜7℃/秒で昇温する。圧着開始温度から収縮温度および接着温度の到達は、熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとの接合面で測定される温度によって判断し、平均昇温速度とは、接着温度から収縮温度を減じた値を収縮温度から接着温度までを昇温した時間で除した平均値を意味する。平均昇温速度12℃/秒以下で昇温することにより、収縮温度から接着温度までを比較的緩やかに昇温させながら熱圧着することができ、熱可塑性樹脂フィルムの急激な熱収縮を極力抑制しつつ、熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとを良好に接着させることが可能となる。すなわち、緩やかに昇温させることで、まず収縮温度近傍で予め熱可塑性樹脂フィルムが熱収縮し、その後に接着温度に到達することで、ある程度熱収縮したフィルムがポリウレタンフォームと徐々に接着されるので、熱収縮と接着とがほぼ同時に起こることで引き起こされる反りの発生や、熱可塑性樹脂フィルム内に発生するシワやエアーの混入も有効に抑制することができ、極めて平滑な表面を有するポリウレタンフォーム積層体を得ることができる。一方、平均昇温速度4℃/秒未満であると、生産性が悪化するおそれがあり好ましくない。
【0027】
また、熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度から接着温度までを昇温する時間(昇温時間)は、通常2.5秒以上、好ましくは3.0〜6.0秒である。昇温時間を2.5秒以上とすることで、フィルムの材質により変動し得る収縮温度および接着温度に柔軟に対応しつつ、比較的緩やかな昇温速度を実現することも可能となる。一方、昇温時間が6.0秒を超えると、生産性が悪化するおそれがあり好ましくない。なお、接着温度に到達した後、かかる温度を1〜10秒程度保持し、通常の方法により室温まで冷却してポリウレタンフォーム積層体を得る。接着温度から室温までの降温速度は特に限定されない。
【0028】
上記熱融着には、図1に示すような通常の熱圧着機1を用いることができ、下定盤2に載置したポリウレタンフォーム6上にさらに熱可塑性樹脂フィルム7を載置し、熱可塑性樹脂フィルム7の上面からエアーシリンダー4を下降させることによって上定盤3を圧着して、これら上定盤3・下定盤2を介して加熱する。熱可塑性樹脂フィルム7とポリウレタンフォーム8との接合面における温度は、これらの間に挟みこんだ熱電対5によって測定する。この際、熱可塑性樹脂フィルム7と上定盤3との間に収縮緩衝板8を載置するのが望ましい。かかる収縮緩衝板8が介在することにより、熱可塑性樹脂フィルム7が直接上定盤3に接触するのを回避して、熱可塑性樹脂フィルム7とポリウレタンフォーム8との接合面における急激な昇温を抑制し得る所望の昇温速度を容易に実現でき、収縮緩衝板8を介した加熱によってある程度熱可塑性樹脂フィルム7を熱収縮させた後にポリウレタンフォーム6と接着させることとなり、熱収縮と接着とがほぼ同時に起こるのをより有効に回避して、反りやシワの発生、エアーの混入等をさらに確実に抑制することができる。
【0029】
上記収縮緩衝板の材質としては、熱可塑性樹脂フィルムよりも熱収縮率が低く、断熱性があるものであればよく、特に制限されないが、ガラスや不織布等が挙げられ、また圧縮されたポリウレタンフォーム等も用いることができる。なお、収縮緩衝板の厚みについては、熱可塑性樹脂フィルムの材質や厚み、或いは収縮緩衝板の材質によっても変動し得るものであり、特に制限されないが、熱可塑性樹脂フィルムに対する収縮緩衝板の厚みの比が、通常1:20〜1:100、好ましくは1:40〜1:80であるのが望ましい。
【0030】
また、熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとを接合するにあたり、予め熱可塑性樹脂フィルムの表面にポリウレタンフォームとの接着性を向上させるための表面処理を施すのが望ましい。かかる表面処理としては、例えば、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理が好適である。このような処理を施すことにより、フィルム表面領域を清浄化しつつ活性化させて、ポリウレタンフォームとの接合面における接着強度をより高めることも可能となる。
【0031】
本発明によれば、ポリウレタンフォーム積層体を製造するにあたり、熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとの接合面に、必ずしも両面テープやホットメルト等の接着剤からなる接着層を介在させる必要がない。したがって、これら接着層を介在させることで発生しがちなシワやエアーの混入をも有効に防止することが可能となる。また、上述のように昇温速度を制御して熱圧着させるだけでポリウレタンフォーム積層体を得ることができるので、工数の削減に大きく寄与することとなり、経済的にも非常に有利性が高い。
【0032】
したがって、得られるポリウレタンフォーム積層体は、熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとが良好に接着されつつ、寸法安定性にも優れ、またフィルム内に発生しがちなシワやエアー混入が有効に低減されてなる。そのため、ポリウレタンフォームの表層には良好な摺動性が付与されてなるとともにシール性も高く、特に、トナーのケース本体と蓋体との嵌合部や、ケース本体と現像ローラ等の部材との間等に用いられるトナーシール材として有効な機能を発揮することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例で用いた材料は以下のとおりである。
【0034】
《ポリウレタンフォーム》
ZULEN「SDBK、XBK」、(株)ブリヂストン製、サイズ100×100mm、厚み3mm、密度250kg/m3
《熱可塑性樹脂フィルム》
「UHMW−PE(超高分子量ポリエチレンフィルム、分子量約200万)」0.05t、淀川ヒューテック(株)製、サイズ100×100mm、厚み50μm、収縮温度=120℃、接着温度=140℃
【0035】
[実施例1]
熱圧着機(小林機械工業社製)を用い、まず該熱圧着機の下定盤にポリウレタンフォームを載置し、その上面に熱可塑性樹脂フィルムを載置した後、さらにその上面に収縮緩衝板(圧縮ポリウレタンフォーム、SPG、(株)ブリヂストン製、厚み3mm)を載置した。この際、ポリウレタンフォームと熱可塑性樹脂フィルムとの間に熱電対を挟み、ポリウレタンフォームと熱可塑性樹脂フィルムとの接合面における温度を測定した。
【0036】
次いで、熱圧着機の上定盤を下降させ、上定盤および下定盤を昇温させつつ、圧着してポリウレタンフォーム積層体Aを得た。圧着開始時の温度は70℃、ポリウレタンフォームと熱可塑性樹脂フィルムとの接合面における熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度(120℃)から接着温度(140℃)までの昇温速度は6.1℃/秒、収縮温度から接着温度までの昇温時間は3.3秒であり、圧着開始から10.0秒まで経過した時点で圧着を終了した。圧着終了時の温度は150℃であった。
【0037】
[実施例2]
載置した収縮緩衝板の厚みを4mm、熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度(120℃)から接着温度(140℃)までの昇温速度を7.1℃/秒、収縮温度から接着温度までの昇温時間を2.8秒とした以外、実施例1と同様にしてポリウレタンフォーム積層体Bを得た。
【0038】
[実施例3]
載置した収縮緩衝板の厚みを2mm、熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度(120℃)から接着温度(140℃)までの昇温速度を7.7℃/秒、収縮温度から接着温度までの昇温時間を2.5秒とした以外、実施例1と同様にしてポリウレタンフォーム積層体Cを得た。
【0039】
[実施例4]
載置した収縮緩衝板の厚みを1.5mm、熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度(120℃)から接着温度(140℃)までの昇温速度を10.7℃/秒、収縮温度から接着温度までの昇温時間を2.8秒とした以外、実施例1と同様にしてポリウレタンフォーム積層体Dを得た。
【0040】
[比較例1]
載置した収縮緩衝板の厚みを1mm、熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度(120℃)から接着温度(140℃)までの昇温速度を12.5℃/秒、収縮温度から接着温度までの昇温時間を1.6秒とした以外、実施例1と同様にしてポリウレタンフォーム積層体Eを得た。
【0041】
[比較例2]
収縮緩衝板を載置せず、熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度(120℃)から接着温度(140℃)までの昇温速度を13.3℃/秒、収縮温度から接着温度までの昇温時間を1.5秒とした以外、実施例1と同様にしてポリウレタンフォーム積層体Fを得た。
得られたポリウレタンフォーム積層体A〜Fを以下の基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
【0042】
《シワの有無の評価》
ポリウレタンフォーム積層体の表面を目視により観察し、下記基準にしたがってシワの有無を評価した。結果を表1に示す。
○:シワの発生が全く認められず、平滑な表面を有していた。
△:若干のシワが発生していた。
×:多くのシワが発生していた。
【0043】
【表1】

【0044】
本発明の製造方法を用いた実施例1〜4は、比較例1〜2よりもシワの発生を有効に低減したシール性の高いポリウレタンフォーム積層体が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0045】
1: 熱圧着機
2: 下定盤
3: 上定盤
4: エアーシリンダー
5: 熱電対
6: ポリウレタンフォーム
7: 熱可塑性樹脂フィルム
8: 収縮緩衝板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとの接合面において、前記熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度から接着温度までを平均昇温速度12℃/秒以下で昇温することによって、前記熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとを熱融着させる工程を含むことを特徴とするポリウレタンフォーム積層体の製造方法。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度から接着温度までを昇温する時間が、2.5秒以上であることを特徴とするポリウレタンフォーム積層体の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとの接合面に、接着層を介在させないことを特徴とする請求項1または2に記載のポリウレタンフォーム積層体の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度が、100〜140℃(ただし、接着温度>収縮温度)であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリウレタンフォーム積層体の製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂フィルムの接着温度が、120〜160℃(ただし、接着温度>収縮温度)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリウレタンフォーム積層体の製造方法。
【請求項6】
前記熱融着させる工程を経る前に、熱可塑性樹脂フィルムとポリウレタンフォームとの間に収縮緩衝板を載置して前記熱可塑性樹脂フィルムの収縮温度まで昇温する工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリウレタンフォーム積層体の製造方法。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂フィルムが、ポリエチレン樹脂またはフッ素樹脂からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリウレタンフォーム積層体の製造方法。
【請求項8】
前記ポリウレタンフォーム積層体が、トナーシール材用であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリウレタンフォーム積層体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−167950(P2011−167950A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−34244(P2010−34244)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】