説明

ポリカーボネートポリオールベースのパーソナルケア製品における使用に好適なポリウレタン分散体

【課題】本発明は、パーソナルケア製品における使用に好適なポリカーボネートポリオールベースの水性ポリウレタン分散体の製造方法に関する。
【解決手段】1)1a)ポリカーボネートポリオールと、1b)脂肪族または脂環式ポリイソシアネートと、1c)任意にイオン基で置換されていてもよい低分子量ジオールと、を反応させることによってプレポリマーを提供する工程;2)プレポリマーを数平均分子量約3000未満のモノヒドロキシル官能性ポリアルキレンオキシドと反応させる工程;3)有機溶媒の存在下でプレポリマーを鎖延長剤で鎖延長させてポリウレタンを生成する工程;4)ポリウレタンを水に分散させる工程;並びに5)有機溶媒を除去し、水性ポリウレタン分散体を生じる工程を包含し、モノヒドロキシル官能性ポリアルキレンオキシドの基がポリウレタンの約0.1重量%〜約5重量%を構成する、水性ポリウレタン分散体の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性ポリウレタン分散体、それらの製造方法、およびそれらの化粧用途、例えば毛髪固定剤、における使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン分散体は近年、化粧品、例えば毛髪固定剤およびサンタンローションなど、に混合され、常套の技術、例えばアクリル酸系誘導体とアクリルアミドとのコポリマー、ポリビニルピロリドン、およびPVP/VAコポリマー、に優るいくつかの利点を提供している。そのような利点としては、水混和性、低VOCスプレー配合容易性、耐水性および優れたフィルム形成能が挙げられる。特に、ヘアケア製品において、ポリウレタン分散体は、ベタベタ感なしに高いセット効果、ポリマーの弾性記憶による優れたスタイル保持力、自然な外見および感触を提供する。これら全ての特性は、消費者に非常に有益である。毛髪固定剤およびヘアスタイリングポリマーとしてデザインされている市販のポリウレタン分散体は、一般的に、良好な高湿度カール保持力、スタイル保持力、良好な感触および艶を示す。しかしながら、それらの毛髪への付着力の不足がコーミング後の毛髪における大部分の剥落(flakiness)によって示される。このことは消費者に大きな美観問題を与える。
【0003】
毛髪固定ポリマーをデザインする挑戦は、しばしば対立する要求間のバランスを取ることからなる。ポリマーは、高湿度においてもカール保持力を提供する程充分疎水性でなければならないが、一方、水で洗うことによって毛髪から除去されるように充分親水性のままでなければならない。更に、ポリマーは、セット強度、弾性、毛髪への付着力および柔らかい感触を提供するために、ガラス転移温度、柔軟性および分子量の最高の組み合わせを有さなければならない。
【0004】
米国特許第5,626,840号は、2,2−ヒドロキシメチル−置換カルボン酸を用いて提供されるポリウレタン分散体ベースの毛髪固定剤を開示している。これは、水溶性または水分散性ポリウレタンを用いて良好な耐湿性およびスプレー特性をどのように達成するかを記述している。実施例は、アルコールを含むエアロゾルスプレー配合物中のポリマーの効力しか示していない。これは環境および毛髪の健康両方に有害である。最後に、この発明は、分散体が有効になるために観測されなければならないジメチロールプロピオン酸(DMPA)のCOOHをポリウレタン分散体中のポリウレタン1グラムあたり0.35〜2.25ミリグラム当量使用している。
【0005】
しかしながら、この開示は、毛髪への良好な付着を達成することによって毛髪におけるポリマーの剥落の一般的な問題をどのように避けるかを開示していない。更に、この開示はどのようにしてスタイル保持力を達成するか(例えばポリマーの弾性挙動)を教示していない。最後に、酸がポリマーの分解を促進する傾向があるので、カール保持力および洗浄性を達成しながら少量の酸が好ましく使用されるべきである。
【0006】
米国特許第6,613,314号は、ポリウレタン分散体を用いる再成形可能な毛髪組成物を開示している。ポリウレタンの製造中、イソシアネート官能性プレポリマーが形成される。このプレポリマーは、分散体の媒体に可溶性である少なくとも一種類のポリアクティブ水素化合物(polyactive hydrogen compound)を組み込む。好ましくはスルホン化化合物が用いられる。スルホン基がウレアセグメント(urea segment)を介するというよりもむしろプレポリマー中に組み込まれる。
【0007】
米国特許第6,106,813号は、化粧用途に好適であるポリエステルポリウレタンを開示している。これは、良好なフィルム形成特性を有するだけでなく、大きな剛性並びに水および洗浄剤による除去に対する優れた耐性も与える、新しいポリエステルポリウレタン群を開示している。ヘアスタイリング/毛髪固定剤用途に関しては、この特許における実施例は、良好な形状保持力を主張しているヘアスタイル成形ローションにおいてのみ、発明の使用を示す。
【0008】
しかしながら、この参考文献は、毛髪への付着性や水による良好な除去性を有しながらどのように優れた耐湿性を達成するのかに言及していない。ヘアスタイリング/毛髪固定剤ポリマーの重要な特性、例えば自然な感触および毛髪の光沢、にも言及していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、毛髪への付着力を改良し、更に優れたカールおよびスタイル保持力、自然な感触および外観を示すポリマー組成物を提供することである。
【0010】
本発明は、毛髪への優れた付着力を示す組成物を提供する。市販の毛髪固定剤ポリウレタン分散体と比較して、本発明の組成物は、非常に少ししか剥落しないかまたは全く剥落しない。加えて、本発明の組成物は、上記ポリウレタン分散体と比較して改良された保湿、高い光沢および自然な感触を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明の要旨
本発明は、
1) 1a)少なくとも一種類のポリカーボネートポリオールと、
1b)一種類以上の脂肪族または脂環式ポリイソシアネートと、
1c)任意にイオン基で置換されていてもよい少なくとも一種類の低分子量ジオールと、
を反応させることによって式
【化1】

(式中、
は、ポリカーボネートポリオールの二価の基であり、
は、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートの基であり、
は、任意にイオン基で置換されていてもよい低分子量ジオールの基であり、
nは、1〜5であり、かつ
mは、1超である。)
のプレポリマーを提供する工程;
2)プレポリマーを少なくとも一種類の数平均分子量約3,000未満のモノヒドロキシル官能性ポリアルキレンオキシドと反応させる工程;
3)有機溶媒の存在下でプレポリマーを
3a)式HN−R−NH(式中、Rは、イオン基や潜在的なイオン基で置換されていないアルキレンまたはアルキレンオキシド基である。)の少なくとも一種類の鎖延長剤、および
3b)要すれば、式HN−R−NH(式中、Rは、イオン基もしくは潜在的なイオン基で置換されているアルキレン基である。)の少なくとも一種類の鎖延長剤
で鎖延長させてポリウレタンを生成する工程;
4)ポリウレタンを水に分散させる工程;並びに
5)有機溶媒を除去し、水性ポリウレタン分散体を生じる工程
を包含し、モノヒドロキシル官能性ポリアルキレンオキシドの基がポリウレタンの約0.1wt.%〜約5wt.%を構成する、パーソナルケア製品における使用に好適な水性ポリウレタン分散体の製造方法に関する。
【0012】
発明の詳細な説明
本明細書および特許請求の範囲中、他に示されない限り、用語「分子量」は、数平均分子量を意味すると解釈されるべきである。
【0013】
二価の基Rの提供に好適なポリカーボネートポリオールは、少なくとも二つのヒドロキシル基を有し、数平均分子量が約700〜約16,000、好ましくは約750〜約5000であるポリカーボネートポリオールである。
【0014】
ヒドロキシル基を含むポリカーボネートとしては、それ自体既知であるポリカーボネート、例えば、ジオール、例えばプロパンジオール−(1,3)、ブタンジオール−(1,4)および/またはヘキサンジオール−(1,6)、ジエチレングリコール、ビスフェノールA、トリエチレングリコールまたはテトラエチレングリコールと、ジアリールカーボネート、例えばジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチレングリコールカーボネートまたはホスゲンとの反応によって得られる生成物が挙げられる。
【0015】
炭化水素基Rを提供する好適なポリイソシアネートとしては、分子量が約112〜1,000、好ましくは約140〜400である有機ジイソシアネートが挙げられる。好ましいジイソシアネートは、一般式R(NCO)(式中、Rは、炭素原子を4〜18個有する二価の脂肪族炭化水素基、炭素原子を5〜15個有する二価の脂環式炭化水素基、炭素原子を7〜15個有する二価の芳香脂肪族炭化水素基または炭素原子を6〜15個有する二価の芳香族炭化水素基である。)によって示されるジイソシアネートである。好適である有機ジイソシアネートの例としては、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−および−1,4−ジイソシアネート、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネートまたはIPDI)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)−メタン、1,3−および1,4−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、ビス−(4−イソシアナト−3−メチル−シクロヘキシル)−メタン、トルエンジイソシアネート(TDI)の異性体、例えば2,4−ジイソシアナトトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、これらの異性体の混合物、水素化TDI、4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンおよびその2,4’−および任意に2,2’−ジイソシアナトジフェニルメタンとの異性体混合物、並びに1,5−ジイソシアナトナフタレンが挙げられる。ジイソシアネートの混合物はもちろん使用され得る。好ましいジイソシアネートは、脂肪族および脂環式ジイソシアネートである。1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソホロンジイソシアネートが特に好ましい。
【0016】
低分子量ジオールは、使用されると、通常、ポリマー鎖の剛化を生じる。「低分子量ジオール」は、分子量が約62〜700、好ましくは62〜200のジオールを意味する。少なくとも一種類の低分子量ジオールは、イオン基または潜在的なイオン基を含む。イオン基または潜在的なイオン基を含む好適な低分子量ジオールは、米国特許第3,412,054号に開示されている低分子量ジオールである。好ましい化合物としては、ジメチロール酪酸(DMBA)、ジメチロールプロピオン酸(DMBA)およびカルボキシル含有カプロラクトンポリエステルジオールが挙げられる。イオン基または潜在的なイオン基を含む低分子量ジオールは、ポリウレタン分散体中のポリウレタン1グラムあたり0.30ミリグラム当量未満のCOOHが存在するような量で使用される。
【0017】
イオン基も潜在的なイオン基も含まない別の低分子量ジオールを任意に使用してもよい。それらは脂肪族、脂環式または芳香族基を含み得る。好ましい化合物は脂肪族基のみを含む。一分子あたり炭素原子を約20個以下有する低分子量ジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパン1,2−ジオール、プロパン1,3−ジオール、ブタン1,4−ジオール、ブチレン1,3−グリコール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルプロパンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ヘキサン1,6−ジオール、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシクロヘキシル)−プロパン)、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0018】
本発明における使用に好適なモノヒドロキシル官能性ポリアルキレンオキシド化合物としては、数平均分子量が約3,000未満、好ましくは300〜3,000の、エチレンオキシドもしくはプロピレンオキシドまたは両方ベースのモノヒドロキシル官能性ポリエーテルが挙げられる。好適な化合物としては、ペンシルヴェニア州ピッツバーグのBayer MaterialScienceから市販されているエチレンオキシド/ポリエチレンオキシドモノオールであるDesmophen(登録商標)LB−25、ミシガン州ミッドランドのDow Chemical Companyから市販されているメトキシポリエチレングリコールのCARBOWAX SENTRYライン、並びに更にDow Chemical Companyから市販されているUCON LB FluidsおよびUCON 50−HB Fluidsが挙げられる。モノヒドロキシル官能性化合物は、ウレタンセグメントを介してプレポリマー中に組み込まれるポリアルキレンオキシド基がポリウレタンの約0.1wt.%〜約5wt.%を構成するような量で使用される。
【0019】
このプレポリマーは、少なくとも一種類、要すれば二種類の鎖延長剤を用いて鎖延長され得る。第一に、式HN−R−NH(式中、Rは、イオン基や潜在的なイオン基で置換されていないアルキレンまたはアルキレンオキシド基である。)の化合物を使用する。アルキレンジアミンとしては、ヒドラジン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4−ブチレンジアミンおよびピペラジン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン(DuPont製のDytek A)、ヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、および4,4−メチレンジ(シクロヘキシルアミン)が挙げられる。アルキレンオキシドジアミンとしては、ジプロピルアミンジエチレングリコール(ペンシルヴェニア州アレンタウンのAir Productsから市販されているAncamine(登録商標)1922A)およびAir Productsから市販されているANCAMINEシリーズエーテルアミン(ジプロピルアミンプロピレングリコール、ジプロピルアミンジプロピレングリコール、ジプロピルアミントリプロピレングリコール、ジプロピルアミンポリ(プロピレングリコール)、ジプロピルアミンエチレングリコール、ジプロピルアミンポリ(エチレングリコール)、ジプロピルアミン1,3−プロパンジオール、ジプロピルアミン2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジプロピルアミン1,4−ブタンジオール、ジプロピルアミン1,3−ブタンジオール、ジプロピルアミン1,6−ヘキサンジオールおよびジプロピルアミンシクロヘキサン−1,4−ジメタノールが挙げられる。)が挙げられる。列挙されるジアミンの混合物を更に使用してもよい。鎖延長剤の第一のクラスは、分子量約100〜1500、好ましくは約170〜1000を有し得る。
【0020】
鎖延長剤の任意の第二のクラスは、式HN−R−NH(式中、Rは、イオン基または潜在的なイオン基で置換されているアルキレン基である。)の化合物である。そのような化合物は、イオン基または潜在的なイオン基およびイソシアネート基と反応性である二つの基を有する。そのような化合物は、二つのイソシアネート反応性基およびイオン基またはイオン基を形成可能な基を含む。イオン基または潜在的なイオン基は、第三級または第四級アンモニウム基、そのような基に転換可能な基、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基およびスルホネート基からなる群から選択され得る。言及されたタイプの塩の基に転換可能な基の少なくとも部分的な転換は、水との混合の前または間に行われ得る。特定の化合物としては、ジアミノスルホネート、例えば、N−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸のナトリウム塩またはN−(2−アミノエチル)−2−アミノプロピオン酸のナトリウム塩が挙げられる。第二のクラスの鎖延長剤の分子量は、約32〜600、好ましくは約32〜200である。
【0021】
本発明によるポリウレタンは、更に、いずれの場合も鎖末端に配置され、前記鎖を停止させる化合物(連鎖停止剤)を含んでもよい。これらの連鎖停止剤は、式
【化2】

(式中、Rは、H原子または任意にヒドロキシル末端を有していてもよいアルキレン基であり、Rは、任意にヒドロキシル末端を有していてもよいアルキレン基である。)
の化合物から誘導され得る。好適な化合物としては、化合物、例えばモノアミン、特にモノセカンダリーアミン(monosecondary amine)、またはモノアルコールが挙げられる。例としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシ−プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルアミノ−プロピルアミン、ジエチル(メチル)アミノプロピルアミン、モルホリン、ピペリジン、ジエタノールアミンおよびそれらの好適な置換誘導体、ジプライマリーアミン(diprimary amines)とモノカルボン酸とのアミドアミン、ジプライマリーアミンのモノケチミン、第一級/第三級アミン、例えばN,N−ジメチルアミノ−プロピルアミン等が挙げられる。連鎖停止アルコール、例えば、メタノール、ブタノール、ヘキサノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソデシルアルコール等を含むC〜C10または高級アルコール、およびそれらの混合物、並びに、アミノ−アルコール、例えばアミノメチルプロパノール(AMP)も更に好適である。連鎖停止剤は、分子量約31〜600、好ましくは約31〜200を有し得る。
【0022】
本発明の一態様において、ジエチレングリコールを、低分子量ジオールとして、またはジプロピルアミン−ジエチレングリコール(「DPA−DEG」)を用いる非イオン性鎖延長剤の一部としてポリウレタン分散体中に組み込む。ジエチレングリコールが低分子量ジオールとして使用される場合、好ましくは、DPA−DEGは非イオン性鎖延長剤として使用されない。同様にDPA−DEGが非イオン性鎖延長剤として使用される場合、ジエチレングリコールは、好ましくは低分子量ジオールとして使用されない。ポリウレタン分散体が毛髪固定剤に混合される場合、ジエチレングリコールが毛髪への付着力を大きく増加させるので、ジエチレングリコールまたはDPA−DEGの使用が特に望ましい。
【0023】
本発明は、更に、a)第一工程において少なくともポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとを反応させてプレポリマーA)を生成する工程、次にb)第二工程においてこのプレポリマーを有機溶媒中に溶解する工程、c)第三工程において、このイソシアネート含有プレポリマー溶液と二種類の鎖延長剤および任意に連鎖停止剤とを反応させる工程、d)第四工程において、水の添加によって分散体を生成する工程、および第五工程において有機溶媒を除去する工程、を包含する、パーソナルケア製品における使用に好適なポリウレタン分散体の製造方法にも関する。
【0024】
組み込まれるフリースルホン酸基およびカルボン酸基は、第二工程と第三工程との間または第三工程と第四工程との間において中和される。好適な中和剤としては、第一級、第二級または第三級アミンが挙げられる。これらの中でトリアルキル−置換第三級アミンが好ましい。これらのアミンの例は、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチル−シクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルステアリルアミン、N,N−ジメチル−アニリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−メチルピペラジン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノプロパノール、2−メトキシエチルジメチルアミン、N−ヒドロキシエチル−ピペラジン、2−(2−ジメチルアミノエトキシ)−エタノールおよび5−ジエチルアミノ−2−ペンタノンである。最も好ましい第三級アミンは、Zerewitinoff試験によって決定される活性水素を含まない第三級アミンである。なぜなら、活性水素を含む第三級アミンは、ゲル化、不溶性粒子の形成または連鎖停止を生じ得るプレポリマーのイソシアネート基と反応し得るからである。
【0025】
本発明によるポリウレタン分散体は、いわゆるアセトン法によって製造され得る。アセトン法において、本発明による分散体が基づくポリウレタンの水溶性調製の合成は、多段階プロセスにおいて予備形成される。
【0026】
第一段階において、イソシアネート基を含むプレポリマーは、ポリカーボネートポリオール、ジイソシアネートおよび低分子量ジオールから合成される。個々の成分の量は、プレポリマーのイソシアネート含量が1.4〜5.0wt.%、好ましくは2.0〜4.5wt.%、特に好ましくは2.6〜4.0wt.%になるように計算される。低分子量ジオールは、NCO相当物の量に基づいて0〜80eq.%、好ましくは0〜10eq.%の量で存在する。
【0027】
生じるプレポリマーは構造
【化3】

(式中、
は、ポリカーボネートポリオールの二価の基であり、
は、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートの炭化水素基であり、
は、任意にイオン基で置換されていてもよい低分子量ジオールの基であり、
nは5未満であり、かつ
mは1超である。)
を有する。
【0028】
好ましくは、nは1〜3であり、mは1〜5である。
【0029】
次にこのプレポリマーを数平均分子量約3,000未満のモノヒドロキシル官能性ポリアルキレンオキシドと反応させる。
【0030】
第二段階において段階1において製造されるプレポリマーを、イソシアネート反応性基を含まない少なくとも部分的に水混和性である有機溶媒中に溶解する。好ましい溶媒はアセトンである。しかしながら、別の溶媒、例えば、2−ブタノン、テトラヒドロフランもしくはジオキサンまたはこれらの溶媒の混合物、も更に使用され得る。使用される溶媒の量は、固形分25〜60wt.%、好ましくは30〜50wt.%、特に好ましくは35〜45wt.%が得られるように計算されなければならない。
【0031】
第三段階において、イソシアネート含有プレポリマー溶液をアミノ官能性鎖延長剤および、要すれば連鎖停止剤の混合物と反応させて高分子量ポリウレタンを生成する。生じるポリウレタンの計算される数平均分子量(Mn)が10,000〜100,000ダルトン、好ましくは10,000〜50,000ダルトンになるように充分な量の鎖延長剤および連鎖停止剤を使用する。イオン性および非イオン性鎖延長剤は、プレポリマー中に存在するNCO相当物の残留量に基づいて全部で15〜98eq.%、好ましくは35〜80eq.%の量で存在する。連鎖停止剤は、プレポリマー中に存在するNCO相当物の残留量に基づいて0〜35eq.%、好ましくは10〜20eq.%の量で存在する。
【0032】
第四段階において、高分子量ポリウレタンは、水の溶液への添加かまたは溶液の水への添加によって、微粒子分散体の形態で分散される。
【0033】
第五段階において、有機溶媒を、任意に減圧下において、蒸留によって部分的にまたは完全に除去する。段階四における水の量は、本発明による水性ポリウレタン分散体が固形分20〜60wt.%、好ましくは28〜42wt.%を示すように計算される。
【0034】
本発明のポリウレタン分散体は、パーソナルケア製品における使用に好適である。好ましくは、それらは非エアロゾル毛髪固定剤において使用される。そのような毛髪固定剤は、本発明の分散体への水またはエタノールの添加によって容易に製造される。同様に、これらの分散体は、通常の当業者によく知られている成分の添加によって、別のパーソナルケア製品、例えばサンタンローション、スキンケア製品、口紅、マスカラおよびデオドラント、の製造においても使用され得る。
【実施例】
【0035】
実施例において使用される製品:
Desmophen(登録商標)C−2200(ヘキサンジオールベースのポリカーボネート、M/wt.2000、OH価56;ペンシルヴェニア州ピッツバーグのBayer MaterialScience LLC製)。
Desmodur(登録商標)W(ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、NCO含量31.8%、ペンシルヴェニア州ピッツバーグのBayer MaterialScience LLC製)。
Desmodur(登録商標)I(イソホロンジイソシアネート、NCO含量37.5%、ペンシルヴェニア州ピッツバーグのBayer MaterialScience LLC製)。
Desmophen(登録商標)LB−25(エチレンオキシド/ポリエチレンオキシドモノオール(monol)、M/wt.2220、ペンシルヴェニア州ピッツバーグのBayer MaterialScience LLC製)。
Acclaim(登録商標)4200(ポリエーテルジオールベースのプロピレンオキシド、M/wt.2,000、ペンシルヴェニア州ピッツバーグのBayer MaterialScience LLC製)。
PPG 425(プロピレンオキシドベースポリエーテルジオール、M/wt.%425、ペンシルヴェニア州ピッツバーグのBayer MaterialScience LLC製)。
Ancamine(登録商標)1922A(ジプロピルアミン−ジエチレングリコール、ペンシルヴェニア州アレンタウンのAir Products製)。
Kathon(登録商標)LX(殺生物剤、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアのRohm&Haas製)。
Microcare(登録商標)MTG(殺生物剤、英国チェシアのThor Specialties(UK)Ltd.製)。
【0036】
実施例1:本発明による組成物
Desmophen(登録商標)C−2200 25.74g、ネオペンチルグリコール0.18g、およびDMBA0.62gを75℃においてフラスコ中で混合して均一混合物を得た。Desmodur(登録商標)W 4.31gおよびDesmodur(登録商標)I 3.65gを70℃においてフラスコに添加した。実際のNCO含量が理論NCO値以下になるまで反応を95℃において進行させた。次に、Desmophen(登録商標)LB−25 0.7gを添加し、実際のNCOが一定になるまで反応させた。プレポリマーを60℃に冷却し、アセトン60gを反応フラスコに投入した。透明プレポリマー溶液を40℃に冷却しながら15分間混合した。トリエチルアミン0.43gを40℃のプレポリマー溶液中に添加し、10分間混合した。次に鎖延長工程を40℃において蒸留水15g中のAncamine(登録商標)1922A 2.65gを添加して行った。15分後、蒸留水61.34gを室温において600rpmの撹拌のもと、プレポリマーに添加した。分散体が粘性になりすぎたので追加の水を添加した。分散段階後にアセトンを蒸留した。蒸留が完了するとMicrocare(登録商標)MTG 0.38gを添加した。
【0037】
実施例2〜5を実施例1と同様の手順を用いて製造した。
【0038】
脱イオン水および本発明によるポリウレタン分散体を用いて非エアロゾル毛髪固定剤配合物を製造した。これらの配合物は、ポリウレタン分散体10部と水90部とを混合することによってポリウレタン分散体活性樹脂固体4部であった。活性樹脂固体3%を含む非エアロゾルスプレー配合物(20ml)を以下のように製造した:((3/%固体PUD)×20ml/100=XgのPUDを(20−X)gの水に溶解した。
【0039】
カール保持試験を米国特許第5,626,840号に詳述される試験方法に従って行った。微細ミストのスプレーボトルを適用に使用した。使用されたサンプルヘアは8インチのカラー4のヤキ(Yaki)ブラウンヘアであった。カール保持試験を以下のように行った。この毛髪をそれぞれ約2gの見本(swatch)に切断し、一端で共に縛った。それぞれの見本を洗浄シャンプー(clarifying shampoo)の10%溶液で30秒間洗浄し、水道の湯ですすいだ。それぞれの見本の毛髪を第二末端から6インチの長さに切断した。次にこの毛髪を再度湿らせ、くしけずり、過剰の水を追い出した。この毛髪見本を直径1/2インチのローラー上に巻き、固定し、49℃において約一時間乾燥した。乾燥した毛髪をローラーから取り外し、生じるカールを縛られた末端から吊した。カールの高さをそれぞれの見本に関して測定した。
【0040】
それぞれのカールを一面あたり4回均一にスプレーした。カールをアルミニウムパンに置き、49℃のオーブンに約30分間置いて乾燥した。次に乾燥したカールを再度吊し、カール長を時間0分で測定し、22℃、相対湿度95%のThermotron中に置いた。24時間後にカールの高さを測定した。
【0041】
カール保持力を以下のように計算した。

(式中、
Lは、完全に伸ばされた毛髪の長さ、6インチであり、
は、スプレーおよび暴露前のカールの長さであり、かつ、
L’は、スプレーおよび暴露後のカールの長さである。)
【0042】
スタイル保持力を以下のように評価した。24時間高湿への暴露後、カールを10回くしけずった。カールが初期形状および長さを保持する能力に基づいてスタイル保持力を判定した。ほとんどの場合、カールはくしけずりによって影響を受けないままであった。
【0043】
感触を以下のように評価した。非処理毛髪およびPUDで処理された毛髪を10の判定者の集団を提示させた。パネリストに、ポリマーの存在を明らかにせずに、1が最も自然な柔らかい感触で、1〜5の感触の順位付けを求めた。
【0044】
毛髪への付着力を、処理される毛髪に櫛を通し、薄片および残留物に関して櫛および毛髪を視覚的に観察すことによって評価した。
【0045】

【0046】

【0047】
以上のように、本発明による実施例1は、カールおよびスタイル保持力に関して優れた結果を提供しながら毛髪への付着力および感触に関して驚く程良好な結果を与える。
【0048】
実施例6:サンタンローション
実施例1のポリウレタン分散体を用いてSPF30+のサンタンローションを配合した。
【0049】

【0050】
このサンスクリーンは、完璧な防水特性を有し、滑らかに適用され、良好な感触を有した。更に、このサンスクリーンはボーリング効果(balling effect)を示さなかった。
【0051】
本発明を説明の目的で上記に詳細に説明したが、そのような詳細は、請求項によって規定されるものを除いて、もっぱら説明の目的のためであって、変更が発明の精神および範囲から逸脱しない限り当業者によってなされ得ると解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1) 1a)少なくとも一種類のポリカーボネートポリオールと、
1b)一種類以上の脂肪族または脂環式ポリイソシアネートと、
1c)任意にイオン基で置換されていてもよい少なくとも一種類の低分子量ジオールと、
を反応させることによって式
【化1】

(式中、
は、ポリカーボネートポリオールの二価の基であり、
は、脂肪族または脂環式ポリイソシアネートの基であり、
は、任意にイオン基で置換されていてもよい低分子量ジオールの基であり、
nは、1〜5であり、かつ
mは1超である。)
のプレポリマーを提供する工程;
2)該プレポリマーを少なくとも一種類の数平均分子量約3,000以下のモノヒドロキシル官能性ポリアルキレンオキシドと反応させる工程;
3)有機溶媒の存在下で該プレポリマーを
3a)式HN−R−NH(式中、Rは、イオン基や潜在的なイオン基置換されていないアルキレンまたはアルキレンオキシド基である。)の少なくとも一種類の鎖延長剤、および
3b)要すれば、式HN−R−NH(式中、Rは、イオン基または潜在的なイオン基で置換されているアルキレン基である。)の少なくとも一種類の鎖延長剤
で鎖延長させてポリウレタンを生成する工程;
4)該ポリウレタンを水中に分散させる工程;並びに
5)該有機溶媒を除去して水性ポリウレタン分散体を生じさせる工程
を包含し、該モノヒドロキシル官能性ポリアルキレンオキシドの基が該ポリウレタンの約0.1wt.%〜約5wt.%を構成する、パーソナルケア製品における使用に好適な水性ポリウレタン分散体の製造方法。
【請求項2】
該方法が、更に、該プレポリマーを式
【化2】

(式中、Rは、H原子または任意にヒドロキシル末端を有していてもよいアルキレン基であり、Rは、任意にヒドロキシル末端を有していてもよいアルキレン基である。)
の少なくとも一種類の化合物で連鎖停止させる工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該連鎖停止させる化合物が、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、イソノニルオキシ−プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、N−メチルアミノプロピルアミン、ジエチル(メチル)アミノ−プロピルアミン、モルホリン、ピペリジンおよびジエタノールアミン、ジプライマリーアミンとモノカルボン酸とのアミドアミン、ジプライマリーアミンのモノケチミン、第一級/第三級アミン、メタノール、ブタノール、ヘキサノール、2−エチルヘキシルアルコール、イソデシルアルコール、アミノメチルプロパノールおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該一種類以上のポリイソシアネートが、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロ−ヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルプロパン−(2,2)およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
該低分子量ジオールが、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパン1,2−ジオール、プロパン1,3−ジオール、ブタン1,4−ジオール、ブチレン1,3−グリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ヘキサン1,6−ジオール、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該低分子量ジオールが、ジメチロール酪酸およびジメチロールプロピオン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
該低分子量ジオールが、ジメチロール酪酸およびジメチロールプロピオン酸からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
該第二の鎖延長剤がN−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンスルホン酸のナトリウム塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
該モノヒドロキシル−官能性ポリアルキレンオキシド化合物が、数平均分子量約2220のポリエチレンオキシドモノオールである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
nが1〜3であり、かつmが1〜5である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
がジエチレングリコールの基であるかまたはRがジプロピルアミン−ジエチレングリコールの基である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法によって得られる水性ポリウレタン分散体。
【請求項13】
請求項12の水性ポリウレタン分散体および水を含有する毛髪固定剤。
【請求項14】
請求項12の水性ポリウレタン分散体およびエタノールを含有する毛髪固定剤。
【請求項15】
請求項1のポリウレタン分散体を含有するサンタンローション。

【公開番号】特開2009−46673(P2009−46673A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−205254(P2008−205254)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(503349707)バイエル・マテリアルサイエンス・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (178)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience LLC
【Fターム(参考)】