説明

ポリエンカルボン酸誘導体、これの製造方法および使用

本発明は、Y、R、R2、R3、R4、X、X2、X3、n、mおよびoが明細書に記載の
とおりである式(I)のサーペンテマイシンと称される新規な化合物に関し、この化合物は微生物Actinomycetales sp.DSM 14865から酵素分解の間に生成される。本発明はサーペンテマイシンの化学的誘導体、これを製造するための方法および、特に細菌感染疾病の治療および予防のための薬物としての、この化合物の使用にも関する。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーペンテマイシンと称される新規な化合物に関する。この化合物は微生物Actinomycetales sp.DSM 14865から生成される。本発明はサーペンテマイシンの化学的誘導体、これを製造するための方法および、特に細菌感染疾病の治療および予防のための薬物としてのこの化合物の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
感染性細菌疾病を治療するために多数の抗生物質が療法的に使用される。しかしながら、病原体は使用される医薬品に対する耐性がますます大きくなっており、β−ラクタム抗生物質、グリコペプチドまたはマクロライドのような単一の抗生物質の群に対してますます抵抗できるようになるのみか、同時にいくつかの耐性を有する多耐性有機体と称されるもののため、重大なリスクに脅かされてさえいる。市販で入手できる抗生物質のすべてに対して耐性を獲得した病原体もある。この有機体によって惹起される感染性の疾病は治療されることがもはやできない。従って、耐性有機体に対して使用できる新規な薬剤に関して大きな需要がある。数千の抗生物質が文献中に記載されているが、これらのほとんどは毒性が大きすぎるので医薬品として使用されることができない。
【0003】
ほとんどが大環状構造のタイプに属するポリエン抗生物質の比較的多数がすでに記載されている。これらのマクロライドは生体隔膜との相互作用によって抗菌性的に作用し、従って、恒温動物に対して有害である。このタイプのものの最も重要な代表例は、その毒性にもかかわらずヒトでの治療剤として使用されるアンフォテリシンBである。大環状ではない記載のある(Ritzau et al., Liebigs Ann. Chem. 1993, 433-435)ポリエン抗生物質の例は、1,2位置がポリエン側鎖によって置換されているフェニル環を含むサーペンテン(serpentene)である。グラム陽性およびグラム陰性のバクテリアに対する試験において、サーペンテンは枯草菌(Bacillus subtilis)に対して弱い抗生効果しか示さなかった。
【0004】
グラム陽性バクテリアの細胞壁は特にムレインから構成されており、これは二糖類のように互いに結合しているN−アセチル−D−グルコサミンおよびN−アセチルムラミン酸からなり、またD−グルタミン、D−およびL−アラニン、L−リジンおよびペンタグリシル単位のようにアミノ酸およびペプチドを含み、また強力に架橋している。バクテリアの細胞壁の生合成は、恒温動物代謝では見いだされない酵素を使用して実施される。従って、この酵素は恒温動物代謝によって十分に許容される抗生物質を生成するのに好適な攻撃部位であり、またムレイン生合成の阻害剤はヒトに対して有毒性であってはならない。グリコシルトランスフェラーゼ(トランスグリコシラーゼ、GT)はペプチドグリカン生合成での、従って細胞壁構造の鍵になる酵素である。この酵素つまりモエノマイシン(Kurz et al., Eur. J. Biochem. 1998, 252, 500-507)の特定の阻害剤は比較的以前からすでに知られている。モエノマイシンは極めて強力な活性を示しそして十分に許容される抗生物質であるが、しかしながら、それは胃腸管から吸収されず、また静脈内投与に続く血液からの除去もまた妨げられる。これらの理由のため、内科においてモエノマイシンを全身的に使用することはこれまでできなかった。このとき以来、極めて少数の追加的なグリコシルトランスフェラーゼ阻害剤だけが文献に記載されてきた。薬物動態学または寛容性の理由で、これらの薬剤はいずれも療法に取り入れられていない。この理由のため、Current Medicinal Chem. 2000, 7, 801-820 にGoldmanおよびGangeによって最近報告されているように、新規のGT阻害剤がいまだに探索されている。特定の生化学的GT試験装置を使用してスクリーニングが行われる。このアッセイは例えば Antimicrobial Agents and Chemotherapy 2000, 44, 1181-1185 にVollmerおよびHoeltjeによって繰り返し記載されている。
【0005】
Darbyら(U. Org. Chem. 1977, 42, 1960-1967)は、大環状アンヌレンのπシステムを分析するために、1,2位置でトランス−ポリエン側鎖によって置換されているフェニル化合物の合成について記載している。
【0006】
Actinomycetales sp,DSM 14865株は、グリコシルトランスフェラーゼの極めて良好な阻害剤でありまた極めて有効な抗菌性化合物である新規な化合物を生成することができることが驚くべきことに見いだされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明はActinomycetales sp.DSM 14865株によって生成される活性化合物に関し、またこれの生理学的に許容されうる塩、エステル、エーテルおよび自明の化学的均等物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、従って、式(I)
【化1】

{式中、Yは式(II)
【化2】

または式(III)
【化3】

の基であり、
RはH、C1〜C6−アルキル、C2〜C6−アルケニル、C2〜C6−アルキニルまたはC5〜C14−アリール、ハロゲン、−CN、−OH、−O−C1〜C6−アルキル、−O−C2〜C6−アルケニル、−O−C5〜C14−アリール、−O−C2〜C6−アルキニル、−NH2、−NH−C1〜C6−アルキル、−NH−C2〜C6−アルケニル、−NH−C2〜C6−アルキニル、−NH−C5〜C14−アリール、−N(−C1〜C6−アルキル)2、−N(−C2〜C6−アルケニル)2、−N(−C2〜C6−アルキニル)2、−N(−C5〜C14−アリール)2、−NH[−C(=O)−(C1〜C6−アルキル)]、−NH[−C(=O)−(C5〜C14−アリール)]、−NH−O−R1、−SH、−S−C1〜C6−アルキル、−S−C2〜C6−アルケニル、−S−C1〜C6−アルキニルまたは−O−C5〜C14−アリールであって、ここで上記の置換基は置換されていなくてよくまたは、C1〜C6−アルキル、C2〜C6−アルケニル、C2〜C6−アルキニルまたはC5〜C14−アリールによって1回またはそれ以上置換されていてよく、ここでアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールは置換されていなくてよくまたは、−OH、=O、−O−C1〜C6−アルキル、−O−C2〜C6−アルケニル、−O−C5〜C14−アリール、−C5〜C14−アリール、−NH−C1〜C6−アルキル、−NH−C2〜C6−アルケニル、−NH2、ハロゲンによって1回または2回置換されていてよく、ここでアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールは−CN、アミドまたはオキシムによってさらに置換されていてよく、
1、R2、R3およびR4は互いに独立に、H、C1〜C6−アルキル、C2〜C6−アルケニル、C2〜C6−アルキニルまたはC5〜C14−アリールであって、アルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールは置換されていなくてよくまたは、−OH、−O−C1〜C6−アルキル、−O−C2〜C6−アルケニル、−O−C5〜C14−アリール、−C5〜C14−アリール、−NH−C1〜C6−アルキル、−NH−C2〜C6−アルケニル、−NH2またはハロゲンによって1回または2回置換されていてよく、ここでアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールは置換されていなくてよくまたは、−OH、=O、−O−C1〜C6−アルキル、−O−C2〜C6−アルケニル、−O−C5〜C14−アリール、−C5〜C14−アリール、−NH−C1〜C6−アルキル、−NH−C2〜C6−アルケニル、−NH2またはハロゲンによって1回または2回置換されていてよく、ここでアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールは−CN、アミドまたはオキシムによってさらに置換されていてよく、
1,X2およびX3は互いに独立に、−CH2−、−CHR−、−NH−、−N(C1〜C6−アルキル)−、−N(C2〜C6−アルケニル)−、−N(C2〜C6−アルキニル)−、−N[−C(=O)−(C1〜C6−アルキル)]−、−N[−C(=O)−(C5〜C14−アリール)]−、−N(C5〜C14−アリール)−、−N(O−R)−、−O−または−S−であり、
nおよびmは互いに独立に、2、3、4または5であり、そして
oは0、1、2または3である}で表わされるが、但し、oが0であり、nが2であり、mが2または3であり、X2およびX3がOであり、そしてR2およびR3がC25であり、そしてすべての二重結合がトランス配置に位置しているものではない式(I)の化合物、および/または立体異性体の形の式(I)の化合物および/またはこれらの形の化合物の任意の比の混合物、および/または式(I)の化合物の生理学的に許容される塩に関する。
【0009】
1〜C6−アルキルは炭素原子1〜6個、好ましくは1〜4個を有する直鎖または分枝鎖のアルキル基、例えばメチル、エチル、i−プロピル、第3級−ブチルおよびヘキシルである。
【0010】
2〜C6−アルケニルは、1、2または3個所が不飽和である炭素原子2〜6個を有する直鎖または分枝鎖のアルケニル基、例えばアリル、クロチル、1−プロペニル、ペンタ−1,3−ジエニルおよびペンテニルである。
【0011】
2〜C6−アルキニルは、1または2個所が不飽和である炭素原子2〜6個を有する直鎖または分枝鎖のアルキニル基、例えばプロピニル、ブチニルおよびペンチニルである。
【0012】
5〜C14−アリールは、炭素原子5〜14個を有するアリール基、例えばフェニルまたは非置換のもしくはハロゲンによって置換された1−ナフチルもしくは2−ナフチル、C1〜C6−アルキル、好ましくはC1〜C4−アルキル、例えばメチル、ヒドロキシル、−O−C1〜C6−アルキル、好ましくは−O−C1〜C4−アルキル、例えばメトキシ、またはトリフルオロメチルである。
【0013】
脂肪族アシル基−N[−C(=O)−(C1〜C6−アルキル)]−は、好ましくはC1〜C4−アルキルを含むのが望ましくまた例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヘキサノイル、アクリロイル、クロトノイルまたはプロピオロイルであり、またハロゲン例えば塩素、臭素またはフッ素によって、NH2によって、および/または−NH(C1〜C6−アルキル)、好ましくは−NH(C1〜C4−アルキル)、例えばメチルアミノまたはエチルアミノによってさらに置換されてよい。芳香族アシル−N[−C(=O)−(C5〜C14−アルキル)]−は例えばN−ベンゾイルまたはN−ナフトイルであり、またハロゲン例えば塩素、臭素またはフッ素によって、C1〜C6−アルキル、好ましくはC1〜C4−アルキル、例えばメチルによって、ヒドロキシルによって、−NH(C1〜C6−アルキル)、好ましくは−NH(C1〜C4−アルキル)、例えばメチルアミノまたはエチルアミノ、または−O−C1〜C6−アルキル、好ましくは−O−C1〜C4−アルキル、例えばメトキシによってさらに置換されてよい。
【0014】
ハロゲンは周期律システムの第VII族内の元素、好ましくは塩素、臭素またはフッ素である。
【0015】
別記しないかぎり、式(I)の化合物のポリエン基中の二重結合の配置はシスまたはトランス配置であってよい。本発明は純粋な化合物および、鏡像異性体混合物およびジアステレオマー混合物のような立体異性体混合物の双方に関する。立体異性体の形は、分子内の原子または原子群の異なる空間的配列(配置)を有する一方、例えばシス−トランス異性体のように、二重結合において原子が同様に結合している化合物であると特に理解される。
【0016】
好ましくは、式(I)の化合物中の少なくとも1つのポリエン基は、少なくとも1つのシス二重結合を含む。
【0017】
RはHであるのが好ましい。
1、R2、R3およびR4は互いに独立にHまたはC1〜C6−アルキルであるのが好ましい。
1、X2およびX3は互いに独立に−O−であるのが好ましい。
mは3または4であるのが好ましい。
nは2であるのが好ましい。
oは0であるのが好ましい。
【0018】
基の一般的な定義および基の好ましい定義は、式(I)の化合物中のR、R1、R2、R3およびR4、X1、X2およびX3、m、nおよびoは互いに独立に、相互の間で任意に組み合わされていてよい。
【0019】
本発明は式(I)において、
RがHであり、
1がHまたはC1〜C6−アルキルであり、
2がHまたはC1〜C6−アルキルであり、
3がHまたはC1〜C6−アルキルであり、
4がC1〜C6−アルキルであり、そして
1およびX2が−O−である
化合物およびその生理学的に許容されうる塩に関するのが好ましい。
【0020】
好ましくは、本発明は式(IV)
【化4】

(式中、mは3または4である)
の化合物によって特徴づけられる式(I)の化合物およびその生理学的に許容されうる塩に関する。
【0021】
特に好ましくは、本発明はmが4でありそしてポリエンの配置が式(V)
【化5】

に相当する式(IV)の化合物に関する。
【0022】
1およびR2がHである式(V)の化合物が特に好ましい。この化合物は以下の記述においてサーペンテマイシン(serpentemycin)A(実験式:C20184;MW=322.36)と称する。
【0023】
さらに特に好ましくは、本発明はnが2でありまたmが3でありそしてポリエンの配置が式(VI)
【化6】

に相当する式(IV)の化合物に関する。
【0024】
1およびR2がHである式(VI)の化合物が特に好ましい。この化合物は以下の記述においてサーペンテマイシンB(実験式:C18164;MW=296.33)と称する。
【0025】
さらに特に好ましくは、本発明はnが2でありまたmが3でありそしてポリエンの配置が式(VII)
【化7】

に相当する式(IV)の化合物に関する。
【0026】
1およびR2がHである式(VII)の化合物が特に好ましい。この化合物は以下の記述においてサーペンテマイシンC(実験式:C18164;MW=296.33)と称する。
【0027】
好ましくは、本発明は式(VIII)
【化8】

の化合物によって特徴づけられる式(I)の化合物およびその生理学的に許容されうる塩に関する。
【0028】
さらに特に好ましくは、本発明はR2およびR3がHでありそしてポリエンの配置が式(IX)
【化9】

に相当する式(VIII)の化合物に関する。
【0029】
1がHである式(IX)の化合物が特に好ましい。この化合物は以下の記述においてサーペンテマイシンD(実験式:C20224;MW=236.40)と称する。
【0030】
さらに特に好ましくは、本発明はR2およびR3がHでありそしてポリエンの配置が式(X)
【化10】

に相当する式(VIII)の化合物に関する。
【0031】
1がHである式(X)の化合物が特に好ましい。この化合物は以下の記述においてサーペンテマイシンEと称する。
【0032】
さらに本発明は実験式C20184(サーペンテマイシンA)、C18164(サーペンテマイシンBおよびC)またはC20224(サーペンテマイシンD)を有する化合物に関し、これらはActinomycetales sp.DSM 14865またはその変異体および/または突然変異体の1つを、培養液中の化合物サーペンテマイシンA、B、Cおよび/またはDが増殖するまで培地中で培養し、そして引き続いて化合物を単離し、また適当ならこれを薬理学的に許容できる塩に転化することにより得ることができる。
【0033】
本発明は式(I)の化合物に関し、これはActinomycetales sp.DSM 14865またはその変異体および/または突然変異体の1つを、培養基ブロス中の化合物サーペンテマイシンA、B、Cおよび/またはDの1つまたはそれ以上が増殖するまで培地中で培養し、次いで化合物を単離し、適当ならこれを化学的な誘導体に転化し、そして適当ならこれを薬理学的に許容できる塩に転化することにより得ることができる。
【0034】
サーペンテマイシンA、B、Cおよび/またはDは、規定された構造式の点で文献的に知られた物質とは異なる。構造的に関連するポリエンカルボン酸誘導体は既知であるが、これはその化学構造、抗菌活性および/または生化学活性および他の物理特性の点で本発明の化合物とは異なる。
【0035】
さらに本発明は
1.化合物サーペンテマイシンA、B、Cおよび/またはDの1つまたはそれ以上が培養基ブロス中で増殖するまで、微生物Actinomycetales sp.DSM 14865、またはその変異体および/または突然変異体の1つを水性の栄養素培地中で培養し、
2.サーペンテマイシンA、B、CまたはDを単離しそして精製し、
3.適切なら、好適な反応剤を使用してサーペンテマイシンA、B、CまたはDを式(I)の化合物へと転化し、
4.そして、適切なら、式(I)の化合物を薬理学的に許容できる塩に転化する
ことからなる式(I)の化合物の製造方法に関する。
【0036】
好適な反応剤の例はサーペンテマイシンA、B、CおよびDのカルボキシル基を対応するエステルに転化するために使用できるアルキル化剤である。アルキル化剤の例はヨウ化メチル、硫酸ジエチル、ジアゾメタンおよび、例えばJohn Wiley & Sonsの1992年刊 Advanced Organic Chemistry第4版中でJerry Marchによって述べられているような他のアルキル誘導体である。二重結合は例えば、光化学的に異性化されまたは遊離ラジカル生成剤が添加されて存在するなかで異性化されることができる。反応を選択的に実施するために、好適な保護基をそれ自体知られた仕方で反応に先立って導入するのが有利である。保護基は反応の後に除去され、次いで反応生成物が精製される。
【0037】
これに加えて本発明は式(I)の化合物の自明の化学的均等物に関する。自明の化学的均等物は、僅かな化学的な差異を示す、つまり同じ活性を有しまたは穏和な条件下で本発明の化合物に転化される化合物である。この均等物には例えばエステル、アミド、ヒドラジド、無水物、水素化生成物、還元生成物、本発明の化合物の錯体または本発明の化合物との付加物がある。
【0038】
式(I)の化合物を対応する薬理学的に許容できる塩に転化するために当業者に知られた方法を用いることができる。本発明の化合物の薬理学的に許容できる塩は、Remingtons Pharmaceutical Siences (17th Edition, p.1418 [1985]) に記載されているように無機塩および有機塩の双方を意味すると解される。特に好適な塩は、アルカリ金属、アンモニウムまたはアルカリ土類金属の塩、生理学的に許容されうるアミンとの塩およびHCl、HBr、H2SO4、マレイン酸およびフマル酸のような無機酸または有機酸との塩である。
【0039】
Actinomycetales sp.DSM 14865株はグルコース、デンプン、酵母エキスまたはグリセロールを含有する栄養溶液中でサーペンテマイシンA、B、CおよびDを生成する。
【0040】
これに加えて、Actinomycetales sp.DSM 14865は僅かに変化するポリエン鎖を有する多くの副生物を生成する。
【0041】
Actinomycetales sp.の分離株は、ドイツのMascheroder Weg 1B,38124 BrunswickにあるDeutsche Sammlung von Mikroorganisms und Zellkulturen GmbH(DSM)[German collection of microorganisms and cell cultures]にブダベスト条約に従って2002年3月18日に寄託された。
【0042】
エンバク−フレーク培地上でActinomycetales sp.DSM 14865は褐色〜ベージュ色の基底菌糸体とまばらな気生菌糸体を有した。培養でこれはActinomycetesを特徴づける子実体をなんら生成しなかった。
【0043】
この方法はActinomycetales sp.DSM 14865、その突然変異体および/または変異体を、炭素源および窒素源、無機塩そして適当なら痕跡量の元素を含有する培地中で好気性条件下で培養することからなる。
【0044】
Actinomycetales sp.DSM 14865株の代わりに、その突然変異体および変異体が本発明の化合物を合成するならこれらを使用することもできる。
【0045】
突然変異体は、そのゲノム中の1つまたはそれ以上の遺伝子が変性されている微生物であり、本発明の化合物を生成する微生物の能力の原因である1つまたはそれ以上の遺伝子は、それらが機能的でありまた遺伝性であるように保持される。
【0046】
このような突然変異体は、物理的手段例えば紫外線またはX−線を使用するような照射によって、またはエチルメタンスルホネート(EMS);2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン(MOB)またはN−メチル−N'−ニトロ−N−ニトロソグァニジン(MNNG)のような化学的突然変異原を使用することにより、またはPrentice Hallの『Biology of Microorganism』(1984年刊)238〜247ページにBrockらによって記載されているように、それ自体既知の仕方で生産することができる。
【0047】
変異体は微生物の表現型である。微生物はその環境に適応する能力を有し、従って、高度に発達した生理学的融通性を示す。微生物のすべての細胞は表現型適応に関与し、変化の本質は遺伝的に条件付けられてはいずまた変更された条件下で可逆性である(H. Stolp, Microbial ecology: organismus, habitats, activities. Cambridge University Press, Cambridge, GB, p.180, 1988)。
【0048】
本発明の抗生物質を生成する突然変異体および変異体に対するスクリーニングは、培養ブロス中で増殖した活性化合物の生物学的活性を、例えばその抗菌効果を測定することで、あるいは別に発酵ブロス(fermentation broth)中の抗菌活性を有することが知られた化合物を、例えばHPLC法またはLC−MS法を使用して検出することで決定することにより実施されることができる。
【0049】
培養にとって好適なそして好ましい炭素源は同化可能な炭水化物および糖アルコール例
えばグルコース、ラクトース、サッカロースまたはD−マンニトールであり、そして麦芽エキスまたは酵母エキスのような炭水化物を含有する天然産物でもある。好適な窒素源はアミノ酸、ペプチドおよびタンパク質ならびにカゼイン、ペプトンまたはトリプトンのようなタンパク質分解生成物であり、また肉エキス、酵母エキス、粉砕した種子例えばトウモロコシ、小麦、豆類、大豆または綿の木、アルコール製造からの蒸留残渣、肉粉または酵母エキスでもあり、またアンモニウム塩および硝酸塩でもあり、特に合成的にまたはバイオ合成的に得られたペプチドでもある。無機塩および栄養溶液が含有してよい痕跡量の元素の例は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、鉄、亜鉛、コバルトおよびマンガンの塩化物、炭酸塩、硫酸塩または燐酸塩である。
【0050】
本発明の化合物の生成は、例えば、約0.05〜5%、好ましくは0.5〜2%の澱粉、0.05〜3%、好ましくは0.1〜1%の酵母エキス、0.05〜5%、好ましくは0.1〜2%のグルコース、0.2〜5%、好ましくは0.5〜2%のグリセロール、0.05〜
3%、好ましくは0.1〜1%のConsteep、0.05〜3%、好ましくは0.1〜
1%のペプトン、0.05〜3%、好ましくは0.05〜0.5%のNaClおよび0.05〜3%、好ましくは0.1〜1%のCaCO3を含有する栄養溶液中で特に良好に進行する。百分率の値は各々の場合、栄養溶液全体の重量を基準とする。
【0051】
栄養溶液中でActinomycetales sp.DSM 14865はサーペンテマイシンA、B、CおよびDと副生物との混合物を生成する。本発明の化合物の1つまたはそれ以上の量的割合は栄養溶液の組成に応じて変化しうる。加えて、個々のポリエンカルボン酸の合成は、微生物が抗生物質を全く生成せずまたはそれを検出限界より少ない量で生成するように培地の組成によって制御することができる。
【0052】
微生物は好気的に培養される。つまり例えば、振盪フラスコまたは培養器内で振盪または撹拌されながら浸漬されて、または適当なら空気または酸素を送り込みつつ固体の培地上で培養される。培養は約15〜35℃、好ましくは約25〜32℃、特に27〜30℃の温度範囲で実施することができる。pHの範囲は4〜10、好ましくは6.5〜7.5でなければならない。微生物は一般にこれらの条件下で48〜720時間、好ましくは72〜320時間の期間にわたって培養される。培養はいくつかの段階で実施される。つまり、1つまたはそれ以上の予備的な培養物が液体栄養培地中で最初つくられ、次にこれらの予備的培養物が例えば1:10〜1:100の体積比で実際の生産培地、つまり主培養物中に接種される。予備的培養は例えば、菌糸体を栄養溶液中に接種しそしてそれを約20〜120時間、好ましくは48〜72時間成長させることにより行われる。菌糸体は例えば、固体または液体の培地例えば酵母−麦芽−グルコース寒天、えん麦フレーク寒天または澱粉寒天上で株を約1〜40日、好ましくは14〜21日成長させることにより得ることができる。
【0053】
培養の過程、および本発明の抗生物質の生成は当業者に知られた方法を用いて、例えばバイオアッセイにおいて生物学的活性を試験することによりまたは薄層クロマトグラフィー(TLC)または高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)のようなクロマトグラフィー法によりモニターすることができる。
【0054】
Actinomycetales sp.DSM 14865は深部培養によって本発明の化合物を生産できる。本発明の化合物は菌糸体中および培養濾液中の双方に存在しうる。主な量は通常培養濾液中に存在する。従って、濾過または遠心分離によって培養溶液を分離除去するのが便利である。濾液は吸着樹脂を固相として使用して抽出される。菌糸体、そしてまた表面培養物は好適な溶媒例えばメタノールまたは2−プロパノールによって簡便に抽出される。
【0055】
抽出は広いpH範囲で実施されることができるが、中性または弱酸性の培地中で、好ましくはpH3〜7の間で実施するのが便利である。抽出物は例えば真空で濃縮されそして乾燥されることができる。
【0056】
本発明の抗生物質を単離する1つの方法は、それ自体知られた仕方で溶液分配である。
【0057】
他の1つの精製方法は、Diaion(登録商標)HP−20(Mitsubishi Casei Corp.,
Tokyo,Japan)、Amberlite(登録商標)XAD7(Rohm and Haas,USA)、A
mberchrom(登録商標)CG(Toso Haas,Philadelphia,USA)などのような吸着樹脂上でのクロマトグラフィー精製方法である。これに加えて多数の逆相支持体、例えば高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)との関連で周知になったRP8およびRP18もまた好適である。
【0058】
本発明の抗生物質を精製するための他の1つの選択は、シリカゲルまたはAl23などのように正相クロマトグラフィー支持体と称されるものをそれ自体知られた方法で使用することにある。
【0059】
別な単離方法はFractogel(登録商標)TSK HW−40(Merk KgaA,Darmstadt,Germany)、Sephadex(登録商標)G−25(Amersham,Biosciences,Uppsala,Sweden)などのような分子篩をそれ自体知られた方法で使用する方法である。これに加えて新規なポリエンカルボン酸を富化された物質から結晶化することによりこれを得ることもできる。例えば、無水であろうと含水であろうと有機溶媒およびその混合物が、または様々な塩がこの目的に好適である。本発明の抗生物質を単離しおよび精製するための追加的な方法、好ましくはpH範囲4〜10で陰イオン交換体を使用する方法である。ある量の有機溶媒が添加されている緩衝溶液の使用はこの目的に特に好適である。
【0060】
本発明による化合物は、モエノマイシン群の抗生物質のようなグリコシルトランスフェラーゼの選択的なそして強力な阻害剤は、常に抗菌効果を示し、阻害濃度(IC50)が低いことは強力な静菌活性に関係する。本発明の化合物は、それが細菌の成長および複製を阻害し;従って、細菌感染によって惹起される疾病を治療するのに好適であるので、静菌活性を有する。表1には例として本発明のいくつかの化合物の阻害濃度(IC50)を要約する。特異性がありまた極めて効果的であるグリコシルトランスフェラーゼ阻害剤を見いだすために特別な試験システムを採用した。このシステムは、試験すべき物質と接触されるグリコシルトランスフェラーゼ/3H−モエノマイシン複合体を活用する。GT−阻害効果の測定は放射能で標識されたモエノマイシンAのグリコシルトランスフェラーゼ(PBP 1b)/3H−モエノマイシン複合体からの排除を基礎に置き、放出された3H−モエノマイシンを、固定された複合体から可溶性化合物として分離除去しまたガイガーカウンターを使用して残留放射能を測定することができる。
【0061】
【表1】

【0062】
比較のために、サーペンテンの阻害定数(Ritzau et al., Liebigs Ann, Chem. 1993, 433-435)を測定した:IC50値は18μMであった。
【0063】
従って、本発明は式(I)の化合物を好ましくは細菌感染の治療および/または予防のための医薬品として使用することにも関する。
さらに本発明は式(I)の化合物を、好ましくは細菌感染の治療および/または予防のための医薬を製造するために使用することにも関する。
【0064】
加えて本発明はそれに従う化合物の1つまたはそれ以上を含有する医薬品に関する。
この医薬品は式(I)の少なくとも1つの化合物を生理学的に好適な補助物質の1つまたはそれ以上と混合し、そしてこの混合物を投与に好適な形にすることにより製造される。
【0065】
一般に本発明の医薬品は経口的、局所的または非経口的に投与されるが、これを直腸経由で使用することも原則的に可能である。固体または液体のガレヌス製剤の形の例は、顆粒、粉末、錠剤、糖衣錠、(マイクロ)カプセル、坐薬、シロップ、乳濁液、懸濁液、エアゾル、ドロップまたはアンプル型の注射液であり、そしてまた活性化合物の徐放製剤であり、これの製造においては分解剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、滑剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、甘味料および可溶化剤が慣用的に使用される。しばしば採用される補助物質の例で挙げることができるのは、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、ラクトース、マンニトールおよび他の糖、滑石、乳タンパク、ゼラチン、デンプン、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物性または植物性の油、ポリエチレングリコール、ならびに滅菌水、アルコール、グリセロールおよび多価アルコールのような溶媒である。
【0066】
適切なら、経口投与のための投与単位は放出を遅延しまたは比較的長い期間にわたってそれを延長するために、例えばコーティングによってまたは、好適なポリマー、ロウなどの中に活性化合物を粒子状に埋没させることによりマイクロカプセル化されることができる。
【0067】
好都合な投与量として0.1〜1000、好ましくは0.2〜100mg/kg体重が投与される。この量は本発明の化合物の有効な一日量、例えば30〜3000mg、好ましくは50〜1000mgを少なくとも含有する投与単位で投与されるのが好都合である。
【0068】
以下の例は本発明の範囲をなんら限定することなく本発明を明確にすることが意図されている。
【0069】
〔実施例1〕
Actinomycetales sp.DSM 14865のグリセロール培養
無菌の100mlのエルレンマイヤーフラスコ中で栄養溶液(麦芽エキス1.0%、酵母エキス0.4%、グルコース0.4%、水中のpH7.0)30mlにActinomyc
etales sp.DSM 14865株を接種し、そして回転振盪器上で28℃および180rpmで7日間インキュベートした。次に各々の場合、この培養物1.5mlを80%グリセロール2.5mlで希釈しそして−135℃で貯蔵した。
【0070】
〔実施例2〕
エルレンマイヤーフラスコ中でのActinomycetales sp.DSM 14865の予備的培養物の調製
各々の場合、無菌の300mlのエルレンマイヤーフラスコ中で栄養溶液(グルコース1.5%、大豆粗挽き粉1.5%、Cornsteep 0.5%、CaCO3 0.2%およびNaCl 0.5%、pH7.0)にActinomycetales sp.DSM
14865株を接種し、そして回転振盪器上で28℃および180rpmで4日間インキュベートした。主培養物に接種するためにこの予備的培養物を使用した。
【0071】
〔実施例3〕
Actinomycetales sp.DSM 14865の振盪培養物中での芳香族ポリエンカルボン酸の生成の速度論
20個のエルレンマイヤーフラスコ中で実施例2におけるようにActinomycetales sp.DSM 14865の培養を開始しそして培養物を2週間までの期間にわたって振盪器内でインキュベートした。48、72、96、102、120、240および312時間後に振盪フラスコを取り出した。菌糸体を分離除去した後、そして培養濾液から芳香族ポリエンカルボン酸をMCI−Gel(登録商標)(Mitsubishi
Chemical Industries)によって固相抽出しそしてメタノールで溶出した後、実施例8に記載するように抽出物をHPLCによって分析した。インキュベート時間に依存して起きたHPLCの表面積単位の変化を以下の表に示す。表面積単位は生成物の濃度に比例する。
【0072】
【表2】

【0073】
サーペンテンは96時間後に最大の生成にすでに達していたが、サーペンテマイシンAおよびDの最大濃度は10日後に始めて認められた。生成物のサーペンテマイシンBおよびCは13日後にそれらの最大濃度で存在さえした。
【0074】
〔実施例4〕
サーペンテマイシンAを生成するためのActinomycetales sp.DSM 14865の培養
本発明の抗生物質を生成するために、Actinomycetales sp.DSM 14865株を30Lの培養タンク内で培養した。使用した栄養溶液は以下のとおりであった:水中で可溶性澱粉10g/L;グルコース10g/L;グリセロール10g/L;Cornsteep(液体)2.5g/L;ペプトン5g/L;酵母エキス2g/L;NaCl 1g/L;CaCO3 3g/L;滅菌前のpHは7.2。この栄養培地中で、良好な成長および急速な生産性が認められた。以下の条件下で培養を実施した: 滅菌:T=121℃で20分その場合で実施
接種物:6%
撹拌速度:180rpm
T:28℃
空気:0.45m3/時間
pO2:調整せず
培養中のpH:約6.2;調整せず
【0075】
この条件下で最初の70時間以内に良好な成長が認められ;この時、培地中のC源は消費しつくされそして成長が停滞した。80時間後、本発明の化合物の生成物の最初の生成を検出することができた。98時間後に培養タンクから収穫した。
【0076】
〔実施例5〕
Actinomycetales sp.DSM 14865培養液からのサーペンテマイシンAの単離
Actinomycetales sp.DSM 14865の培養が終了した後、実施例4に述べたようにして得た培養タンクからの培養ブロス27.5リットルを、添加した約2%の濾過促進剤(Celite(登録商標))の存在で濾過し、そして細胞培養物(1890g)をメタノール6リットルによって抽出した。活性化合物を含有するメタノール性溶液を濾過によって菌糸体から分離しそして真空で濃縮した。濃縮物を培養濾液25Lと一緒にした後、pHを7に調整しそして全体を、予め用意した3リットルのMCI GEL(登録商標),CHP20Pカラムに装填した。2−プロパノールは除いて、水中の50mMの酢酸アンモニウム緩衝剤のある勾配でカラムを溶出した。カラムの流通量(flow-through)(7リットル/時間)を画分毎に(それぞれの場合、2リットル)収集しそして抗生物質を含有する画分4から11および16から19をそれぞれの場合に一緒にしそして真空で濃縮した。HPLCを使用して画分を分析した。画分4から11は極性のサーペンテマイシンをより多く含有する一方、画分16から19はサーペンテンを含有した。サーペンテンを含有する画分を、50mMの酢酸アンモニウム緩衝剤/アセトニトリル混合物を最初使用し、次いでトリフルオロ酢酸/アセトニトリル混合物の勾配0.05%を用いて、LiChrospher(登録商標)100RP−18e,250−25,HPLCカラム上でクロマトグラフィーで2回精製した。純粋な抗生物質を含有する画分を凍結乾燥すると、純粋なサーペンテン19mgを得た。
【0077】
画分4から11中の極性のより大きい化合物を真空で濃縮した後、MCI GEL(登録商標)CHP20P(カラム寸法:26mm×300mm)上での勾配法を用いるカラムクロマトグラフィーによってこれらをもう一度精製した。勾配は、50mMの酢酸アンモニウム緩衝剤中での2時間にわたる10%から60%であった。カラムの流通量は1分あたり25mLである一方、画分の大きさは50mLであった。化合物サーペンテマイシンBおよびDは画分15から35中に存在が認められたが、画分36から39はサーペンテマイシンCを含有しまた画分40から43はサーペンテマイシンAを含有した。後の2つを真空で有機溶媒から除去し、その後0.01%のアスコルビン酸を添加しそして0.05%のトリフルオロ酢酸中の45%アセトニトリルを使用してLiChrospher(登録商標)100RP−18e,250−25,HPLCカラム上でアイソクラチッククロマトグラフィーによる精製を実施した。純粋なサーペンテマイシンAを含有する画分(画分31から35)を暗所中で凍結乾燥しそしてサーペンテマイシンAをアルゴン雰囲気(37mg)中に気密に保存した。ESI-質量スペクトル分析:321.4(M−H)、ESI+質量スペクトル分析:305.3(MH−H2O)。UV最大値:315および355nm。NMRデータを表3に示す。C原子を以下のように番号付けした。
【0078】
【化11】

【0079】
【表3】

【0080】
サーペンテマイシンA:
外観:中度極性〜極性のおよび極性の有機溶媒中に可溶でありそして水中に特には可溶でないレモン−黄色の物質。中性および温和な酸性の媒質中で安定であるが、強い酸性および強いアルカリ性の溶液中では不安定である。
サーペンテマイシンAは光および空気に対して敏感である。
実験式:C20184
分子量:322.36
【0081】
〔実施例6〕
サーペンテマイシンBの単離およびこれに関する説明
実施例4に記載のようにして得た、160mLのMCI GEL(登録商標)CHP20PカラムからのサーペンテマイシンBを含有する画分36から39を真空で濃縮しそして僅かなアセトニトリルをまだ含有する水溶液をLiChrospher(登録商標)100
RP−18e,250−25,HPLCカラム上に装填した。0.05%のトリフルオロ
酢酸(pH2.4)中の42%アセトニトリルを使用してアイソクラチック溶出した。カ
ラムの流通量は39mL/分であり;画分を19.5mLごとに取り出しそしてHPLC
によって分析した。画分22から24は抗生物質サーペンテマイシンBを含有した。これらの画分を溶出剤中のアセトニトリル濃度を40%に減少して、同一のカラム上で再度クロマトグラフィーに付した。画分38から42は純粋なサーペンテマイシンBを含有し;これらは凍結乾燥すると10.2mgの抗生物質を生成した。ESI-質量スペクトル分析:295.0985(M−H)、ESI+質量スペクトル分析:297.1164(M+H)でありこれらは実験式C18164に相当した。UV最大値:アセトニトリル/水中の0.1%リン酸の中で306および322nm。NMRデータを表4に示す。原子の番号付けはサーペンテマイシンAのそれと類似である。
【0082】
【表4】

【0083】
サーペンテマイシンB:
外観:中度極性〜極性のおよび極性の有機溶媒中に可溶でありそして水中に特には可溶でない淡黄色の物質。中性および温和な酸性の媒質中で安定であるが、強い酸性および強いアルカリ性の溶液中では不安定である。
サーペンテマイシンBは光および空気に対して敏感である。
実験式:C18164
分子量:296.33
【0084】
〔実施例7〕
サーペンテマイシンCの単離およびこれに関する説明
アスコルビン酸450mgを実施例3に記載のようにして得た培養物の濾液45リットルに添加し、そして全体を3.5リットルのMCI GEL(登録商標)CHP20Pカラム(15×20cm)上にpH4.5で装填した。2−プロパノールを除いて、pH4.5の酢酸アンモニウムの勾配0.1%によってカラムを溶出した。流通量は15リットル/
時間であった。プロパノールを含有する流出物を画分として収集し(各々の場合、7リットル);画分6は極性の芳香族ポリエンジカルボン酸を含有した。これを真空で濃縮し;その後、アスコルビン酸50mgを添加しそして水溶液のpHを3に調整し;次いで溶液を450mLのMCI GEL(登録商標)CHP20Pカラム(5cm×30cm)上に装荷した。脱着は100%のアセトニトリルの後、0.5%の酢酸中の勾配10%のアセトニトリルを使用して実施し;流速25mL/分で分画時間は10分であった(各々の場合、250mL)。極性の芳香族ポリエンジカルボン酸は画分12から19中に存在が確認された。これらを1つに集め、真空で濃縮しそしてゲル浸透クロマトグラフィーによってさらに精製した。使用した支持体はFractogel(登録商標)TSK−HW40(カラム寸法:10×50cm)であり、一方、使用した移動相はアセトニトリル60%、メタノール20%および25mMの酢酸アンモニウム緩衝剤20%からなるpH7の混合物であった。流通量を4.5mL/分とし、画分を30分毎に収集した(各々の場合、135mL)。HPLCによって検出された画分37から40は化合物サーペンテマイシンCを含有した。最終的な精製は、pH7の50mMの酢酸アンモニウム緩衝剤/アセトニトリル移動相を使用してLiChrospher(登録商標)100RP−18e,250−25上で実施した。純粋なサーペンテマイシンCを含有する画分を1つに集めそして水/アセトニトリルを使用してLiChrospher(登録商標)RP−18e,250−10によって脱塩した。凍結乾燥により、サーペンテマイシンCアンモニウム塩15mgを得た。ESI-質量スペクトル分析:295.1(M−H)、ESI+質量スペクトル分析:279.2(MH−H2O)でありこれらは実験式C18164に相当した。UV最大値:アセトニトリル/水中の0.1%リン酸(1:1)の中で212、308および356nm。NMRデータを表5に示す。原子の番号付けはサーペンテマイシンAのそれと類似である。
【0085】
【表5】

【0086】
サーペンテマイシンC:
外観:中度極性〜極性のおよび極性の有機溶媒中に可溶でありそして水中には特に可溶でない淡黄色の物質。中性および温和な酸性の媒質中で安定であるが、強い酸性および強いアルカリ性の溶液中では不安定である。
サーペンテマイシンCは光および空気に対して敏感である。
実験式:C18164
分子量:296.33
【0087】
〔実施例8〕
サーペンテマイシンDの単離およびこれに関する説明
実施例4に記載のようにして得た、160mLのMCI GEL(登録商標)CHP20PカラムからのサーペンテマイシンDを含有する画分36から39を真空で濃縮しそして僅かなアセトニトリルをまだ含有する水溶液をLiChrospher(登録商標)100RP−18e,250−25,HPLCカラム上に装荷した。0.05%のトリフルオロ酢酸(pH2.4)中の42%アセトニトリルを使用してアイソクラチック溶出した。カラムの流通量は39mL/分であり;それぞれの場合、19.5mLの画分を取り出しそして実施例9に述べるようにHPLCによって分析した。画分51から53は抗生物質サーペンテマイシンDを含有した。これらの画分を同一のカラム上で上述したように再度クロマトグラフィーに付したが、ただし溶出剤中のアセトニトリル濃度は40%に減少した。画分13から15は純粋なサーペンテマイシンDを含有し;これらは凍結乾燥すると3mgの抗生物質を生成した。ESI-質量スペクトル分析:325.5(M−H)、ESI+質量スペクトル分析:349.2(M+Na)であり、これらは実験式C20224に相当した。UV最大値:アセトニトリル/水中の0.1%リン酸の中で299および338nm。NMRデータを表6に示す。原子の番号はサーペンテマイシンAのそれと類似に付けられた。
【0088】
【表6】

【0089】
サーペンテマイシンD:
外観:中度極性〜極性のおよび極性の有機溶媒中に可溶でありそして水中には特に可溶でない淡黄色の物質。中性および温和な酸性の媒質中で安定であるが、強い酸性および強いアルカリ性の溶液中では不安定である。
サーペンテマイシンDは光および空気に対して敏感である。
実験式:C20224
分子量:326.40
【0090】
〔実施例9〕
サーペンテマイシンの高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)
以下の条件下でHPLCを実施した。
カラム:Superspher100RP−18e(登録商標),250−4、プレカラム付き
移動相:0.1%リン酸中の50%アセトニトリル
流量:1mL/分
カラム温度:40℃
210nmでのUV吸収による検出
【0091】
以下の保持時間が認められた。
サーペンテマイシンA 10.1分
サーペンテマイシンB 5.6分
サーペンテマイシンC 7.3分
サーペンテマイシンD 5.2分
【0092】
〔実施例10〕
サーペンテマイシンによるグリコシルトランスフェラーゼの阻害の測定
Vollmer および Hoeltjeにより述べられた(Antimicrobial Agents and Chemotherapy 2000, 44, 1181-1185)ようにアッセイを実施したが、ただし本例では、グリコシルトランスフェラーゼの部位に3Hで標識されたモエノマイシンを有する精製されたペニシリン−結合タンパク質1b(PBP1b;5pM)を[3H]ベンジルペニシリンの代わりに使用した。3H−モエノマイシンはモエノマイシンAを32で水素化することによりそれから得た(Kurz et al., Eur. J. Biochem., 1998, 252, 500-507)。300μLのメタノール中に溶解したモエノマイシン6mgを1cm3のフラスコに入れ、その後パラジウム−木炭(Degussa TypeE10N/D)を添加した。次に空気を排出しつつフラスコに1cm3の32をガス注入しそれぞれ反応溶液を15分水素化させた。反応が終点に達した時、触媒を反応混合物から濾過除去し、反応混合物をエタノール100mLによって希釈した。この溶液はグリコシルトランスフェラーゼ:3H−モエノマイシン複合物をつくるのに直接使用できた。反応生成物の全放射能:6.56GBq(177mCi)、比活性度:1.9TBq/ミリモル。放射性複合物をSPA PVT Coppe
r His−Tagビーズに付着した。阻害剤で置換された放射性モエノマイシンを測定した。
SPA PVT CopperHis−Tagビーズ:Amersham RPN 0095;
PBS:GIBCO BRL 14200−067;
BSA:Calibiochem 12657;
NOG:SIGMA O−8001(n−オクチルβ−D−グルコピラノシド);
Tween20:Acros 23336−067;
マイクロタイタープレート:Greiner Labortechnik
【0093】
測定はマイクロタイタープレート中で実施した。10μLの試験溶液をマイクロタイタープレートに加え、続いて3H−モエノマイシン(25nM,3.1kBq/ウェル)10
μLおよびPBP1bが装填されたSPAビーズ(ビーズ100μg、酵素45nM)40μLを添加した。プレートを密封しそして室温に8時間放置した。その後、1300rpmで遠心することによりビーズを試験溶液から分離除去しそして放射能分布をWALLAC MicroBeta(登録商標)1450Counterで測定した。
【0094】
阻害値は下式に従って算出した:
【数1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

{式中、Yは式(II)
【化2】

または式(III)
【化3】

の基であり、
RはH、C1〜C6−アルキル、C2〜C6−アルケニル、C2〜C6−アルキニルまたはC5〜C14−アリール、ハロゲン、−CN、−OH、−O−C1〜C6−アルキル、−O−C2〜C6−アルケニル、−O−C5〜C14−アリール、−O−C2〜C6−アルキニル、−NH2、−NH−C1〜C6−アルキル、−NH−C2〜C6−アルケニル、−NH−C2〜C6−アルキニル、−NH−C5〜C14−アリール、−N(−C1〜C6−アルキル)2、−N(−C2〜C6−アルケニル)2、−N(−C2〜C6−アルキニル)2、−N(−C5〜C14−アリール)2、−NH[−C(=O)−(C1〜C6−アルキル)]、−NH[−C(=O)−(C5〜C14−アリール)]、−NH−O−R1、−SH、−S−C1〜C6−アルキル、−S−C2〜C6−アルケニル、−S−C1〜C6−アルキニルまたは−O−C5〜C14−アリールであって、ここで上記の置換基は置換されていなくてよくまたは、C1〜C6−アルキル、C2〜C6−アルケニル、C2〜C6−アルキニルまたはC5〜C14−アリールによって1回またはそれ以上置換されていてよく、ここでアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールは置換されていなくてよくまたは、−OH、=O、−O−C1〜C6−アルキル、−O−C2〜C6−アルケニル、−O−C5〜C14−アリール、−C5〜C14−アリール、−NH−C1〜C6−アルキル、−NH−C2〜C6−アルケニル、−NH2、ハロゲンによって1回または2回置換されていてよく、ここでアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールは−CN、アミドまたはオキシムによってさらに置換されていてよく、
1、R2、R3およびR4は互いに独立に、H、C1〜C6−アルキル、C2〜C6−アルケニル、C2〜C6−アルキニルまたはC5〜C14−アリールであって、ここでアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールは置換されていなくてよくまたは、−OH、−O−C1〜C6−アルキル、−O−C2〜C6−アルケニル、−O−C5〜C14−アリール、−C5〜C14−アリール、−NH−C1〜C6−アルキル、−NH−C2〜C6−アルケニル、−NH2またはハロゲンによって1回または2回置換されていてよく、ここでアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールは置換されていなくてよくまたは、−OH、=O、−O−C1〜C6−アルキル、−O−C2〜C6−アルケニル、−O−C5〜C14−アリール、−C5〜C14−アリール、−NH−C1〜C6−アルキル、−NH−C2〜C6−アルケニル、−NH2またはハロゲンによって1回または2回置換されていてよく、ここでアルキル、アルケニル、アルキニルおよびアリールは−CN、アミドまたはオキシムによってさらに置換されていてよく、
1,X2およびX3は互いに独立に、−CH2−、−CHR−、−NH−、−N(C1〜C6−アルキル)−、−N(C2〜C6−アルケニル)−、−N(C2〜C6−アルキニル)−、−N[−C(=O)−(C1〜C6−アルキル)]−、−N[−C(=O)−(C5〜C14−アリール)]−、−N(C5〜C14−アリール)−、−N(O−R)−、−O−または−S−であり、
nおよびmは互いに独立に、2、3、4または5であり、そして
oは0、1、2または3である}で表わされるが、但し、oが0であり、nが2であり、mが2または3であり、X2およびX3がOであり、そしてR2およびR3がC25であり、そしてすべての二重結合がトランス配置に位置しているものではない式(I)の化合物、および/または立体異性体の形の式(I)の化合物および/またはこれらの形の任意の比の混合物、および/または式(I)の化合物の生理学的に許容される塩。
【請求項2】
少なくとも1つのポリエン基が少なくとも1つのシス二重結合を含む請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
RがHであり、
1がHまたはC1〜C6−アルキルであり、
2がHまたはC1〜C6−アルキルであり、
3がHまたはC1〜C6−アルキルであり、
4がC1〜C6−アルキルであり、そして
1およびX2が−O−である
請求項1または2に記載の式(I)の化合物およびその生理学的に許容される塩。
【請求項4】
式(IV)
【化4】

(式中、mは3または4である)の化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の式(I)の化合物およびその生理学的に許容される塩。
【請求項5】
式(V)
【化5】

の化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
1およびR2がHである請求項5に記載の式(V)の化合物。
【請求項7】
式(VI)
【化6】

の化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
1およびR2がHである請求項7に記載の式(VI)の化合物。
【請求項9】
式(VII)
【化7】

の化合物である請求項1〜4のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項10】
1およびR2がHである請求項9に記載の式(VII)の化合物。
【請求項11】
式(VIII)
【化8】

の化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項12】
式(IX)
【化9】

の化合物である請求項11に記載の式(VIII)の化合物。
【請求項13】
1がHである請求項12に記載の式(IX)の化合物。
【請求項14】
式(X)
【化10】

の化合物である請求項11に記載の式(VIII)の化合物。
【請求項15】
1がHである請求項14に記載の式(X)の化合物。
【請求項16】
1.化合物サーペンテマイシンA、B、Cおよび/またはDの1つまたはそれ以上が培養ブロス中で増殖するまで、微生物Actinomycetales sp.DSM 14865、またはその変異体および/または突然変異体の1つを水性の栄養素培地中で培養し、
2.サーペンテマイシンA、B、CまたはDを単離しそして精製し、
3.適切なら、好適な反応剤を使用してサーペンテマイシンA、B、CまたはDを式(
I)の化合物へと転化し、
4.そして、適切なら、式(I)の化合物を薬理学的に許容できる塩に転化する
ことからなる請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法。
【請求項17】
好適な反応剤がアルキル化剤である請求項16に記載の方法。
【請求項18】
微生物Actinomycetales sp.DSM 14865、またはその変異体および/または突然変異体を、炭素源および窒素源そして慣用の無機塩および微量元素も含有する培養培地内で培養し、サーペンテマイシンA、B、Cおよび/またはDを単離し、そして適切ならサーペンテマイシンA、B、Cおよび/またはDを薬理学的に許容できる塩に転化することを包含する、請求項12〜15のいずれかに記載の化合物の製造方法。
【請求項19】
培養が20〜35℃の温度および4〜10のpHで好気性条件下で実施される請求項16〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
医薬品を製造するための請求項1〜15のいずれかに記載の化合物の使用。
【請求項21】
感染性細菌疾病の治療および/または予防のための医薬品を製造するための請求項20に記載の化合物の使用。
【請求項22】
請求項1〜15のいずれかに記載の少なくとも1つの化合物と1つまたはそれ以上の生理学的に好適な補助物質とを含有する医薬品。
【請求項23】
請求項1〜15のいずれかに記載の少なくとも1つの化合物を1つまたはそれ以上の生理学的に好適な補助物質とともに投与に好適な形にすることからなる、請求項22に記載の医薬品を製造する方法。
【請求項24】
微生物Actinomycetales sp.DSM 14865。

【公表番号】特表2006−502983(P2006−502983A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−518540(P2004−518540)
【出願日】平成15年6月18日(2003.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2003/006407
【国際公開番号】WO2004/005236
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】