説明

ポリウレタン誘導体およびその製造方法、ならびに当該ポリウレタン誘導体を用いた生理機能材料

【課題】熱可塑性、溶剤可溶性でフィルムや塗膜への成形性に優れた、糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体及びその簡便かつ安価な製造方法、ならびに当該ポリウレタン誘導体の生理機能材料への用途を提供する。
【解決手段】カルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体にジカルボン酸無水物を反応させ、さらにこれとアミノ糖と反応させることで糖鎖がオリゴ糖上の側鎖に導入された糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンが製造される。さらに、当該糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンを生理機能材料として利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体および糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体、ならびにそれらの製造方法に関する。さらに、本発明は、当該糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体を用いた生理機能材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖鎖が多様な生命現象(細胞認識や情報伝達、細胞接着、分化・増殖、ガン化、ウイルス感染、血液凝固、免疫反応など)に深く関わっていることが明らかになり、糖鎖を組み込んだ機能性材料や医薬品の開発研究が活発に行われている(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3)。
目的の生理機能を発現する糖鎖含有機能性材料を開発するためには、糖鎖の構造と生理活性の相関を分子や官能基レベルで研究し、糖鎖分子を自由自在に修飾したり高分子に導入する技術が求められる。
【0003】
このような背景のもと、種々の糖鎖含有高分子が報告されてきた。例えば、単糖、二糖、オリゴ糖などの糖鎖を組み込んだ高分子(以下、糖鎖高分子)としては、
1. ポリビニルアルコール型(例えば、特許文献1)
2. ポリアクリレート型(例えば、特許文献2)
3. ポリスチレン型(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8)
4. ポリエーテル型(例えば、特許文献9)
5. ポリエチレンイミン型(例えば、特許文献10、特許文献11)
6. ポリアミノ酸型(例えば、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16)
7. ポリウレタン型(例えば、特許文献17)
などが知られている。
【特許文献1】特開昭63−238105
【特許文献2】特開昭63−68603
【特許文献3】特開平7−304788
【特許文献4】特開平8−253495
【特許文献5】特開平8−319317
【特許文献6】特開平8−253495
【特許文献7】特開2002−88094
【特許文献8】特開2005−112987
【特許文献9】特開平5−140294
【特許文献10】特開平5−140213
【特許文献11】特開2002−302511
【特許文献12】特開平5−178986
【特許文献13】特開平8−337566
【特許文献14】特開平9−227600
【特許文献15】特開平11−60603
【特許文献16】特開2003−73397
【特許文献17】特開平11−71391
【非特許文献1】糖鎖分子の設計と生理機能、2001年、学会出版センター
【非特許文献2】生理活性糖鎖研究法、1999年、学会出版センター
【非特許文献3】糖質エンジニアリングと製品化技術、1993年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細胞認識、細胞接着などの生物学的機能は、糖細胞表面の糖鎖集合体(クラスター)とこれと相補的な糖鎖集合体との糖鎖−糖鎖相互作用により発現し、その相互作用の強さは糖密度と相関していることが知られている。上記特許文献に開示されている糖鎖高分子において、単糖、二糖、オリゴ糖などの糖鎖は、繰り返し単位あたり1個を線状にしか導入できないため、これらの高分子を用いてフィルム等を形成した場合、糖鎖クラスターにおける糖鎖密度を高めて糖鎖の生物学的機能(細胞認識、細胞接着など)を十分発現するには、高分子鎖中で、糖鎖が導入された繰り返し単位を増やす必要がある。しかし、これにより骨格高分子の本来のフィルム形成能、機械強度などが低下する恐れがある。
また生体適合性、血液適合性の観点から、特許文献17に開示される様なポリウレタン型糖鎖高分子が好ましいが、糖鎖を側鎖に導入する製造工程が保護・脱保護の操作を必要とするため煩雑で製造コストが高くなる問題点がある。
これら従来技術に対し、本発明の目的は、複数の糖鎖が側鎖に導入された繰り返し単位を利用することで糖鎖クラスターの密度が高められると共に、優れたフィルム形成能を有し、生体適合性、血液適合性が期待される糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体、及びその簡便かつ安価な製造方法を提供することにある。
さらに、本発明の目的は、当該糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体の生理機能材料への用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題点に鑑み鋭意検討した結果、(1)1級水酸基を2個有するオリゴ糖、ジイソシアネートおよび必要に応じてジオール化合物の付加重合により、オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体を得、これにジカルボン酸無水物を反応させることにより、カルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体が得られること、(2)さらに、当該カルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体をアミノ化糖と反応させることで、糖鎖を側鎖に有する糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体を得る事ができること、および(3)当該糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン誘導体が生理機能を有することを見出し、これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は次の(1)〜(14)である。
(1)下記一般式[1]:
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基を表し、
2は、炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基を表し、
3は、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、
4は、単糖または二糖由来の糖残基を表し、
OLSは、一級水酸基を2個有するオリゴ糖の骨格を表し、
rはオリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、
pおよびqはそれぞれ1≦p≦r、0≦q≦r−1の範囲の整数を表し、
m、nはそれぞれ繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲の数である。]
で表される糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン。
(2)R3が、エチレン基である上記(1)記載の糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン。
(3)R4が、グルコース、マンノース、ラクトースまたはガラクトース由来の糖残基である上記(1)記載の糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン。
(4)R3が、エチレン基であり、かつR4が、グルコース、マンノース、ラクトースまたはガラクトース由来の糖残基である上記(1)記載の糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン。
(5)下記一般式[2]:
【0009】
【化2】

【0010】
[式中、
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基を表し、
2は、炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基を表し、
3は、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、
OLSは、一級水酸基を2個有するオリゴ糖の骨格を表し、
rはオリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、
pおよびqはそれぞれ1≦p≦r、0≦q≦r−1の範囲の整数を表し、
m、nはそれぞれ繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲の数である。]
で表されるカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン。
(6)R3が、エチレン基である上記(5)記載のカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン。
(7)下記一般式[3]:
【0011】
【化3】

【0012】
[式中、
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基を表し、
2は、炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基を表し、
OLSは、一級水酸基を2個有するオリゴ糖の骨格を表し、
rはオリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、
m、nはそれぞれ繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲の数である。]
で表されるオリゴ糖含有ポリウレタンに、下記一般式[4]:
【0013】
【化4】

【0014】
[式中、R3は、炭素数2〜4のアルキレン基を表す。]で表される酸無水物を反応させることを特徴とする、下記一般式[2]:
【0015】
【化5】

【0016】
[式中、R、R、R、m、n、p、q、rおよびOLSはそれぞれ上記で定義したとおりである]で表されるカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンの製造方法。
(8)下記一般式[2]:
【0017】
【化6】

【0018】
[式中、
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基を表し、
2は、炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基を表し、
3は、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、
OLSは、一級水酸基を2個有するオリゴ糖の骨格を表し、
rはオリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、
pおよびqはそれぞれ1≦p≦r、0≦q≦r−1の範囲の整数を表し、
m、nはそれぞれ繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲の数である。]
で表されるカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンを、
下記一般式[5]:
【0019】
【化7】

【0020】
[式中、R4は、単糖または二糖由来の糖残基を表す。]で表されるアミノ化糖と反応させることを特徴とする、下記一般式[1]
【0021】
【化8】

【0022】
[式中、R、R、R、R、p、q、r、m、nおよびOLSはそれぞれ上記で定義したとおりである]
で表される糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンの製造方法。
(9)上記(1)記載の糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンを用いてなることを特徴とする生理機能材料。
(10)血液と接触する用途に使用される上記(9)記載の生理機能材料。
(11)上記(9)記載の生理機能材料を用いてなるフィルター。
(12)血液分離フィルターである上記(11)記載のフィルター。
(13)単球分離フィルターである上記(11)記載のフィルター。
【発明の効果】
【0023】
本発明の糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンおよびカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンは、溶媒可溶性および熱可塑性であり、フィルム形成能に優れる。また、本発明の糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンから得られるフィルムは、優れた単球捕捉能を有し、特定の細胞、蛋白質およびウイルスとの親和性が期待されるため、細胞、蛋白質およびウイルスの分離、分析などの分野での高機能性材料、特に、血液と接触する用途(例、血液分離フィルター、単球分離フィルター等)等に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンは、下記一般式[1]:
【0025】
【化9】

【0026】
[式中、各記号は上記で定義したとおりである]
で表されるポリウレタンであり、本発明のカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンは、下記一般式[2]:
【0027】
【化10】

【0028】
[式中、各記号は上記で定義したとおりである]
で表されるポリウレタンである。
【0029】
一般式[1]、[2]および[3]において、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基である。
上記「置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基」の「炭素数1〜16の2価の炭化水素基」としては、
(1)直鎖または分岐鎖の炭素数1〜16の2価の脂肪族炭化水素基[例、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜16のアルキレン基(例、メチレン、エチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、オクタメチレン、ヘキサデカメチレン等)、直鎖または分岐鎖の炭素数2〜16のアルケニレン基(例、ビニレン、プロペニレン等)、炭素数3〜16のシクロアルキレン(例、シクロヘキシレン)等]、および
(2)炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基[例、炭素数6〜14のアリーレン基(例、フェニレン、ナフチレン、ビフェニレン等)等]、ならびに
(3)前記直鎖または分岐鎖の炭素数1〜16の2価の脂肪族炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基および炭素数6〜14の2価の芳香族炭化水素基から選ばれる少なくとも1つの基を含み、炭素数の合計が7〜16の範囲内である炭化水素基(例、式
【0030】
【化11】

【0031】
で表される基等)
等が挙げられる。
上記「置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基」の「置換基」としては、例えば、
(1)炭素数1〜6のアルキル基(例、メチル等);
(2)炭素数3〜8のシクロアルキル基(例、シクロヘキシル等);
(3)炭素数6〜14のアリール基(例、フェニル等);
等が挙げられる。これらの置換基は、上記「炭素数1〜16の2価の炭化水素基」の置換可能な位置に、同一または異なって、1〜8個、好ましくは1〜4個置換することができる。
【0032】
の具体例としては、例えば、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、ヘキサデカメチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、フェニレン基、ナフチレン基、フェニルメチレン基、フェニルエチレン基、ビフェニル基、ビスフェニルメチレン基、ビスフェニルエチレン基、フェニレン基(例、パラフェニレン基)、キシリレン基、テトラメチルキシリレン基、トリレン基、ジシクロヘキシルメチレン基、

【0033】
【化12】

【0034】
で表される基等が挙げられ、ビスフェニルメチレン基、フェニルメチレン基およびヘキサメチレン基が好ましい。
【0035】
一般式[1]、[2]および[3]において、Rは、炭素数2〜12のオキシアルキレン基及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基である。
このようなものとしては、例えば、炭素数2〜12のオキシアルキレンから選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基、置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基、または炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基であってよい。
上記「炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基」は、例えば、式−(BO)h-1−B−で表される単位および式−(E)i−で表される単位(式中、Bは、少なくとも1種の炭素数2〜12のアルキレン単位を表し、Eは、少なくとも1種の、置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を表し、hおよびiは、それぞれ1≦h≦100、1≦i≦100の整数である。)から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基である。
上記式−(BO)h-1−B−で表される単位におけるBの「炭素数2〜12のアルキレン基」は直鎖であっても分岐していてもよく、また、当該単位中にBが複数存在する(2≦h≦100の場合)、Bは1種でもよいし、2種以上でもよい。BOの具体的なものとしては、例えば、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、トリメチレンオキシ基、ブチレンオキシ基、テトラメチレンオキシ基などのアルキレンオキシ基を挙げることができ、式−(BO)h-1−B−で表される単位の具体例としては、例えば、式−CH−CH−O−CH−CH−CH−で表される単位等が挙げられる。
上記式−(E)i−で表される単位において、Eで表される「置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位」における2価の炭化水素単位は直鎖であっても分岐していてもよく、また飽和基であっても不飽和基であってもよく、例えば、炭素数2〜12のアルキレン(例、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ヘキサメチレン、ノナメチレン等)、炭素数2〜12のアルケニレン(例、ブタジエニレン、ブテニレン等)等が挙げられる。また、当該「炭素数2〜12の2価の炭化水素単位」が有していてもよい「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子(例、フッ素原子等)、炭素数1〜6のアルキル基(例、メチル等)等が挙げられる。当該単位中にEが複数存在する(2≦i≦100の場合)、Eは1種でも、2種以上でもよい。
このような式−(E)i−で表される単位の具体的なものとしては、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ノナメチレン基、−CH−CF−CF−CF−CF−CH−基、ブタジエニレン基、水添ブタジエニレン基、水添イソプレンの両鎖端の炭素原子から水素原子を1個ずつ除いて誘導される基等の2価の基などが挙げられる。
【0036】
また、Rは、上記式−(BO)h-1−B−(式中、Bおよびhは上記のとおりである)で表される単位および/または式−(E)i−(式中、Eおよびiは上記のとおりである)で表される単位から選ばれる単位に加えて、さらに他の繰り返し単位[例えば、エチレンアジペート基、プロピレンアジペート基、ブチレンアジペート基、ヘキサメチレンアジペート基、ネオペンチルアジペート基などのアルキレンエステル基、ヘキサメチレンカーボネート基などのアルキレンカーボネート基、開環カプロラクトン基、ポリ(ジメチルシロキシ)ジメチルシリル基などの繰り返し単位]を含有していてもよい。
このような単位を含有するRの具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール等から両端のOHを除いた2価の基、ポリ(ジメチルシロキシ)ジメチルシリル−n−プロピルビスエトキシ基等が挙げられる。
の具体例としては、エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、エチレンアジペート基、プロピレンアジペート基、ヘキサメチレンカーボネート基、開環カプロラクトン基等の繰り返し単位を有する2価の基、トリメチレン基、テトラメチレン基、−CH−CF−CF−CF−CF−CH−基、水添ブタジエニレン基、水添イソプレンの両鎖端の炭素原子から水素原子を1個ずつ除いて誘導される2価の基、ポリジメチルシロキシジメチルシリル−n−プロピルビスエトキシ基等が好ましい。
【0037】
一般式[1]、[2]および[4]におけるR3は、炭素数2〜4のアルキレン基である。具体的には、例えば、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等を挙げる事ができる。これらのうち、エチレン基、トリメチレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
【0038】
一般式[1]および[5]におけるR4は、単糖または二糖由来の糖残基を表す。糖残基とは、糖から一部の水酸基を除いた残基である。R4に用いられる単糖または二糖としては、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、ラクトースなどが挙げられる。
これらのうち、R4としては、グルコース、マンノースおよびガラクトース由来の糖残基が好ましく、グルコース由来の糖残基がより好ましい。
【0039】
一般式[1]、[2]および[3]におけるOLSは、オリゴ糖の骨格を表す。オリゴ糖の骨格とは、オリゴ糖より全ての水酸基部分を除いた残基である。本発明で用いられるオリゴ糖としては一級水酸基を2個有するオリゴ糖であれば特に限定されず、二糖、三糖、四糖のいずれであってもよく、例えば、具体的には、トレハロース、マルトース、ラクトース、セロビオースなどの二糖などが挙げられ、そのなかでも、トレハロース、マルトース、ラクトース等の二糖が価格と反応性の観点から好ましい。一般式[1]、[2]および[3]におけるrは、オリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、例えば、OLSが二糖、三糖の場合は、rはそれぞれ6、9となる。
【0040】
一般式[1]において、pは、二塩基酸とアミノ糖で修飾された、オリゴ糖の二級水酸基(式−O2C−R3−CO−NH−R4で表される基;RおよびRは上記で定義したとおりである)の数を表し、1≦p≦rの範囲の整数である。
qは、二塩基酸で修飾されたオリゴ糖の二級水酸基(式HO2C−R3−CO2−で表される基;Rは上記で定義したとおりである)の数を表し、0≦q≦r−1の範囲の整数を表す。
【0041】
一般式[1]、[2]および[3]における、m、nは繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲であり、吸水性、ポリマー強度、ポリマー成形性のバランスの観点から好ましくは0.02〜0.80の範囲の数である。なお、一般式[1]、[2]および[3]における繰り返し単位の配列は規則的であっても不規則的であってもよい。
【0042】
次に、一般式[3]で表されるオリゴ糖含有ポリウレタン、一般式[2]で表されるカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン、および一般式[1]で表される糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンの製造方法をそれぞれ説明する。
(オリゴ糖含有ポリウレタンの製造方法)
本発明において、一般式[3]で表されるオリゴ糖含有ポリウレタンは、一般式[6]:
【0043】
【化13】

【0044】
[式中、OLSおよびpは上記で定義したとおりである]
で表されるオリゴ糖、および必要に応じて下記一般式[7]:
【0045】
【化14】

【0046】
[式中、Rは上記で定義したとおりである]
で表されるジオールを、下記一般式[8]:
【0047】
【化15】

【0048】
[式中、Rは上記で定義したとおりである]
で表されるジイソシアネートと反応させることによって、得ることが出来る。
この際、一般式[6]で表されるオリゴ糖を、必要に応じて一般式[7]で表されるジオールとの混合物とし、これを一般式[8]で表されるジイソシアネートと反応させてもよいし(ワンショット法)、あるいは、まず一般式[8]で表されるジイソシアネートを必要に応じて一般式[7]で表されるジオールと共に反応させてプレポリマーとし、ついで一般式[6]で表されるオリゴ糖を反応させてもよいし(プレポリマー法1)、あるいは、まず一般式[6]で表されるオリゴ糖と一般式[8]で表されるジイソシアネートとを反応させプレポリマーとし、ついで必要に応じて一般式[7]で表されるジオールと反応させてもよい(プレポリマー法2)。
上記反応の際には、一般式[6]で表されるオリゴ糖、一般式[8]で表されるジイソシアネートおよび一般式[7]で表されるジオールは、それぞれ、1種でもよいし、2種以上の混合物でもよい。
本発明に用いられる前記一般式[8]のジイソシアネートは、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ヘキサデカメチレンジイソシアネート、ビニレンジイソシアネート、プロペニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニルエタンジイソシアネート、ジフェニルエタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート(例、パラフェニレンジイソシアネート)、ビフェニルジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0049】
また一般式[7]で表されるジオールは、一級水酸基を有するジオールであれば特に制限はない。具体的には、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1,6−ヘキサンジオール等の低分子量のジオール;およびポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、テトラヒドロフラン−エチレンオキシド共重合体、テトラヒドロフラン−プロピレンオキシド共重合体などのポリエーテル系ジオール、ポリエチレンアジペートグリコール、ポリジエチレンアジペートグリコール、ポリプロピレンアジペートグリコール、ポリブチレンアジペートグリコール、ポリヘキサメチレンアジペートグリコール、ポリネオペンチルアジペートグリコール、ポリカプロラクトングリコールなどのポリエステル系ジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートグリコールなどのポリカーボネート系ジオール、ポリブタジエングリコール、水添ポリブタジエングリコール、水添ポリイソプレングリコールなどのポリオレフィン系グリコール、ビス(ヒドロキシエトキシ−n−プロピルジメチルシリル)ポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系ジオールなどの高分子量のジオールなどを挙げることができる。
【0050】
上記一般式[3]で表されるポリウレタンを製造する際の溶媒としては、反応物および生成するポリウレタンを溶解し得るものであればよい。具体的には、たとえば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等の有機溶媒単独もしくはそれらの混合溶媒が挙げられる。
上記一般式[3]で表されるポリウレタンを製造する際には、例えば、窒素等乾燥不活性ガスを通じながら、一般式[8]のジイソシアネートを含む溶液中に、前記一般式[6]のオリゴ糖、および必要に応じて一般式[7]のジオールを添加する。
上記反応成分の仕込みモル比は、例えば、一般式[8]の化合物:一般式[7]の化合物:一般式[6]の化合物が、3:0.01〜2.99:0.01〜3が好ましく、より好ましくは、3:0.2〜2.5:0.5〜2.8である。
上記反応の反応温度は10〜150℃が好ましく、より好ましくは、20〜120℃であり、反応時間は1〜10時間が好ましく、より好ましくは、2〜6時間である。
反応終了後、一般式[6]
【0051】
【化16】

【0052】
[式中、R、R、OLS、m、nおよびrは上記で定義したとおりである]
で表されるオリゴ糖含有ポリウレタンを得ることができる。当該ポリウレタンは、例えば、反応溶液をメタノール、アセトン、水等の単独またはこれらの混合溶媒に投入し、濾過、洗浄、必要に応じて再沈殿精製を繰り返して得られた固体分を室温〜100℃で1〜24時間程度減圧乾燥することにより、精製することができる。
【0053】
(カルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンの製造方法)
次に、一般式[2]で表されるカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンの製造方法を説明する。
上記一般式[3]で表されるオリゴ糖含有ポリウレタンを、一般式[4]
【0054】
【化17】

【0055】
[式中、R3は、上記で定義したとおりである]
で表される酸無水物と反応させ、オリゴ糖の二級水酸基の一部あるいは全てを修飾して、一般式[2]
【0056】
【化18】

【0057】
[式中、R、R、R、OLS、m、n、p、qおよびrは上記で定義したとおりである]
で表されるカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンが製造される。
上記反応は、通常、溶媒中で行う。カルボキシル基修飾の際の溶媒としては、反応物および生成するポリウレタンを溶解し得るものであればよい。具体的には、たとえば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等の有機溶媒単独もしくはそれらの混合溶媒が挙げられる。
上記一般式[4]で表される酸無水物としては、コハク酸無水物、グルタル酸無水物、アジピン酸無水物等の二塩基酸無水物が好ましく用いられ、コハク酸無水物が最も好ましい。当該酸無水物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。その使用量は、ポリウレタン中の直鎖オリゴ糖の水酸基を部分的に修飾する場合は、ポリウレタン中のオリゴ糖の二級水酸基数(r)に対して1〜(r−1)倍モルであり、前記水酸基を完全に修飾する場合は、r〜2r倍モル、好ましくは1.2r〜1.5r倍モルである。
上記反応では、必要に応じて、触媒として、4−ジメチルアミノピリジンやイミダゾールを3〜10モル%使用することが好ましく、より好ましくは5モル%使用する。
上記反応の反応温度は、20〜100℃、好ましくは50〜90℃であり、反応時間は、1〜24時間、好ましくは2〜20時間である。
反応終了後、一般式[2]で表される本発明のカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンを得ることができる。当該ポリウレタンは、例えば、反応溶液をメタノール、アセトン、水等の単独またはこれらの混合溶媒に投入してポリマーを析出させ、濾過、洗浄、必要に応じて再沈殿精製を繰り返して得られた固体分を室温〜100℃で1〜24時間程度減圧乾燥して、精製することができる。
【0058】
(糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンの製造方法)
一般式[2]で表されるカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンを、下記一般式[5]:
【0059】
【化19】

【0060】
[式中、R4は上記で定義したとおりである]で表されるアミノ化糖と反応させることによる、前記一般式[1]で表される糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンの製造法を説明する。
一般式[5]で表されるアミノ化糖としては、例えば、グルコースアミン、マンノースアミン、ラクトースアミン、ガラクトースアミン等が好ましく、これらのうち、グルコースアミン、マンノースアミンがより好ましく、グルコースアミンが価格の点で最も好ましい。また、当該アミノ化糖は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。
上記反応は、通常、溶媒中で行う。溶媒としては、反応物および生成するポリウレタンを溶解し得るものであればよい。具体的には、たとえば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)等の有機溶媒単独もしくはそれらの混合溶媒が挙げられる。
上記反応は、縮合剤の存在下で行うことが好ましい。縮合剤としては、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カーボジイミド(EDC)/N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)混合物、ジシクロヘキシルカーボジイミド(DCC)などが用いられる。EDC/NHS混合物が最も好ましい。その使用量は、アミノ化糖に対して0.5〜1.5倍モル、好ましくは0.8〜1.2倍モルである。
上記反応の反応温度は、20〜60℃、好ましくは30〜50℃、および反応時間は、5〜36時間、好ましくは10〜20時間である。
反応終了後、本発明の一般式[1]で表される糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンを得ることができる。当該ポリウレタンは、例えば、反応溶媒を留去し、濃縮物にメタノールや水等の単独またはこれらの混合溶媒を投入してポリマーを洗浄、濾過、必要に応じて再沈殿精製を繰り返して得られた固体分を室温〜100℃で1〜24時間程度減圧乾燥して、精製することができる。
【0061】
本発明の上記一般式[1]で表される糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンは、優れた生理機能(例、単球、リンパ球、顆粒球、幹細胞、ウイルス等に対する捕捉機能等)を有し、種々の生理機能材料として用いることができる。当該生理機能材料は、例えば、血液と接触する用途、フィルター(例、血液分離フィルター、単球分離フィルター、リンパ球分離フィルター、顆粒球分離フィルター、幹細胞分離フィルター、ウイルス分離フィルター等)等の用途に用いられる。
【実施例】
【0062】
次に本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
重合に使用するモノマー化合物を次のように略称する。
OLS=オリゴ糖骨格
TRE=トレハロース
MDI=ジフェニルメタンジイソシアネート
PPG4=ポリプロピレングリコール(分子量400)
PPG7=ポリプロピレングリコール(分子量700)
SUC=コハク酸無水物
GluA=グルコースアミン
ManA=2−マンノースアミン
【0063】
(合成例1)
MDI−PPG4−TRE(モル比2/1/1)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)にジフェニルメタンジイソシアネート(5.85g) とジメチルアセトアミド(65ml)を入れ、攪拌しながら、室温においてポリプロピレングリコール(重量平均分子量400、4.68g)を加え、1時間反応させた。次にこの反応液にトレハロース (4.00g)を加え、この温度で4時間反応させた。反応溶液をメタノール/水(体積比1/3)混合溶媒に投入し、生成物を析出させ、濾過し、メタノール/水溶媒で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率81%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
プロトンNMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20;CH
3.20−3.80;−O−CH−CH−O−
−CH−、−CH−
3.86 ;−CH
4.30−5.00;−O−CH−O−、−OH
7.16、7.43;−C
8.65、9.60;−NH−CO−
【0064】
(合成例2)
MDI−PPG7−TRE(モル比2/1/1)ポリウレタンの合成(プレポリマー法1)
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)にジフェニルメタンジイソシアネート(4.39g) とジメチルアセトアミド(65ml)を入れ、攪拌しながら、室温においてポリプロピレングリコール(重量平均分子量700、6.14g)を加え、1時間反応させた。次にこの反応液にトレハロース (3.00g)を加え、この温度で4時間反応させた。反応溶液をメタノール/水(体積比1/3)混合溶媒に投入し、生成物を析出させ、濾過し、メタノール/水溶媒で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率87%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
プロトンNMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20;CH
3.20−3.80;−O−CH−CH−O−
−CH−、−CH−
3.86 ;−CH
4.30−5.00;−O−CH−O−、−OH
7.16、7.43;−C
8.65、9.60;−NH−CO−
【0065】
(実施例1)
MDI−PPG4−TRE(モル比2/1/1)−3SUCポリウレタンの合成
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)に合成例1のポリウレタン(1.00g) とジメチルアセトアミド(25ml)を入れ、攪拌しながら、室温においてコハク酸無水物(0.24g)、4−ジメチルアミノピリジン(0.025g)を加えた後、70℃で5時間反応させた。反応溶液を水(75ml)に投入し生成物を析出させ、1M塩酸を3滴添加し、濾過し、水で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率95%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
プロトンNMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20;CH
2.50−2.60;−OCO−CH−CH−COO−
3.20−3.80;−O−CH−CH−O−
−CH−、−CH−
3.86 ;−CH
4.30−5.00;−O−CH−O−、−OH
7.16、7.43;−C
8.65、9.60;−NH−CO−
【0066】
(実施例2)
MDI−PPG4−TRE(モル比2/1/1)−3SUC−1ManAポリウレタンの合成
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)に実施例1のポリウレタン(1.00g)とジメチルホルムアミド(30ml)を入れ、攪拌しながら、室温において1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カーボジイミド塩酸塩(EDC、0.57g)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(0.34g)、トリエチルアミン(0.59g)を加え溶解させた。次にこの溶液にD−マンノースアミン塩酸塩(0.53g)を加え、この温度で24時間反応させた。反応溶液を濃縮後、水に投入し、生成物を析出させ、濾過し、水で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率96%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
プロトンNMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20;CH
2.50−2.60;−OCO−CH−CH−COO−
3.20−3.80;−O−CH−CH−O−
−CH−、−CH−
3.86 ;−CH
4.30−5.00;−O−CH−O−、−OH
6.50 ;−NH−CO−
7.16、7.43;−C
8.65、9.60;−NH−CO−
【0067】
(実施例3)
MDI−PPG4−TRE(モル比2/1/1)−5SUCポリウレタンの合成
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)に合成例1のポリウレタン(1.00g) をジメチルアセトアミド(25ml)に室温において溶解させた。次にこの反応液にジメチルアミノピリジン (0.025g)を加え、攪拌しながら、コハク酸無水物(0.966g)を加え、70℃で5時間反応させた。反応溶液を水(75ml)に投入し、生成物を析出させ、1M−塩酸(0.25ml)を加えた。沈殿を濾過し、水で洗浄後、80℃で真空乾燥して生成物を得た(収率91%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
【0068】
(実施例4)
MDI−PPG4−TRE(モル比2/1/1)−5SUC−1ManAポリウレタンの合成
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)に実施例1のポリウレタン(1.00g)とジメチルホルムアミド(35ml)を入れ、攪拌しながら、室温において1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カーボジイミド塩酸塩(0.83g)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(0.49g)、トリエチルアミン(0.86g)を加え溶解させた。次にこの溶液にD−マンノースアミン塩酸塩(0.46g)を加え、この温度で24時間反応させた。反応溶液を濃縮後、水に投入し、生成物を析出させ、濾過、水で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率91%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
プロトンNMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20;CH
2.50−2.60;−OCO−CH−CH−COO−
3.20−3.80;−O−CH−CH−O−
−CH−、−CH−
3.86 ;−CH
4.30−5.00;−O−CH−O−、−OH
6.50 ;−NH−CO−
7.16、7.43;−C
8.65、9.60;−NH−CO−
【0069】
(実施例5)
MDI−PPG4−TRE(モル比2/1/1)−5SUC−2ManAポリウレタンの合成
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)に実施例3のポリウレタン(1.00g)とジメチルホルムアミド(35ml)を入れ、攪拌しながら、室温において1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カーボジイミド塩酸塩(0.83g)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(0.49g)、トリエチルアミン(0.86g)を加え溶解させた。次にこの溶液にD−マンノースアミン塩酸塩(0.93g)を加え、この温度で24時間反応させた。反応溶液を濃縮後、水に投入し、生成物を析出させ、濾過、水で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率91%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
【0070】
(実施例6)
MDI−PPG4−TRE(モル比2/1/1)−5SUC−2GluAポリウレタンの合成
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)に実施例3のポリウレタン(1.00g) とジメチルアセトアミド(35ml)を入れ、攪拌しながら、室温において1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カーボジイミド塩酸塩(0.83g)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(0.49g)を加え、1時間反応させた。次にこの反応液にD−グルコースアミン塩酸塩(1.24g)を加え、この温度で4時間反応させた。反応溶液を濃縮後、水に投入し、生成物を析出させ、濾過し、水で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率96%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
プロトンNMR(溶媒:重ジメチルスルホキシド)
1.05、1.20;CH
2.50−2.60;−OCO−CH−CH−COO−
3.20−3.80;−O−CH−CH−O−
−CH−、−CH−
3.86 ;−CH
4.30−5.00;−O−CH−O−、−OH
6.50 ;−NH−CO−
7.16、7.43;−C
8.65、9.60;−NH−CO−
【0071】
(実施例7)
MDI−PPG7−TRE(モル比2/1/1)−3SUCポリウレタンの合成
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)に合成例2のポリウレタン(1.00g) とジメチルアセトアミド(25ml)を入れ、攪拌しながら、室温においてコハク酸無水物(0.39g)、4−ジメチルアミノピリジン(0.025g)を加えた後、70℃で5時間反応させた。反応溶液を水(75ml)に投入し生成物を析出させ、1M塩酸を3滴添加し、濾過、水で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率95%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
【0072】
(実施例8)
MDI−PPG7−TRE(モル比2/1/1)−3SUC−1ManAポリウレタンの合成
メカニカルスターラーを装着した4口フラスコ(窒素ガス置換済み)に実施例7のポリウレタン(1.00g) とジメチルアセトアミド(30ml)を入れ、攪拌しながら、室温において1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カーボジイミド塩酸塩(0.47g)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(0.28g)を加え、1時間反応させた。次にこの反応液にD−マンノースアミン塩酸塩(0.53g)を加え、この温度で4時間反応させた。反応溶液を濃縮後、水に投入し、生成物を析出させ、濾過し、水で洗浄後、真空乾燥して生成物を得た(収率85%)。
そのプロトンNMRにより目的物であることを確認した。
【0073】
<各サンプルの評価>
1.物性評価
本発明のカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンおよび糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンの物性を、以下の(1)〜(3)の方法により評価した。
評価方法
(1)分子量:実施例で製造したポリウレタン誘導体の重量平均分子量(Mw)は、DMF(ジメチルホルムアミド)を展開溶媒として標準ポリエチレングリコール(PEG)を基準に測定した。
(2)軟化点:実施例で製造したポリウレタン誘導体の軟化点は、融点測定装置を用いて室温から加熱し(5℃/分)、サンプルが溶解した温度をもって測定した。
(3)溶剤可溶性:実施例で得られた各種ポリウレタン(0.1g)がジメチルアセトアミド(1ml)に溶解するか否かを調べた。(1)〜(3)の結果を表1、表2に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
以上の結果から、本発明のカルボキシル基含有オリゴ糖含有ポリウレタンおよび糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンが、熱可塑性および溶剤可溶性を有し、優れた成形性を有していることが示された。
【0077】
2.生理機能評価
上記実施例で得られた本発明の糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンの生理機能を、それらの単球捕捉能を測定することにより評価した。
【0078】
<ポリウレタン塗布シャーレの作製>
実施例2、4、5、6および8で得られた各種糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン(30mg)をジメチルアセトアミド(10ml)に溶解し、メンブレンフィルターでろ過をしてポリウレタン溶液を調製した。この溶液1mlをガラスシャーレ(直径35mm)に入れ70℃で3時間減圧乾燥してポリウレタン塗布シャーレを作製した。
【0079】
<ポリウレタンの単球捕捉評価>
(1)単核球の調製
翼付静注針に上記アダプターを接続し、アダプターのもう一端にホルダーを接続した。注射針を健常人上腕部に穿刺した後、リンパ球分離用チューブ(バクティナーチューブ(ベクトンディッキンソン製))に血液(約7.5ml)を採取した。採血後、該バクティナーチューブに3.8%クエン酸溶液を、血液:クエン酸=10:1になるように添加し、該バクティナーチューブを速やかに3000rpm、20min、室温にて遠心分離した。血漿成分を回収した後に、単核球層を別途容器に回収し、生理食塩液(40ml)を加え、1500rpm、5min、4℃で遠心分離した。本操作を数回繰り返すことにより、単核球の洗浄を行った。洗浄単核球に、上記で回収した血漿に再懸濁し、所定濃度のリンパ球懸濁液を調製した。
(2)ポリウレタン塗布シャーレとの相互作用
各種ポリウレタン塗布シャーレに生理食塩液(1ml)を添加し上清を除去した。本操作を3回繰り返すことにより、シャーレの洗浄を行った。つぎに(1)で調製した単核球懸濁液(1ml)を添加した後に、37℃、5%COインキュベーター内にて30分間静置した。
(3)単球収率および単球純度の算出
所定時間後、上清の回収を行い、またシャーレは生理食塩液(1ml)にて3回洗浄を行った。つぎに10%マンノース溶液(1ml)を添加し、37℃、5%COインキュベーター内にて15分間静置した後に、ピペッティングにてシャーレに付着した単球の回収を行った。単球の収率は下式(1)にて求めた。
【0080】
【数1】

【0081】
単球数は、シャーレから回収した細胞懸濁液中の白血球数を血球カウンター(KX−21NV,シスメックス)にて求め、該細胞懸濁液をCD14−PE蛍光抗体(日本ベクトンディッキンソン)にて標識を行い、フローサイトメーター(BD FACS Canto,日本ベクトンディッキンソン)にて単球の比率を求め、前記白血球数に後記単球の比率を掛けることにより求めた。なお播種時単球数も播種時細胞懸濁液を対象に同様にして求めた。
単球の純度は、シャーレから回収した細胞含有液をCD14−PE蛍光抗体(日本ベクトンディッキンソン)にて標識を行い、フローサイトメーター(BD FACS Canto,日本ベクトンディッキンソン)にて単球の陽性率を求め純度とした。
以上の結果を表3および表4に示す。
なお、実施例1、3および7で得られたカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンについても同様に単球収率および単球純度を測定し、結果を参考例1、3および7として表3および表4に示す。
【0082】
【表3】

【0083】
【表4】

【0084】
以上の結果から、本発明の糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンが、優れた選択的単球捕捉能を有していることが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]:
【化1】

[式中、
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基を表し、
2は、炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基を表し、
3は、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、
4は、単糖または二糖由来の糖残基を表し、
OLSは、一級水酸基を2個有するオリゴ糖の骨格を表し、
rはオリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、
pおよびqはそれぞれ1≦p≦r、0≦q≦r−1の範囲の整数を表し、
m、nはそれぞれ繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲の数である。]
で表される糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン。
【請求項2】
3が、エチレン基である前記請求項1記載の糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン。
【請求項3】
4が、グルコース、マンノース、ラクトースまたはガラクトース由来の糖残基である前記請求項1記載の糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン。
【請求項4】
3が、エチレン基であり、かつR4が、グルコース、マンノース、ラクトースまたはガラクトース由来の糖残基である前記請求項1記載の糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン。
【請求項5】
下記一般式[2]:
【化2】

[式中、
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基を表し、
2は、炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基を表し、
3は、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、
OLSは、一級水酸基を2個有するオリゴ糖の骨格を表し、
rはオリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、
pおよびqはそれぞれ1≦p≦r、0≦q≦r−1の範囲の整数を表し、
m、nはそれぞれ繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲の数である。]
で表されるカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン。
【請求項6】
3が、エチレン基である前記請求項5記載のカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタン。
【請求項7】
下記一般式[3]:
【化3】

[式中、
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基を表し、
2は、炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基を表し、
OLSは、一級水酸基を2個有するオリゴ糖の骨格を表し、
rはオリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、
m、nはそれぞれ繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲の数である。]
で表されるオリゴ糖含有ポリウレタンに、下記一般式[4]:
【化4】

[式中、R3は、炭素数2〜4のアルキレン基を表す。]で表される酸無水物を反応させることを特徴とする、下記一般式[2]:
【化5】

[式中、R、R、R、m、n、p、q、rおよびOLSはそれぞれ上記で定義したとおりである]で表されるカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンの製造方法。
【請求項8】
下記一般式[2]:
【化6】

[式中、
1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜16の2価の炭化水素基を表し、
2は、炭素数2〜12のオキシアルキレン単位及び置換基を有していてもよい炭素数2〜12の2価の炭化水素単位から選ばれる同一または異なる単位を合計1〜100単位含有する2価の基を表し、
3は、炭素数2〜4のアルキレン基を表し、
OLSは、一級水酸基を2個有するオリゴ糖の骨格を表し、
rはオリゴ糖の二級水酸基の総数を表し、
pおよびqはそれぞれ1≦p≦r、0≦q≦r−1の範囲の整数を表し、
m、nはそれぞれ繰り返し単位数であり、mは0〜1000、nは1〜1000の整数を表し、n/(m+n)は0.01〜1.00の範囲の数である。]
で表されるカルボキシル基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンを、
下記一般式[5]:
【化7】

[式中、R4は、単糖または二糖由来の糖残基を表す。]で表されるアミノ化糖と反応させることを特徴とする、下記一般式[1]
【化8】

[式中、R、R、R、R、p、q、r、m、nおよびOLSはそれぞれ上記で定義したとおりである]
で表される糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンの製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の糖残基修飾オリゴ糖含有ポリウレタンを用いてなることを特徴とする生理機能材料。
【請求項10】
血液と接触する用途に使用される請求項9記載の生理機能材料。
【請求項11】
請求項9記載の生理機能材料を用いてなるフィルター。
【請求項12】
血液分離フィルターである請求項11記載のフィルター。
【請求項13】
単球分離フィルターである請求項11記載のフィルター。

【公開番号】特開2007−314735(P2007−314735A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−149031(P2006−149031)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】