説明

ポリウレタン樹脂成形品

【課題】油分が浸透することによるポリウレタン樹脂成形品の膨潤を防止して、その寸法変化や被覆層(表皮ポリウレタン層)とインサート材等の内部部材との密着性の低減を解消して、成形品の経時的安定性を向上させ、同時に抗菌性、脱臭性を付与したポリウレタン樹脂成形品、および、人体への安全性に優れ、環境負荷を少なくして膨潤抑制効果の付与された表皮付ポリウレタン製品を提供する。
【解決手段】竹粉と竹炭粉と乾留竹粉から選択した植物粉体の一種または二種以上を含有する射出反応ポリウレタン樹脂からなり、該植物粉体の粒径Dが、10≦D≦300μmであるポリウレタン樹脂成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリウレタン樹脂成形品、例えば自動車用ステアリングホイール、トランスミッションコントロール用ノブなどの把持操作部品、インストルメントパネル、ピラーガーニッシュなどの内装パネル等に適用可能なポリウレタン樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂成形品は、ソフトな触感が得られ、また一体の表皮の下に発泡層を形成する、いわゆるインテグラルスキンフォームの形式とすれば一層ソフトな感触となって、人が触れあるいは把持操作などする部分、例えば、ステアリングホィール、アシストグリップやノブ、内装トリム材であるインストルメントパネル、アッパーパネルやピラーガーニッシュ、ドアトリムなどに適用して、好ましい感触を実現することができる。
一方、ポリウレタン樹脂では、油分の含侵による膨潤の課題もある。
上記の用途にあっては、手油、手入れ用ワックス剤などの油がポリウレタン樹脂成形品の表面に付着し、それが長期的に成形品内部に浸透して、成形品を膨張させることがある。そのため、寸法変化や、組み合わされる他の部品との合わせ品質の問題や、芯材の外側を覆う形態では、芯材との密着性にも影響を及ぼすことがあり、例えば、ステアリングホイールではグリップ部が空転するおそれもある。
【0003】
ステアリングホィールの芯材との密着性を向上する方法としては、たとえば芯材にポリウレタン表皮との機械的結合を向上させるような形状を設定する、というものがある(特許文献1)。
しかしながら、触感を重視する観点からは、芯材を異型等にしてアンカー作用を生じさせるため、内部の凹凸形状が表面から握ったときの感触を悪化させるとの懸念がある。すなわち、例えば中空の芯材の表面部に開口を形成すると、開口部ではウレタン表皮を下支えするものがなくなり、開口しない部分との圧縮に対する反力差を生ずることがある。また、型内の囲まれた空間で発泡する樹脂の発泡力が変化するので発泡の均一性が損なわれる懸念もある。すなわち、空間に向かって未反応樹脂が本流である外周リム部の反応液フローから分岐するため、下流に向かって流れる反応液の金型内面による押さえこまれかたに変化を生ずる。下流に流れる反応液を押送する力も減少し、反応液のスムーズな流れが阻害される惧れがある。また芯材を断面略三角管状とするなどの断面周方向で顕著に芯材の形状を変える場合にあっては角部と辺部とで感触が異なりゴツゴツ感やエッジ感(角当たり感)が出やすい。
【0004】
油分の浸透による膨潤では、芯材とウレタン表皮の間でさらにミクロのズレを生ずるが、そのような場合に芯材の異型化による効果は限定的であり、または、長期に亘る安定性を与えるものとは言い難い。
芯材と表皮ウレタンとの密着性を向上する方法として、プライマーや接着層を形成する方法もある。しかし、この密着性向上手段も、厳重に行うことは、塗布工程、乾燥工程に大きなエネルギー消費や溶剤の放散を伴い、地球環境に及ぼす負荷が増大する惧れがある。もちろん、このような工程を簡略化または廃止することができなければ、安価にウレタン表皮付き部材を市場に提供することは難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−114813号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、油分が浸透することによる成形品の膨潤を防止して、その寸法変化や被覆層(表皮ポリウレタン層)とインサート材等の内部部材との密着性の低減を解消して、成形品の経時的安定性を向上させることを目的としている。
また、安全性に優れ、環境負荷を少なくして膨潤抑制効果の付与された表皮付ポリウレタン製品を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、RIM成形によるポリウレタン樹脂成形品に対して、竹粉と竹炭と乾留竹粉から選択した植物粉体の一種または二種以上を配合することが前記課題解決に有効であることを知見して、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
1.竹粉と竹炭粉と乾留竹粉から選択した植物粉体の一種または二種以上を含有する射出反応ポリウレタン樹脂からなり、該植物粉体の粒径Dが、10≦D≦300μm であるポリウレタン樹脂成形品。
2.該植物粉体の粒径Dが、10≦D≦100μm である(1)記載のポリウレタン樹脂成形品。
3.該植物粉体の添加量Cは、0<C≦20重量% である(1)または(2)記載のポリウレタン樹脂成形品。
4.(1)ないし(3)いずれか1項に記載のポリウレタン樹脂成形品である表皮で芯材を覆った、乗り物の把持操作部品。
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリウレタン樹脂成形品は、配合した前記特定の植物粉体の多孔質構造が浸透する油分を吸収するため、油分による樹脂の膨張を防止することができ、その結果、寸法変化をきたすことなく、また、ポリウレタン樹脂と芯材などの内部部材との密着性の低下を防止することができる。
また、前記植物粉体は、天然物であり、これが配合されたポリウレタン樹脂成形品は、アレルギー発症などの人体への悪影響もなく、安全性にも優れている。
加えて、特定の植物粉体の抗菌、脱臭作用も同時に発揮され、衛生的で乗り物内などポリウレタン樹脂成形品を備えた室内を快適にすることができる。
更に、こうした効果を発現する一方で、配合した特定の植物粉体による樹脂成形品の機械的物性への影響もない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に使用する乾留竹炭の顕微鏡写真。
【図2】本発明に使用する竹炭の顕微鏡写真。
【図3】耐オレイン酸グリップ試験に使用したステアリングホイール成形品の試験サンプル部位1〜4を示す説明図。
【図4】前記試験サンプルを用いて耐オレイン酸グリップ試験に使用する測定治具の説明図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一の特徴は、ポリウレタン樹脂成形品を、竹粉と竹炭粉と乾留竹粉から選択した植物粉体の一種または二種以上を含有する射出反応ポリウレタン樹脂から形成したもので、該植物粉体の粒径Dが、10≦D≦300μm としたものである。好ましくは、該植物粉体の粒径Dが、10≦D≦100μm とする。
【0011】
選択された植物粉体は、ヒトの分泌油(高級脂肪酸エステル類を含む)やハンドクリーム、化粧品に含まれるエタノールやオレイン酸エステル等の付着浸透に対して、好ましく成形品内に分散されて配され、これらを吸着・吸収して深部への浸透を抑制する。そのため、長期に亘るヒトの接触によっても深部からの膨潤を抑制して有意な形状変化、寸法変化が防止される。
本件発明のポリウレタン樹脂成形品は、表皮で芯材を覆った、乗り物の把持操作部品として、好適に使用できるものである。
【0012】
本発明のポリウレタン樹脂成形品は、前記特定の植物粉体を所定量含むことが重要であり、その他の成形条件は特に制限はなく、一般的なRIM成形と同様にして行うことができる。
すなわち、ポリオール、触媒、鎖延長剤、及びその他の助剤を含むポリオール混合物と、ポリイソシアネート化合物から製造することができる。
好ましくは、表層に低発泡の緻密なスキン層を備えたポリウレタンインテグラルスキンフォームが形成される。
【0013】
本発明に使用する前記特定の植物粉体は、竹粉と竹炭粉と乾留竹粉から選択される。
本発明において使用する竹粉は、その竹の種類については特に制限はないが、真竹、孟宗竹が好ましい。竹の粉末化は、グラインダーなどで粉末化処理したものでよく、必要に応じてふるい、大きい粒子を除き、10μm〜300μmの粒径の範囲を使用するのが好ましい。また、ポリウレタン樹脂原料への配合の際には乾燥処理を行うことが好ましい。乾燥により竹粉の表面にはミクロな開口が形成されて多孔質構造となる。
【0014】
本発明に使用する竹炭粉は、竹を650〜700℃の温度で炭化処理して得られるが、例えばバン株式会社などの市販品を使用してもよい。竹炭は好ましくは、粒径10〜300μmに粉砕される。
また、本発明に使用する乾留竹粉は、圧力釜を使用して、5〜10気圧の状態で例えば120〜170℃の温度で竹粉を1〜5時間程乾留したものであり、これも例えばバン株式会社製などの市販品を使用することができる。竹炭も乾留竹もその粒子表面には図1に示すようにミクロ孔が開口して多孔質構造となっている。この多孔質構造により、脱臭、吸着・吸収効果を発現することができるとともに、抗菌作用を示す成分による効果も発現することができる。なお、乾留竹紛は上記の処理温度であるため該抗菌性成分が残存するが、竹炭では処理温度が高いために有機系の有効成分はほとんど分解し、無機系の有効成分による作用となるので、その抗菌作用は乾留竹紛よりも低くなる。しかし、ミクロな開口構造は、竹炭の方がより緻密になり吸着性は竹炭の方が優れている。
【0015】
本発明に使用する竹粉、竹炭、乾留竹粉は、ポリウレタン樹脂原料のいずれに添加しても良いが、均一分散性の観点から、ポリオール原料に混合するのが好ましい。この場合、粒径が300μmを超えるとポリオールに対して比重差が大きいため沈降し易くなり分散性が低下する。また、分散性の低下により、均一な色味を出すことが難しくなる。粒径が10μm未満になると飛散し易くなり、加工コストも高くなる。
【0016】
本発明において、前記特定の植物粉体の添加量は、ポリウレタン樹脂成形品に対して1〜20重量%の範囲である。本発明の所期の効果を発現するためには少なくとも1重量%の配合は必要であり、また20重量%を超えるとポリオールの粘度が上昇し、成形が困難となる。好ましくは2〜10重量%である。成形に際して、原料をナチュラル(無着色)とし、透明なバリヤーコートを組み合わせると、添加した植物粉体の自然な色合いを製品に付与することができる。
【0017】
本発明に使用するポリウレタン樹脂成形品は、原料としてポリオール、触媒、鎖延長剤、助剤からなるポリオール混合物とポリイソシアネート化合物を使用し、その表面部に、低発泡の緻密なスキン層を備えたポリウレタンインテグラルスキンフォームである。
本発明に使用するポリイソシアネート化合物としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トルエンジイソシアネート、これらのポリイソシアネートをウレタン変性、アロファネート変性、カルボジイミド変性、またはイソシアヌレート変性した変性ポリイソシアネート、これらの混合物などがある。
【0018】
また、本発明に使用するポリオールとしては、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、蔗糖などの水酸基含有化合物、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミノ基や水酸基を含有する化合物、あるいはエチレンジアミン、ジアミントルエンなどのアミノ基含有化合物にエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドを付加した分子中に2〜6個の水酸基を含有し、平均水酸基当量が100〜2400(OH基561〜23mgKOH/g)のポリエーテルポリオールあるいはこれらのポリエーテルポリオールにビニル化合物を付加重合したポリマーポリオールなどが用いられる。
【0019】
触媒としては、トリエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ジメチルアミノエタノール、テトラメチルエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、1−メチルイミダゾール、1−イソブチルー2−メチルイミダゾールなどの第3級アミンやジブチル錫ジラウレート、オクタン酸錫、ジブチル錫ジアセテートなどの有機金属化合物が用いられる。触媒の使用量は、ポリオール混合物100重量部に対して、0.1〜5.0重量部、好ましくは、0.3〜1.8重量部である。
【0020】
鎖延長剤としては、分子量が61〜300の2価アルコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールや2価アミン、例えば、ジエチルトルエンジアミン、t−ブチルトルエンジアミン、ジエチルジアミノベンゼン、トリエチルジアミノベンゼン、テトラエチルジアミノジフェニルメタン、などが必要に応じて用いられる。鎖延長剤の使用量は、ポリオール100重量部に対して、1.0〜20.0重量部、好ましくは5.0〜10.0重量部である。
【0021】
発泡剤としては、クロロフロロカーボン以外の発泡剤が必要に応じて用いられる。例えば、水あるいはアミン化合物の炭酸塩又はギ酸が用いられる。
その他の助剤としては、例えば気泡安定剤、例えばシリコーン系整泡剤、界面活性剤、耐侯剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤などが必要に応じて用いられる。
【0022】
本発明のポリウレタン樹脂成形品の成形方法は、一般的に知られている上型をあけておいて下型にポリウレタン樹脂液を注入してから上型を閉じるオープン型注入や、予め上下型を閉じておいてポリウレタン樹脂液を型内に注入するクローズド型注入などの反応射出成形(RIM)が用いられる。中でもステアリングホイールなど短時間成形サイクルが要求される、例えば注入後1分〜3分で型から取り出せるような反応性(ライズタイムが20秒から60秒)を有する自動車内装材用ポリウレタン樹脂原料の成形においては、反応射出成形法(RIM)で成形するのが好ましい。
RIMによる植物粉体入りポリウレタン樹脂の製造(成形)にはHennecke社製のR−RIM用高圧ポリウレタン成形機などの反応射出成形機が用いられる。
【0023】
本発明の植物粉体入りポリウレタン樹脂材料の製造(成形)には、NCOインデックスは90から130がよく、好ましいNCOインデックスは100から115である。NCOインデックスが90を下回ると、ポリオールが過剰であり、100を上回るとイソシアネートが過剰になる。ステアリングホイールを例にとると、NCOがインデックスが90を下回ると、耐摩耗性、耐候性などに問題が生じる可能性があり、130を上回ると表面が硬くなり、ポリウレタンステアリングホイールの特徴である弾性感とソフト感が損なわれる。
なお、NCOインデックスとは、ポリオール混合物中及び発泡剤として水を使用したときの、活性水素1つ当たりのポリオール混合物量及び水の量と、ポリイソシアネート中のイソシアネート基1つ当たりのポリイソシアネート量の比(当量比)×100で示される。
以下、ステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料で、実施例、比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0024】
ステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料(ポリオール混合物、発泡剤、ポリイソシアネート化合物)並びに成形条件
(1)ポリオール混合物
ポリエーテルポリオール 90部(グリセリンにプロピレンオキシドとエチレンオキシドを付加した水酸基価35mgKOH/g)
エチレングリコール 6.1部
トリエチレンジアミンの33%エチレングリコール溶液 0.15部
ジブチル錫ラウレート 0.01部
Toyocat ET(東ソー株式会社製) 1.3部
シリコーン整泡剤 0.02部
着色剤 1.8部
(2)水 0.35部
(3)ポリイソシアネート化合物
カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート
(NCO含有29%、粘度40mPa・s/25℃)
(4)(1)ポリオール混合物と(2)水の合計100部に対する(3)ポリイソシアネート化合物使用量は45.8部(NCOインデックス105)
(5)反応性(ライズタイム) 33秒
ハンドミキシング
ポリ容器発泡(フリーライズドフォーム)
ポリウレタン樹脂配合原料温度 :25℃
(6)成形条件
ハンドミキシングにてポリ容器で攪拌混合後、成形型へ注入
ポリウレタン樹脂配合原料温度 :25℃
成形型 :スチール製平板状型(型サイズ200×200×10mm)及びステアリングホイール実型
成形型温度 :60℃
脱型時間 :型に原料を注入してから120秒後に脱型(離型)
成形品密度 :0.5g/cm
【0025】
ポリウレタン樹脂成形品の評価方法
1)耐オレイン酸膨潤性
成形品を10×20×40mmのサイズにカットし、テストピースとする。
オレイン酸原液中に4時間浸漬した後、ガーゼで表面をふき取り、80℃のオ−ブンで4時間加熱する。
試験前後の重量変化及び寸法変化より、オイル分の含浸量、体積膨張率を求める。
寸法測定はデジタルノギス(寸法精度=0.000001)を使用した。
2)耐オレイン酸グリップ密着度
ステアリングホイール成形品を図3の1〜4に示す部位において、60mmにカットして試験用サンプルとし、これをオレイン酸原液中に4時間浸漬した後、取り出してサンプルに付着したオレイン酸をガーゼでふき取り、60℃のオーブン中で2時間放置する。オーブンより取り出し、直後に図4に示すような測定治具によりトルク負荷速度90°/5〜10sec、試験サンプル締め付け力196〜245N(20〜25kgf)で各サンプルの耐オレイン酸グリップ密着度を測定した。なお、前記治具による測定は、図4中に図示しない裏面側において露出させた芯金部をクランプにて固定し、ポリウレタン表皮を締め付けながら回動させるようにトルクを負荷することにより行い、測定値は芯金から剥離(空転)したときの強度を示す。その測定結果を表6に示す。判定基準として、2.9N・m以下で剥離・空転がないことを合格基準とする。
3)抗菌性試験
JIS Z 2801−2000に準じて試験を実施した。
評価は、認定評価機関である大和化学工業(株)へ依頼した。
使用した供試細菌は下記2種類
a)大腸菌:Escherichia Coli NBRC 3972
b)ブドウ球菌:Staphylococcus Aureus NBRC 12732
生菌を製品表面に滴下し、24時間後の生菌数を測定し、抗菌活性を求める。
抗菌活性値が2以上であれば、抗菌性を有すると判断される。
4)VOC(揮発性有機化合物)放散量測定
以下の手順・操作により成形品から放散されるVOCの量を測定する。
実施例3〜6、比較例1で成形された成形品を100×100×10mmにカットし、これをテストピースとする。
1.このテストピースを直ちにアルミホイルに包み更にサランラップで包む。
2.1週間後10Lのテドラーバッグにテストピースを投入し、バッグの端末をラミネータで密閉した。
3.3Lの窒素を充填後、真空ポンプでバッグ内を真空にする。この操作を5回繰り返す。
4.次いで、バッグ内に5Lの窒素を充填し、80℃恒温槽で2時間加熱する。
5.テストピースより発生したホルムアルデヒド、アセトアルデヒドは、島津製作所製HPLC測定システム:LC10AD LCソリューション解析システムにて測定し、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、テトラデカン、T−VOC(全揮発性有機化合物)は、パーキンエルマー社製GC−MS測定システム:CLARUS500 同社製TDA加熱脱着装置:Turbomatrix 650MS にて測定する。
5)機械的物性評価
島津オートグラフAG5−KEN使用
付加速度=200mm/min
使用ダンベル:引っ張り強度=JIS2号ダンベル
引き裂き強度=JISB型ダンベル
【0026】
実施例1
表1に示す竹炭をポリオール混合物100部に対して3部(ポリウレタン樹脂成形品中約2.0%)添加し、先に示したステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料および成形条件にて成形品を得た。
実施例2
表1に示す竹粉をポリオール混合物100部に対して3部(ポリウレタン樹脂成形品中約2.0%)を添加し、先に示したステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料および成形条件にて成形品を得た。
実施例3
表1に示す竹炭をポリオール混合物100部に対して10部(ポリウレタン樹脂成形品中約6.4%)添加し、先に示したステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料および成形条件にて成形品を得た。
実施例4
表1に示す乾留竹粉をポリオール混合物100部に対して10部(ポリウレタン樹脂成形品中約6.4%)添加し、先に示したステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料および成形条件にて成形品を得た。
実施例5
表1に示す竹炭をポリオール混合物100重量部に対して5部(ポリウレタン樹脂成形品中約3.3%)添加し、先に示したステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料および成形条件にて成形品を得た。
実施例6
表1に示す乾留竹炭をポリオール混合物100重量部に対して5部(ポリウレタン樹脂成形品中約3.3%)添加し、先に示したステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料および成形条件にて成形品を得た。
実施例7
表1に示す竹炭を100℃のオーブン中に4時間放置して水分を蒸発させ、ポリオール混合物100部に対して3部(ポリウレタン成形品中約2.0%)添加し、先に示したステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料及び成型条件にて成形品を得た。
参考例1
炭酸カルシウムの粉末をポリオール混合物100部に対して3部(ポリウレタン樹脂成形品中約2.0%)添加し、先に示したステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料及び成型条件にて成形品を得た。
参考例2
ガラスパウダーをポリオール混合物100部に対して3部(ポリウレタン樹脂成形品中約2.0%)添加し、先に示したステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料及び成型条件にて成形品を得た。
【0027】
比較例1
先に示したステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料および成形条件にて成形品を得た。
比較例2
表1に示す乾留竹炭をポリオール混合物100重量部に対して40部(ポリウレタン樹脂成形品中約21.5%)添加し、先に示したステアリングホイール用ポリウレタン樹脂配合原料および成形条件にて成形したが、混合不良のために成形品は得られなかった。
【0028】
【表1】


【0029】
実施例1、2、7、参考例1、2及び比較例1のサンプル成形品について、前記オレイン酸膨潤試験結果を表2に示す。
注目すべき点は、乾留竹粉又は竹炭を添加することで、内部へのオイル分の浸透が抑制され、膨潤率が大きく低下することである。このように内部へのオイル分の浸透が抑制されることより材料の膨潤を防止して、芯材とこれを被覆する樹脂層との密着性への影響を排除することができ、グリップが空転する不安を解消することができる。これに対して炭酸カルシウムやガラスパウダーの添加ではオイル分の浸透抑制効果がなく、ポリウレタン樹脂の膨潤を防止することができない。
また、実際にステアリングホイールをオレイン酸に浸漬して、耐オレイン酸グリップ試験をした結果を表6に示す。乾留竹紛、及び竹炭は、炭酸カルシウムやガラスパウダー等の補強充填剤として一般に使用されている充填剤と対比して内部へのオイル浸透抑制効果があり、材料の膨潤を抑え、グリップ空転をきたすおそれを解消することができる。
【0030】
また、実施例3、実施例4と比較例1のサンプル成形品について、前記抗菌性試験結果を表3に示す。
乾留竹粉、竹炭とも抗菌活性値が2以上となり、抗菌性ありと判断できる。しかも、これらは、従来の銀ゼオライト、チオサルファイト銀錯体などの銀系抗菌剤のように、金属イオンによる抗菌作用ではないので、アレルギーを発症することもなく、人体への安全性は大幅に向上することができる。
また、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6と比較例1のサンプル成形品について、前記VOC放散量測定結果を表4に示す。
本発明の成形品では竹炭、あるいは乾留竹粉の吸着・吸収効果により、成形品中の揮発性成分が捕捉される結果、放散される揮発性成分の量は大幅に低減することができる。これにより車室内の空気汚染や異臭の度合いが大幅に軽減される。
実施例2、実施例5と比較例1のサンプル成形品について、前記機械的物性評価結果を表5に示す。引っ張り強度、引き裂き強度、伸びともに低下は認められない。
【0031】
【表2】


【0032】
【表3】


【0033】
【表4】


【0034】
【表5】


【0035】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
竹粉と竹炭粉と乾留竹粉から選択した植物粉体の一種または二種以上を含有する射出反応ポリウレタン樹脂からなり、該植物粉体の粒径Dが、10≦D≦300μm であるポリウレタン樹脂成形品。
【請求項2】
該植物粉体の粒径Dが、10≦D≦100μm である請求項1記載のポリウレタン樹脂成形品。
【請求項3】
該植物粉体の添加量Cは、0<C≦20重量% である請求項1または2記載のポリウレタン樹脂成形品。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項に記載のポリウレタン樹脂成形品である表皮で芯材を覆った、乗り物の把持操作部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−149142(P2012−149142A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7513(P2011−7513)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.サランラップ
2.テドラー
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【出願人】(000183299)住化バイエルウレタン株式会社 (33)
【Fターム(参考)】